説明

光ディスクプレーヤの自動利得調整装置

【課題】 本発明は、CDプレーヤ、LDプレーヤ等の光ディスクプレーヤにおいて、フォーカス制御、トラッキング制御等のサーボコントロールを行うために用いられる、いわゆる自動利得調整装置において、自動利得調整により得られた利得調整値の適否を比較的簡単な構成により確認できるようにし、更に誤調整の場合であってもそのまま再生動作が開始されてしまうのを防げるようにする。
【解決手段】 誤差信号によりサーボ制御を行うためのサーボループに設けられる光ディスクプレーヤの自動利得調整装置は、サーボループの利得を誤差信号の信号レベルに最適な利得調整値に調整変更する自動利得調整ブロック8、調整変更された利得調整値を記憶するメモリ13と、メモリ13に記憶された前回の利得調整値と自動利得調整ブロック8による今回の利得の調整変更により新たに得られた利得調整値とを比較し、更に、該比較された利得調整値の差が所定値以上のとき利得を再度調整変更するように自動利得調整ブロック8を制御するマイクロコンピュータ6とを備えて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、CD(Compact Disc)プレーヤ、LD(Laser Disc)プレーヤ等の光ディスクプレーヤにおいて、フォーカス制御、トラッキング制御等のサーボコントロールを行うために用いられる、いわゆる自動利得調整装置の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】通常、この種の光ディスクプレーヤは、記録媒体である光ディスク上の記録トラックから情報を正確に読み取るために、光ピックアップにおけるトラッキング制御やフォーカス制御、ディスク回転用のスピンドルモータにおける回転数制御等をサーボループ(閉回路ループ)によりサーボコントロールするように構成されている。従来から、このサーボコントロールは、光ピックアップから入力した所定種類の信号に対しエラー信号を生成し、サーボループにおけるそのエラー信号の利得を適正な値に調整することにより行われる。このため、サーボループにおいて入力信号に応じて利得を調整する自動利得調整(オートゲインコントロール)装置が用いられている。特に、外乱元を用いて利得調整を行う自動利得調整装置は、的確な利得調整値を測定でき、再生動作に先だって自動利得調整動作を行いサーボ系への利得を設定することで調整後は安定したサーボが行える。
【0003】従来の自動利得調整装置においては、サーボループにおける自動利得調整のために初期値として設定する値を、装置全体の経時変化に拘らず一定値としてしまうと、装置の経時変化その他の原因によってサーボがかからなかったり、かかりにくくなる場合がある。このため、本願出願人により、利得調整動作を終了する度に利得調整値をメモリに記憶させておくことにより、時間的変化の最も少ない最近の利得調整値を、今回の自動利得調整での初期値として採用する技術が提案されている(特開平7ー130087号公報参照)。この技術によれば、光ディスクプレーヤの使用環境や経時的変化に対しても、サーボを比較的確実にクローズできる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の特開平7ー130087号公報に開示された技術によれば、一旦調整が実行され、利得調整値が得られると、この利得調整値が正しいか否かによらず、この利得調整値を用いて再生動作が開始される。このため、光ディスク面上の埃や傷等の状態、振動、光ディスクのセットミスなどに起因して偶発的に発生する誤調整や、電気的な又は機械的な装置の故障に起因する誤調整などの場合には、誤った利得調整値によって再生動作が開始されることにより、サーボが全くかからなかったり、かかりにくかったりする場合がなお出現するという問題点がある。言い換えれば、上述した従来の技術によれば、自動利得調整により得られた利得調整値が正しいか否かは装置の動作の異常によってしか判断できないという問題点がある。
【0005】本発明は上述した問題点に鑑みなされたものであり、自動利得調整により得られた利得調整値の適否を比較的簡単な構成により確認でき、更に誤調整の場合であってもそのまま再生動作が開始されてしまうのを防ぐことができる光ディスクプレーヤの自動利得調整装置を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の光ディスクプレーヤの自動利得調整装置は上記課題を解決するために、誤差信号によりサーボ制御を行うためのサーボループに設けられる光ディスクプレーヤの自動利得調整装置であって、前記サーボループの利得を前記誤差信号の信号レベルに最適な利得調整値に調整変更する利得調整手段と、前記調整変更された利得調整値を記憶する記憶手段と、該記憶手段に記憶された前回の利得調整値と前記利得調整手段による今回の利得の調整変更により新たに得られた利得調整値とを比較する比較手段と、該比較された利得調整値の差が所定値以上のとき前記利得を再度調整変更するように前記利得調整手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】請求項1に記載の光ディスクプレーヤの自動利得調整装置によれば、先ず、利得調整手段により、サーボループの利得が、誤差信号の信号レベルに最適な利得調整値に調整変更される。すると、記憶手段により、この調整変更された利得調整値が記憶される。次に、利得調整手段による調整変更が行われると、比較手段により、この記憶手段に記憶された前回の利得調整値と利得調整手段による今回の利得の調整変更により新たに得られた利得調整値とが比較される。そして、この比較された利得調整値の差が所定値以上のとき、制御手段による制御の下、利得調整手段により、サーボループの利得が再度調整変更される。
【0008】請求項2に記載の光ディスクプレーヤの自動利得調整装置は、上述した請求項1に記載の光ディスクプレーヤの自動利得調整装置において、前記制御手段は、前記利得調整手段が前記利得の調整変更を所定回数行っても前記比較された利得調整値の差が前記所定値以上であるとき、前記利得の調整変更を中断するように前記利得調整手段を制御し、前記利得の調整変更を中断した旨を表示する表示手段を更に備えたことを特徴とする。
