説明

光ケーブル機器筐体の光ケーブル収容部

【課題】筐体内の空きスペースに新たに機器ユニットを装入して必要な光ケーブルを接続する場合に、最小限の労力で機器ユニットの増設やメンテナンスが図れる光ケーブル機器筐体の光ケーブル収容部を提供する。
【解決手段】下方に機器ユニット10,11を備えた光ケーブル機器筐体1の上方正面開放部を覆うように、光ケーブルをループ状に巻装して収容可能な光ケーブル収容部3を着脱可能に取り付ける際に、前記光ケーブル収容部を幅方向で複数に分割し、各分割収容部3・3をそれぞれ独立して着脱可能にするとともに、前記各分割収容部を相隣接する側方の枠状壁30〜33を突き合わせて一連に組み合わせた状態で連結可能、または連結および連結解除可能に構成した。前記枠状壁には板状片22・23が形成され、各板状片22の上端に嵌合爪22aをそれぞれ内向きに突設し、各嵌合爪22aに嵌合可能な連結部材28を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光ファイバーケーブル(以下、光ケーブルという)によって映像信号などの受信や送信などを行う光ケーブル機器の筐体に関するもので、特に、光ケーブルを送受信機器やO/E変換器などに機器ユニットと接続する際に余長部分や終端部分をループ状に巻装して収容する光ケーブル収容部(光ケーブルトレイ、あるいは単にトレイともいう)に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の光ケーブル機器筐体では、光ケーブル収容部をその正面開放部を覆うように着脱可能に備え、光ケーブル収容部の下方の筐体内に光信号を電気信号に変換する機器ユニットや光信号の出力を増幅する機器ユニットなどを光ケーブル収容部下方の筐体内に装入している。
【0003】
ところで、従来の一般的な光ケーブル収容部は、光ケーブル機器筐体の正面開放部を覆うように取り付けられる樹脂製の枠状周壁を備えたトレイからなり、トレイの基板上には光ケーブルの余長部分を内部の光ファイバーが損傷しない程度の安全な曲率でループ状に巻装可能な、円弧状や直線状のガイド壁が長円形状や円形状に間隔をあけて幾重にも立設されている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2006-301327号公報(図2)
【特許文献2】特開2007-057806号公報(段落0002および図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来の一般的な光ケーブル収容部では、次のような場合に対応できない。すなわち、
例えば、光ケーブルで送信されてくる放送用光信号を電気信号(RF信号)に変換して増幅した後、同軸ケーブルで送り出す機器ユニットと、送信されてくる光信号の出力を増幅して遠隔地に送信する機器ユニットのように、種類の異なる機器ユニットを共通の筐体内に備える場合に、あるいは中継する光ケーブルを2本あるいは3本以上に分離し、分離した各光ケーブルをそれぞれ別個の光ケーブル収容部のガイド部に沿って巻装して取り扱う場合に、従来の光ケーブル収容部は一体構造からなるので、例えば、筐体内に1台の機器ユニット(光信号から電気信号へ変換用)を装入してあって、もう1台の機器ユニットを装入可能な空きスペースがある場合に、もう1台の機器ユニット(例えば、光信号の出力増幅用)を筐体内に追加しようとすれば、すでに筐体内に装入されている機器ユニットの光入力部と光ケーブルの端部に設けられた光コネクタとの接続を解消し、光ケーブル収容部を取り外すことになる。そして、もう1台の機器ユニットを筐体内に装入したのちに、光ケーブル収容部の光ケーブルを巻き戻して、2台の機器ユニットに光ケーブルを接続できるようにそれらの余長部分再び巻き付けなおした状態で、光ケーブル収容部を筐体の正面開放部に取り付ける必要がある。
【0005】
したがって、新たな機器ユニットを追加するたびに光ケーブル収容部に巻装された光ケーブルを巻き戻し、再び光ケーブルを巻装しなければならず、その手間が大変なうえに、光ケーブルの巻き戻しや巻装時に光ケーブルを損傷するおそれがある。
