説明

光エンジン

【課題】高い熱効率で、動力を得ることができるようにする。
【解決手段】加熱用シリンダ20Aのクランク角度が所定の上死点前クランク角度に到達すると、制御部19により、可動ミラー18Aの反射面が傾斜するように駆動され、加熱用シリンダ20Aの窓を介した太陽光の入射が開始される。このとき、光吸収体によりガス封入室内のガスが加熱されて膨張し加熱用シリンダ20Aのピストンが下死点方向に移動するときに、間欠機構により、冷却用シリンダ22Aのピストンを上死点で固定させる。加熱用シリンダ20Aのピストンの移動によりクランク軸14が回転駆動され、出力が取り出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光エンジンに係り、特に、外部からの光を入射させて駆動する光エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、太陽熱を用いて気体の加熱を行い、動力を得るエンジンが知られている。例えば、収束した太陽光により空気加熱管を加熱して高温高圧の空気をシリンダの熱空気室に送り、ピストンを押し出すと共に、はずみ車によりクランク軸の回転を持続し、熱空気吸入弁と熱空気排出弁を交互に開閉して、クランク軸の回転を持続するようにした熱空気エンジンが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−306747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、シリンダの外部で加熱した高温高圧の空気をシリンダに送っているため、熱効率が低下してしまう、という問題がある。
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、高い熱効率で、動力を得ることができる光エンジンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために本発明に係る光エンジンは、外部からの光を入射させるための窓を備え、断熱材で形成された第1シリンダと、前記窓を有し、かつ、前記第1シリンダ内にガスを封入するための第1ガス封入室を区画すると共に、前記第1シリンダ内に摺動可能に配置された第1ピストンと、一端が前記第1ピストンに連結され他端が前記第1シリンダの外部へ延出した第1連結棒と、前記第1ガス封入室内に設けられ、かつ、前記窓から入射した可視光を吸収して、高温になり前記ガスへ伝熱すると共に赤外放射する光吸収体と、前記窓の内側の領域に設けられ、可視光を透過し、かつ、赤外光を反射させる選択反射膜と、放熱材で形成された第2シリンダと、前記第2シリンダ内にガスを封入するための第2ガス封入室を区画すると共に、前記第2シリンダ内に摺動可能に配置された第2ピストンと、一端が前記第2ピストンに連結され他端が前記第2シリンダの外部へ延出した第2連結棒と、前記第1ガス封入室と前記第2ガス封入室とを連通する連通路と、前記第2ピストンを上死点で固定すると共に、前記第1ピストンが下死点方向に移動する第1工程のときに、前記窓を介して外部からの光を前記第1ガス封入室に入射させる光入射制御手段と、前記第1連結棒及び前記第2連結棒に連動するクランク軸、及び前記クランク軸に固定されたフライホイールを備え、前記第1工程として、光の入射により前記第1ガス封入室のガスが膨張して前記第1ピストンが下死点方向に移動するときに、前記第2ピストンを上死点で固定し、前記第1ピストンが下死点へ到達したときに、第2工程として、前記第1ピストンを下死点から上死点方向に移動させると共に、前記第2ピストンを上死点から下死点方向へ移動させ、前記第1ピストンが上死点へ到達し、かつ、前記第2ピストンが下死点へ到達したときに、第3工程として、前記第1ピストンを上死点から下死点方向へ移動させると共に、前記第2ピストンを下死点から上死点方向へ移動させ、前記第1ピストンが下死点へ到達し、かつ、前記第2ピストンが上死点へ到達したときに、第4工程として、前記第1ピストンを下死点から上死点方向へ移動させると共に、前記第2ピストンを上死点で固定するクランク機構と、を含んで構成されている。
【0007】
本発明に係る光エンジンによれば、第1工程のときに、光入射制御手段によって、窓を介して外部からの光を第1ガス封入室に入射させる。このとき、光吸収体によって、窓から入射した可視光を吸収して、高温になりガスへ伝熱すると共に赤外放射し、第1ガス封入室のガスを加熱する。また、クランク機構によって、第1工程として、光の入射により第1ガス封入室のガスが膨張して第1ピストンが下死点方向に移動するときに、第2ピストンを上死点で固定する。
