説明

光ファイバ把持装置

【課題】光ファイバの研磨又は切断の際に当該光ファイバを安定に把持し、傾斜した端面を形成する場合にはその傾斜方向を認識しやすい光ファイバ把持装置を提供する。
【解決手段】光ファイバ把持装置1であって、それぞれが把持部13とハンドル12とを有する一対のアーム11、11と、各アーム11の把持部13とハンドル12との間を互いに連結する弾性を有する連結部14と、各アーム11の把持部13が挿入される溝部21が形成された把持部ホルダ20とを備える。把持部ホルダ20の溝部21の幅W2は、各把持部13の外面13b、13b間の距離よりも小さく、各把持部13の基部13cは互いに離間している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ファイバを安定に把持する光ファイバ把持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の光ファイバ敷設作業で現場組立型光コネクタ(Field Installable Optical Connector)が用いられているように、現場において作業員等が光ファイバを成端する機会が増えている。特に、組立作業性や経済的な側面から、この成端には光ファイバ同士を突合せ接続する、いわゆるメカニカルスプライスが採用されることが多い。
【0003】
メカニカルスプライスでは突合せ接続点における反射光の接続損失が問題となる。この接続損失を抑える一手法として、光ファイバ端面の斜め研磨又は斜め切断が行われることがある。この場合、両端面の傾斜方向の位相(換言すれば、光ファイバの軸から見た時の、所定の方向に対する傾斜方向の角度差)を合わせる必要があるが、周知のように光ファイバは非常に細く、目視による端面の傾斜方向の確認は困難である。そこで、光ファイバを斜めに研磨又は切断する際には、形成される端面の傾斜方向が認識できる光ファイバ把持機構が必要となる。
【0004】
図9は従来の光ファイバ把持具である。この図に示すように、光ファイバ把持具100は一対のアーム101、101と連結部102とを備え、全体が樹脂等の弾性体によって形成されている。各アーム101、101は連結部102の両端から延伸するように形成されている。連結部102の断面は略U字形であり、各アーム101、101を互いに付勢するような曲率をもつ。光ファイバ104は、アーム101、101の先端部103、103の間に挿入され、把持される。
【0005】
また、特許文献1には、二本の光ファイバを個別に保持するホルダと、各ホルダの載置する支持台が開示されている。同文献によれば、光ファイバを保持したホルダを支持台に載置して端面を研磨した後、両ホルダをそのまま支持台上で接近させることで、端面の傾斜方向の位相が一致した状態で各光ファイバが突き合わせ接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−145381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図9に示す光ファイバ把持具100は簡便な構成ではあるものの、把持力は連結部102の曲率及び弾性に依存している。従って、当該把持力が弱い場合、光ファイバの研磨又は切断の際に、光ファイバからの脱落、ずれ、或いは光ファイバを支点とした回転等の不具合が生じる可能性がある。特に、外部チューブと当該外部チューブ内に挿通された光ファイバが互いにスライド自在に構成された光ファイバ(例えば、ルースチューブ型光ファイバケーブル(Loose Tube Optical Fiber Cable))では、上記の不具合が生じやすい。
【0008】
本発明は、上記の問題を解決するために成されたものであり、光ファイバの研磨又は切断の際に当該光ファイバを安定に把持し、傾斜した端面を形成する場合にはその傾斜方向及び位置決めを認識しやすい光ファイバ把持装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は光ファイバ把持装置であって、それぞれが把持部とハンドルとを有する一対のアームと、前記各アームの把持部とハンドルとの間を互いに連結する弾性を有する連結部と、前記各アームの把持部が挿入される溝部が形成された把持部ホルダと、を備え、前記把持部ホルダの溝部の幅は前記各把持部の外面間の距離よりも小さく、前記各把持部の基部は互いに離間していることを特徴とする。
