説明

光の偏光の空間分布の色収差補正コンバータ

【課題】第1の所定の偏光分布から第2の所定の偏光分布への、偏光の空間分布の色収差補正コンバータを提供する。
【解決手段】このコンバータは、複数の光配向された4分の1波または半波の液晶ポリマー層を備え、層の配向パターンは、偏光変換を色収差補正するように互いと関連づけられている。色収差補正偏光渦を形成することができる。光の大部分の可視スペクトルにわたって97%を上回る偏光変換効率が実証された。この偏光コンバータは、結像、フォトリソグラフィ、光ピンセット、微細機械加工および他の用途で使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の偏光の空間分布を、第1の所定の空間分布から第2の所定の空間分布へ変換するための光学素子に関し、具体的には広範囲の光の波長にわたって前記分布を変換するための光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
波長板、または光学リターダは、互いに直交するように偏向された入射光の2つの成分間の位相に対して所定の位相シフトを導入することにより、入射光の偏光状態を変更する光学デバイスである。従来、導入された位相シフトは波長板リターダンスと称され、2πを掛けた波長の分数で測定される。直交偏光成分の間にπの位相シフトを付加する波長板は、半波長板(HWP)と称され、π/2の位相シフトを付加する波長板は4分の1波長板(QWP)と称される。
【0003】
互いに直交するように偏光された入射光の2つの成分に対して別々の屈折率を有する材料は、複屈折材料と呼ばれる。いかなる複屈折材料にも、光軸と呼ばれる少なくとも1つの軸がある。波長板は、複屈折材料から製造することができる。直線偏光波が、波長板の複屈折材料の光軸に垂直な波長板を通されるとき、光波は、定常波および異常波と呼ばれる2つの波へ分割され、2つの波は互いに垂直な方向へ直線的に偏光される。別々の屈折率のために、2つの波は、別々の速度で材料を通って進み、このことからこれら2つの波の間に位相シフトが生じる。波長板がHWPであると、位相シフトによって、偏光軸と波長板の光軸の間の角度の2倍の角度で、光波の偏光軸の回転が生じる。
【0004】
従来の用途では、一般に、空間的に一様な波長板を使用して、一様に偏向された光ビームの偏光状態を変更する。一様に偏向された光ビームは、ビームの断面にわたって変化しない偏光状態を有するビームである。しかし、最近、一様に偏光されたビームの幅方向に空間的偏光変化を誘起することが、有効な波面整形ツールであると認められている。直線偏光子を使用して空間的に変化する偏光を有するビームを解析すると、その実効果は、ビームの幅方向に、Pancharatnam−Berry位相として知られている空間的に変化する位相シフトが付加されることである。これは、BomzonらによってOpt.Lett.、27巻、No.13、1141〜1143頁(2002年)の「Space−variant Pancharatnam−Berry phase optical elements with computer−generated subwavelength gratings」という名称の論文で示され、この文献は、ビームの波面の特定の整形をもたらす偏光子を用いた光ビームの空間的に変化する偏光を解析しており、参照によって本明細書に組み込まれる。さらに、直線的に偏光された光ビーム(偏光配向すなわちビーム放射の電界ベクトルの方向がビームの断面にわたって変化する)を形成するために、空間的に変化する波長板を使用することができる。空間的に変化する直線偏光を有するビームの現実的な例には、放射状に偏向されたビームまたは接線状に偏光されたビームがあり、偏光のローカル軸が、前者では放射状、すなわちビームの中心にローカル・ポイントを接続する線と平行であり、後者では接線状、すなわちその線に対して垂直である。
【0005】
ビームが、放射状に偏向されようと接線状に偏向されようと、その偏光方向は、特定の空間的位置の方位角にのみ左右され、ビーム軸からの半径方向距離rには左右されない。偏光ビームのこれらのタイプは、円筒状ベクトル・ビームまたは偏光渦ビームと称されることがある。用語「偏光渦」は、用語「光学渦」に関するものである。光学渦は、ビーム断面内の位相異常を示すポイントであり、そのポイントのまわりでトレースされた任意の閉路において、ビーム放射の電界がπの倍数によって徐々に変化する。同様に、偏光渦は、偏光の方向がビーム軸のまわりでπの倍数によって徐々に変化する、直線的に偏向された状態である。そのようなビームは、合焦されたとき、ビームの軸でゼロ輝度を採用する。偏光渦ビームには、粒子捕獲(レーザ・ピンセット)、顕微鏡の分解能向上、およびフォトリソグラフィなど、様々な実用的用途で有利に使用することができるいくつもの独特な特性がある。
【0006】
光学的偏光渦ビームは、波長板の軸のまわりでπ/2の倍数によって徐々に変化する、空間的に変化する偏光軸方向を有するHWPに、一様に偏光された光ビームを通すことにより容易に得ることができる。前述の、角度を2倍にするHWPの特性のために、そのような波長板を通したビームの偏光の方向は、ビーム軸のまわりでπの倍数によって徐々に変化する。例えば、Stalderらによる、Opt.Lett.、21巻、No.23、1948〜1950頁、1996年12月1日の、「Linearly polarized light with axial symmetry generated by liquid−crystal polarization converters」という名称の論文を参照されたい。この文献は参照によって本明細書に組み込まれる。Stalderは、複屈折の液晶リターダの空間的に変化する偏光軸方向を生成するために使用される、空間的に変化する液晶層の配向を有する液晶セルを教示している。
【0007】
偏光渦ビームを生成する従来技術の方法には、空間的に変化する従来技術のHWPが、1波長のみで2分の1波長のリターデイションを有するという事実に関する共通の短所がある。したがって、単色の偏光渦しか形成することができない。例えば、レーザ・ピンセット用途向けの単色の偏光渦を生成するために、単色のレーザ・ビームを使用することができる。しかし、多くの重要な光学的用途で多色ビームが必要とされ、例えば、表示装置または顕微鏡検査などの視覚および画像化の領域に関するほとんどの用途は多色である。可視光線は、ほぼ380nmから680nm超の範囲の波長領域にわたり、すなわち、可視光線は、530nmの中心波長と比べると56%を上回って変化する。対応する光学システムが多色性能を必要とする用途の他の例には、多波長光学式データ記憶装置が含まれ、フェムト秒光パルスが元来多色であるので、ディスクに対するデータの読出しおよび書込み、あるいはフェムト秒微細機械加工用途向けに様々な波長のレーザ源が使用される。したがって、既存の現況技術は、偏光分布を形成する光学素子の、色収差補正(achromatic)または多色化(polychromatic)動作が必要な多くのあり得る用途向けに現実的解決策を提供することがない。
【0008】
従来技術では、空間的に変化する光学リターダの色収差補正作業を実現するいくつかの手法が既知である。液晶ディスプレイ産業で広く用いられている手法の1つに、液晶ディスプレイの光学的スタックに対して空間的に一様な光学リターダ・フィルムまたは光学リターダ層を付加するものがあり、これによって表示コントラスト比をより色収差補正し、かつディスプレイの視角を改善する。例えば、液晶ディスプレイ・スタック構造に光学リターダを付加することが、Tillinによって米国特許第6,900,865号で教示されており、この特許は参照によって本明細書に組み込まれる。さらに、液晶ディスプレイに付加された一様な液晶リターダが、Sharpらによって米国特許第6,380,997号、米国特許第6,078,374号および米国特許第6,046,786号で教示されており、これらの特許は参照によって本明細書に組み込まれる。Sharpの液晶ディスプレイでは、空間的に変化しない複合波長板の既知の色収差補正動作が、ディスプレイの4つの輝度状態までの色収差補正動作を実現するために使用される。空間的に変化しない複合色収差補正波長板が、長い間既知であったことに留意されたい。例えば、Koesterの、J.Opt.Soc.Of America 49巻(4)、405〜409頁(1959年)の、「Achromatic combinations of half−wave plates」を参照されたい。この文献は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0009】
別の手法には、ナノインプリント・リソグラフィを使用して、色収差補正サブ波長格子ベースの光学リターダ構造を生成することに依存するものがあり、Dengらによって、Opt.Lett.、30巻、2614〜2616頁(2005年)の、「Acromatic wave plates for optical pickup units fabricated by use of imprint lithography」という名称の論文で公表されており、この文献は参照によって本明細書に組み込まれる。中赤外型から遠赤外型のフォトニクス用途向けの従来のマイクロ・リソグラフィ法を用いて、色収差補正サブ波長格子を製造することもでき、Chunらによって、SPIE−Int.Soc.Opt.Eng.、4481巻、216〜27頁(2002年)の、「Acromatic waveplate array for polarimetric imaging」という名称の論文で教示されている。
【0010】
一様なリターデイション・フィルムまたは液晶層の使用を基に空間的に変化する光学リターダの色収差補正動作を実現する手法には、色収差補正が実現される出力偏光状態の範囲が限定されるという短所がある。サブ波長格子に基づく手法にはこの短所がないが、少なくとも可視スペクトルの範囲に対して、これらの手法は、ナノインプリント・リソグラフィなど、やや風変わりな、高度なものとはとは言い難い技術に依存する。さらに、液晶ディスプレイまたはサブ波長格子の離散的アレイなど従来技術のピクセル処理されたリターダ構造では、様々なリターデイション値を有する領域間の急激な境界で、望ましくない光の回折が生じる恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第6,900,865号