【0006】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、例えば、筐体内の空きスペースに新たに機器ユニットを装入して必要な光ケーブルを接続する場合に、新たに導入する光ケーブル、あるいは既に導入済みの光ケーブルから分岐した光ケーブルを、装入した機器ユニット上に取り付けられる光ケーブル収容部を隣接する取り付け済の光ケーブル収容部と一体に連結し、取り付けられる光ケーブル収容部に巻装できるようにして、最小限の労力で機器ユニットの増設やメンテナンスが図れる光ケーブル機器筐体の光ケーブル収容部を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために本発明に係る光ケーブル機器筐体の光ケーブル収容部は、光ケーブルをループ状に巻装して収容可能な光ケーブル収容部を正面開放部を覆うように着脱可能に取り付けるとともに、前記光ケーブル収容部の下方の筺体内に機器ユニットを備えた光ケーブル機器筐体において、前記光ケーブル収容部を幅方向で複数(2つ以上、例えば3つ)に分割し、各分割収容部を相隣接する側方の枠状壁を突き合わせて一連に組み合わせた状態で前記筺体の正面開放部に対しそれぞれ独立して着脱可能にするとともに、前記各分割収容部を連結可能または、連結および連結解除可能に構成したことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載のように、前記各分割収容部がほぼ二等分された収容部からなり、それぞれ周囲に枠状壁を備え、各分割収容部の両側方の枠状壁に長手方向に間隔をあけて、上端を開放し上下方向に連続する切欠き溝を少なくとも2本の板状片が形成されるように所定間隔をあけて設けるとともに、連結状態で相互に突き合わせられる少なくとも1本の前記板状片を挟んで相反する側の各板状片の上端に嵌合爪をそれぞれ内向きに突設し、前記各嵌合爪に嵌合可能な嵌合縁を上端に有する連結部材(例えば、角筒体状の連結部材)を備えることが好ましい。
【0009】
請求項3に記載のように、前記各側方枠状壁の一部に、上端を開放して上下方向に連続する切欠き溝を少なくとも2本の幅の異なる板状片が形成されるように所定間隔をあけて設け、少なくとも1本の広幅の前記板状片を挟んで相反する側の各細幅の板状片の上端にそれぞれ嵌合爪を内向きに突設するとともに、少なくとも1本の前記広幅の板状片同士が突き合わせられ、細幅の前記板状片が他方の切欠き溝に背を向けて位置するようにし、前記側方枠状壁の突き合わせ状態で両側方の前記板状片の全てを取り囲み可能で、両側の前記嵌合爪に同時に嵌合可能な嵌合縁を上端に備えた連結部材(例えば、四角筒形の連結部材)を、前記各分割収容部に形成した中央開口部内に切り離し可能(例えば、手や工具で)に連設することができる。
【0010】
請求項4に記載のように、前記各光ケーブル収容部を前記筐体の正面開放部に取り付けた状態で、一方の光ケーブル収容部の外側枠状壁との間に所定の隙間が形成されるように、前記筐体の正面開放部の内周面に沿って内周壁を設け、前記連結部材を前記外側枠状壁の2本の板状片を取り囲んで1の嵌合爪に嵌合させて保持できるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る光ケーブル機器筐体の光ケーブル収容部は、上記の構成からなるから、次のような優れた効果がある。
【0012】
・請求項1の発明によれば、光ケーブル収容部を幅方向で複数に分割し、各分割収容部を相隣接する側方の枠状壁を突き合わせて一連に組み合わせた状態で前記筺体の正面開放部に対しそれぞれ独立して着脱可能にするとともに、各分割収容部を、前記筺体の正面開放部に取り付けた状態あるいは取り付ける前の状態で連結可能にしたから、例えば1つの機器ユニット(例えば、O/E変換用)が筐体内に装入され、機器ユニットの上方に分割収容部が取り付けられている場合に、いいかえれば筐体内に空きスペースがあって、その空きスペースに別の機器ユニット(例えば光信号増幅用)を装入するとともに、その別の機器ユニットの上方にも分割収容部を取り付け、既に筐体内に取り付けられている分割収容部と連結して一体にし、新たに導入する光ケーブルあるいは先の光ケーブルから分岐した光ケーブルを新たな分割収容部に巻き付けて別の機器ユニットに接続することができる。特に先の光ケーブルから分岐した光ケーブルを新たに取り付けた光ケーブルの分割収容部に巻き付ける場合には、光ケーブルが複数(2つ以上)の分割収容部に跨って巻き付けられることになるから、仮に複数の分割収容部が一体に連結されていないと、光ケーブルが分割収容部間の隣接箇所で折れ曲がったりして損傷するおそれがあるが、本発明によればそのようなおそれが一切ない。しかも、別の分割収容部を追加するだけであるから、従来のように光ケーブル収容部上の光ケーブルを巻き戻したのちに光ケーブル収容部を筐体から取り外し、別の機器ユニットを装入してその上に光ケーブル収容部を取り付け、再び光ケーブルを巻き付ける必要がないから、光ケーブルの巻き付け作業等が簡略化され、光ケーブルを損傷するおそれも減少する。
