説明

光ファイバ保持部材

【課題】複数の光ファイバテープ心線を集合して保持するにあたって、光ファイバテープ心線を精度よく位置決めでき、かつ光ファイバテープ心線の位置の再調整が可能となる光ファイバ保持部材を提供する。
【解決手段】積層された複数の光ファイバテープ心線4に装着される保持基体2と、保持基体2に開閉自在に取り付けられた蓋部3とを備えた光ファイバ保持部材1。保持基体2は、光ファイバテープ心線4を受容する本体部5と、本体部5から延出して複数の光ファイバテープ心線4の一側部4aに当接する押さえ片6とを有する。蓋部3には、蓋部3を閉じた状態としたときに押さえ片6を内方に押圧することによって、光ファイバテープ心線4の一側部4aを他側方に向けて押圧する押圧部6が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバテープ心線を整列して保持する光ファイバ保持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバテープ心線は、複数積層した状態で、熱収縮チューブからなる光ファイバ保持部材により集合して用いられることがある。これによって、光ファイバテープ心線の取り扱いが容易になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−139634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記熱収縮チューブからなる保持部材は、使用にあたって高温に加熱することが必要となるため、客先での作業が難しいという問題がある。
また、前記保持部材は、いったん収縮させると緩めることはできないため、この保持部材により集合させた後の光ファイバテープ心線の位置の再調整は難しい。このため、製品出荷時に光ファイバテープ心線を高精度に位置決めすることが必要であり、再調整が可能となる保持部材が要望されている。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、複数の光ファイバテープ心線を集合して保持するにあたって、光ファイバテープ心線を精度よく位置決めでき、かつ光ファイバテープ心線の位置の再調整が可能となる光ファイバ保持部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1にかかる発明は、積層された複数の光ファイバテープ心線に装着される保持基体と、前記保持基体に開閉自在に取り付けられた蓋部とを備え、前記保持基体は、前記光ファイバテープ心線を受容する本体部と、前記本体部から延出して前記複数の光ファイバテープ心線の一側部に当接する押さえ片とを有し、前記蓋部には、この蓋部を前記保持基体に対し閉じた状態としたときに前記押さえ片を内方に押圧することによって、前記光ファイバテープ心線の一側部を他側方に向けて押圧する押圧部が形成されている光ファイバ保持部材を提供する。
本発明の請求項2にかかる発明は、請求項1において、前記蓋部の押圧部によって前記押さえ片が内方に押圧されることによって、前記光ファイバテープ心線が前記本体部に向けて押圧される光ファイバ保持部材である。
本発明の請求項3にかかる発明は、請求項1または2において、前記蓋部が、前記本体部に対し回動自在にヒンジ結合され、前記回動により前記保持基体に対し開閉する光ファイバ保持部材である。
本発明の請求項4にかかる発明は、請求項3において、前記蓋部が、前記回動により閉止状態とする際に、前記押圧部が前記押さえ片に沿う方向に移動して前記押さえ片に重なった状態となって前記押さえ片を押圧する光ファイバ保持部材である。
本発明の請求項5にかかる発明は、請求項3において、前記蓋部が、前記回動により閉止状態とする際に、前記押圧部が前記押さえ片に交差する方向に移動して前記押さえ片に重なった状態となって前記押さえ片を押圧する光ファイバ保持部材である。
本発明の請求項6にかかる発明は、請求項1において、前記押さえ片が、前記本体部の両側部に設けられ、前記蓋部を前記保持基体に対し閉じた状態としたときに前記押さえ片が内方に押圧されることによって、前記光ファイバテープ心線を両側方から押圧する光ファイバ保持部材である。
本発明の請求項7にかかる発明は、請求項1〜6のうちいずれか1項において、前記押さえ片が、弾性的に曲げ変形可能とされている光ファイバ保持部材である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、蓋部を閉止状態とすることによって、押圧部が押さえ片を内方に押圧し、押さえ片が光ファイバテープ心線の一側部を他側方に押圧する。
