光マイクロホン
【課題】音響波の伝搬方向および伝搬の向きを検出することができる光マイクロホンを提供する。
【解決手段】本発明の光マイクロホンは、環境流体を伝搬する音響波を、光波を用いて検出する光マイクロホンであって、固体の伝搬媒質によって構成されており、前記音響波が伝搬する伝搬媒質部3、および、前記伝搬媒質部3を支持する支持部9を含む音響受波部2と、前記伝搬媒質部3中を伝搬する前記音響波1を横切って、前記伝搬媒質部3を透過する光波5を出射する光源4と、前記伝搬媒質部3を透過した前記光波を受光し、電気信号を出力する複数の光電変換素子を有する光電変換部6とを備え、前記音響受波部2において、前記伝搬媒質部3は、前記光波が入射および出射する1対の主面と、前記1対の主面間に位置し、前記環境流体から音響波が入射する少なくとも1つの側面を有し、前記支持部は、前記少なくとも1つの側面の少なくとも一部を露出する開口9aと前記開口以外の領域において、前記1対の主面間を覆う遮音部9bとを含む。
【解決手段】本発明の光マイクロホンは、環境流体を伝搬する音響波を、光波を用いて検出する光マイクロホンであって、固体の伝搬媒質によって構成されており、前記音響波が伝搬する伝搬媒質部3、および、前記伝搬媒質部3を支持する支持部9を含む音響受波部2と、前記伝搬媒質部3中を伝搬する前記音響波1を横切って、前記伝搬媒質部3を透過する光波5を出射する光源4と、前記伝搬媒質部3を透過した前記光波を受光し、電気信号を出力する複数の光電変換素子を有する光電変換部6とを備え、前記音響受波部2において、前記伝搬媒質部3は、前記光波が入射および出射する1対の主面と、前記1対の主面間に位置し、前記環境流体から音響波が入射する少なくとも1つの側面を有し、前記支持部は、前記少なくとも1つの側面の少なくとも一部を露出する開口9aと前記開口以外の領域において、前記1対の主面間を覆う遮音部9bとを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気などの気体を伝搬する音響波を受波し、光を利用して、受波した音響波を電気信号に変換する光マイクロホンに関する。
【背景技術】
【0002】
音響波を受波し、電気信号に変換する装置として、従来からマイクロホンが知られている。ダイナミックマイクロホンやコンデンサマイクロホンに代表される多くのマイクロホンは、振動板を備えている。これらのマイクロホンでは、音波が振動板を振動させることによって受波し、その振動を電気信号として取り出す。この種のマイクロホンは、振動板などの機械的振動部を有しているため、多数回、繰り返して使用することにより、機械的振動部の特性が変化する可能性がある。また、非常に強力な音波をマイクロホンで検出しようとすると、機械的振動部が破壊する可能性がある。
【0003】
このような従来の機械的振動部を有するマイクロホンの課題を解消するために、たとえば、特許文献1および特許文献2は機械的振動部を有しておらず、光波を利用することで音響波を検出する光マイクロホンを開示している。
【0004】
具体的には、図22に示すように、特許文献1は、光源151と、出射系光学部品152と受光系光学部品153と検出部154と信号処理部155を備えた光マイクロホンを開示している。特許文献1によれば、光源151から出射した光5を出射系光学部品152で成形したのち、空気中を伝搬する音響波1とに作用させ、回折光を生じさせる。この際、位相が互いに反転した2つの回折光成分が生じる。回折光を受光系光学部品153で調整した後に、レーザー光の光軸を中心とした円周上に配置された複数の光電変換素子が配置された検出部154で受光して電気信号に変換することで音響波1を検出する。これにより、音響波1を伝搬方向により分離検出・分離録音することが可能となる。
【0005】
また、特許文献2は、音響波を媒質中に伝搬させ、媒質の光学的特性の変化を検出することにより、音響波を検出する方法を開示している。図23に示すように、空気中を伝搬する音響波1は、開口部201から取り込まれ、壁面の少なくとも一部が光音響伝搬媒質203から形成されている音響導波路202中を進行する。音響導波路202を進行する音波は光音響伝搬媒質203に取り込まれて、その内部を伝搬する。光音響伝搬媒質203では、音波の伝搬に伴い、屈折率変化が生じる。この屈折率変化をレーザードップラー振動計204を用いて光変調として取り出すことにより、音響波1を検出する。特許文献2は光音響伝搬媒質203として、シリカ乾燥ゲルを用いることで、導波路中の音響波を光音響伝搬媒質203の内部へ高効率に取り込むことができると開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−194677号公報
【特許文献2】特開2009−085868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の光マイクロホンは、音響波の伝搬方向を検出することは可能であるが、伝搬の向きまでを特定することはできない。このため、伝搬の向きが180°異なる2つの音響波を区別することはできないという課題がある。
【0008】
特許文献2の方法は、レーザードップラー振動計を用いる。レーザードップラー振動計は、音響光学素子などの光周波数シフタや、多数のミラー、ビームスプリッタ、レンズなどからなる複雑な光学系が必要であるため、大型である。このため、特許文献2に開示される測定装置全体が大きくなってしまうという課題がある。また、特許文献2の光マイクロホンでは、音響波の伝搬方向を分離して検出することはできない。
【0009】
本発明はこのような従来技術の少なくとも1つを解決し、音響波の伝搬方向および伝搬の向きを検出することができる光マイクロホンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の光マイクロホンは、環境流体を伝搬する音響波を、光波を用いて検出する光マイクロホンであって、固体の伝搬媒質によって構成されており、前記音響波が伝搬する伝搬媒質部、および、前記伝搬媒質部を支持する支持部を含む音響受波部と、前記伝搬媒質部中を伝搬する前記音響波を横切って、前記伝搬媒質部を透過する光波を出射する光源と、前記伝搬媒質部を透過した前記光波を受光し、電気信号を出力する複数の光電変換素子を有する光電変換部とを備え、前記音響受波部において、前記伝搬媒質部は、前記光波が入射および出射する1対の主面と、前記1対の主面間に位置し、前記環境流体から音響波が入射する少なくとも1つの側面とを有し、前記支持部は、前記少なくとも1つの側面の少なくとも一部を露出する開口と前記開口以外の領域において、前記1対の主面間を覆う遮音部とを含む。
【0011】
本発明の光マイクロホンは、環境流体を伝搬する音響波を、光波を用いて検出する光マイクロホンであって、固体の伝搬媒質によって構成されており、前記音響波が伝搬する伝搬媒質部、および、前記伝搬媒質部を支持する支持部を含む音響受波部と、前記伝搬媒質部中を伝搬する前記音響波を横切って、前記伝搬媒質部を透過する光波を出射する光源と、前記伝搬媒質部を透過した前記光波を受光し、電気信号を出力する光電変換素子、および、前記光波の光軸を中心として回転可能であり前記光波の一部を遮光する遮光部を有する光電変換部とを備え、前記音響受波部において、前記伝搬媒質部は、前記光波が入射および出射する1対の主面と、前記1対の主面間に位置し、前記環境流体から音響波が入射する少なくとも1つの側面を有し、前記支持部は、前記少なくとも1つの側面の少なくとも一部を露出する開口と前記開口以外の領域において、前記1対の主面間を覆う遮音部とを含む。
【0012】
