説明

光ディスク駆動装置

【課題】光ディスク駆動装置の静電気防止に関し、内部で発生する静電気を確実に外部へアースすることと伴に、その構造を成す部品の寸法精度や、作業性を考慮した静電気防止構造を提供する。
【解決手段】スピンドルモータを支持する支持部材部と筺体部とを電気的に接続する片持ち構造のアーススプリング21であり、自由端を円弧形状とし、さらに先端部26に曲げ構造を備えた。これによりスプリングの寸法精度や組み立ての作業性が向上し、光ディスク駆動装置の信頼性の向上が図れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク駆動装置内部で発生する静電気処理用のアーススプリングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ディスク駆動装置は、装置内部で発生する静電気によってさまざまな部品の損傷を引き起こす可能性がある。ディスク面上の情報を再生、あるいはディスク面上に情報を記録するディスク駆動装置の主幹部品である光学ヘッドにはレーザダイオードを備えており、静電気により該レーザダイオードが損傷する可能性がある。これによって、光ディスク駆動装置は記録再生ができなくなる可能性がある。
【0003】
静電気防止を行う従来技術としては、静電気のアース対策として、導通性部材でできたアース部材により、光ディスク駆動装置内部から筺体部へ該静電気を放電する構造がある。
【0004】
特許文献1には、スピンドルモータのモータベースの表面側絶縁層上にコネクタからネジ穴近傍まで延びたESD(Electro-Static Discharge:静電放電)専用パターンを形成し、ESDプレートを該ESD専用パターンと半田接続して、コネクタを介して外部回路へ放電する構造が開示されている。
【0005】
特許文献2には、3つ以上の導電性部材間に円筒形状に巻き回された導線で構成され、円筒軸方向に弾性変形可能な導電性の弾性部材を介し、静電気防止を行う構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−245770号公報
【特許文献2】特開2005−123001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された技術は、スピンドルモータのモータベースに新たなESD専用パターンを形成しなければならない。また、ESD専用プレートと該ESDパターンとの半田接続作業や、コネクタ部からの外部回路への放電に必要な配線などが新たに必要となる。不具合が生じた際の部品交換など容易に行うことができないという課題やコスト面で課題が生じる。
【0008】
特許文献2に記載された技術は、装置内部の導電性部材間に円筒形状に弾性部材(密巻きコイルばね)を介す構造である。しかし、光ディスク駆動装置などの非常に狭い空間(隙間)に導電性部材を介すため該円筒形状の弾性部材を設けることは寸法制約上困難であるという課題が生じる。
【0009】
本発明の目的は、光ディスク駆動装置の静電気防止に関し、内部で発生する静電気を確実に外部へアースすることと伴に、その構造を成す部品の寸法精度や、作業性を考慮した静電気防止構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明の一つの特徴は、光学的手段によりディスクに記録再生を行う光学ヘッドと、該ディスクを回転駆動するスピンドルモータと、前記スピンドルモータを支持する支持部材部と、前記光学ヘッド及び前記スピンドルモータ及び前記支持部材部を内蔵する導電性の筺体部とを備えた光ディスク駆動装置において、前記支持部材部に弧状部を有するアーススプリングを備え、該アーススプリングは前記支持部材部と前記筺体部とを電気的に接続することにある。
【0011】
また、前記アーススプリングは、前記支持部材部に接続され、片持ち形状でかつ支持部から自由端に向けて円弧形状の曲げ成型を有し、前記筺体部へ、導電性のユニットメカ下カバー,メイン回路基板を介して電気的に接続することが望ましい。
【0012】
また、前記アーススプリングは、円弧形状の先端部に該円弧形状とは逆の曲げ構造を備えることが望ましい。
【0013】
また、前記アーススプリングは、円弧形状の先端部に別部材となる接触部材を備えることが望ましい。
【0014】
また、前記アーススプリングの円弧形状と前記支持部材部との間の空間に電気配線部材を配置することが望ましい。
【0015】