【0010】
上記の光ファイバ把持装置において、一対のアームと連結部は樹脂成形によって一体に形成されていても良い。また、各アームの把持部のうちの少なくとも一方の内面には、光ファイバを位置決めする凹部が形成されていてもよい。
【0011】
また、把持部ホルダは樹脂成形によって形成されてもよい。
【0012】
上記各アームのうちの一方は、把持部ホルダの溝部が形成される面に当接する平面を有してもよい。
【0013】
さらに、前記平面には当該平面から延伸する柱状の案内部材が形成され、把持部ホルダの溝部が形成される面には、この案内部材が挿入される案内孔が形成されていてもよい。
【0014】
さらにまた、前記案内部材の先端には、前記案内孔から前記案内部材の抜け止めを行う可撓性の係止部を設けてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、光ファイバを把持した状態で把持部ホルダの溝部に把持部を挿入することで光ファイバへの把持力が強化される。従って、光ファイバの研磨又は切断の際に光ファイバを安定に把持できる。さらに、把持された光ファイバと把持部ホルダの相対的な位置が固定されるので、形成された端面の傾斜方向及びその位置決めを容易に認識できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る光ファイバ把持装置の斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る光ファイバ把持装置の斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る把持機構と把持部ホルダの要部を示す拡大図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る光ファイバ把持装置を所定の支持台上に搭載した一例を示す側面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る把持機構の装着過程を示す工程図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る光ファイバ把持装置の斜視図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る光ファイバ把持装置の斜視図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る案内部材と案内孔の周辺を示す拡大図である。
【図9】従来の光ファイバ把持具を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に述べる光ファイバとは、あらゆる種の光ファイバを意味し、その具体的な構成(例えば被覆層の有無やその数、ルースチューブ型など)に限定されるものではない。ただし、説明の便宜上、コアとクラッドのみからなる光ファイバを「裸光ファイバ(bare optical fiber)」、裸光ファイバに樹脂等の被覆が施された光ファイバを「光ファイバ心線」と称する。従って、ルースチューブ型光ファイバは、外側チューブ内に光ファイバ心線をスライド自在に挿通させた光ファイバである。
【0018】
また、説明の便宜上、方向を次のように定義する。図1及び図6に示すように、把持機構10、50の把持部13が把持部ホルダ20、60の溝部21に挿入される方向を「下」、その反対方向を「上」、これら上下方向に垂直で且つ把持部ホルダ20、60の溝部21を垂直に跨ぐ方向を「左」および「右」と定義する。更に、これら上下左右方向を平面に垂直な方向を「前」および「後」と定義する。
【0019】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について図面を用いて説明する。図1および図2は第1実施形態に係る光ファイバ把持装置1を示す模式的な斜視図であり、図1は光ファイバ30を把持する前の状態を示す図、図2は光ファイバ30の把持が完了した状態を示す図である。図3は、第1実施形態に係る把持機構10と把持部ホルダ20の要部を示す拡大図である。
【0020】
まず本実施形態の概略を述べる。
【0021】