本発明の光マイクロホンは、環境流体を伝搬する音響波を、光波を用いて検出する光マイクロホンであって、固体の伝搬媒質によって構成されており、前記音響波が伝搬する伝搬媒質部、および、前記伝搬媒質部を支持する支持部を含む音響受波部と、前記伝搬媒質部中を伝搬する前記音響波を横切って、前記伝搬媒質部を透過する光波を出射する光源と、受光面を有し、前記伝搬媒質部を透過した前記光波を前記受光面で受光し、電気信号を出力する光電変換部であって、前記伝搬媒質部を透過した前記光波の一部を受光しないように前記光波の光軸に対して前記受光面の中心がシフトしており、前記光波の光軸を中心として前記受光面が回転可能な光電変換部とを備え、前記音響受波部において、前記伝搬媒質部は、前記光波が入射および出射する1対の主面と、前記1対の主面間に位置し、前記環境流体から音響波が入射する少なくとも1つの側面を有し、前記支持部は、前記少なくとも1つの側面の少なくとも一部を露出する開口と前記開口以外の領域において、前記1対の主面間を覆う遮音部とを含む。
【0013】
ある好ましい実施形態において、光マイクロホンは、ビームスプリッタとミラーとをさらに備え、前記ビームスプリッタは前記光源と音響受波部との間に位置し、前記音響受波部は前記ビームスプリッタと前記ミラーとの間に位置し、前記光源から出射した光波は、ビームスプリッタおよび前記伝搬媒質部を透過して前記ミラーで反射し、前記ミラーで反射した光波は、前記伝搬媒質部を再度透過し、前記ビームスプリッタで反射され前記光電変換部へ入射する。
【0014】
ある好ましい実施形態において、前記遮音部は、前記伝搬媒質部を透過する光波の周りを90°以上の角度で覆っている。
【0015】
ある好ましい実施形態において、前記遮音部は、前記伝搬媒質部を透過する光波の周りを180°以上の角度で覆っている。
【0016】
ある好ましい実施形態において、前記少なくとも1つの側面は曲面であり、前記開口において露出している任意の部分から前記伝搬媒質部を透過している光波までの距離は等しい。
【0017】
ある好ましい実施形態において、前記伝搬媒質部は、前記環境流体から音響波が入射する複数の側面を有し、前記複数の側面は、前記伝搬媒質部を透過する光波と垂直な平面において、前記光波の周りに配置されており、前記複数の側面は平面であり、前記開口において、前記複数の側面は露出しており、前記複数の側面から前記伝搬媒質部を透過している光波までの距離は等しい請求項1から4のいずれかに記載の光マイクロホン。
【0018】
ある好ましい実施形態において、前記支持部は、前記光波に対して不透明であって、前記支持部は、前記伝搬媒質部の前記1対の主面のそれぞれ一部を露出する孔を有し、前記光波は前記孔を通過する。
【0019】
ある好ましい実施形態において、光マイクロホンは、前記第1開口に設けられた複数のホーンをさらに備え、前記複数のホーンは、前記伝搬媒質部を透過する光波と垂直な平面において、前記光波の周りに等角度で配置されている。
【0020】
ある好ましい実施形態において、前記支持部は、前記開口を複数の開口部分に分割する少なくとも1つの区切りを有し、前記少なくとも1つの区切りによって分割された複数の開口部分は、前記伝搬媒質部を透過する光波と垂直な平面において、前記光波の周りに等角度で配置されている。
【0021】
ある好ましい実施形態において、前記光電変換素部において、前記複数の光電変換素子は、前記光波の周りに等角度で配置されている。
【0022】
ある好ましい実施形態において、前記光波の光軸周りにおける、前記複数の側面の各境界の方位と、前記複数の光電変換素子の各境界の方位は一致している。
【0023】
ある好ましい実施形態において、光マイクロホンは、前記伝搬媒部はシリカナノ多孔体によって構成されている。
【0024】
本発明の光マイクロホンは上記いずれかに規定される光マイクロホンを2つ備え、一方の光マイクロホンの音響受波部の遮光部と、他方の光マイクロホンの音響受波部の遮光部とが対向して配置されている。
【発明の効果】
【0025】
本発明の光マイクロホンによれば、音響波が入射する開口以外の領域において、伝搬媒質部の光波が入射および出射する主面の間を遮音部が覆っているため、環境流体を伝搬する音響波の伝搬方向のみならず伝搬の向きを同定することができる。また、各伝搬方向毎に分離して音響波に対応する信号を取得することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1A】本発明による光マイクロホンの第1の実施形態を示す概略的な斜視図である。
【図1B】伝搬媒質部の側面が曲面形状である実施形態を示す図である。
【図2】第1の実施形態における開口の位置する角度と検出可能領域を説明する図である。
【図3】伝搬媒質部中の音響波による光波の回折を表す図である。
【図4】(a)および(b)は0次回折光波と±1次回折光波との重なりを示す図である。
【図5】(a)および(b)は、説明のための音響受波部および光電変換部の構造を示す図である。
【図6】(a)から(f)は、伝搬方向の異なる音響波が図5(a)に示す音響受波部に入射した場合における回折光波の位置を示す図である。
【図7】(a)および(b)は、光電変換部から得られる電気信号を示す図である。
【図8】第1の実施形態の光マイクロホンの実験例の構造を示す図である。
【図9】実験例における音響波を検出した場合の出力波形を示す図である。
【図10】音響波を検出しなかった場合の出力波形を示す図である。
【図11】第1の実施形態による光マイクロホンの別の形態を示す図である。
【図12】音響波1が空気から伝搬媒質部3へ屈折伝搬する様子を示す図である。
【図13】音響受波部の他の形態を示す図であって、ホーンを有する音響受波部を示す図である。
【図14】音響受波部の他の形態を示す図であって、伝搬媒質部からなるホーンを有する音響受波部を示す図である。
【図15】音響受波部の他の形態を示す図であって、開口に区切りを有する音響受波部を示す図である。
【図16】本発明による光マイクロホンの第2の実施形態を示す概略的な斜視図である。
【図17】(a)から(c)は、第2の実施形態における、光波と回転遮光板との位置関係を示す図である。
【図18】(a)から(e)は、第2の実施形態において、回転遮光板の角度を変えた場合における、回転遮光板と回折光波との位置関係を示す図である。
【図19】第2の実施形態の他の例を示す図であって、回転可能に支持される光電変換部を示す模式的な図である。
【図20】本発明による光マイクロホンの第3の実施形態を示す概略的な図である。
【図21】本発明による光マイクロホンの第4の実施形態を示す概略的な斜視図である。
【図22】従来の光マイクロホンを示す図である。
【図23】従来の他の光マイクロホンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1の実施形態)
以下、本発明による光マイクロホンの第1の実施形態を説明する。図1は、第1の実施形態の光マイクロホン101の構成を概略的に示す斜視図である。なお、本願明細書において、「伝搬方向」とは音響波等がある直線に沿って伝搬する場合において、基準線や基準面に対する直線のなす角度をいい、「伝搬の向き」とは、その直線上において、音響波等が近づく向きであるか遠ざかる向きであるかをいう。「伝搬方向」および「伝搬の向き」が特定される場合「伝搬方位」が定まる。
【0028】
1.光マイクロホン101の構成
光マイクロホン101は、その外部を音響波1が伝搬する環境流体で囲まれている。環境流体は、たとえば空気であるが、他の気体であってもよいし、水などの液体であってもよい。光マイクロホン101は、音響受波部2と、光源4と、光電変換部6とを備える。環境流体を伝搬する音響波1は、音響受波部2に受波され、音響受波部2内を伝搬する。光源4から出射する光波5は、音響受波部2を透過することによって、音響受波部2を伝搬する音響波1と作用する。音響受波部2を透過した光波5は光電変換部6によって検出される。本実施形態では、以下において詳細に説明するように、音響波1の伝搬方向を含む音響波1の情報を検出するために光電変換部6が複数の光電変換素子7−1〜7−12を有している。
