説明

光ファイバー装置を有する喉頭マスク気道確保器具

本発明に係る喉頭マスク気道確保器具(200)は、内部通路(215)に気管内チューブ(195)を受け入れ可能な、近位端から遠位端(214)へと伸びる気道チューブ(210)と、患者の口を通して該患者の体内の挿入位置に挿入できるように構成されており、該挿入位置にて膨張すると患者の声門開口部を取り囲むように構成されている膨張可能なカフ(234)、及び上記内部通路(215)に液体を伝達するための開口部を有したマスク部(230)と、使用者が遠隔観察できるように上記気道チューブ(210)の上記遠位端(214)に隣接配設された遠位端(314)と、近位端とを有した光ファイバー観察手段(300)を備えている。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は光ファイバー装置を有する喉頭マスク気道確保器具に関するものであり、より具体的には光ファイバー装置を有する挿管用喉頭マスク気道確保器具に関するものである。
【0002】
喉頭マスク気道確保器具は、意識不明患者の気道を確立するために広く用いられる器具である。喉頭マスク気道確保器具について述べられた数多くの公報のうちの1つに、米国特許4,509,514号がある。この器具は長年使用されており、古くから「気管内チューブ」として知られている物の代用品となっている。少なくとも70年もの間は、チューブの遠位端に膨張可能なバルーンを備えた長細いチューブを有する気管内チューブが、意識不明患者の気道の確保のために使用されてきた。気管内チューブを実際使用する際には、その遠位端を患者の口から、喉頭口(あるいは声帯開口部)を過ぎて気管まで差し込む。そして、気管に達したところで、上記バルーンを膨らませて、気管の内面を密閉する。そして、この状態で、チューブの近位端に圧が加えられる。これにより、患者の肺を換気することができる。この構成とすれば、バルーンと気管の内面との間が密閉されているので、肺を誤嚥から保護することができる(例えば、密閉により、胃から逆行した物質が肺に誤嚥される危険を回避することができる)。
【0003】
「気管内チューブ」は大きな成功を収めたものの、いくつかの大きな欠点がある。気管内チューブの主な欠点としては、チューブの適切な挿入が困難であるという点である。患者に気管内チューブを挿入する手順は、高度の技術を必要とする処置であり、熟練した開業医であっても、気管内チューブを挿入することが困難であったり、不可能であったりする。気管内チューブの挿入が困難であることが原因で、迅速に気道を確保することができなかったため患者を死に導いたケースも少なくない。また、一般に、気管内チューブを挿入するには患者の頭部と頸部とを上手く扱い、該患者のあごを強制的に大きく開かせることが必要とされる。しかし、頸部損傷を患っている可能性のある患者に対しては、このように気管内チューブを挿入することが不可能もしくは好ましくないものとなってしまう。
【0004】
このような気管内チューブとは対照的に、喉頭マスク気道確保器具を患者に挿入して患者の気道を確保することは、比較的容易なことである。また、喉頭マスク気道確保器具は、不適切に挿入された場合でもそれを“許容できる”器具となっており、不適切に挿入された場合であっても気道を確保することができる傾向にある。このようなことから、喉頭マスク気道確保器具は、“救命”器具と考えられることが多い。また、喉頭マスク気道確保器具は、患者の頭部、頚部および顎に対して比較的小さな操作で挿入することが可能である。更に、喉頭マスク気道確保器具は、気管の敏感な内面に接触することなく患者の肺を換気できるので、確保される気道のサイズは、気管内チューブによって設けられるサイズよりも著しく大きくなる。また、喉頭マスク気道確保器具は、気管内チューブと同程度に咳を妨げることはない。主としてこのような利点があるため、喉頭マスク気道確保器具は、近年、人気の増大を享受している。
【0005】
米国特許第5,303,697号および第6,079,409号には、“挿管用喉頭マスク気道確保器具”として言及できるであろう従来構成のタイプの器具の一例が記載されている。上記挿管用器具は、気管内チューブを容易に挿入するために有用である。挿管用喉頭マスク気道確保器具が患者に設置されると、該器具は後に挿入される気管内チューブの先導役としての役割を果たすことになる。このようなやり方で喉頭マスク気道確保器具を使用することによって、“ブラインド挿管”として言えるほど容易に気管内チューブを挿入することができる。また、挿管用喉頭マスク気道確保器具を挿入するには、患者の頭部、頸部および顎を少しだけ動かせばよく、一旦該器具が患者に設置されると、それ以上患者が動かさなくても上記気管内チューブを挿入することができる。このことは、気管内チューブを、挿管用喉頭マスク気道確保器具という補助器具なしに挿入する場合に必要とされた、患者の頭部、頚部および顎の比較的大きな動きとは対照的に有利である。
