説明

先詰判定装置、コンピュータプログラム及び先詰判定方法

【課題】先詰まりの有無を精度良く判定することができる先詰判定装置、コンピュータプログラム及び先詰判定方法を提供する。
【解決手段】車両発進波到達時刻特定部17は、流入路に対する青信号開始時点に発生した車両発進波が、車両感知器が設置された地点に到達する第1時点を特定する。車両停止波到達時刻特定部18は、流入路に対する当該青信号の次の赤信号開始時点に発生した車両停止波が、車両感知器が設置された地点に到達する第2時点を特定する。通過車両台数検出部19は、第1時点から第2時点までの間に、車両感知器が設置された地点を通過した車両の台数を検出する。先詰判定部20は、通過した車両の台数が所定の台数閾値より少ない場合、先詰まりありと判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交差点に流入する流入路を走行する車両が交差点下流での渋滞により青信号でも交差点を通行できない先詰まりの有無を判定する先詰判定装置、該先詰判定装置を実現するためのコンピュータプログラム及び先詰判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
交通信号の目的は、交差点における交通流を最適化することにより渋滞改善などの円滑性、あるいは交通事故防止などの安全性を向上させることである。円滑性の観点からは、交差点を直進、左折及び右折する交通量に応じて、適切な青信号時間(青信号の表示時間)を与えることが必要である。そして、青信号時間は、交差点に各方向から流入(到着)する流入路の交通需要に応じて計算される。
【0003】
青信号時間の計算方法は、例えば、予め青信号時間を決めずに車群の切れ目を判定し、車群の切れ目が生じた時点で青信号時間を打ち切る方法、予め信号パターンを準備しておき、交通需要に応じて最適な信号パターンを選択する方法、あるいは交通需要を指標化して青信号時間を計算する方法などがある。これらの青信号時間の計算方法には、交差点に到着する交通量が多い方向、あるいは交差点での待ち台数が多い方向により多くの青信号時間を与えるという考え方に共通点がある。
【0004】
このような考え方は、渋滞発生原因となる交差点が予め特定されており、特定された交差点の渋滞改善のみに注力することが可能な交通状況においては妥当なものである。しかし、都市部では、幹線道路が集中し、またこれらの幹線を結ぶ主要地方道などの道路も交通量が多い。このような交通条件下では、渋滞発生原因となり得る交差点が隣接しており、特定された交差点の下流側に交差点で発生した渋滞が、その上流側の交差点に達して、上流交差点での交差側の道路をも巻き込んで渋滞が更に伸張する。
【0005】
また、渋滞の原因は交差点の他に、駐車場の出入口、交通事故、工事などの場合もあり、これらも渋滞の原因となって渋滞の末尾が上流側の交差点に達して、同様の現象が生じる。このように、何らかの原因で発生した下流での渋滞が上流の交差点に達し、交差点に流入する流入路に対して青信号(通行権)を与えても、車両がその交差点を通過できない状態を先詰まりと称する。
【0006】
先詰まりが発生した場合、青信号時間を長くしても有効ではないので、青信号を打ち切り、先詰まりの発生していない他の方向に青信号与えること、渋滞の先頭となっている交差点の青信号時間を調整すること、渋滞の原因となっている駐車場の出入口を閉鎖すること、交通事故又は工事などの情報を提供して適切な迂回路へ導くことなどの方法が考えられる。しかし、何れにせよ、渋滞発生原因となり得る交差点で先詰まりが発生していることを迅速に検知して対策を講ずることが重要である。
【0007】
先詰まりを感知する方法として、例えば、以下のような方法がある。第1の方法は、例えば、CCDカメラを備えた画像型車両感知器を交差点の流入部付近に設置し、車両の挙動を追尾し、青信号であるにも関わらず車両が停止した状態が一定時間以上継続した場合に、先詰まりが発生したと判断するものである。このような車両感知器は、例えば、特許文献1に開示されている。
【0008】
また、第2の方法は、交差点の出口部付近(例えば、流出路の交差点から下流側50m以内)に車両感知器を設置して渋滞を計測し、車両感知器で渋滞を検知した場合に、先詰まりが発生したと判断するものである。また、第3の方法として、交差点の出口部付近、例えば、流出路の交差点から下流側50m以内に車両感知器が設置されていない場合、流出路で当該交差点に最も近い車両感知器での渋滞判定結果から、先詰まり発生の有無を推定する。そして流出路での渋滞末尾推定位置と交差点との距離が、例えば、200m以下(すなわち、流出路での渋滞末尾の位置と上流の交差点との距離が200m以内)ならば、先詰まりありと判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−44788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述の第1及び第2の方法にあっては、交差点の出口部付近(流出路の交差点付近)に車両感知器を設置する必要があるが、交差点の出口部付近に車両感知器が設置されていない場合には、第3の方法を採用せざるを得ない。しかし、第3の方法での渋滞末尾位置の推定の精度は高くなく、かつ、推定した渋滞末尾位置が上流の交差点から200m以内であるときに先詰まりありと判定(推定)しているので、推定の上に推定を重ねることになり、従来の先詰まりの判定精度も十分なものではなかった。
【0011】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、先詰まりの有無を精度良く判定することができる先詰判定装置、該先詰判定装置を実現するためのコンピュータプログラム及び先詰判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1発明に係る先詰判定装置は、交差点に流入する流入路を走行する車両が該交差点下流での渋滞により青信号でも前記交差点を通行できない先詰まりの有無を判定する先詰判定装置であって、前記交差点に設置された信号灯器の信号情報を取得する信号情報取得手段と、前記信号灯器の前記流入路に対する青信号開始時点から所定時間が経過した第1時点を特定する第1時点特定手段と、前記青信号の次の赤信号開始時点から所定時間が経過した第2時点を特定する第2時点特定手段と、前記第1時点から第2時点までの間に、前記流入路の前記交差点から特定距離にある特定地点を前記交差点に向かって走行した車両の台数を検出する車両台数検出手段と、先詰まりの有無を判定する先詰判定手段とを備え、該先詰判定手段は、前記車両台数検出手段で検出した車両の台数が所定の台数閾値より少ない場合、先詰まりありと判定するように構成してあることを特徴とする。
【0013】
第2発明に係る先詰判定装置は、第1発明において、前記流入路の前記特定地点より上流側の渋滞長を算出する渋滞長算出手段と、該渋滞長算出手段で算出した渋滞長に対応する台数の車両が前記信号灯器の前記流入路に対する青信号時間の間に前記特定地点を通過できるか否かを判定する通過可否判定手段と、該通過可否判定手段で通過できないと判定した場合、前記先詰判定手段による判定を行うように制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0014】
第3発明に係る先詰判定装置は、第1発明又は第2発明において、前記特定地点に設置された車両感知器で計測した感知パルスに関する情報を取得する感知パルス情報取得手段を備え、前記先詰判定手段は、前記第1時点から第2時点までの間で、前記感知パルス情報取得手段で取得した感知パルスのパルス間隔が第1間隔閾値より長い場合、先詰まりありと判定するように構成してあることを特徴とする。
【0015】
第4発明に係る先詰判定装置は、第3発明において、前記第1時点後、前記感知パルス情報取得手段で取得した感知パルスのパルス間隔が第2間隔閾値(<第1間隔閾値)より長く、該感知パルスのパルス幅がパルス幅閾値より短くなった時点までに、前記特定地点を通過した車両の台数を計数する台数計数手段と、該台数計数手段で計数した台数に停止車両の車頭距離を乗算した値に基づいて渋滞末尾を推定する渋滞末尾推定手段とを備え、前記制御手段は、前記通過判定手段で通過できると判定した場合、前記渋滞末尾推定手段による渋滞末尾の推定を行うべく制御するように構成してあることを特徴とする。
【0016】
第5発明に係る先詰判定装置は、第1発明乃至第4発明のいずれか1つにおいて、前記流入路の前記特定地点より上流側で停止している車両が該特定地点を通過するのに要する所要時間を算出する所要時間算出手段と、前記流入路の1又は複数の地点に設けられた車両感知器から該車両感知器の感知領域を通過する車両の速度を取得する速度取得手段と、前記所要時間算出手段で算出した所要時間が前記流入路に対する青信号時間よりも長い場合、前記速度取得手段で取得した前記地点での速度に基づいて、前記流入路の渋滞区間を推定する渋滞区間推定手段とを備えることを特徴とする。
