説明

充放電制御装置、バッテリパック、電気機器、及び、充放電制御方法

【課題】充電時と放電時に流れる電流値が大きく異なるような使用形態においても、装置規模の増大化と複雑化を防止しつつ、充放電可能なバッテリセルを過電流状態から保護することが可能な充放電制御装置を提供する。
【解決手段】10バッテリとバッテリパック1の正極1a端子との間の電流経路上に並列接続された開閉器211、212と、充電動作時に開閉器211をオンにするとともに開閉器212をオフにし、放電動作時に開閉器211をオフにするとともに開閉器212をオンにして、充電電流経路Cと放電電流経路Dとを切り換える切換制御部22と、開閉器211を介して流れる充電電流経路Cの電流値が第1の溶断電流値を越えると、充電電流経路Cを溶断する保護素子24と、開閉器212を介して流れる放電電流経路Dの電流値が第1の電流値より高い第2の溶断電流値を越えると、放電電流経路Dを溶断する保護素子25とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリの充放電を制御する充放電制御装置、この充放電制御装置が組み込まれたバッテリパック、このバッテリパックと着脱自在に接続される電気機器、及び、充放電制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池などの二次電池の充放電を制御する充放電回路は、複数の保護素子を作動させることで、電池に流れる電流経路を遮断する機能を有している。具体的に、このような充放電制御回路は、通常の充放電動作をしているときにはスイッチングトランジスタなどを用いて、電池に流れる電流経路のON/OFFを制御しているが、雷サージに代表される瞬間的な大電流が生じたときにはスイッチングトランジスタの動作時間を上回って電流値が上昇するため、過電流保護の観点から電流経路を遮断するヒューズなどの保護回路を有している。また、充放電回路は、電池の状態、すなわち電池の電圧値や温度などを検出し、この検出結果から異常状態を判断して、スイッチングトランジスタなどを用いて、電池に流れる電流経路のON/OFFを制御している。
【0003】
また、特許文献1には、二次電池への充電を行っているときに、電池への過充電を検出したとき、電池が異常に温度上昇したとき、スイッチング素子が発熱によって誤動作したときなどに、不可逆な状態で強制的に電池に流れる電流経路を溶断する保護素子を有する保護回路が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−135359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に記載された保護回路では、過電流状態から保護するため、1系統の保護素子を用いて電流経路を溶断している。充電時と放電時の電流値が大きく変化しない場合には、このような保護回路を用いて過電流状態から保護することが可能であった。
【0006】
これに対して、充電時と放電時の電流値が大きく変化するような用途、例えば電動工具などの充電電流に対して放電電流が非常に大きいという使用形態に対応するためには、放電電流に合わせて過電流保護用の保護素子を設計する必要がある。このようにして放電電流に合わせて過電流保護用に設計された保護素子は、充電動作で保護しなければならない電流値によって溶断できず、充電時の過電流状態から十分に保護することができないという問題があった。
【0007】
このような問題に対して、例えばバッテリパックの正極端子を2系統設けて、それぞれの正極端子の系統に放電時の過電流保護用の保護素子と充電時の過電流保護用の保護素子を接続することで、過電流状態から保護することができる。
【0008】
しかしながら、上記のように端子が増えると、バッテリパックの端子構造や内部構造が複雑になり、機械的な部品点数が増え、バッテリパック筐体が大型化してしまった。また、ユーザーによる端子の誤った使用を防ぐ工夫も必要となり、さらに誤使用を防止するため機構が複雑化してしまった。
【0009】