このため、光ファイバテープ心線は幅方向の位置が揃った状態で精度よく位置決めされて集合される。
本発明では、熱収縮チューブと異なり、加熱の必要がなく、加熱による高温で光ファイバテープ心線に悪影響が及ぶ心配がない。
また、蓋部を回動させて開放状態とすると、押さえ片による押圧力が弱まるため、光ファイバテープ心線を長さ方向に移動させるのが容易になり、その長さ方向位置の調整を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第1の実施形態である光ファイバ保持部材を示す斜視図である。
【図2】光ファイバ保持部材を示す斜視図である。
【図3】光ファイバ保持部材を下方側から見た斜視図である。
【図4】光ファイバ保持部材の下面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態である光ファイバ保持部材を示す下面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態である光ファイバ保持部材を示す下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の第1の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は本発明の第1の実施形態である光ファイバ保持部材1を示す斜視図であり、蓋部3を開放した状態を示す。図2は光ファイバ保持部材1を示す斜視図であり、蓋部3を閉じた状態を示す。図3は光ファイバ保持部材1を斜め下方から見た斜視図である。図4は光ファイバ保持部材1を示す下面図である。
【0009】
図1および図2に示すように、光ファイバ保持部材1は、光ファイバテープ心線4(リボンファイバ)に装着される保持基体2と、保持基体2に取り付けられた蓋部3とを備えている。
以下の説明において、図1に示す保持基体2の一端方向および他端方向をそれぞれ前方および後方という。
図1に示すように、保持基体2は、光ファイバテープ心線4を受容する本体部5と、本体部5から延出する押さえ片6とを有する。
【0010】
本体部5は、一端筒部7と、その後方に設けられた断面U字形の受け部8と、その後方に設けられた他端筒部9とからなる。
図1および図3に示すように、一端筒部7は、底板7aと、その両側縁に立設された側板7b、7bと、これらの上縁に設けられた天板7cとからなる断面略矩形の筒体である。
側板7b、7bの外面には、蓋部3の係止凹部11が係止する係止凸部12が形成されている。
【0011】
受け部8は、底板8aと、その一側縁に立設された側板8bと、その上縁に設けられた天板8cとからなる断面U字形に形成されている。
他端筒部9は、底板9aと、その両側縁に立設された側板9b、9bと、これらの上縁に設けられた天板9cとからなる断面略矩形の筒体である。
側板9b、9bの外面には、蓋部3がヒンジ結合されるヒンジ部13が設けられている。
【0012】
図1、図3および図4に示すように、受け部8の底板8aの幅寸法(前後方向に対し垂直な方向の寸法)は、底板7a、9aの幅寸法より小さい。天板8cの幅寸法は、天板7c、9cの幅寸法より小さい。図示例では、底板8aおよび天板8cの幅寸法は、底板7a、9aおよび天板7c、9cの幅寸法の約半分となっている。
このため、底板7a〜9aから構成される本体部5の底板5aは、長さ方向中央を含む部分の一方の側部に矩形状の切り欠き5dが形成された形状である。
同様に、天板7c〜9cから構成される天板5cも、長さ方向中央を含む部分の一方の側部に矩形状の切り欠き5eが形成された形状である。
この切り欠き5d、5e部分は側板もないため、この本体部5の切り欠き5f(底板、天板および側板の切り欠き)によって光ファイバテープ心線4の一側部4aが本体部5外に露出した状態となっている。
【0013】
底板5aおよび天板5cは、互いに平行に形成されており、側板7b〜9bから構成される側板5bの内面は、底板5aおよび天板5cに対し垂直(または略垂直)とするのが好ましい。
【0014】
押さえ片6は、他端筒部9の一方の側板9bの前端から傾斜しつつ前方に延びる傾斜部6aと、傾斜部6aの先端から前方に延びる当接部6bとからなる。
傾斜部6aは、前方に向けて受け部8に近づく方向に傾斜している。
当接部6bは、本体部5とほぼ同じ高さ寸法を有する板状とされ、その内面は底板5aおよび天板5cに対し垂直(または略垂直)とするのが好ましい。