【0017】
第6発明に係る先詰判定装置は、第1発明乃至第5発明のいずれか1つにおいて、前記台数閾値は、前記信号灯器の前記流入路に対する青信号時間に該流入路の飽和交通流率及び所定係数を乗算した値であることを特徴とする。
【0018】
第7発明に係る先詰判定装置は、第1発明乃至第6発明のいずれか1つにおいて、前記第1時点は、前記流入路に対する青信号の開始時点から所定時間が経過した時点であり、前記第2時点は、前記青信号の次の赤信号の開始時点から所定時間が経過した時点であることを特徴とする。
【0019】
第8発明に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、交差点に流入する流入路を走行する車両が該交差点下流での渋滞により青信号でも前記交差点を通行できない先詰まりの有無を判定させるためのコンピュータプログラムであって、コンピュータに、前記交差点に設置された信号灯器の前記流入路に対する青信号開始時点から所定時間が経過した第1時点を特定するステップと、前記青信号の次の赤信号開始時点から所定時間が経過した第2時点を特定するステップと、前記第1時点から第2時点までの間に、前記流入路の前記交差点から特定距離にある特定地点を前記交差点に向かって走行した車両の台数を検出するステップと、検出した車両の台数が所定の台数閾値より少ない場合、先詰まりありと判定するステップとを実行させることを特徴とする。
【0020】
第9発明に係る先詰判定方法は、交差点に流入する流入路を走行する車両が該交差点下流での渋滞により青信号でも前記交差点を通行できない先詰まりの有無を判定する先詰判定装置による先詰判定方法であって、前記交差点に設置された信号灯器の信号情報を取得するステップと、前記信号灯器の前記流入路に対する青信号開始時点から所定時間が経過した第1時点を特定するステップと、前記青信号の次の赤信号開始時点から所定時間が経過した第2時点を特定するステップと、特定された第1時点から第2時点までの間に、前記流入路の前記交差点から特定距離にある特定地点を前記交差点に向かって走行した車両の台数を検出するステップと、検出された車両の台数が所定の台数閾値より少ない場合、先詰まりありと判定するステップとを含むことを特徴とする。
【0021】
第1発明、第8発明及び第9発明にあっては、交差点に設置された信号灯器の信号情報を取得し、信号灯器の流入路に対する青信号開始時点から所定時間T1が経過した第1時点、及び当該青信号の次の赤信号開始時点から所定時間T2が経過した第2時点を特定する。第1時点から第2時点までの間に、流入路の交差点から特定距離にある特定地点を交差点に向かって走行した車両の台数を検出する。例えば、流入路の特定地点には車両を検出するための車両感知器を設置しておく。所定時間T1は、交差点手前において赤信号で停止していた複数の停止車両が、青信号開始時から交差点へ向かって走行する際に移動開始する先頭車両の軌跡である車両発進波が特定地点に到達するのに要する時間である。第1時点は、車両発進波が特定地点に到達した時点である。また、所定時間T2は、当該青信号の次の赤信号開始時点から交差点手前において停止する複数の停止車両の最後尾の車両の軌跡である車両停止波が特定地点に到達するのに要する時間である。第2時点は、車両停止波が特定地点に到達した時点である。
【0022】
第1時点から第2時点までの間に特定地点を交差点に向かって走行した車両の台数が所定の台数閾値より少ない場合、先詰まりありと判定する。先詰まりがない場合には、車両発進波が特定地点に到達した第1時点以降は、当該特定地点を交差点に向かって走行する車両は、特定地点の下流側及び上流側の渋滞の有無に応じて、例えば、飽和流、近飽和流あるいは非飽和流で渋滞なく流れるので、特定地点を通過できる車両は増加し、車両停止波が特定地点に到達する第2時点まで複数の車両が特定地点を通過する。一方、先詰まりがある場合、交差点の下流側(当該交差点の流出路)の渋滞が伸長し、当該交差点の流入路に対する信号が青信号でも渋滞末尾位置が流入路上流側へ移動する。すなわち、車両停止波が特定地点に到達する第2時点より前に先詰まりによる渋滞末尾が特定地点に到達するため、特定地点を通過できる車両の台数は減少する。
【0023】
すなわち、第1時点から第2時点までの間に特定地点を交差点に向かって走行した車両の台数が所定の台数閾値より少ない場合、先詰まりありと判定することができ、当該車両の台数が所定の台数閾値より多い場合、先詰まりなしと判定することができる。これにより、例えば、先詰まりの有無を判定する交差点の出口部付近(流出路付近)に車両感知器が設置されていない場合でも、当該交差点での渋滞が先詰まりによる渋滞か、それ以外の渋滞であるかを判別することができ、先詰まりの有無を精度良く判定することができる。
【0024】
第2発明にあっては、流入路の特定地点(例えば、車両感知器が設置された地点)より上流側の渋滞長(特定地点と渋滞末尾との距離)を算出し、算出した渋滞長に対応する台数の車両が、信号灯器の流入路に対する青信号時間の間に特定地点を通過できるか否かを判定する。流入路での渋滞区間長は、任意の方法で推定すればよい。推定した渋滞区間長から特定地点の交差点からの距離(特定距離)を差し引くことにより、特定地点の上流側の渋滞長を算出することができる。渋滞長に対応する車両の台数は、例えば、算出した渋滞長を停止時の車頭距離で除算することにより求めることができる。渋滞長に対応する台数の車両が青信号時間の間に特定地点を通過できるか否かは、例えば、車両の台数を飽和交通流率(例えば、0.5台/秒)で除算して、渋滞車両が特定時点を通過するのに要する所要時間を算出し、算出した所要時間が青信号時間より長い(大きい)場合には、通過できないと判定し、算出した所要時間が青信号時間より短い(小さい)場合には、通過できると判定する。
【0025】
特定地点より上流で渋滞している車両が青信号時間の間に特定時点を通過することができないと判定した場合、先詰まり判定を行う。一般に、交差点の流出路(交差点の下流)での渋滞により先詰まりが発生した場合、先詰まりが発生した方向の車両(例えば、先詰まりで渋滞している流入路の車両)と交差点での交差側の道路から左折又は右折して当該流出路へ向かう車両とが、流出路への進入権を奪い合うので、先詰まりが発生した方向の渋滞伸長速度が速くなり、流入路での渋滞末尾の交差点からの距離が長くなる。一方、先詰まりが発生していない状態でも、交差点からの流出台数よりも交差点への流入台数が多い場合には、流入路での渋滞末尾の交差点からの距離は長くなるが、青信号を与えれば渋滞長の長さはある程度短くなる。そこで、特定地点よりも上流側の渋滞長が長くなり、青信号時間の間に特定時点を通過することができない程度以上に渋滞車両が溜まった状態で先詰まりの有無を判定する。これにより、先詰まりの判定を最適なタイミングで行うことができる。
【0026】
第3発明にあっては、特定地点に設置された車両感知器で計測した感知パルスに関する情報を取得し、第1時点(車両発進波が特定地点に到達した時点)から第2時点(車両停止波が特定地点に到達した時点)までの間で、取得した感知パルスのパルス間隔(例えば、パルス間隔の最大値)が第1間隔閾値(例えば、10秒など)より長い場合、先詰まりありと判定する。車両感知器は、車両の感知領域における車両の有無を計測して矩形状の感知パルスを出力する。例えば、車両が感知領域に存在しているときは、感知パルスがオンであり、車両が感知領域に存在しないときは、感知パルスがオフである。従って、順次通過する2台の車両の時間間隔は、感知パルスがオンになった時点から一旦オフになり次にオンになるまでの時間であり、感知パルスのパルス間隔に相当する。
【0027】
交通量が少ないときは、感知パルスオフの時間の割合が多くなり、そのときの車両の速度は一般的に速いので感知パルスオンの時間は短い。また、交通量が多いときは、感知パルスオフの時間の割合が少なくなり、そのときの車両の速度は一般的に遅いので感知パルスオンの時間は長い。また、先詰まりで渋滞して車両が停止しているときは、車両が感知領域で停止していれば感知パスルオンの時間が非常に長くなるか、あるいは感知領域で車両が停止していれば感知パルスオフの時間が非常に長くなり、感知パルスのパルス間隔(通過する2台の車両の時間間隔)は非常に長くなる。先詰まりがある場合には、交差点の下流側(当該交差点の流出路)の渋滞が伸長し、当該交差点の流入路に対する信号が青信号でも渋滞末尾位置が流入路上流側へ移動する。すなわち、車両停止波が特定地点に到達する第2時点より前に先詰まりによる渋滞末尾が特定地点に到達するため、特定地点で車両が停止する場合が起こり得る。したがって、第1時点から第2時点までの間で、感知パルスのパルス間隔が第1間隔閾値より長い場合、先詰まりありと判定することができ、精度良く先詰まりを判定することができる。