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、充電時と放電時に流れる電流値が大きく異なるような使用形態においても、装置規模の増大化と複雑化を防止しつつ、充放電可能なバッテリセルを、充電時と放電時との両方の過電流状態から保護することが可能な充放電制御装置、この充放電制御装置が組み込まれたバッテリパック、及び、充放電制御回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するための手段として、本発明に係る充放電制御装置は、バッテリパック内に設けられ1以上の充放電可能なバッテリセルが直列接続されたバッテリの充放電を制御する充放電制御装置において、バッテリとバッテリパックの外部端子との間の電流経路上に並列接続された第1及び第2の開閉器と、充電動作時に第1の開閉器をオンにするとともに第2の開閉器をオフにし、放電動作時に第1の開閉器をオフにするとともに第2の開閉器をオンにして、充電電流経路と放電電流経路とを切り換える切換制御部と、第1の開閉器を介して流れる充電電流経路の電流値が第1の溶断電流値を越えると、充電電流経路を溶断する第1の保護素子と、第2の開閉器を介して流れる放電電流経路の電流値が第1の溶断電流値より高い第2の溶断電流値を越えると、放電電流経路を溶断する第2の保護素子とを備える。
【0011】
また、本発明に係るバッテリパックは、1以上の充放電可能なバッテリセルが直列接続されたバッテリと、バッテリの充放電を制御する充放電制御回路とを備えるバッテリパックにおいて、充放電制御回路は、バッテリと当該バッテリパックの外部端子との間の電流経路上に並列接続された第1及び第2の開閉器と、充電動作時に第1の開閉器をオンにするとともに第2の開閉器をオフにし、放電動作時に第1の開閉器をオフにするとともに第2の開閉器をオンにして、充電電流経路と放電電流経路とを切り換える切換制御部と、バッテリセルの電圧値を検出する電圧検出部と、第1の開閉器を介して流れる充電電流経路の電流値が第1の溶断電流値を越えると、充電電流経路を溶断する第1の保護素子と、第2の開閉器を介して流れる放電電流経路の電流値が第1の溶断電流値より高い第2の溶断電流値を越えると、放電電流経路を溶断する第2の保護素子とを備える。
【0012】
また、本発明に係る電気機器は、1以上の充放電可能なバッテリセルが直列接続されたバッテリと、バッテリの充放電を制御する充放電制御回路とを有するバッテリパックと、バッテリパックと着脱自在に接続され、バッテリパックの充電を行う、又は、バッテリパックから電源供給を受けて駆動する機器本体とを備え、充放電制御回路は、バッテリとバッテリパックの外部端子との間の電流経路上に並列接続された第1及び第2の開閉器と、充電動作時に第1の開閉器をオンにするとともに第2の開閉器をオフにし、放電動作時に第1の開閉器をオフにするとともに第2の開閉器をオンにして、充電電流経路と放電電流経路とを切り換える切換制御部と、バッテリセルの電圧値を検出する電圧検出部と、第1の開閉器を介して流れる充電電流経路の電流値が第1の溶断電流値を越えると、充電電流経路を溶断する第1の保護素子と、第2の開閉器を介して流れる放電電流経路の電流値が第1の溶断電流値より高い第2の溶断電流値を越えると、放電電流経路を溶断する第2の保護素子とを有する。
【0013】
また、本発明に係る充放電制御方法は、バッテリパック内に設けられ1以上の充放電可能なバッテリセルが直列接続されたバッテリの充放電を制御する充放電制御方法であって、バッテリとバッテリパックの外部端子との間の電流経路上に並列接続された第1及び第2の開閉器を用いて、充電動作時に第1の開閉器をオンにするとともに第2の開閉器をオフにし、放電動作時に第1の開閉器をオフにするとともに第2の開閉器をオンにして、充電電流経路と放電電流経路とを切り換え、第1の開閉器を介して流れる充電電流経路の電流値が第1の溶断電流値を越えると、充電電流経路に接続された第1の保護素子を溶断し、第2の開閉器を介して流れる放電電流経路の電流値が第1の溶断電流値より高い第2の溶断電流値を越えると、放電電流経路に接続された第2の保護素子を溶断する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、充電時と放電時に流れる電流値が大きく異なるような使用形態においても、第1及び第2の開閉器により充電電流経路と放電電流経路との接続を切り換えることで、装置規模の増大化と複雑化を防止しつつ、充電電流経路に接続された第1の保護素子と、放電電流経路に接続された第2の保護素子とを用いて、充放電可能なバッテリセルを、充電時と放電時との両方の過電流状態から保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施形態に係る充放電制御回路の構成について説明するための図である。
【図2】第1の実施形態に係る開閉器の具体的な構成について説明するための図である。
【図3】図3(A)は充電動作時における開閉器の具体的な動作について説明するための図である。図3(B)は放電動作時における開閉器の具体的な動作について説明するための図である。
【図4】第1の実施形態に係る電圧検出部の変形例について説明するための図である。