【特許文献2】米国特許第6,380,997号
【特許文献3】米国特許第6,078,374号
【特許文献4】米国特許第6,046,786号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Bomzonら、「Space−variant Pancharatnam−Berry phase optical elements with computer−generated subwavelength gratings」、Opt.Lett.、Vol.27、No.13、1141〜1143頁(2002)
【非特許文献2】Stalderら、「Linearly polarized light with axial symmetry generated by liquid−crystal polarization converters」、Opt.Lett.、Vol.21、No.23、1948〜1950頁、1996年12月1日
【非特許文献3】Koester、「Achromatic combinations of half−wave plates」、J.Opt.Soc.Of America Vol.49(4)、405〜409頁
【非特許文献4】Dengら、「Acromatic wave plates for optical pickup units fabricated by use of imprint lithography」、Opt.Lett.、Vol.30、2614〜2616頁(2005)
【非特許文献5】Chunら、「Acromatic waveplate array for polarimetric imaging」、SPIE−Int.Soc.Opt.Eng.、4481巻、216〜227頁(2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
有利には、本発明の色収差補正コンバータ素子は前述の短所を未然に防ぐ。この素子は、広い波長領域を有する偏光(例えば可視光線)の空間分布を、入力偏光の任意の所定の分布から、出力偏光の任意の他の所定の分布へ、非常に高効率、スムーズかつ連続的なやり方で変換することができ、急激な縁端部または境界上での回折効果を回避する。さらに、有利には、また好ましくは、本発明の偏光コンバータは、十分に確立されかつ成熟した液晶技術を用いて様々な構成で製造することができる。さらに、有利には、本発明の偏光コンバータは、従来技術の単色の偏光コンバータまたは従来技術のゼロ次波長板と比べて、リターダ層の厚さの変化の影響に対して本質的な耐性がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、中心波長および帯域幅によって特徴づけられた少なくとも1つの波長帯域を有する光ビームの偏光の、第1の所定の横方向分布から第2の所定の横方向分布へ変換するための光学素子が提供され、この光学素子は、複屈折層のスタックを備え、スタック各層の複屈折が、層にわたって実質的に一定のリターダンスおよび層にわたって滑らかに徐々に変化する複屈折のローカル軸の方向によって特徴づけられ、また、層のローカル軸方向の複屈折の変化は、光ビームの全波長帯域にわたって、光ビームの偏光の分布を、第1の分布から第2の分布へ変換するように、その間で調整される。
【0015】
本発明の特別の関心は光学渦素子にあり、この素子では偏光の第1および第2の横方向分布は直線偏光の分布であって、出力偏光のローカル軸の角度は、光学素子の開口部の「渦ポイント」と呼ばれる中心点のまわりでトレースされた任意の閉路において、ローカル方位角の座標のみに左右され、πの倍数だけ角度が変化する。
【0016】
本発明の別の態様では、光ビームを受け取って、光ビームの偏光の横方向分布を変換するための第1の光学素子と、第1の光学素子に対して光学的に結合された偏光素子と、光ビームの偏光の横方向分布をさらに変換し、かつ光ビームを出力するために、前記偏光素子に光学的に結合された第2の光学素子とを備える、偏光を変換する偏光子がさらに提供される。
【0017】
本発明の別の態様によれば、空間的偏光収差の補正、および、または偏光渦の生成、および、または、表示装置におけるフレネル損失の低減、偏光顕微鏡法、フォトリソグラフィ、結像、光学式データ記憶装置、文献、商品または論文の認証、ならびにフェムト秒微細機械加工を含む、前述の光学素子の使用法がさらに提供される。
【0018】
次に、例示的実施形態が図とともに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来技術の、1対の偏光子の間にある、単色波長板および色収差補正波長板、ならびに対応する透過スペクトルを示す図である。
【図2】図2Aは本発明の例示的実施形態による偏光渦波長板およびそれを通り抜ける多色光ビームの等角投影図である。図2Bは本発明の例示的実施形態による偏光渦波長板およびそれを通り抜ける多色光ビームの等角投影図である。
【図3】図3Aは本発明による、偏光を変換する偏光子の等角投影図である。図3Bは図3Aの偏光を変換する偏光子の分解組立図である。
【図4】偏光渦に対応する偏光の横方向分布の入力および出力のプロットを示す図である。
【図5】本発明による2層色収差補正偏光コンバータにおける、層のローカル光軸の角度対必要とされる偏光の回転量のプロットを示す図である。
【図6】本発明の一実施形態による2層色収差補正偏光コンバータにおける、層のローカル光軸の角度対X位置およびY位置のプロットを示す図である。
【図7】本発明の一実施形態による2層色収差補正偏光コンバータの偏光変換効率(PCE)のスペクトルを示す図である。
【図8】本発明の別の実施形態による2層色収差補正偏光コンバータにおける、層のローカル光軸の角度対X位置およびY位置のプロットを示す図である。
【図9】図8に対応する本発明の実施形態による2層色収差補正偏光コンバータのPCEのスペクトルを示す図である。
【図10】偏光の横方向分布の入力および出力のプロットを示す図である。出力の横方向分布は、垂直な中心軸のまわりで対称である。
【図11】図10の偏光軸の分布に対応する2層色収差補正偏光コンバータにおける、層のローカル光軸の角度対X位置およびY位置のプロットを示す図である。
【図12】図10の偏光軸の分布に対応する本発明の2層色収差補正偏光コンバータのPCEのスペクトルを示す図である。
【図13】本発明の実施形態Aによる3層色収差補正偏光コンバータにおける、層のローカル光軸の角度対必要とされる偏光の回転量のプロットを示す図である。
【図14】本発明の実施形態Aによる3層色収差補正偏光コンバータにおける、層のローカル光軸の角度対対応するPCEのスペクトルのプロットを示す図である。
【図15】本発明の実施形態Bによる3層色収差補正偏光コンバータにおける、層のローカル光軸の角度対必要とされる偏光の回転量のプロットを示す図である。
【図16】本発明の実施形態Bによる3層色収差補正偏光コンバータにおける、層のローカル光軸の角度対対応するPCEのスペクトルのプロットを示す図である。
【図17】本発明の実施形態Cによる3層色収差補正偏光コンバータにおける、層のローカル光軸の角度対必要とされる偏光の回転量のプロットを示す図である。
【図18】本発明の実施形態Cによる3層色収差補正偏光コンバータにおける、層のローカル光軸の角度対対応するPCEのスペクトルのプロットを示す図である。
【図19】本発明の実施形態Dによる3層色収差補正偏光コンバータにおける、層のローカル光軸の角度対必要とされる偏光の回転量のプロットを示す図である。
【図20】本発明の実施形態Dによる3層色収差補正偏光コンバータにおける、層のローカル光軸の角度対対応するPCEのスペクトルのプロットを示す図である。
【図21】本発明の実施形態Eによる3層色収差補正偏光コンバータにおける、層のローカル光軸の角度対必要とされる偏光の回転量のプロットを示す図である。
【図22】本発明の実施形態Eによる3層色収差補正偏光コンバータにおける、層のローカル光軸の角度対対応するPCEのスペクトルのプロットを示す図である。
【図23】本発明の偏光補正素子を備えた、一連の光学素子を示す偏光顕微鏡の回路図である。列に沿って、対応する光学的偏光分布を示す。
【図24】本発明の偏光変換素子を利用したリア・プロジェクション・テレビの側方断面図である。
【図25】本発明の偏光変換素子がある場合とない場合の、図24のリア・プロジェクション・テレビのスクリーンを照射する光ビームの光学的偏光マップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
様々な実施形態および実施例とともに本教示が説明されるが、本教示がそのような実施形態に限定されることは意図されていない。その反対に、当業者なら、本教示が様々な代替形態、変更形態および等価物を包含することを理解するであろう。
【0021】
図1を参照すると、破線100は、互いに交差する偏光子104と106の間の45°回転した半波長板(HWP)102の透過スペクトルを示し、スペクトル100はdΔn/λの関数としてプロットされている。dおよびΔnは、それぞれHWP 102の厚さおよび複屈折である。dΔn/λ=0.5(すなわちHWP 102の中心波長)では、透過スペクトル100がポイント111で最大に達することが認められる。実線110は、互いに交差する偏光子114と116の間に配置された、2つの波長板112Aおよび112Bから成る複合半波長板112の透過スペクトルを示し、スペクトル110はdΔn/λの関数としてプロットされている。dΔn/λ=0.5では、透過スペクトル110もポイント111で最大に達することが認められる。しかし、最大点111の近くでは、矢印118によって示された複合波長板112に対応するスペクトル110の方が、矢印108によって示された波長板102に対応するスペクトル100より平坦である。リターダンス値ならびに波長板112Aと112Bの光軸の相対的方向は、スペクトル110ができるだけ平坦になるように選択され、このことは、波長板102の厚さと比較した波長板112Aおよび波長板112Bの厚さの寸法公差を緩和するばかりでなく、波長板112の色収差補正も保証する。光軸の角度およびリターダンス値を選択するためのルールは、上記で引用されたKoesterによる参照文献で教示されている。
【0022】