【0008】
そして、第1ピストンが下死点へ到達したときに、クランク機構によって、第2工程として、第1ピストンを下死点から上死点方向に移動させると共に、第2ピストンを上死点から下死点方向へ移動させ、第1ピストンが上死点へ到達し、かつ、第2ピストンが下死点へ到達したときに、第3工程として、第1ピストンを上死点から下死点方向へ移動させると共に、第2ピストンを下死点から上死点方向へ移動させる。
【0009】
そして、第1ピストンが下死点へ到達し、かつ、第2ピストンが上死点へ到達したときに、クランク機構によって、第4工程として、第1ピストンを下死点から上死点方向へ移動させると共に、第2ピストンを上死点で固定する。
【0010】
このように、光吸収体により、第1シリンダの窓から入射した可視光を吸収して、高温になりガスへ伝熱すると共に赤外放射し、第1ガス封入室のガスを加熱することによって、第1ピストンが下死点方向に移動するため、高い熱効率で、動力を得ることができる。
【0011】
本発明の光エンジンは、第2ガス封入室の外部に設けられた冷却フィンを更に含むことができる。これによって、第2ガス封入室内のガスを冷却することができる。
【0012】
本発明の光エンジンは、第2ガス封入室の外部に設けられ、かつ、第2ガス封入室を水冷する水冷部を更に含むことができる。これによって、第2ガス封入室内のガスを冷却することができる。
【0013】
また、上記の光エンジンは、第2ガス封入室の内部に設けられた伝熱フィンを更に含むことができる。これによって、第2ガス封入室内のガスをより高速に冷却することができる。
【0014】
上記のガスを、赤外光を吸収するガスとすることができる。これによって、第1ガス封入室内のガスをより効率よく加熱することができる。
【0015】
また、上記ガスを、炭酸ガス、塩素ガス、及び2酸化窒素の何れか1つとすることができる。
【0016】
上記の第1シリンダ及び第2シリンダは、4組の第1シリンダ及び第2シリンダであって、クランク機構は、4組の第1シリンダ及び第2シリンダにおける工程が各々異なるように、クランク軸が、4組の第1シリンダ及び第2シリンダの第1連結棒及び第2連結棒に連動し、光入射制御手段は、第1工程となる何れかの第1シリンダの第1ガス封入室に、窓を解して外部からの光を入射させることができる。これによって、常時、何れかの組の第1シリンダ及び第2シリンダが第1工程となるため、連続して、動力を得ることができる。
【0017】
上記の外部からの光を、太陽光とすることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明の光エンジンによれば、光吸収体により、第1シリンダの窓から入射した可視光を吸収して、高温になりガスへ伝熱すると共に赤外放射し、第1ガス封入室のガスを加熱することによって、第1ピストンが下死点方向に移動するため、高い効率で、動力を得ることができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る光エンジンの構成を示す概略図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る光エンジンの加熱用シリンダの構成を示す断面図である。
【図3】光吸収体を示すイメージ図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る光エンジンの冷却用シリンダの構成を示す断面図である。
【図5】(A)サイクル1における加熱用シリンダ及び冷却用シリンダの様子を示すイメージ図、(B)サイクル2における加熱用シリンダ及び冷却用シリンダの様子を示すイメージ図、(C)サイクル3における加熱用シリンダ及び冷却用シリンダの様子を示すイメージ図、(D)サイクル3における加熱用シリンダ及び冷却用シリンダの様子を示すイメージ図、及び(E)サイクル4における加熱用シリンダ及び冷却用シリンダの様子を示すイメージ図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る光エンジンの構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、本実施の形態では、4気筒の光エンジンに本発明を適用した場合を例に説明する。
【0021】
