説明

光ディスク装置

【課題】外部からの振動や衝撃による機構部の変形を低減する。
【解決手段】TRVメカの周辺にあるスカートを一部折り曲げて突出部120aを形成し、またはトラバースカバーの周辺に突出部を形成して、ディスクトレイ130と僅かな隙間をおいて対向させる。衝撃を受けた際は、この突出部120aがディスクトレイ130と接触することで、TRVメカを大きく変形させないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ディスク装置に係わり、特に外部からの振動や衝撃による機構部の変形を低減することができる、光ディスク装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯型のPC(Personal Computer)、DVD(Digital Versatile Disc)カメラ/レコーダ、BD(Blu−ray Disc)カメラ/レコーダなどに搭載される光ディスク装置においては、近年薄型化と軽量化が進んでいる。これは楽に持運ぶために必要な条件ではあるが、同時に外部から振動や衝撃が加わった際の強度不足が問題となる。特に機構部が変形した場合は、光ディスク上のトラックトレース性能をはじめとしたドライブ性能に、大きな影響を及ぼす。
【0003】
これを解決するために特許文献1では、記録再生ユニットにインシュレータを有する取付け片を備えることで、耐振動衝撃性能を低下させることなく、装置の薄型化を図ることが開示されている。
【0004】
また特許文献2では、光ピックアップを含むメカユニットが弾性体のストッパーを備え、所定のストローク以上に振動する場合、ストッパーがケースに衝突して振動を減衰させることが開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−134543号公報
【特許文献2】実開平5−36695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記二つの特許文献にあるように、従来はインシュレータを有する取付け片、弾性体のストッパーなどの部品を追加して、耐振動衝撃性能を確保するようにしている。今後いっそうの薄型化と軽量化を進めるうえでは、新たな部品を追加することなく性能を確保する方法が必要になる。
【0007】
本発明の目的はこの課題を解決し、耐振動衝撃性能を確保できる光ディスク装置を提供することにあり、特に新たな部品を追加することなく、耐振動衝撃性能を確保できる光ディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明による光ディスク装置は、光ディスクを回転させるためのディスクモータと、該ディスクモータの光ディスクを装着する側に配置され、光ディスクを装置に取付けないし取外す際に、該光ディスクを装置の外部から内部へ、ないし内部から外部へ移動させるためのディスクトレイと、該ディスクトレイと前記ディスクモータとの間にあって、前記ディスクモータを支持するトラバースとを有する光ディスク装置であって、前記トラバースの周辺部分にフランジを形成して、該フランジを前記ディスクトレイの底面と対向させたことを特徴としている。
【0009】
また本発明による別な光ディスク装置は、光ディスクを回転させるためのディスクモータと、該ディスクモータの光ディスクを装着する側に配置され、光ディスクを装置に取付けないし取外す際に、該光ディスクを装置の外部から内部へ、ないし内部から外部へ移動させるためのディスクトレイと、該ディスクトレイと前記ディスクモータとの間にあって、前記ディスクモータを支持するトラバースと、該トラバースに取付けられて該トラバースの前記ディスクトレイ側を覆うトラバースカバーとを有する光ディスク装置であって、前記トラバースカバーの周辺部分にフランジを形成して、該フランジを前記ディスクトレイの底面と対向させたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐振動衝撃性能を確保できる光ディスク装置を提供でき、使用中のトラックトレース不良などが少ない、使い勝手の良い光ディスク装置を実現できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を用いながら説明する。
図1は本発明による光ディスク装置の、トラバースメカアセンブリ(以下、TRVメカと略記する)1の装置の底面側からの平面図を示す。TRVメカとは、光ディスク装置の記録再生動作に関わる、機構系の最も主要な構成要素を搭載したものであり、光ディスクを回転させるディスクモータ、信号を記録再生する光ピックアップ部とその移動機構を含んでいる。図1(a)はTRVメカ1の全体を、(b)はその中でベース部分となるトラバース100を示す。図1(a)の左下部の矢印は、図示していない光ディスクが光ディスク装置へローディングされ、ないしエジェクトされる際に、移動する方向を示す。光ディスクをローディングないしエジェクトする際に、これを搭載して装置の外部から内部へ、ないし内部から外部へ移動させるディスクトレイは図示していないが、図面上でTRVメカ1の奥側にある。ローディング時にディスクトレイに搭載され、装置の外部から内部へ移動された光ディスクは、ディスクモータ101の回転軸延長上、図の裏側(装置の上面側)に備えられたクランパに取付けられ、ディスクモータ101により回転される。