【0029】
(光源4)
光源4は、音響受波部2に向けて光波5を出射する。音響受波部2を透過した光波5は光電変換部6に入射する。この際、光波5の光路と音響波1の伝搬方向が一致した場合、音響波1の信号を検出することができない。そのため、光波5の伝搬方向と音響波1の伝搬方向とは少なくとも交差することが好ましい。より好ましくは、光波5の光路と音響波1の伝搬方向とは互いに垂直である。
【0030】
光波5が音響受波部2を透過する必要があるので、音響受波部2での伝搬ロスが大きくならないように、光波5の波長を選ぶ必要がある。以下において説明するように音響受波部2の伝搬媒質部3としてシリカ乾燥ゲルを用いる場合、光源4の波長は600nm以上であることが好ましい。
【0031】
光波5はコヒーレントな光であってもよいし、インコヒーレントな光であってもよい。ただし、レーザー光のようなコヒーレントな光であるほうが、回折光波の干渉が生じやすく、音響波1を検出しやすい。
【0032】
光源4は、たとえば、レーザー光源で構成される。光源4は、レーザー光源と光ファイバとで構成しても良い。この場合、光波5は光ファイバの出力端から出力される。
【0033】
(音響受波部2)
音響受波部2は、伝搬媒質部3と支持部9とを含む。
【0034】
・伝搬媒質部3
伝搬媒質部3は、光波5が入射および出射する1対の主面3a、3bと、1対の主面3a、3b間に位置し、環境流体から音響波1が入射する少なくとも1つの側面を有する。本実施形態では、音響波1が入射する側面3c1、3c2、3c3、3c4、3c5、3c6を有している。以下、これらの側面をまとめて参照するときは側面3c1〜3c6と記す。側面3c1〜3c6のそれぞれは、平面形状を有しており、好ましくは、同じ形状で同じ面積を有する。側面3c1〜3c6から伝搬媒質部3に入射した音響波1が平面波として伝搬し、音響波1の伝搬方向が同定しやすくなるからである。伝搬媒質部3は、側面3c1〜3c6以外に、1対の主面3a、3b間に位置する側面3d、3e、3fを有している。
【0035】
音響波1は、伝搬方向に応じて側面3c1〜3c6のいずれかから伝搬媒質部3の内部へ入射し、音響波1が伝搬媒質部3内を伝搬し、伝搬媒質部3を透過している光波5を横切る。側面3c1〜3c6から伝搬媒質部3を透過している光波5までの距離は互い等しいことが好ましい。以下において説明するように、側面3d、3e、3fから音響波1は入射しない。また、本実施形態では、伝搬媒質部3を透過している光波5に垂直な面内の、光波5の周りの180°の角度において、音響波1の伝搬方向を検出することができる。
【0036】
音響波1が入射する側面が設けられている光波5の周りの角度が一定であれば、側面の数は、多いほど、伝搬方向および向き(進行方向)、つまり、音響波1の伝搬方位を正確に特定することが可能となる。これらのことから、側面3c1〜3c6は、音響媒質部3を透過する光波5の光軸を中心軸とする正多角形柱の側面であることが好ましい。
【0037】
図1Bに示すように、伝搬媒質部3において、音響波1が入射する面は1つであってもよい。この場合、音響波1は、入射可能角度において、曲面形状の側面3c’を有していることが好ましい。より具体的には、側面3c’は伝搬媒質部3を透過している光波5の光軸を中心軸とする円柱側面の一部であることが好ましい。側面3c’の任意の位置から光波5の光軸までの距離を等しくできるからである。
【0038】
効率よく音響波1を伝搬媒質部3に入射させるため、環境流体と音響媒質部3との音響インピーダンス差は小さいことが好ましい。音響インピーダンスは、音響波が伝搬する物質の密度とその物質における音速の積であらわすことができる。ガラスやアクリルなどの通常の固体材料では、空気との音響インピーダンスの差が大きいため、入力界面で大部分が音響波が反射してしまい、音響波を効率よく内部に取り込むことができない。
【0039】
本実施形態では、音響媒質部3として、シリカ乾燥ゲルを用いることが好ましい。シリカ乾燥ゲルの密度は、70kg/m3以上280kg/m3以下であり、シリカ乾燥ゲルの音速は空気中の音速よりも小さく、50m/sec以上150m/sec以下程度である。たとえば、100kg/m3の密度および50m/secの音速を有するシリカ乾燥ゲルを用いた場合、音響インピーダンスは、空気の音響インピーダンスの11.3倍程度となる。このため、界面での音響波1の反射は70%にとどまり、音響波1のエネルギーの30%程度が界面で反射されずに、シリカ乾燥ゲルの内部へ取り込まれる。つまり、空気中の音響波を効率よくシリカ乾燥ゲル内部に取り込むことができる。こうした理由から、伝搬媒質部3を構成する伝搬媒質にシリカ乾燥ゲルを用いることによって、空気中を伝搬する音響波1を効率よく入射させることができる。
【0040】
また、伝搬媒質部3としては、音響波1が伝搬した際に、入力音圧に対する屈折率変化量Δnが大きい材料を用いるのが好ましい。シリカ乾燥ゲルは光波の屈折率変化量Δnも大きいという特長がある。空気の屈折率変化量Δnは、1Paの音圧変化に対して2.0×10-9であるのに対して、シリカ乾燥ゲルの1Paの音圧変化に対しての屈折率変化量Δnは1.0×10-7程度と大きく、そのため10cmを超えるような大きな伝搬媒質を用意しなくても十分な感度が得られる。
【0041】
・支持部9
支持部9は、伝搬媒質部3を支持する。このために支持部9は、音響波用の開口9aおよび開口9aにつながる内空間を有し、内空間に伝搬媒質部3が配置され、支持される。伝搬媒質部3の側面3c1〜3c6は開口9aにおいて露出しており、環境流体と接している。環境流体を伝搬する音響波1は開口9a中の側面3c1〜3c6のいずれかから伝搬媒質部3に取り込まれる。また、支持部9は、開口9a以外の領域において、伝搬媒質部3の1対の主面3a、3b間を覆う遮音部9bを有する。
【0042】
図2(a)から(c)は、伝搬媒質部3を透過している光波5に垂直な面内の、光波5の周りにおける、開口9aと遮音部9bとの位置関係を示している。図2(a)に示すように、光波5の周りの180°の角度において遮音部9bが設けられている場合、開口9aは、光波5の周りの180°の角度において伝搬媒質部3露出する。この場合、開口9aが位置する180°の角度全体において、音響波1の伝搬方向および向きを検出することできる。
【0043】
また、図2(b)に示すように、光波5の周りの180°よりも大きく360°よりも小さい角度θにおいて、遮音部9bが設けられている場合、開口9aは、光波5の周りの(360−θ)°の角度において伝搬媒質部3露出し、この角度全体において、音響波1の伝搬方向および向きを検出することできる。
【0044】
一方、図2(c)に示すように、光波5の周りの0°よりも大きく180°よりも小さい角度θにおいて、遮音部9bが設けられている場合、開口9aは、光波5の周りの(360−θ)°の角度において伝搬媒質部3露出する。しかし、この場合、開口9aが設けられた角度より狭いθの範囲において、音響波1の伝搬方向および向きを検出することができ、この角度の領域を挟むそれぞれ(180−θ)°の領域では、伝搬方向を検出することはできるが、向きを検出することはできない。つまり、遮音部9bが設けられた角度以上の角度で音響波1の伝搬方向および向きを検出することはできない。
【0045】
角度θの大きさは、本実施形態の光マイクロホン101に求められる用途に応じた仕様によって決定し得る。
【0046】