図1に示すように、第1の実施の形態に係る光エンジン10には、4気筒の各々について2つのシリンダで構成されるシリンダ群12と、シリンダ群12から延出した連結棒に連動するように接続されたクランク軸14と、クランク軸14に固定されたフライホイール16と、収束された太陽光を反射させる可動ミラー群18と、可動ミラー群18を駆動させる制御部19とを備えている。なお、クランク軸14及びフライホイール16が、本発明のクランク機構の一例である。可動ミラー群18及び制御部19が、本発明の光入射制御手段の一例である。
【0022】
シリンダ群12は、4組の加熱用シリンダ20A〜20D及び冷却用シリンダ22A〜22Dから構成され、1組の加熱用シリンダ20及び冷却用シリンダ22が1気筒に相当する。
【0023】
加熱用シリンダ20A〜20Dの各々は、図2に示すように、断熱材で形成された断熱シリンダ23と、断熱シリンダ23の上面の開口部に設けられた、光を入射させるための窓24とを備えている。また、窓24の内側の領域に、可視光を透過し、かつ、赤外光を反射する選択反射膜26が設けられている。加熱用シリンダ20A〜20Dには、窓24を有し、かつ、断熱シリンダ23内にガスを封入するためのガス封入室30を区画すると共に、断熱シリンダ23内に摺動可能に配置されたピストン28と、ガス封入室30内に設けられ、かつ、窓24から入射した可視光を吸収して、高温になりガスへ伝熱すると共に赤外放射する光吸収体32と、一端がピストン28に連結され他端が断熱シリンダ23の外部へ延出した連結棒34とが設けられている。
【0024】
加熱用シリンダ20A〜20D内に封入されるガスとして、赤外光を吸収しやすいガス(例えば、炭酸ガス)、または、可視光を吸収しやすいガス(例えば、塩素ガス、2酸化窒素)を用いる。また、出力が大きく得られるように、ガスを加圧して封入しておくことが好ましい。
【0025】
断熱シリンダ23は、例えば、真空2重層のステンレスで形成され、赤外光を反射するように、内側の表面がアルミで蒸着されている。断熱シリンダ23及び選択反射膜26によって、光吸収体32により放射された赤外光はミラーボックスに閉じ込められ、効率よくガスに吸収される。
【0026】
光吸収体32は、カーボンを吸着したアルミ製の細管式のラジエターで構成され、ピストン28に接続されると共にピストン28から浮かして設置される。光吸収体32は、図3に示すように、狭い間隙を作るラジエターが光路に対して斜めに取り付けられるように設置され、多重反射で効率よく光を吸収することができる。
【0027】
冷却用シリンダ22A〜22Dの各々は、図4に示すように、熱伝導率の高い部材で形成された伝熱シリンダ36と、伝熱シリンダ36内にガスを封入するためのガス封入室38を区画すると共に、伝熱シリンダ36内に摺動可能に配置されたピストン40と、ガス封入室38内に設けられ、かつ、ガス封入室38内のガスを冷却するための伝熱フィン42と、一端がピストン40に連結され他端が伝熱シリンダ36の外部へ延出した連結棒44とを備えている。
【0028】
伝熱シリンダ36は、例えば、銅やアルミで形成される。伝熱フィン42は、アルミや銅製のラジエターで構成され、ガスが伝熱フィン42を通過すると冷却される。伝熱フィン42は、伝熱シリンダ36に繋がって設置されている。
【0029】
伝熱シリンダ36のガス封入室38の外部には、冷却フィン46が設けられ、伝熱シリンダ36を介して、ガス封入室38内のガスを冷却する。なお、冷却フィンではなく、伝熱シリンダ36を介して、ガス封入室38を水冷する水冷機構を用いても良い。
【0030】
加熱用シリンダ20A〜20D及び冷却用シリンダ22A〜22Dの各ペアについて、ガス封入室30とガス封入室38とを連通させる連通路48A〜48Dが設けられている。
【0031】
加熱用シリンダ20A〜20Dから延出した連結棒34は、ピストン28の往復運動に連動してクランク軸14が回転するように、クランク軸14に連結されている。また、冷却用シリンダ22A〜22Dから延出した連結棒44は、ピストン40の往復運動に連動してクランク軸14が回転するように、クランク軸14に連結され、また、ピストン40の往復運動が間欠運動(1往復した後に1往復分休止する間欠運動)になるように、間欠機構を介して、クランク軸14に連結されている。
【0032】
光エンジン10による駆動対象物は、このクランク軸14の回転トルクによって駆動される。
【0033】
加熱用シリンダ20A〜20D間で、隣接するシリンダとのピストン28の動作が1サイクル分ずれるように、連結棒34がクランク軸14に連結され、また、冷却用シリンダ22A〜22D間で、隣接するシリンダとのピストン40の動作が1サイクル分ずれるように、連結棒44がクランク軸14に連結されている。
【0034】
