説明

光ガイド

本発明は、導光板に用いるのに適したフィルム層、並びに前述のフィルム層及び導光板を形成する方法に関する。本発明はまた、導光板、及びそれから作製された導光装置にも関する。フィルム及び導光板は、様々な用途に、具体的には、例えば液晶ディスプレイ等のディスプレイの背面照明と関連して用いるのに好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導光板(light guide plate)に用いるのに適したフィルム層、並びに該フィルム層及び導光板を形成する方法に関する。本発明はまた、導光板、及びそれから作製された導光装置(light guide device)にも関する。フィルム及び導光板は、様々な用途、具体的には、例えば液晶ディスプレイ等のディスプレイの背面照明に関連して用いるのに好適である。
【背景技術】
【0002】
背面照明の用途に用いるのに適した光ガイド層を作製するための多数の方法及び製造プロセスが存在する。典型的には、透明ポリマーを射出成形して、好適な表面構造部(surface feature)を有する薄板を形成する。表面構造部が光の全反射を妨げ、よって、薄板の内部に誘導された光が制御された方法で逃れることが可能になる。
しかしながら、こうした技術と関連した多数の問題、特に、好適な金型の形成と関連した費用の問題がある。一般的には、金型は、機械加工されるか又はレーザー切断される。金型が形成されると、事実上、光学パラメータが決定される。
光ガイド層を形成するための他の技術は、ポリマーシートのマイクロスタンプ又は高温エンボス加工を含む。しかしながら、こうしたポリマーシートと関連した光学的品質は、スタンプ品質及び関連した製造プロセスにより制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第WO 2005/101070号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特に、バックライトが大きくなるにつれて、これらの制限はより重要になる。この点で、とりわけ背面照明の用途に用いるための、代替的な及び/又は改良された光ガイド層及び構造体、並びにそれらの形成方法に対する必要性が引き続きある。
本発明は、商業的に入手可能な微細構造化光学フィルムをインクにより適切に改質して、それらを導光板及び背面照明用途に用いるのに適したものにすることができるという発見に、部分的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様においては、フィルム層と接触している光ガイド材料の第1の層を含む導光板が提供され、前述のフィルム層には、少なくとも1つの表面上に、
(i)前述の導光板の内部の光がそこから逃れるのを可能にする一連の微細構造体(microstructure)と、
(ii)前述の微細構造体において導光板から逃れる光の量を減少させ、該微細構造体の1つ又はそれ以上と接触した状態のインクと、
が形成される。
【0006】
光ガイド材料の第1の層は、本明細書ではガイド基板と呼ぶことができ、透明フィルム層は、本明細書ではフィルム層と呼ぶことができる。光ガイド材料及びフィルム層は光透過性であり、導光板と共に用いるのに適した光源により生成される光を通すことが好ましい。
【0007】
本発明の第1の態様において言及されるインクを含むフィルム層が、本発明の第2の態様を構成する。
【0008】
本発明の第3の態様によると、光源と、本発明の第1の態様による導光板とを含む導光装置が提供される。
光源は、フィルム層の上に取り付けることができる。光透過性の光ガイド材料の第1の層内に光源をカプセル封入し、複合導光装置を形成することができる。代替的には、光源をカプセル封入することはできず、従来の方法で導光板に結合することができる。光源が光透過性の光ガイド材料の第1の層内にカプセル封入されない実施形態においては、この光源は、外部に結合されると言うことができる。
【0009】
本発明の第4の態様によると、本発明の第2の態様において言及されるフィルム層を形成するための方法は、微細構造フィルムの選択された区域の上にインクを堆積させるステップを含む。
【0010】
本発明の第5の態様によると、本発明の第1の態様による導光板を形成するための方法は、光ガイド層と改質されたフィルム層とを結合するステップを含む。
フィルム層は、フィルム層及びガイド基板を結合するのに先立って又はその前に改質することができる。
【0011】
本発明の第6の態様によると、導光装置を製造する方法は、
