説明

光デバイスにおける光ビームをフォトニック結晶格子により調整するための装置および方法

【課題】フォトニック結晶格子のフォトニックバンドギャップを調整することにより、光ビームを調整する装置および方法を提供する。
【解決手段】本発明の一実施例によれば、装置は、第1の半導体材料103内にフォトニック結晶格子を含む。第1の半導体材料103は、その内部で定義される複数のホール107を有する。複数のホールは、フォトニック結晶格子を定義するホールピッチおよびホール半径により、第1の半導体材料103内に周期的に配列される。装置は、また、第1の半導体材料103内で定義される複数のホール107のそれぞれの内面の直近に配置され、かつ、そこから絶縁される第2の半導体材料領域419と、この半導体材料領域419内で調整される電荷調整領域とを含む。光ビームは、フォトニック結晶格子を介し導かれ、かつ、フォトニック結晶格子の調整された有効フォトニックバンドギャップに応答して調整される。有効フォトニックバンドギャップは、電荷調整領域に応答して調整される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、おおむね光学に関し、詳しくは、光ビームの調整に関する。
【背景技術】
【0002】
インターネットによるデータトラフィックの成長率が音声トラフィックを凌駕し、光通信の必要性は高まるばかりである昨今、高速かつ効率の良い光技術の必要性が日に日に増している。高密度波分割多重送信(DWDM)システムおよびギガネットイーサネットシステム(GB)における同一ファイバでの多数の光チャネルによる伝送は、光ファイバにより提供されるかつてない容量(信号帯域)を単純な方法で使用できるようにする。通常、DWDMシステムで使用される光学部品には、WDM送受信機、および、回析格子、薄膜フィルタ、ファイバグレーティング(GBG)、アレイ導波路格子(AWG)、光アッド/ドロップマルチプレクサなどの光学フィルタ、レーザ、および、光スイッチなどがある。光スイッチは、光ビームを調整するのに用いることができる。光スイッチの一般的なタイプを2つあげるとすれば、メカニカルスイッチングデバイス、および、電気光学スイッチングデバイスである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
メカニカルスイッチングデバイスは、通常、光ファイバ間の光路に配置される物理的構成要素を含む。これらの構成要素が移動することにより、スイッチング動作が生じる。近年、マイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMES)がミニチュアメカニカルスイッチに用いられるようになってきている。MEMSは、シリコンをベースとし、わりと一般的なシリコン加工技術を用いて処理されるので多く出回っている。しかし、MEMS技術は、部品あるいは構成要素の物理的部分の実際の機械的動作に負うところが大きいため、例えばミリ秒のオーダーでの応答時間を要する用途など、比較的遅い速度の光用途に限られてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
電気光学スイッチングデバイスでは、デバイス内に電界を生成すべく、デバイスの選択された部分に電圧が印加される。電界は、デバイス内の選択された材料の光学的性質を変化させ、電気光学効果が結果としてスイッチング動作を生ずる。電気光学デバイスは、一般的に、光透過性と電圧可変光学動作とを組み合わせた電気光学材料を利用する。電気光学スイッチングデバイスで用いられるある典型的なタイプの単結晶電気光学材料にリチウムニオブ酸塩(LiNbO)がある。
【0005】
リチウムニオブ塩酸は、ポッケルス効果のような電気光学特性を呈する紫外線から中間赤外線領域までの光を通す材料である。ポッケルス効果とは、リチウム二オブ酸などの媒体の屈折率が、印加された電界によって変化する光学現象である。リチウム二オブ酸の変化した屈折率は、スイッチングをもたらすために用いることができる。印加された電界は、外部制御回路により現今の電気光学スイッチングに提供される。
【0006】
このようなタイプのデバイスのスイッチング速度は、例えば、ナノ秒オーダーなど、非常に高速であるにもかかわらず、難点もある。それは、これらのデバイスが、光ビームを切り替えるのに比較的高い電圧を必要とすることである。結果として、現今の電気光学スイッチを制御するべく用いられる外部回路は、高電圧を生成するよう常に特別に作製され、電力消費量が膨大になってしまう。また、デバイスがどんどん小型化し、回路密度が高まるほどに、このような高電圧の外部回路と現今の電気光学スイッチとの一体化がますます必要とされる。