【0028】
第4発明にあっては、特定地点より上流で渋滞している車両が青信号時間の間に特定時点を通過することができると判定した場合、渋滞末尾位置の推定を行う。渋滞末尾位置の推定は以下のようにすることができる。第1時点(車両発進波が特定地点に到達した時点)から、取得した感知パルスのパルス間隔が第2間隔閾値(例えば、4.5秒、第1間隔閾値より小さい)より長く、感知パルスのパルス幅がパルス幅閾値(例えば、0.8秒など)より短くなった時点までの間に、特定地点を通過した車両の台数を計数する。車両感知器が設置された特定地点に車両発進波が到達(第1時点)すると、例えば、渋滞で停止していた車両が車両感知器下を飽和流で流れるようになり、渋滞末尾の車両が車両感知器下を通過するまで飽和流での車両の通過が継続する。車両が飽和流で流れる場合には、感知パルスのパルス間隔は比較的短い。そして、渋滞末尾の車両が車両感知器を通過した後は、特定地点を通過する車両は近飽和流又は非飽和流で流れるようになりパルス間隔は長くなり、速度も速くなるのでパルス幅も短くなる。そこで、車両発進波が特定地点に到達した時点から、パルス間隔が第2間隔閾値(例えば、4.5秒、第1間隔閾値より小さい)より長く、パルス幅がパルス幅閾値(例えば、0.8秒など)より短くなった時点までの間に、特定地点を通過した車両を、特定地点から渋滞末尾までの間で停止していた車両の台数として計数する。そして、計数した台数に停止車両の車頭距離を乗算した値に基づいて、特定地点より上流側の渋滞末尾を推定する。
【0029】
上述のように、特定地点より上流で渋滞している車両が青信号時間の間に特定時点を通過することができると判定した場合、すなわち、先詰まりがないと考えられる場合に、特定地点に設置された車両感知器の感知パルスの情報(パルス間隔及びパルス幅)を利用することにより、精度良く渋滞末尾位置の推定を行うことができる。
【0030】
第5発明にあっては、流入路の特定地点より上流側で停止している車両が当該特定地点を通過するのに要する所要時間を算出し、算出した所要時間が当該流入路に対する青信号時間よりも長い場合、当該流入路の1又は複数の地点に設けられた車両感知器の感知領域を通過する車両の速度に基づいて、流入路の渋滞区間を推定する。なお、所定時間内で感知パルスの数を計測することにより交通量を求めることができ、感知パルスのパルス幅を累積することにより占有率を求めることができる。車両の速度(平均速度)は、交通量と占有率の比に実効車長(例えば、感知領域+平均車長)を乗算して求めることができる。また、車両の平均速度と渋滞度との関係を予め定めておく。例えば、平均速度V1が10km/hであれば渋滞度が1.0とし、平均速度V2が20km/hであれば渋滞度が0.5とし、平均速度V3が30km/h以上であれば渋滞度が0.0とする。流入路上の各車両感知器で得られた渋滞度を流入路の車両感知器の配置に沿って並べ、渋滞度が0.5以上の区間を渋滞区間とし、渋滞度が0.5未満となる地点を渋滞末尾として渋滞区間を推定する。より具体的には、渋滞度が0.5以上の車両感知器と渋滞度が0.5未満の車両感知器との間で渋滞度を結んだときに渋滞度が0.5となる地点が渋滞末尾である。これにより、渋滞区間を推定することができる。
【0031】
第6発明にあっては、台数閾値は、流入路に対する青信号時間に当該流入路の飽和交通流率及び所定係数を乗算した値である。これにより、青信号時間に通行できる台数に対する所要の割合の台数を台数閾値とすることができ、流入路の交通量などの交通状況に応じて、先詰まりの判定基準を設定することができる。
【0032】
第7発明にあっては、第1時点は、流入路に対する青信号の開始時点から所定時間が経過した時点であり、例えば、車両発進波が特定地点に到達した時点である。第2時点は、当該青信号の次の赤信号の開始時点から所定時間が経過した時点であり、例えば、車両停止波が特定地点に到達した時点である。第1時点及び第2時点を特定することにより、先詰まりの有無を精度良く判定することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、先詰まりの有無を精度良く判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本実施の形態に係る先詰判定装置で判定する先詰まりの様子の一例を示す模式図である。
【図2】交差点への流入路の一例を示す模式図である。
【図3】本実施の形態の先詰判定装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図4】感知パルスの一例を示す説明図である。
【図5】平均速度に基づく渋滞区間の推定方法の一例を示す説明図である。
【図6】先詰まりがない場合の車両の走行挙動の一例を示す説明図である。
【図7】先詰まりがある場合の車両の走行挙動の一例を示す説明図である。
【図8】流入路での渋滞状態の例を示す説明図である。
【図9】図8の各渋滞状態の計算例を示す説明図である。
【図10】本実施の形態の先詰判定装置による先詰まり判定の一例を示す説明図である。
【図11】本実施の形態の先詰判定装置による渋滞末尾位置推定の一例を示す説明図である。
【図12】本実施の形態の先詰判定装置による先詰まり実施可否判定の処理手順を示すフローチャートである。
【図13】本実施の形態の先詰判定装置による先詰まり判定の処理手順を示すフローチャートである。
【図14】本実施の形態の先詰判定装置による先詰まり判定の処理手順を示すフローチャートである。
【図15】本実施の形態の先詰判定装置による渋滞末尾位置推定の処理手順を示すフローチャートである。
【図16】本実施の形態の先詰判定装置による渋滞末尾位置推定の処理手順を示すフローチャートである。
【図17】本実施の形態の先詰判定装置による先詰まり判定の他の例の処理手順を示すフローチャートである。
【図18】本実施の形態の先詰判定装置による先詰まり判定の他の例の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明を実施の形態を示す図面に基づいて説明する。図1は本実施の形態に係る先詰判定装置で判定する先詰まりの様子の一例を示す模式図である。図1に示すように、信号機(信号灯器)が設置された交差点300に4つの道路が交差している。一の道路を交差点への流入路とした場合、該流入路の交差点より下流の同じ進行方向の道路を流出路と称し、交差点で交差する2つの道路を交差側道路と称する。
【0036】
図1に示すように、交差点の下流側(流出路)で何らかの原因で発生した渋滞が、その上流側の交差点300に達して、交差点300の流入路だけでなく交差側の道路をも巻き込んで渋滞が更に伸張する。そして、交差点300に流入する流入路に対して青信号(通行権)を与えても、車両がその交差点を通過できない状態を先詰まりと称する。本実施の形態の先詰判定装置は、交差点300の流入路で先詰まりが発生しているか否かを迅速に判定するものである。
【0037】
図2は交差点300への流入路の一例を示す模式図である。図2に示すように、交差点300への流入路には、交差点からの距離がL1、L2、L3の地点にそれぞれ車両感知器201、202、203を設置してある。なお、交差点からの距離は、交差点の停止線からの距離、交差点内の任意の地点(例えば、交差点の中央、交差点の出口付近など)からの距離とすることができる。距離L1、L2、L3は、例えば、それぞれ150m、200m、350mである。交差点300に最も近い車両感知器201を第1車両感知器、さらに上流側の車両感知器202、203をそれぞれ第2車両感知器、第3車両感知器とも称する。第1車両感知器201が設置された地点を特定地点と称し、特定地点の交差点からの距離L1を特定距離とも称する。なお、図2の例では、車両感知器の数が3個であるが、車両感知器の数は3個に限定されるものではない。
【0038】
図3は本実施の形態の先詰判定装置100の構成の一例を示すブロック図である。図3に示すように、先詰判定装置100は、装置全体を制御する制御部10、感知パルス情報取得部11、車両速度算出部12、渋滞区間推定部13、渋滞長算出部14、車両通過可否判定部15、信号情報取得部16、車両発進波到達時刻特定部17、車両停止波到達時刻特定部18、通過車両台数検出部19、先詰判定部20、パルス間隔算出部21、パルス幅算出部22、渋滞末尾位置推定部23などを備える。
【0039】