次に、光学的偏光の空間分布のコンバータを説明する。コンバータは、空間的に変化する光軸を有する少なくとも2つの複屈折層から成り、これらローカル光軸の配向パターンは、コンバータの全体的な色収差補正動作を達成するように互いに調整される。次に、図2Aを見ると、接線偏光渦200が示され、これは、偏光の直線状分布204を有する多色ビーム202を、偏光の空間分布の色収差補正コンバータ206に通すことにより得られるものである。重要かつ有利なことには、層のローカル光軸の角度分布の特別な選択によって、得ようとしている偏光分布200を有するビーム202の小部分の光スペクトル208は、コンバータ206を通過した後に実質的に変化しない。このことは、次の諸段落で詳細に説明され、次の図4から図22によって示される。
【0023】
次に、図2Bを参照すると、放射状の偏光渦201が示され、これは、偏光の直線状分布204を有する多色ビーム202を、偏光の空間分布の色収差補正コンバータ207に通すことにより得られるものである。重要かつ有利なことには、層のローカル光軸の角度分布の特別な選択によって、得ようとしている偏光分布201を有するビーム202の小部分の光スペクトル208は、コンバータ207を通過した後に実質的に変化しない。
【0024】
空間的に変化する色収差補正偏光子および、またはアナライザを作製するために、上記で開示された空間的に変化する色収差補正波長板を通常の直線偏光子と組み合わせてよい。空間的に変化する色収差補正偏光子またはアナライザは、空間的に変化する波長板素子上に偏光素子を積層することにより、または空間的に変化する波長板素子を偏光素子上に直接製作することにより、製造することができる。入ってくる光がまず偏光素子に当り、次に波長板素子に当るよう作られると、不均質偏光子が得られる。光がまず空間的に変化する色収差補正波長板に当り、次に偏光子に当るように作られると、不均質アナライザが得られる。
【0025】
次に、図3Aおよび図3Bを見ると、そのような不均質偏光子307の一例が示されている。放射状の偏光渦301は、偏光の直線状分布303を有する多色ビーム302を、偏光の空間分布を変換する不均質偏光子307に通すことにより得られるものである。分布303は、一様な偏光分布が歪められた(例えば光学システム(図示せず)内に偏光収差があるために歪められた)ものである。図3Bの分解組立図に見られるように、色収差補正偏光コンバータすなわち不均質偏光子307は、不均一な分布303を一様な分布304に変換する直線偏光子309および図2Bのコンバータ207と類似の色収差補正偏光コンバータ310で構成される。重要かつ有利なことには、色収差補正偏光コンバータ307の性能は、偏光子309の存在による局所的な偏光分布の歪みに対して独立している。偏光子309として、ワイヤ・グリッド偏光子、偏光ビーム・スプリッタ、ダイクロイック偏光子、コレステロール偏光子、偏光プリズム、ブルースター角偏光子または干渉偏光子を使用することができる。
【0026】
偏光子の性能とアナライザの性能が同時に必要とされるときには、偏光素子309を、2つの空間的に変化する波長板素子(図示せず)と組み合わせる必要があり、この場合、光は、まず第1の空間的に変化する波長板素子上に当り、次に偏光素子309に当り、次いで第2の空間的に変化する波長板素子に当る。偏光素子は、ワイヤ・グリッド偏光子、偏光ビーム・スプリッタ、ダイクロイック偏光子、コレステロール偏光子、偏光プリズム、ブルースター角偏光子、および干渉偏光子から選択することができる。
【0027】
図2Aの色収差補正コンバータ206を備える複屈折層および図2Bの色収差補正コンバータ207を備える複屈折層、ならびに図3Bのコンバータ310は、好ましくは、直線偏光可能なフォトポリマー層を光配向し、続いて、架橋可能な液晶(LC)材料層で前記層を被覆し、被覆されたLC層をUV架橋することによって形成された光配向液晶層である。配向の角度の特定の分布は、光配向ステップで、フォトポリマー層を重合させるために使用される直線偏光されたUV光の偏光軸を変化させることにより得られる。有利には、複数の層を次々と堆積させることができ、その結果、空間的に変化する偏光軸配向を有する2つ以上の複屈折層を備えた多層構造を単一基板上に形成することができる。あるいは、光配向された直線的に光重合可能な配向層によって、薄く一様なLC流体層を配向することができる。または、光重合性ポリマーをLC流体と混合して、薄層の形で広げることができる。次いで、ポリマーは光重合され、層の体積全体を通して、重合されたスレッドの網状組織を形成する。LC流体は、網状組織内の間隙を充填し、重合されたスレッドの網状組織の配向パターンに従って網状組織によって配向される。しかし、これら後の2つの例では、色収差補正偏光コンバータを作るのに複数の基板が必要とされることになる。
【0028】
前述のように、本発明の偏光コンバータを備える複屈折層は、光配向された重合性フォトポリマーで構成することができ、層の複屈折のローカル軸の方向は、光配向されたフォトポリマーの配向の方向の変化に従って連続的に変化する。本発明は、そのような直線的に重合可能なフォトポリマー層を備える配向層、またはバフ方向を変化させて磨いたポリマー層、または自己集合層、または変化する堆積角を有する斜めに堆積された配向層を利用することができる。空間的パターニングは、フォトマスクによる複数の直線偏光された紫外(LPUV)露光の使用、および、または基板、LPUV配向およびフォトマスクの同期した相対的並進または回転の使用を含んでよい。本発明の斬新さは、複数の液晶層に対して空間的に変化する光配向を使用し、その結果、これらの層が、色収差補正性能を有して空間的に変化する偏光コンバータまたは波長板を形成することにある。本発明におけるLCPリターダ層の使用は、所与の空間的に変化する入力偏光状態を、所望の空間的に変化する出力偏光状態に変換するための光学的偏光コンバータの構築を可能にする融通性を提供する。さらに、公称の設計パラメータを最適化することによって色収差補正動作の帯域を調整することができるが、これは次の諸段落で説明する。
【0029】
本発明の空間的に変化する波長板すなわち偏光コンバータは、ガラス、透明ポリマー、石英、シリコン、サファイアなどを含む、対象の波長領域向けの適当な任意の基板上に作製されてよい。波長板構造は、リフレクタ、アンチ・リフレクタおよびアブソーバなどを組み込んだ他のオプティカル・コーティングを有してよい。波長板は、防湿層、脱酸素剤および接着剤などを組み込んだ、他の機能コーティング、材料または基板を有してよい。波長板は、他の基板および、または波長板に対して積層されてよい。空間的に変化する偏光コンバータの個別の層は次々と積み重ねられてよく、あるいは別個に作られて、次いで、層の間に直接接触なしで連続して配置されてよい。後の例では、層の間の間隙は、空気、接着剤、他の基板、他のオプティカル・コーティング、他の光学材料または他の機能材料で充填されてよい。
【0030】
次に、複屈折層の光軸角度分布の選択を詳細に説明する。前述のKoesterによる複合波長板の参照に加えて、次の、従来技術の複合波長板の論文が、以下の論議に関連する。Titleによる、Applied Optics、14巻、229〜237頁(1975年)の、「Improvement of birefringent filters.2:Achromatic waveplates」という論文は、3層および9層の波長板の色収差補正の組合せを説明し、かつ、一般化したリターダンス・レベルに関してパラメータを解析的に解明している。Titleらによる、SPIE 308巻 Polarizers and Applications 120〜125頁(1981年)の、「Achromatic retardation plates」という論文は、色収差補正リターデイション素子の構築のために様々な手法の概要を与え、また、いくつかの特に有効な設計(3層HWP、3層Pancharatnam 4分の1波長板(QWP)および4層Harris McIntyre QWP)を特定している。Pancharatnamによる、Indian Academy Science Proceed.41巻、130〜136頁(1955年)の、「Achromatic combinations of birefringent plates,Part I:An acromatic circular polarizer」という論文は、直線偏光子および複屈折板の特定の3層の組合せを備える回転色収差補正偏光子を説明している。Pancharatnamによる、Indian Academy Science Proceed.41巻、137〜144頁(1955年)の、「Achromatic combinations of birefringent plates,Part II:An acromatic quarter−wave plate」という論文は、2つのQWPの間で一定角度に配置された回転可能なHWPを有する可変の色収差補正リターダを説明している。また、McIntyreらによる、J.Opt.Soc.Of America 58巻(12)、1575〜1580頁(1968年)の、「Achromatic wave plates for the visible spectrum」という論文は、6層および10層のAQWPの設計を説明している。これらの論文のすべてが参照によって本明細書に組み込まれる。
【0031】
次の諸段落では、以下の表記が用いられる。Δφ=Δφ(x,y)=φout(x,y)−φin(x,y)は、出力直線偏光分布φout(x,y)の方位角と入力直線偏光分布の方位角φin(x,y)の間のローカル偏光軸のローカル方位角の差であり、Γおよびθ(x,y)は、それぞれ複屈折層のi番目のローカル光軸のリターダンスおよび方位角である。Γiは、i番目の複屈折層にわたって一定であると考えられることに留意されたい。
【0032】
偏光変換効率の計算
入力直線偏光分布φin(x,y)の出力直線偏光分布φout(x,y)への変換の度合いを測定するために、偏光変換効率(PCE)のパラメータが本明細書に導入される。これは、Pout/Pinと定義され、この式で、Poutは、偏光コンバータの出力で得ようとしている直線偏光分布φout(x,y)を有するビームの小部分の光学パワーであり、Pinは、偏光コンバータの入力で、入って来る所定の直線偏光分布φin(x,y)を有するビームの小部分の光学パワーである。話を簡単にするために、Pin=1とする。各(x,y,λ)でのPCEの計算を容易にするために、次式によって、φout(x,y)で配向された空間的に変化する仮想線形アナライザを使用することができる。
【0033】
【数1】

