説明

光ファイバ製造方法

【課題】携帯電話のモジュール間の配線としてPOFを使用する場合、POFのコアの垂直断面の形状を非円形又はPOFの端面を梨地にしてモードスクランブル効果を高めている。しかし、従来のPOFの製造方法ではコアの垂直断面の形状を非円形にする、あるいは端面を梨地にするためには複数の工程を追加しなければならず、モードスクランブル効果を高めたPOFを製造することが困難であるという課題があった。本発明は上記課題を解決するためになされたもので、モードスクランブル効果を高めたPOFを容易に製造できる光ファイバ製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る光ファイバ製造方法はコアの垂直断面が円形である従来のPOFに外部から熱及び圧力を加えて変形させることで、コアの垂直断面を非円形にすることとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のモードの光を伝搬するマルチモード型の光ファイバの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、普及してきた携帯電話は、使用時及び携帯時の利便性その他の理由から、折り畳み型、スライド型又は回転型の携帯電話が多く用いられるようになった。折り畳み型、スライド型又は回転型の携帯電話においては、その形態上、複数の筐体に通信機能部、増幅回路部、表示回路部等のモジュールが分散して配置されており、各筐体に配置されたモジュール間を接続する配線には、柔軟性と駆動に耐えられる強度が求められている。
【0003】
さらに、各モジュール間の配線には、音楽再生機能、動画再生機能、写真撮影機能などの携帯電話の多機能化に伴う高速なデータ伝送性、外部機器との電磁障害対策及び長時間使用の要求に伴う低消費電力化が求められている。
【0004】
これらの要求を満たす配線としてプラスチック光ファイバ(以下、「プラスチック光ファイバ」を「POF」と略記する。)を使用することが試みられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
携帯電話のモジュール間の配線としてPOFを使用する場合、光路長が短くモードスクランブル効果が小さいためPOFの出射端における光強度分布は不均一になりやすく、携帯電話の折り畳み、回転等の動作によるPOFの屈曲状態でPOFの出射端の光強度分布が変動するため、受光素子はPOFから出射する光を十分受光することができないこともある。
【0006】
そこで、POFの軸方向に垂直な断面のコアの形状(以下、「軸方向に垂直な断面の形状」を「垂直断面」と略記する。)を非円形にして光の反射を複雑にすることやPOFの端面を梨地にして入射光或いは反射光を散乱させることでモードスクランブル効果を高め、出射端の光強度分布の均一化を図っている。
【特許文献1】特開2003−244295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来のPOFの製造方法、例えば、ロッド延伸法ではコアの垂直断面の形状を非円形にする、あるいは端面を梨地にするためには複数の工程を追加しなければならず、モードスクランブル効果を高めたPOFを製造することが困難であるという課題があった。
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、モードスクランブル効果を高めたPOFを容易に製造できる光ファイバ製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明に係る光ファイバ製造方法はコアの垂直断面が円形である従来のPOFに外部から熱及び圧力を加えて変形させることで、コアの垂直断面を非円形にすることとした。
【0010】
具体的には、本発明は、プラスチック光ファイバを前記プラスチック光ファイバの軟化点まで加熱する光ファイバ軟化工程と、前記光ファイバ軟化工程後、前記プラスチック光ファイバの側面を前記プラスチック光ファイバの中心軸方向に押圧する加圧体の押圧力で軸方向に一定長の加圧区間の前記プラスチック光ファイバを塑性変形する加圧成形工程と、を備える光ファイバ製造方法である。
【0011】
本発明に係る光ファイバ製造方法は、軟化点まで加熱して軟化したPOFをクラッドの外側から前記加圧体で押圧してクラッド及びコアを同時に変形させることとした。
【0012】
従って、本発明は、コアの垂直断面を非円形としてモードスクランブル効果を高めたPOFを容易に製造できる光ファイバ製造方法を提供することができる。
【0013】
前記光ファイバ製造方法は、前記加圧形成工程において、前記プラスチック光ファイバの前記加圧区間を一と他とで相違する押圧力の複数の前記加圧体で押圧し、前記加圧区間の前記プラスチック光ファイバを塑性変形することが好ましい。
【0014】
前記加圧形成工程において、前記加圧体の数、前記加圧体がPOFを押圧する位置及び前記加圧体の押圧力を調整することで、容易にコアの垂直断面を所望の形状に塑性変形することができる。
【0015】
従って、POFのコアの垂直断面の形状を容易に制御できるため、本発明は、コアの垂直断面を非円形としてモードスクランブル効果を高めたPOFを容易に製造できる光ファイバ製造方法を提供することができる。
【0016】
前記光ファイバ製造方法は、前記加圧形成工程において、前記プラスチック光ファイバの一の前記加圧区間と他の前記加圧区間とを相違する押圧力の前記加圧体で押圧し、複数の前記加圧区間の前記プラスチック光ファイバを塑性変形することが好ましい。
【0017】
前記加圧形成工程において、複数の前記加圧区間を前記加圧体で押圧することで、POFの長さに関わらずPOFのコアの垂直断面を非円形に変形することができる。また、前記加圧区間毎に前記加圧体の数、前記加圧体がPOFを押圧する方向及び前記加圧体の押圧力を調整することで、前記加圧区間毎にコアの垂直断面の形状が異なるPOFを製造することができる。
【0018】
従って、POFのコアの垂直断面の形状を容易に制御できるため、本発明は、コアの垂直断面を非円形としてモードスクランブル効果を高めたPOFを容易に製造できる光ファイバ製造方法を提供することができる。
【0019】
POFを加熱するのではなく、予め前記加圧体を加熱し、前記加圧体でPOFを押圧することで、前記加圧体の熱を伝導させて前記POFを軟化させ、POFを変形させてもよい。
【0020】
具体的には、本発明は、プラスチック光ファイバの側面を前記プラスチック光ファイバの中心軸方向に押圧する加圧体を加熱する加圧体加熱工程と、前記加圧体加熱工程後、前記加圧体で軸方向に一定長の加圧区間の前記プラスチック光ファイバを押圧し、前記加圧体の熱が伝導して軟化した前記加圧区間の前記プラスチック光ファイバを塑性変形する熱成形工程と、を備える光ファイバ製造方法である。