【0007】
以下に本発明を添付の図面を用いて説明するが、この説明は一例に過ぎず、本発明をこれに限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の教示に従い、光ビームが導かれかつ調整される導波路を有する半導体内のフォトニック結晶格子を含む光デバイスの一実施例を示す概略図である。
【0009】
【図2A】本発明の教示に従う光デバイスの一実施例によるシリコンオンインシュレータ(SOI)ウェハのエピタキシャル層にエッチングされたホールを概略的に示す平面図である。
【0010】
【図2B】本発明の教示に従う光デバイスの一実施例によるSOIウェハのエピタキシャル層にエッチングされたホールを概略的に示す断面図である。
【0011】
【図3A】本発明の教示に従う光デバイスの一実施例によるSOIウェハのエピタキシャル層にエッチングされたホールの上に形成された絶縁領域を概略的に示す平面図である。
【0012】
【図3B】本発明の教示に従う光デバイスの一実施例によるSOIウェハのエピタキシャル層にエッチングされたホールの上に形成された絶縁領域を概略的に示す断面図である。
【0013】
【図4A】本発明の教示に従う光デバイスの一実施例によるSOIウェハのエピタキシャル層にエッチングされたホールの上に形成された絶縁領域の上に形成された第2の半導体領域を概略的に示す平面図である。
【図4B】本発明の教示に従う光デバイスの一実施例によるSOIウェハのエピタキシャル層にエッチングされたホールの上に形成された絶縁領域の上に形成された第2の半導体領域を概略的に示す断面図である。
【0014】
【図5A】本発明の教示従う光デバイスの一実施例による、SOIウェハのエピタキシャル層へのコンタクトと、SOIウェハのエピタキシャル層におけるフォトニック結晶格子を通じて生じた光導波管を介し導かれる光ビームとを概略的に示す平面図である。
【0015】
【図5B】本発明の教示従う光デバイスの一実施例による、SOIウェハのエピタキシャル層へのコンタクトと、SOIウェハのエピタキシャル層におけるフォトニック結晶格子を通じて生じた光導波管を介し導かれる光ビームとを概略的に示す断面図である。
【図6A】本発明の教示に従う、電荷調整領域において電荷を調整すべく本発明の一実施例に従うフォトニック結晶格子に印加される電圧信号を示す概略図である。
【図6B】本発明の教示に従う、電荷調整領域において電荷を調整すべく本発明の一実施例に従うフォトニック結晶格子に印加される電流信号を示す概略図である。
【図6C】本発明の教示に従う、電荷調整領域における電荷をより大きく詳細に示す概略図である。
【図7A】本発明の教示に従い印加される"low(低)"電圧信号によりフォトニック結晶格子を介し光導波管内を導かれる複数の波長を有する光ビームを示す概略図である。
【図7B】本発明の教示に従い印加される"high(高)"電圧信号によりフォトニック結晶格子を介し光導波管内を導かれる複数の波長を有する光ビームを示す概略図である。
【図8】本発明の教示に従い光ビームを変調するべく、光送信機と、光受信機と、フォトニック結晶格子を有する光デバイスとを含むシステムの一実施例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
フォトニック結晶格子を有する光デバイスにより光ビームを調整する方法および装置が開示される。以下の説明における数多くの具体的な詳細により、本発明の理解はより完全なものとなるであろう。ただし、当業者であれば具体的な詳細がなくとも本発明を実行できることは明らかである。また、本発明を不明瞭にするのを避けるべく、よく知られた材料または方法などは詳しく説明していない。
【0017】
明細書における「実施例」または「1つの実施例」は、その実施例に関連して説明された特定の機能、構造、あるいは、特徴が、少なくとも1つの実施例には含まれることを意味する。頻出する「実施例」、あるいは、「1つの実施例」、必ずしも同じ実施例を指すわけではない。さらに、特定の機能、構造、または、特徴は、1つまたはそれ以上の実施例においていかなる方法で組み合わせても構わない。また図面は、当業者に対する説明のために示されるものであり、一定の尺度で描かれているとは限らない。
【0018】
