説明

光ファイバケーブルの余長処理ジグ

【課題】光ファイバケーブルの最小曲げ半径を保って小型化か可能になり、ケーブルの余長処理を効率的に行なうことができるようにする。
【解決手段】ジグ本体11は、ベース部13の一方の面に径が光ファイバケーブルの最小曲げ半径と同等以上の内側円周部14及び外側円周部15を設ける。外側円周部15には、所定の間隔で開口部16を形成する。内側円周部14には、開口側の外周縁に沿って各開口部16の中央部に対応させて突起17を設ける。突起17の高さは、外側円周部15の内径位置よりも高くする。また、ベース部13には、内側円周部14の中心軸に位置するようにカバー取付用の円筒部18を設けると共に周辺にジグ取付穴19を設ける。そして、内側円周部14と外側円周部15との間に開口部16から光ファイバケーブルを導入し、内側円周部14の径に沿って任意の数だけ巻回し、開口部16から導出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバケーブルの余長部分を巻き取って収容する光ファイバケーブルの余長処理ジグに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば光通信装置等、光ファイバケーブルを用いた電子機器においては、外部から電子機器内に導入される光ファイバケーブルを融着接続やコネクタ接続等の手段により接続しているが、その際、光ファイバケーブルに余長部分が生じて多くのスペースを専有する。このため従来では、光ファイバケーブルの余長部分を余長処理装置によって処理し、余長部分が専有するスペースがなるべく小さくなるようにしている(例えば、特許文献1、2、3参照。)。
【0003】
従来、電子機器内部における光ファイバケーブルの余長処理は、図7に示すようにして行なっている。すなわち、電子機器内に導入された光ファイバケーブル1に対し、主にケーブルクランプ2を用いて3点以上で円を構成し、上記ケーブルクランプ2に光ファイバケーブル1の余長部分を通して円状に巻取り、その巻数を調整することで余長処理を行なっている。そして、上記ケーブルクランプ2によって処理された余長部分は、必要に応じて収納箱に収納される。
【特許文献1】特開2001−242325号公報
【特許文献2】特開2003−227939号公報
【特許文献3】特開2003−227940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の光ファイバケーブルの余長処理方法では、光ファイバケーブル1をケーブルクランプ2により点で保持しているので、光ファイバケーブル1の最小曲げ半径を超えて余長処理を行なう場合が考えられ、光ファイバケーブル1を損傷する恐れがある。
【0005】
また、近年、電子機器内部の高密度化が進み、光ファイバケーブル1の本数が増加すると、より統制のとれた余長処理が要求されるようになってきている。
【0006】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、光ファイバケーブルの最小曲げ半径を保って小型化か可能になり、電子機器の配線工程の効率を向上させることができる光ファイバケーブルの余長処理ジグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る光ファイバケーブルの余長処理ジグは、ジグ本体に設けられる円板状のベース部と、前記ベース部の一方の面に設けられ、径が光ファイバケーブルの最小曲げ半径と同等以上に設定される内側円周部と、前記内側円周部より外側に所定の間隔で設けられる外側円周部と、前記外側円周部に略等間隔で形成される複数の開口部と、前記内側円周部の開口側の外周縁に沿って前記各開口部の中央部に位置するように設けられる突起と、前記ジグ本体に着脱可能に設けられるカバー部とを具備し、前記内側円周部に設けられる突起の高さを前記外側円周部の内径の位置より高く設定し、前記内側円周部の外径に沿って光ファイバケーブルを巻回して余長処理することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光ファイバケーブルの最小曲げ半径を超えて余長処理が行なわれる恐れは全くなく、ケーブルの損傷を確実に防止できる。また、ケーブルの余長処理ジグを小型化して電子機器内部の省スペースに対応することができる。更に、簡易な構成で、余長処理を効率的に行なうことができ、電子機器の配線工程の効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る光ファイバケーブルの余長処理ジグのジグ本体及びカバー部の構成を示す斜視図、図2はジグ本体にカバー部を装着した状態を示す斜視図である。
図1、図2において、11はジグ本体、12はカバー部である。上記ジグ本体11は、円板状のベース部13を備え、このベース部13の一方の面に所定の幅を有する筒状の内側円周部14及び外側円周部15が所定の間隔で同心円状に設けられる。上記内側円周部14と外側円周部15の幅は同じであり、例えば余長処理する光ファイバケーブルの直径の数倍に設定される。上記内側円周部14は、光ファイバケーブルを巻回するためのもので、径が上記光ファイバケーブルの最小曲げ半径と同等あるいはそれ以上の値に設定される。
【0010】