【0009】請求項2に記載の光ディスクプレーヤの自動利得調整装置によれば、利得調整手段が利得の調整変更を所定回数行っても比較された利得調整値の差が所定値以上であるとき、制御手段による制御の下、利得調整手段により、利得の調整変更が中断される。そして、表示手段により、利得の調整変更を中断した旨が表示される。
【0010】請求項3に記載された光ディスクプレーヤの自動利得調整装置は、上述した請求項1に記載の光ディスクプレーヤの自動利得調整装置において、前記制御手段は、前記利得調整手段が前記利得の調整変更を所定回数行っても前記比較された利得調整値の差が前記所定値以上であるとき、前記利得の調整変更を中断するように前記利得調整手段を制御し、前記サーボループの利得は、前記所定回数行われた調整変更により得られた利得調整値の平均値とされることを特徴とする。
【0011】請求項3に記載の光ディスクプレーヤの自動利得調整装置によれば、利得調整手段が利得の調整変更を所定回数行っても比較された利得調整値の差が所定値以上であるとき、制御手段による制御の下、利得調整手段により、利得の調整変更が中断される。そして、サーボループの利得は、所定回数行われた調整変更により得られた利得調整値の平均値とされる。
【0012】請求項4に記載された光ディスクプレーヤの自動利得調整装置は、上述した請求項1に記載の光ディスクプレーヤの自動利得調整装置において、前記制御手段は、前記利得調整手段が前記利得の調整変更を所定回数行っても前記比較された利得調整値の差が前記所定値以上であるとき、前記利得の調整変更を中断するように前記利得調整手段を制御し、前記サーボループの利得は、最後に行われた調整変更により得られた利得調整値とされることを特徴とする。
【0013】請求項4に記載の光ディスクプレーヤの自動利得調整装置によれば、利得調整手段が利得の調整変更を所定回数行っても比較された利得調整値の差が所定値以上であるとき、制御手段による制御の下、利得調整手段により、利得の調整変更が中断される。そして、サーボループの利得は、最後に行われた調整変更により得られた利得調整値とされる。
【0014】請求項5に記載された光ディスクプレーヤの自動利得調整装置は、上述した請求項1から4に記載の光ディスクプレーヤの自動利得調整装置において、前記利得調整手段は、前記記憶手段に記憶された前回の利得調整値を今回の利得の調整変更を行う際の初期値として利用することを特徴とする。
【0015】請求項5に記載の光ディスクプレーヤの自動利得調整装置によれば、利得調整手段により、記憶手段に記憶された前回の利得調整値が、今回の利得の調整変更を行う際の初期値として利用される。
【0016】請求項6に記載された光ディスクプレーヤの自動利得調整装置は、上述した請求項1から5に記載の光ディスクプレーヤの自動利得調整装置において、前記誤差信号は、フォーカスエラー信号であることを特徴とする。
【0017】請求項6に記載の光ディスクプレーヤの自動利得調整装置によれば、利得調整手段により、比較手段によりフォーカスエラー信号の信号レベルに最適な利得調整値に調整変更され、フォーカスエラー信号用の利得調整値が前回と今回とで比較される。
【0018】請求項7に記載された光ディスクプレーヤの自動利得調整装置は、上述した請求項1から5に記載の光ディスクプレーヤの自動利得調整装置において、前記誤差信号は、トラッキングエラー信号であることを特徴とする。
【0019】請求項7に記載の光ディスクプレーヤの自動利得調整装置によれば、利得調整手段により、トラッキングエラー信号の信号レベルに最適な利得調整値に調整変更され、比較手段によりトラッキングエラー信号用の利得調整値が前回と今回とで比較される。
【0020】請求項8に記載の光ディスクプレーヤの自動利得調整装置は上記課題を解決するために、少なくとも二つの誤差信号によりサーボ制御を行うためのサーボループに設けられる光ディスクプレーヤの自動利得調整装置であって、前記サーボループの利得を前記二つの誤差信号の信号レベルに最適な利得調整値に夫々調整変更する利得調整手段と、前記夫々調整変更された二つの利得調整値を夫々記憶する記憶手段と、該記憶手段に夫々記憶された前回の二つの利得調整値の差分値と前記利得調整手段による今回の利得の調整変更により夫々新たに得られた二つの利得調整値の差分値とを比較する比較手段と、該比較された差分値の差が所定値以上のとき前記利得を再度調整変更するように前記利得調整手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0021】請求項8に記載の光ディスクプレーヤの自動利得調整装置によれば、先ず、利得調整手段により、サーボループの利得が、少なくとも二つの誤差信号の信号レベルに最適な利得調整値に夫々調整変更される。すると、記憶手段により、この調整変更された二つの利得調整値が夫々記憶される。次に、利得調整手段による調整変更が行われると、比較手段により、この記憶手段に記憶された前回の二つの利得調整値の差分値と利得調整手段による今回の利得の調整変更により夫々新たに得られた二つの利得調整値の差分値とが比較される。そして、この比較された差分値の差が所定値以上のとき、制御手段による制御の下、利得調整手段により、サーボループの利得が再度調整変更される。
【0022】請求項9に記載された光ディスクプレーヤの自動利得調整装置は、上述した請求項8に記載の光ディスクプレーヤの自動利得調整装置において、前記二つの誤差信号は、フォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号であることを特徴とする。
【0023】請求項9に記載の光ディスクプレーヤの自動利得調整装置によれば、利得調整手段により、フォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号の信号レベルに最適な利得調整値に夫々調整変更され、比較手段によりフォーカスエラー信号用の利得調整値とトラッキングエラー信号用の利得調整値との差分値が前回と今回とで比較される。
【0024】本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施の形態から明らかにされよう。
【0025】
【本発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(i)第1の実施の形態第1の実施の形態は、CDプレーヤ内部に備えられ、信号処理回路により検出されたオーディオレベルが所定の音量レベル以上になった時に自動利得制御を行う自動利得調整装置である。