感知パルス情報取得部11は、特定地点に設置された車両感知器で計測した感知パルスに関する情報を取得する感知パルス情報取得手段としての機能を有する。感知パルス情報取得部11は、交差点300からの距離がL1の特定地点に設置された車両感知器201から感知パルスの情報を取得する。また、感知パルス情報取得部11は、車両感知器202、203からも感知パルスの情報を取得する。
【0040】
図4は感知パルスの一例を示す説明図である。車両感知器201は、車両の感知領域における車両の有無を計測して矩形状の感知パルスを出力する。図4Aに示すように、例えば、車両が感知領域に存在しているときは、感知パルスがオンであり、図4Bに示すように、車両が感知領域に存在しないときは、感知パルスがオフである。図4Cに示すように、車両感知器201の下を車両が通過する都度、感知パルスがオンとなり、車両が通過している間、感知パルスはオン状態であり、車両が通過後は、感知パルスはオフとなる。従って、順次通過する2台の車両の時間間隔は、感知パルスがオフの時間であり、感知パルスのパルス間隔に相当する。また、車両が車両感知器の下に存在している時間が、感知パルス幅に相当する。他の車両感知器202、203も同様である。パルス幅とパルス間隔の合計値が実時間となる。
【0041】
交通量が少ないときは、感知パルスオフの時間の割合が多くなり、そのときの車両の速度は一般的に速いので感知パルスオンの時間は短い。また、交通量が多いときは、感知パルスオフの時間の割合が少なくなり、そのときの車両の速度は一般的に遅いので感知パルスオンの時間は長い。また、先詰まりで渋滞して車両が停止しているときは、車両が感知領域で停止していれば感知パスルオンの時間が非常に長くなるか、あるいは感知領域で車両が停止していれば感知パルスオフの時間が非常に長くなり、感知パルスのパルス間隔(通過する2台の車両の時間間隔)は非常に長くなる。
【0042】
車両速度算出部12は、流入路の1又は複数の地点に設けられた車両感知器から該車両感知器の感知領域を通過する車両の速度を取得する速度取得手段としての機能を有する。車両速度算出部12は、車両感知器201〜203で計測した感知パルスに基づいて車両の平均速度を算出する。平均速度は、まず、所定時間内で感知パルスの数を計測することにより交通量を求め、感知パルスのパルス幅を累積することにより占有率を求め、交通量と占有率の比に実効車長(例えば、感知領域+平均車長)を乗算して求めることができる。
【0043】
渋滞区間推定部13は、車両速度算出部12で算出した車両感知器の設置地点での速度に基づいて、前記流入路の渋滞区間を推定する渋滞区間推定手段としての機能を有する。
【0044】
図5は平均速度に基づく渋滞区間の推定方法の一例を示す説明図である。なお、図5の例では、交差点300への流入路上で車両感知器を5個設けている場合を示す。まず、車両の平均速度と渋滞度との関係を予め定めておく。例えば、平均速度V1が10km/hであれば渋滞度が1.0とし、平均速度V2が20km/hであれば渋滞度が0.5とし、平均速度V3が30km/h以上であれば渋滞度が0.0とする。
【0045】
図5に示すように、流入路上の各車両感知器で得られた渋滞度を流入路の車両感知器の配置に沿って並べ、渋滞度が0.5以上の区間を渋滞区間とし、渋滞度が0.5未満となる地点を渋滞末尾として渋滞区間を推定する。より具体的には、渋滞度が0.5以上の車両感知器と渋滞度が0.5未満の車両感知器との間で渋滞度を結んだときに渋滞度が0.5となる地点が渋滞末尾であり、交差点と渋滞末尾との間が推定渋滞区間である。
【0046】
次に、流入路を走行する車両の走行状態を先詰まりがない場合と先詰まりがある場合とに分けて説明する。図6は先詰まりがない場合の車両の走行挙動の一例を示す説明図である。図6において、左から右の方向に交差点300からの距離を示し、上から下方向に時間の経過を示す。交差点300では、時間の経過とともに信号が切り替わる。説明を簡略化するため、信号は青信号、赤信号、青信号の順序で切り替わるものとする。また、図6においては、右上方から左下方への線分は車両の走行軌跡を示す。なお、車両の走行軌跡は、流入路を走行する全車両のものではなく、適宜抜粋しているものとする。
【0047】
図6に示すように、交差点300で流入路に対する信号灯器が赤信号になると(赤信号開始時点)、最初に交差点手前で停止した車両の後続の車両が次々と停止する。このため、交差点手前において停止する複数の停止車両の最後尾の車両の軌跡が車両停止波となって交差点300から流入路の上流側へ移動する。また、交差点300から車両停止波までの距離が停止車両の待ち行列長(待ち台数)を表す。
【0048】
そして、交差点300での信号が赤信号から青信号に切り替わると(青信号開始時点)、交差点手前で停止していた先頭車両が移動し始め、後続の停止車両も順次移動し始める。交差点手前において赤信号で停止していた複数の停止車両が、青信号開始時から交差点へ向かって走行する際に移動開始する先頭車両の軌跡が車両発進波となって交差点300から流入路の上流側へ移動する。そして、車両発進波が渋滞末尾に到達した時点以降は、流入路を走行する後続の車両は停止することなく走行することができる。
【0049】
図7は先詰まりがある場合の車両の走行挙動の一例を示す説明図である。先詰まりがある場合は、交差点300の下流側の下流交差点、交差点300の流出路で渋滞が発生し、かかる渋滞が交差点300の上流の流入路にまで到達する。図7に示すように、下流交差点で発生した渋滞の末尾が交差点300まで達していない場合には、図6の場合と同様に、車両発進波が渋滞末尾に到達した時点以降は、車両感知器201の上流側の待ち車両が捌けた状態となる(図7の符号S1で示す)。この状態では、車両は近飽和流又は非飽和流で車両感知器201の下を通過する。
【0050】
一方、下流交差点で発生した渋滞の末尾が交差点300まで達し、さらに交差点300の上流側の流入路まで伸長した場合には、交差点300の信号灯器が青信号である場合でも、下流交差点からの車両停止波が、車両感知器201まで、あるいは車両感知器201より上流側まで達する。このため、交差点300からの車両停止波が到達する前であっても、先詰まりにより車両が前に進めない状態となる(図7の符号S2で示す)。
【0051】
すなわち、図7の符号S2で示す状態(車両が前に進めない状態)は、交差点300の流入路に対する信号灯器が青信号であっても車両が前に進めないので、先詰まりが原因の渋滞である。逆に、青信号で車両が前に進める場合には、図7の符号S2で示す状態は発生しない。従って、車両感知器201より上流側の渋滞で停止している車両が青信号時間の間に車両感知器201を通過することができるか否かで先詰まりの判定処理を行うか否かを判断することが可能となる。
【0052】
すなわち、車両感知器201より上流側の渋滞で停止している車両が青信号時間の間に車両感知器201を通過することができない場合には、先詰まりの可能性があるので、先詰まりの有無を判定する処理を実施することができる。また、車両感知器201より上流側の渋滞で停止している車両が青信号時間の間に車両感知器201を通過することができる場合には、先詰まりの可能性は低いので、後述の渋滞末尾位置推定の処理を実施する。
【0053】
次に、先詰まり有無の判定を実施するか否かを判定する先詰まり実施可否判定処理について説明する。
【0054】
前述のように、渋滞区間推定部13は、流入路の渋滞区間を推定する。
【0055】
渋滞長算出部14は、流入路の特定地点より上流側の渋滞長を算出する渋滞長算出手段としての機能を有する。渋滞長算出部14は、渋滞区間推定部13で推定した渋滞区間の長さから車両感知器201と交差点との距離L1を差し引いた値を車両感知器201が設置された特定地点から上流側の渋滞長として算出する。
【0056】
車両通過可否判定部15は、渋滞長算出部14で算出した渋滞長に対応する台数の車両が流入路に対する青信号時間の間に特定地点を通過できるか否かを判定する通過可否判定手段としての機能を有する。渋滞長に対応する車両の台数は、例えば、渋滞長算出部14で算出した渋滞長を停止時の車頭距離で除算することにより求めることができる。渋滞長に対応する台数の車両が青信号時間の間に特定地点を通過できるか否かは、例えば、車両の台数を飽和交通流率(例えば、0.5台/秒)で除算して、渋滞車両が特定時点を通過するのに要する所要時間を算出し、算出した所要時間が青信号時間より長い(大きい)場合には、通過できないと判定し、算出した所要時間が青信号時間より短い(小さい)場合には、通過できると判定する。
【0057】
制御部10は、車両通過可否判定部15で特定地点(車両感知器201の設置地点)より上流で渋滞している車両が青信号時間の間に特定時点を通過することができないと判定した場合、先詰判定部20による先詰まり判定を行うべく制御する。なお、先詰まり判定の詳細は後述する。
【0058】