このように、遮音部9bが光波5に垂直な面内の、光波5の周りを180°以上覆っている場合には、音響波1の伝搬方向および向きを検出することできる。一方、遮音部9bが光波5に垂直な面内の、光波5の周りを0°よりも大きく180°よりも小さい角度θで覆っている場合には、角度θの範囲でしか音響波1の伝搬方向および向きを検出するこができないが、より広い範囲で音響波が伝搬しているかどうかを検出することができる。たとえば、45°≦θ≦90°を満たすようにθを決定することによって、270°以上315°以下の範囲で音響波1の伝搬を検出することでき、45°以上90°以下の範囲において、音響波1の伝搬方向および向きを検出することできる。
【0047】
支持部9を遮音部9bと一体的に構成する場合、音響波1を遮音することができる材料によって支持部9を構成することが好ましい。そのため、シリカナノ多孔体のような音響インピーダンスが環境流体のインピーダンスに近い材料ではなく、ガラス、アクリル、金属など通常の固体材料を用いればよい。支持部9は光源4から出射する光波5に対して透明であることが好ましい。そのため、ガラスやアクリルなどの透明材料を用いるのが好ましい。金属のような透光性のない材料を用いる場合には、伝搬媒質部3の一対の主面3a、3bの一部が露出するように、光波5の入射する位置及び出射する位置に光波5より十分大きいサイズの孔を設け、そこから光波5を入出射させれば良い。
【0048】
(光電変換部6)
光電変換部6は、複数の光電変換素子を含む。好ましくは、複数の光電変換素子は、1点を中心として円周方向に配列されている。本実施形態では、光電変換部6は光電変換素子7−1〜7−12を含む。光電変換素子7−1〜7−12は、それぞれ、等しい扇形状を有しており、扇形の頂点を合わせて円周方向に配列されている。図1Aに示すように、扇形の頂点が光波5の光軸に位置するように、光電変換部6は光源4に対し配置される。このため光電変換素子7−1〜7−12は、音響受波部2を透過した光波5の周りに等角度で配置されている。
【0049】
好ましくは、光波5の周りにおける、光電変換素子7−1〜7−12の各境界の方位は、伝搬媒質部3の側面3c1〜3c6の各境界の方位と一致している。たとえば、図1Aに示すように、光波5を中心とし側面3c1と遮音部9bとの境界を0°の方位とした場合、光電変換素子7−1と光電変換素子7−2との境界、および、側面3c1と側面3c2との境界はいずれも30°の方位に位置している。他の光電変換素子の境界の方位も、対応する側面の境界の方位と一致している。
【0050】
以下において説明するように、本実施形態の光マイクロホン101は、音響受波部を透過することによって音響波1の伝搬方向に生じる、+1次回折光波および−1次回折光波のいずれか一方を検出し、音響波の伝搬方向および向きを検出する。光波5に垂直な面内において、+1次回折光波および−1次回折光波は光波5に対して対称な位置、つまり、光波5に対して180°異なる方位に生成する。したがって、音響波の伝搬方向および向きを検出するために、光電変換部6は、光波5に対して180°以下の範囲で光電変換素子を配置すればよい。
【0051】
開口9aが光波5の周りに180°より小さい角度で設けられている場合には、開口9aが設けられている方位の範囲内にのみ光電変換素子を配置してもよいし、この方位の範囲の、光波5に対して点対称となる方位の範囲内にのみ光電変換素子を配置してもよい。また、遮音部9bが光波5の周りに180°より小さい角度で設けられている場合には、遮音部9bが設けられている方位の範囲内にのみ光電変換素子を配置してもよいし、この方位の範囲の光波5に対して点対称となる方位の範囲内のみ光電変換素子を配置してもよい。
【0052】
たとえば、図1Aに示す光マイクロホン101の場合、光電変換素子7−1〜7−12のうち、光電変換素子7−1〜7−6、または、光電変換素子7−7〜7−12を設けなくてもよい。
【0053】
光波5の周りに360°の範囲で光電変換素子を設ける場合、光波5に対して対称な位置になる一対の光電変換素子から得られる電気信号を足し合わせてもよい。この場合、2つの電気信号のうち一方の位相を反転させる。これによって、より大きな検出信号を得ることができる。
【0054】
なお、本実施形態では光電変換素子7−1〜7−12は扇形の形状を有しているが、必ずしも円を分割した形状でなくてもよく、円周方向に配置される限り、他の形状であってもよい。光電変換素子の数も図示した数に限られない。また、光電変換素子7−1〜7−12の面積も等しくなくてよい。また、光電変換素子7−1〜7−12のそれぞれを複数の光電変換素子から構成してもよい。たとえば、より小さな光電変換素子を配置し、前述した光電変換素子と同様の形状にグルーピングし、グループ内の光電変換素子の出力信号を足し合わせて取得することで、これらのグループを一つの光電変換素子7−1〜7−12の1つとして動作させてもよい。
【0055】
2.光マイクロホン101の動作
次に、動作について説明する。図1に示すように、空気中を伝搬する音響波1は、開口9aを介して伝搬媒質部3の側面3c1〜3c6から取り込まれ、伝搬媒質部3の内部を伝搬する。光源4より出力された光波5は、伝搬媒質部3に入射され、伝搬媒質部3中で音響波1と接触する。
【0056】
図3は、伝搬媒質部3中で音響波1と光波5が接触する様子を示している。伝搬媒質部3中での音響波1の波長をΛとし、周波数をfとする。また、光源4から出射される光波5の波長をλとし、周波数をf0とする。伝搬媒質部3中を音響波1が伝搬することにより、伝搬媒質部3の伝搬媒質の密度が変化し、それに応じて屈折率が変化する。つまり、音響波1の伝搬に伴い、波長Λに相当する周期で屈折率が変化する屈折率分布パターンが、音響波1の伝搬方向に伝搬する。これに、光波5が接触すると、音響波1による屈折率分布パターンは回折格子のようにふるまう。このため、音響波1と接触した後に伝搬媒質部3から出射する光波5には、回折光波が含まれる。音響波1が伝搬する方向に回折する光波を+1次回折光波5a、音響波1が伝搬する方向と逆向きに回折する光波を−1次回折光波5cと呼び、また、回折されずにそのまま出射する光波を0次回折光波5bと呼ぶ。音響波1の音圧が大きい場合には、2次以上の高次の回折光波も出力する。以下では、高次回折光波が無視できる場合を考え、図3に示す3つの回折光波を用いて説明する。
【0057】
音響波1は伝搬媒質部3中を図3において矢印で示す方向に伝搬するため、屈折率分布パターンによる回折格子も運動量を持って音響波1の伝搬方向に伝搬する。このため、屈折率分布パターンによる回折光はドップラーシフトを受ける。具体的には、+1次回折光波5aの周波数はf0+fとなり、−1次回折光波5cの周波数はf0−fとなる。0次回折光波5bは回折されないため、0次回折光波5bの周波数は伝搬媒質部3に入射される前と同じくf0のままである。また、+1次回折光波5aと−1次回折光波5cの位相は互いに反転しており、180°位相が異なっている。
【0058】
0次回折光波5bと+1次回折光波5a、または、0次回折光波5bと−1次回折光波5cを干渉させると、周波数がfである差周波光成分が発生する。これを光電変換部6において光電変換すると、周波数fの電気信号が得られる。この電気信号は音響波1を電気信号に変換したものである。なお、音響波1の音圧が大きく、高次の回折光波が生じる場合には、光電変換部6から出力される電気信号には高調波が重畳する。
【0059】
図4は、伝搬媒質部3を透過した光波5の回折光を、光波5の伝搬方向に垂直な面において、光電変換部6から音響受波部2に向かう向き(光波5の出射方向とは逆の方向)から見た図である。+1次回折光波5aおよび−1次回折光波5bの回折角が大きい場合や音響受波部2からの距離が大きい場合、図4(b)に示すように+1次回折光波5aと−1次回折光波5cとは互いに重ならず分離している。しかし、+1次回折光波5aおよび−1次回折光波5bの回折角が小さい場合や音響受波部2からの距離が小さい場合には、図4(a)に示すように、+1次回折光波5aと−1次回折光波5cとは互いに一部が重なる。