【0026】先ず、第1の実施の形態の構成を図1及び図2を用いて説明する。図1にCDプレーヤのサーボ系に関する構成を示す。図1において、CDプレーヤは、オーディオ信号復調の流れに関しては、信号が記録された記録媒体の光ディスク1の情報トラックから信号をレンズ(図示せず)を通して読出すピックアップ2と、ピックアップ2をディスク1の直径方向に駆動する送り(キャリッジ)モータ3と、ディスク1を回転させるスピンドルモータ4と、ピックアップ2により読出された読出信号を増幅し、2値化されたRF信号の他にフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号等を出力するプリアンプ5と、2値化されたRF信号からスピンドルモータ4の速度制御のための信号(CLV信号)を生成し、且つ、RF信号よりEFM復調、CIRCによる誤り訂正復号等を行い16ビットのディジタル信号に変換してD/A変換器11に送る信号処理回路7と、16ビットディジタル信号をアナログ信号に変換するD/A変換器11と、アナログ信号から可聴周波数帯域を通過させ、ノイズ分を除去してオーディオ信号を出力するローパスフィルタ(LPF)12とを備えて構成されている。
【0027】また、CDプレーヤは、サーボ系に関する信号の流れに関しては、プリアンプ5より供給された各種エラー信号のゲインを調整し、サーボ系への所定の信号レベルに利得調整する自動利得調整ブロック8と、サーボのための周波数を調整するサーボイコライザ9と、生成された駆動信号を電流増幅しピックアップ2のフォーカス/トラッキングコイル(図示せず)・送りモータ3・スピンドルモータ4を夫々駆動するためのドライバ10と、システム全体を制御するマイクロコンピュータ(マイコン)6と、過去の利得調整値等を記憶するメモリ13とを備えて構成されている。
【0028】ピックアップ2中のレンズは、ディスク1の直径方向にはトラッキングコイル(図示せず)、焦点制御のためにはフォーカスコイル(図示せず)によって駆動され、トラックからの光に対し図示しない受光部が適正な位置関係になるようにサーボ系によって駆動される。
【0029】メモリ13は、スーパーキャパシタや電池によってバックアップされたSRAM(Static RAM)等の不揮発性のメモリから構成されている。メモリ13は、利得調整値として、フォーカスサーボ用調整値F0と、トラッキングサーボ用調整値T0とを夫々所定のメモリ領域に記憶するように構成されている。
【0030】本実施の形態では、自動利得調整ブロック8、マイクロコンピュータ6及びメモリ13が、本発明の自動利得調整装置の一例を構成している。図2に図1の自動利得調整ブロック8の詳細な構成を示す。
【0031】図2において、自動利得調整ブロック8は、プリアンプ5から供給される各種のエラー信号をサーボイコライザ9に入力するのに最適なレベルに利得調整を行う働きをし、エラー信号をマイクロコンピュータ6の供給するアッテネータコントロール信号によって適宜利得変更し出力するアッテネータ(ATT)20と、アッテネータ20の出力から最初の分岐(B分岐)をして、サーボループを一巡してきた外乱を含むエラー信号のゲイン変化量検出を行うゲイン変化量検出ブロック21と、B分岐からの信号に外乱元29からの外乱を加算する加算器30と、加算器30の出力から分岐(A分岐)し、外乱印加直後のゲイン変化量検出を行うゲイン変化量検出ブロック21’とを備えて構成されている。
【0032】外乱元29はエラー信号に疑似的に値の定まった外乱要素(発振器等による一定振幅の一定周波数)を加えて、それによって変化するエラー信号のレベルを調べるためにあり、マイクロコンピュータ6から投入及び切断ができるスイッチSWによって加算器30に供給される。
【0033】ゲイン変化量検出ブロック21及び21’は夫々、外乱信号の周波数帯を通過させるバンドパスフィルタ22と、信号を絶対値信号に変換する絶対値回路23と、外乱信号の周波数成分を除去し直流化するローパスフィルタ(LPF)24とを備えて構成されている。
【0034】以上説明したように、本実施の形態では、自動利得調整ブロック8から利得調整手段の一例が構成されており、メモリ13から記憶手段の一例が構成されており、マイクロコンピュータ6から比較手段の一例及び制御手段の一例が構成されている。
【0035】次に、第1の実施の形態の動作を図3に示すフローチャートを用いて説明する。図3において、先ず電源が投入されてCDがセットされると(ステップS1)、マイクロコンピュータ6はメモリ13の所定のアドレスを調べ前回の利得調整値が記憶されているかどうかを調べる(ステップS2)。このメモリ13は、スーパーキャパシタや電池によってバックアップされたSRAM等で構成されているため、前回の再生動作で何らかの値が記憶されていれば、主電源を切断してもメモリ13内部の値は保持されているので、次回に利用できるのである。
【0036】ステップS2で、正しい値が記憶されていると認められた場合(ステップS2:YES)、メモリ13内部の所定アドレスに記憶してある前回の利得調整値X0 (=F0 ,T0 )を自動利得調整における初期値として、アッテネータ20に送る(ステップS3)。
【0037】一方、ステップS2で、所定アドレスの記憶内容が不定値となっていて前回に正しく記憶された値と認められない場合(ステップS2:NO)、これは新規使用(メモリクリアされてから始めての使用)若しくはノイズその他の原因でメモリ内容が破壊されたと判断し、一定値の利得調整値(従来通りの初期値)を利得調整値X0 (=F0 ,T0 )に代えて、自動利得調整のための初期値として、アッテネータ20に送る(ステップS4)。以上のようにステップS1からS4により、自動利得調整用の初期値の設定が終了する。
【0038】次に、後で図4を用いて詳述する自動利得調整(オートゲインコントロール)を開始する(ステップS5)。自動利得調整では、外乱注入によるアッテネータ20に設定する利得調整値の微調整を行い最新の値をアッテネータ20に反映させる。