一般に、交差点の流出路(交差点の下流)での渋滞により先詰まりが発生した場合、先詰まりが発生した方向の車両(例えば、先詰まりで渋滞している流入路の車両)と交差点での交差側の道路から左折又は右折して当該流出路へ向かう車両とが、流出路への進入権を奪い合うので、先詰まりが発生した方向の渋滞伸長速度が速くなり、流入路での渋滞末尾の交差点からの距離が長くなる。一方、先詰まりが発生していない状態でも、交差点からの流出台数よりも交差点への流入台数が多い場合には、流入路での渋滞末尾の交差点からの距離は長くなるが、青信号を与えれば渋滞長の長さはある程度短くなる。そこで、特定地点よりも上流側の渋滞長が長くなり、青信号時間の間に特定時点を通過することができない程度以上に渋滞車両が溜まった状態で先詰まりの有無を判定する。これにより、先詰まりの判定を最適なタイミングで行うことができる。
【0059】
また、制御部10は、車両通過可否判定部15で特定地点(車両感知器201の設置地点)より上流で渋滞している車両が青信号時間の間に特定時点を通過することができると判定した場合、渋滞末尾位置推定部23による渋滞末尾位置の推定を行うべく制御する。なお、渋滞末尾位置推定部23による渋滞末尾位置の推定の詳細は後述する。
【0060】
特定地点より上流で渋滞している車両が青信号時間の間に特定時点を通過することができると判定した場合、すなわち、先詰まりがないと考えられる場合に、特定地点に設置された車両感知器の感知パルスの情報(パルス間隔及びパルス幅)を利用することにより、精度良く渋滞末尾位置の推定を行うことができる。
【0061】
図8は流入路での渋滞状態の例を示す説明図である。図8に示すように、流入路には、交差点300から上流側に向かって車両感知器201、202、203がそれぞれ交差点300との距離150m、200m、350mの地点に設置されているとする。状態aは、渋滞末尾と交差点300との距離が150m未満である場合である。状態bは、渋滞末尾と交差点300との距離が150〜199mである場合である。状態cは、渋滞末尾と交差点300との距離が200〜349mである場合である。状態dは、渋滞末尾と交差点300との距離が350m以上である場合である。
【0062】
図9は図8の各渋滞状態の計算例を示す説明図である。図9に示すように、状態aの場合には、実際の渋滞長は150m未満である。状態aの場合は、例えば、車両感知器201で計算した危険度が0.5以下であり、渋滞区間推定部13で推定した渋滞区間の長さは0mである。従って、渋滞長算出部14で算出する車両感知器201より上流側の渋滞長は0mである。また、車両感知器201より上流側の停止車両は0台である。この場合には、渋滞が発生していないので、特段の処理を行う必要はない。
【0063】
次に、状態bの場合には、実際の渋滞長は150〜199mである。状態bの場合は、例えば、車両感知器201で計算した危険度が0.5以上であり、車両感知器202で計算した危険度が0.5以下であり、渋滞区間推定部13で推定した渋滞区間の長さは150mである。なお、図9の例では、簡略化のため、渋滞末尾を車両感知器201、202の間の位置ではなく、車両感知器201の位置としている。従って、渋滞長算出部14で算出する車両感知器201より上流側の渋滞長は0mである。また、車両感知器201より上流側の停止車両は0台である。この場合には、渋滞が発生しているので、渋滞末尾位置推定を行う。
【0064】
次に、状態cの場合には、実際の渋滞長は200〜349mである。状態cの場合は、例えば、車両感知器201、202で計算した危険度が0.5以上であり、車両感知器203で計算した危険度が0.5以下であり、渋滞区間推定部13で推定した渋滞区間の長さは200mである。なお、図9の例では、簡略化のため、渋滞末尾を車両感知器202、203の間の位置ではなく、車両感知器202の位置としている。従って、渋滞長算出部14で算出する車両感知器201より上流側の渋滞長は50m(200m−150m)である。また、例えば、停止時の車頭距離を7mとして、車両感知器201より上流側の停止車両は7台である。7台の停止車両が車両感知器201を通過するのに要する時間は、飽和交通流率を0.5台/秒として14秒である。当該所要時間14秒は、青信号時間(例えば、50秒)より短く、特定地点(車両感知器201の設置地点)より上流で渋滞している車両が青信号時間の間に特定時点を通過することができるので、渋滞末尾位置推定を行う。
【0065】
状態dの場合には、実際の渋滞長は350m以上である。状態dの場合は、例えば、車両感知器201、202、203で計算した危険度が0.5以上であり、渋滞区間推定部13で推定した渋滞区間の長さは350mである。従って、渋滞長算出部14で算出する車両感知器201より上流側の渋滞長は200m(350m−150m)である。また、例えば、停止時の車頭距離を7mとして、車両感知器201より上流側の停止車両は28台である。28台の停止車両が車両感知器201を通過するのに要する時間は、飽和交通流率を0.5台/秒として56秒である。当該所要時間56秒は、青信号時間(例えば、50秒)より長く、特定地点(車両感知器201の設置地点)より上流で渋滞している車両が青信号時間の間に特定時点を通過することができないので、先詰まり判定を行う。
【0066】
次に、先詰まり判定の方法について説明する。信号情報取得部16は、信号情報取得手段としての機能を有し、交差点300に設置された信号灯器の信号情報を取得する。
【0067】
車両発進波到達時刻特定部17は、第1時点特定手段としての機能を有し、信号灯器の流入路に対する青信号開始時点から所定時間T1が経過した第1時点を特定する。第1時点とは、車両発進波が、車両感知器201が設置された地点に到達する時点である。また、所定時間T1は、交差点300と車両感知器201との間の距離を車両発進波速度で除算した値である。
【0068】
車両停止波到達時刻特定部18は、第2時点特定手段としての機能を有し、信号灯器の流入路に対する当該青信号の次の赤信号開始時点から所定時間T2が経過した第2時点を特定する。第2時点とは、車両停止波が、車両感知器201が設置された地点に到達する時点である。また、所定時間T2は、交差点300と車両感知器201との間の距離を飽和流における車両停止波速度で除算した値である。
【0069】
通過車両台数検出部19は、第1時点から第2時点までの間に、流入路の交差点から特定距離の特定地点を交差点に向かって走行した車両の台数を検出する車両台数検出手段としての機能を有する。すなわち、通過車両台数検出部19は、第1時点(車両発進波が車両感知器201の設置地点に到達した時点)から第2時点(車両停止波が車両感知器201の設置地点に到達した時点)までの間に、流入路の交差点から特定距離の特定地点を交差点に向かって走行した車両の台数を検出する。
【0070】
図10は本実施の形態の先詰判定装置100による先詰まり判定の一例を示す説明図である。例えば、流入路の特定地点には車両を検出するための車両感知器201を設置しておく。図10に示すように、第1時点は、青信号開始時点に発生した車両発進波が車両感知器201の設置地点に到達した時点である。また、第2時点は、当該青信号の次の赤信号開始時点に発生した車両停止波が車両感知器201の設置地点に到達する時点である。
【0071】
先詰判定部20は、先詰判定手段としての機能を有し、第1時点から第2時点までの間に車両感知器201の設置地点を交差点に向かって通過した車両の台数が所定の台数閾値より少ない場合、先詰まりありと判定する。
【0072】
先詰まりがない場合には、車両発進波が車両感知器201の設置地点に到達した第1時点以降は、車両感知器201の設置地点を交差点に向かって走行する車両は、車両感知器201の設置地点の下流側及び上流側の渋滞の有無に応じて、例えば、飽和流、近飽和流あるいは非飽和流で渋滞なく流れるので、車両感知器201の設置地点を通過できる車両は増加し、車両停止波が車両感知器201の設置地点に到達する第2時点まで複数の車両が車両感知器201の設置地点を通過する。
【0073】
一方、先詰まりがある場合、交差点の下流側(当該交差点の流出路)の渋滞が伸長し、当該交差点の流入路に対する信号が青信号でも渋滞末尾位置が流入路上流側へ移動する。すなわち、車両停止波が車両感知器201の設置地点に到達する第2時点より前に先詰まりによる渋滞末尾が車両感知器201の設置地点に到達するため、車両感知器201の設置地点を通過できる車両の台数は減少する。
【0074】
すなわち、第1時点から第2時点までの間に車両感知器201の設置地点を交差点に向かって走行した車両の台数が所定の台数閾値より少ない場合、先詰まりありと判定することができ、当該車両の台数が所定の台数閾値より多い場合、先詰まりなしと判定することができる。これにより、例えば、先詰まりの有無を判定する交差点の出口部付近(流出路付近)に車両感知器が設置されていない場合でも、当該交差点での渋滞が先詰まりによる渋滞が、それ以外の渋滞であるかを判別することができ、先詰まりの有無を精度良く判定することができる。