図1に示すように、光ファイバ把持装置1は、把持機構10と、把持機構10の把持部13、13を挟持する把持部ホルダ20とを備える。把持機構10は上下方向に対して略平行に配置された一対のアーム11、11と、その間を連結する連結部14とを備える。一方、把持部ホルダ20は、その上面23に把持部13、13を挟持する溝部21が形成されている。図2に示すように、把持部13、13は前後方向に位置する光ファイバ30を把持した後、把持部ホルダ20の上面23に形成された溝部21に挿入される。このとき、溝部21を形成する左右の壁部21a、21aの当接により、把持部13、13は互いに向かって押圧され、その結果光ファイバ30への把持力が増加する。
【0022】
以下、本実施形態に係る光ファイバ把持装置10の各部について詳細に説明する。
【0023】
アーム11、11は、それぞれが作業員等によって把持されるハンドル12と、光ファイバ30を把持する把持部13とを有する。アーム11、11は支点となる連結部14によって回転可能に互いが連結されている。ハンドル12、12が左右から押圧されると、この押圧に応じてアーム11、11は連結部14を支点に回転し、これに合わせて把持部13、13は左右に開放する。各アーム11は、前後方向に対して同一の断面を有するように形成されており(図1参照)、樹脂成形によって連結部14と一体に形成される。この樹脂は可撓性を有する。
【0024】
ハンドル12、12は、アーム11、11において連結部14が接続された箇所から上側の部分を指す。ハンドル12、12は初期状態(即ち、光ファイバ30を把持する前の把持機構10に対して、如何なる力も働いていない状態)において離間しており、例えば、図1や図5に示すように、連結部14から上方に向かって互いが徐々に離間するように形成される。あるいは、連結部14から一旦左右に延伸し、その後上方に延伸するように形成してもよい。ハンドル12、12は、手などによって挟持される部材であり、連結部14(支点)から十分に離れた位置で挟持できるよう十分に長く形成されていることが好ましい。これによりアーム11、11は連結部14とともに梃子として機能するので、把持部13、13の開放が容易になる。
【0025】
把持部13、13は、アーム11、11において連結部14が接続された箇所から下側の部分を指す。図3に示すように、把持部13、13はハンドル12、12から下方に延在している。各把持部13は基部13cは左右方向に延在してアーム11、11を連結する連結部14によって所定の間隔Gで離間している。この間隔Gは把持される光ファイバ30に外径Dよりも小さく、その典型的な値は、例えば、把持部13の内面13aに凹部15(後述)が形成された場合で、且つ、外径0.9mmの光ファイバを把持するように構成する場合には、0.5mmである。また、初期状態における把持部13、13の幅W1(即ち、左右方向における外面13b、13b間の距離)は、溝部21の幅W2(即ち、左右方向における壁部21a、21a間の距離)よりも大きい。従って、把持部13、13が後述する把持部ホルダ20の溝部21に挿入された時には、上記間隔Gと壁部21a、21aからの押圧によって、互いに向かって撓むことが可能となる。ただし、把持部13、13が溝部21に完全に挿入され撓んだ場合でも、把持部13、13の先端から基部13cに向かってその間隔が広がるような間隙は維持される。これは、上述の通り、左右方向に延在する連結部14に起因する。即ち、把持部13、13の基部13cが、間隔Gで離間しているため、連結部14近傍の各把持部13は間隔Gよりも接近できない。従って、内面13a、13aの光ファイバ30が把持される部分は常に離間するので、光ファイバ30に対する過度な把持力が抑制される。
【0026】
さらに、把持部13、13の少なくとも一方の内面13aには、前後方向に延伸する凹部15を形成してもよい。この凹部15は、把持部13、13の間に挿入された光ファイバ30を位置決めし、且つ、過度な把持による光ファイバ30の損傷を防止する。凹部15は、把持部13、13が溝部21に完全に挿入された状態において、把持部ホルダ20の溝部21内に位置する。把持部13、13は壁部21a、21aから押圧され、その結果、光ファイバ30へ把持力が増加する。なお、凹部15の内面は、前後方向に対して垂直な断面上で円弧状又はV字状に形成される。例えば、上述した外径0.9mmの光ファイバを把持するように構成する場合、間隔Gが0.5mmであるときには、凹部15の深さは約0.2mmである。
【0027】
また、把持部13、13の外面13b、13bは、挿入時の壁部21a、21aとの摩擦を低減するため滑らかに形成されていることが好ましい。
