説明

光ピックアップ移送機構

【課題】ガイドシャフトの端部の位置調整を正確かつ簡便に行えて組立作業性も良好な光ピックアップ移送機構を提供する。
【解決手段】シャーシ上に延在するガイドシャフト2によって光ピックアップ4をディスクの径方向へ案内する光ピックアップ移送機構において、シャーシに螺着される固定ねじ5に予めゴム等からなる板状弾性体6を外装しておき、この固定ねじ5のねじ頭50と板状弾性体6との間にガイドシャフト2の端部21を挟み込んで保持するようにした。また、シャーシには板状弾性体6が載置されるV溝等の溝部15を設けておき、この溝部15の相対向する一対の傾斜面16がガイドシャフト2の軸心から等距離に位置するという設定にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクプレーヤに備えられる光ピックアップ移送機構に係り、特に、シャーシ上に延在して光ピックアップをディスクの径方向へ案内するガイドシャフトを固定するためのガイドシャフト取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ピックアップを用いてCDやDVD等のディスクに対して情報を記録および/または再生する場合、光ピックアップをディスクの半径方向へ移送する必要があるため、ディスクプレーヤには、モータやガイドシャフト等をシャーシに配設してなる光ピックアップ移送機構が装備されている。モータの駆動力は歯車群を介して光ピックアップに伝達され、この光ピックアップがシャーシ上に延在するガイドシャフトに案内されながら、その軸線方向に沿って往復移動するようになっている。
【0003】
かかる光ピックアップ移送機構において、ガイドシャフトの端部はシャーシ上の所定位置に保持されるが、光ピックアップの光軸をディスクの記録面に対して正しく直交させるために、組立工程でシャーシに対するガイドシャフトの端部の高さ位置を調整可能にしたガイドシャフト取付構造が広く採用されている。このようなガイドシャフト取付構造としては、シャーシに固定ねじを螺着させ、この固定ねじのねじ頭でガイドシャフトを押圧するという構造のものが一般的であり、固定ねじのねじ頭と圧縮コイルばね等のばね部材とでガイドシャフトの端部を挟み込んで保持するという構造のものも従来より知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−334528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の光ピックアップ移送機構におけるガイドシャフト取付構造では、ガイドシャフトの端部の高さ位置を調整する際に、このガイドシャフトが高さ方向および長さ方向と直交する方向へぶれる虞があり、こうしたガイドシャフトのぶれが発生した場合、光ピックアップの円滑な移送が阻害されることとなる。また、固定ねじのねじ頭と圧縮コイルばね等のばね部材とでガイドシャフトの端部を挟み込むという構造のものは、固定ねじとばね部材をそれぞれシャーシに取り付けねばならないため組立作業性が良好とは言えず、例えば光ピックアップの移送を案内する2本のガイドシャフトの両端部を全て固定ねじとばね部材とで保持するという構造にした場合、煩雑な組立作業を余儀なくされることとなる。
【0005】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ガイドシャフトの端部の位置調整を正確かつ簡便に行えて組立作業性も良好な光ピックアップ移送機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、シャーシに螺着される固定ねじに予めゴム等からなる板状弾性体を外装しておき、この固定ねじのねじ頭と板状弾性体との間にガイドシャフトの端部を挟み込んで保持するように構成すると共に、シャーシに板状弾性体が載置されるV溝等の溝部を設けておき、この溝部の相対向する一対の傾斜面がガイドシャフトの軸心から等距離に位置するという設定にした。
【発明の効果】
【0007】
