説明

光ディスク装置及びその製造方法

【課題】光ディスク装置のシャーシに基板取付け用ボスを形成する際の部品数を低減し、シャーシ後端のコーナー部にボスを設ける場合でもシャーシ強度を向上させること。
【解決手段】トレイ2を収納し、信号処理や制御用の基板を搭載するシャーシ3において、シャーシ3の後端のコーナー部33にはシャーシの底板31と一体に絞り加工にて形成したボス7aを有し、ボス7aとシャーシの側板32との間隙には、シャーシ側板32の一部を折り曲げて形成した補強部81,82を有する。そして、シャーシに搭載する基板5はボス7aにネジ8により固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクに情報を記録再生する光ディスク装置及び光ディスク装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ディスクを記録媒体として情報を記録再生する光ディスク装置は、パーソナルコンピュータ(パソコン)などに組み込まれて記録装置の一つとして広く用いられている。一般の光ディスク装置は、光ディスクをトレイに取り付けて筐体(シャーシ)に差し込んで装着する構造となっている。移動するトレイには光ディスクに情報を記録再生する光ヘッドやスピンドルモータが組み込まれ、また信号処理や制御のための各種基板はトレイまたはシャーシに搭載されている。そして、各基板はシャーシに形成されたボスにネジ締めなどにより固定される。
【0003】
パソコンの小型化に伴い、これに組み込む光ディスク装置には、サイズの薄型化、軽量化が要求される。光ディスク装置の軽量化のために、シャーシには金属薄板材が使用される。一方シャーシには、基板を所定の精度で取り付けるとともに移動するトレイを安定に保持するために、機械的強度が高いことが要求される。
【0004】
これに関連する技術として、特許文献1では、筐体の軽量化と強度の確保の両立を図ることを目的として、筐体のコーナー部が、隣り合う面との境界線が全て略並行である連続した少なくとも3つの面で構成した構造が開示される。これにより、筐体の曲げ加工部に割れや亀裂を発生することがなくなると述べられている。
【0005】
また特許文献2では、シャーシには基板を載置固定する第1、第2のボスを備え、第1のボスの端面は基板の貫通穴に係合するピン部を備え、第2のボスのネジ締め可能な端面よりも高くした構造が開示される。これにより、基板をボスにネジ締めする箇所を削減し、シャーシに歪みが発生した場合であっても第1のボスのピン部と基板の係合が解除されることを防止すると述べている。
【0006】
【特許文献1】特開2006−323958号公報
【特許文献2】特開2004−335678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
シャーシ内の基板取付け用ボス位置は、光ディスク装置の用途によって相違する。従来の機種では、シャーシ後端のコーナー部にボスを設ける例は少なかったが、今後は増加することが予想される。例えば、シリアルATAインタフェースを採用したノート型パソコンの場合は、シリアルATA基板のコネクタがシャーシ後端のコーナー部に配置される。そして、コネクタにかかる外力から基板を保護するために、シャーシ後端のコーナー部においてもボスを設ける必要がある。
【0008】
シャーシに基板を取り付けるための代表的なボス構造を図面で説明する。
図3は、シャーシにカシメボス71を形成して基板をネジ止めする構造(比較例1)である。すなわち、シャーシ底板31に穴71aを開け、別途用意したボス部品71bを挿入して接合部をカシメ加工して一体化させたものである。このカシメボス71の構造では、周囲のシャーシ側板32などの形状に影響することが少なく、強度を確保することができる。しかし、別途ボス部品71bを用いるので部品数が増え、作業も複雑になる。また、複数個のカシメボスを形成する場合、各ボスの上面の高さがばらつき易く、基板の取付け精度が悪化する恐れがある。
【0009】