【0039】自動利得調整が終了すると(ステップS6)、この調整により得られた今回の利得調整値xとメモリ13に記憶されていた前回の利得調整値X0 とが(F及びT夫々について)比較される。即ち、先ず、”x>X0 +α[dB]”が成立するか否かが(F及びT夫々について)判定される(ステップS7)。ここで、成立すると判定されると(ステップS7:YES)、ステップS8に進んで、N回目の調整動作を行ったのか否かが判定される。ここに、Nは、装置の仕様として予め定めた所定の回数であり、例えば、3回、5回、10回…というように任意の自然数として設定できるが、マイクロコンピュータ6の処理能力や、オートゲイン制御動作を規定する各種パラメータの大小などに応じて適宜定められる。この判定は例えば、当該比較判定を何回行ったかをカウントするカウンタにより行われる。ステップS8において、N回目ではないと判定されると(ステップS8:NO)、ステップS2に戻り、自動利得調整が繰り返し行われる。一方、N回目であると判定されると(ステップS8:YES)、最後(N回目)に実行した調整動作により得られた利得調整値又はN回の自動利得調整によりえられた利得調整値の平均値を実際の再生を開始する際に用いる利得調整値として、ステップS11に進む。このように、ステップS8及びS10では、自動利得調整をN回行っても正しいと推定される利得調整値が得られない場合には自動利得調整を打ち切る。このため、装置に異常(故障)があったり、過去のメモリ13に記憶されていた利得調整値やデフォルト値に異常があったりした場合にも、半永久的に調整動作が繰り返される事態を効果的に回避できる。
【0040】ステップS7において、”x>X0 +α[dB]”が成立しないと判定されると(ステップS7:NO)、ステップS9に進んで、更に、”x<X0 −α[dB]”が成立するか否かが(F及びT夫々について)判定される(ステップS9)。ここで、成立すると判定されると(ステップS9:YES)、ステップS10に進んで、N回目の自動利得調整を行ったのか否かが判定される。ここに、Nは、ステップS8の場合と同様に、装置の仕様として予め定めた所定の回数である。この判定は例えば、当該比較判定を何回行ったかをカウントするカウンタにより行われる。ステップS10において、N回目ではないと判定されると(ステップS10:NO)、ステップS2に戻り、自動利得調整が繰り返し行われる。一方、N回目であると判定されると(ステップS10:YES)、最後(N回目)に実行した自動利得調整により得られた利得調整値又はN回の自動利得調整によりえられた利得調整値の平均値を実際の再生を開始する際に用いる利得調整値として、ステップS11に進む。また、ステップS9において、”x<X0 −α[dB]”が成立しないと判定されると(ステップS9:NO)、今回の利得調整値を実際の再生を開始する際に用いる利得調整値として、ステップS11に進む。
【0041】尚、このαの値としては、例えば、約6から12[dB]といった値が用いられるが、このαの値は装置の仕様に応じて設定されるものである。特に、このα値をあまり小さく設定すると、自動利得調整のバラツキがあるために、上述のステップS7及びS9の判定を中々クリアできずに調整動作を何度も繰り返さねばならなくなり、サーボコントロールの開始までに時間がかかる。一方、自動利得制御が可能な調整範囲を越えるまでにこのα値を大きく設定してしまうと、文字通り自動調整ができなくなる。
【0042】ステップS11では、オーディオ信号系へ逆量子化した出力を止めておくためのミュート信号を解除し曲の再生に入る。そして、適当なタイミングで利得調整値を記憶するための所定アドレスに、ステップS7及びS8で確認された今回の(F及びT夫々についての)利得調整値xを、次回の自動利得調整用の利得調整値X0 として、メモリ13に再び記憶して終了する(ステップS12)。
【0043】次に、上記ステップS5及びS6の自動利得調整の動作シーケンスを図4に示したフローチャートを用いて説明する。図4において、オートゲインコントロールが開始されると(ステップS20)、先ずマイクロコンピュータ6は、図2に示したスイッチSWを閉じ外乱元29の発する外乱信号を加算器30に注入する(ステップS21)。A分岐からはこの外乱値を加えられてエラー信号がゲイン変化量検出ブロック21’に入力され、マイクロコンピュータ6によって信号レベルLaが測定される(ステップS22)。同時に、A分岐から外乱を加えられた信号がサーボイコライザ9に供給され、ドライバ10からピックアップ2に加えられる。そして、その外乱に応じてレンズが駆動され微変動を起こす。ピックアップ2のレンズセンターからのオフセットに従って、非線形的にエラー信号レベルが変化するため、この微変動に応じてエラー信号が変化し、プリアンプ5を経て再度自動利得調整ブロック8に入力される。
【0044】ここで、アッテネータ20の利得調整値は、ステップS6によってマイクロコンピュータ6がアッテネータコントロール信号で設定したものとなっており、メモリ13から呼び出された利得調整値X0 (=F0 ,T0 )に対応している。
【0045】そして、サーボループを巡ってB分岐に入力された信号の信号レベルLbをゲイン変化量検出ブロック21で調べる(ステップS22)。外乱元は、一定振幅の一定周波数を発振しているが、バンドパスフィルタ22では、この外乱元の発振周波数のみを通過させるので、各種エラー信号に他の周波数の外乱が含まれていたとしても、外乱値の周波数のみを入力し測定することができる。ここで、このループのゲインはA分岐からマイクロコンピュータ6への入力レベルをLa、B分岐からマイクロコンピュータ6への入力レベルをLbとするとゲイン=Lb/Laで求められる。これらLa及びLbの測定結果はメモリ13に記憶される。
【0046】次に、ステップS22によるゲイン計算を数回(本実施の形態では5回)測定し平均をとるために、測定回数を記録する(ステップS23)。このカウンタは初期値をゼロとして、1づつインクリメント(カウントを1プラス)する操作である。そして、測定回数を調べ(ステップS24)、所定の回数(本実施の形態では5回)より少ない場合には(ステップS24:NO)、ステップS22に戻り再度測定する。所定の回数に達した場合(ステップS22:NO)、過去の測定回数分の測定値をメモリ13より呼び出し平均する演算を行う(ステップS25)。
【0047】さて、入力利得の変動幅は1dB以内であることが安定したサーボの条件であることが実験的に判っているので、この様にして平均した演算値の利得を調べ(ステップS26)、その利得が±1dBより大きい場合には(ステップS26:NO)、±1dB以内になる方向(ゲインを下げる方向)にアッテネータ20のゲインを再調整し(ステップS27)、ステップS22に戻って、上述のステップS26までの処理が繰り返される。