【0075】
また、前述の台数閾値は、流入路に対する青信号時間に当該流入路の飽和交通流率及び所定係数を乗算した値である。これにより、青信号時間に通行できる台数に対する所要の割合の台数を台数閾値とすることができ、流入路の交通量などの交通状況に応じて、先詰まりの判定基準を設定することができる。
【0076】
また、先詰まり有無の判定は、以下の方法を用いてもよい。すなわち、特定地点に設置された車両感知器201で計測した感知パルスに関する情報を取得し、第1時点(車両発進波が特定地点に到達した時点)から第2時点(車両停止波が特定地点に到達した時点)までの間で、取得した感知パルスのパルス間隔(例えば、パルス間隔の最大値)が第1間隔閾値(例えば、10秒など)より長い場合、先詰まりありと判定する。
【0077】
先詰まりがある場合には、交差点の下流側(当該交差点の流出路)の渋滞が伸長し、当該交差点の流入路に対する信号が青信号でも渋滞末尾位置が流入路上流側へ移動する。すなわち、車両停止波が車両感知器201の設置地点に到達する第2時点より前に先詰まりによる渋滞末尾が車両感知器201の設置地点に到達するため、車両感知器201の設置地点で車両が停止する場合が起こり得る。したがって、第1時点から第2時点までの間で、感知パルスのパルス間隔が第1間隔閾値より長い場合、先詰まりありと判定することができ、精度良く先詰まりを判定することができる。
【0078】
次に、渋滞末尾位置の推定方法について説明する。パルス間隔算出部21は、感知パルス情報取得部11で取得した感知パルス情報に基づいて、感知パルスのパルス間隔を算出する。また、パルス間隔算出部21は、算出したパルス間隔を記録することができる。
【0079】
パルス幅算出部22は、感知パルス情報取得部11で取得した感知パルス情報に基づいて、感知パルスのパルス幅を算出する。パルス幅算出部22は、算出したパルス幅を記録することができる。
【0080】
渋滞末尾位置推定部23は、渋滞末尾推定手段としての機能を有する。
【0081】
図11は本実施の形態の先詰判定装置100による渋滞末尾位置推定の一例を示す説明図である。図11に示すように、第1時点(車両発進波が車両感知器201の設置地点に到達した時点)から、取得した感知パルスのパルス間隔が間隔閾値(第2間隔閾値、例えば、4.5秒、第1間隔閾値より小さい)より長く、感知パルスのパルス幅がパルス幅閾値(例えば、0.8秒など)より短くなった時点までの間に、車両感知器201の設置地点を通過した車両の台数を計数する。
【0082】
車両感知器201が設置された特定地点に車両発進波が到達(第1時点)すると、例えば、渋滞で停止していた車両が車両感知器下を飽和流で流れるようになり、渋滞末尾の車両が車両感知器201下を通過するまで飽和流での車両の通過が継続する。車両が飽和流で流れる場合には、感知パルスのパルス間隔は比較的短い。そして、渋滞末尾の車両が車両感知器201を通過した後は、車両感知器201の設置地点を通過する車両は近飽和流又は非飽和流で流れるようになりパルス間隔は長くなり、速度も速くなるのでパルス幅も短くなる。
【0083】
そこで、車両発進波が車両感知器201の設置地点に到達した時点から、パルス間隔が第2間隔閾値(例えば、4.5秒、第1間隔閾値より小さい)より長く、パルス幅がパルス幅閾値(例えば、0.8秒など)より短くなった時点までの間に、車両感知器201の設置地点を通過した車両を、車両感知器201の設置地点から渋滞末尾までの間で停止していた車両の台数として計数する。そして、計数した台数に停止車両の車頭距離を乗算した値に基づいて、車両感知器201の設置地点より上流側の渋滞末尾を推定する。
【0084】
上述のように、車両感知器201の設置地点より上流で渋滞している車両が青信号時間の間に車両感知器201の設置地点を通過することができると判定した場合、すなわち、先詰まりがないと考えられる場合に、特定地点に設置された車両感知器201の感知パルスの情報(パルス間隔及びパルス幅)を利用することにより、精度良く渋滞末尾位置の推定を行うことができる。
【0085】
制御部10は、渋滞長算出部14を制御して、流入路の交差点から第1番目の車両感知器201より上流の渋滞長を算出する。制御部10は、所要時間算出手段としての機能を有し、第1番目の車両感知器201より上流で停止している停止車両の台数を算出し、算出した停止車両が第1番目の車両感知器201を通過するのに要する所要時間を算出する。
【0086】
制御部10は、所要時間が流入路に対する青信号時間より長いか否かを判定し、所要時間が青信号時間より長い場合、渋滞区間推定部13により、流入路の渋滞区間の推定を行う。これにより、渋滞区間を推定することができる。
【0087】
次に、本実施の形態の先詰判定装置100による処理手順について説明する。図12は本実施の形態の先詰判定装置100による先詰まり実施可否判定の処理手順を示すフローチャートである。制御部10は、渋滞区間推定部13を制御して流入路の渋滞区間を推定し(S11)、渋滞長算出部14を制御して、流入路の交差点から第1番目の車両感知器201より上流の渋滞長を算出する(S12)。
【0088】
制御部10は、第1番目の車両感知器201より上流で停止している停止車両の台数を算出し(S13)、算出した停止車両が第1番目の車両感知器201を通過するのに要する所要時間を算出する(S14)。
【0089】
制御部10は、所要時間が流入路に対する青信号時間より長いか否かを判定し(S15)、所要時間が青信号時間より長い場合(S15でYES)、先詰判定結果を採用し(S16)、所要時間が青信号時間より長くない場合(S15でNO)、渋滞末尾位置推定結果を採用し(S17)、処理を終了する。
【0090】
なお、渋滞区間推定部13による渋滞区間の推定は、例えば、50秒経過の都度繰り返し行われる。そして、図12で示す処理も、50秒毎に繰り返し行うことができる。
【0091】
図13及び図14は本実施の形態の先詰判定装置100による先詰まり判定の処理手順を示すフローチャートである。制御部10は、台数Qを0に設定し(Q=0)、待ち行列計測フラグCを0に設定し(C=0)、パルス間隔を0に設定する(S31)。
【0092】
制御部10は、感知パルスのサンプリングタイミングであるか否かを判定する(S32)。感知パルスのサンプリング周期は、例えば、50msとすることができる。サンプリングタイミングでない場合(S32でNO)、制御部10は、ステップS32の処理を続ける。
【0093】
サンプリングタイミングである場合(S32でYES)、制御部10は、感知パルスがオフからオンになったか否かを判定し(S33)、オフからオンになった場合(S33でYES)、直近のオンの時点からの経過時間を計算してパルス間隔を算出する(S34)。
【0094】
感知パルスがオフからオンになっていない場合(S33でNO)、制御部10は、ステップS34の処理を行うことなく、感知パルスがオンからオフになったか否かを判定する(S35)。オンからオフになった場合(S35でYES)、制御部10は、直近のオンの時点からの経過時間を計算してパルス幅を算出する(S36)。
【0095】
感知パルスがオンからオフになっていない場合(S35でNO)、制御部10は、ステップS36の処理を行うことなく、青信号開始からN秒経過したか、又は待ち行列計測中(C=1)であるか否かを判定する(S37)。ここで、N秒は所定時間T1であり、車両発進波が車両感知器201の設置地点に到達するのに要する時間である。
【0096】
青信号開始からN秒経過した場合、又は待ち行列計測中(C=1)である場合(S37でYES)、制御部10は、待ち行列計測フラグCを1に設定する(S38)。なお、待ち行列計測フラグCがすでに1に設定されている場合、ステップS38の処理を行う必要はない。
【0097】
制御部10は、赤信号開始からM秒経過したか否かを判定する(S39)。ここで、M秒は所定時間T2であり、車両停止波が車両感知器201の設置地点に到達するのに要する時間である。
【0098】
赤信号開始からM秒経過した場合(S39でYES)、制御部10は、青信号開始からN秒経過した時点から赤信号開始からM秒経過した時点までの間に、車両感知器201の設置地点を通過した車両の台数Qが台数閾値以下であるか、及び/又はパルス間隔の最大値がパルス間隔閾値(第1間隔閾値)より長いか否かの先詰まり条件を判定する(S40)。
【0099】
先詰まり条件を充足する場合(S40でYES)、制御部10は、先詰まりありと判定し(S41)、先詰まり条件を充足しない場合(S40でNO)、先詰まりなしと判定し(S42)する。制御部10は、処理終了するか否かを判定し(S43)、処理を終了しない場合(S43でNO)、ステップS31以降の処理を繰り返し、処理終了すると判定した場合(S43でYES)、処理を終了する。