本発明の光ピックアップ移送機構によれば、ねじ頭と協働してガイドシャフトの端部を保持する板状弾性体が予め固定ねじに外装されており、これら固定ねじと板状弾性体を一体品としてシャーシに取り付けることができるため、組立作業性が良好となる。また、板状弾性体が載置されるシャーシの溝部は、その相対向する一対の傾斜面がガイドシャフトの軸心から等距離に位置するように設定されているため、これら両傾斜面によってガイドシャフトは高さ方向および長さ方向と直交する方向へのぶれが防止されることとなる。それゆえ、組立工程でシャーシに対するガイドシャフトの端部の位置調整を正確かつ簡便に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、シャーシ上に延在するガイドシャフトによって光ピックアップをディスクの径方向へ案内する光ピックアップ移送機構において、前記シャーシに螺着されてねじ頭で前記ガイドシャフトの端部を押圧可能な固定ねじと、この固定ねじに外装された板状弾性体とを備え、前記ねじ頭と前記板状弾性体との間に前記ガイドシャフトの端部を挟み込んで保持すると共に、前記シャーシに前記板状弾性体を載置させるための溝部を設け、この溝部の相対向する一対の傾斜面が前記ガイドシャフトの軸心から等距離に位置するように設定した。
【0009】
このように構成された光ピックアップ移送機構は、ガイドシャフトの端部を固定ねじのねじ頭と板状弾性体とで挟み込んで保持するというものであるが、板状弾性体は予め固定ねじに外装されているため、両者を一体品としてシャーシに取り付けることができる。したがって、ガイドシャフトの端部を保持する部材をシャーシに取り付ける際の組立作業性が良好で、例えば光ピックアップの移送を案内する2本のガイドシャフトの両端部を全て固定ねじと板状弾性体とで保持するという構造にした場合でも、4本の固定ねじをそれぞれシャーシの所定位置に螺着させるだけで済む。また、板状弾性体を載置させるための溝部がシャーシに設けてあり、この溝部の相対向する一対の傾斜面がガイドシャフトの軸心から等距離に位置するように設定されているため、これら両傾斜面が板状弾性体を介してガイドシャフトの端部を位置規制することとなる。したがって、組立工程でシャーシに対するガイドシャフトの端部の高さ位置を調整する際に、ガイドシャフトの端部が高さ方向および長さ方向と直交する方向へぶれる虞はなくなる。
【0010】
上記の構成において、板状弾性体が円環状のゴム板からなり、このゴム板を圧入によって固定ねじに外装させると、板状弾性体を容易かつ確実に固定ねじに装着させることができるのみならず、ゴム製の板状弾性体によって光ピックアップ移送機構の防振機能を高めることもできるため、特に車載用ディスクプレーヤに好適な光ピックアップ移送機構を実現できる。
【0011】
また、上記の構成において、シャーシが樹脂モールド品であると共に、固定ねじがタッピングねじであり、シャーシに設けた下穴に該タッピングねじ(固定ねじ)を螺着させると、シャーシを安価に製造することができて固定ねじの緩みも発生しにくくなる。この場合において、天面側にV溝を有する台座部をシャーシに突設し、該V溝を板状弾性体を載置させるための溝部となすと共に、この台座部の略中央に下穴を設けると、ガイドシャフトの端部が搭載される台座部に溝部や下穴を無理なく形成することができるため、シャーシの製造が容易になり小型化も図りやすくなる。
【実施例】
【0012】
実施例について図面を参照して説明すると、図1は実施例に係る光ピックアップ移送機構とシャーシを示す全体斜視図、図2は図1に対応する平面図、図3は該光ピックアップ移送機構におけるガイドシャフトの端部近傍を示す斜視図、図4は図3に示すシャーシの台座部とその近傍の形状を示す斜視図、図5は図3に示す固定ねじと板状弾性体の取付前の外観を示す斜視図である。
【0013】
図1と図2に示すシャーシ1は樹脂モールド品であり、このシャーシ1に2本のガイドシャフト2,3を介して光ピックアップ4が担持されている。シャーシ1の円板部10には図示せぬディスク駆動装置が取り付けられ、このディスク駆動装置に装填される図示せぬディスクに対して光ピックアップ4が情報の記録および/または再生を行うようになっている。また、シャーシ1には、光ピックアップ4をディスクの半径方向へ移送するための光ピックアップ移送機構が配設されている。この光ピックアップ移送機構は、シャーシ1上に延在する2本のガイドシャフト2,3と図示せぬモータおよび歯車群等によって構成されており、モータの駆動力が歯車群を介して光ピックアップ4に伝達されることにより、この光ピックアップ4がガイドシャフト2,3に案内されながら、その軸線方向に沿って往復移動するようになっている。
【0014】