【0060】
+1次回折光波5aと0次回折光波5bとの干渉光、および、−1次回折光波5cと0次回折光波5bとの干渉光を同時に光電変換部6で受光すると、二組の干渉光の位相が180°ずれているため、互いに相殺して信号を検出することができない。このため、図4(a)に示すように、+1次回折光波5aと−1次回折光波5cとが互いに重なり、かつ0次回折光波5bと重なる領域5fでは、干渉光が検出できない。図4(a)および図4(b)のいずれの場合も、図中に示した領域5d、5eにおいては、音響波に応じて強度が変化する干渉光が得られる。
【0061】
+1次回折光波5aおよび−1次回折光波5bが生じる方向は、音響波1が伝搬する方向と一致する。このため、0次回折光波5bである音響受波部2を透過した光波5の周りにおいて、領域5d、5eによる干渉光を検出すれば、+1次回折光波5aおよび−1次回折光波5bが生じている方向が特定でき、音響波1が伝搬する方向も特定できる。
【0062】
以下、分かりやすさのため、図5(a)に示すように、伝搬媒質部3の形状が正六角形柱であり、正六角形の側面3c1〜3c6に音響波1が入射した場合に発生する+1次回折光波5aと0次回折光波5bとの干渉光を説明する。図6(a)から(f)は、音響波1が側面3c1〜3c6のそれぞれから伝搬媒質部3に入力される様子と、その音響波11〜16と光波5とが接触して+1次回折光波5aおよび−1次回折光波5cが発生する際の回折光波の位置関係を示している。
【0063】
図6(a)から(f)に示すように、+1次回折光波5aおよび−1次回折光波5bは、0次回折光波5bに対して、音響波1の伝搬方向にシフトした位置に生じ、音響波1の伝搬方向が変われば、+1次回折光波5aおよび−1次回折光波5bが発生する方向も変化する。したがって、図5(b)に示すように、側面3c1〜3c6の方位に対応した方位に光電変換素子7−1〜7−6が設けられた光電変換部6で、+1次回折光波5aおよび−1次回折光波5cを受光した場合、光電変換素子7−1〜7−6のうちの特定の2つの光電変換素子から得られる電気信号の強度が大きくなる。したがって、これらの光電変換素子が位置する方向から音響波1が伝搬していることがわかる。たとえば、側面3c1から音響波1が入射する場合、光電変換素子7−1、7−4から最も大きな電気信号が出力される。また、側面3c2から音響波1が入射する場合、光電変換素子7−2、7−5から最も大きな電気信号が出力される。このように、音響波1が入射する側面の位置に対応した位置にある光電変換素子および、その光電変換素子と光波5に対して対称な位置に配置された光電変換素子において、最も強度の大きい電気信号が得られる。
【0064】
図6(a)および図6(d)からわかるように、音響波1の伝搬方向が互いに逆向き(180°異なる)である場合、+1次回折光波5aと−1次回折光波5cとの位置が逆転するだけで、同じ配置になっているのがわかる。そのため、音響波1が側面3c1から入射する場合および側面3c4から入射する場合、いずれも光電変換素子7−1、7−4dかもっとも強度の大きい信号が得られる。そのため、音響波1が側面3c1から入射したか側面3c4から入射したかを信号強度から判別することはできない。同様の理由で、互いに逆向きに伝搬する2つの音響波1を区別して検出することはできない。
【0065】
上述したように、+1次回折光波5aと0次回折光波5bとの干渉光、および、−1次回折光波5cと0次回折光波5bとの干渉光は互いに位相が逆転している。このため、音響波1の信号の位相があらかじめわかっていれば、光電変換素子7−1と光電変換素子7−4の出力信号の位相を音響波1の位相と比較し、同相か逆相かを特定することにより、伝搬の向き、つまり方位を特定することは可能である。しかし、音響波1の位相があらかじめ分かっていることは、一般的ではない。このため、この方法で音響波1の伝搬の向きを同定することは困難である。
【0066】
本実施形態の光マイクロホン101はこの点を考慮し、図2を参照して説明したように、音響受波部2に遮音部9bを設け、伝搬媒質部3に入射する音響波の方位を制限する。上述したように、光波5の周りの180°以上の角度において遮音部9bを設ける場合、図2(a)、(b)に示すように、開口9aは、光波5の周りの180°以下の角度において伝搬媒質部3露出し、開口9aが位置する180°以下の角度全体において、音響波1の伝搬方向および向きを検出することできる。一方、光波5の周りの180°以上の角度において遮音部9bを設ける場合には、遮音部9bが設けられた角度内において、音響波1の伝搬方向および向きを検出することができる。
【0067】
上述したように、音響波1の伝搬方向および向きは、図1Aに示す光電変換部6において、光電変換素子7−1から7−6のいずれ得られる電気信号の強度を比較することにより検出できる。図7は光電変換素子から得られる電気信号の波形を模式的に示している。
図7(a)に示すように、音響波1が伝搬していない場合、あるいは、音響波1の伝搬方向とは異なる方向に位置する光電変換素子7から得られる電気信号には、音響波1の振幅成分は含まれない。これに対し、音響波1が伝搬しており、音響波1の伝搬方向に位置する光電変換素子7から得られる電気信号には音響波1の振幅成分が含まれる。したがって、図7(a)に示す信号と図7(b)に示す信号の差異を検出できればどのような方法によって、音響波1の伝搬方向および向きを特定してもよい。たとえば、光電変換素子7−1から7−6から得られる電気信号をハイパスフィルタに通過させることにより直流(DC)成分をカットすれば、音響波1が伝搬する方向および向きに位置する光電変換素子7からのみ電気信号が得られる。このため、光電変換素子7−1から7−6を伝搬媒質部3の側面3c1〜3c6の方位に対応させることにより、音響波1の伝搬方向および向きが特定できる。
【0068】
図1Aに示すように、光電変換部6からの出力に基づき、伝搬方向を決定する伝搬方向定部51を光マイクロホン101は備えていてもよい。伝搬方向決定部51は、光電変換部6の光電変換素子7−1〜7−6からの電気信号を受け取り、音響波1の伝搬方位を基準方向からの角度φで表す信号を出力する。
【0069】
たとえば、図1Aに光電変換素子7−1と光電変換素子7−12との境界を基準とし、時計まわりに方位をとる。光電変換素子7−1〜7−6の方位を、それぞれの素子の円周方向の中心値とし、表1に示すように、方位に対応させる。伝搬方向決定部515は、このような光電変換素子と方位とを対応付けたデータが記録されたメモリを有する。
【0070】
【表1】
【0071】
伝搬方向決定部51は、光電変換部6から出力を受け取り、メモリを参照して、光電変換素子7−1〜7−6のうち、所定の強度以上の電気信号が出力された光電変換素子に対応する方位φ’を出力する。これにより、音響波の伝搬方位が検出される。
【0072】
2つ以上の光電変換素子で電気信号が所定の強度以上である場合、電気信号の強度の大きさに基づき平均を求め、方位を決定してもよい。
【0073】
また、図7(b)に示すように、光電変換素子から得られる電気信号には、音響波1の振幅成分が含まれるため、光電変換部6によって音響波1も検出できる。また、光電変換部6の光電変換素子7−1〜7−6の出力は独立しているため、環境流体中を複数の方向から音響波が伝搬している場合において、特定の方位の音響波を分離して検出することが可能である。なお、この場合、光電変換素子7−1と光電変換素子7−7等、光波5を中心として対称な位置にある2つの光電変換素子からは位相が反転した干渉光による電気信号が得られる。このため、これら2つの電気信号を加算してしまうと、位相差によって音響波1の信号成分は相殺されてしまう。