【0013】
また、いったん連結した光ケーブル収容部の連結状態を解除可能にすることにより、例えば筐体内に複数の機器ユニットが装入されている場合で、複数の機器ユニットの真上の、対応する各分割収容部ごとに光ケーブルが巻装されている場合に、それらのうちの1つの機器ユニットをメンテナンスする際は、メンテナンスする機器ユニットの真上の光ケーブル分割収容部に巻装された光ケーブルを機器ユニットのコネクタ(光中継用アダプタ)から引き抜き、メンテナンスする機器ユニットに対応する光ケーブル分割収容部を隣接する光ケーブル分割収容部との連結状態を連結部材を引き抜いて解除し、その光ケーブル収容部だけを取り外し、真下の機器ユニットを取り出すことができる。そして、メンテナンスの終了後に機器ユニットを筐体内に装入した状態で、取り外した光ケーブルの分割収容部を取り付け、光ケーブルをメンテナンス済みの機器ユニットに接続したのち、隣接する光ケーブル分割収容部と連結すればよい。さらに、複数の光ケーブル分割収容部に跨って光ケーブルが巻装されている場合には、筐体内の複数の全ての機器ユニットと対応する光ケーブルをそれぞれコネクタ(光中継用アダプタ)から引き抜き、筐体の正面開放部を覆う光ケーブル収容部の全て(一体化された複数の光ケーブル収容部)を連結された状態のまま取り外し、筐体内のメンテナンスしようとする機器ユニットだけを取り出す。そして、メンテナンスが終了した後にその機器ユニットを筐体内に装入し、連結状態の複数の分割収容部を筐体の正面開放部に取り付け、各機器ユニットに対応する光ケーブルを接続すればよい。
【0014】
・請求項2の発明によれば、例えば、左右両側の光ケーブル収容部のうち、一方の光ケーブル収容部に対応する機器ユニットだけが筐体内に装入されており、光ケーブル収容部にもその機器ユニットに対応する側にだけ光ケーブルが巻装されている場合に、別の機器ユニットを他方の光ケーブル収容部の下方の筐体内に装入し、巻装されている光ケーブルから分岐された別の光ケーブルをその別の機器ユニットに接続する際には、分岐された別の光ケーブルの余長部分を他方の光ケーブル収容部に巻き付け、別の機器ユニットに別の光ケーブルをコネクタにて接続する。そして、左右の光ケーブル収容部同士を連結部材を介して一体に連結するが、このとき光ケーブル収容部間の嵌合部に連結部材を嵌め込んで嵌合爪を上端の嵌合縁に嵌合させて一体に連結し、余長の光ケーブルを巻き付けることにより一連の作業が終了する。特に、新たに巻き付けようとする光ケーブルが左右の光ケーブル収容部間に跨るときには、光ケーブルを巻き付ける前に光ケーブル収容部同士をあらかじめ連結しておけば、光ケーブルが収容部間で折れ曲がったりせず、損傷するおそれがほとんどない。また、長期間使用している間に、仮に連結部材を嵌め込んで連結する嵌合爪が損傷した場合には、光ケーブルを巻き戻した状態で左右の光ケーブル収容部を取り外して入れ替えることにより、連結部材を嵌め込んで嵌合する嵌合爪を備えた板状片が入れ替わって新しくなるので、新しくなった嵌合爪に連結部材を嵌合させて連結することができる。
【0015】
・請求項3の発明によれば、連結部材を光ケーブル収容部の中央開口部内の空間部に一体に連設し、手やカッターなどの工具で簡単に切り離せるようにしてあるから、連結部材をなくすことがない。また、光ケーブル収容部の側方枠状壁を突き合わせた状態で、嵌合爪を上端に備えた板状片は他方の切欠き溝に位置するから、連結部材の嵌合部を嵌合爪に嵌合させるときに、板状片が嵌合爪の突設方向と逆向きに湾曲し、無理なく嵌合爪が連結部材の嵌合縁に嵌合する。
【0016】
・請求項4の発明によれば、一方の、または最外側方寄りの光ケーブル収容部の外側枠状壁にも上端に嵌合爪を備えた板状片が設けられているとともに、その外側に所定の間隔を空けて筐体の内周壁が設けられているから、例えば、分割収容部の中央開口部に張り出して連設されている連結部材を千切り取った状態で、あるいは連結部材を取り外して光ケーブル収容部同士の連結を解除した状態で、その連結部材を外側枠状壁の嵌合爪に嵌合させて保持することができる。したがって、筐体内には1つの機器ユニットが装入され、分割収容部も1つだけ取り付けられている状態で別の分割収容部を取り付けて連結する前や、分割収容部の連結を解除した状態で機器ユニットなどのメンテナンス作業中などに、取り外した連結部材を定位置に保持でき、なくすことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の光ケーブル機器筐体の光ケーブル収容部について実施の形態を挙げて図面に基づき説明する。