【0021】
前記加圧体加熱工程を有する光ファイバ製造方法は、前記光ファイバ軟化工程を有する光ファイバ製造方法の効果と同様の効果を得ることができる。
【0022】
さらに、POFを塑性変形中も加熱温度を一定に保てるため、コアの垂直断面を複雑な形状に変形することができる。
【0023】
従って、本発明は、コアの垂直断面を非円形としてモードスクランブル効果を高めたPOFを容易に製造できる光ファイバ製造方法を提供することができる。
【0024】
前記光ファイバ製造方法は、前記熱成形工程において、前記プラスチック光ファイバの前記加圧区間を一と他とで相違する押圧力の複数の前記加圧体で押圧し、前記加圧区間の前記プラスチック光ファイバを塑性変形することが好ましい。
【0025】
また、前記光ファイバ製造方法は、前記熱成形工程において、前記プラスチック光ファイバの一の前記加圧区間と他の前記加圧区間とを相違する押圧力の前記加圧体で押圧し、複数の前記加圧区間の前記プラスチック光ファイバを塑性変形することが好ましい。
【0026】
前記加圧体加熱工程を有する光ファイバ製造方法は、前記光ファイバ軟化工程を有する光ファイバ製造方法の効果と同様の効果を得ることができる。
【0027】
従って、本発明は、コアの垂直断面を非円形としてモードスクランブル効果を高めたPOFを容易に製造できる光ファイバ製造方法を提供することができる。
【0028】
前記加圧体が前記ロールであって、前記ロールの間に前記POFを通すことで前記POFを変形させてもよい。
【0029】
具体的には、本発明は、プラスチック光ファイバを前記プラスチック光ファイバの軟化点まで加熱する光ファイバ軟化工程と、前記光ファイバ軟化工程後、前記プラスチック光ファイバの軸方向に一定長の圧延区間を前記プラスチック光ファイバの側面を前記プラスチック光ファイバの中心軸方向に押圧するロールの間に通し、前記圧延区間の前記プラスチック光ファイバを前記ロールの押圧する押圧力で塑性変形する圧延工程と、を備える光ファイバ製造方法である。
【0030】
本発明に係る光ファイバ製造方法は前記複数のロールでPOFを塑性変形でき、前記加圧成形工程を備える光ファイバ製造方法と同様の効果を得ることができる。
【0031】
さらに、前記圧延工程を備えるため、コアの垂直断面の形状を変形させる区間の長さを容易に制御することができる。
【0032】
従って、本発明は、コアの垂直断面を非円形としてモードスクランブル効果を高めたPOFを容易に製造できる光ファイバ製造方法を提供することができる。
【0033】
前記光ファイバ製造方法は、前記圧延工程において、前記プラスチック光ファイバの前記圧延区間を一と他とで相違する押圧力の複数の前記ロールで圧延し、前記圧延区間の前記プラスチック光ファイバを塑性変形することが好ましい。
【0034】
前記圧延工程において、前記ロール毎に前記押圧力を設定することで、前記加圧形成工程を備える光ファイバ製造方法と同様の効果を得ることができる。
【0035】
従って、本発明は、コアの垂直断面を非円形としてモードスクランブル効果を高めたPOFを容易に製造できる光ファイバ製造方法を提供することができる。
【0036】
前記光ファイバ製造方法は、前記圧延工程において、前記プラスチック光ファイバの前記圧延区間内で前記ロールの押圧力を変化させて押圧し、前記圧延区間の前記プラスチック光ファイバを塑性変形することが好ましい。
【0037】
前記圧延工程において、前記圧延区間を前記ロールの前記押圧力を変化させながら圧延することでPOFの軸方向にコアの垂直断面の形状が異なるPOFを製造することができる。
【0038】
従って、本発明は、コアの垂直断面を非円形としてモードスクランブル効果を高めたPOFを容易に製造できる光ファイバ製造方法を提供することができる。
【0039】
前記POFを加熱するのではなく、予め前記ロールを加熱し、前記ロールで前記POFを押圧することで、前記ロールの熱を伝導させて前記POFを軟化させ、前記POFを変形させてもよい。
【0040】
具体的には、本発明は、プラスチック光ファイバの側面を前記プラスチック光ファイバの中心軸方向に押圧する複数のロールを加熱するロール加熱工程と、前記ロール加熱工程後、前記プラスチック光ファイバの軸方向に一定長の圧延区間を前記複数のロールの間に通し、前記複数のロールの熱が伝導して軟化した前記圧延区間の前記プラスチック光ファイバを前記複数のロールの押圧する押圧力で塑性変形する熱圧延工程と、を備える光ファイバ製造方法である。
【0041】
本発明に係る光ファイバ製造方法は前記加圧体加熱工程と前記熱成形工程とを備える前記光ファイバ製造方法の効果と同様の効果を得ることができる。
【0042】
従って、本発明は、コアの垂直断面を非円形としてモードスクランブル効果を高めたPOFを容易に製造できる光ファイバ製造方法を提供することができる。
【0043】
前記光ファイバ製造方法は、前記熱圧延工程において、前記プラスチック光ファイバの前記圧延区間を一と他とで相違する押圧力の複数の前記ロールで圧延し、前記圧延区間の前記プラスチック光ファイバを塑性変形することが好ましい。
【0044】
また、前記光ファイバ製造方法は、前記熱圧延工程において、前記プラスチック光ファイバの前記圧延区間内で前記ロールの前記押圧力を変化させて押圧し、前記圧延区間の前記プラスチック光ファイバを塑性変形することが好ましい。
【0045】
前記ロール加熱工程を有する光ファイバ製造方法は、前記光ファイバ軟化工程を有する光ファイバ製造方法の効果と同様の効果を得ることができる。
【0046】
従って、本発明は、コアの垂直断面を非円形としてモードスクランブル効果を高めたPOFを容易に製造できる光ファイバ製造方法を提供することができる。
【0047】
本発明に係る光ファイバ製造方法はPOFに熱を加えて軟化させ、梨地の表面の端面処理加圧体をPOFの端面に押圧し、梨地を転写させることとした。
【0048】
具体的には、本発明は、プラスチック光ファイバを前記プラスチック光ファイバの軟化点まで加熱する光ファイバ軟化工程と、前記光ファイバ軟化工程後、梨地の表面を有する端面処理加圧体を軟化した前記プラスチック光ファイバの端面に押圧し、前記プラスチック光ファイバの端面に前記端面処理加圧体の表面の梨地を転写する端面加圧処理工程と、を備える光ファイバ製造方法である。
【0049】
本発明に係る光ファイバ製造方法は、前記端面処理加圧体をPOFの端面に押圧することで容易に梨地を端面に転写することができる。逆に、前記端面処理加圧体にPOFの端面を押圧しても同様の効果を得ることができる。
【0050】
従って、本発明は、端面を梨地としてモードスクランブル効果を高めたPOFを容易に製造できる光ファイバ製造方法を提供することができる。