【0012】
ディスクモータ101は、トラバース100に対し、たとえば通常のネジなどで構成される保持部102a、102b、102cにより取付けられている。即ち、ディスクモータ101は3点で片支持をされており、装置の外部から振動や衝撃を与えられると、倒れ込みモーメントが発生し、TRVメカ1自体が変形し移動する場合がある。
【0013】
光ピックアップ部(以下、OPUと略記する)103は、スライドモータ104とその回転軸に直結したスクリュー105、およびギア106の回転に伴い、ガイド主軸107とガイド副軸108の上を移動することで、光ディスク上の指定された位置で信号の記録再生を行う。
【0014】
さきのディスクモータ101を4点で支持できれば、倒れ込みモーメントの発生が解消されるが、図1に示すようにディスクモータ101の図面上で下側は、OPU103の移動するスペースとなるので、4点目の保持部を設けることは困難である。
【0015】
なお、トラバース100は、ゴムなどを材料とした三箇所のダンパー109a、109b、109cを介して、図示しないボトムケースへ取付けられている。
【0016】
本実施例においては、図1(b)に示したように、たとえばトラバース100の周辺にあるスカート120の一部を折り曲げて、突出部120aを形成したことに特徴がある。これに対し従来のトラバース200は、図2に示すとおり、このフランジを有していない。本実施例では突出部120aが、図示しないディスクトレイの底面と通常は僅かな間隔をおいて対向し、振動や衝撃があった際に互いに接触して、TRVメカ1が大きく変形し、移動することを防ぐようにしている。
【0017】
次に図3を用いて、実際に衝撃が加わった時の状況を説明する。図3はTRVメカ1の側面図であり、図1(a)の左側から見た場合を示している。110は前記した光ディスクを固定するためのクランパである。
衝撃が図中の矢印のように、ディスクモータ101の底面側から加わった場合を述べる。前記したとおり、ディスクモータ101はトラバース100に対して、3点で片支持されている。このため衝撃力により倒れ込みモーメントが発生し、同時にTRVメカが上面側(図3では左方向)へ引かれ、OPU103などの構成要素が動くことになる。これは記録再生動作、トラックトレースの不良を起こし問題となる。
【0018】
次に図4a〜図4cを用いて、さきの突出部120aの位置とその役割について説明する。図4aは本発明による光ディスク装置の底面側からの平面図であり、図1で示したTRVメカ1のほか、その奥側にディスクトレイ130が加わっている。図4aの下部の矢印は、光ディスクをローディングないしエジェクトする際の移動方向を示す。図4bはディスクモータ101、突出部120aを中心とした部分拡大図であり、図4cは図4bの破線A−Bにおける断面図を拡大したものである。ここで140は後記するトラバースカバーである。
【0019】
突出部120aは図4aないし図4bにおける、図面上で奥側にあるディスクトレイ130の底面の一部に対向している。図4cの断面図にあるように、突出部120aとディスクトレイ130の底面との間には、図中でXと示した隙間を設ける。本実施例においてこの隙間は、図3で示したような衝撃を受けた際の、前記したダンパー109a、109b、109cの沈み込み長よりも小さい値に設定する。通常は突出部120aとディスクトレイ130との間には前記した隙間があるため、これらが互いに干渉して、光ディスクのローディングやエジェクトなどの動作を妨げることはない。一方、図3で示したような衝撃を受けた際には、衝撃が小さい場合はダンパー109a、109b、109cの沈み込みで吸収され、TRVメカに影響を及ぼすことはない。衝撃が大きい場合は、突出部120aとディスクトレイ130が直ちに接触するため、TRVメカ1が大きく移動して変形することを防ぐことができる。またたとえばスライドモータ104のような構成要素が、トラバース100の穴を介して装置の上面側に大きく突出することを防ぐことができる。
【0020】
次に本発明の別な実施例につき図5と図7を用いて説明する。図5(a)は本発明におけるトラバース100の、ディスクトレイ130と対向する側に取付けられるトラバースカバー140の平面図である。やはり光ディスク装置の底面側から描いている。図5(b)は図5(a)の左側から見た側面図である。本実施例においては、トラバースカバー140の周辺の一部を折り曲げて、突出部140aを形成している。このため前記した突出部120aと同様、衝撃が加わった際にこれとディスクトレイ130が接触することで、TRVメカ1が大きく移動して変形することのないようにしている。これに対し従来のトラバースカバー240は、図6に示すとおりフランジを有していないので、この作用はない。