【0006】
多く出回っている挿管用喉頭マスク気道確保器具の1つとして、喉頭マスク会社Cyprusにより“Fastrach”として長年市販されてきた。図1Aは、従来技術のFastrach器具100の前面を示す図である。図1Bは、図1Aに示されているように矢印1B−1Bに沿って取られた、器具100の断面図である。
【0007】
器具100には、剛性をもつ気道チューブ110と、シリコン製マスク部130と、剛性をもつハンドル180と、膨張ライン190とが設けられている。ハンドル180は、気道チューブ110の近位端112近傍に取り付けられており、マスク部130は、気道チューブ110の遠位端114に取り付けられている。マスク部130には、ドーム型の後ろ板132と、膨張可能なカフ134とが設けられている。さらにマスク部130には、喉頭蓋昇降バー(an epiglo elevator bar)150も設けられている。該バー150の一端152は、後ろ板132に取り付けられている。そして、もう一方の端154は、“自由に動く”ものであるか、または上記器具のいかなる部分にも取り付けられていない状態となっている。バー150は、実際には上記マスク部の余っている部分にヒンジ留めされている。なお、図1Aおよび図1Bは、静止位置(すなわち、バー150に外力が作用していない場合にバー150が取る位置)にあるバー150を示している。
【0008】
実際、器具を操作するときには、カフ134を収縮させた状態で、マスク部を患者の口から咽頭に挿入する。一方、気道チューブの近位端112およびハンドル180は、患者の口の外に残される。ハンドル180は、上記器具を操作するために使用することができる。その後、収縮させていたカフ134を膨張させ、患者の声門基開口部周辺を密閉する。器具100がこのように配置されることによって、該器具の遠位開口部117(図1Aに図示)と、患者の声門基開口部とが位置合わせされ、上記器具によって気道チューブ110の近位端112から患者の気管へ伸びる密閉された気道が確保されたことになる。喉頭蓋昇降バー150が図1Aおよび図1Bに示されている静止位置にある場合は、バー150によって、患者の喉頭蓋が、膨張したカフと後ろ板とによって規定された‘椀’に落ち込むことを防ぐことができ、よって、上記器具によって確保された気道の通路を喉頭蓋が閉塞させることを防ぐことができる。図1Cは、気管内チューブ195が装置100を通して挿入されている状態を示した図である。気管内チューブ195の遠位端196は上記気道チューブの近位端112に挿入され、その後気管内チューブ195は、遠位端196がマスク部130に達し、そしてマスク部130を突き抜けるまで前進する。すなわち、図示されているように、気管内チューブ195の遠位端196がマスク部を突き抜けているということは遠位端196はバー150の遠位端(“自由”端)154を静止位置から移動させていることになる。
【0009】
図1Bに示されているように、気道チューブ110は近位半径116から遠位半径118へ伸びる曲線領域を規定しており、半径116と半径118とは曲線の中心Cで交わっている。図1Bおよび図1Cに示されているように、後ろ板132は傾斜面140を規定している。気道チューブ110の曲線と傾斜面140とによって上記気管内チューブのブラインド挿管が可能になる。つまり、器具100が患者に挿入されると、気道チューブの曲線と斜面とによって、次に挿入される気管内チューブの遠位端が器具100の遠位開口部を通過する際に気管と位置合わせされることが保証される。半径116および半径118によって規定される角θは、約120度である。上記器具を通して挿入される気管内チューブが約137度湾曲するように、傾斜面140はこの曲線にさらに約17度の角度を加える。
【0010】
上記Fastrachは再利用可能な器具であり、使い古されて再利用不可能になるまで何度も殺菌され(および再利用され)得る。Fastrachはきわめて上手く機能しているが、それでも更に改善された挿管用喉頭マスク気道確保器具が必要とされている。そこで、本発明の目的はそのような器具を提供することにある。
【0011】
本発明によれば、内部通路に気管内チューブを受け入れ可能な、近位端から遠位端へ伸びる気道チューブと、患者の口を通して該患者の体内の挿入位置に挿入できるように構成されており、該挿入位置にて膨張すると患者の声門開口部を取り囲むように構成されている膨張可能なカフ、及び上記内部通路に液体を伝達するための開口部を有した、上記気道チューブの上記遠位端に連結しているマスク部とを備えた喉頭マスク気道確保器具であって、さらに、使用者が遠隔観察できるように上記気道チューブの上記遠位端に隣接配設された遠位端と、近位端とを有した光ファイバー観察手段を備えている喉頭マスク気道確保器具を提供することができる。
【0012】