本発明の一実施例においては、半導体ベースの光デバイスが単一の集積回路チップ全体に溶け込んだ溶液内に設けられる。本実施例の光デバイスは、光導波管が導かれる半導体材料内にパターン化された半導体ベースのフォトニック結晶格子を含む。光デバイスは、フォトニック結晶格子のフォトニック結晶におけるバンドギャップを活用する。このフォトニック結晶格子のバンドギャップは、1つの光ビームの1つの波長を遮断しつつ、他の波長の伝播を許容する。
【0019】
前述のように、特定の波長に対するフォトニックバンドギャップを有するように、本発明の実施例に従うフォトニック結晶格子は、特定のホール半径および特定のホールピッチを有し、かつ、特定の屈折率を有する材料により形成される。一実施例では、フォトニック結晶格子のホールの有効ホール半径は、フォトニック結晶格子のホールを定義するかまたは囲む材料の屈折率を調整することにより調整される。一実施例では、ホールを定義する材料の屈折率は、本発明の教示に従うフォトニック結晶のホールに直近の電荷調整された領域における電荷を調整することにより調整される。開示された光デバイスの実施例は、光スイッチあるいは変調器などのような他の高速光用途と同様に、マルチプロセッサ、電気通信、および、ネットワーキングを含む様々な高帯域用途に用いることができる。
【0020】
図1は、半導体材料内に作製され、かつ、本発明の教示に従い調整できるフォトニックバンドギャップを有するフォトニック結晶格子を含む光デバイスの一実施例を示す概略図である。図1に示すように、光デバイス101は、フォトニック結晶格子105が配置される半導体材料103を含む。一実施例では、図1に示すように、光導波管は、半導体材料103内に含まれ、かつ、フォトニック結晶格子105を介し導かれる。複数のホール107は、半導体材料103内でフォトニック結晶格子105を定義するホールピッチおよびホール半径を有し、半導体材料103内に周期的に配置される。一実施例では、ホールピッチは約500ナノメートルであり、ホール半径は、約200ナノメートルである。他のホールピッチおよびホール半径も本発明の教示に従う他の実施例で用いることができるのは言うまでもない。結果として生じたフォトニック結晶格子105のフォトニックバンドギャップは、フォトニック結晶格子105のホールピッチおよびホール半径により決定される。
【0021】
少なくとも1つの波長を有する光ビーム111は、半導体材料103およびフォトニック結晶格子05を介し光導波管109内を導かれる。フォトニック結晶格子105のフォトニックバンドギャップは、フォトニック結晶格子105を介して伝播できない光ビームの波長周波数範囲を生じさせる。結果として、光ビーム111の特定の波長がフォトニック結晶格子105のフォトニックバンドギャップに対応する場合、光ビーム111の特定の波長は遮断され、光ビーム111内に他の波長が含まれたとしても、それらは、フォトニック結晶格子105を自由に通過して伝播されることができる。
【0022】
また、一実施例では、複数のホールに直近の電荷調整領域は、本発明の教示に従う光デバイス101内に含まれる。動作中、信号113は、フォトニック結晶格子105に印加される。一実施例では、信号113は、電圧信号であってよく、一方、他の実施例では、信号103は、本発明の教示に従う電流信号であってよい。電荷調整領域における自由な電荷担体の濃度は、信号113に応答して調整される。この電荷調整の結果、複数のホール107に直近の半導体材料の屈折率は、調整される。そして、この複数のホール107に直近の半導体材料の調整された屈折率の結果、複数のホールの有効ホール直径が調整される。そして、この複数のホール107の調整されたホール直径の結果、フォトニック結晶格子105の有効フォトニックバンドギャップが調整される。したがって、フォトニック結晶格子105のフォトニックバンドギャップに対応する特定の波長を含む光ビーム111は、本発明の教示に従い調整される。
【0023】
一実施例では、半導体材料103は、シリコンオンインシュレータ(SOI)のエピタキシャル層である。図2Aは、本発明の教示に従う半導体材料103内にエッチングされたフォトニック結晶格子105の複数のホール107を概略的に示す、SOIウェハのエピタキシャル層の半導体材料103を示す平面図である。また、図2Bは、本発明の教示に従うSOIウェハのエピタキシャル層の半導体材料103内にエッチングされた複数のホール107を概略的に示す断面図である。一実施例では、半導体材料103は、特定の屈折率を有し、複数のホール107は、特定のバンドギャップによりフォトニック結晶格子105を定義するホールピッチおよびホール半径によって半導体材料103内に配列される。図2Aおよび図2Bに示すように、SOIウェハは、エピタキシャル層と埋め込み半導体層215との間に配置された埋め込み絶縁領域を含む。一実施例では、複数のホール107は、半導体材料103内でエッチングされ、埋め込み絶縁層213まで掘り下げられる。他の実施例では、複数のホール107は、半導体材料103内のみでエッチングされ、埋め込み絶縁層213まで掘り下げられなくともよい。
