説明

光ファイバ配線系およびスプリッタボックス

【課題】架空光クロージャからドロップケーブルで加入者宅への光ファイバの配線作業を簡易化することのできる光ファイバ配線系あるいは/およびこの光ファイバ配線系に設けられて簡単構造とされたスプリッタボックスを提供する。
【解決手段】内部に単一の空間部を有する光分岐接続箱と、この単一の空間部に配設され、入力側光ファイバ心線を出力側光フファイバ心線に分岐する光分岐部と、前記光分岐接続箱の内面または外面に固定されて外方に向けて接離可能とされ、この単一の空間部に配設されて一定配置の出力側光ファイバ心線に接続された出力側光コネクタと、前記光分岐接続箱の外面から外方に向けて接離可能とされ、この単一の空間部に配設されて一定配置の入力側光ファイバ心線に接続された入力側光コネクタまたは連結光ケーブルと、を有して構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PON(Passive Optical Network)と一般に称されるFTTH(Fiber To The Home)向けの光ファイバ配線形態に関し、特に光ファイバ配線系およびこの光ファイバ配線系に用いるスプリッタボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の光通信技術の進展とインターネットに代表される通信需要急増により。一般家庭を含めた加入者系への光ファイバケーブル(以後、光ケーブルと記す。)の導入が進められている。従来、局から加入者までの光線路は、局から配線される太束の幹線用光ケーブル、それから分岐し、電柱を利用して配線された架空光ケーブル、その架空光ケーブルの途中または端末に形成された架空光クロージャと呼ばれる筐体内部で分岐され加入者宅に配線されるドロップケーブル、という経路で構成されている。このドロップケーブルへの接続を引き落とし接続と称されている。
【0003】
日本でのPONは、光スプリッタは局内と局外の2ヶ所に設置する形態が一般的である、局内に4分岐光スプリッタ、局外に8分岐の光スプリッタを置いて直列接続し、全体で32分岐にする。局外だけの光スプリッタで32分岐することも可能である。8分岐の光スプリッタでは、片側に光ファイバ心線が1心、反対側に光ファイバ心線が8心付いている。(これらの光ファイバ心線の端部に光コネクタを取り付けた光スプリッタもある。)
光スプリッタは、1心の光ファイバから伝わった信号光を8心の光ファイバに均等に出力し、逆に8心の光ファイバからの異なった信号光を1心の光ファイバに出力する働きをする。(局側からの信号光に着目して、以後は、1心側を入力側、8心側を出力側と呼ぶことにする。)
架空光クロージャ内に収容される光スプリッタの入力側光ファイバ心線は、架空光ケーブル内の光ファイバ心線に接続し、出力側をドロップケーブルに接続して、加入者宅に配線する。接続には、融着接続やメカニカルスプライス、あるいは現地付けコネクタが適用される。
【0004】
日本国内では、幹線用光ケーブルには8心光ファイバテープを集合したタイプ、架空光ケーブルには、4心光ファイバテープを集合したタイプのものと光ファイバ単心線を集合したタイプが用いられている。光ファイバテープを集合した架空光ケーブルの場合、光スプリッタに接続する際に、光ファイバテープを単心線に変換することが必要である。そのため、光ファイバテープの端部を工具で直接単心に分離する方法が行われる。架空光クロージャ内への光スプリッタの収容は、光ファイバ心線の余長部に損傷を与えないように、専用のケースを用いて慎重に納める作業が必要になる。この作業は、架空で、風雨にさらされて実施することもあり、手間のかかる作業である。この従来の光スプリッタ収容方法については、たとえば下記の特許文献1において、詳しく述べられている。
【0005】
特許文献2には、分岐接続用クロージャが記載され、特許文献3には、光ファイバ心線と分岐用光ファイバケーブルの光ファイバ心線との接続部分を収容する分岐接続箱が記載されている。特許文献4には光ファイバ分岐接続方法が記載されている。そして、特許文献5には、光ファイバを他の光ファイバに接続するために用いられる光ファイバの分岐接続装置であって、接続部に設置される光分岐接続箱と、光分岐接続箱に収納されて光ファイバに接続される接続用コードとを備えてなり、光分岐接続箱は余長収納部と分離心線とを備えて構成され、接続用コードは、余長収納部に収納されてその先端か光ファイバに接続可能な接続コネクタとして成端される余長部と、余長鵜から分岐し分離心線収納部に収納されてその先端が他の光ファイバから導出された心線に接続可能な光接続器として成端される分離心線とから構成されることを特徴とする光ファイバの分岐接続装置が記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2002−221623号公報