【0074】
このように本実形態の光マイクロホンによれば、音響波受波部に遮音部を設け、音響波が音響波受波部に入射する方位を制限するため、複数の光電変換素子を含む光電変換部を用いて、音響波の伝搬方向および向き(方位)を特定することができる。また、固体の伝搬媒質中に音響波を入射させ、光波と音響波とを作用させることによって音響波を検出するため、空気の対流などの影響を抑制することができる。また、伝搬媒質が固体であるため、音響波が伝搬媒質部を伝搬することによって生じる屈折率変化が大きくなり、高い感度で音響波を検出することができる。また、音響波による変調成分を0次回折光波と+1次回折光波または−1次回折光波との干渉成分として検出するため、干渉成分の光量変化が検出すべき音響波に対応する。したがって、レーザードップラー振動計のように大掛かりな光学系を用いなくても、簡単な光電変換素子を用いれば干渉成分を検出することが可能となる。このため、光マイクロホンの構成を小型かつ簡単にすることができる。
【0075】
(光マイクロホンの実験結果)
本願発明者は、本実施形態の光マクロホンを試作し、実験を行った。図8に試作した光マイクロホンを示す。
【0076】
伝搬媒質部3としては、108kg/m3の密度および51m/secの音速を有するシリカ乾燥ゲルを用いた。シリカ乾燥ゲルはゾルーゲル法により作製した。具体的には、テトラメトキシシラン(TMOS)をエタノールなどの溶媒と混合したゾル液に触媒水を加え、加水分解および縮重合反応によって湿潤ゲルを生成し、得られた湿潤ゲルに疎水化処理を施した。湿潤ゲルを20mm×20mm×5mmの直方体形状の内空間を有する型に充填し、超臨界乾燥により乾燥させ、20mm×20mm×5mmの直方体形状の伝搬媒質部3を得た。正方形の面を光波5の入出射面とし、5mm×20mmの面の内の隣り合う2面を音響波1が入力される側面3c1、3c2とした。
【0077】
支持部9は厚さ3mmの透明なアクリル板によって形成した。支持部9は20mm×20mm×5mmの直方体形状の内空間を有し、隣り合う2つの側面に、5mm×20mmのサイズを有しする開口9aを設け側面3c1、3c2を露出させた。
【0078】
光源4には、波長633nmのHe−Neレーザーを用いた。光波5を光源4から出射させ、支持部9の正方形の面に垂直に入射させた。音響受波部2を透過した光波を光電変換部6で検出した。光源4と音響受波部2との距離は約15cmであった。光波5のスポット径は約0.6mmであった。
【0079】
光電変換部6としては、簡単のため、2つの光電変換素子71、72を含むものを用いた。音響受波部2と光電変換部6との距離は25cmであった。光電変換素子71、72とし、シリコンダイオードによるフォトディテクタを用いた。光電変換素子71、72は、光波5の光軸(中心軸)に対して対称となるようにy方向に配置した。
【0080】
光電変換部6の出力をオシロスコープに入力し、y軸の負の方向へ伝搬する音響波1aを音響受波部2に入射させ波形の観察を行った。40kHzの周波数を有し、15波の正弦波からなるバースト信号をツイータに入力し、音響波を環境流体である空気に出射させた。オシロスコープで観察された波形を図9に示す。これより、入力した音響波1aに対応する波形が得られることが確認できた。これは、光電変換素子71、72が、0次回折光波5bに対して+1次回折光波5aおよび−1次回折光波5bの生じる方向にシフトして配置されているためである。また、光電変換素子71および72信号は逆相になることも確認できた。
【0081】
次に、音響波1aとは垂直な方向に伝搬する音響波1bを入力して、光電変換素子71の出力波形の観察を行った。オシロスコープで観察された波形を図10に示す。この場合には、音響波1bに対応する信号は確認されなかった。これは、光電変換素子71が、0次回折光波5bに対して+1次回折光波5aおよび−1次回折光波5bの生じる方向にシフトして配置されていないためである。
【0082】
図9および図10より、本実験による光マイクロホンを用いて波形を観測することにより、音響波1の伝搬方向を特定することができることが確認できた。
【0083】
本実験では、簡単のため光電変換部6を2つの光電変換素子71、72から構成したが、図11に示すように、90°の角度を有する頂点を合わせるように、4つの光電変換素子71、72、73、74が配置された光電変換部6を用いれば、y軸の負の方向へ伝搬する音響波1aに加えて、x軸の負の方向へ伝搬する音響波1bを検出することができる。
【0084】
(音響受波部の他の構成)
音響受波部2を構成する伝搬媒質部3の形状が図1Aに示すように多角形柱状を有する場合、音響波1が側面3c1〜3c6のいずれかに入射する際に、側面の端部において回折波を生じるなどして、音響波1が隣接する側面にも入射することが考えられる。特に、伝搬媒質部3を構成する材料の密度ρnおよび音速Cnが空気の密度ρaおよび音速Caに対して以下の式(1)を満たす場合、音響波1が反射を伴わずに伝搬媒質部3の内部に屈折伝搬する場合がある。
【0085】
図12は音響波1が空気と伝搬媒質部3の境界面を伝搬する様子を示している。音響波1が反射を伴わずに伝搬媒質部3の内部に屈折伝搬するのは、音響波1の入射角θaが式(2)を満たす場合である。
【0086】
たとえば、伝搬媒質部3の密度が100kg/m3、音速が50m/secの場合、音響波1の入射角θa=85.4°の場合に屈折角θn=8.4°で伝搬媒質部3の内部に屈折伝搬する。
【0087】
音響波1が側面3c1〜3c6のいずれかに対して垂直に入射し、伝搬媒質部3の内部を伝搬する際、側面の端部で生じる回折波が、上述の入射角度に近い角度で隣接する側面に入射すると、音響波1は側面3c1〜3c6のいずれかの側面およびこれに隣接する側面のいずれからも伝搬媒質部3に入射する。このため、音響波1の伝搬方向の同定が困難になる場合も考えられる。
【0088】
このような隣接する側面からの音響波1の入射が問題となる場合には、音響波1の回折波が隣接する側面に入射しない構造を音響受波部2に設ければよい。
【0089】
たとえば、図13に示すように、支持部9の開口9aにおいて、側面3c1〜3c6のそれぞれに対応したホーン16を設け、音響波1の回折波が隣接する側面に入射しないようにしてもよい。また、図14に示すように、ホーン16を伝搬媒質部3で構成することも可能である。
【0090】
さらに図15に示すように、支持部9の開口9aに区切り17を設け、音響波1の回折波の伝搬を抑制してもよい。区切り17は開口9aを複数の開口部分に分割し、伝搬媒質部3が支持部9の開口9aから露出している伝搬媒質部3の各側面とこれに隣接する側面と境界3hを覆っている。区切り17の高さhは、側面の幅Dに対して、h≧D・tanθaを満たしていることが好ましい。また、区切り17は側面3c1〜3c6と接していることが好ましい。区切り17は、伝搬媒質部3が平面によって構成される複数の側面を有している場合だけでなく、図1Bに示すように、曲面形状の側面3c’に設けてもよい。
【0091】
このように、ホーン16や区切り17を設け、音響波1の回折波が隣接する側面に入射しないようにすることによって、不要波を抑制しながら音響波1を正確に伝搬媒質部3内を伝搬させることができ、より正確に音響波1の伝搬方位を検出することが可能となる。
【0092】
(第2の実施形態)