【0018】
図1(a)は本発明の実施例に係る光ケーブル収容部を備えた光ケーブル機器筐体を示す外観の斜視図で、蓋を開放した状態を表し、図1(b)は図1(a)に示す2個の光ケーブル収容部を突き合わせて連結しようとする状態を拡大して示す斜視図である。図2は図1(a)の筐体の正面開放部に取り付けられた2個の光ケーブル収容部を示す平面図で、非連結状態を表す。図3は左右一対の光ケーブル収容部を取り外した状態の光ケーブル機器筐体を示す斜視図、図4は筐体から取り外して連結を解除した状態の光ケーブル収容部を示す斜視図である。図5(a)は図1(a)において本発明の要部を円で囲んで示し、図5(b)はその拡大図を示す斜視図である。
【0019】
図1(a)に示すように、光ケーブル機器筐体1は本実施例では光受信機の筐体からなり、筐体1は樹脂製で正面(上面)1aが開放され、この正面開放部1a側に開閉自在な樹脂製の蓋2が備えられている。この筐体1は、蓋2の両側ヒンジ2cを上側に向けてビルやマンションなどの光ケーブル(図示せず)の引き込み口や光信号変換後のTV出力信号用ケーブルの引き込み口近くの建物壁面に取付片1fを用いて固定用ねじで取り付けられる。
【0020】
図1に示すように、筐体1の正面開放部1aには、浅くて上端が開放されたトレイ状で樹脂製の光ケーブル収容部3の左右一対がそれぞれ着脱可能に嵌め込まれている。一方、右側の光ケーブル収容部3下方の筐体1内には、本例の場合、図示を省略するが、光信号を電気信号に変換するO/E変換器、変換された電気信号を増幅する増幅器が1台の機器ユニット10として、左側の光ケーブル収容部3下方の筐体1内には、光信号を増幅する増幅器がもう1台の機器ユニット11としてそれぞれ収容されている。筐体1の前面1b(壁面への取付状態で下面に位置する側)には、TV電気信号の出力端子10a用孔部13と、出力端子10aから出力されるTV電気信号をモニターするためのモニター端子10b用孔部14とが間隔をあけて穿設されている。また、蓋2の両側枠2bの前端部に係止片4がそれぞれ直角方向に突設され、これらの係止片4に対応して係止される係止縁部4aが筐体1の両側面1cの上端部に前後方向に連続して一体に形成されている。また、蓋2の開放端前面2aの両側部に留め具5がそれぞれ直角方向に突設され、筐体1の前面1bに留め具5のねじ孔部5aがそれぞれ一体に形成されている。
【0021】
図4に示すように、左右の各光ケーブル収容部3は全周にわたり枠状壁30〜33が立設されている。各光ケーブル収容部3は、光ケーブルの出入り口34(前面の中央部および両側部)の位置に対応する前方枠状壁30の一部(4箇所)がそれぞれ切り欠かれて開口されている。これらの切り欠き開口30aに一致するように、筐体1の前面1bにも開口1eが設けられている。また、蓋2の前面2aにも、開口1eに対応する位置に開口2dが設けられている。なお、図1中の符号1fは筐体1の壁面取付片で、止めねじ用貫通孔を備えているが、この取付片1fは前面下端縁の中央および両側部のほか、上端縁の中央部(図示せず)に設けられている。
【0022】
本例では、各出入り口34に光ケーブルを挟持可能な弾性体ホルダー7(図1)の装着部34aを備えているが、この装着部34aは両側方の枠状壁31・32とこれらに対向しかつ平行に立設された内側の枠壁34bとで構成されている。また、弾性体ホルダー7は全体がゴムやエラストマーなどの弾力性を具備した材料で成形されており、光ケーブル挿入溝(図示せず)が等間隔で平行に貫通して形成され、各挿入溝の上面の中心位置に切り込みが長手方向に入れられている。
【0023】
各出入り口34の弾性ホルダー装着部34aには、弾性体ホルダー7の切欠き部に対応する2本のリブ8と弾性体ホルダー7の両側の縦溝に対応するリブ9とが所定の間隔をあけて立設されている。各リブ8・9の相対向する面(挟持面)は、基端から先端側の切欠き開口31aに向けて漸次間隔が狭くなるテーパー面に形成されている。また、光ケーブル収容部3の出入り口34と反対側の背面寄り隅角部には、光ケーブル内に光ファイバーと平行に入れたサポートメンバーを巻き付けて固定するための固定用ねじ孔部12が設けられている。