【0028】
図3に示すように、把持部13、13の各先端には斜面16、16を形成してもよい。斜面16、16は下方に向かって互いが接近するように形成され、把持部13、13の溝部21への挿入を容易にする。
【0029】
連結部14は、各アーム11のハンドル12と把持部13との間(即ち接続点P、P)を互いに連結する弾性部材であり、可撓性の樹脂によって形成される。上述したように、連結部14は、各アーム11と共に梃子として機能する。また、連結部14は把持部13、13を略平行に維持する。換言すれば、把持部13、13の相互位置が開放等によって変化したとき、連結部14は把持部13、13を初期状態の位置まで戻す機能を有する。このような機能を得るため連結部14は左右方向に延在しており、把持部13、13を左右に離間させる程度の長さを有する。さらに、把持部13、13を初期状態の位置に復元させやすくするため、連結部14は上方に湾曲していることが好ましい(図3参照)。
【0030】
図1に示すように、把持部ホルダ20は略直方体であり、その上面23に、把持部13、13を収容する溝部21を有する。溝部21は前後方向に延伸するように形成され、光ファイバ30に干渉しないよう、前後方向に開放している(図2参照)。前後方向に垂直な断面における溝部21の形状は、その形状の上下方向の中心線Oに対して線対称である(図3参照)。従って、把持部13、13が溝部21に挿入された後、把持機構10を上面23に対して垂直に起立させることが可能である。前述した通り、凹部15は把持部13、13が溝部21に完全に挿入された状態において、把持部ホルダ20の溝部21内に位置する。つまり、溝部21は、把持部13、13の挿入完了時に凹部15が溝部21内に位置するような深さを有する。なお、把持部ホルダ20は金属又は樹脂によって形成され、好適には樹脂成形によって形成される。
【0031】
壁部21a、21aは、把持部13、13の外面13b、13bに密着するように形成される。即ち、把持部13、13の溝部21への挿入後、外面13b、13bは押圧によって多少の変形を受けるものの、壁部21aと外面13bは略平行になる。なお、図1に示す例では、壁部21a、21aは上下方向に平行に形成されているが、下方に向かって互いの距離が狭くなるように形成されても良い。
【0032】
また、図1に示すように、溝部21は上方に向かって互いが離間するように形成された斜面22を上部開口面に設けても良い。上述したように、把持部13、13の幅W1は溝部21の幅W2よりも大きい。従って、各把持部13の先端が把持部ホルダ20の上面23に当接することで、把持部13、13の溝部21への挿入を干渉する可能性がある。斜面22を設けた場合、挿入の際に各把持部13の先端が斜面22に当接しても、斜面22が当該先端を溝部21内にガイドするので、円滑な挿入が可能になる。
【0033】
さらに、把持部ホルダ20の上面23と、この上面23の反対に位置する下面24は平行であることが好ましい。図4は、本実施形態に係る光ファイバ把持装置1を所定の支持台40上に搭載した一例を示す側面図である。この図に示すように、把持機構10は把持部ホルダ20の上面23に対して垂直に起立しており、光ファイバ30は回転することなく安定に把持されている。このとき、例えば、滑らかな平面を上面41として有する所定の支持台40に把持部ホルダ20が置かれたとする。光ファイバ切断具(図示せず)は、光ファイバ30の外部被覆31を除去し、裸光ファイバ33を所定の方向に斜め切断して切断面33を形成する工具である。切断面33の傾斜方向は切断時の光ファイバ切断具の向きに依存しており、この向きが支持台40の上面41に対して規定されれば、上面41に対する切断面33の傾斜方向は確定し、作業員は容易にその傾斜方向を認識できる。ここで、把持部ホルダ20の上面23と下面24が平行である場合には、把持機構10を挿入したままの状態で把持部ホルダ20を他の支持台(図示せず)に移載しても、下面24に対する切断面33の傾斜方向が規定されていることから、当該傾斜方向を容易に認識できる。この認識の容易性は、裸光ファイバ31の端面を斜め研磨する光ファイバ研磨具(図示せず)の使用においても、同様に得られる。
【0034】
本実施形態に係る光ファイバ把持装置1の使用方法について図5(a)〜(d)を用いて説明する。なお、この説明において、把持される光ファイバ30をルースチューブ型光ファイバと仮定する。図5(c)、(d)は、光ファイバ30の外側チューブの把持による変形を示しているが、当該光ファイバ30内の光ファイバ心線に支障はない。