【特許文献2】特開2002−122746号公報
【特許文献3】特開2004−61540号公報
【特許文献4】特開平10−54921号公報
【特許文献5】特開平10−90525号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
既に収容されている光スプリッタからドロップケーブルを引き落とす場合であっても、架空クロージャを開けて、光スプリッタをケースから取り出すことが必要であり、作業に手間のかかる問題があった。最近、作業性改善のため、光スプリッタの光ファイバ心線端部に光コネクタを取り付け、架空光クロージャ内に成端することにより、ケースから光スプリッタから取り出す必要なく、光コネクタで簡単に接続しようとする技術が開発されている。しかしながら、それでも、架空クロージャの開封作業、ジャンパケーブル端部への現地付けコネクタの取付け作業が必要であり、作業性改善には限界があった。
【0008】
以上述べたように、従来のドロップケーブルの配線では、作業に手間がかかる問題があった。これは、今後急増すると予想される光配線工事が滞ることを意味し、情報環境の整備上、大きな問題であった。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑み架空光クロージャからドロップケーブルで加入者宅への光ファイバの配線作業を簡易化することのできる光ファイバ配線系あるいは/およびこの光ファイバ配線系に設けられて、簡単構造とされたスプリッタボックスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題を解決するため、本発明では、局から加入者宅までの光ファイバ配線系において、光スプリッタ内蔵のスプリッタボックスを配線対象のエリア内の架空に設置し、架空光ケーブルから分岐した少心の光ファイバ心線である光ケーブルを、当該スプリッタボックスの入力側コネクタ端子に接続し、当該光スプリッタボックスの出力側コネクタ端子にはドロップケーブルを接続し、当該ドロップケーブルは加入者宅まで配線するようにしている。
【0011】
本発明は、具体的には、局から加入者宅までに設けられ、架空光ケーブルから分岐された光ファイバ心線をドロップケーブルに分岐し、加入者に配線するようにした光ファイバ配線系において、
内部に単一の空間部を有する光分岐接続箱と、この単一の空間部に配設され、入力側光ファイバ心線を出力側光ファイバ心線に分岐する光分岐部と、前記光分岐接続箱の内面または外面に固定されて外方に向けて接離可能とされ、この単一の空間部と配設されて一定配置の出力側光ファイバ心線に接続された出力側光コネクタと、前記光分岐接続箱の外面にから外方に向けて接離可能とされ、この単一の空間部に配設されて一定配置の出力側光ファイバ心線に接続された出力側光コネクタと、前記光分岐接続箱の外面から外方に向けて接離可能とされ、この単一の空間部に配設されて一定配置の入力側光ファイバ心線に接続された入力側光コネクタまたは連結光ケーブルと、を有して構成されたスプリッタボックスを備え、前記ドロップケーブルは両端固定の出力側光ファイバ心線を有して形成され、前記光ファイバ心線は、固定配置の前記入力側光コネクタに接続された入力側光ファイバ心線を有して形成されることを特徴とする光ファイバ配線系を提供する。
【0012】
上記光ファイバ配線系は、前記光ファイバ心線には、局と前記スプリッタボックスとの間に架空クロージャが設けられ、該架空クロージャで分岐された連結光ケーブルは前記スプリッタボックスの外側から前記入力側光コネクタを介して前記入力側光ファイバ心線に接続されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、局から加入者宅までに設けられ、架空光ケーブルから分岐された光ファイバ心線をドロップケーブルに分岐し、加入者宅に配線するようにした光ファイバ配線系に設けられるスプリッタボックスにおいて、