【0024】
各光ケーブル収容部3の中央部分に長円形状の開口部3aが設けられており、開口部3aの周囲で4隅の円弧状周縁部に直線状部と円弧状部との組み合わせからなるガイド壁35が基板3b上に立設され、前部左側円弧部と後部右側円弧部には半径方向に間隔をあけて二重に、後部左側円弧部には半径方向に間隔をあけて三重にそれぞれガイド壁35が基板3b上に立設されている。これらのガイド壁35で構成されるガイド溝部(またはガイド部)39に沿って光ケーブルが出入口34から内部に引き込まれ、あるいは内部から送り出される光ケーブルの余長部分をガイド溝部39に沿ってループ状に巻装することができる。
【0025】
図4に示すように、各光ケーブル収容部3は上記したとおり本例では同一の形状で、上方より見て長方形状で周囲に枠状壁30〜33を備えたトレイ状枠体からなっている。各光ケーブル収容部3の両側方枠状壁31・32には、弾性体ホルダー装着部34aのすぐ後方と、サポートメンバー固定用ねじ孔部12のすぐ前方とに、左右の光ケーブル収容部3・3を連結するための連結用嵌合部21をそれぞれ設けている。各嵌合部21は、図1(b)に拡大して示すように、細い幅の板状片22とやや広い幅の板状片23とを上下方向に連続する切欠き溝24〜26を挟んで設け、細幅の板状片22の上端に嵌合爪22aを内向けに突設しており、左右の光ケーブル収容部3・3の内側方枠状壁31・32を突き合わせた状態で、広幅の板状片23同士が背中合わせに突き合わされ、広幅の板状片23を挟んで嵌合爪22aを備えた細幅の板状片22が相反する側に位置する構成からなる。細幅板状片22の相対向する各側方枠状壁31・32には、切欠き溝24または26が位置し、後述する連結部材28を嵌め込むときに細幅板状片22が外側へ撓りやすくしてある。これにより、板状片22上端の嵌合爪22aは連結部材28の上端の嵌合縁28aにスムーズに嵌合する。
【0026】
なお、左側の光ケーブル収容部3では、図1(b)・図5(b)のように後端の切欠き溝26が凹状の開口部と一つになって大きく開口しており、また右側の光ケーブル収容部3では、前端と後端の各切欠き溝24・26が凹状あるいは縦長の開口部と一つになって大きく開口している。
【0027】
図1(b)・図5(b)に示すように、連結部材28は本例では四角筒体で、左右の光ケーブル収容部3・3の内側方枠状壁31・32を突き合わせた状態で、背中合わせの広幅板状片23・23と両側の各板状片22・22を取り囲み可能な四角形筒体からなる。連結部材28の上端開口縁部は長方形枠状で、幅方向の中間位置に対向する突出片28bが突設され、その両側が嵌合爪22aとの嵌合縁28aに形成されている。また、連結部材28の下端開口縁も長方形枠状で、両側の下端縁28cがそれぞれ下方へ突出している。この連結部材28は通常、図4に示すように左右の光ケーブル収容部3の開口部3a内に、手あるいはカッターなどの工具で切り離し可能に連設されている。そして、左右の光ケーブル収容部3・3の内側方枠状壁31・32を突き合わせた状態で、各嵌合部21に真上から嵌め込むことにより前後の細幅板状片22が外方に湾曲し、板状片22・23が連結部材28内に挿入された後、外方へ湾曲した前後の細幅板状片22がそれぞれ元の状態に復元し、上端の各嵌合爪22aが連結部材28の嵌合縁28aにそれぞれ嵌合する。
【0028】
図1(a)・図2・図5(a)に示すように、筐体1の正面開放部1aの内周面に沿って内周壁1d(前面1b・両側面1cを含む)が、上端部を上方へやや突出して一体に設けられている。左右の光ケーブル収容部3・3は、内側方枠状壁31・32を突き合わせた状態で内周壁1dの前面1bや左側面1cなどに当接させて正面開放部1aを覆うように取り付けられている。この状態で、図2のように右側の光ケーブル収容部3の外側方枠状壁32と内周壁1dの右側面1cとの間に、所定の間隙が前後方向にわたって生じる。このため、右側の光ケーブル収容部3の外側方枠状壁32における前後の嵌合部21’・21’に、連結部材28を嵌めて保持することができる。
【0029】
