説明

先付工法用タイル目地材およびその製造方法

【課題】タイル付きプレキャストコンクリート板の製造に用いられる先付工法用タイル目地材であって、両面の表面強度が高く、かつ、基材側面の平滑性に優れた先付工法用タイル目地材を提供する。
【解決手段】ポリオレフィン系樹脂発泡シートからなる目地材16であって、上記ポリオレフィン系樹脂発泡シートの両面には電子線照射処理がシートの発泡前に施されているとともに、このポリオレフィン系樹脂発泡シートの片面にはシートを加熱した状態でロールで押圧する平滑化処理がシートの発泡後に施されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの外壁などに使用するタイル付きプレキャストコンクリート板を製造するときに用いられる先付工法用タイル目地材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建造物の外壁などをタイル貼りとする場合、タイルを予めコンクリートに埋設したタイル付きプレキャストコンクリート板を製造し、このタイル付きプレキャストコンクリート板を建造物の外壁などに固定していく方法が使用されている。この方法を、一般にタイルの先付工法と称している。
【0003】
上述したタイル付きプレキャストコンクリート板を製造する場合、図1に示すように、紙やプラスチックからなる基材10の粘着剤塗布面12に、図2に示すようなタイル挿入部分14を打ち抜いた格子状の目地材16を貼り付けるとともに、この目地材16のタイル挿入部分14にタイル18を挿入して、タイル18の表面(タイル面)を基材10の粘着剤塗布面12に接着させる。その後、全体を裏返しにしてその上に未硬化のコンクリート20を打設し、このコンクリート20が硬化した後に、タイル18およびコンクリート20から基材10および目地材16を剥離する。これにより、タイルが所定の配列で埋設されたタイル付きプレキャストコンクリート板が完成する。なお、目地材としては、目地幅に合わせた棒状の目地材を基材の粘着剤塗布面に貼り付けてもよい。
【0004】
上述した先付工法用タイル目地材として、従来、特許文献1に記載されたものが提案されている。特許文献1の目地材は、コンクリート建造物の外壁などに使用するタイル埋設式のコンクリートパネルを製造する際に用いられる先付工法用タイル目地材において、該目地材が押出成形された発泡倍率1.5〜30倍の独立気泡発泡体であって、基材となる粘着シート側接着面は電子線照射処理を施して平滑な面とし、コンクリート側接着面は電子線照射処理を施さないで粗面のままとしたものである(請求項1)。
【0005】
【特許文献1】特許第3968666号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の目地材は、押出成形された発泡シートの基材側面に電子線照射処理を施している。しかし、発泡後のシートに電子線照射処理を施す方法では、発泡シートの基材側面の表面強度を十分に高くすることができないため、タイル表面に目地材のくずが張り付き、高水圧洗浄処理を施す工程などで時間やコストを必要以上に費やし、また目地部がその工程により粗雑になるなどの問題が生じるものであった。
【0007】
また、発泡後のシートに電子線照射処理を施す方法では、発泡シートの基材側面を十分に平滑にすることができないため、基材と目地材との間の接着力が弱くなり、コンクリートから目地材を剥離する際に、目地材がコンクリート上に残るという問題が生じるものであった。
【0008】
さらに、特許文献1の目地材は、発泡シートのコンクリート側面は電子線照射処理を施しておらず、上記コンクリート側面の表面強度が著しく低いため、目地部に目地材のくずが張り付き、高水圧洗浄処理を施す工程などで時間やコストを必要以上に費やし、また目地部がその工程により粗雑になるなどの問題が生じるものであった。
【0009】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたもので、両面の表面強度が高く、かつ、基材側面の平滑性に優れた先付工法用タイル目地材およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記目的を達成するため、タイル付きプレキャストコンクリート板の製造に用いられる先付工法用タイル目地材において、前記目地材はポリオレフィン系樹脂発泡シートからなり、かつ、前記ポリオレフィン系樹脂発泡シートの両面には電子線照射処理がシートの発泡前に施されているとともに、前記ポリオレフィン系樹脂発泡シートの片面にはシートを加熱した状態でロールで押圧する平滑化処理がシートの発泡後に施されていることを特徴とする先付工法用タイル目地材を提供する。
【0011】
また、本発明は、前記目的を達成するため、タイル付きプレキャストコンクリート板の製造に用いられる先付工法用タイル目地材の製造方法において、ポリオレフィン系樹脂未発泡シートの両面に電子線照射処理を施す電子線照射処理工程と、前記ポリオレフィン系樹脂未発泡シートを発泡させてポリオレフィン系樹脂発泡シートを得る発泡工程と、前記ポリオレフィン系樹脂発泡シートの片面をシートを加熱した状態でロールで押圧する平滑化処理工程と、前記平滑化処理を施したポリオレフィン系樹脂発泡シートを目地材に加工する目地材作製工程とを具備することを特徴とする先付工法用タイル目地材の製造方法を提供する。
【0012】
本発明の目地材を形成するポリオレフィン系樹脂発泡シートとしては、強度、使い易さ、コストなどの面から、独立気泡構造のポリエチレン架橋発泡シート、ポリプロピレン架橋発泡シート、無架橋ポリエチレン発泡シート等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