【0100】
赤信号開始からM秒経過していない場合(S39でNO)、制御部10は、感知パルスがオフからオンになったか否かを判定し(S44)、オフからオンになった場合(S44でYES)、パルス間隔の最大値を特定する(S45)。パルス間隔の最大値の特定とは、算出したパルス間隔の中で最大のパルス間隔を特定することである。
【0101】
感知パルスがオフからオンになっていない場合(S44でNO)、制御部10は、感知パルスがオンからオフになったか否かを判定し(S46)、オンからオフになった場合(S46でYES)、車両の台数Qに1を加算し(S47)、ステップS32以降の処理を繰り返し、オンからオフになっていない場合(S46でNO)、ステップS47の処理を行うことなく、ステップS32以降の処理を繰り返す。
【0102】
青信号開始からN秒経過していない場合、かつ待ち行列計測中(C=1)でない場合(S37でNO)、制御部10は、ステップS32以降の処理を繰り返す。なお、図13及び図14の処理は、交差点300の信号灯器のサイクル長に同期して行われるので、例えば、100〜150秒程度に1回の割合で繰り返し行うことができる。また、図13及び図14の処理は、図12の処理とは独立に別個に行うことができ、図12の処理で得られた結果を利用する際には最新の結果を用いることができる。
【0103】
図15及び図16は本実施の形態の先詰判定装置100による渋滞末尾位置推定の処理手順を示すフローチャートである。制御部10は、台数Qを0に設定し(Q=0)、待ち行列計測フラグCを0に設定する(S61)。
【0104】
制御部10は、感知パルスのサンプリングタイミングであるか否かを判定する(S62)。感知パルスのサンプリング周期は、例えば、50msとすることができる。サンプリングタイミングでない場合(S62でNO)、制御部10は、ステップS62の処理を続ける。
【0105】
サンプリングタイミングである場合(S62でYES)、制御部10は、感知パルスがオフからオンになったか否かを判定し(S63)、オフからオンになった場合(S63でYES)、直近のオンの時点からの経過時間を計算してパルス間隔を算出する(S64)。
【0106】
感知パルスがオフからオンになっていない場合(S63でNO)、制御部10は、ステップS64の処理を行うことなく、感知パルスがオンからオフになったか否かを判定する(S65)。オンからオフになった場合(S65でYES)、制御部10は、直近のオンの時点からの経過時間を計算してパルス幅を算出する(S66)。
【0107】
感知パルスがオンからオフになっていない場合(S65でNO)、制御部10は、ステップS66の処理を行うことなく、青信号開始からN秒経過したか、又は待ち行列計測中(C=1)であるか否かを判定する(S67)。ここで、N秒は所定時間T1であり、車両発進波が車両感知器201の設置地点に到達するのに要する時間である。
【0108】
青信号開始からN秒経過した場合、又は待ち行列計測中(C=1)である場合(S67でYES)、制御部10は、待ち行列計測フラグCを1に設定する(S68)。なお、待ち行列計測フラグCがすでに1に設定されている場合、ステップS68の処理を行う必要はない。青信号開始からN秒経過していない場合、かつ待ち行列計測中(C=1)でない場合(S67でNO)、制御部10は、ステップS62以降の処理を続ける。
【0109】
制御部10は、感知パルスがオンからオフになったか否かを判定し(S69)、オンからオフになった場合(S69でYES)、車両感知器201を通過した車両の台数Qが初期台数閾値より少ないか否かを判定し(S70)、台数Qが初期台数閾値より少ない場合(S70でYES)、台数Qに1を加算し(S72)、ステップS62以降の処理を続ける。
【0110】
ステップS70の処理を行う理由は、車両発進波が車両感知器201の設置地点に到達した直後の車両(車両感知器201の近傍の車両)の走行挙動は不安定であり、車両の発進などに遅れが生じる場合もある。そこで、初期台数閾値(例えば、4台程度)までは、通過車両の台数に無条件で加算することにより、車両発進波到達直後の不安定な状態を回避することができる。
【0111】
台数Qが初期台数閾値より少なくない場合(S70でNO)、制御部10は、パルス間隔が間隔閾値(第2間隔閾値)より大きく、かつパルス幅が幅閾値より小さいか否かの条件を判定し(S71)、当該条件を充足する場合(S71でYES)、渋滞末尾位置Lを、L=台数Q×停止時車頭距離の式により算出し(S73)、処理終了するか否かを判定し(S74)、処理を終了しない場合(S74でNO)、ステップS61以降の処理を繰り返し、処理終了すると判定した場合(S74でYES)、処理を終了する。
【0112】
パルス間隔が間隔閾値より大きく、かつパルス幅が幅閾値より小さいか否かの条件を充足しない場合(S71でNO)、制御部10は、ステップS72の処理を行う。また、感知パルスがオンからオフになっていない場合(S69でNO)、制御部10は、ステップS62以降の処理を続ける。
【0113】
なお、図15及び図16の処理は、交差点300の信号灯器のサイクル長に同期して行われるので、例えば、100〜150秒程度に1回の割合で繰り返し行うことができる。また、図15及び図16の処理は、図12の処理とは独立に別個に行うことができ、図12の処理で得られた結果を利用する際には最新の結果を用いることができる。
【0114】
上述の図13及び図14の先詰まり判定の処理では、青信号開始からN秒経過した時点から、赤信号開始からM秒経過した時点までの間に、車両感知器201の設置地点を通過した車両の台数Qが台数閾値以下であるか、及び/又はパルス間隔の最大値がパルス間隔閾値(第1間隔閾値)より長いか否かの先詰まり条件を判定する構成であったが、これに限定されるものではなく、第3の指標として、パルス幅最大値がパルス幅閾値より大きいか否かの条件を加味することもできる。以下、第3の指標を加味した場合の先詰まり判定の処理について説明する。
【0115】
図17及び図18は本実施の形態の先詰判定装置100による先詰まり判定の他の例の処理手順を示すフローチャートである。制御部10は、台数Qを0に設定し(Q=0)、待ち行列計測フラグCを0に設定し(C=0)、パルス間隔を0に設定する(S81)。
【0116】
制御部10は、感知パルスのサンプリングタイミングであるか否かを判定する(S82)。感知パルスのサンプリング周期は、例えば、50msとすることができる。サンプリングタイミングでない場合(S82でNO)、制御部10は、ステップS82の処理を続ける。
【0117】
サンプリングタイミングである場合(S82でYES)、制御部10は、感知パルスがオフからオンになったか否かを判定し(S83)、オフからオンになった場合(S83でYES)、直近のオンの時点からの経過時間を計算してパルス間隔を算出する(S84)。
【0118】
感知パルスがオフからオンになっていない場合(S83でNO)、制御部10は、ステップS84の処理を行うことなく、感知パルスがオンからオフになったか否かを判定する(S85)。オンからオフになった場合(S85でYES)、制御部10は、直近のオンの時点からの経過時間を計算してパルス幅を算出する(S86)。
【0119】
感知パルスがオンからオフになっていない場合(S85でNO)、制御部10は、ステップS86の処理を行うことなく、青信号開始からN秒経過したか、又は待ち行列計測中(C=1)であるか否かを判定する(S87)。ここで、N秒は所定時間T1であり、車両発進波が車両感知器201の設置地点に到達するのに要する時間である。
【0120】
青信号開始からN秒経過した場合、又は待ち行列計測中(C=1)である場合(S87でYES)、制御部10は、待ち行列計測フラグCを1に設定する(S88)。なお、待ち行列計測フラグCがすでに1に設定されている場合、ステップS88の処理を行う必要はない。
【0121】
制御部10は、赤信号開始からM秒経過したか否かを判定する(S89)。ここで、M秒は所定時間T2であり、車両停止波が車両感知器201の設置地点に到達するのに要する時間である。
【0122】
赤信号開始からM秒経過した場合(S89でYES)、制御部10は、青信号開始からN秒経過した時点から、赤信号開始からM秒経過した時点までの間に、車両感知器201の設置地点を通過した車両の台数Qが台数閾値以下であるか、及び/又はパルス間隔の最大値がパルス間隔閾値(第1間隔閾値)より長いか否か、及び/又はパルス幅最大値がパルス幅閾値(例えば、12.0秒など)より長いか否かの先詰まり条件を判定する(S90)。
【0123】