内部に単一の空間部を有する光分岐接続箱と、この単一の空間部に配設され、入力側光ファイバ心線を出力側光ファイバ心線に分岐する光分岐部と、前記光分岐接続箱外面から外方に向けて接続可能とされ、この単一の空間部に、一定の配置で配設された前記出力側光ファイバ心線に接続された一方の出力側光コネクタ部と、前記光分岐接続箱の外面から外方に向けて接続可能とされ、この単一の空間部に、一定の配置で配設された前記入力側光ファイバ心線に接続された一方の入力側光コネクタ部と、前記光分岐接続箱の外側から前記一方の出力側光コネクタ部に接続される他方の出力光コネクタ部と、前記光分岐接続箱の外側から、前記一方の入力側光コネクタ部に接続される他方の入力側光コネクタ部とを備え、前記光分岐接続部の開閉を行うことなく、外側から前記他方の出力側光コネクタ部を前記一方の出力側光コネクタ部に、そして前記他方の入力側光コネクタ部を前記一方の入力側光コネクタ部に接続可能にしてそれぞれ出力側光コネクタおよび入力側光コネクタを形成することを特徴とするスプリッタボックスを提供する。
【0014】
また、本発明は、局から加入者宅までに設けられ、架空光ケーブルから分岐された光ファイバ心線をドロップケーブルに分岐し、加入者宅に配線するようにした光ファイバ配線系に設けられるスプリッタボックスにおいて、
内部に単一の空間部を有する光分岐接続箱と、この単一の空間部に配設され、入力側光ファイバ心線を出力側光ファイバ心線に分岐する光分岐部と、前記光分岐接続箱外面から外方に向けて接続可能とされ、この単一の空間部に、一定の配置で配設された前記出力側光ファイバ心線に接続された一方の出力側光コネクタ部と、前記光分岐接続箱の外面から外方に向けて接続可能とされ、この単一の空間部に、一定の配置で配設された前記入力側光ファイバ心線に一体的に接続された連結光ケーブルと、前記光分岐接続箱の外側から前記一方の出力側光コネクタ部に接続される他方の出力光コネクタ部とを備え、前記光分岐接続部の開閉を行うことなく、外側から前記他方の出力側光コネクタ部を前記一方の出力側光コネクタ部に、そして前記連結光ケーブルによって前記光ファイバ心線と接離可能にしたことを特徴とするスプリッタボックスを提供する。
【0015】
上記スプリッタボックスは、前記一方の出力側光コネクタ部は、前記光分岐接続箱の内面底面に固定され、外方下方に向けて接離可能とされることを特徴とする。
上記スプリッタボックスは、前記一方の入力側光コネクタ部は、前記光分岐接続箱の内面側面に固定され、外方側方に向けて接離可能とされることを特徴とする。
上記スプリッタボックスは、前記光分岐接続箱は、上面部に、前記架空ケーブルを内包する方向に延びた窪みが形成され、内包された前記架空ケーブルを前記窪みに閉じ込める部材が設けられ、あるいは吊り金具が具備されて前記架空ケーブルに固定されるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、光分岐接続箱の予め定めた位置に出力側コネクタおよび入力側コネクタを設定すること、これらの出力側コネクタおよび入力側コネクタに一定の配置で出力側光ファイバおよび入力側光ファイバを接続しているので、装置を簡単にし、出力側コネクタおよび入力側コネクタの接続を光分岐接続箱の開閉することなく、外側から行うことができ、例えば架空光クロージャから加入者宅までの光配線工事を短時間、簡便に行うことができる。このため、今後需要が急増されると見込まれる光ブロードバンドサービスの普及に大いに貢献することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0018】
図1は、本発明の実施例である光ファイバ配線系およびこの光ファイバ配線系に配設されるスプリッタボックスを示す図である。
図1において、局側(図示せず)と架空光クロージャを結ぶ形態で光ファイバ心線1が設けてある。図1においては、2本の光ファイバ心線1が図示してある。その1本の光ファイバ心線1は架空光クロージャ2に設けた心線接続部4によって連結光ケーブル5に接続される。従って、連結光ケーブル5は光ファイバ心線1の1部を形成する。連結光ケーブル5、すなわち分岐された光ファイバ心線に接続されて、架空光クロージャ2の後流側にスプリッタボックス3が設置される。6はドロップケーブルを示し、7を加入者宅を示し、8は加入者宅に設置する光キャビネットを示す。加入者宅に接続するとした場合に、加入者宅に設置する光キャビネット8に接続することを意味する。
【0019】