(i)1つ又はそれ以上の光源をフィルム層の第1の表面の上に取り付けるステップであって、前述のフィルム層には、第2の表面上に、フィルム層の内部の光がそこから逃れることを可能にする一連の微細構造体と、微細構造体においてフィルムから逃れる光の両を減少させ、微細構造体の1つ又はそれ以上と接触した状態のインクとが形成され、フィルム層及びインクは第1の屈折率を有している、ステップと、
(ii)第1の屈折率より小さいか又はこれに等しい第2の屈折率を有する光ガイド材料の第1の層をフィルム層の第1の表面に付加し、第1の表面の上に1つ又はそれ以上の光源をカプセル封入し、1つ又はそれ以上の光源によって生成された光を第1の表面の上に誘導するための手段を提供するステップと、
を含む。
【0012】
本発明の第7の態様によると、本発明の第3の態様による導光装置を含むディスプレイ装置が提供される。このディスプレイ装置は、液晶ディスプレイ装置とすることができ、したがって、液晶セルを含むことができ、この液晶セルは、液晶パネルとも呼ぶこともできる。
【0013】
容易に調整される光学的性能、低費用の印刷技術、高価な工具及び製造プロセスの使用の排除を含む、本発明の種々の態様と関連した多数の利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1a】従来の微細構造フィルムを示す。
【図1b】本発明による、インクで改質した後の図1aの従来の微細構造フィルムを示す。
【図1c】光の透過に対する、図1bによる改質された構造体の影響を示す。
【図2】光源が改質した微細構造フィルム上に分布され、光ガイド層内にカプセル封入された、本発明の導光装置の実施形態を示す。
【図3】カプセル封入されたLEDを含む本発明による導光装置の構築を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ここで、添付図面及び下記の実施例を参照して、制限なく単なる例証として本発明の実施形態を説明する。
【0016】
フィルム層
光透過性のフィルム層が、典型的には、例えば、約0.05mmから約0.25mmまでの範囲といった、0.1mmのオーダーの厚さをもつ基板素子を含むことができる。基板素子と接触している微細構造体の厚さは、例えば約10ミクロンから約40ミクロンまでといった、約1ミクロンから約1000ミクロンまでのオーダーである。フィルム層の屈折率は、典型的には、1.5より大きい。
【0017】
フィルムの基板素子は、典型的には、ポリエステル又はポリカーボネートシートで作製されており、微細構造体は、アクリルポリマーで形成することができる。微細構造体は、いわゆるロールツーロール法で、基板素子に組み込むこと又はこれと組み合わせることができる。こうしたプロセスにおいて、微細構造体は、最初に金属箔の上にマスターが作られ、マスター・パターンの逆のものが、アクリルポリマーに転写される。
【0018】
輝度向上フィルム(Brightness Enhancement Film:BEF)は、本発明で用いるのに適した微細構造フィルムである。微細構造フィルムの好適な例は、3M社から商業的に入手可能なBEF III 輝度向上フィルムである。この範囲からの特定のフィルムは、厚さ127ミクロンのポリエステル基板から作製され、アクリルポリマー内に、一方向に変化するプリズム構造体を有する。プリズム構造体は、高さが28ミクロンであり、50ミクロンのピッチを有し、プリズム角は90°である。光が、プリズム方向に対して平行な縁部の1つから入力される場合、本発明においては、インクにより好適に改質されたフィルムを用いて、非対称の散乱光のビーム角を有するバックライトを生成することができる。
【0019】
本発明による、例えばBEFのような微細構造フィルムを使用することにより、特定の利点が強調される。従来のバックライト・ユニットにおいて、導光板及びBEFは、別個の機能を提供する別個の要素を構成する。本発明においては、BEFは、輝度の向上、及び、導光板における光の誘導といった、2つの機能を提供する。
【0020】
光ガイド材料の第1の層
バックライト・ユニットに用いるのに適した光ガイド層は、典型的には、厚さが約1mmの透明な可撓性プラスチックポリマー層を含む。光ガイド材料は、微細構造表面を含まないフィルム層の側と接触している。
【0021】
光ガイド材料は、導光板の製造中にフィルム層に光学接合することができる。光ガイド層をフィルム層に結合する方法は、フィルム層上に液体ポリマーを適用し、フィルム層上の液体ポリマーを硬化させるステップを含むことができる。硬化させるステップは、UV、熱、又は二液型硬化を含む、1つ又はそれ以上の技術を利用することができる。本方法は、液体ポリマーを印刷し、ステンシル印刷し、又は分配するステップを含むことができる。光学的に接合されるとは、それらの層が、光学的に、事実上区別できないように結合されることを示す。