【図5】充電動作時に保護機能を実現する保護素子の構成について説明するための図である。
【図6】第1の実施形態に係る充放電制御回路の変形例について説明するための図である。
【図7】図7(A)は、過充電状態と判断されたときの開閉器のスイッチング制御について説明するための図である。図7(B)は、過放電状態と判断されたときの開閉器のスイッチング制御について説明するための図である。
【図8】変形例に係る開閉器の具体的な構成について説明するための図である。
【図9】第2の実施形態に係る充放電制御回路の構成について説明するための図である。
【図10】放電動作時に保護機能を実現する保護素子の構成について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。
【0017】
本発明が適用された充放電制御装置は、バッテリの充放電を制御する回路である。第1の実施形態に係る充放電制御回路20は、例えば、図1に示すような合計4個の充放電可能なバッテリセル11〜14が直列接続されたバッテリ10を有するバッテリパック1に組み込まれるものである。
【0018】
バッテリパック1は、電気機器100に組み込まれる電池である。このバッテリパック1は、バッテリパック1の充電を行う、又は、バッテリパック1から電源供給を受けて駆動する電気機器100の機器本体2と着脱自在に接続されるものである。このような機器本体2と着脱自在に接続されるバッテリパック1は、その正極端子1aと負極端子1bとが、充放電制御回路20を介してバッテリ10の正極端10aと負極端10bとにそれぞれ接続されている。
【0019】
このような接続関係の下、充放電制御回路20は、2つの開閉器211、212と、切換制御部22と、電圧検出部23と、2つの保護素子24、25と、電流検出用抵抗素子26とを備える。
【0020】
開閉器211、212は、バッテリ10の正極端10aとバッテリパック1の正極端子1aとの間に並列に接続され、切換制御部22によってオンオフが制御される。また、開閉器211、212は、後述するように、それぞれ充電電流経路Cの開閉と放電電流経路Dの開閉を行う素子であればよいが、例えば、図2のようなバッテリ10と開閉器211、212との接続関係を表した等価回路図に示すように、それぞれ2つの電界効果トランジスタから構成される。
【0021】
すなわち、開閉器211は、寄生ダイオードのバイアスの方向が互いに逆となるように直列接続されたスイッチングトランジスタ211a、211bから構成される。同様にして、開閉器212は、寄生ダイオードのバイアスの方向が互いに逆となるように直列接続されたスイッチングトランジスタ212a、212bから構成される。
【0022】
切換制御部22は、マイクロプロセッサなどによって構成され、下記に示すようにして、充電動作と放電動作とに応じて開閉器211、212のオンオフを制御する。
【0023】
まず、充電動作時に、切換制御部22は、図3(A)に示すようにして、開閉器211を構成する2つのスイッチングトランジスタ211a、211bをオンにするとともに、開閉器212を構成する2つのスイッチングトランジスタ212a、212bをオフにする。このようにして、切換制御部22は、充電電流が、図1中の破線及び図3(A)中の実線で表された充電電流経路C上に流れるように制御する。また、切換制御部22は、充電電流の方向に対してバイアス方向が逆である開閉器212のスイッチングトランジスタ212bをオフとすることで、開閉器212を介して充電電流が流れないように遮断することができる。
【0024】
この充電動作時に、切換制御部22は、後述する電圧検出部23により検出されるバッテリセル11〜14の電圧値に基づいて過充電状態であると判断すると、開閉器211を構成する2つのスイッチングトランジスタ211a、211bをオンからオフにする。また、切換制御部22は、後述する電流検出用抵抗素子26により検出されるバッテリ10に流れる電流値に基づいて過電流状態であると判断すると、開閉器211を構成する2つのスイッチングトランジスタ211a、211bをオンからオフにする。
【0025】
次に、放電動作時に、切換制御部22は、図3(B)に示すようにして、開閉器211を構成する2つのスイッチングトランジスタ211a、211bをオフにするとともに、開閉器212を構成する2つのスイッチングトランジスタ212a、212bをオンにする。このようにして、充放電制御回路20では、放電電流が、図1中の一点鎖線及び図3(B)中の実線で表された放電電流経路D上に流れるように制御する。
【0026】