以下、本発明による光マイクロホンの第2の実施形態を説明する。図16は、第2の実施形態の光マイクロホン102の構成を概略的に示す斜視図である。光マイクロホン102は、音響受波部2と、光源4と、回転遮光板11と、光電変換部12とを備える。光マイクロホン102は、光電変換部12が1つの光電変換素子を含み、回転遮光板11を備える点で第1の実施形態と異なる。
【0093】
光マイクロホン102は、回転遮光板11を用いて光波5の一部を方向を変えながら遮光し、光電変換部12で光波5を検出する。
【0094】
以下、回転遮光板11および光電変換部12を詳細に説明する。
【0095】
(回転遮光板11)
回転遮光板11は、音響受波部2を透過した光波5の一部を遮光する位置に配置する。回転遮光板は11、光波5を透過しない材料で構成され、光波5の光軸(中心軸)周りに回転する回転機構を備える。
【0096】
光波5は、回転遮光板11の一つの稜線を境界として、一部が遮光され、残りの部分が遮光されずに伝搬する。この稜線を遮光稜13と呼ぶことにする。遮光稜13は直線である方が好ましい。音響波1の伝搬方向の同定が行いやすからである。遮光稜13は、図17(b)に示すように、光波5の光軸を通るように配置した場合に、光電変換部13から得られる電気信号に音響波1の成分が最も多く含まれる。このため遮光稜13は光波5の光軸を通る(交差する)のが好ましい。しかし、遮光稜13を、図17(a)および図17(c)に示すように光波5の光軸からずらして配置しても、振幅は小さくなるものの、音響波1を検出することが可能である。回転遮光板11は、光波5の光軸を回転中心として、回転する機構を備える。回転遮光板11を回転させながら光電変換部12から電気信号を取得してもよいし、任意の角度で調整し停止させて電気信号を取得してもよい。
【0097】
(光電変換部12)
光電変換部12は、光波5よりも十分に大きい受光面を有する光電変換素子を含み、回転遮光板11で遮光されずに伝搬する光波5を受光する。また、光電変換部12は、回転遮光板11の遮光稜13の回転角の情報をリアルタイムで取得する。光電変換部12の出力信号は、遮光稜13の回転角の情報と対応付けて検出・記録される。
【0098】
次に、図18を参照しながら光マイクロホン102の動作を説明する。
【0099】
図18(a)から(e)は、種々の回転角度にある回転遮光板11と、音響波1が伝搬媒質部3を透過している音響受波部2を光波が透過することにより生じる、+1次回折光波5a、−1次回折光波5cおよび0次回折光波5bの位置との関係を模式的に示している。音響波1は、図においてy軸を負の方向へ伝搬している。このとき、回転遮光板11の遮光稜13の角度をx軸に対して時計まわりにφととる。回転遮光板11の遮光稜13は0次回折光波5bの光軸を通っている。
【0100】
図18(a)から(e)に示すように、+1次回折光波5aおよび−1次回折光波5cは0次回折光波5bに対して音響波1の伝搬方向の伝搬する方向側および逆側に生成する。
【0101】
図18(a)に示すように、φ=0°である場合、回転遮光板11は+1次回折光波5aと0次回折光波5bとが交わる領域を遮光しており、0次回折光波5bと−1次回折光波5cとが重なる領域5eが光電変換部6に検出される。このため、音響波1によって変調された領域5eからの干渉光のみが検出される。
【0102】
図18(b)、(c)、(d)に示すように、回転遮光板11の回転角度φが大きくなると、回転遮光板11によって領域5eの一部が遮られ、0次回折光波5bと+1次回折光波5aとが重なる領域5dからの干渉光が検出されるようになる。回転角度φが大きくなるにつれて、領域5eの面積が小さくなり、領域5eから得られる干渉光の光量も低下する。一方、領域5dの面積は大きくなり、領域5dから得られる干渉光の光量が増大する。
【0103】
図4を参照して説明したように、領域5eから得られる干渉と、領域5dから得られる干渉光とは互いに位相が逆転しているため、これらを同時に光電変換部12で検出すると、音響波1の信号成分の一部は相殺され、検出されなくなる。
【0104】
このため、回転角度φが大きくなるにつれて、光電変換部12から得られる電気信号中の音響波1の成分の振幅が小さくなる。図18(e)に示すように、φ=90°になると、領域5eおよび領域5dの面積が等しくなるため、光電変換部12から得られる電気信号中の音響波1の成分はゼロとなる。この時、遮光稜13は音響波1の伝搬方向と平行である。
【0105】
このように、回転遮光板11の回転角度φが0°のとき、光電変換部12から得られる電気信号の振幅が最大となり、90°のとき、電気信号が最少となる。つまり、電気信号の振幅が最大となるとき、遮光稜13が音響波1の伝搬方向に対して垂直に位置しており、電気信号の振幅が最少となるとき、遮光稜13が音響波1の伝搬方向に対して平行に位置する。遮音部9bによって、回転角度φが180°以上360°以下に相当する方位から音響波1は音響受波部2に入射しない。したがって、光電変換部12の電気信号の振幅が最少となるときの角度φが音響波1の伝搬方位と一致する。
【0106】
本実施形態では、回転遮光板11を用いて光電変換部12入射する光波の一部を制限し、また、遮光する領域を回転させていた。しかし、回転遮光板11を用いる代わりに、光電変換部12に回転機構を持たせても同様の操作を行うことができる。この場合、図19に示すように、光電変換部12は光波5の一部を受光する位置に配置し、光波5の光軸を中心として回転させることによって同様の効果を得ることができる。この場合、光電変換部12の受光面を規定し、光波の光軸に近接した辺12eが遮光稜として機能する。
【0107】
このように、本実施形態の光マイクロホンによれば、回転遮光板の角度、あるいは光電変換部の回転角度に応じて、光電変換部から得られる電気信号強度が変化し、信号強度の変化は、遮光領域と、回折光波の位置、つまり音響波の伝搬方向と対応している。したがって、回転遮光板の角度または光電変換部12の回転角度から音響波1の伝搬方位を特定することができる。
【0108】
(第3の実施形態)
以下、本発明による光マイクロホンの第3の実施形態を説明する。図20は、第3の実施形態の光マイクロホン103の構成を概略的に示す斜視図である。光マイクロホン103は、音響受波部2と、光源4と、光電変換部6と、ビームスプリッタ15と、ミラー14とを備える。光マイクロホン103は、ミラー14によって光波5が2回、音響受波部2を透過する点で第1の実施形態とは異なる。
【0109】
ビームスプリッタ15は光源4と音響受波部2との間に設けられ、ミラー14は、音響受波部2の光源4とは反対側に設けられる。このため音響受波部2はビームスプリッタ15とミラー14との間に位置している。ミラー14は、音響受波部2の光源4とは反対側の面に密着して設けられていることが好ましい。
【0110】
光マイクロホン103では、第1の実施形態と同様に、空気中を伝搬する音響波1を、側面3c1〜3c6から伝搬媒質部3の内部に取り込む。光源4より出射された光波5は、ビームスプリッタ15を透過し、音響受波部2の伝搬媒質部3に入射する。伝搬媒質部3中で光波5は音響波1と作用しながら音響受波部2から出射し、ミラー14に到達する。
【0111】
光波5はミラー14によって反射され、再び音響受波部2の伝搬媒質部3を透過する。このため、光波5は、作用長が2倍である伝搬媒質部3を透過しているように、ミラー14に到達するまでの往路、および、ミラー14からの反射による復路において一体的に音響波1と作用する。その結果、伝搬媒質部3からビームスプリッタ15へ向けて出射する際に、2倍の作用長の伝搬媒質部を透過したのと同程度の回折効果で、0次回折光波、+1次回折光波および−1次回折光波が生じる。これらの光波を含む光波5は、ビームスプリッタ15に入射され、ビームスプリッタのハーフミラーによって光電変換部6へ向けて反射される。
【0112】