【0024】
図3Aは、図2Aおよび図2Bに示すように、複数のホール107がSOIウェハのエピタキシャル層の半導体材料103にエッチングされた後の、絶縁領域317を概略的に示す平面図である。絶縁領域317は、本発明の一実施例に従うフォトニック結晶格子105の複数のホール107の内面を含む半導体材料103上一面に形成される。図3Bは、本発明の一実施例に従う複数のホール107を覆うように形成された絶縁領域317を概略的に示す断面図である。一実施例では、絶縁領域317は、酸化物を含み、約120オングストローム厚に形成される。本発明の教示に従う他の実施例において、他の絶縁材料および他の厚さを用いることができるのは言うまでもない。
【0025】
図4Aは、図3Aおよび図3Bに示すように、半導体領域317が半導体材料103上一面に形成された後の、本発明の実施例に従う絶縁領域317上一面に形成された第2の半導体材料領域419を概略的に示す平面図である。図4Bは、本発明の実施例に従う絶縁領域317上一面に形成された第2の半導体材料領域419を概略的に示す断面図である。図4Aおよび4Bに示すように、第2の半導体材料領域419は、フォトニック結晶格子105の複数のホール107の内面に直近の領域を含む絶縁領域317上一面にパターン化される。図4に示された実施例は、第2の半導体材料領域419がそれぞれ互いに結合するようパターン化されることを示している。一実施例では、コンタクト421および423のような接点が、フォトニック結晶格子105の複数のホール107の内面に直近の第2の半導体材料領域419に電気的アクセスを提供するよう含まれる。絶縁領域317により、第2の半導体材料領域419は、本発明の教示に従う半導体材料103から電気的に絶縁される。したがって、本発明の教示に従う絶縁領域317により第2の半導体材料領域419から絶縁された半導体材料103から容量性構造が生じる。
【0026】
図5Aは、図4Aおよび4Bで示されたように、第2の半導体材料領域419が絶縁領域317上一面に形成された後の、本発明の実施例に従う半導体材料103への電気的結合を提供するよう形成されたコンタクト525および527を概略的に示す平面図である。図5Bは、本発明の実施例に従う半導体材料103への電気的結合を提供するよう形成されたコンタクトを概略的に示す断面図である。電気的結合が必要ない実施例では、コンタクト525および527は任意でよい。図5Aおよび図5Bはまた、半導体材料103に含まれ、かつ、フォトニック結晶格子105を介し導かれる光導波管109を概略的に示す。図5Aおよび図5Bにはさらに、本発明の教示に従うフォトニック結晶格子105および半導体材料103を介し光導波管109内を導かれる光ビーム111も示される。図中、光導波管109は、ストリップ導波路として示される。他の実施例では、光導波管109は、本発明の教示に従うリブ導波路のような他のタイプの導波管であってもよい。
【0027】
一実施例では、複数のホール107のそれぞれは、半導体材料103および/または第2の半導体材料領域419と比較的高いコントラストを有する材料で満たされる。例えば、一実施例では、半導体材料103は、結晶シリコンを含み、第2の半導体材料領域419は、ポリシリコンを含む。一実施例では、結晶シリコンおよびポリシリコンは、およそ3.45の屈折率を有する。一実施例では、複数のホール107のそれぞれは、屈折率約1.0の空気で満たされる。これらの例における材料は例示的なものであって、本発明の教示に従い他の適切な材料を用いてもかまわない。
【0028】
図6Aは、信号113が電圧信号である実施例を示す図である。特に、図中、信号113は、電圧信号Vsとして示され、コンタクト421と525との間、および、コンタクト423と525との間に印加される。したがって、信号113は、半導体材料103に関し、コンタクト421および423を介し第2の半導体領域419に電圧として印加される。
【0029】
図6Bは、信号113が電流信号である実施例を示す図である。特に、図中、信号113は、電流信号Isとして示され、コンタクト421および423を介し印加される。