スプリッタボックス3は、内部に単一の空間部12を有する光分岐接続箱11と、この単一の空間部12に配設される光分岐部13を有する。すなわち光分岐部13は光分岐接続箱11に適当な手段によって支持されて内蔵される。この光分岐部13は入力側光ファイバ心線14を複数の、例えば8本の出力側光ファイバ心線15に分岐するものであり、分岐構造、分岐方法についてはよく知られている。
【0020】
光分岐接続箱11には、底面側に出力側光コネクタ21が、そして側面側には入力側光コネクタ24が形成される。出力側光コネクタ21は、一方の出力側光コネクタ部となる光コネクタソケット22(出力側光コネクタ)および他方の出力側光コネクタ部となる光コネクタプラグ23(出力用の光コネクタ)によって構成され、入力側光コネクタ24は、一方の入力側光コネクタ部となる光コネクタソケット25および他方の入力側光コネクタ部となる光コネクタプラグ26によって構成される。
【0021】
出力側光コネクタソケット22は、光分岐接続箱11の内面であって底面(内面底面)に固定されて外方に(外側に)向けて接続可能とされる。すなわち、底部の外面から外方に向けて接続可能とされる。この場合、出力側光コネクタソケット22を光分岐接続箱11の外面に設けるようにしてもよい。以下、内面底面に設けた場合を例にとって説明する。
【0022】
出力側光ファイバ心線15は一方の端が出力側光コネクタソケット22に接続され、他方の端が光分岐部13に接続され、空間部12内に一定の長さ、一定の配置で配設される。一定の配置とすることによって、工場内で接続配置され、現場で長さの調整、配置の調整を行う必要がなくなる。このように、一方の出力側光コネクタ部は、光分岐接続箱11の内面底面に固定され、外方下方に向けて接離可能とされる。図1の場合、出力側光コネクタソケット22は8個である。
【0023】
この出力側光コネクタソケット22に、外側下方から光コネクタプラグ23が接続される。この光コネクタソケット22には8個の光コネクタプラグ23が接離可能であり、各光コネクタプラグ23にはドロップケーブル6が接続される。すなわち、ドロップケーブル6の一端には光コネクタプラグ23が接続され、他端には加入者宅7が接続される。ドロップケーブル6はその一部に光コネクタ21によって接続された出力側光ファイバ心線15が含まれる。入力側光コネクタソケット25は、光分岐接続箱11の内面であって側面(内面側面)に固定されて外方に(外側に)向けて接続可能とされる。すなわち側部から外方に向けて接続可能とされる。この場合、入力側光コネクタソケット25を光分岐接続箱3の外面に設けてよいのは出力側光コネクタソケット22の場合と同様である。入力側光ファイバ心線14は一方の端が入力側光コネクタソケット25に接続され、他方の端が光分岐部13に接続され、空間部12内に一定の長さ、一定の配置で配設される。すなわち、出力側光ファイバ心線15と同様にして空間部12内に配設される。一定の配置としているので、配設後は長さ、配置について調整の必要がない。このように、一方の入力側光コネクタ部は、光分岐接続箱11の内面側面に固定され、外方側方に向けて接離可能とされる。図1の場合、入力側光コネクタソケット25は1個である。
【0024】
この入力側光コネクタソケット25に、外側側方から光コネクタプラグ26が接続される。この光コネクタソケット25には1個の光コネクタプラグ26が接続される。光コネクタプラグ26には連結光ケーブル5が接続される。すなわち、連結光ケーブル5の一端には光コネクタプラグ26が接続され、他端には架空光クロージャ2の心線接続部4が接続される。これによって局と接続されることになる。このように、架空光クロージャ2内で、架空ケーブルの光ファイバ心線1の1心を切断し、単心の連結光ケーブル5がスプリッタボックス3に接続される。
【0025】
連結光ケーブル5の一端にはあらかじめ光コネクタプラグ26が取り付けられているため、光コネクタソケット25との接続を容易に行うことができる。なお、架空光ケーブルの光ファイバ心線としては、メカニカルプライス、または融着接続法、あるいは現地付け光コネクタによって、接続される。
【0026】
このようにしてスプリッタボックス3を設置しておくことによって、光ブロードサービスを希望する近くの利用者宅には、出力側において、スプリッタボックス内面または外面の光コネクタソケット22に光コネクタブラグ23付きのドロップケーブル6を接続し、そこから配線することを行う。光コネクタプラグ23を光コネクタソケット22に外側から接続でき、また入力側においても光コネクタ26を一定配置の光コネクタ25に接続するようにしているため、スプリッタボックス3を全く開ける必要がなく、簡単に作業ができる。