【0022】
光ガイド材料は、様々な好適な光透過性ポリマー材料から作製することができる。好ましくは、光ガイド材料の第1の層は、高い光透過性を有し、フィルムの基板素子と等しい又はこれより小さい屈折率を有するべきである。好適な透明ポリマーは、アクリル、エポキシ、ウレタン、及びシリコーンを含む。
【0023】
微細構造体
光学フィルムと関連して使用されるときの「微細構造体」という用語は、当業者に周知であり、様々な微細構造フィルムが市販されている。微細構造表面は、表面から突出し、かつ、幅、深さ及びピッチが独立して約1ミクロンから約1000ミクロンまで、好ましくは約5ミクロンから50ミクロンまで、より好ましくは約20ミクロンから約50ミクロンまでの規模で配置された、繰り返される複数の三次元構造部又は凹凸を含むものである。本発明に用いるのに適した特定のタイプの微細構造体又は構造部は、プリズム、ピラミッド、例えば円筒又は円形状のレンズ等の(マイクロ)レンズ、及びランダム拡散構造体を含む。これらの構造体は、光が導光装置又は他の照明装置から出てきたときに、光の方向を変える又は制御する能力を有する。
【0024】
プリズム・ベースのフィルムは、約50ミクロンのピッチでフィルムの全体にわたって、一方向に変化する鋸歯形状の構造体を有することができ、ここで、ピッチは、隣接する微細構造体の中心間の距離である。(マイクロ)レンズは、約10ミクロンから100ミクロンまでの規模でフィルムにわたって分布された、短い焦点距離のものとすることができる、規則的又はランダムな分布のレンズを有する。拡散構造体は、同じく約10ミクロンから100ミクロンまでの規模(深さ及びピッチ)であるランダムな表面テキスチャを有することができる。
【0025】
フィルム上に使用可能な、様々な市販の明確な微細構造体は、本発明のために多数の設計の選択肢を提供する。例えば、一方向に変化するプリズム構造体(例えば、BEF III)を用いて、光がLCDコントラストを増加させるために狭いビーム角を有する必要があるとき、又は、光を主としてユーザの方向に向ける必要があるとき、液晶デバイスの用途に特に有用である、非対称の散乱光のビーム・プロファイルを生成することができる。ピラミッド又はマイクロレンズ構造体は、対称的な散乱光のビーム・プロファイルを提供する。ランダムな拡散構造体は、ランバート(広角ビーム)散乱を可能にし、ホログラフィック拡散構造体は、より複雑なビーム形成をもたらす。
【0026】
インク
インクは光透過性とすることができる。光透過性インクは、微細構造体を平坦化する又は平らにする作用を有し、かつ、フィルム層の上への光の誘導を助ける。光透過性インク又は透明インクは、これが堆積される微細構造体における、フィルムから逃れる光の量を減少させる。理論にとらわれることを望むものではないが、導光板を通って全反射により誘導される光は、平坦化されたフィルム層と空気との間の界面においてほぼ平らな面にぶつかると考えられる。ほぼ平らな平坦化された面は全反射を保持し、光は導光板内に誘導され続ける。微細構造表面は、全反射を遮断することにより、導光板から出てくる光を散乱させる。導光装置から出てくる光の抽出を容易にし、光が抽出される方向を制御するために、代替的な手段として、微細構造体上に反射インクを使用することもできる。本発明に用いるのに適した反射インクは、金属入りポリマーを含むことができる。
【0027】
インク及び微細構造体の屈折率は、可能な限り緊密に合致することが好ましい。例えば、屈折率の差異は、約2%以下、より好ましくは約1%以下であるべきである。
【0028】
多数の方法のうちのいずれかにより、典型的にはポリマー材料であるインクをフィルムの微細構造表面に適用して薄い構造部のパターンを形成することができ、大まかに言えば、加法印刷プロセスと呼ぶことができる。例えば、従来のスクリーン印刷は、開口部が印刷されることが必要とされるパターンに対応する、メッシュスクリーンの使用を組み込む。このパターンにより、平坦化される微細構造体の必要とされる区域への正確なインク量の送給が容易になる。好適なUV硬化インクは、アクリルベースの透明UV硬化ポリマーのスクリーン印刷可能インクであり、MacDermid Autotype社から商業的に入手可能なWindowtex Glossである。本発明に用いるのに適したインクは、UV硬化又は溶剤硬化できるものを含む。加法印刷法の他の好適な例は、ステンシル印刷、インクジェット印刷、フレキソ印刷、及び他の既知のリソグラフ技術を含む。
【0029】