このように、上記喉頭マスク気道確保器具には、気管内チューブを喉頭マスク気道確保器具を通して挿入する前に喉頭マスク気道確保器具の遠位端が患者の気管と適切に位置合わせされていることを医師が保証できるようにするための光学システムが含まれている。
【0013】
なお、気道内チューブは、上記喉頭マスク気道確保器具が使い捨ての器具としても使用できるように、スチールの代わりに例えばプラスチックのような安価な材料で製造することができる。
【0014】
また、上記マスク部は、開口部が設けられているとともに、静止位置および開放位置に移動できるように構成されている喉頭蓋昇降バーを有しており、上記光ファイバー観察手段は、上記バーの上記開口部を通して、遠隔領域の状態を観察できるように構成されている。
【0015】
上記光ファイバー観察手段の遠位端には、レンズが設けられており、上記レンズは、上記内部通路に挿入される上記気管内チューブと接触しないように、上記内部通路から所定の間隔を有して配設されていることが好ましい。このことは、上記チューブを挿入または引き出す際に上記レンズによって上記チューブに損傷を与えることを防止することに役立つ。
【0016】
また、上記マスク部は、傾斜面が設けられた後ろ板を有しており、上記傾斜面は、上記内部通路に挿入された上記気管内チューブを支持するための支持面を構成していることが好ましい。このことは、該チューブの挿入の簡易化に役立つ。そして、上記傾斜面には、通路が形成されており、上記通路内を通って光ファイバーが伸びていることが好ましい。
【0017】
上記喉頭マスク気道確保器具は、上記内部通路にある上記気管内チューブから遊離した物質が上記レンズに接触することを防ぐための防止手段を備えていることが好ましい。具体的には、上記防止手段は、上記気管内チューブを上記内部通路を通して挿入する際に該気管内チューブからこすり落とされた物質が上記レンズに接触することを防ぐように構成されていることが好ましい。また別の、もしくは、加えて、上記防止手段は、上記気管内チューブを上記内部通路から引き出す際に該気管内チューブからこすり落とされた物質が上記レンズに接触することを防ぐように構成されていてもよい。また、上記防止手段には、上記レンズと上記内部通路との間に配置された少なくとも1つの切り込み部が設けられていることが好ましい。また、上記切り込み部は、上記後ろ板と一体化していてもよい。
【0018】
さらには、上記切り込み部は、上記後ろ板上に配設された軸つばによって規定されており、上記光ファイバー観察手段の上記レンズは、上記軸つばに形成された開口部を通って配設されていることが好ましい。
【0019】
本発明のさらなる目的および利点は、あくまでも本発明の最良の形態を説明することを目的としていくつかの実施形態を図示し説明している以下の詳細な説明および図面によって、当業者には直ちに明らかにされるであろう。
【0020】
図1Aは、従来技術の喉頭マスク気道確保器具を示す前面図である。
【0021】
図1Bは、図1Aに示されている切断線1B−1Bによる喉頭マスク気道確保器具の断面図である。
【0022】
図1Cは、図1Aに示された喉頭マスク気道確保器具を通して挿入されている気管内チューブを示す図である。
【0023】
図2Aは、本発明に係る挿管用喉頭マスク気道確保器具の構成を示す前面図である。
【0024】
図2Bは、図2Aに示されている切断線2B−2Bによる喉頭マスク気道確保器具断面図である。
【0025】
図2Cは、図2Bに示されている切断線2C−2Cによる喉頭マスク気道確保器具断面図である。
【0026】
図2Dは、図2Bに示されている点線の円2Dで囲まれた部分を示す喉頭マスク気道確保器具の部分拡大図である。
【0027】
図3は、本発明に係る挿管用喉頭マスク気道確保器具を通して挿入されている気管内チューブを示す図である。
【0028】
図2Aは、本発明に係る、使い捨ての挿管用喉頭マスク気道確保器具200の構成を示す前面図である。図2Bは、図2Aに示す切断線2B−2Bによる器具200の断面図である。図2Cは、図2Bに示す切断線2C−2Cによる器具200の断面図である。図2Dは、図2Bに示されている器具200の点線の円2Dで囲まれた部分の拡大図である。
【0029】
器具200には、剛性をもつ気道チューブ210と、シリコン製マスク部230と、剛性をもつハンドル280と、膨張ライン290とが設けられている。ハンドル280は、気道チューブ210の近位端212近傍に取り付けられている。マスク部230は、気道チューブ210の遠位端214に取り付けられている。マスク部230には、ドーム型の後ろ板232と、膨張可能なカフ234とが設けられている。さらにマスク部230には、喉頭蓋昇降バー250も設けられている。該バー250の一端252は、後ろ板232に取り付けられている。そして、もう一方の端254は“自由に動く”ものであるか、または上記器具のいかなる部分にも取り付けられていない状態となっている。気道チューブ210は、図2Bに示されているように、近位半径216から遠位半径218へ伸びる曲線領域を規定しており、半径216と半径218とは曲線の中心Cで交わっている。図2Bおよび図2Cに示されているように、後ろ板232は傾斜面240を規定している。従来技術の器具100と同様に、半径216および半径218によって規定される角θは約120度であり、傾斜面240がこの曲線にさらに約17度の角度を加える。なお、上記器具は、患者の大小に併せて適用できるように、異なる大きさのマスク部分を気道チューブに取り付けることもでき、これらのマスク部分の斜面も約17度湾曲させることができる。