当接部6b内面を底板5aおよび天板5cに対し垂直(または略垂直)とすると、この内面は本体部5の側板5bの内面に対し平行(または略平行)となる。
押さえ片6は、先端が受け部8に接近および離間する方向に弾性的に曲げ変形可能であることが好ましい。押さえ片6は、本体部5に光ファイバテープ心線4を挿通した際に、当接部6bが光ファイバテープ心線4の一側部4aに当接できるように形成されている。
押さえ片6は、当接部6bが光ファイバテープ心線4を軽く側方に押圧するようにしてもよい。
押さえ片6の外面の上部には、上縁に向かって内面に近づくように傾斜する傾斜面6cが形成されていることが望ましい。
【0015】
本体部5の内面、例えば底板5a、天板5c、側板5b、押さえ片6等の内面には、ゴムなどの樹脂からなる滑止層を形成すると、光ファイバテープ心線4の位置ずれを防ぐことができるため好ましい。
【0016】
蓋部3は、天板3aと、その両側縁から垂下する側板3b、3bとを備えており、側板3b、3bの後端付近に形成されたヒンジ部13を支点として保持基体2に対し回動可能とされており、図1に示す保持基体2に対し開放した状態と、図2に示す保持基体2に対し閉じた状態との間で回動可能である。
ヒンジ部13は、蓋部3の側板3b、3bの凸部が本体部5の側板9b、9bの凹部に嵌合する構造であってもよいし、側板3b、3bの凹部が側板9b、9bの凸部に嵌合する構造であってもよい。
ヒンジ部13は側板3b、9bに設けられているため、回動する蓋部3は押さえ片6に沿う方向に移動する。
【0017】
図3および図4に示すように、一方の側板3bの内面には、内方に膨出する押圧部14が設けられている。図示例の押圧部14は、側板3bを厚肉化することで形成されている。
押圧部14の膨出高さは、押さえ片6の当接部6bを内方に押圧可能となるように設定される。
押圧部14は、当接部6bを含む高さ範囲および長さ範囲に形成され、当接部6bの全体を押圧可能とするのが好ましい。
【0018】
図2および図3に示すように、側板3bの前端近傍には、蓋部3を閉じた状態で一端筒部7の係止凸部12に係合する係止凹部11が形成されている。
【0019】
次に、光ファイバ保持部材1の動作について説明する。
図1に示すように、積層した複数の光ファイバテープ心線4を本体部5に挿通させることにより、保持基体2を光ファイバテープ心線4に装着する。光ファイバテープ心線4は、底板5aおよび天板5cに平行な状態で本体部5に受容される。
押さえ片6の当接部6bは、複数の光ファイバテープ心線4の一側部4aに当接する。
【0020】
図2に示すように、蓋部3を本体部5に向けて回動させて閉止状態とする過程では、蓋部3の一方の側板3bは押さえ片6に沿って移動し、押圧部14が押さえ片6に重なった状態となる。
蓋部3が回動させる過程では、例えば、押圧部14が当接部6bの傾斜面6cに当接し、蓋部3をさらに回動させることで押圧部14が傾斜面6cの傾斜に従って当接部6bを内方に押圧する。
蓋部3は、保持基体2に沿う方向まで回動させ、係止凹部11を本体部5の係止凸部12に係止させることによって、保持基体2に対する閉止状態が維持される。
【0021】
この閉止状態では、蓋部3の押圧部14が押さえ片6の当接部6bの外面を内方に(すなわち本体部5に向けて)押圧し、これによって、当接部6bが光ファイバテープ心線4の一側部4aを他側方に(すなわち本体部5に向けて)押圧する。
上述のように、当接部6bの内面は、本体部5の側板5b内面に平行であるため、光ファイバテープ心線4は、当接部6bと側板5bとの間で幅方向の位置が揃った状態で精度よく位置決めされて集合される。
この光ファイバ保持部材1は、熱収縮チューブと異なり、加熱の必要がなく、加熱による高温で光ファイバテープ心線4に悪影響が及ぶ心配がない。
【0022】
図1に示すように、係止凸部12に対する係止凹部11の係合を外すとともに、蓋部3を上方に回動させて開放状態とすると、押さえ片6による押圧力が弱まるため、光ファイバテープ心線4を長さ方向に移動させるのが容易になり、その長さ方向位置の調整を容易に行うことができる。
【0023】
図5は、本発明の第2の実施形態である光ファイバ保持部材21を示すもので、この光ファイバ保持部材21は、本体部5の両側部に、切り欠き5f(底板、天板および側板の切り欠き)が形成されている。
他端筒部9の両側板9b、9bには、それぞれ押さえ片6、6が設けられ、これら押さえ片6、6はそれぞれ光ファイバテープ心線4の両側部に当接可能である。
蓋部3の両側板3b、3bの内面には、それぞれ押圧部14、14が形成され、これらは当接部6b、6bを内方に押圧可能となっている。