【0048】一方、変動幅が±1dB以内に存在する場合には(ステップS26:YES)、スイッチSWを切断して、外乱元の注入を停止し(ステップS28)、次のステップに移る(ステップS29)。即ち、図3におけるオートゲイン制御が終了する(ステップS6)。
【0049】以上の通り第1の実施の形態によれば、不揮発性のメモリから呼び出した前回の利得調整値X0 と今回の利得調整値xとを(F及びT夫々について)比較するため、今回の利得調整値xが誤っているか否かを確認できる。即ち、前回の利得調整値から異常なまでに離れた利得調整値が今回の調整により得られた場合には、今回の利得調整値が誤っていると判断できるのである。特に誤っていると判断された場合には、調整動作を繰り返すことにより、正しいと判断される利得調整値xを得るようにしたので、サーボをより確実にクローズする事ができる。しかも、所定回数だけ調整動作を行っても、正しいと判断される利得調整値xが得られない場合には、適当な時点で調整動作を打ち切り、最後(N回目)に実行した調整動作により得られた利得調整値又はN回の調整動作によりえられた利得調整値の平均値を用いて再生動作を開始するため、装置に故障等があっても半永久的に調整動作を繰り返す事態を回避できる。更に、メモリに記憶された前回の利得調整値が何等かの理由により不定値になっていても、デフォルト値を呼び出し、前回の利得調整値の代わりとして、自動利得調整用の初期値として用いると共に今回の利得調整値と比較するので、メモリの記録状態に拘わらず利得の調整動作に入れない事態を回避しえる。
【0050】尚、上述したように本実施の形態によれば、オートゲイン終了後(ステップS6の後)に利得調整値の比較(ステップS7及びS9)を行うようにしたが、図4のステップS25においてLa/Lbを計算して平均値を演算した直後に、図3のステップS7及びS9のような比較を行い、その後に再度自動利得調整を行うようにしてもよい。
(ii)第2の実施の形態本発明の第2の実施の形態は、所定回数だけ自動利得調整を繰り返しても、正しいと判断できる利得調整値xが得られない場合に、装置には異常(故障)があるとして、CDの再生動作を停止して、エラー表示を行うように構成されている。
【0051】第2の実施の形態であるCDプレーヤのハードウエア構成は、図1及び図2に示した第1の実施の形態と同様であるので、その説明は省略する。第2の実施の形態の動作を図5のフローチャートを用いて説明する。図5において、図3に示したと同様のステップには、同じ参照符号を付け、その説明は省略する。
【0052】図5において、ステップS1からS12までは、第1の実施の形態の場合と同様であるが、ステップS8及びS10において、調整動作がN回まで行われた場合には(ステップS8:YES及びステップS10:YES)、ステップS13に分岐する。
【0053】ステップS13では、CDプレーヤには異常(故障)があるとして、CDの再生動作を停止し、最後に、CDプレーヤの表示手段の一例を構成するフロントパネル等にエラー表示を行って(ステップS14)、CDの再生処理が終了(異常終了)する。
【0054】以上の通り第2の実施の形態によれば、所定回数だけ自動利得調整を行っても、正しいと判断される利得調整値xが得られない場合には、調整動作を打ち切り、エラー表示をする。このため、装置に異常(故障)があったり、過去のメモリ13に記憶されていた利得調整値X0 やデフォルト値に異常があったりした場合にも、半永久的に調整動作が繰り返される事態を効果的に回避でき、更に誤った利得調整値により再生動作を開始する事態を確実に阻止し得る。
(iii )第3の実施の形態本発明の第3の実施の形態は、上述した第1及び第2の実施の形態のように利得調整値としてフォーカスサーボ用調整値及びトラッキングサーボ用調整値を夫々比較するのではなく、前回のフォーカスサーボ用調整値F0 とトラッキングサーボ用調整値T0 との差分値X0 を、今回のフォーカスサーボ用調整値Fとトラッキングサーボ用調整値Tとの差分値xに比較して、差分値の差に基づいて利得調整値が正しいか否かを判定するように構成されている。即ち、この差分値の差が、異常に大きければ、F又はTのいずれかについて誤調整している可能性が高いと判断して再調整が行われるように構成されている。
【0055】第3の実施の形態は、次のような考察に基づく。即ち、一般に、フォーカスとトラッキングとの一方が正しく調整されたと共に他方が誤調整されたと仮定すると、この正しくされた一方については、今回の利得調整値と前回の利得調整値は比較的似た値を持つ筈であり、誤調整された他方については今回の利得調整値と前回の利得調整値とは比較的異なった値を持つ筈である。従って、前回の利得調整値の差分値と今回の利得調整値の差分値との差においては、誤調整された一方が支配的になる。更に、たとえ両者共に誤調整された場合にも、両者の利得調整値には一般に相関がないので、両者の誤調整された値が相殺されて前回の正しく調整された利得調整値の差分値と一致する可能性は実践的な意味では殆どない。この結果、当該差分値を前回と今回とで比較することにより、フォーカスサーボとトラッキングサーボとの両方についての利得調整値の適否の判定を一つの比較判定により行うことが可能となるのである。
【0056】第3の実施の形態であるCDプレーヤのハードウエア構成は、図1及び図2に示した第1の実施の形態と同様であるので、その説明は省略する。第3の実施の形態の動作を図6のフローチャートを用いて説明する。図6において、先ず電源が投入されてCDがセットされると(ステップS31)、マイクロコンピュータ6はメモリ13の所定のアドレスを調べ前回の利得調整値F0 及びT0 が夫々記憶されているかどうかを調べる(ステップS32)。
【0057】ステップS32で、正しい値が記憶されていると認められた場合(ステップS32:YES)、メモリ13内部の所定アドレスに記憶してある前回のフォーカスサーボ用調整値F0 及び前回のトラッキングサーボ用調整値T0 についての利得調整値の差分値X0 (=|F0 −T0 |)を計算し(ステップS33)、前回のフォーカスサーボ用調整値F0 及び前回のトラッキングサーボ用調整値T0 を、自動利得調整用の各初期値として、アッテネータ20に送る(ステップS34)。