この放電動作時に、切換制御部22は、後述する電圧検出部23により検出されるバッテリセル11〜14の電圧値に基づいて過放電状態であると判断すると、開閉器212を構成する2つのスイッチングトランジスタ212a、212bをオンからオフにする。また、切換制御部22は、後述する電流検出用抵抗素子26により検出されるバッテリ10に流れる電流値に基づいて過電流状態であると判断すると、開閉器212を構成する2つのスイッチングトランジスタ212a、212bをオンからオフにする。
【0027】
電圧検出部23は、バッテリセル11〜14の電圧値を検出し、検出した電圧値を切換制御部22に通知する。また、電圧検出部23には、検出結果に応じて保護素子24の動作を制御するためのスイッチングトランジスタ23aが設けられている。ここで、電圧検出部23は、バッテリセル11〜14が過充電状態となり、開閉器211により充電電流経路が遮断されず、その後、所定の電圧値を越えたことを検出すると、この検出結果に応じてスイッチングトランジスタ23aをオンにして、後述する保護素子24の発熱体243を動作させることで充電電流経路Cを溶断させる。
【0028】
なお、電圧検出部23は、例えば図4に示すように、複数の温度検出素子231、232、233を設け、この温度検出素子231、232、233の検出結果に応じて、スイッチングトランジスタ23aの動作を制御するようにしてもよい。例えば、温度検出素子231はバッテリ10近傍の温度を検出し、温度検出素子232は開閉器211近傍の温度を検出し、温度検出素子233は開閉器212近傍の温度を検出する。電圧検出部23では、例えば温度検出素子231によりバッテリ10近傍の温度が85℃以上になったとき、又は、温度検出素子232、233により開閉器211、212近傍の温度が135℃以上になったときに、スイッチングトランジスタ23aをオンにするようにしてもよい。このようにすることで、バッテリパック1内部の各部の温度状況に基づいて、充電動作時にバッテリ10を保護する機能を実現することができる。
【0029】
保護素子24は、充電動作時の過充電状態及び過電流状態において開閉器211をオフ状態にできないとき、開閉器211を介して流れる充電電流経路Cを溶断する保護機能を実現するため、具体的には図5の等価回路モデルに示すように、直列接続されたヒューズ241、242と、ヒューズ241、242の接続点Pを介して図中の経路R1、R2により通電するとヒューズ241、242を溶融する発熱体243とから構成される。
【0030】
このような構成からなる保護素子24は、ヒューズ241、242を1つの溶断金属体24aとしたとき、この溶断金属体24aは、放電電流経路Dの開閉を行う開閉器212に対して並列に接続され、発熱体243が発熱する、又は、開閉器211を介して流れる充電電流経路Cの電流値が、充電動作時の過電流に対応する第1の溶断電流値を越えると、この充電電流経路Cを溶断する。
【0031】
ここで、第1の溶断電流値は、上述したように、充電動作時の過電流に対応して設定される。より具体的には、充電動作時の過電流状態において開閉器211をオフ状態にできないとき充電電流経路Cを溶断させるため、第1の溶断電流値は、切換制御部22が充電動作時の過電流と判断して開閉器211をオフにする電流検出用抵抗素子26の検出電流値と同等か、それよりも大きな値が設定される。
【0032】
すなわち、過充電状態となると、保護素子24は、電圧検出部23によってスイッチングトランジスタ23aがオンとなり、発熱体243が通電して発熱して溶断金属体24aが溶断することで過充電状態から保護することができる。
【0033】
また、充電動作時に過電流状態となると、保護素子24は、溶断金属体24aが自己発熱によって充電電流経路Cを溶断することで、このような過電流状態から保護することができる。
【0034】
保護素子25は、開閉器212を介して流れる放電電流経路D上に接続され、放電電流経路Dの電流値が、保護素子24が溶断する電流値に比べて高く、放電動作時の過電流に対応する第2の溶断電流値を越えると、自己発熱により放電電流経路Dを溶断する。
【0035】
ここで、第2の溶断電流値は、第1の溶断電流値よりも高い電流値であって、放電動作時の過電流に対応して設定される。換言すれば、保護素子25は、その定格電流値が、保護素子24の溶断金属体24aと比較してより高いヒューズから構成される。より具体的には、放電動作時の過電流状態において開閉器212をオフ状態にできないとき放電電流経路Dを溶断させるため、第2の溶断電流値は、切換制御部22が放電動作時の過電流と判断して開閉器212をオフにする電流検出用抵抗素子26の検出電流値と同等か、それよりも大きな値が設定される。