また、前記導電性の筺体は、使用時に接地電位とすることが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ディスク駆動装置内部で生じた静電気を確実に外部へ放電することができ、さらにアース部材となるスプリングにおいて寸法精度や、組み立て作業性が向上することで信頼性の高い光ディスク駆動装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】一般的な光ディスク駆動装置の構造を示す分解斜視図。
【図2】本発明の一実施例であるアーススプリングを備えたユニットメカ部を示す図。
【図3】光ディスク駆動装置の静電気放電の流れを説明する図。
【図4】スピンドルモータプレートに設置した比較例のアーススプリング構造を示した図。
【図5】本発明の一実施例であるアーススプリング構造および、その効果説明する図。
【図6】本発明の第二実施例であるアーススプリングの他の効果を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例を述べる。
【実施例1】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の光ディスク駆動装置1を実施するための形態を説明する。図1から図5は、本発明の第一の実施の形態を説明するための図であり、これらの図において同一の符号を付した部分は同一物を表わし、基本的な構成及び動作は同様であるものとする。
【0020】
まず、本発明の一実施形態に係る光ディスク駆動装置1の構成について説明する。
【0021】
図1は、本実施形態における光ディスク駆動装置1の分解斜視図である。光ディスク駆動装置1は、直径120mm,厚さ1.2mmのCD,DVD,BD(ブルーレイ・ディスク)等の記録媒体(以下、ディスクと呼ぶ)の記録面に対して情報の記録再生を行うものである。本発明で対象とする光ディスク駆動装置1はおおむね、幅130mm,奥行き130mm,装置厚12.7mm(あるいは、9.5mm)の薄厚箱型形状で,モバイル型パーソナルコンピュータに装備されているスリム型(あるいは、スーパスリム型)ドライブと呼ばれている光ディスク駆動装置1である。光ディスク駆動装置1は、トップカバー3とボトムカバー4を嵌合及びネジ締結により組み立てて成形された筐体で構成されている。トップカバー3とボトムカバー4は、薄板鋼板をプレス成形することによりそれぞれ製造されている。該筐体内部(光ディスク駆動装置1内部)には、樹脂成形品のディスクトレイ6が配置されている。ディスクトレイ6の前端には、図示していないフロントパネルが装着されており、ここからディスクを搬出入している。ディスクトレイ6の下面にユニットメカ5が装着されている。ユニットメカ5は、弾性部材からなる複数のインシュレータ13(図2参照)を介してディスクトレイ6に取り付けられている。該インシュレータ13によって、装置外部からユニットメカ5へ伝わる振動や衝撃、あるいは、ユニットメカ5から外部へ伝わる振動や衝撃を減衰している。ユニットメカ5は、ベースとなる図1には示していないユニットメカシャシ9(図2参照)を有する。ユニットメカシャシ9に、ディスクを回転駆動するスピンドルモータ2、ディスクの記録面の情報を再生し、あるいは、記録面に情報を記録するための光学ヘッド7、光学ヘッド7をディスク半径方向に沿って移動させるための駆動手段、これらの部品への接触防止や電気的なノイズを遮断するユニットメカ上カバー8が装着されている。ディスクトレイ6の中央には、ディスクの外径より僅かに大きな円形溝が形成されている。この円形溝の底面の一部に切欠き孔を備え、ユニットメカ5のユニットメカ上カバー8,光学ヘッド7,スピンドルモータ2が露出している。ディスクの装着や離脱を行うためには該ディスクトレイ6の両側に備えたガイド機構により、ディスクトレイ6が該フロントパネルより光ディスク駆動装置1外部にスライドして突出する。
【0022】
本発明は、このような光ディスク駆動装置1において、内部で発生する静電気を光ディスク駆動装置1外部へ放電するアーススプリング12構造に関するものである。これにより、静電気による部品損傷を防止することで光ディスク駆動装置1の信頼性の向上を図る。
【0023】
図2は、図1に示したユニットメカ5の裏面部を斜視図で示したものである。ユニットメカ5構成について詳細に説明する。ベースとなる鋼板をプレス成型した枠構造のユニットメカシャシ9に、スピンドルモータ2はスピンドルモータプレート10で3箇所ネジ締結によって固定されている。また、ユニットメカシャシ9には2本のガイドバー14が各ガイドバー14の両端部をネジ締結で固定されており、光学ヘッド7は軸受部により該2本のガイドバー14により摺動支持されている。そして、ユニットメカ5はユニットメカシャシ9の外側部3箇所に備えたインシュレータ13により、ディスクトレイ6に弾性支持されている。ユニットメカ5裏面部にはさまざまな電気部品との接続に電気配線部材としてFPC(Flexible Printed Circuit:フレキシブル回路基板)11a,11b,11cが配置されている。