【0035】
図5(a)に示すように、まず、把持機構10のハンドル12、12が矢印Aの方向に挟持される。この挟持によって、把持部13、13は開放する。即ち、把持部13、13は連結部14を支点として互いが離間するように回転する。次に、図5(b)に示すように、把持機構10は、光ファイバ30が把持部13、13の間に挿入され、凹部15付近に位置するまで、矢印Bが示す方向に移動する。その後、ハンドル12、12の挟持を解く。このとき、光ファイバ30は把持部13の当接によって凹部15に収容され、把持部13に対する位置が固定される。図5(b)に示す状態において、把持部13、13の把持力は連結部14の弾性のみに依存しているために弱い。従って、把持部13、13の幅W1(図3参照)は、まだ溝部21の幅W2よりも大きい。その後、把持機構10は矢印Bが示す方向にさらに移動し、把持部13、13の溝部21へ当接する(図5(c)参照)。この当接後、把持部13、13は矢印Cが示す方向に押圧され、各把持部13の内向きの変形が始まる。図5(c)に示す把持部13、13はそれぞれ斜面16を先端に有しているので、当接によって生じる挿入方向とは逆の方向への抗力が矢印Cに示す押圧力に変換される。従って、当接後も把持部13、13の溝部21への挿入は容易である。挿入を進めるに連れて、把持部13、13への壁部21a、21aから押圧は高まるが、把持部13、13が互いに離間しているので、これらは矢印Cの方向に向かって変形できる。従って、把持部13、13による把持力は上昇する。一方、把持部13の外面13bと壁部21aとの摩擦は急激に上昇することも無く、更なる挿入は可能である。その結果、把持部13、13は、その先端が溝部21の底面に接触するまで挿入され、把持機構10の把持部ホルダ20への装着が完了する(図5(d)参照)。このとき、光ファイバ30の外側チューブと光ファイバ心線が共に把持部13、13によって安定に把持されるので、ねじれ等の外力による回転やズレの発生を回避できる。さらに、把持部13、13の離間は維持されるので、過度な把持力が生じることはなく、光ファイバ30の損傷を防止できる。
【0036】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について図面を用いて説明する。
【0037】
図6および図7は第2実施形態に係る光ファイバ把持装置2を示す模式的な斜視図であり、図6は光ファイバ30を把持する前の状態を示す図、図7は光ファイバ30の把持が完了した状態を示す図である。図8は図6の案内部材と案内孔とを示す拡大図である。
【0038】
光ファイバ把持装置2は、把持機構50と、把持機構50の把持部13、13を挟持する把持部ホルダ60とを備える。把持機構50は上下方向に対して略平行に配置された一対のアーム11、51と、その間を連結する連結部14とを備える。一方、把持部ホルダ60は、その上面63に把持部13、13を挟持する溝部21が形成されている。
【0039】
図6に示すように、第2実施形態に係る光ファイバ把持装置2は、第1実施形態に係る光ファイバ把持装置1に類似している。第1実施形態に対する第2実施形態の差異は下記の通りである。
【0040】
(A)第1実施形態に係る一対のアーム11、11の一方が、第2実施形態ではアーム51に変更されている。
(B)把持機構50は案内部材54を有する。
(C)把持部ホルダ60は、第1実施形態に係る把持部ホルダ20の上面23に案内孔61を形成した構成である。
【0041】
本実施形態に係る光ファイバ把持装置2の上記以外の各部については、第1実施形態に係る光ファイバ把持装置1と同様であり、その説明及び効果については割愛する。また、図6〜8に示す光ファイバ把持装置2の各部において、第1実施形態に係る光ファイバ把持装置1と同一のものについては同じ参照符号で表す。
【0042】
上述の通り、本実施形態に係る把持装置50では、第1実施形態に係る一対のアーム11、11の一方(例えば、図1に示す右側のアーム11)が第2実施形態ではアーム51に置換されている。アーム51は、ハンドル52と、ハンドル52と一体に形成された把持部13とを有する。ハンドル52は、例えば図1に示す右側のアーム11のハンドル12の外側に肉厚部57を設けて一体に形成される。本実施形態におけるアーム51及びアーム11の連結の手法は、第1実施形態と変わらない。即ち、アーム51、11は、支点となる連結部14によって回転可能に互いが連結されている。ハンドル52、12が左右から押圧されると、この押圧に応じてアーム51、11は連結部14を支点に回転し、これに合わせて把持部13、13は左右に開放する。