【0030】
図2Cに示すように、気道チューブ210は中心気道通路215を規定している。中心気道通路215は上記チューブの近位端212から遠位端214へ伸びている。器具20が患者に挿入され、カフ234が膨張すると、カフ234は声門基開口部周辺を密閉し、中心気道通路215が患者の肺に通じる。器具200が患者に挿入されると、ハンドル280と、気道チューブの近位端212とは患者の口の外側に残され、上記器具によって、気道チューブの近位端212から通路215を通って患者の声門開口部へ伸びる密閉された気道が確保される。
【0031】
図1A〜図1Bと図2A〜図2Bとを比較すると、器具200は、器具100と共通する多くの特徴を有するということがわかる。上記器具は両方ともシリコン製マスク部、剛性のある気道チューブ、および剛性のあるハンドルを備えている。しかしながら、再利用可能な器具100が剛性のある気道チューブおよび剛性のあるハンドルを備えているのに対して、器具200は使い捨てであり、プラスチック(例えばポリカーボネイト)製の気道チューブ210およびプラスチック(例えばポリカーボネイト)製のハンドル280を備えている。器具200の気道チューブ210およびハンドル280は、例えばポリカーボネイトのような剛性材料で製造されることが好ましい。スチールの代わりに硬質プラスチックで製造されているため、気道チューブ210の壁は気道チューブ110の壁よりも厚く、図2Cに示されている気道チューブ210の壁の厚さTは約1.9mmである。また、図2Cに示されているチューブ210によって規定される気道通路215の直径Dは、約12.2mmである。
【0032】
器具100と器具200とのもう1つの大きな違いは、器具200にはファイバー光学システム300が設けられている点である。ファイバー光学システム300には、近位端312から遠位端へ伸びる光ファイバー束310が設けられている。そして、該光ファイバーの遠位端には、レンズ314が取り付けられている。器具200が患者に挿入されると、束310の近位端312は患者の口の外側に残され、一般的な表示装置(例えばスクリーンまたは接眼レンズ)に接続され得る。レンズ314は傾斜面240の近傍に配置される。
【0033】
一般的に上記気道チューブの曲線および上記斜面の形状によって気管内チューブのブラインド挿管が容易になるが、ファイバー光学システム300の有利な点は、器具200の遠位端において患者の生体組織を見ることができるという点である。このことによって、器具200を通して気管内チューブを挿入しようとする前に上記器具の遠位端と、患者の声門開口部との位置合わせを調節するということが可能になる。光ファイバーの映像から、上記器具の遠位端と患者の声門開口部とが正確に位置合わせされていないと判断されると、ハンドル280を使用して器具200の位置を微調整することができる。これにより、気管内チューブを挿入することも容易になる。このことは、遠位端が1平面内で屈曲することが可能である光ファイバー・ケーブル自体に設けられた高価な装置によって声門開口部を模索し識別していた従来の器具とは比較して有利である。
【0034】
図2Cに明確に示されているように、気道チューブ210は、中心気道通路215に加えて、切り込み部219も規定している。切り込み部219は、チューブ210の壁およびその外側に規定されており、気道通路215とは連通していない。切り込み部219は光ファイバーの束310の一部を収納することができる。図2Bに示されているように、切り込み部219は上記気道チューブ上の位置330から傾斜面240へ伸びている。位置330は、ハンドル280とチューブ210との接合点の近傍にあり、その接合点と上記チューブの遠位端との間にある。上述したように、光ファイバーの束310は、近位端312からレンズ314へ伸びている。束310の接続されていない部分は近位端312から、ハンドル280によって規定された孔282を通って、位置330へ伸びており、束310の“収納された”または“保護された”部分は位置330からレンズ314へ伸びている。
【0035】
また、図2Aおよび図2Dに最もよく示されているように、喉頭蓋昇降バー250は“パドル形”であり、その遠位端254は開口部256を規定している。バー250がその静止位置にある場合(すなわち、カフ234が膨張し、バー250に外力が作用していない場合)に、上記レンズによってもたらされる視界をバー250がふさがないようにファイバー光学システム300のレンズ314は開口部256と位置合わせされている。