さらに、各光ケーブル収容部3・3は、以下のような構造を備えている。すなわち、図1・図2に示すように、本例では、外周側から内周側にかけて順に複数のガイド壁35間のガイド溝部39に沿って光ケーブルを半径方向に一定間隔をあけてループ状に巻き付けることにより、余長部分を曲率の大きなループ状に巻装し収容することができる。なお、ガイド壁35の上端には、長手方向に間隔をあけて光ケーブルの抜け止め片35aが一体に形成されている。
【0030】
また、開口部3a周囲の両側の直線状縁部には、前後の円弧状コーナのガイド壁35・35間を断続的に接続する一直線状ガイド壁36を基板3b上に立設している。また、左右の連続する一直線状ガイド壁36の外側には、前後一対の一直線状ガイド壁38・38が前後方向に間隔をあけて基板3b上に立設されている。さらに、図の左側の一直線状ガイド壁36の内側と外側に上方より見て略くの字状のバネ片41が相対向する前後のガイド壁37またはガイド壁38へ向けて漸次間隔(ガイド溝部34の溝幅)が狭まるように一体に延設され、右側の一直線状ガイド壁35の外側にも上方より見て略くの字状のバネ片41が相対向する前後のガイド壁37・37へ向け漸次間隔(ガイド溝部34の溝幅)が狭まるように一体に延設されている。
【0031】
一直線状ガイド壁36の略くの字状バネ片41の先端部と各ガイド壁37との間は、光ケーブルで送信される波長の異なる複数の光信号のうち、不要な波長の光信号を除去するフィルタを挟持して保持するように構成されている。
【0032】
また、図1・図2に示すように、長円形状開口部3aの右側の直線状部では、長方形状の部分基板3dが基板3bより開口部3a内へ張り出して連設され、この部分基板3d上に左右一対の板状ガイド壁43・44が幅方向に間隔をあけて立設されている。これにより、ガイド壁43とガイド壁44との間およびガイド壁44と一直線状ガイド壁36との間が、それぞれ光中継用アダプタ50(図1)を両側から挟持して支持可能な支持部45・46に構成されている。光中継用アダプタ50を介して入力される光信号は、例えば機器ユニット10内のO/E変換器で電気信号に変換され、変換された電気信号が増幅されて出力端子10aおよびモニター端子10bから出力される。
【0033】
ところで、図1の右側の光ケーブル収容部3とその下方の筐体1内の機器ユニット10について例示したが、左側の光ケーブル収容部3の下方の筐体1内に収容される機器ユニット11は、本例の場合、光ケーブルで送信される光信号を増幅する増幅器を内蔵しており、光ケーブルにより光中継用アダプタ50を介して入力される光信号を左側の機器ユニット11内の増幅器で増幅し、左側の光ケーブル収容部3の光ケーブル出入口34から取り出される光ケーブルにより再び遠方へ送信することができる。
【0034】
以上のようにして本発明の実施例にかかる光受信機の筐体1が構成されるが、続いて左右の光ケーブル収容部3・3の使用態様について説明する。
【0035】
図示は省略するが、光ケーブルにはサポートメンバー入り光ケーブルを使用するもので、通常、筐体1を建物の壁面に取り付けた状態で、光ケーブル収容部3を取り外して光ケーブルの処理が行われる。弾性体ホルダー7は収容部3の出入り口34に装着された状態で、光ケーブルを切り込みから挿入溝内に挿入する。このとき、各挿入溝はリブ8・9間で挟持されていない位置にある。そして、各挿入溝に光ケーブルがそれぞれ挿入された状態で、弾性体ホルダー7を図で下向きにスライドさせることにより、対向するリブ8・9間の下向きに間隔が狭まった挟持面にてホルダー7の挿入溝(上端開放溝)が挟持され、挿入溝内の光ケーブルがホルダー7ごと締め付けられて固定される。
【0036】
光ケーブルについて図示は省略するが、本例の光受信機の機器筐体1は種類の異なる2台の機器ユニット10・11を備えることができる。したがって、中継する光ケーブルを2本あるいは3本以上に分離し、分離した各光ケーブルをそれぞれ左右の光ケーブル収容部3・3のガイド溝部39に沿って巻装して取り扱うことができる。例えば、最初は1台の機器ユニット10を用いて光信号を電気信号に変換して出力端子10aから同軸ケーブルにてユーザーに送信するだけの目的で使用している場合に、同じ機器筐体1の空きスペースを利用して、例えば、光信号の出力を増幅して、さらに遠方へ送信することが要求される場合がある。このような場合、右側の光ケーブル収容部3に光ケーブルを巻装した状態で、光信号増幅用の機器ユニット11を左側の空きスペースに装入して固定し、機器ユニット11上に別(左側)の光ケーブル収容部3を、右側の光ケーブル収容部3の内側枠状壁31に内側枠状壁32を突き合わせるようにして筐体1の正面開放部1aに取り付ける。