【0036】
このようにして、保護素子25は、過電流状態において開閉器211をオフ状態にできないときでも、保護素子24が溶断する電流値に比べて高い電流値を越えると放電電流経路Dを溶断することで、放電時に流れる電流値が充電時に流れる電流値より大きいような使用用途に対応して、放電動作時の過電流状態から保護することができる。
【0037】
なお、保護素子25は、放電電流経路D上に接続されていればよく、例えば、図6に示すように、開閉器211に対して直列接続された状態として、充電電流が流れるようにしてもよい。特に、充放電制御回路20は、充電電流経路Cの抵抗値を抑制する観点から、図1に示すように、保護素子25が、充電電流経路Cの開閉を行う開閉器211に対して並列に接続されていることが特に好ましい。
【0038】
電流検出用抵抗素子26は、例えばバッテリ10の負極端10bとバッテリパック1の負極端子1bとの間に接続される抵抗体であって、バッテリ10に流れる電流を電圧、又は温度に変換して検出し、検出結果を切換制御部22に通知する。
【0039】
以上のような構成からなる充放電制御回路20では、充電動作時と放電動作時に流れる電流値が大きく異なるような使用形態においても、切換制御部22が2つの開閉器211、212により充電電流経路Cと放電電流経路Dとの接続を切り換えることで、例えば、充電電流経路C用と放電電流経路D用の2つの正極端子をバッテリパックに設けるような構造に比べて、端子数が増えることによる装置規模の増大化を防止することができる。また、上記のように放電用と充電用と異なる2つの正極端子が設けられたバッテリパックでは、ユーザーによって端子の誤った使用が発生しうるが、本実施形態に係る充放電制御回路20が組み込まれたバッテリパック1では、このような誤使用を防止することができる。
【0040】
このようにして、充放電制御回路20では、充電動作時と放電動作時に流れる電流値が大きく異なるような使用形態においても、装置規模の増大化と複雑化を防止しつつ、溶断する電圧値が異なる2つの保護素子24、25によって、充放電可能なバッテリセルを、充電時と放電時との両方の過電流状態から保護することができる。
【0041】
また、比較例として、仮に、開閉器212と保護素子25とを用いることなく、開閉器211を介して充電電流と放電電流とを流し、保護素子24により過電流保護を実現する場合は、充電電流より比較的大きい放電電流に対する保護を実現するため、充電時の過電流のみから保護を実現する場合に比べて、溶断金属体24aの耐熱性を高めることを要する。このため、充電電流より比較的大きい放電電流に対する保護を実現するように設計された溶断金属体24aは、過充電時に発熱体243を動作させても、溶断するまでに多くのエネルギを必要とし、結果として溶断時間も長くなってしまうという問題があった。
【0042】
これに対して、本実施形態に係る充放電制御回路20では、保護素子24の溶断金属体24aを、充電時の過電流のみから保護すればよいので、上記の比較例と比べて、過充電状態になったときに、できるだけ早く保護することができ、さらに発熱体243自体の動作電流も低く抑え、結果として保護素子24自体の小型化も図ることができる。
【0043】
次に、過充電、過放電、及び、過電流を保護するために行われる開閉器211、212の具体的な動作について説明する。
【0044】
充放電制御回路20では、充電動作時において、切換制御部22が、後述する電圧検出部23により検出されるバッテリセル11〜14の電圧値から過充電状態であると判断すると、図7(A)に示すように、開閉器211を構成する2つのスイッチングトランジスタ211a、211bをオンからオフにするとともに、開閉器212を構成する2つのスイッチングトランジスタ212a、212bのうち、寄生ダイオードのバイアスの方向が放電電流経路Dと逆方向であるスイッチングトランジスタ212aをオフからオンにすることが特に好ましい。すなわち、切換制御部22は、このようなスイッチング制御を行うことで、過充電状態のバッテリ10を放電可能として、できるだけ早く通常状態に復帰させることができる。
【0045】
また、充放電制御回路20では、放電動作時において、電圧検出部23により検出されるバッテリセル11〜14の電圧値から過放電状態であると判断すると、図7(B)に示すように、開閉器212を構成する2つのスイッチングトランジスタ212a、212bをオンからオフにするとともに、開閉器211を構成する2つのスイッチングトランジスタ211a、211bのうち、寄生ダイオードのバイアスの方向が充電電流経路Cと逆方向であるスイッチングトランジスタ211bをオフからオンにすることが特に好ましい。すなわち、切換制御部22は、このようなスイッチング制御を行うことで、過放電状態のバッテリ10を充電可能として、できるだけ早く通常状態に復帰させることができる。