【0036】
図2Cでは、気道チューブ210の先端は340で示されている。先端340は、上記器具が患者に挿入されたときに患者の上歯と接触するであろうチューブの先端である。図2Cに示されているように、切り込み部219は、患者の歯が光ファイバーの束310と接触したりそれを損傷したりしないということを保証するために、位置330近傍の上記気道チューブの領域で先端340からオフセットされている。切り込み部219は位置330近傍で上記先端からオフセットされているが、切り込み部219がマスク部に向かって上記チューブを下向きに通っているため、切り込み部219によって、図2Aおよび図2Dに示されているように喉頭蓋昇降バー250でレンズ314を中央にして開口部256と位置合わせされることが保証される。
【0037】
光ファイバー束310は、一般に2組のファイバーを有している。そのうち1組は、患者の生体組織に光を当てるために近位端312から上記レンズへ光を届けるためのものである。そしてもう1組は、上記患者の生体組織が見えるようにするために、レンズ314によって受け取られた光を上記近位端に戻すためのものである。図示された実施形態では、両方のファイバーの組が1つの切り込み部219を通って伸びている。しかしながら、上記気道チューブは2つの切り込み部を規定することもでき、ファイバーの各組がそれぞれ個別の切り込み部に収納され得るということが理解されるであろう。そのような実施形態では、傾斜面240を通って伸びる1つの開口部に両方のファイバーの組およびレンズが収納できるように、上記切り込み部は傾斜面240で交わり得る。
【0038】
図2Dに最もよく示されているように、装置300には、軸つば360も設けられている。軸つば360は、傾斜面240の遠位端に対して配置され、束310の遠位部およびレンズ314を収納する。軸つば360は後ろ板部分230と一体化された部分として製造することもできる。マスク部230には、ドーム型の後ろ板232、傾斜面240、軸つば360、およびカフ234が設けられており、例えばインジェクション形成によって単独の一体構造の部分として製造することもできる。
【0039】
図3は、器具200を通して挿入されている気管内チューブ195を示す図である。軸つば360によって実行される好適な機能の1つとしては、気管内チューブ195が常にレンズ314から一定の距離を置いて配置されていることを保証していることである。典型的にはレンズ314は鋭い直角の面を規定していることから、該レンズ314が、気管内チューブ195のカフと接触したりそれによってカフを裂いたりしないようにレンズ314を気管内チューブ195から一定の距離を置いて配置することが好ましい。また図2Dを参照すれば、支持面242から伸びるラインから距離Dの分だけ離れてレンズ314が配置されていることが、軸つば360によって保証されている。距離Dは約2mmとすることができる。
【0040】
束310の遠位端およびレンズ314を収納するための中央開口部を規定することに加えて、軸つば360は第1切り込み部370および第2切り込み部380をも規定している。第1切り込み部370および第2切り込み部380は、レンズ314の保護に役立つものである。気管内チューブ195が図3に示されているような挿管器具を通して挿入される前に、潤滑油が気管内チューブ195のカフに塗布されることが多い。この潤滑油がレンズ314に落ちてレンズ314によって得られる視野を遮ることを避けることが好ましい。気管内チューブ195は器具200を通して挿入されているため、切り込み部370がチューブ195からこすり落とされ得る潤滑油を回収し、したがって、潤滑油がレンズ314の上に落ちることが避けられる。同様に、気管内チューブ195は器具200を通って引き出されるため、切り込み部380がチューブ195からこすり落とされ得る潤滑油を回収し、従ってここでも、潤滑油がレンズ314の上に落ちることが避けられる。1つの気管内チューブを引き出し、かつそれからもう1つを挿入することが必要な場合があるため、気管内チューブを引き出す際に該チューブからこすり落とされ得る潤滑油からレンズ314を守ることが好ましい。
【0041】
切り込み部380の垂直端は、軸つば360の遠位端から約2.5mmの間隔を取って配置することもできる。切り込み部370の近位端を規定する上記垂直端は、軸つば360の上記遠位端から約5mmの間隔を取って配置され得る。切り込み部370および切り込み部380の深さは約1.5mmとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1A】図1Aは、従来技術の喉頭マスク気道確保器具を示す前面図である。
【図1B】図1Bは、図1Aに示されている直線1B−1B断面図である。
【図1C】図1Cは、図1Aに示された器具を通して挿入されている気管内チューブを示す図である。