したがって、信号113は、第2の半導体領域419に電荷を注入すべく、コンタクト421と423との間の第2の半導体領域419を介し電流として印加される。
【0030】
図6Cは、本発明の教示に従い信号113に応答して形成された電荷調整領域627を伴う、半導体材料103内に定義された複数のホール107の1つをより大きく詳細に示す概略図である。電荷調整領域627は、絶縁領域317により第2の半導体材料領域419から絶縁されることにより半導体材料103から生じた容量性構造を含む。特に、図6Cは、半導体材料103内に定義されるホール107の内面の直近でありかつそこから絶縁される第2の半導体材料領域419を示す。絶縁領域317は、半導体材料103と第2の半導体材料領域419との間に配置されることにより、第2の半導体材料領域419から半導体材料103を絶縁する。信号113が印加されることにより、電荷調整領域627における電荷濃度は、調整される。図6Cに示すように、電荷調整領域627は、半導体材料103と、ホール107の内面に直近の絶縁領域317に直近の第2の半導体材料領域419とにおいて自由な電荷担体を含む。一実施例では、電荷調整領域627における自由な電荷担体は、例えば、電子、ホール、または、その組合せを含んでよい。
【0031】
例えば、一実施例において、信号113が"low(低)"であれば、電荷調整領域627における自由な電荷担体の濃度も比較的低い。一方、信号が"high(高)"であれば、電荷調整領域627における自由な電荷担体の濃度も比較的高くなる。したがって、信号113は、電荷調整領域627における自由な電荷担体濃度を変化させ、その結果、電荷調整領域627が複数のホール107の直近に配置される半導体材料の屈折率に変化が生じる。屈折率が変化することにより、本発明の教示に従う信号113に応答して有効ホール半径が調整される。有効ホール半径が変化することにより、フォトニック結晶格子105のフォトニックバンドギャップが調整され、それにしたがって、本発明の教示に従うフォトニック結晶格子105により遮断される光ビーム111の波長も変化する。
【0032】
一実施例では、電荷調整領域627が調整される半導体材料の屈折率は、プラズマ光学効果により変化する。プラズマ光学効果は、光電界ベクトルと自由な電荷担体との間の相互作用により生じ、光導波管109における光ビーム111のような光ビームの光路に沿って現れることもある。光ビーム111の電界は、自由な電荷担体を偏向させ、媒体の局所誘電率を効果的に乱す。言い換えれば、屈折率とは、単純に、真空における光の速度と媒体における光の速度との比率なので、光学波の伝播速度を乱し、そのため、光の屈折率を乱すことになる。したがって、フォトニック結晶格子105における複数のホール107に直近の光導波管109内の屈折率は、電荷調整領域627の自由な電荷担体の調整に応じて調整される。フォトニック結晶格子105を介した光導波管109における屈折率の調整に対応し、フォトニック結晶格子105を介し伝播する光ビーム111の位相も調整される。さらに、電荷調整領域627における自由な電荷担体は、電界により急速に加速し、光学的エネルギーが消耗するにつれ、光学場は吸収されていく。通常、屈折率の乱れは、速度変化を生じる部分である実部と、自由な電荷担体の吸収に関連した虚部とによる複素数になる。シリコンにおけるプラズマ光学効果の場合、電子(ΔN)およびホール(ΔN)の濃度変化による屈折率の変化Δnは、以下の式により表される。
【式1】
【0033】

0は、シリコンの公称屈折率、eは、電子の電荷、cは、光の速度、ε0は、自由空間の誘電率、meおよびmhは、電子およびホールそれぞれの有効質量、bおよびbは、適合パラメータを示す。
【0034】
図6Cに戻り、半導体材料103と第2の半導体材料領域417との間の、一実施例では約120オングストローム厚である絶縁領域317には、信号113により6ボルト電荷を印加してもよい。6ボルトの印加された電圧により、自由な電荷担体濃度は、本発明の教示に従うホール107に直近の半導体材料の約0.01の屈折率における変化を生じる。この屈折率の変化は、ほぼ10ナノメートルにわたって生じ、ホール107の有効ホール直径は10パーセント変化する。結果として、フォトニック結晶格子105のフォトニックバンドギャップは、本発明の教示に従い調整される。
【0035】