【0046】
なお、本実施形態においては、上述した開閉器211、212の代わりに、例えば図8に示すような構成からなる開閉器311、312からなる充放電制御回路30を用いてもよい。
【0047】
すなわち、図8に示すように、開閉器311は、充電電流の方向に対して寄生ダイオードのバイアス方向が逆方向となるようにして充電電流経路C上に接続されたスイッチングトランジスタ311bと、バイアス方向が、充電電流と順方向であって放電電流と逆方向となるようにして充電電流経路C上に接続されたダイオード311cとから構成される。また、図8に示すように、開閉器312は、放電電流の方向に対して寄生ダイオードのバイアス方向が逆方向となるようにして放電電流経路D上に接続されたスイッチングトランジスタ312aと、バイアス方向が、充電電流と逆方向であって放電電流と順方向となるようにして放電電流経路D上に接続されたダイオード312cとから構成される。
【0048】
このような開閉器311、312を有する充放電制御回路30では、充電動作時において、切換制御部22が、電圧検出部23により検出されるバッテリセル11〜14の電圧値から過充電状態であると判断すると、開閉器311のスイッチングトランジスタ311bをオンからオフにして充電電流経路Cに充電電流が流れないようにするとともに、充電電流の方向に対してバイアス方向が逆であるダイオード312cにより、放電電流経路Dを介して充電電流が流れないようにすることができる。
【0049】
また、充放電制御回路20では、放電動作時において、電圧検出部23により検出されるバッテリセル11〜14の電圧値から過放電状態であると判断すると、開閉器312のスイッチングトランジスタ312aをオンからオフにして放電電流経路Dに放電電流が流れないようにするとともに、放電電流の方向に対してバイアス方向が逆であるダイオード311cにより、放電電流経路Dを介して放電電流が流れないようにすることができる。
【0050】
以上のように充放電制御回路30は、充放電制御回路20と同様にして、過充電状態での充電電流の流れを遮断し、過放電状態での放電電流の流れを遮断することができるが、次のような点から、充放電制御回路20の方が好ましい。
【0051】
すなわち、充放電制御回路30では、ダイオード311c、312cが電流経路上に接続されているので、充放電制御回路20と比べると、開閉器の入出力間の抵抗値が高い。これに対して、充放電制御回路20は、充放電制御回路30と比べて電気抵抗によるエネルギロスをできるだけ抑えることができる。
【0052】
また、上述したように、充放電制御回路20は、充放電制御回路30と異なり、過充電状態でも放電可能とし、過放電状態でも充電可能として、通常状態にできるだけ早く復帰可能となるように電流経路を確保できる点で特に好ましい。
【0053】
次に、第2の実施形態に係る充放電制御回路40について、図9を参照して説明する。
【0054】
すなわち、充放電制御回路40は、上述した第1の実施形態に係る充放電制御回路20に対して、電圧検出部43と、保護素子45との構成が異なる以外は、充放電制御回路20と同様の構成を有している。図9では、便宜上、充放電制御回路20と同様の構成については、同符号を付して、その説明を省略する。ここで、充放電制御回路40は、バッテリパック3に組み込まれるものとする。さらにバッテリ3は電気機器100aに組み込まれる電池であって、電気機器100aの機器本体2と着脱可能に接続されるものとする。
【0055】
すなわち、電圧検出部43は、上述した電圧検出部23と同様に、バッテリセル11〜14の電圧値を検出し、検出した電圧値を切換制御部22に通知する。また、電圧検出部43には、上述した電圧検出部23のスイッチングトランジスタ23aと同様の機能を実現するスイッチングトランジスタ43aに加えて、保護素子45の動作を制御するためのスイッチングトランジスタ43bが設けられている。ここで、電圧検出部43は、バッテリセル11〜14が過放電状態となり、開閉器212により放電電流経路が遮断されず、所定の電圧値未満になったことを検出すると、この検出結果に応じてスイッチングトランジスタ43bをオンにして、後述する保護素子45の発熱体453を動作させることで放電電流経路Dを溶断させる。
【0056】