【図2A】図2Aは、本発明に係る挿管用喉頭マスク気道確保器具の構成を示す前面図である。
【図2B】図2Bは、図2Aに示されている直線2B−2B断面図である。
【図2C】図2Cは、図2Bに示されている直線2C−2C断面図である。
【図2D】図2Dは、上記器具の図2Bに示されている点線の円2Dで囲まれた部分を示す拡大図である。
【図3】図3は、本発明に係る挿管用喉頭マスク気道確保器具を通して挿入されている気管内チューブを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部通路に気管内チューブを受け入れ可能な、近位端から遠位端へ伸びる気道チューブと、
患者の口を通して該患者の体内の挿入位置に挿入できるように構成されており、該挿入位置にて膨張すると患者の声門開口部を取り囲むように構成されている膨張可能なカフ、及び上記内部通路に液体を伝達するための開口部を有した、上記気道チューブの上記遠位端に連結しているマスク部とを備えた喉頭マスク気道確保器具であって、
さらに、使用者が遠隔観察できるように上記気道チューブの上記遠位端に隣接配設された遠位端と、近位端とを有した光ファイバー観察手段を備えていることを特徴とする喉頭マスク気道確保器具。
【請求項2】
上記マスク部は、開口部が設けられているとともに、静止位置および開放位置に移動できるように構成されている喉頭蓋昇降バーを有しており、
上記光ファイバー観察手段は、上記バーの上記開口部を通して、遠隔領域の状態を観察できるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の喉頭マスク気道確保器具。
【請求項3】
上記光ファイバー観察手段の遠位端には、レンズが設けられており、
上記レンズは、上記内部通路に挿入される上記気管内チューブと接触しないように、上記内部通路から所定の間隔を有して配設されていることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の喉頭マスク気道確保器具。
【請求項4】
上記マスク部は、傾斜面が設けられた後ろ板を有しており、
上記傾斜面は、上記内部通路に挿入された上記気管内チューブを支持するための支持面を構成していることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の喉頭マスク気道確保器具。
【請求項5】
上記傾斜面には、通路が形成されており、
上記通路内を通って光ファイバーが伸びていることを特徴とする請求項4に記載の喉頭マスク気道確保器具。
【請求項6】
上記内部通路にある上記気管内チューブから遊離した物質が上記レンズに接触することを防ぐための防止手段を備えていることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の喉頭マスク気道確保器具。
【請求項7】
上記防止手段は、上記気管内チューブを上記内部通路を通して挿入する際に該気管内チューブからこすり落とされた物質が上記レンズに接触することを防ぐように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の喉頭マスク気道確保器具。
【請求項8】
上記防止手段は、上記気管内チューブを上記内部通路から引き出す際に該気管内チューブからこすり落とされた物質が上記レンズに接触することを防ぐように構成されていることを特徴とする請求項6または7のいずれか1項に記載の喉頭マスク気道確保器具。
【請求項9】
上記防止手段は、上記レンズと上記内部通路との間に配置された少なくとも1つの切り込み部を有していることを特徴とする請求項6から8の何れか1項に記載の喉頭マスク気道確保器具。
【請求項10】
上記切り込み部は、上記後ろ板と一体化していることを特徴とする請求項9に記載の喉頭マスク気道確保器具。
【請求項11】
上記切り込み部は、上記後ろ板上に配設された軸つばによって規定されており、
上記光ファイバー観察手段の上記レンズは、上記軸つばに形成された開口部を通って配設されていることを特徴とする請求項9に記載の喉頭マスク気道確保器具。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−521100(P2007−521100A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525673(P2006−525673)
【出願日】平成16年8月18日(2004.8.18)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009259
【国際公開番号】WO2005/023350
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(505269629)ザ ラリンジアル マスク カンパニー リミテッド (14)