次に図7Aおよび7Bを参照すると、光ビーム111は、半導体材料103からフォトニック結晶格子105を介し光導波管内を導かれるよう示されている。図中、光ビーム111は、フォトニック結晶格子を介し導かれる以前に、2つの波長λ1およびλ2を含む。一実施例では、波長λ1およびλ2は、例えば約1310ナノメートルまたは1550ナノメートルの赤外線の波長である。図7Aでは、信号113は、"low(低)"信号Vsとして示される。図中、信号Vsにより、フォトニック結晶格子105のフォトニックバンドギャップは、光ビーム111の波長λ2を遮断するが、例えばλ1のような他の波長がフォトニック結晶格子105を伝播するのを許容する。図7Bでは、信号113は、"high(高)"電圧信号Vsとして示される。"high(高)"信号Vsにより、フォトニック結晶格子105のフォトニックバンドギャップが調整されることにより、光ビーム111の波長λ1は遮断されるが、λ2のような光ビーム111の他の波長はフォトニック結晶格子105を伝播されることができる。
【0036】
図8は、光送信機と、光受信機と、本発明の教示に従い光ビームを調整または切り替えるフォトニック結晶格子を有する光デバイスとを含むシステムの一実施例の概要を示す。特に、図8は、光送信機829および光受信機831と、光送信機829と光受信機831との間に光学的に結合された光デバイス101とを含む光学系833を示す。図8に示すように、光送信機829は、光デバイス101により受信される光ビーム111を送信する。
【0037】
一実施例では、光デバイス101は、信号113に応答し、光ビーム111または光ビーム111の特定の波長を調整または切り替えることが先に述べられた光デバイスの一実施例としてのデバイスを含む。例えば、光送信機829から伝送された光ビーム111が波長λを含む場合、光デバイス101は、光ビーム111を受信し、かつ、本発明の一実施例に従い光ビーム111に信号113をエンコードすべく光ビーム111の波長λを調整するよう用いられることもできる。その後、光ビーム111は、光デバイス101から導かれ、エンコードされた信号113により光受信機831で受信される。
【0038】
他の実施例では、光送信機829から伝送された光ビーム111は、例えばλ1およびλ2を含む複数の波長を有してもよい。光デバイス113は、波長λ1またはλ2の1つを選択的に遮断するかまたは除去する一方で、他の波長が信号113に応答して伝播されるのを許容するべく用いられてもよい。その後、光ビーム111に含まれる残りの波長は、光デバイス101から光受信機831へと導かれる。他の実施例では、複数の光デバイス101は、ビルディングブロックとして利用され、様々な構成に配列されるかまたは並べられて、本発明の実施例に従う光ビーム111に含まれ得るさまざまな波長に作用することもできる。
【0039】
本願発明の方法および装置を好適な実施形態に関して説明したが、本発明の精神または範囲から逸脱することなく様々に変更が可能である。本明細書および図面は例示に過ぎず、これによって制限されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
第1の半導体材料におけるフォトニック結晶格子であって、前記第1の半導体材料は、該第1の半導体材料内で定義される複数のホールを有し、該複数のホールは、前記フォトニック結晶格子を定義するホールピッチおよびホール半径により前記第1の半導体材内に周期的に配列される、フォトニック結晶格子と、
前記第1の半導体材料内で定義される複数のホールの内面それぞれの直近に配置されかつそれぞれから絶縁される第2の半導体材料領域と、
前記第2の半導体材料領域内で調整される電荷調整領域と、
を含む装置であって、
前記フォトニック結晶格子を介し導かれる光ビームは、該フォトニック結晶格子の調整された有効フォトニックバンドギャップに応答して調整され、該有効フォトニックバンドギャップは、前記電荷調整領域に応答して調整される装置。
【請求項2】