【0024】
本発明による静電気放電構造として、該スピンドルモータプレート10上にネジ締結された導電性部材のアーススプリング21が取り付けられている。このアーススプリング21によって、ユニットメカ5部の静電気を外部へ放電している。実際にはユニットメカ5裏面部を覆うように導電性の薄板鋼板のユニットメカ下カバー15が取り付けられており、該静電気はアーススプリング21を介して、ユニットメカ下カバー15へ放電されることとなる。
【0025】
図3は、光ディスク駆動装置1内部で発生した静電気を外部へ放電する流れを示したものである。本静電気の流れは光学ヘッド7内部の例えば、レーザダイオードなどの静電破壊を防止する放電経路を例として説明する。光学ヘッド7部からは軸受部を介してガイドバー14,ユニットメカシャシ9と各導電性部品を介して、スピンドルモータプレート10へ静電気は流れる。そして、本発明であるアーススプリング21により、ユニットメカ5裏面部に設置したユニットメカ下カバー15へ通電し、ユニットメカ下カバー15と電気的に接続したメイン回路,メイン回路からFPC11などの配線部材を介して光ディスク駆動装置1の筺体となるボトムカバー4、あるいはトップカバー3へ流れる。光ディスク駆動装置1から外部への静電気放電は、該駆動装置の筺体となるボトムカバー4、あるいはトップカバー3からPCのグランドへ電気的に接続することで行っている。すなわち、導電性の筺体は、光ディスク駆動装置の少なくとも使用時に接地電位とすることにより、動作時の静電気放電による弊害を防止できる。更に、光ディスク駆動装置の組み立て時に接地電位とすることにより、組み立て時の静電気放電による弊害を防止できる。
【0026】
図4は、アーススプリング12を備え、静電気放電を行っている比較例の光ディスク駆動装置1のスピンドルモータプレート10部を示したものである。アーススプリング12はばね材となる薄板鋼板で、折り曲げ加工により作られている。スピンドルモータプレート10には一本のネジにより締結固定され、ネジ部を固定部とした片持ち板構造である。自由部の先端部T字型構造で、固定部と自由部に折り曲げ部を有した曲げ加工を施している。ネジ部でスピンドルモータプレート10とアーススプリング12は電気的に接続され、図示していないユニットメカ下カバー15で抑え込まれることで前述した曲げ部により弾性的にユニットメカ下カバー15と接触する構造である。しかしながら、実際のユニットメカ5部とユニットメカ下カバー15との隙間は0.1mmから0.2mm程度と非常に狭く、片持ち構造で一部に曲げ構造を備えたアーススプリング12では、該ユニットメカ下カバー15を変形させる程の外力を生じさせず、安定に接触させるための折り曲げ加工精度は非常に厳しい。また、先端部のT字形状では光ディスク駆動装置1の組み立て工程で部品部の損傷(引っ掛けることで先端部が変形)の可能性などの課題がある。
【0027】
図5は、本発明の弧状部を有するアーススプリングの一実施例であるアーススプリング21を示したものである。図5(a)は該アーススプリング21をスピンドルモータプレート10に備えた状態を示したものである。図5(b)はアーススプリング21単体の斜視図であり、図5(c)は図5(b)に示したA方向からの側面図を示したものである。アーススプリング21は導電性部材のスピンドルモータプレート10に直接ネジ締結にて固定する。その際、スピンドルモータプレート10上での位置決めのためあらかじめ、該スピンドルモータプレート10上には位置決め用凸部を有し、該凸部とアーススプリング21の位置決めピンの孔23、さらにアーススプリング21には爪部(引っ掛け部24)を備え、該スピンドルモータプレート10の端部に引っ掛けることで位置決めを行っている。アーススプリング21のスピンドルモータプレート10合せ部を固定部として、片持ち形状の自由端部を備え、該自由端部に円弧形状の曲げ25構造を備えた。導電性薄板製のユニットメカ下カバー15(図5(c)では一部のみしか図示していない)でスピンドルモータプレート10を含むユニットメカ5を覆うことで、該ユニットメカ下カバー15に対してアーススプリング21の円弧曲げ部25の一部が弾性的に接触することとなる。スピンドルモータプレート10には、アーススプリング先端部26位置に孔部51(図5(a)参照)を備え、スピンドルモータプレート10とユニットメカ下カバー15間の隙間が狭い時でも弾性力が作用するように弾性変形範囲を大きくする構造とした。さらに、アーススプリング21の自由端先端部26に前記円弧曲げ部25形状とは逆方向の曲げ構造を備え、先端部26の接触部との滑り、摩擦力などを良好にし、さらに接触部の傷付きなどを防止している。先端部の曲げ構造によらず、軟性部材や、摩擦係数の小さな、例えば、樹脂部材などの別部材を先端部26に設けてもよい。