そして、光ケーブル収容部3の中央開口部3a内に連設された状態から手やカッターで切り離したり、あるいは嵌合部21’に保持したりしていた連結部材28を、嵌合部21・21に嵌め込んで、左右の光ケーブル収容部3・3を一体に連結する。この状態で、右側の光ケーブル収容部3の出入口34から引き込んだ光ケーブルや機器ユニット10に接続される光ケーブルから分岐した光ケーブルの余長部分を、左側の光ケーブル収容部3に巻き付け、機器ユニット11に接続することができる。本例の場合、光ケーブルは左右の光ケーブル収容部3・3に跨って巻装されることになるが、両収容部3・3は一体に結合されているので、光ケーブルが折れ曲がったりして損傷することがない。
【0037】
一方、上記のように光ケーブルが左右の光ケーブル収容部3・3に跨って巻き付けられている場合に、機器筐体1内の2台の機器ユニット10・11または一方の機器ユニットのメンテナンスを行うには、各機器ユニット10・11と光ケーブルの接続をコネクタから引き抜いて解消したのち、左右の連結された光ケーブル収容部3・3を取り外し、機器ユニット10・11または一方の機器ユニットを取り出してメンテナンスを行えばよい。また、左右の光ケーブル収容部3・3に光ケーブルをそれぞれ別々に巻き付けることもでき、この状態で両側の光ケーブル収容部3・3を連結部材28を介して連結することがある。この場合に、例えば、右側の光ケーブル収容部3の下方の機器ユニット10をメンテナンスしなければならないとすれば、右側の光ケーブル収容部3に巻装されている光ケーブルと機器ユニット10との接続を解消した後、右側の光ケーブル収容部3だけを筐体1の正面開放部1aから取り外してメンテナンスすることができる。
【0038】
具体的には、図2に示すように筐体1の正面開放部1aに取り付けられた左右の光ケーブル収容部3・3の内側方枠状壁31・32の前後の連結用嵌合部21・21から、連結部材28をそれぞれ引き抜いて取り外し、連結状態を解消する。連結部材28の引き抜きは、前後の細幅板状片22の上端の嵌合爪22aを板状片22を外方へ湾曲させて嵌合縁28aとの嵌合状態を解消すれば、簡単に行える。こうして、嵌合部21・21から連結部材28をそれぞれ引き抜いて取り外し、右側の光ケーブル収容部3の外側方枠状壁32の嵌合部21’に嵌めて保持する。
【0039】
この状態で、左右の光ケーブル収容部3・3は筐体1の正面開放部1aから独立して個々に取り外し可能になるから、例えば右側の光ケーブル収容部3だけを取り外し、下方の機器ユニット10を取り出してメンテナンスを行うことができる。そしてメンテナンス終了後は、機器ユニット10を筐体1内に挿入し、右側の光ケーブル収容部3を取り付け、さらに嵌合部21’から連結部材28をそれぞれ引き抜いて取り外し、左右の内側方枠状壁31・32を突き合わせて形成される嵌合部21・21に連結部材28をそれぞれ嵌め込んで、左右の光ケーブル収容部3・3を連結する。ここで、光ケーブルの余長部分を右側の光ケーブル収容部3のガイド溝部39に沿ってループ状に巻装するなどの処理を施せばよい。つまり、従来と違って、一方の光ケーブル収容部3だけを取り外すことができるので、最小限の手間で済み、光ケーブル収容部全体を取り外す場合に比べて、光ケーブルを損傷するおそれも大幅に減少する。
【0040】
以上に本発明の光ケーブル収容部の実施例について説明したが、本発明の光ケーブル機器筐体は次のように実施することができる。
【0041】
・上記実施例では、筐体1の正面開放部1aに取り付ける光ケーブル収容部を左右一対にしたが、例えば3等分あるいは4等分して3〜4個の光ケーブル収容部に分割しても同様に実施できる。いいかえれば、光ケーブル収容部3下方の筐体1内に収容される機器ユニットの数に応じて増やすことができ、また1台の機器ユニットに対し2個の光ケーブル収容部を備えることもできる。
【0042】
・連結部材28を嵌合する連結用嵌合部21を突き合わせる内側方枠状壁31・32の前部・中間部・後部の3箇所に設けることもでき、また連結部材28を光ケーブルや機器ユニットのメンテナンス作業中に一時的に保持する嵌合部21’を省くこともできる。
【0043】
・上記実施例では、左右の光ケーブル収容部3の構造および形状を共通にしたが、それらの構造や形状を左右で異なるように変えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1(a)は本発明の実施例に係る光ケーブル収容部を備えた光ケーブル機器筐体を示す外観の斜視図で、蓋を開放した状態を表し、図1(b)は図1(a)に示す2個の光ケーブル収容部を突き合わせて連結しようとする状態を拡大して示す斜視図である。