上式で、
【0034】
【数2】

であり、α=cos(2φout(x,y))、b=sin(2φout(x,y))である。
【0035】
【数3】

【0036】
上式で、Mlayeri(x,y,λ)は、偏光コンバータ・スタックのi番目の層のミュラー行列であり、伝搬の順序は層Nから層1であり、かつ、
【0037】
【数4】

である。
【0038】
Δφ=±π/2(90°または−90°)向けの2層色収差補正直線偏光回転子
基本的な色収差補正HWP(またはKoesterによって説明された色収差補正回転子)は、Δφ=±π/2(90°または−90°)向けに、波長の範囲にわたって直線偏光状態の方位角の回転を最適化するように選択された2つのリターダ層からなる。この波長板のパラメータは、Γ1,nom、θ、Γ2,nomおよびθである。角度θおよびθは、任意の無作為な入力直線偏光配向に対するものである。層1および層2のリターダンスΓ1,nomとΓ2,nomは互いにほぼ等しく、ある設計波長λnomの半波リターダンスであり、色収差補正の所望の帯域および使用される複屈折材料の波長分散特性を基に選択される。以下の説明および実施例のために、リターダンス値は、スイスのGewerbestrasse 18、CH−4123 AllschwilにあるRolic Research社からのROF5151 LCPと呼ばれる材料に基づいて選択されることになる。材料ROF5151 LCPは、一定の既知の波長分散特性Δn(λ)を有する。2つの層の光軸の配向は、これらの軸の方位角の配向が、入力偏光状態の配向φinに対して、θ=(3/4)Δφ−δおよびθ=(1/4)Δφ+δとなるように選択される。角度δは小さな修飾子角度であり、所与の回転Δφに対して、色収差補正動作の所望の範囲によって特別に最適化される。したがって、φin=0からφout=π/2へのΔφ=π/2の回転については、光軸の配向は、θ=3π/8−δすなわちθ=67.5°−δであり、θ=π/8+δすなわちθ=22.5°+δである。この実施例でδ=0に選択すると、設計波長において正確なΔφ=π/2(90°)の偏光状態の回転をもたらし、かつ設計波長のまわりの中くらいの帯域の波長に対して、100%近くのPCEで、ほぼπ/2の回転をもたらす(帯域形状は、より長い波長の方へ歪む)。これは、λ=420nm〜680nmにわたって比較的高PCEの帯域をもたらし、λnom=502nmではほぼ完全な変換を、また475nm〜550nmで非常に優れた変換をもたらす。しかし、δの値は、公称波長λnomでいくらかの効率低下の犠牲を払って、色収差補正帯域幅を増加/減少させるように調整することができる。例えば、δ=2°を選択することによって、色収差補正変換の範囲は拡大するが、その範囲でPCEのレベルはいくぶん低下する。
【0039】
任意のΔφ(x,y)向けの直線偏光分布の2層色収差補正コンバータ
入力直線偏光分布φin(x,y)を、色収差を補正してΔφ(x,y)だけ回転させるための偏光コンバータのこの特定の実施形態は、回転の結果もたらされるPCEが、任意のΔφに対して実質的に等しいスペクトル帯域幅であり、また先の段落で検討したΔφ=π/2の特定の場合に対して大きさが下回らないものであり、リターデイションΓnom=λnom/2および次式で定義されるローカル光軸の角度θおよびθの分布を有する2つの複屈折層から成り、
【0040】
【数5】

上式で、α=3/4、b=1/4であり、δは、Δφ=π/2の回転に対して所望の範囲の色収差補正および偏光変換レベルをもたらすように選択された最適値に固定される。δが約2.0°で、多くの可視波長範囲にわたって高PCEが達成されることが判明したが、0°<δ<6°の値を用いることができる。
【0041】
角度φin、φout、θおよびθが、2つの象限(すなわち第1象限、第4象限の−π/2からπ/2、または第1象限、第2象限の0からπ)だけに制限されるなら、Δφの固有の値の範囲はπであり、かつ0を含むように制限され、好ましくは、等しいプラスおよびマイナスの方位角の回転が可能な−π/2からπ/2と、プラスの回転のみ可能な0からπと、マイナスの方位角の回転のみ可能な−πから0との簡便な区間のうち1つを含む。
【0042】
角度φin、φout、θおよびθが、4つの象限すべて(すなわち第1象限〜第4象限にわたる−πからπ)で定義されるなら、Δφの固有の値の範囲は2πであり、−πからπに制限される。これによって、±πまでの等しいプラスおよびマイナスの回転が可能になる。
【0043】
方位角の2象限の定義と4象限の定義が、任意の所与の位置(x,y)でのPCEに関して実質的に類似した最終結果をもたらす一方で、空間的に変化する角度θ(x,y)およびθ(x,y)は、2象限定義の場合と4象限定義の場合の間で異なるはずである。これは、2象限システムの各角度に対して、4象限システムがθ(x,y)およびθ(x,y)の2つの解を与えるという事実によるものである。どちらの定義のやり方も本発明ではうまくいくが、各々に、固有の利点と欠点がある。2象限定義はより簡単であるが、θ(x,y)およびθ(x,y)の、ある空間的不連続点が存在し、これは、Δφが、定義された区間の反対端へ急激に変化する位置で生じることがある。他方では、4象限定義を用いると、そのような不連続点が生じる可能性は低くなるが、複屈折層の所望の入力/出力の直線偏光配向の仕様が、より複雑になる恐れがある。
【0044】
次に、式(5)および式(6)を利用する特定の例を示す。図4を見ると、入力および出力の偏光の横方向分布のプロットが示されており、前記プロットは、それぞれ、水平に偏光された入力偏光分布φin(x,y)=0が実線の矢印で示されたものに相当し、放射状偏光渦出力の偏光分布φout(x,y)が破線の矢印で示されたものに相当する。この分布は計算で使用されて、その結果が図5に示され、角度θおよびθはΔφの関数としてプロットされている。角度θおよびθは、式(5)および式(6)ならびに上記で説明された2象限の角度定義を用いて計算した。この角度のΔφ依存関係は線形に見えるが、実際にはδ=2.0°という0でない値のために、線形性からの小さな乖離が存在する。図6は、式(5)および式(6)によって配向されたローカル光軸を有する20mm×20mmの2層色収差補正偏光コンバータにおけるポイント25での、ローカル光軸対x位置およびy位置の配向を示す。第1の層の光軸は実線の矢印で示され、第2の層の光軸は破線の矢印で示されている。
【0045】
次に、図7を見ると、図6の波長板のPCEの波長依存性が示されている。図6に示された特定の計算ポイント1...25の位置次第で、図7にプロットされた最小のPCEは、97%からほぼ100%へと変化する。100%のPCEは、PCEプロット上で1.0に相当することに留意されたい。実際のデバイスでは、PCEは、いくぶん低くなることがあり、例えば95%、さらには90%にもなり得ることが当業者には理解される。
【0046】
次に、図8を参照すると、20mm×20mmの2層色収差補正偏光コンバータにおける層のローカル光軸対x位置およびy位置の配向が示され、ローカル光軸は、式(5)および式(6)ならびに4象限の角度定義によって配向されている。第1の層の光軸は実線の矢印で示され、第2の層の光軸は破線の矢印で示されている。図8を図6と比較することにより、両方の場合に同じ式が用いられたとしても、角度定義が異なると、複屈折層のローカル光軸の異なった角度値をもたらすことを直ちに見て取ることができる。
【0047】
次に、図9を見ると、図8の波長板のPCEの波長依存性が示されている。図8に示された特定の計算ポイント1...25の位置次第で、図9にプロットされた最小のPCEは、97%からほぼ100%へと変化する。PCEのスペクトルは、図7にプロットされたものと非常によく似ている。
【0048】
次に、図10を参照すると、入力および出力の偏光の横方向分布のプロットが示されており、この分布は、放射状に偏光された入力偏光分布φin(x,y)、およびX軸に沿って周期的に変化しかつY軸のまわりで対称な出力偏光分布φout(x,y)に相当する。第1の分布φin(x,y)は実線の矢印で示され、第2の分布φout(x,y)は破線の矢印で示されている。これらの分布は計算で使用され、その結果が図11および図12に示されている。図11に、式(5)および式(6)によって構成された2層色収差補正偏光コンバータ内の層のローカル光軸の方向のマップが示されている。第1の層の光軸は実線の矢印で示され、第2の層の光軸は破線の矢印で示されている。結果としてもたらされるPCEの波長依存性が図12に示される。図11に示された特定の計算ポイント1...25の位置次第で、図12にプロットされた最小のPCEは、97%からほぼ100%へと変化する。
【0049】
任意のΔφ(x,y)向けの直線偏光分布の3層色収差補正コンバータ
2層偏光コンバータ向けに開発された形式は、色収差補正動作の波長領域および総合的なPCEをさらに改善する目的で、より大きい層数へ拡張することができる。より多くの層を付加すると、これらの層の光軸配向の分布を支配する式は、2層システムを記述する式(5)および式(6)と異なる。3層システムに関して、Δφおよびφinの関数として適切な光軸角度θ、θおよびθを選択するための様々な手法が存在する。以下で、これらの手法のうち5つが、実施形態A、実施形態B、実施形態C、実施形態Dおよび実施形態Eと呼ばれて説明される。
【0050】
実施形態A
入力直線偏光分布φin(x,y)を、色収差を補正してΔφ(x,y)だけ回転させるための偏光コンバータのこの特定の実施形態は、回転の結果もたらされるPCEが、任意のΔφに対して実質的に等しいスペクトル帯域幅であり、また、先に検討したΔφ=π/2の特定の場合に対して大きさが下回らないものであり、リターデイションΓnom=λnom/2および次式で定義されるローカル光軸の角度θ、θおよびθの分布を有する3つの複屈折層から成り、
【0051】
【数6】