【0051】
前記POFを加熱するのではなく、予め前記端面処理加圧体を加熱し、前記端面処理加圧体を前記POFの端面に押圧して、梨地面を転写させてもよい。
【0052】
具体的には、本発明は、梨地の表面でプラスチック光ファイバの端面を押圧する端面処理加圧体を加熱する端面処理加圧体加熱工程と、前記端面処理加圧体加熱工程後、前記端面処理加圧体を前記プラスチック光ファイバの端面に押圧し、前記端面処理加圧体の熱が伝導して軟化した前記プラスチック光ファイバの端面に前記端面処理加圧体の表面の梨地を転写する端面熱処理工程と、を備える光ファイバ製造方法である。
【0053】
前記端面処理加圧体加熱工程を備える光ファイバ製造方法は、前記光ファイバ軟化工程後に前記端面加工処理工程を行う光ファイバ製造方法の効果と同様の効果を得ることができる。逆に、前記端面処理加圧体にPOFの端面を押圧しても同様の効果を得ることができる。
【0054】
さらに、前記端面熱処理工程中も加熱温度を一定に保てるため、端面処理の再現性が向上する。
【0055】
従って、本発明は、端面を梨地としてモードスクランブル効果を高めたPOFを容易に製造できる光ファイバ製造方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0056】
本発明により、モードスクランブル効果を高めたPOFを容易に製造できる光ファイバ製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。
【0058】
(光ファイバ製造方法1)
本発明に係る光ファイバ製造方法1はプラスチック光ファイバを前記プラスチック光ファイバの軟化点まで加熱する光ファイバ軟化工程と、前記光ファイバ軟化工程後、前記プラスチック光ファイバの側面を前記プラスチック光ファイバの中心軸方向に押圧する加圧体の押圧力で軸方向に一定長の加圧区間の前記プラスチック光ファイバを塑性変形する加圧成形工程と、を備える光ファイバ製造方法である。
【0059】
光ファイバ製造方法1の工程図を図1に示す。光ファイバ製造方法1は作業開始後、光ファイバ軟化工程101、加圧成形工程102及びPOF冷却工程103を経て作業終了に至る。
【0060】
光ファイバ軟化工程101は、POFを加熱して軟化させる工程である。POFの軟化温度として120℃以上160℃以下が例示され、POFのコアが軟化するようにヒータ又は電磁波を利用して加熱する。なお、POF全体を加熱しても良く、POFを塑性変形させる加圧区間のみ加熱しても良い。
【0061】
加圧形成工程102は、光ファイバ軟化工程101で軟化したPOFの側面を前記加圧体で押圧して、POFのコアとクラッドとを同時に塑性変形させる工程である。図2及び図3に加圧組成工程102の一例を示す。図2及び図3において、10はPOF、11−1は加圧体、11−2は受け台、20は加圧区間を示す。図2(A)及び図3(A)はPOF10の側面から見た図であり、図2(A)及び図3(A)のT−T’の切断面の図を図2(B)及び図3(B)に示す。以下の図においても同様である。
【0062】
図2はPOF10を受け台11−2に配置した状態の図であり、図3は加圧体11−1でPOF10を押圧している図である。
【0063】
加圧体11−1はPOF10の側面をPOF10の中心軸方向に押圧する。加圧体11−1は加熱されたPOF10に接触し、押圧しても変形しない素材、例えば、アルミニウムやステンレスで構成される。加圧体11−1のPOF10を押圧する押圧面はPOF10の軸に平行な平面である。
【0064】
受け台11−2の素材は押圧しても変形しない加圧体11−1と同様の素材で構成される。
【0065】
受け台11−2はPOF10が配置される溝を有する。受け台11−2の溝は加圧体11−1の押圧時にPOF10が移動しないようにPOF10を固定するとともに、POF10に前記溝の形状を転写する。受け台11−2の溝の幅及び深さはPOF10が収まるようにPOF10の直径程度である。
【0066】
加圧区間20は加圧体11−1又は受け台11−2のPOF10の軸方向の大きさで定まる長さのPOF10の区間である。図4から図13における加圧区間20も同様の区間である。
【0067】
加圧形成工程102では、図2のようにPOF10の加圧区間20を受け台11−2の溝に配置する。次いで図3のように加圧体11−1で受け台11−2に配置されたPOF10を押圧する。
【0068】
図2及び図3における加圧体11−1の押圧面は平面であり、受け台11−2の溝はT−T’の断面において矩形であるため、加圧形成工程102で押圧されたPOF10の垂直断面の形状は四角形となる。POF10の垂直断面においてクラッドの層は薄いため、外部からの加圧体11−1の押圧力でコアの垂直断面の形状も変形して四角形となる。
【0069】
従って、加圧形成工程102はコアの垂直断面の形状が円形である市販のPOFを外部から前記加圧体で押圧することでコアの垂直断面を非円形に塑性変形することができる。なお、以下の説明においてもクラッドとコアを同時に変形するため、外部からの押圧力でコアの垂直断面の形状を塑性変形することができる。
【0070】
POF冷却工程103では、加圧成形工程102で塑性変形されたPOF10を冷却する。冷却方法は不活性ガスの吹き付けやフロン等の液体に浸すことが例示できる。
【0071】
従って、光ファイバ製造方法1は、コアの垂直断面を非円形としてモードスクランブル効果を高めたPOFを容易に製造できる。
【0072】
また、光ファイバ製造方法1は加圧成形工程102において加圧体の形状及び受け台の溝の形状を変えることで、加圧区間のPOFの断面形状を所望の形状に塑性変形することができる。以下、加圧成形工程102の他の例を図4から図13に示す。なお、図4から図13において、図2及び図3で使用した符号と同じ符号は同じ部品であり、同じ機能を有する。なお、以下の説明及び図面における加圧体及び受け台の素材及び機能は図2及び図3の加圧体11−1及び受け台11−2と同様である。
【0073】
図4は加圧体11−1及び受け台12−2によるPOF10押圧時の図である。
【0074】
加圧体12−1は加圧体11−1と同一である。
【0075】
受け台12−2はT−T’断面において溝の形状が矩形ではなく、V字となっている。
【0076】
従って、加圧体11−1及び受け台12−2で押圧されたPOF10の垂直断面の形状は三角形となる。
【0077】
図5は加圧体13−1及び受け台13−2によるPOF10押圧時の図である。
【0078】
加圧体13−1のPOF10を押圧する押圧面はT−T’断面おいて、中央部が縁部より窪んだ形状となっている。
【0079】
受け台13−2はT−T’断面における溝の形状が矩形の角を丸めた形状としている。