【図2】図2は図1(a)の筐体の正面開放部に取り付けられた2個の光ケーブル収容部を示す平面図で、非連結状態を表す。
【図3】左右一対の光ケーブル収容部を取り外した状態の光ケーブル機器筐体を示す斜視図である。
【図4】筐体から取り外して連結を解除した状態の光ケーブル収容部を示す斜視図である。
【図5】図5(a)は図1(a)において本発明の要部を円で囲んで示し、図5(b)はその拡大図を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0045】
1 光ケーブル機器筐体
2 蓋
3 光ケーブル収容部
3a 開口部
3b 基板
3d 部分基板
4 係止片
5 留め具
7 弾性体ホルダー
8・9 リブ
10・11 機器ユニット
12 固定用ねじ孔部
21 連結用嵌合部
22・23 板状片
22a嵌合爪
24〜26 切欠き溝
28 連結部材
30〜33 枠状壁
34 光ケーブルの出入り口
34a弾性ホルダー装着部
35 ガイド壁
36 一直線状ガイド壁
37 一直線状ガイド壁
38 一直線状ガイド壁
39 ガイド溝部
41 バネ片
43・44 板状ガイド壁
45・46 支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ケーブルをループ状に巻装して収容可能な光ケーブル収容部を正面開放部を覆うように着脱可能に取り付けるとともに、前記光ケーブル収容部の下方の筺体内に機器ユニットを備えた光ケーブル機器筐体において、
前記光ケーブル収容部を幅方向で複数に分割し、各分割収容部を相隣接する側方の枠状壁を突き合わせて一連に組み合わせた状態で前記筺体の正面開放部に対しそれぞれ独立して着脱可能にするとともに、
前記各分割収容部を連結可能、または連結および連結解除可能に構成したこと
を特徴とする光ケーブル機器筐体の光ケーブル収容部。
【請求項2】
前記各分割収容部がほぼ二等分された収容部からなり、それぞれ周囲に枠状壁を備え、
各分割収容部の両側方の枠状壁に長手方向に間隔をあけ、上端を開放し上下方向に連続する切欠き溝を少なくとも2本の板状片が形成されるように所定間隔をあけて前後部に設けるとともに、連結状態で相互に突き合わせられる少なくとも1本の前記板状片を挟んで相反する側の各板状片の上端に嵌合爪をそれぞれ内向きに突設し、
前記各嵌合爪に嵌合可能な嵌合縁を上端に有する連結部材を備えたこと
を特徴とする請求項1に記載の光ケーブル機器筐体の光ケーブル収容部。
【請求項3】
前記各側方枠状壁の一部に、上端を開放して上下方向に連続する切欠き溝を少なくとも2本の幅の異なる板状片が形成されるように所定間隔をあけて設け、少なくとも1本の広幅の前記板状片を挟んで相反する側の各細幅の板状片の上端にそれぞれ嵌合爪を内向きに突設するとともに、少なくとも1本の前記広幅の板状片同士が突き合わせられ、細幅の前記板状片が他方の切欠き溝に背を向けて位置するようにし、
前記側方枠状壁の突き合わせ状態で両側方の前記板状片の全てを取り囲み可能で、両側の前記嵌合爪に同時に嵌合可能な嵌合縁を上端に備えた連結部材を、前記各分割収容部に形成した中央開口部内に切り離し可能に連設したこと
を特徴とする請求項1に記載の光ケーブル機器筐体の光ケーブル収容部。
【請求項4】
前記各光ケーブル収容部を前記筐体の正面開放部に取り付けた状態で、一方の光ケーブル収容部の外側枠状壁との間に所定の隙間が形成されるように、前記筐体の正面開放部の内周面に沿って内周壁を設け、前記連結部材を前記外側枠状壁の2本の板状片を取り囲んで1つの前記嵌合爪に嵌合させて保持できるようにしたこと
を特徴とする請求項2または3に記載の光ケーブル機器筐体の光ケーブル収容部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−53481(P2009−53481A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−220711(P2007−220711)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【出願人】(000109668)DXアンテナ株式会社 (394)
【Fターム(参考)】