【0021】
図7はこの一実施例における部分断面図を示したものである。さきの図4cに対応するものである。ここでは図4cの場合とは異なり、トラバース100のスカート120ではなくトラバースカバー140に突出部140aが設けられている。その作用については図4cの場合と同様であるので、説明を省略する。
【0022】
突出部120a、140aが対向し、振動や衝撃のあった際に接触する相手は、必ずしもディスクトレイ130に限定するものではない。しかし、ディスクトレイ130を有する光ディスク装置においては、TRVメカ1が大きな面積をもって対向する相手であるディスクトレイ130に、突出部120a、140aを対向させるのが最も容易な場合が多い。
【0023】
本発明は、以上述べた実施例に限定されるものではない。TRVメカ1が衝撃によって、大きく移動し変形することを防止できれば良い。
たとえば、図面ではトラバース100のスカート120に設けた場合の突出部120aは、トラバースカバー140に設けた場合の突出部140aよりも、幅が狭くなっているが、これは限定条件ではない。突出部120aがトラバース100の周辺方向に幅広く設けられても良く、突出部140aが図示したものよりもトラバースカバー140の周辺方向への幅が狭いものであっても良い。またフランジの数は1つに限らず、トラバース100ないしトラバースカバー140の周辺に複数設けても良い。通常の動作で突出部120aないし140aが、他の構成要素と干渉しない範囲であれば良く、様々な変形例を考えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(a)本発明の一実施例における光ディスク装置のTRVメカの平面図、(b)はそのトラバースの平面図である。
【図2】従来のトラバースの平面図である。
【図3】TRVメカの側面図である。
【図4a】本発明の一実施例における光ディスク装置の平面図である。
【図4b】図4aの一部分の拡大図である。
【図4c】図4bの一部分の断面図である。
【図5】本発明の別な実施例におけるトラバースカバーを示し、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図6】従来のトラバースカバーの平面図である。
【図7】本発明の別な実施例における光ディスク装置の一部分の断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1・・・・・TRVメカ
100・・・トラバース
101・・・ディスクモータ
102・・・TRVメカの保持部
109・・・ダンパー
120・・・スカート
120a・・突出部
140・・・トラバースカバー
140a・・突出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクを回転させるためのディスクモータと、
該ディスクモータの光ディスクを装着する側に配置され、光ディスクを装置に取付けないし取外す際に、該光ディスクを装置の外部から内部へ、ないし内部から外部へ移動させるためのディスクトレイと、
該ディスクトレイと前記ディスクモータとの間にあって、前記ディスクモータを支持するトラバースとを有する光ディスク装置であって、
前記トラバースの周辺部分にフランジを形成して、該フランジを前記ディスクトレイの底面と対向させたことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
光ディスクを回転させるためのディスクモータと、
該ディスクモータの光ディスクを装着する側に配置され、光ディスクを装置に取付けないし取外す際に、該光ディスクを装置の外部から内部へ、ないし内部から外部へ移動させるためのディスクトレイと、
該ディスクトレイと前記ディスクモータとの間にあって、前記ディスクモータを支持するトラバースと、
該トラバースに取付けられて該トラバースの前記ディスクトレイ側を覆うトラバースカバーとを有する光ディスク装置であって、
前記トラバースカバーの周辺部分にフランジを形成して、該フランジを前記ディスクトレイの底面と対向させたことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光ディスク装置において、該光ディスク装置の底面側を覆うボトムケースと、該ボトムケースと前記トラバースとの間に挿入された弾性体によるダンパーとを有し、前記フランジと前記ディスクトレイの底面との隙間は、前記ダンパーが圧縮時に縮む長さよりも短く設定されたことを特徴とする光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−55659(P2010−55659A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−217005(P2008−217005)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)