ガイドシャフト2とガイドシャフト3は互いに平行に延在しており、これら2本のガイドシャフト2,3の軸線方向は光ピックアップ4をディスクの半径方向へ案内するように正確に設定されている。光ピックアップ4はガイドシャフト2側に前記モータの駆動力が伝達されるようになっているため、主動側のガイドシャフト2には光ピックアップ4の一側に突設された被案内部40,41が摺動自在に係合しており、従動側のガイドシャフト3には光ピックアップ4の他側に突設された被案内部42が摺動自在に係合している。ガイドシャフト2,3はそれぞれの両端部がシャーシ1上の所定位置に後述する固定ねじ5等を用いて保持されているが、各端部の取付構造は同等なため、ガイドシャフト2の一端部21の取付構造について詳しく説明する。
【0015】
ガイドシャフト2は、光ピックアップ4の被案内部40,41と摺接可能な長尺部分に比して両端部21,22が小径に形成されており、シャーシ1上に突設された規制壁11と規制壁12によって両端部21,22の取付位置が規定されている。図3に示すように、ガイドシャフト2の一端部21は相対向する一対の規制壁11の間に挿入されていると共に、該端部21の先端部分が固定ねじ5のねじ頭50とゴム製の板状弾性体6とによって高さ方向に挟み込まれている。
【0016】
固定ねじ5はタッピングねじであり、この固定ねじ5は図4に示すシャーシ1の台座部13に設けられた下穴14に螺着されて強固に固定されている。板状弾性体6は円環状のゴム板からなり、この板状弾性体6は圧入によって固定ねじ5に外装されている。そのため、板状弾性体6は容易かつ確実に固定ねじ5に装着させることができる。これら固定ねじ5と板状弾性体6は、シャーシ1に取り付ける前に予め図5に示すような外観で一体化されている。
【0017】
シャーシ1の台座部13はガイドシャフト2の一端部21を搭載する受け部として突設されたものであり、図4に示すように、一対の規制壁11の先端側に台座部13が連続的に設けられている。この台座部13の天面側には相対向する一対の傾斜面16を有するV溝15が形成されており、これら傾斜面16はガイドシャフト2の軸心から等距離に位置するように設定されている。つまり、一対の傾斜面16は傾斜角度が同じであると共に、両傾斜面16の境界線17がガイドシャフト2の軸心の真下に位置するように設定されている。また、台座部13の略中央には固定ねじ5をセルフタップで螺着させるための下穴14が形成されている。
【0018】
そして、固定ねじ5のねじ頭50とV溝15上に搭載した板状弾性体6との間にガイドシャフト2の一端部21の先端部分を挟み込んだ状態で、固定ねじ5を十字ドライバ等の治具を用いて下穴14に螺着させると、図3に示すように、ゴム製の板状弾性体6が両傾斜面15に沿うV字形状に弾性変形して該端部21を弾性付勢するため、この板状弾性体6とねじ頭50とによってガイドシャフト2の一端部21が強い力で挟圧される。これにより、ガイドシャフト2の一端部21をシャーシ1上の所定位置に取り付けることができると共に、固定ねじ5を適宜回転させることによって該端部21の高さ位置を容易に調整することができる。
【0019】
なお、ガイドシャフト2の他端部22やガイドシャフト3の両端部も、同様にしてシャーシ1上の所定位置に取り付けられている。
【0020】
このように本実施例に係る光ピックアップ移送機構では、ガイドシャフト2,3の各端部を固定ねじ5のねじ頭50と板状弾性体6とで挟み込んで保持するという取付構造を採用しているが、板状弾性体6は予め固定ねじ5に外装されているため、両者5,6を一体品としてシャーシ1に取り付けることができる。したがって、ディスクの記録面に対する光ピックアップ4の光軸の直交度を高精度に調整するために2本のガイドシャフト2,3の各端部が全て高さ調整できるようにしてあるにも拘らず、その取付作業は4本の固定ねじ5をそれぞれシャーシ1の所定位置に螺着させるだけで済み、これらガイドシャフト2,3の取付作業が煩雑化する虞はない。
【0021】
また、本実施例に係る光ピックアップ移送機構では、板状弾性体6を載置させるためのV溝15がシャーシ1の台座部13に設けてあり、このV溝15の相対向する一対の傾斜面16が対応するガイドシャフト2(または3)の軸心から等距離に位置するように設定されているため、これら両傾斜面16が板状弾性体6を介して当該ガイドシャフトの端部を位置規制することができる。したがって、組立工程でシャーシ1に対するガイドシャフト2,3の端部の高さ位置を調整する際に、当該ガイドシャフトの端部が高さ方向および長さ方向と直交する方向へぶれる虞はなく、それゆえ当該ガイドシャフトの端部の位置調整を正確かつ簡便に行うことができる。
