説明

光ケーブル余長保持具

【課題】光ケーブルの余長処理の作業性を向上させると共に、余長処理中の光ファイバケーブルの劣化を防ぐ。
【解決手段】光ファイバケーブルHの余長部Yを所定の保持板2上に保持する光ケーブル余長保持具1であって、前記保持板2の一面上に配置され、前記余長部Yを所定の曲げ半径以上で湾曲させて保持するケーブル保持部材と、前記一面が作業者に正対する姿勢を少なくとも含む複数の姿勢に前記保持板2を可変支持する可変支持部材4と、前記保持板2を所定の姿勢で固定する固定部材5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ケーブル余長保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
光ケーブルの配設にあたっては、光ファイバケーブルを過度に湾曲させずに引き回すために、余長処理が行われる。この余長処理において光ケーブルの余長部を保持するものには、例えば、特許文献1に開示されたものがある。この特許文献1における余長保持構造は、余長保持板を実装架に対して回動自在に設け、余長保持板の余長部を保持する面を実装架の内側へ向けて固定するものである。
【特許文献1】特開平6−313814号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、光ファイバケーブルは、過度に湾曲させると伝送性能が劣化するものであるので、余長処理においても光ファイバケーブルに許容範囲を超える曲げや捩れを加えないように注意しなければならないが、余長保持板が例えば作業者の側方に位置する場合には光ファイバケーブルの視認性が悪くなるため、光ファイバケーブルを誤って過度に湾曲させて破損する虞が大きくなる。
【0004】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、光ケーブルの余長処理の作業性を向上させると共に、余長処理中の光ファイバケーブルの劣化を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明では、第1の手段として、光ケーブルの余長部を所定の保持板上に保持する光ケーブル余長保持具であって、前記保持板の一面上に配置され、前記余長部を所定の曲げ半径で湾曲させて保持するケーブル保持部材と、前記一面が作業者に正対する姿勢を少なくとも含む複数の姿勢に前記保持板を可変支持する可変支持部材と、前記保持板を所定の姿勢で固定する固定部材とを備えるものを採用した。
【0006】
また、第2の手段として、上記第1の手段において、前記ケーブル保持部材は、光ファイバケーブルの許容最小曲げ半径以上の曲げ半径の仮想曲線に沿って前記保持板に配置された複数のクランプにより構成されているものを採用した。
【0007】
第3の手段として、上記第1又は2の手段において、前記保持板は、前記保持板上に保持される前記余長部が前記保持板の外周からはみ出さない程度の大きさに形成されているものを採用した。
【発明の効果】
【0008】
余長処理板は、可変支持部材によって、作業者に正対する姿勢を少なくとも含む複数の姿勢に可変支持されるので、余長処理板上のケーブル保持部材に光ファイバケーブルを保持させる際には余長処理板を作業者に正対させる姿勢に設定することができる。したがって、余長処理の作業性を向上させると共に、余長処理時の光ファイバケーブルの視認性を向上させて光ファイバケーブルの劣化を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、キャビネットCに実装された光ファイバケーブルHの余長処理中のキャビネットCに対する余長保持具1の姿勢を示す斜視図であり、図2は、余長保持具1の外観及び構造を示す斜視図(a)及び一部拡大図(b),(c)である。本余長保持具1は、保持板2、クランプ3(ケーブル保持部材)、回動支持部材4(可変支持部材)及び固定部材5を備えている。光ファイバケーブルHは、キャビネットC外では、保護被覆を施された状態の光ケーブルSとされており、キャビネットC内において、被覆が取り除かれた状態とされて使用される。光ケーブルSの許容最小曲げ半径は数10cmであり、光ファイバケーブルHの許容最小曲げ半径は数cmである。
【0010】
保持板2は、略四角形の板状部材であって、一面に光ファイバケーブルHの余長部Yを保持するものであり、該一面に、複数(例えば四個)のクランプ3が配置されている。
クランプ3は、拡大図(c)に示すように、樹脂製の四辺形をなす部材であり、四辺形を形成する四辺のうちの三辺が略コ字型に一体に成形され、残る一辺31が一端32を中心に回動自在に且つ四辺形を形成する位置で固定可能とされたものであって、巻回した光ファイバケーブルHの余長部Yの束を四辺で囲むように保持する。
本実施形態では、四個のクランプ3が、保持板2上に、光ファイバケーブルHの許容最小曲げ半径以上の曲げ半径の仮想円に沿って等間隔に配置されている。また、保持板2は、保持板2に保持される光ファイバケーブルHの余長部Yが保持板2の外周からはみ出さない程度に十分大きく形成されている。
【0011】
回動支持部材4は、取付板41及び回動支軸42を備えている。取付板41は、直交する2平面を有する断面L字型の部材であって、一方の平面が光ファイバケーブルHが実装されるキャビネットCの側壁にネジ41aによって取り付けられる。回動支軸42は、取付板41と保持板2とを互いに回動自在に連結してヒンジ構造となすものである。