【0027】
ドロップケーブル6の加入者宅7側には、最近では家屋の外壁にキャビネット8と呼ばれる接続箱が設置されることが多くなっているので、メカニカルスプライス、または融着接続法、あるいは光コネクタでインドアケーブル6と接続することができる。従来と同様、電柱および家屋の双方で、引き留め金具によってドロップケーブル6の支持線を引き留めることにより、ドロップケーブル6に張力を加えた状態で配線することができる。
【0028】
ドロップケーブル6の両端にあらかじめ光コネクタをつけておき、キャビネット8側でもコネクタ接続をすることにすれば、もっとも作業効率がよい。その場合、ドロップケーブル6の長さの調整はできないので、長さの違うものを数種類用意して、現地測定などで、適切な長さのものを選び、ケーブル余長ができるだけでないようにするのがよい。それでもケーブル余長は出ることになるが、それはキャビネット8か電柱で収容する工夫をすればよい。なお、現地づけ光コネクタを適用するなら、やや作業性は悪いものの、長さ調整が可能なため、余長を無くすことができる利点がある。
【0029】
また、スプリッタボックス6の入力側光コネクタソケット24への連結光ケーブル5の接続は、出力側光コネクタ21の構成と同様構造とすることができる。なお、これらのケーブルと接続する光コネクタは風雨に直接さらされるため、防水構造にしておく。また接続していない場合でも内部に水やほこりが入らないよう、光コネクタソケット22には防水性のふたをつけておく。
【0030】
また、この実施例においては、スプリッタボックスの入力端子は入力側光コネクタ24としたが、この入力側光コネクタ24を設けず、スプリッタボックス内部から直接、連結光ケーブル5が出ている構造にしてもよい。この場合にあっても、連結光ケーブルについて、単一の空間部12に一定の長さ、一定の配置で配設された入力側光ファイバ心線14に一体的に接続されていることになる。一体的にとは、1本の光ケーブルとしての意味である。架空光クロージャの近傍にスプリッタを設置する場合には、連結に要するケーブル長は規定長にしてよいので、光コネクタが1セット省かれる分、物品コストが削減できる。また、この連結光ケーブル5の他の先端に、あらかじめ工場で光コネクタを付けておき、架空光クロージャ2内での引き落とし接続に使用するようにしてもよい。
【0031】
一方、実施例のように入力側光コネクタ25を入力側端子とし、連結光ケーブル5に光コネクタ24によって接続する場合には、連結光ケーブル5の長さを工夫出来る。この結果、架空光クロージャ2から遠方まで、1心の連結光ケーブル5で8戸分の配線ができるため、自由度のある配線が必要な場合に経済的である。従来の架空の光配線でも、架空ケーブルを分岐して遠方まで少心を配線することが行われているが、架空光クロージャ内の光スプリッタの出力ファイルを延長して配線する形態であり、8心のケーブルで8戸分をまかなうものであるため光ケーブルのコストを高める要因の1つとなっている。本実施例は分岐接続箱3を設けてこの問題を解決する。
【0032】
前述の実施例では、出力側コネクタ22が工場付けであることを前提として説明した。これを、現地組立型コネクタにし、配線作業者が、現地、あるいは出発前に事務所で、スプリッタボックス内での光スプリッタ収容、コネクタ付けと配線作業をすることにしてもよい。この作業は、地上あるいは屋内で実施すればよいので、架空で行う場合と比べれば、作業性は十分高い。空き時間にこの組立て作業を行うことにすれば、スプリッタボックスを安価に入手できることになる。現在の現地組立型コネクタで、防水性を備えたものは知られていないが、カバーを工夫することで実用上の防水性を確保することは容易である。図2および図3は、スプリッタボックス3を下側から、および側方から見た外観図である。これらの図において、60mm×90mm×180mm程度の小型の筐体である光分岐接続箱11に、8分岐の光スプリッタを1個実装している光導波路型である。図2において、光分岐接続箱11の上面部には、吊り金具31を取り付けてある。これは、吊線32に取り付けるものである。吊線32とは電柱間に張るワイヤであり、架空ケーブルを支持するのに利用する。あるいは、このスプリッタボックス3は軽量のため、架空ケーブル自体に吊り金具31で固定し、ぶら下げることにしてもよい。
【0033】