保護素子45は、放電動作時の過放電状態及び過放電状態において開閉器212をオフ状態にできないとき、開閉器212を介して流れる放電電流経路Dを溶断する保護素子として機能させるため、具体的には図10の等価回路モデルに示すように、直列接続されたヒューズ451、452と、ヒューズ451、452の接続点を介して通電するとヒューズ451、452を溶融する発熱体453とから構成される。
【0057】
このような構成からなる保護素子45は、ヒューズ451、452を1つの溶断金属体45aとしたとき、この溶断金属体45aは、充電電流経路Cの開閉を行う開閉器211に対して並列に接続され、発熱体453が発熱する、又は、開閉器212を介して流れる放電電流経路Dの電流値が第2の溶断電流値を越えると、この充電電流経路Cを溶断する。
【0058】
すなわち、過放電状態となると、保護素子45は、電圧検出部43によってスイッチングトランジスタ43bがオンとなり、発熱体453が通電して発熱して溶断金属体45aが溶断することで過放電状態から保護することができる。
【0059】
また、放電動作時に過電流状態となると、保護素子45は、溶断金属体45aが自己発熱によって放電電流経路Dを溶断することで、このような放電時の過電流状態から保護することができる。
【0060】
このようにして、充放電制御回路40は、充放電制御回路30と比べて、放電電流経路Dを溶断する保護素子45の構成が複雑なため、回路規模が増大するが、過放電状態となって開閉器312により放電電流経路Dを遮断できないときも、放電電流経路Dを溶断するという保護機能を実現することができる。
【符号の説明】
【0061】
1、3 バッテリパック、2 機器本体、11−14 バッテリセル、1a 正極端子、1b 負極端子、10 バッテリ、10a 正極端、10b 負極端、20、30、40 充放電制御回路、100、100a 電気機器、211、212、311、312 開閉器、211a、211b、212a、212b、23a、311b、312a、43a、43b スイッチングトランジスタ、22 切換制御部、23、43 電圧検出部、231、232、233 温度検出素子、24、25、45 保護素子、241、242、451、452 ヒューズ、243、453 発熱体、24a、45a 溶断金属体、26 電流検出用抵抗素子、311c、312c ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリパック内に設けられ1以上の充放電可能なバッテリセルが直列接続されたバッテリの充放電を制御する充放電制御装置において、
上記バッテリと上記バッテリパックの外部端子との間の電流経路上に並列接続された第1及び第2の開閉器と、
充電動作時に上記第1の開閉器をオンにするとともに上記第2の開閉器をオフにし、放電動作時に上記第1の開閉器をオフにするとともに上記第2の開閉器をオンにして、充電電流経路と放電電流経路とを切り換える切換制御部と、
上記第1の開閉器を介して流れる充電電流経路の電流値が第1の溶断電流値を越えると、該充電電流経路を溶断する第1の保護素子と、
上記第2の開閉器を介して流れる放電電流経路の電流値が上記第1の溶断電流値より高い第2の溶断電流値を越えると、該放電電流経路を溶断する第2の保護素子とを備える充放電制御装置。
【請求項2】
上記バッテリセルの電圧値を検出する電圧検出部を更に備え、
上記第1の保護素子は、上記電圧検出部により上記バッテリセルが所定の電圧値を越えた検出結果に応じて通電して発熱する発熱体と、上記第2の開閉器に対して並列接続された金属体であって、該発熱体が発熱する又は上記第1の開閉器を介して流れる充電電流経路の電流値が第1の溶断電流値を越えると、該充電電流経路を溶断する溶断金属体とを有する請求項1記載の充放電制御装置。
【請求項3】
上記第1の開閉器は、電界効果トランジスタにおける寄生ダイオードのバイアスの方向が互いに逆となるように直列接続された2つのスイッチングトランジスタから構成され、
上記第2の開閉器は、電界効果トランジスタにおける寄生ダイオードのバイアスの方向が互いに逆となるように直列接続された2つのスイッチングトランジスタから構成され、
上記切換制御部は、上記充電動作時に上記第1の開閉器を構成する2つのスイッチングトランジスタをオンにするとともに上記第2の開閉器を構成する2つのスイッチングトランジスタをオフにし、上記放電動作時に上記第1の開閉器を構成する2つのスイッチングトランジスタをオフにするとともに上記第2の開閉器を構成する2つのスイッチングトランジスタをオンにする請求項1又は2記載の充放電制御装置。
【請求項4】
上記切換制御部は、
上記電圧検出部により上記バッテリセルが所定の電圧値を越えたことを検出したとき、上記第1の開閉器を構成する2つのスイッチングトランジスタをそれぞれオンからオフにするとともに、上記第2の開閉器を構成する2つのスイッチングトランジスタのうち、寄生ダイオードのバイアスの方向が上記放電電流経路と逆方向であるスイッチングトランジスタをオフからオンにし、