また、加熱用シリンダ20A〜20Dと冷却用シリンダ22A〜22Dとの各ペアにおいて、ピストン28、40の動作が逆位相となるように(180°ずれるように)、連結棒34、44がクランク軸14に連結されている。これによって、加熱用シリンダ20A〜20Dと冷却用シリンダ22A〜22Dとのペア間で、常時、4サイクルからなる動作のサイクルが各々異なる。
【0035】
クランク軸14の近傍には、加熱用シリンダ20A〜20Dの上死点前のクランク角度(BTDC)を検出するクランク角度センサ50A〜50Dが各々設けられている。
【0036】
可動ミラー群18は、例えば集光双曲面鏡(図示省略)で収束した太陽光を反射して、加熱用シリンダ20A〜20Dの各々の窓24に対して入射させる可動ミラー18A〜18Dから構成される。可動ミラー18A〜18Dの反射面は、基準状態では、収束した太陽光が入射してくる光線上に位置しておらず、基準状態から駆動されると、可動ミラー18A〜18Dの反射面は、収束した太陽光が入射してくる光線上で、入射方向に対して傾斜した状態となり、太陽光を反射させて加熱用シリンダ20A〜20Dの窓24に対して入射させる。
【0037】
制御部19は、CPU、ROM、及びRAMから構成され、クランク角度センサ50A〜50Dから出力される上死点前クランク角度に基づいて、収束した太陽光が入射してくる光線上で入射方向に対して反射面を傾斜させるように可動ミラー18A〜18Dの何れかを駆動させて、太陽光を反射させて加熱用シリンダ20A〜20Dのいずれかの窓24に対して入射させる。
【0038】
次に、1組の加熱用シリンダ20A及び冷却用シリンダ22A(第1気筒)の動作について説明する。なお、クランク軸14が回転している場合について説明する。
【0039】
まず、サイクル1として、図5(A)に示すように、クランク軸14の慣性により、加熱用シリンダ20Aのピストン28を、下死点(BDC)から上死点(TDC)方向へ移動させると共に、間欠機構により、冷却用シリンダ22Aのピストン40を、上死点で固定させる。これによって、加熱用シリンダ20Aのガス封入室30内のガスが圧縮される。
【0040】
サイクル1により、加熱用シリンダ20Aのクランク角度が所定の上死点前クランク角度に到達すると、制御部19により、サイクル2が開始されると判断されて、可動ミラー18Aの反射面が傾斜するように駆動され、窓24を介した太陽光の入射が開始される。このとき、サイクル2として、図5(B)に示すように、光吸収体32によりガス封入室30内のガスが加熱されて膨張しピストン28が下死点方向に移動するときに、間欠機構により、引き続き、冷却用シリンダ22Aのピストン40を上死点で固定させる。これによって、クランク軸14が回転駆動され、出力が取り出される。
【0041】
サイクル2により、クランク角度が下死点に到達すると、制御部19により、サイクル2が終了したと判断されて、可動ミラー18Aの反射面が基準状態(水平状態)になるように駆動され、窓24を介した太陽光の入射が終了する。このとき、隣の加熱用シリンダ20Bのクランク角度が所定の上死点前クランク角度に到達するため、制御部19により、隣の可動ミラー18Bの反射面が傾斜するように駆動され、窓24を介した太陽光の入射が開始される。
【0042】
また、サイクル2により、ピストン28が下死点へ到達したときに、サイクル3として、クランク軸14の慣性により、図5(C)に示すように、加熱用シリンダ20Aのピストン28を下死点から上死点方向に移動させると共に、冷却用シリンダ22Aのピストン40を上死点から下死点方向へ移動させる。これによって、加熱用シリンダ20Aのガス封入室30内のガスが連通路48Aを通って押し出される(排気される)と共に、冷却用シリンダ22Aのガス封入室38内にガスが取り込まれ(吸気され)、ガスが冷却される。
【0043】
図5(D)に示すように、サイクル3により、ピストン28が上死点へ到達し、かつ、ピストン40が下死点へ到達したときに、サイクル4として、クランク軸14の慣性により、図5(E)に示すように、加熱用シリンダ20Aのピストン28を上死点から下死点方向へ移動させると共に、冷却用シリンダ22Aのピストン40を下死点から上死点方向へ移動させる。これによって、ガスが冷却されながら、冷却用シリンダ22Aのガス封入室38内のガスが連通路48Aを通って押し出される(排気される)と共に、加熱用シリンダ20Aのガス封入室30内にガスが取り込まれる(吸気される)。
【0044】
サイクル4により、ピストン28が下死点へ到達し、かつ、ピストン40が上死点へ到達したときに、再びサイクル1として、ピストン28を、下死点から上死点方向へ移動させると共に、ピストン40を、上死点で固定させる。