α=7/8、b=1/2、c=1/8であり、δは修飾子角度であって、Δφ=π/2に対して所望の色収差補正範囲および偏光変換レベルをもたらすように調整される。1.5°〜2.0°のδの最適化された値によって、大部分の可視スペクトルにわたって高い偏光度変換を達成することが可能になる。しかし、0°≦δ≦6°値を用いることができ、かなり優れた性能がもたらされる。
【0052】
次に、図13を見ると、角度θ、θおよびθがΔφの関数としてプロットされている。角度θ、θおよびθは、式(7)から式(9)を用いて計算される。図13では、この角度のΔφ依存関係は線形に見えるが、実際にはδ=1.5°という0でない値のために、線形性からの小さな乖離が存在する。次に、図14を参照すると、PCEの波長依存性が、図13による一定のΔφの値0、10、20、...180°に対応する光軸角度に対して示されている。Δφの値次第で、図14にプロットされた最小のPCEは、97%からほぼ100%へと変化する。上記で検討した2層コンバータと比べて、この実施形態では、たとえ最小のPCEが改善されなくても、式(7)から式(9)によって支配される光軸分布を有する3層コンバータは、平均PCEを改善する。
【0053】
式(7)から式(9)は、Δφの各値に対して手動で修飾子パラメータδを調整することを提案したKoesterによって教示されたものに対する改善を表す。本発明では、角度θ、θおよびθのΔφに対する関数依存性が開示され、単一の修飾子パラメータδが使用されて、計算がかなり簡単になる。θの関数依存性、およびθが|Δφ|≦π/2とπ/2≦|Δφ|≦πに関して異なることも本明細書に開示される。
【0054】
実施形態B
実施形態Bは、特に7π/8≦|Δφ|≦πに関して、上記で検討した実施形態Aの改善である。入力直線偏光分布φin(x,y)を、色収差を補正してΔφ(x,y)だけ回転させるための偏光コンバータのこの実施形態は、回転の結果もたらされるPCEが、任意のΔφに対して実質的に等しいスペクトル帯域幅であり、また、先に検討したΔφ=π/2の特定の場合に対して大きさが下回らないものであり、リターデイションΓnom=λnom/2ならびに式(7)、式(8)、および式(9)におけるのと同様にしてそれぞれ定義されるローカル光軸の角度θ、θおよびθの分布を有する3つの複屈折層から成る。しかし、パラメータαとcは、次式で別個に定義される。
【0055】
【数7】

【0056】
1.5°〜2.0°のδの最適化された値によって、Δφ=π/2に対して大部分の可視スペクトルにわたって高い偏光度変換を達成することが可能になるが、依然として0°≦δ≦6°の値を用いることができる。
【0057】
次に、図15を見ると、角度θ、θおよびθがΔφの関数としてプロットされている。角度θ、θおよびθは、式(7)から式(12)を用いて計算される。これらの角度のΔφに対する依存性は、この場合明らかに非線形である。パラメータδは1.5°に取られる。
【0058】
図16を参照すると、PCEの波長依存性が、図15による一定のΔφの値0、10、20、...180°に対応する光軸角度に対して示されている。特定のΔφの値次第で、図16にプロットされた最小のPCEは、99.5%からほぼ100%へと変化する。2層偏光コンバータおよび3層偏光コンバータ(実施形態A)の場合と比べると、式(10)から式(12)で与えられた改善されたパラメータα、b、およびcで、はるかに高いPCEが達成可能であることが分かる。これは、本明細書で示された実施形態Bでは、7π/8<|Δφ|≦πに対して、パラメータαが7/8から1へ、パラメータcが1/8から0へ、それぞれ変化するからである。この変形形態によって、色収差補正が7π/8<|Δφ|≦πにわたって累進的に劣化する実施形態Aに対して相当な改善がもたらされる。
【0059】
実施形態C
入力直線偏光分布φin(x,y)を、色収差を補正してΔφ(x,y)だけ回転させるための偏光コンバータのこの特定の実施形態は、回転の結果もたらされるPCEが、任意のΔφに対して実質的に等しいスペクトル帯域幅であり、また、先に検討したΔφ=π/2の特定の場合に対して大きさが下回らないものであり、リターデイションΓnom=λnom/2および次式で定義されるローカル光軸の角度θ、θおよびθの分布を有する3つの複屈折層から成り、
【0060】
【数8】

α=7/8、b=1/2、c=1/8であり、δは修飾子角度であって、Δφ=π/2に対してほとんどの可視スペクトルにわたって所望の色収差補正範囲および偏光変換レベルをもたらすように調整される。1.5°〜2.0°のδの最適化された値によって、大部分の可視スペクトルにわたって高い偏光度変換を達成することが可能になる。0°≦δ≦6°の値を用いることができ、かなり優れた性能を達成する。
【0061】
次に、図17を見ると、角度θ、θおよびθがΔφの関数としてプロットされている。角度θ、θおよびθは、式(13)から式(15)までから計算される。角度θ、θおよびθのΔφに対する依存性は、δ=1.5°で非線形である。図18を参照すると、PCEの波長依存性が、図17による一定のΔφの値0、10、20、...180°に対応する光軸角度に対して示されている。特定のΔφの値次第で、図18にプロットされた最小のPCEは、99.5%からほぼ100%へと変化する。本明細書に示した実施形態Cでは、7π/8<|Δφ|≦πに対して、角度θはθ(7π/8,φin)からπへ、角度θは、θ(7π/8,φin)から0へ、それぞれ直線的に変化する。この変形形態によって、色収差補正が7π/8<|Δφ|≦πにわたって累進的に劣化する実施形態Aに対して改善がもたらされる。
【0062】
実施形態D
入力直線偏光分布φin(x,y)を、色収差を補正してΔφ(x,y)だけ回転させるための偏光コンバータのこの特定の実施形態は、回転の結果もたらされるPCEが、任意のΔφに対して実質的に等しいスペクトル帯域幅であり、また、先に検討したΔφ=π/2の特定の場合に対して大きさが下回らないものであり、リターデイションΓnom=λnom/2および次式で定義されるローカル光軸の角度θ、θおよびθの分布を有する3つの複屈折層から成り、
【0063】
【数9】