スプリッタボックス3の下方外面には入出力用の光コネクタ21、24が配置されており、出力用の光コネクタ23には光コネクタ防水キャップ33が取り付けてある。また、入力側光コネクタ24には、光ファイバ1心を収容した連結光ケーブル5が取り付けてある。入出力用の光コネクタ21、24は防水構造の市販品を改造して使用することができる。ドロップケーブル6は、光コネクタ防水キャップ33を外して、前述したように光コネクタ22を光コネクタ23につなぎ込むだけで、接続が終了する。
【0034】
この実施例では、入出力用の光コネクタ21、24をスプリッタボックス3の底部に配置しているが、入力と出力の取り違えがないように、入力側光コネクタ24と出力側光コネクタ21を別な面に配置するようにしてもよい(図1参照)。
【0035】
他の実施例を説明する。これまでの実施例では入力が光ファイバ心線1心であったが、これをテープ心線にするものである。テープ心線は、4心、8心が一般的であるが、架空ケーブル内のテープ心線に整合した4心テープが好ましい。連結光ケーブルは4心テープ心線が1本収容した構造とする。架空光クロージャ2内の接続は、メカニカルスプライス、融着接続、MTコネクタで、テープ単位で一括に行う。スプリッタボックス3側では、連結光ケーブル5がスプリッタボックス3内部へ直通する構造の場合にはスプリッタボックス外面でのコネクタは不要であるが、独立したケーブルとする場合には、MPOコネクタなどの多心コネクタを使用する。
【0036】
内部に収容する光分岐部13を構成する光スプリッタには、1心入力用の光スプリッタ4個を使ってもよいが、8分岐の回路4つを1チップに加工した平面型光導波路を使用した、4心入力用の光スプリッタ1個を使うことができる。後者の方が、光スプリッタの収容および内部配線が容易になる。この光導波路技術は、局内側の光スプリッタで多用されている。この技術については下記の文献に詳しい。
【0037】
堀江他、“FTTH向け所内光配線用品の開発”、工業技術研究誌「日立電線」、No.25、pp.1−6、2006年1月発行
4心入力用の光スプリッタを使う場合には、連結光ケーブル5内のテープ心線と、光スプリッタの入力側心線との接続は、多心融着接続などの一括接続で実施するのが好ましい。なお、この実施例では、8分岐の場合には、出力側コネクタが32個必要になる、出力側コネクタを単一面に集中配置せずに分散させることにより、スプリッタボックス3の容積増加を軽減することは可能である。
【0038】
また、これまで説明した実施例では、スプリッタボックス3の上方に、架空ケーブルを内包できる一方向に延びた窪みをつけ、架空ケーブルをその窪み内部に抱き込むように固定する部材を、スプリッタボックス3に取り付けるようにしてもよい。そうすれば、風圧による振り子運動が緩和される結果、コネクタ部分へ無理な力がかからなくなり、信頼性確保に効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施例の概略構成を示す図。
【図2】スプリッタボックスを下側から見た外観図。
【図3】スプリッタボックスを上側から見た外観図。
【符号の説明】
【0040】
1…光ファイバ心線、2…架空光クロージャ、3…スプリッタボックス、4…心線接続部、5…連結光ケーブル、6…ドロップケーブル、7…加入者宅、8…キャビネット、11…光分岐接続箱、12…単一の空間部、13…光分岐部、14…入力側光ファイバ心線、15…出力側光ファイバ心線、21…出力側光コネクタ、22…光コネクタソケット(出力側の光コネクタ)、23…光コネクタプラグ(光コネクタ)、24…入力側光コネクタ、25…光コネクタソケット、26…光コネクタプラグ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
局から加入者宅までに設けられ、架空光ケーブルから分岐された光ファイバ心線をドロップケーブルに分岐し、加入者に配線するようにした光ファイバ配線系において、
内部に単一の空間部を有する光分岐接続箱と、この単一の空間部に配設され、入力側光ファイバ心線を出力側光ファイバ心線に分岐する光分岐部と、前記光分岐接続箱の内面または外面に固定されて外方に向けて接離可能とされ、この単一の空間部と配設されて一定配置の出力側光ファイバ心線に接続された出力側光コネクタと、前記光分岐接続箱の外面から外方に向けて接離可能とされ、この単一の空間部に配設されて一定配置の出力側光ファイバ心線に接続された出力側光コネクタと、前記光分岐接続箱の外面から外方に向けて接離可能とされ、この単一の空間部に配設されて一定配置の入力側光ファイバ心線に接続された入力側光コネクタまたは連結光ケーブルと、を有して構成されたスプリッタボックスを備え、前記ドロップケーブルは、両端固定の出力側光ファイバ心線を有して形成され、前記光ファイバ心線は、固定配置の前記入力側光コネクタに接続された入力側光ファイバ心線を有して形成されることを特徴とする光ファイバ配線系。