【0058】一方、ステップS32で、所定アドレスの記憶内容が不定値となっていて前回に正しく記憶された値と認められない場合(ステップS32:NO)、一定値(オリジナルデフォルト値)を利得調整値F0 及びT0 の代わりに、自動利得調整用の初期値としてアッテネータ20に送る(ステップS35)。以上のようにステップS31からS35により、初期値の設定が終了すると共に以降の判定に用いられる差分値X0 の計算が終了する。
【0059】次に、既に図4を用いて詳述されたと同様の自動利得調整(オートゲインコントロール)を開始する(ステップS36)。自動利得調整では、外乱注入によるアッテネータ20に設定する利得調整値の微調整を行い、最新の値をアッテネータ20に反映させる。
【0060】自動利得調整が終了すると(ステップS37)、この調整により得られた今回の利得調整値の差分値x(=|F−T|)とメモリ13に記憶されていた前回の利得調整値の差分値X0 とが比較される。即ち、先ず、”|x−X0 |>α[dB]”が成立するか否かについて判定される(ステップS39)。ここで、成立すると判定されると(ステップS39:YES)、ステップS40に進んで、N回目の調整動作を行ったのか否かが判定される。この判定は例えば、当該比較判定を何回行ったかをカウントするカウンタにより行われる。ステップS40において、N回目ではないと判定されると(ステップS40:NO)、ステップS32に戻り、自動利得調整が繰り返し行われる。一方、N回目であると判定されると(ステップS40:YES)、最後(N回目)に実行した調整動作により得られた利得調整値又はN回の調整動作によりえられた利得調整値の平均値を実際の再生を開始する際に用いる利得調整値として、ステップS41に進む。
【0061】ステップS39において、”|x−X0 |>α[dB]”が成立しないと判定されると(ステップS39:NO)、今回の利得調整値F及びTを夫々実際の再生を開始する際に用いる利得調整値として、ステップS41に進む。
【0062】ステップS41では、オーディオ信号系へ逆量子化した出力を止めておくためのミュート信号を解除し曲の再生に入る。そして、適当なタイミングで前記利得調整値を記憶するための所定アドレスに、ステップS36及びS37で確認された今回の利得調整値F及びTを夫々、次回の自動利得調整用の利得調整値F0 及びT0 として、メモリ13に再び記憶して終了する(ステップS42)。
【0063】尚、第3の実施の形態においても、ステップS40において、調整動作がN回まで行われた場合には(ステップS40:YES)、第2の実施の形態の場合のように、CDプレーヤには異常(故障)があるとして、CDの再生動作を停止し、エラー表示を行って、CDの再生処理を終了(異常終了)するようにしてもよい。
【0064】以上の通り第3の実施の形態によれば、不揮発性のメモリから呼び出した前回の利得調整値と今回の利得調整値とを、F及びTの差分値Xについて比較することにより、今回の利得調整値がF及びTの少なくとも一方について誤っているか否かを確認できるので、即ち、当該差分値を前回と今回とで比較することにより、フォーカスサーボとトラッキングサーボとの両方についての判定を一つの比較判定により行うことが可能となるので、演算処理を簡易にする上で極めて有利である。
【0065】尚、本実施の形態では、差分値を比較対象としたが、和分値(F+T)においても、やはり誤調整された一方が支配的になることから、和分値を比較対象としてもよい。
(iv)第4の実施の形態本発明の第4の実施の形態は、上述した第1から第3の実施の形態のように前回の利得調整値やその差分値を、今回の利得調整値やその差分値と比較するのではなく、今回におけるフォーカスサーボ用利得調整値Fとトラッキングサーボ利得用調整値Tとを比較することにより、利得調整値が正しいか否かを判定するように構成されている。
【0066】第4の実施の形態は、次のような考察に基づく。即ち、一般に、フォーカスとトラッキングとの一方が正しく調整されたと共に他方が誤調整されたと仮定すると、この正しく調整された一方については、今回の利得調整値と正しい場合に得られるとして予め設定された利得調整値とは比較的似た値を持つ筈であり、誤調整された他方については今回の利得調整値と正しい場合に得られるとして予め設定された利得調整値とは比較的異なった値を持つ筈である。従って、実際に得られた両者の利得調整値の差分値と予め設定された両者の利得調整値の差分値とを比較すれば、これらの差分値の差においては、誤調整された一方が支配的になる。更に、両者共に誤調整された場合にも、両者の利得調整値には一般に相関がないので、両者の誤調整された値が相殺されて正しい場合に得られるであろう両者の利得調整値の差分値と一致する可能性は実践的な意味では殆どない。この結果、当該差分値を所定の値と比較することにより、フォーカスサーボとトラッキングサーボとの両方についての判定を一つの比較判定により行うことが可能となる。また、本実施の形態では、特に前回の利得調整値をメモリから読み出して今回の利得調整値と比較しないで済むので有利である。
【0067】第4の実施の形態であるCDプレーヤのハードウエア構成は、図1及び図2に示した第1の実施の形態と同様であるので、その説明は省略する。第4の実施の形態の動作を図7のフローチャートを用いて説明する。図7において、図3に示したと同様のステップには、同じ参照符号を付け、その説明は省略する。
【0068】図7において、ステップS1からS6までは、第1の実施の形態の場合と同様であるが、ステップS6により自動利得調整が終了すると、この調整により得られた今回の利得調整値の差分値x(=|F−T|)が所定値α[dB]以上であるか否かが判定される(ステップS51)。このαの値としては、例えば、約6から12[dB]といった値が用いられるが、このαの値は装置の仕様に応じて設定されるものである。ここで、所定値以上であると判定されると(ステップS51:YES)、ステップS52に進んで、N回目の調整動作を行ったのか否かが判定される。この判定は例えば、当該比較判定を何回行ったかをカウントするカウンタにより行われる。ステップS52において、N回目ではないと判定されると(ステップS52:NO)、ステップS2に戻り、自動利得調整動作が繰り返し行われる。一方、N回目であると判定されると(ステップS52:YES)、最後(N回目)に実行した調整動作により得られた利得調整値又はN回の調整動作によりえられた利得調整値の平均値を実際の再生を開始する際に用いる利得調整値として、ステップS53に進む。また、ステップS51において、所定値以上でないと判定されると(ステップS51:NO)、今回の利得調整値を実際の再生を開始する際に用いる利得調整値として、ステップS53に進む。