また、上記外側円周部15は、内側円周部14より外側、すなわちベース部13の外周縁に沿って設けられ、所定の間隔で複数例えば3つの開口部16が形成されている。上記外側円周部15は、開口部16によって複数に分割された状態に設けられる。また、内側円周部14には、開口側の外周縁に沿って上記各開口部16の中央部に対応して位置するように例えば半円形状の突起17が設けられる。この場合の例では、3つの突起17が設けられる。この突起17の高さは、外側円周部15の内径よりも高く、すなわち、外側円周部15の内径の位置よりも外方に突出して設けられる。上記突起17は、内側円周部14に光ファイバケーブルを巻回した際、この光ファイバケーブルがジグから外れることを防止するためのものである。
【0011】
また、ベース部13には、内側円周部14の中心軸に位置するようにカバー取付用の円筒部18が設けられると共に、この円筒部18の周辺に複数例えば3つのジグ取付穴19が設けられる。上記円筒部18は、先端側が開口しており、この開口部にカバー部12が装着される。すなわち、カバー部12には、ジグ本体11に対向する面の中心部に円柱状の突部21が設けられ、この突部21がジグ本体11の円筒部18に挿入されて保持される。上記カバー部12は、図示しないが例えばネジ等によってジグ本体11に固定される。また、カバー部12の面には、例えば扇形の複数の切欠き22が等間隔で設けられる。
【0012】
次に、上記のように構成された光ファイバケーブルの余長処理ジグを用いて余長処理を行なう場合の手順について図3を参照して説明する。図3は、ジグ本体11に対して光ファイバケーブル1を巻回して余長処理する場合の説明図で、ジグ本体11からカバー部12を取り外した状態を示している。
【0013】
ジグ本体11からカバー部12を取り外した状態において、図3に矢印で示すように光ファイバケーブル1を内側円周部14と外側円周部15との間に形成される溝部に開口部16から導入し、内側円周部14の径に沿って任意の数だけ巻回する。このとき巻回した光ファイバケーブル1がジグから外れることを突起17によって防止している。
【0014】
光ファイバケーブル1を内側円周部14に任意の数だけ巻回した後、任意の開口部16から取り出す。その後、円筒部18にカバー部12の突部21を挿入してジグ本体11にカバー部12を取付け、ネジ止め等によって固定する。また、ベース部13に設けたジグ取付穴19を使用し、上記光ファイバケーブルの余長処理ジグを電子機器内部に取付ける。
【0015】
上記第1実施形態によれば、光ファイバケーブル1の最小曲げ半径と同等の径を持つ内側円周部14に光ファイバケーブル1を巻回しているので、光ファイバケーブル1の最小曲げ半径を超えて余長処理が行なわれる恐れは全くなく、ケーブルの損傷を確実に防止することができる。また、内側円周部14に突起17を設けることにより、内側円周部14に巻回した光ファイバケーブル1がジグから外れるのを確実に防止できる。また、光ファイバケーブルの余長処理ジグを小型化して電子機器内部の省スペースに対応することができる。更に、簡易な構成で余長処理を効率的に行なうことができ、電子機器の配線工程の効率を向上させることができる。
【0016】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る光ファイバケーブルの余長処理ジグについて説明する。
図4は、本発明の第2実施形態に係る光ファイバケーブルの余長処理ジグのジグ本体及びカバー部の構成を示す斜視図である。この第2実施形態は、複数個のケーブル余長処理ジグをスタック状に配置できるように構成した場合の例を示したものである。なお、第1実施形態に係る光ファイバケーブルの余長処理ジグと同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0017】
この第2実施形態に係る光ファイバケーブルの余長処理ジグは、図4に示すようにジグ本体11の中心部に第1実施形態における円筒部18に代えて円筒状の連結部材31を設けている。この連結部材31は、図5に断面図を示すようにベース部13の外側に開口する連結穴32を備えると共に、内側先端部に円柱状の結合突部33を備えている。この結合突部33は、直径が連結穴32の直径よりも僅かに小さく形成され、他の余長処理ジグに設けられる連結部材31の連結穴32に挿入して結合できるようになっている。
【0018】
一方、カバー部12には、中心部に透孔34が設けられる。この透孔34の直径は、上記結合突部33の直径よりも僅かに大きく形成され、上記結合突部33が透孔34内を挿通して外部に突出するようになっている。
【0019】
また、ジグ本体11には、ベース部13の外周下部に例えばインボリュート状の凹凸35が形成される。この凹凸35は、ジグ本体11を図6に示す台座41にセットした際に、ジグ本体11が回転しないよう固定するためのものである。
上記ジグ本体11及びカバー部12のその他の構成は、上記第1実施形態と同様の構成となっている。
【0020】
そして、上記図6に示す台座41は、例えば底板42の両側を上方に折り曲げて保持板43a、43bを構成している。一方の保持板43aの上部には結合用突起44が設けられ、他方の保持板43bの上部には結合用切欠き45が形成される。上記結合用突起44は、ジグ本体11に設けられた連結部材31の連結穴32に対応して位置及び直径が設定され、結合用切欠き45は連結部材31の結合突部33に対応して位置及び大きさが設定される。
【0021】