【0080】
従って、加圧体13−1及び受け台13−2で押圧されたPOF10の断面形状は角丸四角形となる。なお、角丸四角形とは四角形の頂点を丸めた形状である。
【0081】
図6及び図7に、加圧体21−1、加圧体21−2、加圧体21−3及び加圧体21−4を使用する加圧形成工程102の例を示している。
【0082】
図6及び図7の加圧形成工程102は図2の受け台11−2を使用せず、加圧体21−1から加圧体21−4を用いてPOF10を中心軸方向に4方向から押圧する。
【0083】
加圧形成工程102は、図6のようにPOF10の側面に加圧体21−1から加圧体21−4を配置し、図7のように加圧体21−1から加圧体21−4でPOF10を押圧する。なお、図6及び図7において、加圧体21−4はPOF10に隠れる位置にあるため記載をしていない。
【0084】
加圧体21−1から加圧体21−4で4方向から押圧するため、加圧形成工程102で押圧されたPOF10の断面形状は角丸四角形となる。
【0085】
なお、前記加圧形成工程において、前記プラスチック光ファイバの前記加圧区間を一と他とで相違する押圧力の複数の前記加圧体で押圧し、前記加圧区間の前記プラスチック光ファイバを塑性変形してもよい。
【0086】
加圧体21−1から21−4の押圧力をそれぞれ違えてPOF10を押圧してもよい。具体的には、図8のように加圧体21−1及び加圧体21−3は等しい押圧力でPOF10を押圧し、加圧体21−2及び加圧体21−4は加圧体21−1及び加圧体21−3より小さな押圧力でPOF10を押圧している。POF10の側面を4方向から押圧するため、図6及び図7で説明したようにPOF10のT−T’における垂直断面の形状は角丸四角形となるが、押圧力が異なるため、加圧体21−1及び加圧体21−3で押圧された方向の長さと加圧体21−2及び加圧体21−4で押圧された方向の長さが異なる角丸長方形となっている。
【0087】
図9は図6の加圧体21−1から21−4のうち、加圧体21−1と21−3でPOF10を押圧したときの図である。2方向からの押圧のため、POF10のT−T’における断面形状は線分曲線形状となる。線分曲線形状とは少なくとも一の線分の端と少なくとも一の曲線の端とを接続して囲まれた形状をいう。
【0088】
図10は加圧体22−1から22−3でPOF10の側面を3方向から押圧したときの図である。加圧体22−1から3で3方向から押圧するため、加圧形成工程102で押圧されたPOF10のT−T’における断面形状は角丸三角形となる。
【0089】
(特殊な押圧面を有する加圧体を使用する光ファイバ製造方法1)
前記加圧体のPOFを押圧する押圧面はPOFの中心軸と一定の角度を有していても良い。図11は加圧体23−1から加圧体23−4でPOF10を押圧する。なお、図11(A)において、加圧体23−1から加圧体23−4の形状を説明するため加圧体23−2は記載を省略している。
【0090】
加圧体23−1から加圧体23−4の押圧面はPOF10の中心軸と一定の角度を有する。
【0091】
加圧体23−1から加圧体23−4は図11に示すように図6の加圧成形工程102の説明と同様にPOF10を押圧する。POF10の側面を4方向から押圧するため、POF10のT−T’における垂直断面の形状は角丸四角形となるが、POF10の中心軸と一定の角度を有する押圧面で押圧しているため、POF10は加圧区間20の垂直断面の面積が一の側から他の側へ向けて単調減少するテーパ状の形状となる。
【0092】
なお、加圧体23−1から23−4の押圧面を平面とせず、図12の加圧体24−1から24−4のようにPOF10側へ凸形状の曲面であってもよい。加圧体24−1から24−4で押圧することで、POF10は垂直断面の軸方向の距離に対する面積の減少率が一の側から他の側へ向けて小さくなる形状となる。
【0093】
加圧成形工程102は、加圧体の押圧面を型として利用して前記型をPOFに転写することもできる。
【0094】
図13は加圧体25−1及び加圧体25−3でPOF10を押圧する。加圧体25−1及び加圧体25−3と図2の加圧体11−1との違いは、前記押圧面の形状の違いであり、加圧体25−1及び加圧体25−3の押圧面はPOF10の軸方向と同軸の半円筒状に窪んでいる。さらに、前記半円筒の半径はPOF10の軸方向の位置によって異なる。加圧体25−1と加圧体25−3とは前記半円筒の押圧面が対向するように配置され、前記半円筒の押圧面にPOF10を配置してPOF10を押圧する。
【0095】
従って、加圧体25−1と加圧体25−3とで押圧されたPOF10は図14に示すような一の区間の直径が他の区間の直径より大きいリング状突起93を有する形状になる。
【0096】
POF10の端の近傍、例えば前記端から2mm以上3mm以下の位置にリング状突起93を形成することで、リング状突起はモードスクランブル効果の他に、POF10が挿入される光コネクタとの固定具の効果を得ることができる。リング状突起93を固定具として利用することを説明した図を図15に示す。図15はリング状突起93を有するPOF10を光コネクタ95に挿入した場合のPOF10の軸における断面の図である。図15において、図2及び図14で使用した符号と同じ符号は同じ部品を示す。光コネクタ95はリング状突起93と嵌合する光コネクタリング状窪み96を有する。リング状93と光コネクタリング状窪み96が嵌合することでPOF10の光コネクタ95への挿入位置が定まり、POF10と光コネクタ95とが固定される。
【0097】
従って、リング状突起93を有するPOF10は光コネクタ95との間で円滑に光通信をすることができる。
【0098】
加圧体25−1及び加圧体25−3の押圧面の形状を調整することで図15から図19に示すような形状のPOFを製造することができる。
【0099】
図16のPOF10は一の区間の直径が他の区間の直径より小さいリング状窪み94を有する形状である。図15と同様にリング状窪み94と嵌合する光コネクタリング状突起を有する光コネクタにPOF10を挿入することで、POF10は円滑な光通信をすることができる。
【0100】
図17のPOF10は側面の一部に突起91を有する形状である。図15と同様に突起91と嵌合する光コネクタ窪みを有する光コネクタにPOF10を挿入することで、POF10は円滑な光通信をすることができる。
【0101】
図18のPOF10は側面の一部に穴92を有する形状である。図15と同様に穴92と嵌合する光コネクタ突起を有する光コネクタにPOF10を挿入することで、POF10は円滑な光通信をすることができる。
【0102】
図19のPOF10は垂直断面が多角形の形状を有している。垂直断面が多角形であるため、導波する光のモードが複雑になりモードスクランブル効果は高くなる。