固定部材5は、保持板2の回動支軸42から離れた2つの角の近傍に設けられ、保持板2をキャビネットCに対して固定するネジ51と、ネジ51の外周を覆う筒状の部材であってキャビネットCと保持板2との間に所定間隔をあけるスペーサ52とからなる。
【0012】
次に、上記構造の余長保持具1の動作について説明する。図3は余長処理完了後のキャビネットCに対する余長保持具1の姿勢を示す斜視図である。本実施形態においては、作業者に正対するキャビネットCの奥壁には図示しない他の電子機器が配設されるために余長処理に十分な領域をとることができないと想定し、余長処理のための領域をキャビネットCの側壁にとる。このキャビネットCの側壁にとられた余長処理のための領域は、奥壁に近く、側壁の手前の領域には各種電子機器E1,E2が配設されている。
【0013】
まず作業者は、回動支持部材4の取付板41をキャビネットCの奥壁にネジ止めする。これにより、保持板2は、キャビネットCの奥壁及び側壁に対して、一端を回動自在、他端を回動に伴って近接離反自在とされる。
光ファイバケーブルHは、キャビネットCの天面に形成された引込孔C1からキャビネットC内へ引き込まれている。作業者は、光ファイバケーブルHの余長部Yを、過度に湾曲させないよう目視確認しながら巻回し、クランプ3に保持させる。続いて作業者は、光ファイバケーブルHの先端を、キャビネットCに備えられたコネクタC2に接続する。
次に作業者は、保持板2を回動させて、キャビネットCの側壁に対向させる。そして、スペーサ52を保持板2とキャビネットCの側壁との間に位置させ、保持板2を裏面からネジ51によって側壁にネジ止めし、固定する。
【0014】
このように、本実施形態によれば、作業者が正対し得ない位置に余長処理のための領域が設けられていても、作業者に正対する位置において、光ファイバケーブルHを湾曲させる作業を行うことができるので、光ファイバケーブルHを過剰に湾曲させないよう目視確認しながら作業を行うことができ、したがって、光ケーブルSの余長処理の作業性を向上させると共に光ファイバケーブルHの劣化を防ぐことができる。
また、本実施形態によれば、余長処理後は、余長部Yが、保持板2とキャビネットCの側壁との間に位置するので、余長部Yを保護することができる。
【0015】
なお、本実施形態では、固定部材5は、キャビネットCに保持板2をネジ止め固定するものとしたが、実施にあたっては、固定部材を、凹部を有する部材と凸部を有する部材とを有し、凹凸が嵌合するスナップ止め構造のものとしてもよく、このようにすれば、固定部材による固定/固定解除が容易である。
また、実施にあたっては、例えば上記のようなスナップ止め構造の固定部材の凹部を有する部材及び/又は凸部を有する部材をゴム製として、緩衝機構を備えるようにしてもよく、このようにすると、余長処理後の保持板に作業者がぶつかるようなことがあっても、衝撃を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態における光ケーブルの余長処理中のキャビネットに対する余長保持具の姿勢を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態における余長保持具の外観及び構造を示す斜視図(a)及び一部の拡大図(b),(c)である。
【図3】本発明の一実施形態における余長処理完了後のキャビネットに対する余長保持具の姿勢を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0017】
1…余長保持具(光ケーブル余長保持具)、 2…保持板、 3…クランプ(ケーブル保持部材)、 4…回動支持部材(可変支持部材)、 41…取付板、 41a…ネジ、 42…回動支軸、 5…固定部材、 51…ネジ、 52…スペーサ、 C…キャビネット、 C1…引込孔、 C2…コネクタ、 E1,E2…電子機器、 H…光ファイバケーブル、 Y…余長部、 S…光ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ケーブルの余長部を所定の保持板上に保持する光ケーブル余長保持具であって、
前記保持板の一面上に配置され、前記余長部を所定の曲げ半径以上で湾曲させて保持するケーブル保持部材と、
前記一面が作業者に正対する姿勢を少なくとも含む複数の姿勢に前記保持板を可変支持する可変支持部材と、
前記保持板を所定の姿勢で固定する固定部材と
を備えることを特徴とする光ケーブル余長保持具。
【請求項2】
前記ケーブル保持部材は、光ファイバケーブルの許容最小曲げ半径以上の曲げ半径の仮想曲線に沿って前記保持板に配置された複数のクランプにより構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の光ケーブル余長保持具。
【請求項3】
前記保持板は、前記保持板上に保持される前記余長部が前記保持板の外周からはみ出さない程度の大きさに形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光ケーブル余長保持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−33012(P2008−33012A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−206354(P2006−206354)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】