上記保持板43a、43bの間隔は、ジグ本体11を複数例えば8個重ねてセットできるように設定される。この場合、結合用切欠き45が設けられた保持板43bに近接してセットされるジグ本体11に対してのみカバー部12が装着される。
【0022】
また、台座41の底板42には、複数重ねてセットされる各ジグ本体11に対応するようにインボリュート状の複数の凹凸部46が一定間隔で形成される。この場合の例では、凹凸部46が8個所設けられる。この凹凸部46は、台座41にジグ本体11をセットした際に、ジグ本体11に形成されている凹凸35に嵌合し、ジグ本体11が回転しないように固定する。上記台座41は、電子機器内に例えばネジ止め等により固定される。
【0023】
上記の構成において、複数個、この例では8個のジグ本体11に対し、第1実施形態で説明したように光ファイバケーブル1を巻回して余長処理し、その後、各ジグ本体11を台座41にセットする。この場合、保持板43a側にセットするジグ本体11は、連結部材31に設けられた連結穴32を結合用突起44に結合させる。その他のジグ本体11は、連結部材31に設けられた連結穴32を隣接するジグ本体11の連結部材31に設けられた結合突部33に結合させる。
【0024】
そして、保持板43b側にセットされるジグ本体11に対しては、カバー部12を装着する。この際、ジグ本体11は、連結部材31に設けられた結合突部33をカバー部12の中心に設けられた透孔34内を挿通させ、その先端を保持板43bに形成されている結合用切欠き45内に位置させる。
【0025】
上記のようにして台座41にセットとした各ジグ本体11は、ベース部13の外周下部に形成した凹凸35が底板42に形成されている凹凸部46に嵌合し、回転しないように固定される。
【0026】
上記第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が得られると共に、複数のジグ本体11を台座41にセットして使用することができる。従って、電子機器内部の高密度化が進み、光ファイバケーブル1の本数が増加する場合であっても、より統制のとれた余長処理を行なうことが可能になる。
【0027】
なお、上記第2実施形態では、ベース部13の外周下部に凹凸35を形成した場合について説明したが、ベース部13の全周に凹凸35を形成しても良い。ベース部13の全周に凹凸35を形成した場合には、ジグ本体11を台座41にセットする際、任意の回転位置でセットすることが可能であり、凹凸35と台座41に形成されている凹凸部46とを確実に嵌合させることができる。
【0028】
また、上記第2実施形態では、カバー部12の中心位置に透孔34を設けた場合について示したが、その他、例えばカバー部12の中心部において、内側に連結部材31の結合突部33に結合する筒状部を設けると共に外側に円柱状の突部を設け、この突部を台座41の保持板43bに設けた結合用切欠き45に結合させるようにしても良い。
【0029】
要するに本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光ファイバケーブルの余長処理ジグのジグ本体及びカバー部の構成を示す斜視図である。
【図2】同実施形態において、ジグ本体にカバー部を装着した状態を示す斜視図である。
【図3】同実施形態において、ジグ本体に対して光ファイバケーブルを巻回して余長処理する場合の説明図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る光ファイバケーブルの余長処理ジグのジグ本体及びカバー部の構成を示す斜視図である。
【図5】同実施形態における連結部材の構成を示す断面図である。
【図6】同実施形態にいて、複数のジグ本体をセットする台座の構成を示す斜視図である。
【図7】従来の光ファイバケーブルの余長処理を説明するための図である。
【符号の説明】
【0031】
1…光ファイバケーブル、11…ジグ本体、12…カバー部、13…ベース部、14…内側円周部、15…外側円周部、16…開口部、17…突起、18…円筒部、19…ジグ取付穴、21…突部、22…切欠き、31…連結部材、32…連結穴、33…結合突部、34…透孔、35…凹凸、41…台座、42…底板、43a.43b…保持板、44…結合用突起、45…結合用切欠き、46…凹凸部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジグ本体に設けられる円板状のベース部と、前記ベース部の一方の面に設けられ、径が光ファイバケーブルの最小曲げ半径と同等以上に設定される内側円周部と、前記内側円周部より外側に所定の間隔で設けられる外側円周部と、前記外側円周部に略等間隔で形成される複数の開口部と、前記内側円周部の開口側の外周縁に沿って前記各開口部の中央部に位置するように設けられる突起と、前記ジグ本体に着脱可能に設けられるカバー部とを具備し、前記内側円周部に設けられる突起の高さを前記外側円周部の内径の位置より高く設定し、前記内側円周部の外径に沿って光ファイバケーブルを巻回して余長処理することを特徴とする光ファイバケーブルの余長処理ジグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−101953(P2007−101953A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−292628(P2005−292628)
【出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】