【0043】
図6に示すように、肉厚部57の下面53は上下方向に対して垂直な平面として形成される。下面53は把持部ホルダ60の上面63に対向し、把持部13、13が溝部21に挿入されたときには把持部ホルダ60の上面63に当接する。この当接によって、把持機構50は把持部ホルダ60の上面63に対する垂直起立が安定になる。
【0044】
本実施形態では、肉厚部57の下面53に案内部材54を設け、把持部ホルダ60の上面63に案内孔61を形成しても良い。この場合、案内孔61には案内部材54が挿入される。案内部材54は、下面53から下方に延伸する柱状の部材であり、アーム51と一体に形成される。上下方向(図6参照)における案内部材54と案内孔61の各断面形状は相似であり、案内孔61は案内部材54の断面形状よりもやや大きく開口している。案内部材54は把持部13、13よりも下方に向かって長く突出しており、把持部13、13の挿入の開始から終了まで常に案内孔に摺動自在に留まる。従って、把持部13、13の挿入の最中の、把持機構50の不要なぐらつきが抑制され、把持部13、13を溝部21に適切に挿入できる。その結果、把持部ホルダ60への把持機構50の装着作業性が向上する。
【0045】
なお、案内部材54の先端には係止部55を設けてもよい。係止部55は、例えば、一対の係止アーム56、56と、各係止アーム56の先端側に設けられた爪部57とを有し、案内孔61に挿入された案内部材54の抜け止めを行う。各係止アーム56は可撓性の棒状体であり、案内部材54の長手方向に延伸する。また、係止アーム56、56は互いに離間している。ただし、係止アーム56、56は案内部材54の外周面から外側に突出しないように設ける。一方、爪部57、57は、図8に示すように、係止アーム56、56の各側面から互いに離間するように延伸した突出部57b、57bを有する。また、爪部57、57には案内孔61に向けてテーパ面57c、57cが形成されている。従って、爪部57、57は案内部材54の外周面から外側に突出して形成されている。爪部57、57の上面57a、57aは、上下方向に対して垂直な平面として形成される。案内部材54が上方に移動したとき、小開口部61aの下側縁部に当接する。その結果、案内孔61からの案内部材54の脱落が防止される。
【0046】
係止部55が設けられた場合、図8に示すように案内孔61は、把持部ホルダ60の上面63側に形成される小開口部61aと、小開口部61aの下に位置する大開口部61bとによって区分して形成される。小開口部61aは案内部材54の上下方向に垂直な断面形状よりも大きく、且つ爪部57、57が当接するように開口している。なお、小開口部61aは、把持機構50の上下方向の移動を阻害しないよう、把持部ホルダ60の上面63から浅く形成される。一方、大開口部61bは小開口部61aよりも大きく開口している。なお、把持機構50の挿入時における小開口部61aを支点とした案内部材54(把持機構50)のぐらつきを抑制するため、大開口部61bは、上下方向に垂直な断面における輪郭が爪部57、57に近接するように形成されていることが好ましい。
【0047】
案内孔61に案内部材54を挿入するとき、係止アーム56、56は小開口部61aの上部縁端に一旦当接し、その後、案内部材54の挿入を進めると、係止アーム56、56は互いに接近するように撓み、爪部57、57の挿入が可能になる。係止アーム56、56が撓んだ状態で案内部材54の挿入を更に進めると、爪部57、57が大開口部61bに到達し、係止アーム56、56は元の形状に復帰する。この状態では、爪部57、57の上面57a、57aは、下方から見て小開口部61aの外側に位置する。従って、案内部材54を上方に移動させても、上面57a、57aが小開口部61aの縁に引っ掛かり、案内部材54の更なる上方への移動が規制される。案内部材54の挿入後、把持機構50と把持部ホルダ60は互いにスライド自在に連結されれる。把持機構50によって光ファイバ30を把持した後、直ちに把持部13、13を把持部ホルダ60の溝部21に挿入することが容易になり、把持部ホルダ60への把持機構50の装着作業性が向上する。