【0103】
図20のPOF10は側面が軸方向に波状の形状を有している。軸方向に波状の形状とすることで導波する光のモードが複雑になりモードスクランブル効果は高くなる。
【0104】
(光ファイバ製造方法1を行う光ファイバ製造機)
POFが長く、複数の加圧区間を前記加圧体が押圧する場合、前記加圧形成工程において、前記プラスチック光ファイバの一の前記加圧区間と他の前記加圧区間とを相違する押圧力の前記加圧体で押圧し、複数の前記加圧区間の前記プラスチック光ファイバを塑性変形することとしてもよい。
【0105】
一の加圧区間と他の加圧区間とで加圧体の数、位置及び押圧力を変えることで加圧区間毎に異なる垂直断面の形状を有するPOFを製造することができる。
【0106】
光ファイバ製造方法1は連続して作業してもよい。図21に連続作業する場合の光ファイバ製造機の概念図を示す。図21において、図2で使用した符号と同じ符号は同一の部品であり、同じ機能を有する。
【0107】
加熱区間30において、ヒータ31はPOF10を加熱して、光ファイバ軟化工程101を行う。
【0108】
加圧区間20において、図3及び図4で説明した加圧成形工程102を行う。
【0109】
冷却区間40において、ノズル42は冷却用不活性ガス43をPOF10に吹き付けて冷却して、POF冷却工程103を行う。
【0110】
図21における光ファイバ製造機は以下に説明するように光ファイバ製造方法1を実施する。光ファイバ製造機は同時に加熱区間30にあるPOF10(以下、「加熱区間30にあったPOF10」を「区間D」と略記する。)を加熱し、加圧区間20にあるPOF10(以下、「加圧区間20にあったPOF10」を「区間E」と略記する。)を押圧し、冷却区間40にあるPOF10を冷却する。一定時間後、図示しないリールでPOF10を矢印17の方向へ引き、POF10の区間Dを加圧区間20へ、POF10の区間Eを冷却区間40へ移動させる。それぞれの区間で同様に処理を行い、一定時間後、同様にPOF10を前記リールで引き、POF10の区間Dを冷却区間40へ移動させる。
【0111】
前記光ファイバ製造機は加圧区間20における加圧成形工程102の処理毎に図2から図13で説明した加圧体及び受け台に変更することができるため、図22に示すように一定区間毎に垂直断面の形状が異なるPOF10を製造することができる。
【0112】
図22において、T1−T1’、T2−T2’、T3−T3’、T4−T4’及びT5−T5’におけるPOF10の垂直断面の形状を図21のPOF10の下に示している。T1−T1’におけるPOF10の垂直断面の形状は三角形であり、T2−T2’及びT4−T4’
におけるPOF10の垂直断面の形状は円形(すなわち、加圧形成工程102を行っていない。)であり、T3−T3’ 及びT5−T5’ におけるPOF10の垂直断面の形状は角丸四角形である。
【0113】
従って、光ファイバ製造方法1は、コアの垂直断面を非円形としてモードスクランブル効果を高めたPOFを容易に製造することができる。
【0114】
(光ファイバ製造方法2)
本発明に係る光ファイバ製造方法2はプラスチック光ファイバの側面を前記プラスチック光ファイバの中心軸方向に押圧する加圧体を加熱する加圧体加熱工程と、前記加圧体加熱工程後、前記加圧体で軸方向に一定長の加圧区間の前記プラスチック光ファイバを押圧し、前記加圧体の熱が伝導して軟化した前記加圧区間の前記プラスチック光ファイバを塑性変形する熱成形工程と、を備える光ファイバ製造方法である。
【0115】
光ファイバ製造方法2の工程図を図23に示す。光ファイバ製造方法2は作業開始後、加圧体加熱工程201、熱成形工程202及びPOF冷却工程103を経て作業終了に至る。光ファイバ製造方法2において、図1の光ファイバ製造方法1の符号と同じ符号は同一の工程である。
【0116】
加圧体加熱工程201は、前記加圧体を加熱する工程である。前記加圧体が接触するPOFを軟化させるため加熱する温度としてPOFが軟化する120℃以上160℃以下が例示される。加圧体をホットプレートや電磁波を利用して加熱する。また、前記加圧体内部にヒータを内蔵しておき、加圧体加熱工程201毎に加熱、あるいはPOFの押圧中も加熱しても良い。
【0117】
熱成形工程202は光ファイバ製造方法1で説明した加圧成形工程102と同様の処理を行う。熱成形工程202と加圧成形工程102との違いは熱成形工程202には加熱されていないPOFに前記加圧体の熱を伝導した後に、前記加圧体がPOFを押圧していることである。
【0118】
さらに、熱成形工程202は加圧成形工程102と同様に、前記プラスチック光ファイバの前記加圧区間を一と他とで相違する押圧力の複数の前記加圧体で押圧し、前記加圧区間の前記プラスチック光ファイバを塑性変形してもよく、前記プラスチック光ファイバの一の前記加圧区間と他の前記加圧区間とを相違する押圧力の前記加圧体で押圧し、複数の前記加圧区間の前記プラスチック光ファイバを塑性変形してもよい。
【0119】
従って、熱成形工程202は加圧成形工程102と同様にPOFの垂直断面の形状を所望の形状へ塑性変形することができるため、光ファイバ製造方法2は、光ファイバ製造方法1と同様にコアの垂直断面を非円形としてモードスクランブル効果を高めたPOFを容易に製造することができる。
【0120】
(光ファイバ製造方法3)
本発明に係る光ファイバ製造方法3はプラスチック光ファイバを前記プラスチック光ファイバの軟化点まで加熱する光ファイバ軟化工程と、前記光ファイバ軟化工程後、前記プラスチック光ファイバの軸方向に一定長の圧延区間を前記プラスチック光ファイバの側面を前記プラスチック光ファイバの中心軸方向に押圧するロールの間に通し、前記圧延区間の前記プラスチック光ファイバを前記ロールの押圧する押圧力で塑性変形する圧延工程と、を備える光ファイバ製造方法である。
【0121】
光ファイバ製造方法3の工程図を図24に示す。光ファイバ製造方法3は作業開始後、光ファイバ軟化工程101、圧延工程302及びPOF冷却工程103を経て作業終了に至る。光ファイバ製造方法3において、図1の光ファイバ製造方法1の符号と同じ符号は同一の工程である。光ファイバ製造方法3と光ファイバ製造方法1との違いは光ファイバ製造方法1の加圧成形工程102が無く、圧延工程302があることである。
【0122】
圧延工程302は、光ファイバ軟化工程101で軟化したPOFの側面を前記ロールでPOFの中心軸方向へ押圧して、POFのコアとクラッドとを同時に圧延して塑性変形させる工程である。
【0123】
図25及び図26に圧延工程302の一例を示す。図25及び図26において、図2及び図3で使用した符号と同じ符号は同一の部品であり、同じ機能を有する。
【0124】