【0045】
以上説明したように、第1気筒である加熱用シリンダ20A及び冷却用シリンダ22Aでは、サイクル1〜サイクル4の動作が繰り返される。なお、サイクル1が、本発明の第4工程の一例であり、サイクル2が、本発明の第1工程の一例である。また、サイクル3が、本発明の第2工程の一例であり、サイクル4が、本発明の第3工程の一例である。
【0046】
第2気筒である1組の加熱用シリンダ20B及び冷却用シリンダ22Bについては、第1気筒の動作に対して1サイクル分遅れて同様に動作する(サイクル2を上述したサイクル1とし、サイクル3を上述したサイクル2とし、サイクル4を上述したサイクル3とし、サイクル1を上述したサイクル4として動作する)。第3気筒である1組の加熱用シリンダ20C及び冷却用シリンダ22Cについては、第1気筒の動作に対して2サイクル分遅れて同様に動作する(サイクル3を上述したサイクル1とし、サイクル4を上述したサイクル2とし、サイクル1を上述したサイクル3とし、サイクル2を上述したサイクル4として動作する)。第4気筒である1組の加熱用シリンダ20D及び冷却用シリンダ22Dについては、第1気筒の動作に対して3サイクル分遅れて同様に動作する(サイクル4を上述したサイクル1とし、サイクル1を上述したサイクル2とし、サイクル2を上述したサイクル3とし、サイクル3を上述したサイクル4として動作する)。
【0047】
第1気筒〜第4気筒の動作サイクルを、以下の表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
以上のように動作することにより、常時、何れかの気筒の加熱用シリンダ(上述したサイクル2の加熱する工程となる加熱用シリンダ)でガスが加熱されて、クランク軸14が回転駆動され、クランク軸14の回転トルクから出力が得られる。
【0050】
以上説明したように、第1の実施の形態に係る光エンジンによれば、光を熱に変換する光吸収体により、加熱用シリンダの窓から入射した可視光を吸収して、高温になりガスへ伝熱すると共に赤外放射し、ガス封入室内のガスを直接加熱することによって、ピストンが下死点方向に移動するため、高い熱効率で、動力を得ることができる。
【0051】
また、4気筒、4サイクルの光エンジンにおいては、何れかの気筒で加熱サイクルとなり、加熱サイクルとなる加熱用シリンダに、タイミングに合わせて太陽光を入射させるように可動ミラーの駆動を制御すことにより、常時どれか1つの加熱用シリンダで加熱することができ、常時、動力を得ることができる。
【0052】
また、加熱用シリンダの窓の内側に選択反射膜を付けて、赤外光を反射させるため、加熱用シリンダからの熱損失を防ぐことができ、熱効率の低下を防ぐことができる。
【0053】
また、冷却用シリンダに冷却フィン及び伝熱フィンを設けることにより、冷却用シリンダのガス封入室内のガスを急速に冷却することができる。
【0054】
次に、第2の実施の形態に係る光エンジンについて説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0055】
第2の実施の形態の光エンジン210は、4サイクル、1気筒のエンジンであり、図6に示すように、1組の加熱用シリンダ20及び冷却用シリンダ22を備え、加熱用シリンダ20及び冷却用シリンダ22から延出した連結棒34、44が、クランク軸14に連結されている。
【0056】
1組の加熱用シリンダ20及び冷却用シリンダ22の構成及び動作は、第1の実施の形態と同様であり、4サイクルの何れかで、加熱用シリンダ20でガスが加熱されて、クランク軸14が回転駆動され、クランク軸14の回転トルクから出力が得られる。
【0057】
なお、上記の実施の形態では、1気筒の場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、2気筒以上のエンジンであってもよい。この場合には、2組以上の加熱用シリンダ及び冷却用シリンダを用いて構成すればよい。
【0058】
また、上記の第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、外部からの太陽光を集光双曲面鏡で収束させて、可動ミラー群へ入射させた場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、従来既知の他の方法により、太陽光を収束させて、可動ミラー群に収束させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0059】