【0048】
上記の通り、本発明によれば、光ファイバは把持機構の把持部によって把持され、その後、把持部は当該光ファイバを把持した状態で、把持部ホルダの溝部に挿入される。把持部の幅は溝部の幅よりも大きく設定されているので、光ファイバに対する把持力は、溝部への把持部の挿入によって強化される。光ファイバの把持が強化されたことによって、研磨又は切断の際に光ファイバが把持機構から抜けることがない。併せて外力等による光ファイバの回転も防止できる。特に、把持力の強化によって、ルースチューブ型光ファイバの安定な把持も可能となっている。さらに、把持された光ファイバと把持部ホルダの相対的な位置が固定されるので、把持部ホルダの構造(例えば上面や下面など)から、形成された端面の傾斜方向及びその位置決めを容易に認識できる。従って、メカニカルスプライス等の突き合わせ接続作業は向上する。
【符号の説明】
【0049】
1・・・光ファイバ把持装置、2・・・光ファイバ把持装置、10・・・把持機構、11・・・アーム、12・・・ハンドル、13・・・把持部、14・・・連結部、15・・・凹部、20・・・把持部ホルダ、21・・・溝部、30・・・光ファイバ、40・・・支持台、50・・・把持機構、51・・・アーム、52・・・ハンドル、54・・・案内部材、57・・・肉厚部、60・・・把持部ホルダ、61・・・案内孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持部とハンドルとをそれぞれ有する一対のアームと、
前記各アームの把持部とハンドルとの間を互いに連結する弾性を有する連結部と、
前記各アームの把持部が挿入される溝部が形成された把持部ホルダと、
を備え、
前記把持部ホルダの溝部の幅は、前記各把持部の外面間の距離よりも小さく、
前記各把持部の基部は互いに離間しており、前記一対の把持部により光ファイバを挟持可能であることを特徴とする光ファイバ把持装置。
【請求項2】
前記一対のアームと前記連結部は樹脂成形によって一体に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ把持装置。
【請求項3】
前記各アームの把持部のうちの少なくとも一方の内面には、光ファイバを位置決めする凹部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の光ファイバ把持装置。
【請求項4】
前記把持部の先端には斜面が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の光ファイバ把持装置。
【請求項5】
前記把持部ホルダの溝部は、前記把持部の挿入完了時に前記凹部が該溝部内に位置するような深さを有することを特徴とする請求項3に記載の光ファイバ把持装置。
【請求項6】
前記把持部ホルダは樹脂成形によって形成されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の光ファイバ把持装置。
【請求項7】
前記各アームのうちの一方には、前記把持部ホルダの溝部が形成される面に当接する平面が形成されていることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の光ファイバ把持装置。
【請求項8】
前記平面には当該平面から延伸する柱状の案内部材が形成され、前記把持部ホルダの溝部が形成される面には、前記案内部材が挿入される案内孔が形成されていることを特徴とする請求項7に記載の光ファイバ把持装置。
【請求項9】
前記案内部材の先端には、前記案内孔から前記案内部材の抜け止めを行う可撓性の係止部が設けられていることを特徴とする請求項8に記載の光ファイバ把持装置。
【請求項10】
前記係止部は、互いが離間する一対のアームと、各アームの先端側に設けられた爪部とを有することを特徴とする請求項9に記載の光ファイバ把持装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−48099(P2011−48099A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195909(P2009−195909)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】