前記フォトニック結晶格子の有効フォトニックバンドギャップは、前記電荷調整領域に応答して調整される前記第2の半導体材料における屈折率に応じて調整される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記フォトニック結晶格子の有効フォトニックバンドギャップは、前記電荷調整領域に応答して調整される複数のホールのそれぞれの有効ホール半径に応じて調整される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記光ビームは、第1の波長および第2の波長を含む複数の波長を有し、前記光ビームの第1および第2の波長の1つは、前記フォトニック結晶格子の前記調整された有効フォトニックバンドギャップに応答して前記フォトニック結晶格子を介し選択的に伝播されることができる、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記電荷調整領域を生ずるべく、前記第1の半導体材料に関連して前記第2の半導体材料領域に印加されるよう電圧信号が結合されることにより、前記フォトニック結晶格子の有効フォトニックバンドギャップが調整される、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記電荷調整領域を生ずるべく、前記第2の半導体材料を介し印加されるよう電流信号が結合されることにより、前記フォトニック結晶格子の有効フォトニックバンドギャップが調整される、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記第1の半導体材料から第2の半導体材料領域のそれぞれを絶縁すべく、前記第2の半導体材料領域と、前記第1の半導体材料との間に配置された絶縁材料をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記第1および第2の半導体材料は、シリコンを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記第1の半導体材料は、結晶シリコンを含み、前記第2の半導体材料は、ポリシリコンを含む、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記複数のホールのそれぞれは、前記第1の半導体材料の屈折率とは実質的に異なる屈折率を有する材料で満たされる、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記第1の半導体材料から絶縁された第2の半導体材料領域により容量性構造が定義される、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記フォトニック結晶格子を介し前記第1の半導体材料に含まれる光導波管をさらに含み、該光導波管と前記フォトニック結晶格子とを介し前記光ビームが導かれる、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
方法であって、
第1の半導体材料内のフォトニック結晶格子を介し光ビームを導く工程であって、前記第1の半導体材料は、その内部に定義される複数のホールを有し、該複数のホールは、前記フォトニック結晶格子を定義するホールピッチおよびホール半径により前記第1の半導体材料内に周期的に配列される工程と、
前記第1の半導体材料内で定義される複数のホールの内面それぞれの直近に配置されかつそれぞれから絶縁された第2の半導体材料領域における電荷調整領域で電荷濃度を調整する工程と、
前記調整された電荷濃度に応答し、前記フォトニック結晶格子の有効フォトニックバンドギャップを調整する工程と、
前記調整された有効バンドギャップに応答し、前記フォトニック結晶格子を介し導かれる光ビームを調整する工程と、
を含む方法。
【請求項14】
前記第2の半導体材料領域内の前記電荷調整領域における電荷濃度の調整に応答し、前記第2の半導体材料における屈折率を調整する工程をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の半導体材料領域内の前記電荷調整領域における電荷濃度の調整に応答し、前記複数のホールのそれぞれの有効ホール半径を調整する工程をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記フォトニック結晶格子を介し導かれる光ビームを調整する工程は、前記フォトニック結晶格子の調整された有効バンドギャップに応答し、前記光ビームの波長の1つが前記フォトニック結晶格子を介し伝播するのを選択的に遮断する工程を含む、請求項13記載の方法。
【請求項17】