10、210 光エンジン
12 シリンダ群
14 クランク軸
16 フライホイール
18A〜18D 可動ミラー
18 可動ミラー群
19 制御部
20、20A〜20D 加熱用シリンダ
22、22A〜22D 冷却用シリンダ
23 断熱シリンダ
24 窓
26 選択反射膜
28、40 ピストン
30、38 ガス封入室
32 光吸収体
34、44 連結棒
36 伝熱シリンダ
42 伝熱フィン
46 冷却フィン
48A〜48D 連通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの光を入射させるための窓を備え、断熱材で形成された第1シリンダと、
前記窓を有し、かつ、前記第1シリンダ内にガスを封入するための第1ガス封入室を区画すると共に、前記第1シリンダ内に摺動可能に配置された第1ピストンと、
一端が前記第1ピストンに連結され他端が前記第1シリンダの外部へ延出した第1連結棒と、
前記第1ガス封入室内に設けられ、かつ、前記窓から入射した可視光を吸収して、高温になり前記ガスへ伝熱すると共に赤外放射する光吸収体と、
前記窓の内側の領域に設けられ、可視光を透過し、かつ、赤外光を反射させる選択反射膜と、
放熱材で形成された第2シリンダと、
前記第2シリンダ内にガスを封入するための第2ガス封入室を区画すると共に、前記第2シリンダ内に摺動可能に配置された第2ピストンと、
一端が前記第2ピストンに連結され他端が前記第2シリンダの外部へ延出した第2連結棒と、
前記第1ガス封入室と前記第2ガス封入室とを連通する連通路と、
前記第2ピストンを上死点で固定すると共に、前記第1ピストンが下死点方向に移動する第1工程のときに、前記窓を介して外部からの光を前記第1ガス封入室に入射させる光入射制御手段と、
前記第1連結棒及び前記第2連結棒に連動するクランク軸、及び前記クランク軸に固定されたフライホイールを備え、前記第1工程として、光の入射により前記第1ガス封入室のガスが膨張して前記第1ピストンが下死点方向に移動するときに、前記第2ピストンを上死点で固定し、前記第1ピストンが下死点へ到達したときに、第2工程として、前記第1ピストンを下死点から上死点方向に移動させると共に、前記第2ピストンを上死点から下死点方向へ移動させ、前記第1ピストンが上死点へ到達し、かつ、前記第2ピストンが下死点へ到達したときに、第3工程として、前記第1ピストンを上死点から下死点方向へ移動させると共に、前記第2ピストンを下死点から上死点方向へ移動させ、前記第1ピストンが下死点へ到達し、かつ、前記第2ピストンが上死点へ到達したときに、第4工程として、前記第1ピストンを下死点から上死点方向へ移動させると共に、前記第2ピストンを上死点で固定するクランク機構と、
を含む光エンジン。
【請求項2】
前記第2ガス封入室の外部に設けられた冷却フィンを更に含む請求項1記載の光エンジン。
【請求項3】
前記第2ガス封入室の外部に設けられ、かつ、前記第2ガス封入室を水冷する水冷部を更に含む請求項1記載の光エンジン。
【請求項4】
前記第2ガス封入室の内部に設けられた伝熱フィンを更に含む請求項1〜請求項3の何れか1項記載の光エンジン。
【請求項5】
前記ガスを、赤外光を吸収するガスとした請求項1〜請求項4の何れか1項記載の光エンジン。
【請求項6】
前記ガスを、炭酸ガス、塩素ガス、及び2酸化窒素の何れか1つとした請求項5記載の光エンジン。
【請求項7】
前記第1シリンダ及び前記第2シリンダは、4組の前記第1シリンダ及び前記第2シリンダであって、
前記クランク機構は、4組の前記第1シリンダ及び前記第2シリンダにおける工程が各々異なるように、前記クランク軸が、4組の前記第1シリンダ及び前記第2シリンダの前記第1連結棒及び前記第2連結棒に連動し、
前記光入射制御手段は、前記第1工程となる何れかの前記第1シリンダの前記第1ガス封入室に、前記窓を解して外部からの光を入射させる請求項1〜請求項6の何れか1項記載の光エンジン。
【請求項8】
前記外部からの光を、太陽光とした請求項1〜請求項7の何れか1項記載の光エンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−180817(P2010−180817A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−26258(P2009−26258)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000170554)国際技術開発株式会社 (34)