【0069】ステップS53では、オーディオ信号系へ逆量子化した出力を止めておくためのミュート信号を解除し曲の再生に入る。そして、適当なタイミングで前記利得調整値を記憶するための所定アドレスに、ステップS5びS6で確認された今回の利得調整値F及びTを、次回の自動利得調整用に、メモリ13に再び記憶して終了する(ステップS54)。
【0070】尚、第4の実施の形態においても、ステップS52において、調整動作がN回まで行われた場合には(ステップS52:YES)、第2の実施の形態の場合のように、CDプレーヤには異常(故障)があるとして、CDの再生動作を停止し、エラー表示を行って、CDの再生処理を終了(異常終了)するようにしてもよい。
【0071】以上の通り第4の実施の形態によれば、メモリに前回の利得調整値を記憶させておかなくても、今回の利得調整値についての差分値xと所定の値αを比較することにより、今回の利得調整値がF及びTの少なくとも一方について誤っているか否かを確認できるので、即ちフォーカスサーボとトラッキングサーボとの両方についての判定を一つの比較判定により行うことが可能となるので、演算処理を簡易にする上で極めて有利である。
(v) その他の変形例なお、本願発明は上記各実施の形態に限らず種々に適用できる。
【0072】例えば、自動利得調整によるループゲインの測定の結果得られるアッテネータへの設定ゲインと前回の値とが大差が無い場合は、以降の自動調整を省略してもよい。また、前回再生し再調整した利得調整値が、その時のCDに欠陥が在ったために異常な値として調整され記憶された場合等には、メモリから呼び出した値にリミッタをかけて、このような異常値を除外するようにするのも安全である。
【0073】更に、利得調整値の参照のためのメモリに関し、毎回参照する利得調整値(デフォルト値)は上記においては前回の記憶データであったが、調整値バッファを複数持ってもよく、これはメモリをリングバッファ形式にしておけば実現が容易である。この場合、過去数回分の平均値を設定するデフォルト値とするか、または、過去数回分の内異常に他のデータと異なる値を省いて平均を試みるなど考えられ、特異なCDを再生した結果、異常な利得調整値となってしまった時の値を除外することができる。
【0074】また、本発明は外乱元によるサーボに限られるものではなく、外乱元以外のもの、例えば記録基準信号自体を評価してサーボゲインを定めるような光ディスクプレーヤにも適用できる。
【0075】更に、以上の実施の形態では、CDプレーヤについて説明がなされているが、自動車用のCDプレーヤ、ポータブルCDプレーヤ等のいかなるCDプレーヤにも適用が可能であり、更にまた、LDプレーヤ、DVDプレーヤ等のいかなる光ディスクプレーヤであっても誤差信号を用いてサーボコントロールを行う形式の装置であれば、本発明は同様に適用可能である。
【0076】
【発明の効果】請求項1に記載の光ディスクプレーヤの自動利得調整装置によれば、サーボループの利得が誤差信号の信号レベルに最適な利得調整値に調整変更され、記憶手段に記憶された前回の利得調整値と今回の利得の調整変更により新たに得られた利得調整値とが比較され、この比較された利得調整値の差が所定値以上のとき、サーボループの利得が再度調整変更されるので、誤調整の発見や、光ディスクのセット異常の発見を、再生動作に先立って行うことができ、同時に、誤調整によりサーボがかからなかったり、かかりにくかったりする事態の発生を効果的に阻止し得る。
【0077】請求項2に記載の光ディスクプレーヤの自動利得調整装置によれば、利得の調整変更を所定回数行っても比較された利得調整値の差が所定値以上であるとき、利得の調整変更が中断されるので、半永久的に調整動作を繰り返さなくて済み、更に、表示手段により装置の異常(故障)を容易に知ることができる。
【0078】請求項3に記載の光ディスクプレーヤの自動利得調整装置によれば、利得の調整変更を所定回数行っても比較された利得調整値の差が所定値以上であるとき、利得の調整変更が中断されるので、半永久的に調整動作を繰り返さなくて済み、更に、サーボループの利得は、所定回数行われた調整変更により得られた利得調整値の平均値とされるので、何等かの異常はあっても今回サーボがかかるか否かを実際に試すことができる。
【0079】請求項4に記載の光ディスクプレーヤの自動利得調整装置によれば、利得の調整変更を所定回数行っても比較された利得調整値の差が所定値以上であるとき、利得の調整変更が中断されるので、半永久的に調整動作を繰り返さなくて済み、更に、サーボループの利得は、最後に行われた調整変更により得られた利得調整値とされるので、何等かの異常はあっても今回サーボがかかるか否かを実際に試すことができる。
【0080】請求項5に記載の光ディスクプレーヤの自動利得調整装置によれば、記憶手段に記憶された前回の利得調整値が、今回の利得の調整変更を行う際の初期値として利用されるので、当該自動利得調整を円滑に始めることが可能となる。
【0081】請求項6に記載の光ディスクプレーヤの自動利得調整装置によれば、フォーカスエラー信号の信号レベルに最適な利得調整値に調整変更され、フォーカスエラー信号用の利得調整値が前回と今回とで比較されるので、フォーカスサーボについての利得調整を良好に行うことができる。
【0082】請求項7に記載の光ディスクプレーヤの自動利得調整装置によれば、トラッキングエラー信号の信号レベルに最適な利得調整値に調整変更され、トラッキングエラー信号用の利得調整値が前回と今回とで比較されるので、トラッキングサーボについての利得調整を良好に行うことができる。