上記電圧検出部により上記バッテリセルが所定の電圧値未満となったことを検出したとき、上記第2の開閉器を構成する2つのスイッチングトランジスタをそれぞれオンからオフにするとともに、上記第1の開閉器を構成する2つのスイッチングトランジスタのうち、寄生ダイオードのバイアスの方向が上記充電電流経路と逆方向であるスイッチングトランジスタをオフからオンにする請求項3記載の充放電制御装置。
【請求項5】
上記第1の開閉器は、充電電流の方向に対して寄生ダイオードのバイアス方向が逆方向となるようにして上記充電電流経路上に接続されたスイッチングトランジスタと、バイアス方向が、充電電流と順方向となるようにして該充電電流経路上に接続されたダイオードとから構成され
上記第2の開閉器は、放電電流の方向に対して寄生ダイオードのバイアス方向が逆方向となるようにして上記放電電流経路上に接続されたスイッチングトランジスタと、バイアス方向が、放電電流と順方向となるようにして上記放電電流経路上に接続されたダイオードとから構成されることを特徴とする請求項1又は2記載の充放電制御装置。
【請求項6】
1以上の充放電可能なバッテリセルが直列接続されたバッテリと、該バッテリの充放電を制御する充放電制御回路とを備えるバッテリパックにおいて、
上記充放電制御回路は、
上記バッテリと当該バッテリパックの外部端子との間の電流経路上に並列接続された第1及び第2の開閉器と、
上記充電動作時に上記第1の開閉器をオンにするとともに上記第2の開閉器をオフにし、上記放電動作時に上記第1の開閉器をオフにするとともに上記第2の開閉器をオンにして、充電電流経路と放電電流経路とを切り換える切換制御部と、
上記バッテリセルの電圧値を検出する電圧検出部と、
上記第1の開閉器を介して流れる充電電流経路の電流値が第1の溶断電流値を越えると、該充電電流経路を溶断する第1の保護素子と、
上記第2の開閉器を介して流れる放電電流経路の電流値が上記第1の溶断電流値より高い第2の溶断電流値を越えると、該放電電流経路を溶断する第2の保護素子とを有するバッテリパック。
【請求項7】
1以上の充放電可能なバッテリセルが直列接続されたバッテリと、該バッテリの充放電を制御する充放電制御回路とを有するバッテリパックと、
上記バッテリパックと着脱自在に接続され、該バッテリパックの充電を行う、又は、該バッテリパックから電源供給を受けて駆動する機器本体とを備え、
上記充放電制御回路は、
上記バッテリと当該バッテリパックの外部端子との間の電流経路上に並列接続された第1及び第2の開閉器と、
上記充電動作時に上記第1の開閉器をオンにするとともに上記第2の開閉器をオフにし、上記放電動作時に上記第1の開閉器をオフにするとともに上記第2の開閉器をオンにして、充電電流経路と放電電流経路とを切り換える切換制御部と、
上記バッテリセルの電圧値を検出する電圧検出部と、
上記第1の開閉器を介して流れる充電電流経路の電流値が第1の溶断電流値を越えると、該充電電流経路を溶断する第1の保護素子と、
上記第2の開閉器を介して流れる放電電流経路の電流値が上記第1の溶断電流値より高い第2の溶断電流値を越えると、該放電電流経路を溶断する第2の保護素子とを有する電気機器。
【請求項8】
バッテリパック内に設けられ1以上の充放電可能なバッテリセルが直列接続されたバッテリの充放電を制御する充放電制御方法において、
上記バッテリと上記バッテリパックの外部端子との間の電流経路上に並列接続された第1及び第2の開閉器を用いて、充電動作時に該第1の開閉器をオンにするとともに該第2の開閉器をオフにし、放電動作時に該第1の開閉器をオフにするとともに該第2の開閉器をオンにして、充電電流経路と放電電流経路とを切り換え、
上記第1の開閉器を介して流れる充電電流経路の電流値が第1の溶断電流値を越えると、該充電電流経路に接続された第1の保護素子を溶断し、
上記第2の開閉器を介して流れる放電電流経路の電流値が上記第1の溶断電流値より高い第2の溶断電流値を越えると、該放電電流経路に接続された第2の保護素子を溶断する充放電制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−231649(P2012−231649A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99834(P2011−99834)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】