ロール51−1はPOF10の側面をPOF10の中心軸方向への押圧力で押圧し、回転しながら一定の圧延区間50を圧延する。ロール51−1及び以下で説明するロールは熱や圧力で変形しないように図2の加圧体11−1と同様の素材で構成される。
【0125】
圧延区間50はロール51−1の移動距離又は受け台11−2のPOF10の軸方向の大きさで定まる長さのPOF10の区間である。図27から図34における圧延区間50も同様の区間である。
【0126】
圧延工程302では、図25のようにPOF10を受け台11−2の溝に配置する。次いで図26のように、ロール51−1は矢印59に回転しながらPOF10の側面をPOF10の中心軸方向に押圧して圧延区間50の一端から他端を圧延する。圧延は一端から他端までの一方向でも往復でもかまわない。
【0127】
ロール51−1の押圧面はロール51−1の軸と平行であり、受け台11−2の溝は矩形であるため、圧延工程302で押圧されたPOF10の垂直断面の形状は四角形となる。
【0128】
図25及び図26で説明したように、圧延工程302はコアの垂直断面の形状が円形である市販のPOFを前記ロールで押圧することでコアの垂直断面を非円形に塑性変形することができる。
【0129】
従って、光ファイバ製造方法3は、コアの垂直断面を非円形としてモードスクランブル効果を高めたPOFを容易に製造できる。
【0130】
また、光ファイバ製造方法1と同様に光ファイバ製造方法3は圧延工程302においてロールの形状及び受け台の溝の形状を変えることで、加圧区間のPOFの断面形状を所望の形状に塑性変形することができる。以下、圧延工程302の他の例を図27から図33に示す。なお、図27から図33において、図4から図13で使用した符号と同じ符号は同一の部品であり、同じ機能を有する。
【0131】
図27から図33は図4から図13の加圧体11−1から加圧体11−4、加圧体13−1、加圧体21−1から加圧体21−4、加圧体22−1から加圧体22−3による押圧がそれぞれロール51−1からロール51−4、ロール53−1、ロール61−1からロール61−4、ロール62−1からロール62−3による圧延に変更されている。
【0132】
なお、複数のロールでPOFを圧延する場合、前記圧延工程において、前記プラスチック光ファイバの前記圧延区間を一と他とで相違する押圧力の複数の前記ロールで圧延し、前記圧延区間の前記プラスチック光ファイバを塑性変形してもよい。
【0133】
図8の説明と同様に、POF10の垂直断面の形状は図33に示すように角丸長方形となる。
【0134】
従って、圧延工程302において、ロールが図27から図33に示す位置で、図25及び図26で説明したようにPOFを圧延することで、図4から図13で説明したPOF10の垂直断面の形状を有するPOFを製造することができる。
【0135】
(光ファイバ製造方法3を行う光ファイバ製造機)
前記圧延工程において、前記プラスチック光ファイバの前記圧延区間内で前記ロールの押圧力を変化させて押圧し、前記圧延区間の前記プラスチック光ファイバを塑性変形してもよい。
【0136】
圧延区間50内のPOF軸方向の位置でロールの押圧力を変化させて圧延することで、図11から図16及び図20に記載したPOFの形状を製造することができる。
【0137】
光ファイバ製造方法3は連続して作業してもよい。図34に連続作業する場合の光ファイバ製造機の概念図を示す。図34において、図21及び図29で使用した符号と同じ符号は同一の部品であり、同じ機能を有する。
【0138】
圧延部70はロール51−1からロール51−4でPOF10を圧延する部分である。
【0139】
図34における光ファイバ製造機は以下に説明するように光ファイバ製造方法3を実施することができる。
【0140】
図示しないリールでPOF10を矢印17の方向へ一定の速さで連続的に引く。POF10は加熱区間20で加熱され、圧延部70で圧延され、冷却区間40で冷却される。図34の光ファイバ製造機において、ロール51−1からロール51−4はPOF10の軸方向へ移動せず、POF10がロール51−1からロール51−4の間を通過することでPOF10が圧延される。
【0141】
前記光ファイバ製造機は圧延部70における圧延工程302の圧延において図25から図33で説明したようにロール及び受け台を変更することができるため、図22に示すように一定区間毎に垂直断面の形状が異なるPOF10を製造することができる。また、連続的にロールの数、POFを押圧する位置及び圧力を変更することで断面形状が連続的に変化するPOFを製造することができる。
【0142】
従って、光ファイバ製造方法3は、コアの垂直断面を非円形としてモードスクランブル効果を高めたPOFを容易に製造することができる。
【0143】
(光ファイバ製造方法4)
本発明に係る光ファイバ製造方法4はプラスチック光ファイバの側面を前記プラスチック光ファイバの中心軸方向に押圧する複数のロールを加熱するロール加熱工程と、前記ロール加熱工程後、前記プラスチック光ファイバの軸方向に一定長の圧延区間を前記複数のロールの間に通し、前記複数のロールの熱が伝導して軟化した前記圧延区間の前記プラスチック光ファイバを前記複数のロールの押圧する押圧力で塑性変形する熱圧延工程と、を備える光ファイバ製造方法である。
【0144】
光ファイバ製造方法4の工程図を図35に示す。光ファイバ製造方法4は作業開始後、ロール加熱工程401、熱圧延工程402及びPOF冷却工程103を経て作業終了に至る。光ファイバ製造方法4において、光ファイバ製造方法1の符号と同じ符号は同一の工程である。
【0145】
ロール加熱工程401は、ロールを加熱する工程である。光ファイバ製造方法2の加圧体加熱工程201と同様である。
【0146】
熱圧延工程402は光ファイバ製造方法3で説明した圧延工程302と同様の処理を行う。熱圧延工程402と圧延工程302との違いは熱圧延工程402には加熱されていないPOFに前記ロールの熱を伝導した後に、前記ロールがPOFを押圧して圧延していることである。
【0147】
さらに、熱圧延工程402は圧延工程302と同様に、前記プラスチック光ファイバの前記圧延区間を一と他とで相違する押圧力の複数の前記ロールで圧延し、前記圧延区間の前記プラスチック光ファイバを塑性変形してもよく、前記プラスチック光ファイバの前記圧延区間内で前記ロールの前記押圧力を変化させて押圧し、前記圧延区間の前記プラスチック光ファイバを塑性変形してもよい。
【0148】
従って、熱圧延工程402は圧延工程302と同様にPOFの垂直断面の形状を所望の形状へ塑性変形することができるため、光ファイバ製造方法4は、光ファイバ製造方法3と同様にコアの垂直断面を非円形としてモードスクランブル効果を高めたPOFを容易に製造することができる。
【0149】