【請求項2】
請求項1において、前記光ファイバ心線には、局と前記スプリッタボックスとの間に架空クロージャが設けられ、該架空クロージャで分岐された連結光ケーブルは前記スプリッタボックスの外側から前記入力側光コネクタを介して前記入力側光ファイバ心線に接続されることを特徴とする光ファイバ配線系。
【請求項3】
局から加入者宅までに設けられ、架空光ケーブルから分岐された光ファイバ心線をドロップケーブルに分岐し、加入者宅に配線するようにした光ファイバ配線系に設けられるスプリッタボックスにおいて、
内部に単一の空間部を有する光分岐接続箱と、この単一の空間部に配設され、入力側光ファイバ心線を出力側光ファイバ心線に分岐する光分岐部と、前記光分岐接続箱の外面にから外方に向けて接続可能とされ、この単一の空間部に一定の配置で配設された前記出力側光ファイバ心線に接続された一方の出力側光コネクタ部と、前記光分岐接続箱の外面から外方に向けて接続可能とされ、この単一の空間部に、一定の配置で配設された前記入力側光ファイバ心線に接続された一方の入力側光コネクタ部と、前記光分岐接続箱の外側から前記一方の出力側光コネクタ部に接続される他方の出力光コネクタ部と、前記光分岐接続箱の外側から、前記一方の入力側光コネクタ部に接続される他方の入力側光コネクタ部とを備え、前記光分岐接続部の開閉を行うことなく、外側から前記他方の出力側光コネクタ部を前記一方の出力側光コネクタ部に、そして前記他方の入力側光コネクタ部を前記一方の入力側光コネクタ部に接続可能にしてそれぞれ出力側光コネクタおよび入力側光コネクタを形成することを特徴とするスプリッタボックス。
【請求項4】
局から加入者宅までに設けられ、架空光ケーブルから分岐された光ファイバ心線をドロップケーブルに分岐し、加入者宅に配線するようにした光ファイバ配線系に設けられるスプリッタボックスにおいて、
内部に単一の空間部を有する光分岐接続箱と、この単一の空間部に配設され、入力側光ファイバ心線を出力側光ファイバ心線に分岐する光分岐部と、前記光分岐接続箱の外面から外方に向けて接続可能とされ、この単一の空間部に、一定の配置で配設された前記出力側光ファイバ心線に接続された一方の出力側光コネクタ部と、前記光分岐接続箱の内面または外面に固定されて外方に向けて接続可能とされ、この単一の空間部に一定の長さ、一定の配置で配設された前記入力側光ファイバ心線に一体的に接続された連結光ケーブルと、前記光分岐接続箱の外側から前記一方の出力側光コネクタ部に接続される他方の出力光コネクタ部とを備え、前記光分岐接続部の開閉を行うことなく、外側から前記他方の出力側光コネクタ部を前記一方の出力側光コネクタ部に、そして前記連結光ケーブルによって前記光ファイバ心線と接離可能にしたことを特徴とするスプリッタボックス。
【請求項5】
請求項3または4において、前記一方の出力側光コネクタ部は、前記光分岐接続箱の底部に固定され、外方下方に向けて接離可能とされることを特徴とするスプリッタボックス。
【請求項6】
請求項3または4において、前記一方の入力側光コネクタ部は、前記光分岐接続箱の側部に固定され、外方側方に向けて接離可能とされることを特徴とするスプリッタボックス。
【請求項7】
請求項3または4において、前記光分岐接続箱は、上面部に、前記架空ケーブルを内包する方向に延びた窪みが形成され、内包された前記架空ケーブルを前記窪みに閉じ込める部材が設けられ、あるいは吊り金具が具備されて前記架空ケーブルに固定されるようにしたことを特徴とするスプリッタボックス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−129166(P2008−129166A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−311675(P2006−311675)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(504026856)株式会社アドバンスト・ケーブル・システムズ (64)
【Fターム(参考)】