前記フォトニック結晶格子の変調された有効バンドギャップに応答し、前記光ビームの波長の1つが前記フォトニック結晶格子を介し伝播するのを選択的に遮断する一方で、前記光ビームの他の波長が前記フォトニック結晶格子を介し伝播されるようにする工程をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第2の半導体材料領域内の電荷調整領域における電荷濃度を調整する工程は、前記第1の半導体材料に関連して前記第2の半導体材料領域に印加される電圧信号を調整する工程をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記第2の半導体材料領域内の前記電荷調整領域における電荷濃度を調整する工程は、前記第2の半導体材料領域を介し印加される電流信号を調整する工程をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
システムであって、
光ビームを伝送する光送信機と、
光受信機と、
前記光送信機と前記光受信機との間に光学的に結合される光デバイスであって、
第1の半導体材料におけるフォトニック結晶格子であって、前記第1の半導体材料は、該第1の半導体材料内で定義される複数のホールを有し、該複数のホールは、前記フォトニック結晶格子を定義するホールピッチおよびホール半径により前記第1の半導体材内に周期的に配列される、フォトニック結晶格子と、
前記第1の半導体材料内で定義される複数のホールの内面それぞれの直近に配置されかつそれぞれから絶縁される第2の半導体材料領域と、
前記第2の半導体材料領域内で調整される電荷調整領域であって、前記光ビームは、前記光送信機から受信され、かつ、前記フォトニック結晶格子を介し導かれ、前記光ビームは、前記フォトニック結晶格子の調整された有効フォトニックバンドギャップに応答して調整され、前記有効フォトニックバンドギャップは、前記電荷調整領域に応答して調整される電荷調整領域と、
を含む光デバイスとを含み、
前記調整された光ビームは、前記光受信機により受信されるシステム。
【請求項21】
前記フォトニック結晶格子の有効フォトニックバンドギャップは、前記電荷調整領域に応答して調整される前記第2の半導体材料における屈折率に応じて調整される、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記フォトニック結晶格子の有効フォトニックバンドギャップは、前記電荷調整領域に応答して調整される前記複数のホールのそれぞれの有効ホール半径に応じて調整される、請求項20に記載のシステム。
【請求項23】
前記光ビームは、第1の波長および第2の波長を含む複数の波長を有し、前記光ビームの第1および第2の波長の1つは、前記フォトニック結晶格子の調整された有効フォトニックバンドギャップに応答して前記フォトニック結晶格子を介し選択的に伝播されることができる、請求項20に記載のシステム。
【請求項24】
前記電荷調整領域を生ずるべく前記第1の半導体材料に関連して前記第2の半導体材料領域に印加される電圧信号を受信するよう前記光デバイスを結合することにより、前記フォトニック結晶格子の有効フォトニックバンドギャップが調整される、請求項20に記載のシステム。
【請求項25】
前記電荷調整領域を生ずるべく前記第2の半導体材料領域を介し印加される電流信号を受信するよう前記光デバイスを結合することにより、前記フォトニック結晶格子の有効フォトニックバンドギャップが調整される、請求項20に記載のシステム。
【請求項26】
前記光デバイスは、前記第1の半導体材料から前記第2の半導体材料領域のそれぞれを絶縁するべく、前記第2の半導体材料領域と前記第1の半導体材料との間に配置された絶縁材料をさらに含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項27】
前記複数のホールのそれぞれは、前記第1の半導体材料の屈折率とは実質的に異なる屈折率を有する材料により満たされる、請求項20に記載のシステム。
【請求項28】
前記第1の半導体材料から絶縁された第2の半導体材料領域により、容量性構造が定義される、請求項20に記載のシステム。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−523382(P2007−523382A)
【公表日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−554113(P2006−554113)
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【国際出願番号】PCT/US2005/002988
【国際公開番号】WO2005/083501
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
【出願人】(591003943)インテル・コーポレーション (1,101)
【Fターム(参考)】