α=5/6、b=1/2、c=1/6であり、δは修飾子角度であって、Δφ=π/2に対してほとんどの可視スペクトルにわたって所望の色収差補正範囲および偏光変換レベルをもたらすように調整される。最適化されたδの値は−1.0°であると判明し、この値で、ほとんどの可視スペクトルにわたって高PCEが達成される。−4°≦δ≦0°値を用いることができ、かなり優れた性能を達成する。
【0064】
次に、図19を見ると、角度θ、θおよびθがΔφの関数としてプロットされている。角度θ、θおよびθは、式(16)から式(18)を用いて計算される。Δφに対する角度依存性は、δ=−1.0°で非線形である。図20を参照すると、PCEの波長依存性が、図19による一定のΔφの値0、10、20、...180°に対応する光軸角度に対して示されている。特定のΔφの値次第で、図20にプロットされた最小のPCEは、98.5%からほぼ100%へと変化する。
【0065】
実施形態E
入力直線偏光分布φin(x,y)を、色収差を補正してΔφ(x,y)だけ回転させるための偏光コンバータのこの特定の実施形態は、回転の結果もたらされるPCEが、任意のΔφに対して実質的に等しいスペクトル帯域幅であり、また、先に検討したΔφ=π/2の特定の場合に対して大きさが下回らないものであり、リターデイションΓnom=λnom/2および次式で定義されるローカル光軸の角度θ、θおよびθの分布を有する3つの複屈折層から成り、
【0066】
【数10】

δは修飾子角度であって、Δφ=π/2に対してほとんどの可視スペクトルにわたって所望の色収差補正範囲および偏光変換レベルをもたらすように調整される。最適化されたδの値は−1.0°であると判明し、この値で、ほとんどの可視スペクトルにわたって高PCEが達成され、依然として0°≦δ≦4°値を用いることができ、かなり優れた性能を達成する。
【0067】
次に、図21を参照すると、角度θ、θおよびθが、δ=1.0°でのΔφの関数としてプロットされている。角度θ、θおよびθは、式(19)から式(21)を用いて計算される。これらの角度のΔφに対する依存性は、この場合線形である。図22を見ると、PCEの波長依存性が、図21による一定のΔφの値0、10、20、...180°に対応する光軸角度に対して示されている。特定のΔφの値次第で、図22にプロットされた最小のPCEは、97.3%からほぼ100%へと変化する。
【0068】
式(19)から式(21)は、上記の参照中のTitleの文献から採用されたものである。この実施形態の利点はその単純性にあり、Δφに対して生じるPCEの変化は、比較的小さい。しかし、この実施形態で達成可能なPCEおよび色収差補正は、上記で示された他の実施形態ほど優れたものではない。
【0069】
任意のΔφ(x,y)向けの直線から回転への2層色収差補正偏光コンバータ
入力直線偏光分布φin(x,y)を、色収差を補正して回転偏光に変換するための偏光コンバータのこの特定の実施形態は、もたらされるPCEのスペクトル帯域幅が任意のΔφに対して実質的に同じであり、リターデイションΓnom1=λnom/4およびΓnom2=λnom/2を有する2つの複屈折層から成り、ローカル光軸の角度θおよびθの分布が次式で定義される。
【0070】
【数11】