(光ファイバ製造方法5)
本発明に係る光ファイバ製造方法5はプラスチック光ファイバを前記プラスチック光ファイバの軟化点まで加熱する光ファイバ軟化工程と、前記光ファイバ軟化工程後、梨地の表面を有する端面処理加圧体を軟化した前記プラスチック光ファイバの端面に押圧し、前記プラスチック光ファイバの端面に前記端面処理加圧体の表面の梨地を転写する端面加圧処理工程と、を備える光ファイバ製造方法である。
【0150】
光ファイバ製造方法6の工程図を図36に示す。光ファイバ製造方法5は作業開始後、光ファイバ軟化工程101、端面加圧処理工程502及びPOF冷却工程103を経て作業終了に至る。光ファイバ製造方法5において、図1の光ファイバ製造方法1の符号と同じ符号は同一の工程である。光ファイバ製造方法5と光ファイバ製造方法1との違いは光ファイバ製造方法1の加圧成形工程102が無く、端面加圧処理工程502があることである。
【0151】
端面加圧処理工程502は、梨地の表面を有する端面処理加圧体を軟化したPOFの端面に押圧し、POFの端面に端面処理加圧体の表面の梨地を転写する工程である。逆に、端面処理加圧体の表面にPOFの端面を押圧してもよい。図37に端面加圧処理工程502の一例を示す。図37において、図2で使用した符号と同じ符号は同じ部品であり、同じ機能を有する。
【0152】
端面処理加圧体81は、光ファイバ製造方法1で説明した加圧体11−1と同様の素材で構成される。端面処理加圧体81がPOF10の端面を押圧する面は梨地に加工されている。
【0153】
従って、端面加圧処理工程502で端面処理加圧体81に押圧されたPOF10の端面は前記梨地が転写される。
【0154】
従って、光ファイバ製造方法5は、端面を細かい凹凸で光を散乱させる梨地としてモードスクランブル効果を高めたPOFを容易に製造することができる。
【0155】
(光ファイバ製造方法6)
本発明に係る光ファイバ製造方法6は梨地の表面でプラスチック光ファイバの端面を押圧する端面処理加圧体を加熱する端面処理加圧体加熱工程と、前記端面処理加圧体加熱工程後、前記端面処理加圧体を前記プラスチック光ファイバの端面に押圧し、前記端面処理加圧体の熱が伝導して軟化した前記プラスチック光ファイバの端面に前記端面処理加圧体の表面の梨地を転写する端面熱処理工程と、を備える光ファイバ製造方法である。
光ファイバ製造方法6の工程図を図38に示す。光ファイバ製造方法6は作業開始後、端面処理加圧体加熱工程601、端面熱処理工程602及びPOF冷却工程103を経て作業終了に至る。光ファイバ製造方法6において、図1の光ファイバ製造方法1の符号と同じ符号は同一の工程である。
【0156】
端面処理加圧体加熱工程601は端面処理加圧体を加熱する工程である。図23の光ファイバ製造方法2の加圧体加熱工程201と同様である。
【0157】
端面熱処理工程602は光ファイバ製造方法5で説明した端面加圧処理工程502と同様の処理を行う。端面熱処理工程602と端面加圧処理工程502との違いは端面熱処理工程602には加熱されていないPOFに前記端面処理加圧体の熱を伝導した後に、前記端面処理加圧体がPOFの端面を押圧していることである。
【0158】
従って、光ファイバ製造方法6は、光ファイバ製造方法5と同様に端面を細かい凹凸で光を散乱させる梨地としてモードスクランブル効果を高めたPOFを容易に製造することができる。
【0159】
なお、光ファイバ製造方法5及び6は可能な限り光ファイバ製造方法1から4のいずれかの光ファイバ製造方法と組み合わせて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本発明の光ファイバ製造方法はPOF以外にも石英系やガラス系の光ファイバの製造にも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】本発明に係る光ファイバ製造方法1のフローチャートである。
【図2】本発明に係る光ファイバ製造方法1の加圧組成工程102の一例である。
【図3】本発明に係る光ファイバ製造方法1の加圧組成工程102の一例である。
【図4】本発明に係る光ファイバ製造方法1の加圧組成工程102の他の例である。
【図5】本発明に係る光ファイバ製造方法1の加圧組成工程102の他の例である。
【図6】本発明に係る光ファイバ製造方法1の加圧組成工程102の他の例である。
【図7】本発明に係る光ファイバ製造方法1の加圧組成工程102の他の例である。
【図8】本発明に係る光ファイバ製造方法1の加圧組成工程102の他の例である。
【図9】本発明に係る光ファイバ製造方法1の加圧組成工程102の他の例である。
【図10】本発明に係る光ファイバ製造方法1の加圧組成工程102の他の例である。
【図11】本発明に係る光ファイバ製造方法1の加圧組成工程102の他の例である。
【図12】本発明に係る光ファイバ製造方法1の加圧組成工程102の他の例である。
【図13】本発明に係る光ファイバ製造方法1の加圧組成工程102の他の例である。
【図14】本発明に係る光ファイバ製造方法1で製造したPOFの一例である。
【図15】本発明に係る光ファイバ製造方法1で製造したPOFを光コネクタに挿入した図である。
【図16】本発明に係る光ファイバ製造方法1で製造したPOFの他の例である。
【図17】本発明に係る光ファイバ製造方法1で製造したPOFの他の例である。
【図18】本発明に係る光ファイバ製造方法1で製造したPOFの他の例である。
【図19】本発明に係る光ファイバ製造方法1で製造したPOFの他の例である。
【図20】本発明に係る光ファイバ製造方法1で製造したPOFの他の例である。
【図21】本発明に係る光ファイバ製造方法1を実施する光ファイバ製造機の概念図である。
【図22】本発明に係る光ファイバ製造方法1で製造したPOFの他の例である。
【図23】本発明に係る光ファイバ製造方法2のフローチャートである。
【図24】本発明に係る光ファイバ製造方法3のフローチャートである。
【図25】本発明に係る光ファイバ製造方法3の圧延工程302の一例である。
【図26】本発明に係る光ファイバ製造方法3の圧延工程302の一例である。
【図27】本発明に係る光ファイバ製造方法3の圧延工程302の他の例である。
【図28】本発明に係る光ファイバ製造方法3の圧延工程302の他の例である。
【図29】本発明に係る光ファイバ製造方法3の圧延工程302の他の例である。
【図30】本発明に係る光ファイバ製造方法3の圧延工程302の他の例である。
【図31】本発明に係る光ファイバ製造方法3の圧延工程302の他の例である。
【図32】本発明に係る光ファイバ製造方法3の圧延工程302の他の例である。
【図33】本発明に係る光ファイバ製造方法3の圧延工程302の他の例である。