【0083】請求項8に記載の光ディスクプレーヤの自動利得調整装置によれば、サーボループの利得が、少なくとも二つの誤差信号の信号レベルに最適な利得調整値に夫々調整変更され、次に、利得調整手段による調整変更が行われると、記憶手段に記憶された前回の二つの利得調整値の差分値と今回の利得の調整変更により夫々新たに得られた二つの利得調整値の差分値とが比較され、この比較された差分値の差が所定値以上のとき、サーボループの利得が再度調整変更されるので、誤調整の発見や、光ディスクのセット異常の発見を、再生動作に先立って行うことができ、同時に、誤調整によりサーボがかからなかったり、かかりにくかったりする事態の発生を効果的に阻止し得る。特に、一つ比較判定により、二つの誤差信号についての利得調整値を確認できるので、極めて便利である。
【0084】請求項9に記載の光ディスクプレーヤの自動利得調整装置によれば、フォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号の信号レベルに最適な利得調整値に調整変更され、フォーカスエラー信号用の利得調整値とトラッキングエラー信号用の利得調整値との差分値が前回と今回とで比較されるので、一つの比較判定により、フォーカスサーボ及びトラッキングサーボについての利得調整を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態によるCDプレーヤを示すブロック図である。
【図2】第1の実施の形態による自動利得調整ブロックを示す説明図である。
【図3】第1の実施の形態の動作を示すフローチャートである。
【図4】第1の実施の形態における自動利得調整を示すフローチャートである。
【図5】第2の実施の形態の動作を示すフローチャートである。
【図6】第3の実施の形態の動作を示すフローチャートである。
【図7】第4の実施の形態の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1…ディスク
2…ピックアップ
3…送り(キャリッジ)モータ
4…スピンドルモータ
5…プリアンプ
6…マイクロコンピュータ
7…信号処理回路
8…自動利得調整ブロック
9…サーボイコライザ
10…ドライバ
11…D/A変換器
12、24…ローパスフィルタ(LPF)
13…メモリ
20…アッテネータ
21、21’…ゲイン変化量検出ブロック
22…バンドパスフィルタ
23…絶対値回路
29…外乱元
30…加算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】 誤差信号によりサーボ制御を行うためのサーボループに設けられる光ディスクプレーヤの自動利得調整装置であって、前記サーボループの利得を前記誤差信号の信号レベルに最適な利得調整値に調整変更する利得調整手段と、前記調整変更された利得調整値を記憶する記憶手段と、該記憶手段に記憶された前回の利得調整値と前記利得調整手段による今回の利得の調整変更により新たに得られた利得調整値とを比較する比較手段と、該比較された利得調整値の差が所定値以上のとき前記利得を再度調整変更するように前記利得調整手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする光ディスクプレーヤの自動利得調整装置。
【請求項2】 前記制御手段は、前記利得調整手段が前記利得の調整変更を所定回数行っても前記比較された利得調整値の差が前記所定値以上であるとき、前記利得の調整変更を中断するように前記利得調整手段を制御し、前記利得の調整変更を中断した旨を表示する表示手段を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の光ディスクプレーヤの自動利得調整装置。
【請求項3】 前記制御手段は、前記利得調整手段が前記利得の調整変更を所定回数行っても前記比較された利得調整値の差が前記所定値以上であるとき、前記利得の調整変更を中断するように前記利得調整手段を制御し、前記サーボループの利得は、前記所定回数行われた調整変更により得られた利得調整値の平均値とされることを特徴とする請求項1に記載の光ディスクプレーヤの自動利得調整装置。
【請求項4】 前記制御手段は、前記利得調整手段が前記利得の調整変更を所定回数行っても前記比較された利得調整値の差が前記所定値以上であるとき、前記利得の調整変更を中断するように前記利得調整手段を制御し、前記サーボループの利得は、最後に行われた調整変更により得られた利得調整値とされることを特徴とする請求項1に記載の光ディスクプレーヤの自動利得調整装置。
【請求項5】 前記利得調整手段は、前記記憶手段に記憶された前回の利得調整値を今回の利得の調整変更を行う際の初期値として利用することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の光ディスクプレーヤの自動利得調整装置。
【請求項6】 前記誤差信号は、フォーカスエラー信号であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の光ディスクプレーヤの自動利得調整装置。
【請求項7】 前記誤差信号は、トラッキングエラー信号であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の光ディスクプレーヤの自動利得調整装置。
【請求項8】 少なくとも二つの誤差信号によりサーボ制御を行うためのサーボループに設けられる光ディスクプレーヤの自動利得調整装置であって、前記サーボループの利得を前記二つの誤差信号の信号レベルに最適な利得調整値に夫々調整変更する利得調整手段と、前記夫々調整変更された二つの利得調整値を夫々記憶する記憶手段と、該記憶手段に夫々記憶された前回の二つの利得調整値の差分値と前記利得調整手段による今回の利得の調整変更により夫々新たに得られた二つの利得調整値の差分値とを比較する比較手段と、該比較された差分値の差が所定値以上のとき前記利得を再度調整変更するように前記利得調整手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする光ディスクプレーヤの自動利得調整装置。
【請求項9】 前記二つの誤差信号は、フォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号であることを特徴とする請求項8に記載の光ディスクプレーヤの自動利得調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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