先詰まり条件を充足する場合(S90でYES)、制御部10は、先詰まりありと判定し(S91)、先詰まり条件を充足しない場合(S90でNO)、先詰まりなしと判定し(S92)する。制御部10は、処理終了するか否かを判定し(S93)、処理を終了しない場合(S93でNO)、ステップS81以降の処理を繰り返し、処理終了すると判定した場合(S93でYES)、処理を終了する。
【0124】
赤信号開始からM秒経過していない場合(S89でNO)、制御部10は、感知パルスがオフからオンになったか否かを判定し(S94)、オフからオンになった場合(S94でYES)、パルス間隔の最大値を特定する(S95)。パルス間隔の最大値の特定とは、算出したパルス間隔の中で最大のパルス間隔を特定することである。
【0125】
感知パルスがオフからオンになっていない場合(S94でNO)、制御部10は、感知パルスがオンからオフになったか否かを判定し(S96)、オンからオフになった場合(S96でYES)、車両の台数Qに1を加算し(S97)、パルス幅の最大値を特定し(S98)、ステップS82以降の処理を繰り返し、オンからオフになっていない場合(S96でNO)、ステップS97、S98の処理を行うことなく、ステップS82以降の処理を繰り返す。なお、パルス幅の最大値の特定とは、算出したパルス幅の中で最大のパルス幅を特定することである。
【0126】
青信号開始からN秒経過していない場合、かつ待ち行列計測中(C=1)でない場合(S87でNO)、制御部10は、ステップS82以降の処理を繰り返す。なお、図17及び図18の処理は、交差点300の信号灯器のサイクル長に同期して行われるので、例えば、100〜150秒程度に1回の割合で繰り返し行うことができる。また、図17及び図18の処理は、図12の処理とは独立に別個に行うことができ、図12の処理で得られた結果を利用する際には最新の結果を用いることができる。
【0127】
上述の先詰判定装置100は、CPU、RAMなどを備えた汎用コンピュータを用いて実現することもできる。すなわち、図12乃至図18に示すような、各処理手順を定めたコンピュータプログラムをコンピュータに備えられたRAMにロードし、コンピュータプログラムをCPUで実行することにより、コンピュータ上で先詰判定装置100を実現することができる。
【0128】
開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0129】
10 制御部
11 感知パルス情報取得部
12 車両速度算出部
13 渋滞区間推定部
14 渋滞長算出部
15 車両通過可否判定部
16 信号情報取得部
17 車両発進波到達時刻特定部
18 車両停止波到達時刻特定部
19 通過車両台数検出部
20 先詰判定部
21 パルス間隔算出部
22 パルス幅算出部
23 渋滞末尾位置推定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差点に流入する流入路を走行する車両が該交差点下流での渋滞により青信号でも前記交差点を通行できない先詰まりの有無を判定する先詰判定装置であって、
前記交差点に設置された信号灯器の信号情報を取得する信号情報取得手段と、
前記信号灯器の前記流入路に対する青信号開始時点から所定時間が経過した第1時点を特定する第1時点特定手段と、
前記青信号の次の赤信号開始時点から所定時間が経過した第2時点を特定する第2時点特定手段と、
前記第1時点から第2時点までの間に、前記流入路の前記交差点から特定距離にある特定地点を前記交差点に向かって走行した車両の台数を検出する車両台数検出手段と、
先詰まりの有無を判定する先詰判定手段と
を備え、
該先詰判定手段は、
前記車両台数検出手段で検出した車両の台数が所定の台数閾値より少ない場合、先詰まりありと判定するように構成してあることを特徴とする先詰判定装置。
【請求項2】
前記流入路の前記特定地点より上流側の渋滞長を算出する渋滞長算出手段と、
該渋滞長算出手段で算出した渋滞長に対応する台数の車両が前記信号灯器の前記流入路に対する青信号時間の間に前記特定地点を通過できるか否かを判定する通過可否判定手段と、
該通過可否判定手段で通過できないと判定した場合、前記先詰判定手段による判定を行うように制御する制御手段と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の先詰判定装置。
【請求項3】
前記特定地点に設置された車両感知器で計測した感知パルスに関する情報を取得する感知パルス情報取得手段を備え、
前記先詰判定手段は、
前記第1時点から第2時点までの間で、前記感知パルス情報取得手段で取得した感知パルスのパルス間隔が第1間隔閾値より長い場合、先詰まりありと判定するように構成してあることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の先詰判定装置。
【請求項4】
前記第1時点後、前記感知パルス情報取得手段で取得した感知パルスのパルス間隔が第2間隔閾値(<第1間隔閾値)より長く、該感知パルスのパルス幅がパルス幅閾値より短くなった時点までに、前記特定地点を通過した車両の台数を計数する台数計数手段と、
該台数計数手段で計数した台数に停止車両の車頭距離を乗算した値に基づいて渋滞末尾を推定する渋滞末尾推定手段と
を備え、
前記制御手段は、
前記通過判定手段で通過できると判定した場合、前記渋滞末尾推定手段による渋滞末尾の推定を行うべく制御するように構成してあることを特徴とする請求項3に記載の先詰判定装置。
【請求項5】
前記流入路の前記特定地点より上流側で停止している車両が該特定地点を通過するのに要する所要時間を算出する所要時間算出手段と、
前記流入路の1又は複数の地点に設けられた車両感知器から該車両感知器の感知領域を通過する車両の速度を取得する速度取得手段と、
前記所要時間算出手段で算出した所要時間が前記流入路に対する青信号時間よりも長い場合、前記速度取得手段で取得した前記地点での速度に基づいて、前記流入路の渋滞区間を推定する渋滞区間推定手段と
を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の先詰判定装置。
【請求項6】
前記台数閾値は、
前記信号灯器の前記流入路に対する青信号時間に該流入路の飽和交通流率及び所定係数を乗算した値であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の先詰判定装置。
【請求項7】
前記第1時点は、
前記流入路に対する青信号の開始時点から所定時間が経過した時点であり、
前記第2時点は、
前記青信号の次の赤信号の開始時点から所定時間が経過した時点であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の先詰判定装置。
【請求項8】
コンピュータに、交差点に流入する流入路を走行する車両が該交差点下流での渋滞により青信号でも前記交差点を通行できない先詰まりの有無を判定させるためのコンピュータプログラムであって、
コンピュータに、
前記交差点に設置された信号灯器の前記流入路に対する青信号開始時点から所定時間が経過した第1時点を特定するステップと、
前記青信号の次の赤信号開始時点から所定時間が経過した第2時点を特定するステップと、
前記第1時点から第2時点までの間に、前記流入路の前記交差点から特定距離にある特定地点を前記交差点に向かって走行した車両の台数を検出するステップと、
検出した車両の台数が所定の台数閾値より少ない場合、先詰まりありと判定するステップと
を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項9】
交差点に流入する流入路を走行する車両が該交差点下流での渋滞により青信号でも前記交差点を通行できない先詰まりの有無を判定する先詰判定装置による先詰判定方法であって、
前記交差点に設置された信号灯器の信号情報を取得するステップと、
前記信号灯器の前記流入路に対する青信号開始時点から所定時間が経過した第1時点を特定するステップと、
前記青信号の次の赤信号開始時点から所定時間が経過した第2時点を特定するステップと、
特定された第1時点から第2時点までの間に、前記流入路の前記交差点から特定距離にある特定地点を前記交差点に向かって走行した車両の台数を検出するステップと、
検出された車両の台数が所定の台数閾値より少ない場合、先詰まりありと判定するステップと
を含むことを特徴とする先詰判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−80445(P2013−80445A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221365(P2011−221365)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】