図4は、シャーシに絞りボス72を形成して基板をネジ止めする構造(比較例2)である。すなわち、シャーシ底板31を金型を用いて絞り加工して中心に穴72aの開いた隆起部72bを形成し、絞りボス72とするものである。絞り加工によれば、ボス部品を別途用いる必要がなく、また複数のボスを均一に形成することができる。ボス位置がシャーシ側板32から離れていれば、隆起部72bを周囲のシャーシ材と連続的に所定の形状で形成できる。しかし、ボス位置がシャーシ側板32に近い場合(特にシャーシのコーナー部に位置する場合)は、隆起部72bとシャーシ側板32との干渉をなくするため、それらの境界にスリット91,92を入れて絞り加工を行う。このため、絞りボス72に近いシャーシ材には不連続部(隙間)が残るので、シャーシ側板32の強度が弱くなってしまう。特にコーナー部では、シャーシ側板32にコネクタ用の開口部35を設けるので側板の高さ寸法が減少して、強度がより弱くなるという問題がある。
【0010】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、光ディスク装置のシャーシに基板取付け用ボスを形成する際の部品数を低減し、シャーシ後端のコーナー部にボスを設ける場合でもシャーシ強度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による光ディスク装置は、光ディスクを装着し、情報を記録再生する光ヘッドや光ディスクを回転させるスピンドルモータが組み込まれたトレイと、トレイを収納し、信号処理や制御用の基板を搭載するシャーシとを備え、シャーシの後端のコーナー部にはシャーシの底板と一体に形成したボスを有し、ボスとシャーシの側板との間隙には、シャーシ側板の一部にて形成した補強部を有し、シャーシに搭載する基板はボスにネジにより固定されている。
【0012】
本発明による光ディスク装置の製造方法は、光ディスクを装着したトレイを収納するシャーシに信号処理や制御用の基板を搭載する場合、シャーシの後端のコーナー部にシャーシの底板を絞り加工することでボスを形成し、シャーシの側板の一部を折り曲げてボスとシャーシの側板との間隙を補強し、シャーシに搭載する基板をボスにネジ締めにより固定する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光ディスク装置のシャーシ後端のコーナー部にボスを設けて基板を取り付ける場合でも、部品数を増加させずにシャーシ強度を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本発明による光ディスク装置の一実施例を示す外観図である。(a)はシャーシに基板を取り付けた状態、(b)はシャーシから基板を取り外した状態である。
1は光ディスク装置、2はトレイ、3はシャーシであり、トレイ2をシャーシ3から引き出した状態である。トレイ2はレール4に沿ってスライドしシャーシ3に収納される。トレイ2には、光ディスク(図示せず)を載置するディスク装着部21、光ディスクを回転させるスピンドルモータ22、光ディスクに情報を記録再生する光ヘッド23を備える。シャーシ3は底板31、側板32、及び図示しない上板で囲んだ箱型構造となっている。
【0015】
(a)のように、シャーシ3の奥行き方向後端には基板5が配置され、ネジ8にてシャーシ底板31に形成したボス7に取り付けられる。この基板5は、例えばシリアルATAインタフェース用のもので、フレキシブルケーブル6にてトレイ2内の図示しない他の基板に接続する。また基板5の端部には、外部のパソコンと接続し信号伝送するためのコネクタ51を有する。このコネクタ51は、シャーシ後端のコーナー部33に配置される。
【0016】
(b)は基板5を取り外した状態であり、シャーシ3の底板31には基板5を取り付けるための複数個のボス(絞りボス)7が形成されている。特にボス7aはコーナー部33に設けたものである。これらのボスは、後述するように絞り加工にて形成したものである。また、シャーシ側板32にはコネクタ51の開口部35を設けているため、コーナー部のシャーシ側板32の高さが低くなり、その強度が弱くなり易い。そこで、コーナー部に位置し基板5のコネクタ51を保持するボス7aについては、絞り加工とともに近傍のシャーシ側板32を補強する構造とした。
【0017】
図2は、本実施例の光ディスク装置のコーナー部33の構造を拡大して示す図である。(a)はトップ側、(b)はボトム側から見た図で、基板5を取り外した状態である。
絞りボス7aはシャーシ後端のコーナー部33に形成している。そして、絞り加工の前に形成したスリット91,92の部分(図4参照)を、シャーシ側板32延長部材を折り曲げて充填するように加工した。充填による補強部を符号81,82で示す。補強部81,82は、周囲のシャーシ材と連続的に繋がる形状とするのが好ましい。よって、必要に応じて折り曲げ部の形状を整形する。また、補強部と周囲のシャーシ材との接続部においては、カシメ加工などにより一体化することが好ましい。これにより、開口部35近傍のシャーシ側板32とのスリット91,92(不連続部)がなくなる。