インクは、様々な量及び形状で適用することができる。これは、堆積されるインクがどれだけ光源に近いかによって決まり得る。光源からの距離が増加するにつれて、光の強度は弱くなる。これを考慮するために、より緊密な間隔で配置されたより大きいサイズの光透過性インクのドットを光源の位置のより近くに堆積させ、狭い面積の平坦化されていない微細構造体をもたらすことができ、一方、光源からの距離が増加するにつれて、より広い間隔で配置されたより小さいサイズの光透過性インクのドットを堆積させ、広い面積の平坦化されていない微細構造体をもたらすことができる。
【0030】
光源
光源は、背面照明に用いるのに適したものを含む、当業者に周知のもののいずれであってもよい。こうした光源は、1つ又はそれ以上のLED、冷陰極蛍光灯、レーザーダイオード、有機発光ダイオード源、及び他の電気発光デバイスを含む。光は無指向性とすることができる。
【0031】
LEDは、端面発光LED、側面発光LED、上面発光LED、又はベアダイLEDを含む、当業者に周知の設計のいずれであってもよい。
【0032】
導光装置
導光装置は、照明、背面照明、ビジュアルサイン伝達(signage)、及び表示目的を含む、様々な機能のために採用される。典型的には、導光装置は、射出成形又は機械加工された透明なプラスチック部品から構築され、蛍光灯又は複数の発光ダイオード(LED)等の光源が、透明プラスチック部品の縁部において、機械的取り付けによって統合される。こうした装置の例は、特許文献1に説明されており、その内容の全体を引用により本明細書に組み入れる。
【0033】
これらの装置の全てに共通するのは、光源からの光が、全反射により、典型的にはプラスチック製の透明なガイドを通って誘導されるという事実である。エッジリット(edge−lit)方式の背面照明用途において、光は、透明ガイド内での光の伝播方向に対してほぼ垂直な方向に放出される。このことは、光を、透明ガイド内に又はその表面上に配置される散乱構造体又はフィルムと相互作用するように向けることによって達成することができる。
【0034】
蛍光灯又はLEDを透明な光ガイドの縁部に統合することは単純なプロセスではなく、したがって、これらの装置についての製造プロセスの複雑さを大幅に増大させる。良好な結合を達成することが、装置の光学的性能にとって不可欠である。さらに、光源の端部結合(edge coupling)により、製造プロセスの際も装置の通常の使用の際も、これらの部品が機械的損傷を受けやすくなる。
【0035】
LEDの光ガイド層への結合は、様々な技術により達成することができる。このことは、光ガイド層の端部からの反射を減少させるように働く高屈折率のフォトニック接着剤でUV硬化させることにより、LEDが光ガイドの端部に取り付けられる突き合わせ結合プロセスによって達成することができる。光ガイド層を高温劈開又は研磨して、光ガイド層の端部に好適な光学表面を与えることができ、そのことは、光源から光ガイド層への光の良好な結合を容易にする。
【0036】
光源を導光装置に組み込む従来の技術に加えて、本発明者らは、光源を光ガイド層内にカプセル封入できる技術も開発した。こうした構成と関連した多数の利点がある。これらの利点として、光源に対する機械的保護の向上、製造プロセスの単純化、及び装置内の光の光学的結合の向上が挙げられる。
【0037】
こうした構成によると、光源は、典型的には、改質されたフィルム層の非微細構造表面と接触する。フィルム層は、光ガイド材料の第1層の屈折率より大きい又はこれと等しい第1の屈折率を有することが好ましい。フィルム層、及び、本明細書では導光板と呼ばれる光ガイド材料の第1の層が、1つ又はそれ以上の光源が生成した光をフィルム層の上に誘導するための複合構造体を形成するように、光ガイド材料を1つ又はそれ以上の光源をフィルム層の上にカプセル封入するように配置される。
【0038】
こうした構成により、光源に対する機械的保護の向上を示す導光装置が提供される。さらに、光源の出力と光ガイド層との間には空隙がないため、こうした実施形態は、生成が簡単であり、装置内の光の光学的結合の向上を示す。
【0039】
光ガイド層をフィルム層に付加する好適な方法は、液体ポリマーをフィルム層に適用し、フィルム層上の液体ポリマーを硬化させるステップを含む。液体ポリマーは、液体ポリマーを印刷し、ステンシル印刷し、又は分配することにより適用することができる。
【0040】
導光装置の使用
本発明による導光装置は、照明、背面照明、ビジュアルサイン伝達、及び表示目的を含む、様々な機能のために採用することができる。
【0041】