【図34】本発明に係る光ファイバ製造方法3を実施する光ファイバ製造機の概念図である。
【図35】本発明に係る光ファイバ製造方法4のフローチャートである。
【図36】本発明に係る光ファイバ製造方法5のフローチャートである。
【図37】本発明に係る光ファイバ製造方法5の端面加圧処理工程502の一例である。
【図38】本発明に係る光ファイバ製造方法6のフローチャートである。
【符号の説明】
【0162】
10 POF
11−1、13−1、21−1、21−2、21−3、21−4、23−1、23−2、23−3、23−4、25−1、25−3 加圧体
11−2、12−2、13−2 受け台
17 POF10が引かれる方向
20 加圧区間
30 加熱区間
31 ヒータ
40 冷却区間
42 ノズル
43 不活性ガス
50 圧延区間
51−1、51−2、51−3、51−4、52−1、52−2、52−3、53−1 ロール
59 ロール回転方向
70 圧延部
81 端面処理加圧体
91 突起
92 穴
93 リング状突起
94 リング状窪み
95 光コネクタ
96 光コネクタリング状窪み
101 光ファイバ軟化工程
102 加圧成形工程
103 POF冷却工程
202 熱成形工程
302 圧延工程
401 ロール加熱工程
402 熱圧延工程
502 端面加圧処理工程
602 端面熱処理工程


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック光ファイバを前記プラスチック光ファイバの軟化点まで加熱する光ファイバ軟化工程と、
前記光ファイバ軟化工程後、前記プラスチック光ファイバの側面を前記プラスチック光ファイバの中心軸方向に押圧する加圧体の押圧力で軸方向に一定長の加圧区間の前記プラスチック光ファイバを塑性変形する加圧成形工程と、
を備える光ファイバ製造方法。
【請求項2】
前記加圧形成工程において、前記プラスチック光ファイバの前記加圧区間を一と他とで相違する押圧力の複数の前記加圧体で押圧し、前記加圧区間の前記プラスチック光ファイバを塑性変形することを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ製造方法。
【請求項3】
前記加圧形成工程において、前記プラスチック光ファイバの一の前記加圧区間と他の前記加圧区間とを相違する押圧力の前記加圧体で押圧し、複数の前記加圧区間の前記プラスチック光ファイバを塑性変形することを特徴とする請求項1又は2に記載の光ファイバ製造方法。
【請求項4】
プラスチック光ファイバの側面を前記プラスチック光ファイバの中心軸方向に押圧する加圧体を加熱する加圧体加熱工程と、
前記加圧体加熱工程後、前記加圧体で軸方向に一定長の加圧区間の前記プラスチック光ファイバを押圧し、前記加圧体の熱が伝導して軟化した前記加圧区間の前記プラスチック光ファイバを塑性変形する熱成形工程と、
を備える光ファイバ製造方法。
【請求項5】
前記熱成形工程において、前記プラスチック光ファイバの前記加圧区間を一と他とで相違する押圧力の複数の前記加圧体で押圧し、前記加圧区間の前記プラスチック光ファイバを塑性変形することを特徴とする請求項4に記載の光ファイバ製造方法。
【請求項6】
前記熱成形工程において、前記プラスチック光ファイバの一の前記加圧区間と他の前記加圧区間とを相違する押圧力の前記加圧体で押圧し、複数の前記加圧区間の前記プラスチック光ファイバを塑性変形することを特徴とする請求項4又は5に記載の光ファイバ製造方法。
【請求項7】
プラスチック光ファイバを前記プラスチック光ファイバの軟化点まで加熱する光ファイバ軟化工程と、
前記光ファイバ軟化工程後、前記プラスチック光ファイバの軸方向に一定長の圧延区間を前記プラスチック光ファイバの側面を前記プラスチック光ファイバの中心軸方向に押圧するロールの間に通し、前記圧延区間の前記プラスチック光ファイバを前記ロールの押圧する押圧力で塑性変形する圧延工程と、
を備える光ファイバ製造方法。
【請求項8】
前記圧延工程において、前記プラスチック光ファイバの前記圧延区間を一と他とで相違する押圧力の複数の前記ロールで圧延し、前記圧延区間の前記プラスチック光ファイバを塑性変形することを特徴とする請求項7に記載の光ファイバ製造方法。
【請求項9】
前記圧延工程において、前記プラスチック光ファイバの前記圧延区間内で前記ロールの押圧力を変化させて押圧し、前記圧延区間の前記プラスチック光ファイバを塑性変形することを特徴とする請求項7又は8に記載の光ファイバ製造方法。
【請求項10】
プラスチック光ファイバの側面を前記プラスチック光ファイバの中心軸方向に押圧する複数のロールを加熱するロール加熱工程と、
前記ロール加熱工程後、前記プラスチック光ファイバの軸方向に一定長の圧延区間を前記複数のロールの間に通し、前記複数のロールの熱が伝導して軟化した前記圧延区間の前記プラスチック光ファイバを前記複数のロールの押圧する押圧力で塑性変形する熱圧延工程と、
を備える光ファイバ製造方法。
【請求項11】
前記熱圧延工程において、前記プラスチック光ファイバの前記圧延区間を一と他とで相違する押圧力の複数の前記ロールで圧延し、前記圧延区間の前記プラスチック光ファイバを塑性変形することを特徴とする請求項10に記載の光ファイバ製造方法。
【請求項12】
前記熱圧延工程において、前記プラスチック光ファイバの前記圧延区間内で前記ロールの前記押圧力を変化させて押圧し、前記圧延区間の前記プラスチック光ファイバを塑性変形することを特徴とする請求項10又は11に記載の光ファイバ製造方法。
【請求項13】
プラスチック光ファイバを前記プラスチック光ファイバの軟化点まで加熱する光ファイバ軟化工程と、
前記光ファイバ軟化工程後、梨地の表面を有する端面処理加圧体を軟化した前記プラスチック光ファイバの端面に押圧し、前記プラスチック光ファイバの端面に前記端面処理加圧体の表面の梨地を転写する端面加圧処理工程と、
を備える光ファイバ製造方法。
【請求項14】
梨地の表面でプラスチック光ファイバの端面を押圧する端面処理加圧体を加熱する端面処理加圧体加熱工程と、
前記端面処理加圧体加熱工程後、前記端面処理加圧体を前記プラスチック光ファイバの端面に押圧し、前記端面処理加圧体の熱が伝導して軟化した前記プラスチック光ファイバの端面に前記端面処理加圧体の表面の梨地を転写する端面熱処理工程と、
を備える光ファイバ製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【公開番号】特開2007−94205(P2007−94205A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−285675(P2005−285675)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】