【0018】
本実施例のボス形成は次のように行う。シャーシ材として例えば板厚が約0.5mmのアルミ板を用いる。まず、ボス形成予定位置とシャーシ側板32との境界部に細いスリットを入れる。シャーシ底板31を金型を用いて絞り加工して中心に穴の開いた隆起部を形成し、絞りボス7aとする。絞りボス7aの隆起部の直径は5〜6mm、底板31からの高さは2〜3mmである。加工後の絞りボスの形状は、使用する金型により一義的に決定されるので、多数個形成してもバラツキが少なく高さが均一になる。次に、側板32の延長部材を底板31(絞りボス7a)側に折り曲げて、絞りボス7aとの間隙を埋めるように補強部81,82を形成する。補強部81,82と周囲のシャーシ材31,32との接続部は、カシメ加工などにより一体化する。
【0019】
本実施例のボス構造によれば、絞りボス近傍に補強部を設けたことにより、コーナー部におけるシャーシ側板32の強度を向上させることができる。また、補強部はシャーシ材の一部を利用するものであるから、新たな部品を必要とせず、容易に製造できる。
【0020】
本実施例の光ディスク装置によれば、シャーシ後端のコーナー部に基板やコネクタを配置してボスにて取り付ける場合、シャーシ側板の高さが小さくてもその強度を確保することができる。また、形成するボスの高さは均一で精度が高いので、基板やコネクタの取付け精度が高く、装置の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による光ディスク装置の一実施例を示す外観図。
【図2】光ディスク装置のコーナー部33の構造を拡大して示す図。
【図3】カシメボス71により基板をネジ止めする構造(比較例1)。
【図4】絞りボス72により基板をネジ止めする構造(比較例2)。
【符号の説明】
【0022】
1…光ディスク装置
2…トレイ
3…シャーシ
31…シャーシ底板
32…シャーシ側板
33…コーナー部
35…開口部
5…基板
51…コネクタ
7,7a…絞りボス
81,82…補強部
91,92…スリット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクに情報を記録再生する光ディスク装置において、
上記光ディスクを装着し、情報を記録再生する光ヘッドや上記光ディスクを回転させるスピンドルモータが組み込まれたトレイと、
上記トレイを収納し、信号処理や制御用の基板を搭載するシャーシとを備え、
上記シャーシの後端のコーナー部に上記シャーシの底板と一体に形成したボスを有し、
該ボスと上記シャーシの側板との間隙には、該シャーシ側板の一部にて形成した補強部を有し、
上記シャーシに搭載する基板は上記ボスにネジにより固定されていることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ディスク装置において、
前記シャーシに搭載する基板の端部には、装置外部との信号伝送用のコネクタを有し、
該コネクタは前記シャーシのコーナー部に配置され、前記シャーシの側板の一部に設けられた開口部に取り付けられていることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
光ディスクに情報を記録再生する光ディスク装置の製造方法において、
上記光ディスクを装着したトレイを収納するシャーシに、信号処理や制御用の基板を搭載する場合、
上記シャーシの後端のコーナー部に上記シャーシの底板を絞り加工することでボスを形成し、
上記シャーシの側板の一部を折り曲げて上記ボスと上記シャーシの側板との間隙を補強し、
上記シャーシに搭載する基板を上記ボスにネジ締めにより固定することを特徴とする光ディスク装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−108573(P2010−108573A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281605(P2008−281605)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)