当技術分野において、液晶デバイスは周知である。透過モードで動作する液晶ディスプレイ装置は、一般的には、液晶パネルと呼ぶこともできる液晶セルと、導光装置を組み込むバックライト・ユニットと、1つ又はそれ以上の偏光子とを含む。液晶セルもまた周知のデバイスである。一般に、液晶セルは、典型的には、間に液晶材料の層が配置された2つの透明な基板を含む。液晶ディスプレイ・セルは、それぞれ内面が透明な導電性電極で被覆され得る2つの透明板を含むことができる。液晶材料を構成する分子が好ましい方向に並ぶように、セルの内面の上に配向層を導入することができる。透明板は、スペーサによって、例えば約2ミクロン等の好適な距離だけ離間される。液晶材料が、流入充填によって間の空間を埋めることにより、透明板の間に導入される。偏光子は、セルの正面及び後ろに配置することができる。従来の手段を用いて、バックライト・ユニットを液晶セルの後ろに配置することができる。動作において、透過モードで動作する液晶セルは、導光装置を含むことができる、バックライト・ユニット等の光源からの光を変調する。
【0042】
図1aは、典型的には背面照明ユニットにおいて、放出された光の方向を変更することにより照明性能を向上させるために用いられる、例えば輝度向上フィルム(BEF)等の従来の微細構造フィルム(1)を示す。微細構造フィルム(1)は、例えばポリエステル又はポリカーボネートシートで作製された基板素子(2)から形成され、約0.1mmのオーダーの厚さをもつ。微細構造体(3)は、アクリルポリマーのようなポリマーから形成される。示される特定の実施形態においては、微細構造体(3)は、約0.05mmのピッチの厚さ及び繰り返しパターンの両方をもつプリズムの形態である。図1の微細構造体(3)に示されるようなピッチは、ピーク間の距離である。
【0043】
図1bは、本発明に従って適切に改質された図1aのデバイスを示す。微細構造体を平坦化する又は平らにするために、光透過性インク(4)が、微細構造体(3)の選択された区域の上に堆積された。その結果、当該微細構造体は「オフになり」、特定の微細構造体を出ていく光の量が減少することになる。インクを、スクリーン印刷技術により適用し、UV光で硬化させることができる。また、光を抽出するのに必要とされる方向に応じて、反射インクを堆積させることもできる。
【0044】
図1cは、外部に結合された光源(6)からの光(5)に対する、図1bに示される微細構造表面の改質の影響を示す。(7)で示されように、微細構造表面を光透過性インクで選択的に平坦化することにより、光が、微細構造フィルムにわたって導かれる。光は、微細構造体が光透過性インクで改質されていない、(8a及び8b)で示される区域において散乱する。随意的な光ガイド層(10)の存在も示される。(8a)で示される光を、デバイスの上部を通って、(8b)で示される通常の方向に向け直すことが必要である場合に、随意的な反射素子(15)の存在も示される。必要に応じて、8aで示される光が微細構造体を出ていく地点の微細構造体上に反射インクを堆積させることによって、8aで示されるデバイスを出ていく光の量を減少させることができる。これはまた、(8b)で示される通常の方向への、デバイスを出ていく光の量を増加させる効果も有する。
【0045】
図2は、光源が改質された微細構造フィルム上に分布され、光ガイド層(10)内にカプセル封入された、本発明の実施形態を示す。図2において、この場合は1つ又はそれ以上のLED(9)である光源が、微細構造フィルムの非微細構造側(11)上に分布され、光ガイド層(10)内にカプセル封入される。基板素子(2)と光ガイド層(10)との間の周辺界面において、LEDを埋め込むことができる好適なキャビティを形成するために、キャビティ層構造体(図示せず)を組み込むことができる。
【0046】
微細構造フィルム(1)の屈折率は、n2により与えられる屈折率を有することができ、光ガイド層(10)は、n4により与えられる屈折率を有することができる。微細構造フィルム及び光ガイド層(10)の屈折率は、不等式n2がn4より大きいか又は等しいを満たすものである。結果として、光源により生成された光は、最初に透明な光の層に結合され、微細構造フィルムにより定められる平面に対してほぼ平行な方向に伝播する。光ガイド層(10)のものと等しいか又はこれより高くなるように選択された微細構造フィルム(1)の屈折率を用いる場合、生成された光は、全反射の作用のために、微細構造フィルム及び光ガイド層の両方の中に導かれる。したがって、まとめて導光板と呼ばれる微細構造フィルム(1)及び透明な光ガイド層(10)は、カプセル封入されたLEDにより生成される光のための、ガイド媒体として働く複合構造体を形成する。
【0047】
同様に、図2に関連して説明されるように、(8a)で示される光の方向を、デバイスの上部を通って、(8b)で示される通常の方向に向け直すことが必要な場合、随意的な反射素子(15)の存在も示される。必要に応じて、8aで示される光が微細構造体を出ていく地点の微細構造体上に反射インクを堆積させることによって、8aで示されるデバイスを出ていく光の量を減少させることができる。これはまた、(8b)で示される通常の方向への、デバイスを出ていく光の量を増加させる効果も有する。