光ファイバ保持部材21では、光ファイバテープ心線4が当接部6b、6bにより両側方から押圧されるため、精度よく位置決めできる。
【0024】
図6は、本発明の第3の実施形態である光ファイバ保持部材31を示すものである。
この光ファイバ保持部材31では、蓋部33は、底板33aと、その一側縁に立設された側板33bと、その上縁に設けられた天板33cとを備えている。
蓋部33は、底板33aおよび天板33cに設けられたヒンジ部13において、本体部5の底板9aおよび天板9cに連結されており、仮想線で示す開放状態から実線で示す閉止状態の間で側方に回動可能である。
【0025】
蓋部33は、側板33bの内面に押圧部14が形成されており、蓋部3を回動させて閉止状態とする過程では、蓋部3の側板33bは押さえ片6に交差する方向(図中矢印方向)に移動して押圧部14が押さえ片6に重なった状態となる。
この閉止状態にあっては、押圧部14が押さえ片6の当接部6bの外面を内方に押圧することによって、当接部6bが光ファイバテープ心線4の一側部4aを他側方に(すなわち本体部5に向けて)押圧し、これによって、光ファイバテープ心線4は幅方向の位置が揃った状態で精度よく位置決めされて集合される。
【0026】
この際、底板33aおよび天板33cに形成された係止凹部11は、一端筒部7の底板7aおよび天板7cに形成された係止凸部12に係止し、これによって蓋部3の閉止状態が維持される。
光ファイバ保持部材31では、蓋部3の押圧部14が、押さえ片6を略側方から押圧するため、押さえ片6に無理な力が加えられず、蓋部3の閉動作がスムーズになる。
【符号の説明】
【0027】
1、21、31・・・光ファイバ保持部材、2・・保持基体、3、33・・・蓋部、4・・・光ファイバテープ心線、5・・・本体部、6・・・押さえ片、13・・・ヒンジ部、14・・・押圧部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の光ファイバテープ心線に装着される保持基体と、前記保持基体に開閉自在に取り付けられた蓋部とを備え、
前記保持基体は、前記光ファイバテープ心線を受容する本体部と、前記本体部から延出して前記複数の光ファイバテープ心線の一側部に当接する押さえ片とを有し、
前記蓋部には、この蓋部を前記保持基体に対し閉じた状態としたときに前記押さえ片を内方に押圧することによって、前記光ファイバテープ心線の一側部を他側方に向けて押圧する押圧部が形成されていることを特徴とする光ファイバ保持部材。
【請求項2】
前記蓋部の押圧部によって前記押さえ片が内方に押圧されることによって、前記光ファイバテープ心線が前記本体部に向けて押圧されることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ保持部材。
【請求項3】
前記蓋部は、前記本体部に対し回動自在にヒンジ結合され、前記回動により前記保持基体に対し開閉することを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバ保持部材。
【請求項4】
前記蓋部は、前記回動により閉止状態とする際に、前記押圧部が前記押さえ片に沿う方向に移動して前記押さえ片に重なった状態となって前記押さえ片を押圧することを特徴とする請求項3に記載の光ファイバ保持部材。
【請求項5】
前記蓋部は、前記回動により閉止状態とする際に、前記押圧部が前記押さえ片に交差する方向に移動して前記押さえ片に重なった状態となって前記押さえ片を押圧することを特徴とする請求項3に記載の光ファイバ保持部材。
【請求項6】
前記押さえ片は、前記本体部の両側部に設けられ、前記蓋部を前記保持基体に対し閉じた状態としたときに前記押さえ片が内方に押圧されることによって、前記光ファイバテープ心線を両側方から押圧することを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ保持部材。
【請求項7】
前記押さえ片は、弾性的に曲げ変形可能とされていることを特徴とする請求項1〜6のうちいずれか1項に記載の光ファイバ保持部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−81311(P2011−81311A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−235394(P2009−235394)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】