【0028】
図5に示すような、円弧形状の曲げ構造(円弧曲げ部25)とすることで、曲げ成形精度が向上すると伴に、図4に示す一部に曲げ構造を備えた構造と比較すると曲げ部の剛性が向上することで組み立て時の部品損傷の低減が図れる。したがって、安定にアースのための接触が行えるので、本発明により内部で生じた静電気による部品損を防止することができるとともに、組み立て工程での部品部の損傷(引っ掛けることでアーススプリングの先端部が変形すること、または先端部形状によって他部品を損傷すること)を防止できるので、より信頼性が高い光ディスク駆動装置1を提供することができる。
【実施例2】
【0029】
本発明の実施例2の形態について、図6を用いて説明する。
【0030】
図6はユニットメカ5に組み込まれた実施例1のアーススプリング21について、アーススプリング21と図2で示したFPC11aを示したものである。FPC11aを、アーススプリング21とスピンドルモータプレート10間に生じる(円弧曲げ部25によって生じる)空間に通す構造である。これによって、FPC11aの位置ずれや、引っ掛けなどを防止することが可能となる。したがって、本発明により内部で生じた静電気による部品損を防止することができるとともに、電気配線の信頼性をより向上できる光ディスク駆動装置1を提供することができる。また、FPCを円弧曲げ部25によって生ずる空間に配置できるので、省スペース化を実現できる。
【符号の説明】
【0031】
1 光ディスク駆動装置
2 スピンドルモータ
3 トップカバー
4 ボトムカバー
5 ユニットメカ
6 ディスクトレイ
7 光学ヘッド
8 ユニットメカ上カバー
9 ユニットメカシャシ
10 スピンドルモータプレート
11a,11b,11c FPC
12 アーススプリング(比較例)
13 インシュレータ
14 ガイドバー
15 ユニットメカ下カバー
21 アーススプリング(本発明実施形態)
22 ネジ孔
23 位置決めピンの孔
24 引っ掛け部
25 円弧曲げ部
26 先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学的手段によりディスクに記録再生を行う光学ヘッドと、該ディスクを回転駆動するスピンドルモータと、前記スピンドルモータを支持する支持部材部と、前記光学ヘッド及び前記スピンドルモータ及び前記支持部材部を内蔵する導電性の筺体部とを備えた光ディスク駆動装置において、
前記支持部材部に弧状部を有するアーススプリングを備え、該アーススプリングは前記支持部材部と前記筺体部とを電気的に接続することを特徴とする光ディスク駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載のディスク駆動装置において、
前記アーススプリングは、前記支持部材部に接続され、片持ち形状でかつ支持部から自由端に向けて円弧形状の曲げ成型を有し、前記筺体部へ、導電性のユニットメカ下カバー,メイン回路基板を介して電気的に接続することを特徴とする光ディスク駆動装置。
【請求項3】
請求項1に記載のディスク駆動装置において、
前記アーススプリングは、円弧形状の先端部に該円弧形状とは逆の曲げ構造を備えることを特徴とする光ディスク駆動装置。
【請求項4】
請求項1に記載のディスク駆動装置において、
前記アーススプリングは、円弧形状の先端部に別部材となる接触部材を備えることを特徴とする光ディスク駆動装置。
【請求項5】
請求項1に記載のディスク駆動装置において、
前記アーススプリングの円弧形状と前記支持部材部との間の空間に電気配線部材を配置することを特徴とする光ディスク駆動装置。
【請求項6】
請求項1に記載のディスク駆動装置において、
前記導電性の筺体は、使用時に接地電位とすることを特徴とする光ディスク駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−227949(P2011−227949A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94595(P2010−94595)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(509189444)日立コンシューマエレクトロニクス株式会社 (998)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)