【0048】
図3は、カプセル封入されたLEDを含む、本発明に従った導光装置を示す。この装置は、図2に示される基板素子(2)を上から見た平面図で示される。LEDを埋め込む位置を提供するために、キャビティ層(20)が、微細構造フィルムの平らな側に取り付けられる。導電性インク・トラック(50)上に取り付けられたLEDの構成が示される。電気接続尾部が、より全体的に(30)で示される。示される実施形態においては、LEDは、一連の4つの鎖からなる2つのバンクで構成される。フィルムを改質し、光の誘導及び一様な光出力のために適切な散乱構造部を提供するために、フィルムの微細構造表面上に印刷される散乱プリント(55)も示される。
【0049】
(実施例1)
以下のように、上述した図3を参照して、導光装置を作製した。3M BEF III(Matte)を3M社から入手し、フィルム層として使用した。導電性インクである、銀フレーク入りの溶媒ベース・ポリマーインクをBEF基板の上側(非微細構造側)にスクリーン印刷した。BEFの微細構造体を改質し、一様な光出力のための光散乱構造部を提供するために、MacDermid Autotype社から商業的に入手可能なアクリルベースの透明なUV硬化ポリマーのスクリーン印刷可能インクである、Windotex Glossを、あるパターンで基板の逆側に印刷した。本例においては、パターンは、1000ミクロンの規模で表面にわたってピッチ調整され、LED付近で500ミクロンから1000ミクロンまでの規模の大きさにされ、微細構造フィルムの中心に向けて100ミクロンから500ミクロンまでの規模の大きさにされた、一連の小ラインであり、LEDからさらに遠ざかると、微細構造体の平坦化は最小になる。この構成により、デバイスにわたって一様な光の抽出がもたらされた。導電性エポキシ(銀粒子入りエポキシ)を用いて、LED(Stanley TW1145LS−TR)を導電性インク・トラックの上にマウントした。光ガイド層を堆積し、LEDをカプセル封入するための領域を提供するために、キャビティ層が、フィルム層の上に積層された。Dymax社から商業的に入手可能な、UV硬化アクリルベースの透明ポリマー光ガイド材料であるDymax4−20688がキャビティ内に堆積され、LEDが複合導光構造体内にカプセル封入された。上述のように、LEDからの光は、材料/空気の界面のため、全反射により、付加された光ガイド層及びフィルム層の両方を通って導かれ、この界面において、光は選択的な散乱構造部と相互作用し、全反射が妨げられ、明確なビーム・プロファイルにより外部に散乱する。
【0050】
改質されたフィルムは、LEDのための好適な基板として示され、かつ、これは、好ましくは高コントラストの液晶デバイスと関連して用いられる背面照明用途に必要とされる良好な一様性をもつ、高輝度の狭ビーム角に散乱される光の量を増加させるのに好適なものであった。従来、微細構造フィルムは、こうした方法では用いられていない。
【0051】
(実施例2)
実施例1において用いられた微細構造フィルムと組み合わせて鏡面反射インクの使用を試験するために、多数の実験を行った。鏡付きプリズムのパターンを微細構造体上に堆積させた。市販のクロム、空気乾燥インクを用いることにより、アクリル微細構造体/インクの界面が、アクリル側から反射性にされた。反射インクは、1インチ当たり100ドット(DPI)で印刷された。
【符号の説明】
【0052】
1 微細構造フィルム
2 基板素子
3 微細構造体
4 光透過性インク
5 光
6 光源
7 平坦化された微細構造表面
9 LED(発光ダイオード)
10 光ガイド層
11 非微細構造面
15 反射素子
20 キャビティ層
50 導電性インク・トラック
55 散乱プリント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム層と接触している光ガイド材料の第1の層を含む導光板であって、前記フィルム層には、少なくとも1つの表面上に、
i.前記導光板の内部の光がそこから逃れるのを可能にする一連の微細構造体と、
ii.前記微細構造体において前記導光板から逃れる光の量を減少させ、該微細構造体の1つ又はそれ以上と接触した状態のインクと、
が形成されていることを特徴とする導光板。
【請求項2】
前記微細構造表面は、表面から突出し、かつ、各々が、約1ミクロンから1000ミクロンまでの、互いと関係なく選択された、幅、深さ及びピッチを有する、複数の三次元の構造部を含むことを特徴とする、請求項1に記載の導光板。
【請求項3】