上式で、光は、まず層2を通り、次いで層1を通って伝搬するが、必要とされる回転偏光が左手系か右手系かということに応じてk=+1または−1であり、δは、直線から回転への偏光の変換に関するPCEの色収差補正帯域幅およびレベルを最適化するように選択された修飾子角度である。420nm〜680nmの高い変換効率形式向けの最適値はδ=1.2°であると判明した。複屈折材料はRolic Research社からのROF5151である。0°≦δ≦4°値を用いることができ、かなり優れた性能を達成する。
【0071】
先に示された直線偏光コンバータ(回転子)の実施例のように、入力の直線偏光状態の空間的に変化する領域がφin(x,y)として配向されると、式(22)および式(23)に従って層1および層2の光軸角度を空間的に変化させることができる。以前に説明されたように、各φin(x,y)向けの複合多層のミュラー行列の定式化がなされている。直線から回転への偏光の変換に関するPCEの計算は、回転アナライザが計算で使用されることを除けば、異なって配向された直線偏光状態の間の変換効率と同様に計算される。したがって、そのような素子については、出力の偏光状態は、対象の波長帯域内のすべての波長に対して高度に回転偏光されることになる。
【0072】
式(22)および式(23)によって記述された2層コンバータも、左手系または右手系に回転偏光された入力状態に対して、逆の伝搬方向に使用することができる。光伝搬の相互性のために、次いで、出力状態は空間的に変化する直線状態へ高効率で変換されることになる。
【0073】
式(5)から式(23)は、修飾子パラメータδが、Δφおよび、またはφinの関数として連続的に変化し、かつ上記の式で仮定されたように固定値にとどまることのないのを可能にするように、より一般化された形式に書き直すことができる。そのようなやり方で書き直されたとき、これらの式では、さらに高レベルのPCEおよびより広い色収差補正波長領域が可能になる。しかし、本明細書に提示された式は、広範な波長領域にわたって偏光変換の高レベルの色収差補正を達成することを可能にする一方で、単純性という利点がある。他の既知の基本的な色収差補正波長板構成手法に対して、本明細書に提示された、色収差補正偏光コンバータを空間的に変化させるという概念が適用され得ることは当技術者には理解される。実際のコンバータでは、PCEが、図の7、9、12、14、16、18、20および22に提示されたものよりいくぶん低くなり得ることも理解される。例えば、式(5)から式(23)によって作られた実際のコンバータのPCEは、95%かまたは90%でさえある。
【0074】
偏光コンバータを空間的に変化させる用途例
次に、本発明の色収差補正偏光コンバータの用途例を示す。用途の一領域は偏光収差補正に関する。図23を見ると、偏光顕微鏡の回路図が提示され、光源231、偏光子232、供試体233、対物レンズ234、偏光補正素子235およびアナライザ236を備える素子の光学縦列230を示す。円237A〜237Dは、光学縦列230に沿って、破線238で示された対応する光学的偏光分布を表している。動作では、光源231によって放射された光239は、偏光子232によって偏光されて供試体233を照射するように向けられ、これは対物レンズ234によって結像される。供試体233の前の光239の偏光分布は、垂直の直線偏光の一様な分布として円237Aによって表象的に示されている。対物レンズ234内に偏光収差があるために、レンズ234の後の円237Bによって示される偏光分布は、もはや一様ではない。例えば本発明による前述の2層素子または3層素子として製造することができる偏光補正素子235の機能は、円237Cによって表象的に示されている直線偏光へ戻す偏光分布をもたらすことである。最終的に、供試体233の像の偏光分布を解析するために、偏光子232の偏光方向と交差する偏光方向を有する偏光アナライザ236が使用される。アナライザの後の偏光分布が、円237Dによって示されている。偏光コンバータ素子235がないと、像領域237Dの周辺は、対物レンズ234によって導入され円237Bによって表される偏光収差のために、接眼レンズ(図示せず)で見られるように照射されて見えることになる。したがって、偏光コンバータ素子235によって、背景照射のレベルを低下させ、かつ供試体233の偏光像(図示せず)をより優れて強調することが可能になる。
【0075】
次に図24を参照すると、本発明の偏光変換素子241を使用するリア・プロジェクション・テレビ240の側方の断面図が示され、出力ビーム246を生成するように、光エンジン245によって放射された結像光244によって照射される輝度向上プリズム状フィルム243を有するスクリーン242を備える。プリズム状フィルム243の代わりにフレネル・レンズを使用することができる。
【0076】
光エンジン245は、垂直に偏光された一様な直線偏光分布を有する結像光244を放射する。しかし、急勾配な投影角のために、スクリーン242のプリズム状フィルム243上に入射する光244の偏光分布によって、プリズム状フィルム243にわたる不均一なフレネル反射損失がもたらされ、結果としてスクリーン242の輝度の空間的不均一性が生じる。図25は最後のポイントを示す。図25には、偏光変換素子241がある場合とない場合の、リア・プロジェクション・テレビ240のスクリーン242を照射する図24の光ビーム244の光学的偏光マップが示されている。素子241のない直線偏光の中心軸の方向は、実線の矢印252として示される。偏光変換素子241は、スクリーン242のプリズム状フィルム243上に入射する光の偏光分布を、ポイント250のまわりで放射状に偏光された状態にする。相当する偏光分布は、破線の矢印251で示される。偏光分布をそのような放射状の偏光に変換すると、入射光244を、プリズム状フィルム243のすべての位置でプリズム状フィルム243に対してp偏光された状態にする。これによって、フィルム243内のフレネル損失をかなり低下させて、スクリーン242の輝度をならすことが可能になる。p偏光に対して観測されたブリュースター効果のために、フレネル損失は低下する。同様のやり方で、急勾配の光学的特性を有する回転対称素子(例えば高開口数非球面レンズ)のフレネル損失は、放射状の偏光渦を形成する偏光コンバータ(例えば図2Bのコンバータ207または図3A、図3Bのコンバータ307)を使用することによりかなり低下させることができる。
【0077】
プロジェクション・テレビの比較的厚い側部輪郭は、プロジェクション・テレビに対する主要な競合製品の1つである平面パネル・テレビの薄い側部輪郭と比べて不利になる不利益要因である。この例では、本発明の偏光分布補正コンバータの適用によって、プロジェクション・テレビの側部輪郭をかなり短縮することが可能になり、平面パネル・テレビの輪郭に近いものをもたらす。したがって、本発明を利用することにより、リア・プロジェクション・テレビの競争力はかなり改善される。投影システムにおける、空間的に変化するリターダの一般的な使用法に関する詳細は、Sarayeddineら、「Achromatic Space Variant Retarder for Micro−Display Based Projection Systems」SID 2008 proseedings、56.2、850〜853頁に見ることができる。
【0078】
本発明の偏光変換素子のその他の用途は、フォトリソグラフィ、光学式データ記憶装置および文献、商品または論文の認証におけるそのような用途において偏光度を空間的に変化させることを含む。偏光コンバータの色収差補正によって、光学システムにおいて複数の波長を利用することに特有の重要な利点を実現することが可能になる。今日のフォトニクスの用途の大部分が光の複数の波長を含むので、本発明の偏光コンバータの用途は非常に多い。例えば、複数の波長の螢光および非線形の光学顕微鏡法は、多くの波長で同時に偏光コントラストを増強するのに偏光コンバータを使用することができる。色収差補正偏光操作は、回折限界の光学部品を使用することによって光学解像度を向上させるハイエンドの結像用途において、光学的位相を変更するのに使用することができる。光ピンセットおよびフェムト秒微細機械加工のような用途では、合焦された光場の光学的偏光および空間分布を操作するのに、偏光の一定の空間的分布を有する光場(例えば偏光渦)を利用することができる。フェムト秒光パルスが必然的に多色であるため、超短光パルスの特定用途向けの偏光分布を生成するのに、色収差補正偏光コンバータを有利に使用することができる。
【符号の説明】
【0079】
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25 計算ポイント
100 透過スペクトル
102 半波長板
104、106 偏光子
110 スペクトル
111 ポイント
112 複合半波長板
114、116 偏光子
200、201 偏光渦
202 多色ビーム
204 偏光の直線状分布
206、207 色収差補正コンバータ
208 光スペクトル
230 光学縦列
231 光源
232 偏光子
233 供試体
234 対物レンズ
235 偏光補正素子
236 アナライザ
237 円
238 破線
239 光
240 リア・プロジェクション・テレビ
241 偏光変換素子
242 スクリーン
243 プリズム状フィルム
244 光ビーム
245 光エンジン
246 出力ビーム
250 ポイント
251、252 矢印
301 偏光渦
302 多色ビーム
303 不均一な分布
304 一様な分布
307 不均質偏光子
309 直線偏光子
310 色収差補正偏光コンバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心波長および帯域幅によって特徴づけられた少なくとも1つの波長帯域を有する光ビームの偏光の横方向分布を、第1所定の分布から第2の所定の横方向分布へと変換するための光学素子であって、
前記光学素子が材料層のスタックを備え、前記層が複屈折であり、前記スタックの各層の前記複屈折が、前記層にわたって実質的に一定のリターダンスおよび前記層にわたって連続して徐々に変化する複屈折のローカル軸の方向によって特徴づけられ、
前記層の前記ローカル軸方向の複屈折の変化が、前記光ビームの全波長帯域にわたって、前記光ビームの前記偏光の分布を、前記第1の分布から前記第2の分布へ変換するように、その間で調整され、かつ、
前記光ビームの偏光の分布の前記変換の度合いが、偏光の前記第2の横方向分布を有する前記ビームの光学パワーと偏光の前記第1の横方向分布を有する前記ビームの光学パワーの比として定義された偏光変換効率(PCE)のパラメータによって特徴づけられる光学素子。
【請求項2】
前記波長帯域の前記帯域幅が、前記波長帯域の前記中心波長の少なくとも10%であり、かつPCE≧95%である請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記光ビームが、オーバーラップしない2つの帯域を有し、各波長帯域の帯域幅が、前記波長帯域の前記対応する中心波長の少なくとも5%であり、かつ各帯域におけるPCEが少なくとも95%である請求項1に記載の光学素子。
【請求項4】
前記波長帯域の前記帯域幅が、前記波長帯域の前記中心波長の少なくとも40%であり、かつPCE≧90%である請求項1に記載の光学素子。
【請求項5】
前記偏光の前記第1のおよび前記第2の横方向分布が、任意の無作為なポイントで、前記光学素子の開口部内にある座標(x,y)を有するローカル直線偏光軸によって特徴づけられる直線偏光の分布であり、
前記第1の横方向分布に関する前記ローカル直線偏光軸が、前記光学素子の所定の基準軸に対して角度φin(x,y)を形成し、かつ、
前記第2の横方向分布に関する前記ローカル直線偏光軸が、前記所定の基準軸に対して角度φout(x,y)を形成する請求項1に記載の光学素子。
【請求項6】
前記角度φin(x,y)およびφout(x,y)の前記横方向分布のうち1つが、xおよびyと無関係の一様分布である請求項5に記載の光学素子。
【請求項7】
直線偏光の前記第2の横方向分布の前記ローカル直線偏光軸が、前記所定の基準軸に対して、前記光学素子の外側平面にある渦ポイントにその起点を有する極座標系の任意のローカル・ポイント(α,r)で角度ψout(α)を形成し、αは方位角であり、rは前記ローカル・ポイントと前記極座標系の前記渦ポイントの間の距離であり、前記角度ψout(α)はαだけの関数であってrに左右されず、かつ、
ψout(α)の値が、前記渦ポイントのまわりでトレースされた任意の閉路においてπの倍数だけ変化する請求項5に記載の光学素子。
【請求項8】
前記光学素子が、前記光学素子の前記外面に垂直な渦軸を有して前記渦ポイントを含み、前記光学素子の前記開口部のすべてのポイントでの直線偏光の前記第2の横方向分布の前記ローカル偏光軸が、前記渦軸を通り抜ける請求項7に記載の光学素子。
【請求項9】
複屈折層のスタックが、第1の層の複屈折のローカル軸と前記基準軸との間に、ポイント(x,y)で第1の角度θ(x,y)を有する第1の層と、第2の層の複屈折のローカル軸と前記基準軸との間に、ポイント(x,y)で第2の角度θ(x,y)を有する第2の層とから成り、θおよびθが次式で表され、

上式で、各複屈折層の前記リターダンスが、前記光ビームの波長の2分の1と実質的に等しく、φin=φin(x,y)、φout=φout(x,y)、θ=θ(x,y)、θ=θ(x,y)、Δφ≡φout−φin、α=3/4、b=1/4、かつ、0°≦δ≦6°である請求項5に記載の光学素子。
【請求項10】
前記複屈折層のスタックが、
第1の層の複屈折のローカル軸と前記基準軸との間に、ポイント(x,y)で第1の角度θ(x,y)を有する第1の層と、
第2の層の複屈折のローカル軸と前記基準軸との間に、ポイント(x,y)で第2の角度θ(x,y)を有する第2の層と、
第3の層の複屈折のローカル軸と前記基準軸との間に、ポイント(x,y)で第3の角度θ(x,y)を有する第3の層とから成り、
θ、θおよびθが次式で表され、

上式で、各複屈折層の前記リターダンスが、前記光ビームの波長の2分の1と実質的に等しく、φin=φin(x,y)、φout=φout(x,y)、θ=θ(x,y)、θ=θ(x,y)、θ=θ(x,y)、Δφ≡φout−φin、α=7/8、b=1/2、c=1/8、かつ、0°≦δ≦6°である請求項5に記載の光学素子。
【請求項11】
前記複屈折層のスタックが、
第1の層の複屈折のローカル軸と前記基準軸との間に、ポイント(x,y)で第1の角度θ(x,y)を有する第1の層と、
第2の層の複屈折のローカル軸と前記基準軸との間に、ポイント(x,y)で第2の角度θ(x,y)を有する第2の層と、
第3の層の複屈折のローカル軸と前記基準軸との間に、ポイント(x,y)で第3の角度θ(x,y)を有する第3の層とから成り、
θ、θおよびθが次式で表され、