【0022】
しかも、本実施例に係る光ピックアップ移送機構では、ゴム製の板状弾性体6を用いているため、この板状弾性体6を容易かつ確実に固定ねじ5に装着させることができる。また、ゴム製の板状弾性体6によって光ピックアップ移送機構の防振機能を高めることができるため、車載用ディスクプレーヤに適用して信頼性の向上が図れる。
【0023】
さらに、本実施例に係る光ピックアップ移送機構では、シャーシ1が樹脂モールド品であると共に、固定ねじ5がタッピングねじであり、この固定ねじ5がシャーシ1の下穴14にセルフタップで螺着されているため、シャーシ1を安価に製造することができて固定ねじ5の緩みも発生しにくい。また、V溝15や下穴14はシャーシ1の台座部13に無理なく形成することができるため、シャーシ1の製造は容易であり小型化も図りやすい。
【0024】
なお、上記実施例では、シャーシ1が樹脂モールド品の場合について説明したが、シャーシがアルミダイカスト等の金属製であってもよく、その場合は、ねじ溝を有するシャーシのねじ穴に固定ねじを螺着させることが好ましい。
【0025】
また、上記実施例では、光ピックアップ4を2本のガイドシャフト2,3で案内する光ピックアップ移送機構について説明したが、一方のガイドシャフトに相当する突部をシャーシ1に一体成形し、他方のガイドシャフトが1本しかない光ピックアップ移送機構の場合にも、そのガイドシャフトの端部の取付構造に本発明を適用することによって上記実施例と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例に係る光ピックアップ移送機構とシャーシを示す全体斜視図である。
【図2】図1に対応する平面図である。
【図3】該光ピックアップ移送機構におけるガイドシャフトの端部近傍を示す斜視図である。
【図4】図3に示すシャーシの台座部とその近傍の形状を示す斜視図である。
【図5】図3に示す固定ねじと板状弾性体の取付前の外観を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
1 シャーシ
2,3 ガイドシャフト
4 光ピックアップ
5 固定ねじ
6 板状弾性体
11,12 規制壁
13 台座部
14 下穴
15 V溝(溝部)
16 傾斜面
21,22 (ガイドシャフトの)端部
50 ねじ頭

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャーシ上に延在するガイドシャフトによって光ピックアップをディスクの径方向へ案内する光ピックアップ移送機構において、
前記シャーシに螺着されてねじ頭で前記ガイドシャフトの端部を押圧可能な固定ねじと、この固定ねじに外装された板状弾性体とを備え、前記ねじ頭と前記板状弾性体との間に前記ガイドシャフトの端部を挟み込んで保持すると共に、前記シャーシに前記板状弾性体を載置させるための溝部を設け、この溝部の相対向する一対の傾斜面が前記ガイドシャフトの軸心から等距離に位置するように設定したことを特徴とする光ピックアップ移送機構。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記板状弾性体が円環状のゴム板からなり、このゴム板を圧入によって前記固定ねじに外装させたことを特徴とする光ピックアップ移送機構。
【請求項3】
請求項1または2の記載において、前記シャーシが樹脂モールド品であると共に、前記固定ねじがタッピングねじであり、前記シャーシに設けた下穴に前記タッピングねじを螺着させたことを特徴とする光ピックアップ移送機構。
【請求項4】
請求項3の記載において、天面側にV溝を有する台座部を前記シャーシに突設し、前記V溝を前記溝部となすと共に、この台座部の略中央に前記下穴を設けたことを特徴とする光ピックアップ移送機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−163831(P2009−163831A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−1337(P2008−1337)
【出願日】平成20年1月8日(2008.1.8)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】