前記幅、深さ、及びピッチは、互いと関係なく、約5ミクロンから約50ミクロンまでであることを特徴とする、請求項2に記載の導光板。
【請求項4】
前記微細構造体は、プリズム、ピラミッド、レンズ、ランダム拡散構造のうちの1又はそれ以上を複数個含むことを特徴とする、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の導光板。
【請求項5】
前記フィルム層は、輝度向上フィルムであることを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載の導光板。
【請求項6】
前記フィルム層は、約0.05mmから約0.25mmまでの厚さを有することを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載の導光板。
【請求項7】
前記光ガイド材料の第1の層の厚さは約1mmであることを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載の導光板。
【請求項8】
前記光ガイド材料の第1の層は、前記フィルム層の屈折率と等しいか又はこれより小さい屈折率を有することを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載の導光板。
【請求項9】
前記インクは、前記微細構造体にわたって不均一に分布されることを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載の導光板。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の導光板と、1つ又はそれ以上の光源とを含むことを特徴とする導光装置。
【請求項11】
前記1つ又はそれ以上の光源は、前記導光板の外部に結合されることを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載の導光装置。
【請求項12】
前記1つ又はそれ以上の光源は、前記光ガイド材料の第1の層内にカプセル封入されることを特徴とする、請求項10に記載の導光装置。
【請求項13】
前記フィルム層及び前記光ガイド材料の第1の層は、前記1つ又はそれ以上の光源により生成される光を前記フィルム層の上に導くための複合構造体を形成することを特徴とする、請求項12に記載の導光装置。
【請求項14】
前記1つ又はそれ以上の光源は、LED、冷陰極蛍光灯、レーザーダイオード、有機発光ダイオード源、及び他の電気発光デバイスから選択されることを特徴とする、請求項10から請求項13までのいずれか1項に記載の導光装置。
【請求項15】
前記1つ又はそれ以上の光源は、1つ又はそれ以上のLEDから選択されることを特徴とする、前記請求項に記載の導光装置。
【請求項16】
前記インクの濃度は、前記光源からの距離が増加するにつれて減少することを特徴とする、請求項10から請求項15までのいずれか1項に記載の導光装置。
【請求項17】
微細構造表面と、請求項1から請求項9までのいずれか1項において請求されたような前記導光板に用いるのに適した、前記微細構造表面と接触した状態のインクとを含むことを特徴とするフィルム層。
【請求項18】
前記微細構造体の選択された区域の上にインクを堆積させるステップを含むことを特徴とする、請求項17に記載のフィルム層を形成するための方法。
【請求項19】
加法印刷法を用いることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記加法印刷法はスクリーン印刷法であることを特徴とする、前記請求項に記載の方法。
【請求項21】
請求項10から請求項16までのいずれか1項に記載の前記導光装置を含むディスプレイ装置。
【請求項22】
前記ディスプレイ装置は、液晶セルを含むことを特徴とする、前記請求項に記載のディスプレイ装置。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−504641(P2011−504641A)
【公表日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534536(P2010−534536)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【国際出願番号】PCT/GB2008/003862
【国際公開番号】WO2009/066056
【国際公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(507345538)アイティーアイ スコットランド リミテッド (34)
【Fターム(参考)】