上式で、各複屈折層の前記リターダンスが、前記光ビームの波長の2分の1と実質的に等しく、φin=φin(x,y)、φout=φout(x,y)、θ=θ(x,y)、θ=θ(x,y)、θ=θ(x,y)、Δφ≡φout−φin

かつ、0°≦δ≦6°である請求項5に記載の光学素子。
【請求項12】
前記複屈折層のスタックが、
第1の層の複屈折のローカル軸と前記基準軸との間に、ポイント(x,y)で第1の角度θ(x,y)を有する第1の層と、
第2の層の複屈折のローカル軸と前記基準軸との間に、ポイント(x,y)で第2の角度θ(x,y)を有する第2の層と、
第3の層の複屈折のローカル軸と前記基準軸との間に、ポイント(x,y)で第3の角度θ(x,y)を有する第3の層とから成り、
θ、θおよびθが次式で表され、

上式で、各複屈折層の前記リターダンスが、前記光ビームの波長の2分の1と実質的に等しく、φin=φin(x,y)、φout=φout(x,y)、θ=θ(x,y)、θ=θ(x,y)、θ=θ(x,y)、Δφ≡φout−φin、α=7/8、b=1/2、c=1/8、かつ、0°≦δ≦6°である請求項5に記載の光学素子。
【請求項13】
前記複屈折層のスタックが、
第1の層の複屈折のローカル軸と前記基準軸との間に、ポイント(x,y)で第1の角度θ(x,y)を有する第1の層と、
第2の層の複屈折のローカル軸と前記基準軸との間に、ポイント(x,y)で第2の角度θ(x,y)を有する第2の層と、
第3の層の複屈折のローカル軸と前記基準軸との間に、ポイント(x,y)で第3の角度θ(x,y)を有する第3の層とから成り、
θ、θおよびθが次式で表され、

上式で、各複屈折層の前記リターダンスが、前記光ビームの波長の2分の1と実質的に等しく、φin=φin(x,y)、φout=φout(x,y)、θ=θ(x,y)、θ=θ(x,y)、θ=θ(x,y)、Δφ≡φout−φin、α=5/6、b=1/2、c=1/6、かつ、−4°≦δ≦0°である請求項5に記載の光学素子。
【請求項14】
前記複屈折層のスタックが、
第1の層の複屈折のローカル軸と前記基準軸との間に、ポイント(x,y)で第1の角度θ(x,y)を有する第1の層と、
第2の層の複屈折のローカル軸と前記基準軸との間に、ポイント(x,y)で第2の角度θ(x,y)を有する第2の層と、
第3の層の複屈折のローカル軸と前記基準軸との間に、ポイント(x,y)で第3の角度θ(x,y)を有する第3の層とから成り、
θ、θおよびθが次式で表され、

上式で、各複屈折層の前記リターダンスが、前記光ビームの波長の2分の1と実質的に等しく、φin=φin(x,y)、φout=φout(x,y)、θ=θ(x,y)、θ=θ(x,y)、θ=θ(x,y)、Δφ≡φout−φin、α=5/6、b=1/2、c=1/6、かつ、0°≦δ≦4°である請求項5に記載の光学素子。
【請求項15】
偏光の前記第1の横方向分布が、任意の無作為なポイントで、前記光学素子の開口部内にある座標(x,y)を有するローカル直線偏光軸によって特徴づけられる直線偏光の分布であり、前記第1の横方向分布の前記ローカル直線偏光軸が、前記光学素子の所定の基準軸に対して角度φin(x,y)を形成し、かつ、
偏光の前記第2の横方向分布が、完全に左手系の回転偏光または右手系の回転偏光から成る請求項1に記載の光学素子。
【請求項16】
複屈折層の前記スタックが、第1の層の複屈折のローカル軸と前記基準軸との間に、ポイント(x,y)で第1の角度θ(x,y)を有する第1の層と、第2の層の複屈折のローカル軸と前記基準軸との間に、ポイント(x,y)で第2の角度θ(x,y)を有する第2の層とから成り、θおよびθが次式で表され、

前記第1の層および前記第2の層の前記リターダンスが、前記光ビームの波長のそれぞれ4分の1および2分の1と実質的に等しく、φin=φin(x,y)、θ=θ(x,y)、θ=θ(x,y)であって、偏光の、右手系回転の第2の横方向分布についてはk=+1であり、または左手系回転の第2の横方向分布についてはk=−1であり、かつ、0°≦δ≦4°である請求項15に記載の光学素子。
【請求項17】
前記複屈折層が、光配向された重合フォトポリマーを備え、前記層の複屈折の前記ローカル軸の前記方向が、前記光配向されたフォトポリマーの配向の方向の空間的変化に従って空間的に変化する請求項1に記載の光学素子。
【請求項18】
前記複屈折層が、前記光配向された重合フォトポリマーに対して配向されて架橋によって固結された架橋可能な液晶材料層を備える請求項17に記載の光学素子。
【請求項19】
前記複屈折層が、前記配向層によって配向された配向層および液晶層を備え、前記層の複屈折の前記ローカル軸の前記方向が、前記配向層の配向の方向の空間的変化に従って空間的に変化する請求項1に記載の光学素子。
【請求項20】
前記配向層が、直線的に重合可能なフォトポリマーの光配向された層と、バフがけされた重合体層と、自己集合層と、斜めに堆積された配向層とのうち1つを備える請求項19に記載の光学素子。
【請求項21】
前記複屈折層の前記スタックを通って複光路方式光路を形成するように複屈折層の前記スタックに対して光学的に結合されたリフレクタをさらに備える請求項1に記載の光学素子。
【請求項22】
前記複屈折層が複屈折のサブ波長格子構造を備える請求項1に記載の光学素子。
【請求項23】
偏光状態が空間的に変化する偏光子を形成するように、複屈折層の前記スタックに光学的に結合された直線偏光素子または回転偏光素子をさらに備える請求項1に記載の光学素子。
【請求項24】
前記偏光素子が、ワイヤ・グリッド偏光子と、偏光ビーム・スプリッタと、ダイクロイック偏光子と、コレステロール偏光子と、偏光プリズムと、ブルースター角偏光子と、干渉偏光子とから成るグループから選択される請求項23に記載の光学素子。
【請求項25】
前記光ビームを受け取って偏光の横方向分布を偏光の中間の分布に変換するための請求項1に記載の第1の光学素子と、
前記偏光の中間の分布を有する前記光ビームを偏向させるために前記第1の光学素子に光学的に結合された偏光素子と、
前記光ビームの偏光の前記横方向分布をさらに変換し、かつ前記光ビームを出力するために、前記偏光素子に光学的に結合された請求項1に記載の第2の光学素子とを備える、偏光を変換する偏光子。
【請求項26】
前記偏光素子が、ワイヤ・グリッド偏光子と、偏光ビーム・スプリッタと、ダイクロイック偏光子と、コレステロール偏光子と、偏光プリズムと、ブルースター角偏光子と、干渉偏光子から成るグループから選択される請求項25に記載の光学素子。
【請求項27】
偏光顕微鏡検査法と、フォトリソグラフィと、結像と、表示装置と、光学式データ記憶装置と、文献、商品または論文の認証と、フェムト秒微細機械加工とから成るグループから選択された用途において、光の偏光状態を、色収差を補正して空間的に変化させるための、請求項1に記載の光学素子の使用法。
【請求項28】
光学システムにおいて空間的偏光の色収差を補正するための、請求項1に記載の光学素子の使用法。
【請求項29】
投影表示システムにおいて空間的偏光の色収差を補正するための、請求項28に記載の光学素子の使用法。
【請求項30】
偏光顕微鏡検査法と、フォトリソグラフィと、結像と、光学式データ記憶装置と、フェムト秒微細機械加工とから成るグループから選択された用途において分解能を向上するための、請求項1に記載の光学素子の使用法。
【請求項31】
光ピンセット・システムまたはフェムト秒微細機械加工システムにおいて色収差補正偏光渦を生成するための、請求項7に記載の光学素子の使用法。
【請求項32】
光学結像システムにおいてフレネル損失を低減するための、請求項1に記載の光学素子の使用法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate


【公開番号】特開2009−151287(P2009−151287A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−289485(P2008−289485)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(502151820)ジェイディーエス ユニフェイズ コーポレーション (90)
【氏名又は名称原語表記】JDS Uniphase Corporation
【住所又は居所原語表記】430 N. McCarthy Boulevard, Milpitas, California, 95035, USA
【Fターム(参考)】