本発明の目地材を形成するポリオレフィン系樹脂発泡シートとしては、密度0.05〜0.2g/cm、特に0.05〜0.1g/cmのものを用いることが好ましい。密度が0.05g/cm未満であると、発泡体の機械的強度やこしが低下し、剥離時にちぎれなどにより作業性が悪くなることがあり、密度が0.2g/cmを超えると、柔軟性が低下して作業性が悪くなり、また発泡体の表面状態が悪くなることがある。
【0014】
本発明の目地材の形状、大きさなどは、目的とするタイル付きプレキャストコンクリート板の形状、大きさなどに対応して適宜設定することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の先付工法用タイル目地材は、ポリオレフィン系樹脂未発泡シートの両面に電子線照射処理を施した後、上記シートを発泡させるので、両面の表面強度が非常に高い。そのため、タイル表面や目地部に目地材のくずが張り付くことがなく、高水圧洗浄処理を施す工程などで時間やコストを必要以上に費やしたり、目地部がその工程により粗雑になったりすることがない。
【0016】
また、本発明の先付工法用タイル目地材は、ポリオレフィン系樹脂発泡シートの片面をシートを加熱した状態でロールで押圧することにより平滑化しているので、この面の平滑性が非常に高い。そのため、この面を基材側面とすることにより、基材との間に十分な接着力が得られ、剥離上の問題が生じないという効果を得ることができる。
【0017】
さらに、本発明の先付工法用タイル目地材は、ポリオレフィン系樹脂発泡シートの片面は平滑化処理を施していないので、この面は粗面となっている。そのため、この面をコンクリート側面とすることにより、目地部のコンクリート面が粗面に仕上がるため、コンクリート面の色ムラを目立ちにくくすることができるという効果を得ることができる。すなわち、目地材のコンクリート側面が平滑であると、目地部のコンクリート面が平滑に仕上がるため、コンクリート面の色ムラが目立ちやすくなるが、本発明によればこのような不都合を解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明の実施の形態を示す。本発明の先付工法用タイル目地材は、例えば下記の手順で製造することができる。
【0019】
(1)化学架橋剤で架橋したポリエチレン未発泡シートの両面に電子線照射処理を施す(電子線照射処理工程)。電子線照射処理条件は、例えば、加速電圧300kv、照射線量50kGyとすることができる。
【0020】
(2)上記ポリエチレン未発泡シートを発泡させてポリエチレン架橋発泡シートを得る(発泡工程)。この場合、例えば、上記ポリエチレン未発泡シートに発泡剤を含有させておき、このポリエチレン未発泡シートを加熱発泡炉内で加熱発泡させることができる。上記ポリエチレン架橋発泡シートの密度は0.05〜0.2g/cm、発泡倍率は5〜20倍とすることが適当である。
【0021】
(3)上記ポリオレフィン系樹脂発泡シートの片面をヒータで400〜500℃程度に加熱した後、上記ポリオレフィン系樹脂発泡シートの片面を冷却ロールで押圧して成形することにより平滑化する(平滑化処理工程)。この場合、冷却ロールの温度は300〜400℃とすることが適当である。
【0022】
(4)平滑化処理を施したポリオレフィン系樹脂発泡シートのタイル挿入部分をトムソン刃などを使用して打ち抜くことにより、格子状の目地材を作製する(目地材作製工程)。また、棒状の目地材を作製してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】タイル付きプレキャストコンクリート板の製造工程を説明する説明図である。
【図2】目地材の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0024】
10 基材
12 粘着剤塗布面
14 タイル挿入部分
16 目地材
18 タイル
20 コンクリート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイル付きプレキャストコンクリート板の製造に用いられる先付工法用タイル目地材において、前記目地材はポリオレフィン系樹脂発泡シートからなり、かつ、前記ポリオレフィン系樹脂発泡シートの両面には電子線照射処理がシートの発泡前に施されているとともに、前記ポリオレフィン系樹脂発泡シートの片面にはシートを加熱した状態でロールで押圧する平滑化処理がシートの発泡後に施されていることを特徴とする先付工法用タイル目地材。
【請求項2】
前記ポリオレフィン系樹脂発泡シートの密度は0.05〜0.2g/cmであることを特徴とする請求項1に記載の先付工法用タイル目地材。
【請求項3】
タイル付きプレキャストコンクリート板の製造に用いられる先付工法用タイル目地材の製造方法において、ポリオレフィン系樹脂未発泡シートの両面に電子線照射処理を施す電子線照射処理工程と、前記ポリオレフィン系樹脂未発泡シートを発泡させてポリオレフィン系樹脂発泡シートを得る発泡工程と、前記ポリオレフィン系樹脂発泡シートの片面をシートを加熱した状態でロールで押圧する平滑化処理工程と、前記平滑化処理を施したポリオレフィン系樹脂発泡シートを目地材に加工する目地材作製工程とを具備することを特徴とする先付工法用タイル目地材の製造方法。
【請求項4】
前記ポリオレフィン系樹脂発泡シートの密度は0.05〜0.2g/cmであることを特徴とする請求項3に記載の先付工法用タイル目地材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−150113(P2009−150113A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−328644(P2007−328644)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】