光電変換部6に到達する光波5には、第1の実施形態と同様、+1次回折光波5a、0次回折光波5b、−1次回折光波5cの3つの光波が存在する。ただし、+1次回折光波5aおよび−1次回折光波5cの強度は、伝搬媒質部3を一度透過する際に得られる回折光波の強度の2倍になっている。
【0113】
光電変換部6を用いて音響波1の伝搬方向および向き(方位)を特定する方法は、第1の実施形態と同様である。光電変換部6の代わりに第2の実施形態の光電変換部112および回転遮光板11を用いて音響波1の伝搬方向および向き(方位)を特定してもよい。
【0114】
本実施形態の光マイクロホンによれば、光波5がミラー14で反射されることにより、伝搬媒質部3内を往復して伝搬するため、より大きな回折効果が得られる。このため、伝搬媒質部3の厚さが同じである場合には、第1の実施形態よりも感度の高い光マイクロホンを提供することができる。
【0115】
(第4の実施形態)
以下、本発明による光マイクロホンの第4の実施形態を説明する。図21は、第4の実施形態の光マイクロホン104の構成を概略的に示す斜視図である。光マイクロホン104は、音響受波部2の遮音部9bが設けられた方位が異なる2組の光マイクロホン101’、101’’を備えている。
【0116】
光マイクロホン101’は、光源4と、音響受波部2と、光電変換部6と、ビームスプリッタ15とを備えている。また、光マイクロホン101’’は、音響受波部2と、光電変換部6と、ミラー14とを備えている。
【0117】
ビームスプリッタ15は光マイクロホン101’の光源4と音響受波部2との間に設けられ、光源から出射した光波5の一部をミラー14へ向けて出射する。光マイクロホン101’’は、ミラーによって反射された光波5の音響受波部2’へ入射させる。
【0118】
光マイクロホン101’の音響受波部2の開口9aと光マイクロホン101’’の音響受波部2’’の開口9a’’とは互いに対向しないように配置されている。具体的には、光マイクロホン101’の音響受波部2の開口9aが光波5の周りの180°の角度で設けられており、音響受波部2の遮音部9bが設けられた範囲で、光マイクロホン101’’の音響受波部2’’の開口9a’’が設けられている。
【0119】
このように2つの光マイクロホンを配置することによって、光波5の周りの360°の範囲で音響波1の伝搬方向および向きを特定することができる。
【0120】
本実施形態では、光マイクロホン101’’は光源4を備えていないが、ビームスプリッタ15およびミラー14に代えて、光マイクロホン101’’は他の光源4を備えていてもよい。また、光マイクロホン101’、101’’として第2、第3の実施形態の光マイクロホン102、13を用いてもよく、光マイクロホン101’と光マイクロホン101’’とは、同じ形態であってもよいし、互いに異なる形態であってもよい。
【0121】
本実施形態の光マイクロホンによれば、360°の方位で音響波1の伝搬方向および向きを特定することが可能であり、特に伝搬方位が不明である音響波の検出および伝搬方位の特定に好適に用いられる。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明の光マイクロホンは、小型の超音波センサ等あるいは可聴音マイクロホン等として有用である。また、超音波を用いた周囲環境計測システムに用いる超音波受波センサ等としても応用できる。
【符号の説明】
【0123】
1 音響波
1a、1b 音響波
2 音響受波部
3 伝搬媒質部
4 光源
5 光波
5a +1次回折光波
5b 0次回折光波
5c −1次回折光波
5d、5e 検出領域
6 光電変換部
7 光電変換素子
7−1〜7−12、71〜74 光電変換素子
9 支持部部
11 回転遮光部
12 光電変換部
13 遮光稜
14 ミラー
15 ビームスプリッタ
16 ホーン
101 出射系光学部品
102 受光系光学部品
201 開口部
202 音響導波路
203 光音響伝搬媒質
204 レーザードップラー振動計
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気などの気体を伝搬する音響波を受波し、光を利用して、受波した音響波を電気信号に変換する光マイクロホンに関する。
【背景技術】
【0002】
音響波を受波し、電気信号に変換する装置として、従来からマイクロホンが知られている。ダイナミックマイクロホンやコンデンサマイクロホンに代表される多くのマイクロホンは、振動板を備えている。これらのマイクロホンでは、音波が振動板を振動させることによって受波し、その振動を電気信号として取り出す。この種のマイクロホンは、振動板などの機械的振動部を有しているため、多数回、繰り返して使用することにより、機械的振動部の特性が変化する可能性がある。また、非常に強力な音波をマイクロホンで検出しようとすると、機械的振動部が破壊する可能性がある。
【0003】
このような従来の機械的振動部を有するマイクロホンの課題を解消するために、たとえば、特許文献1および特許文献2は機械的振動部を有しておらず、光波を利用することで音響波を検出する光マイクロホンを開示している。
【0004】
具体的には、図22に示すように、特許文献1は、光源151と、出射系光学部品152と受光系光学部品153と検出部154と信号処理部155を備えた光マイクロホンを開示している。特許文献1によれば、光源151から出射した光5を出射系光学部品152で成形したのち、空気中を伝搬する音響波1とに作用させ、回折光を生じさせる。この際、位相が互いに反転した2つの回折光成分が生じる。回折光を受光系光学部品153で調整した後に、レーザー光の光軸を中心とした円周上に配置された複数の光電変換素子が配置された検出部154で受光して電気信号に変換することで音響波1を検出する。これにより、音響波1を伝搬方向により分離検出・分離録音することが可能となる。
【0005】
また、特許文献2は、音響波を媒質中に伝搬させ、媒質の光学的特性の変化を検出することにより、音響波を検出する方法を開示している。図23に示すように、空気中を伝搬する音響波1は、開口部201から取り込まれ、壁面の少なくとも一部が光音響伝搬媒質203から形成されている音響導波路202中を進行する。音響導波路202を進行する音波は光音響伝搬媒質203に取り込まれて、その内部を伝搬する。光音響伝搬媒質203では、音波の伝搬に伴い、屈折率変化が生じる。この屈折率変化をレーザードップラー振動計204を用いて光変調として取り出すことにより、音響波1を検出する。特許文献2は光音響伝搬媒質203として、シリカ乾燥ゲルを用いることで、導波路中の音響波を光音響伝搬媒質203の内部へ高効率に取り込むことができると開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−194677号公報
【特許文献2】特開2009−085868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の光マイクロホンは、音響波の伝搬方向を検出することは可能であるが、伝搬の向きまでを特定することはできない。このため、伝搬の向きが180°異なる2つの音響波を区別することはできないという課題がある。
【0008】
特許文献2の方法は、レーザードップラー振動計を用いる。レーザードップラー振動計は、音響光学素子などの光周波数シフタや、多数のミラー、ビームスプリッタ、レンズなどからなる複雑な光学系が必要であるため、大型である。このため、特許文献2に開示される測定装置全体が大きくなってしまうという課題がある。また、特許文献2の光マイクロホンでは、音響波の伝搬方向を分離して検出することはできない。
【0009】
本発明はこのような従来技術の少なくとも1つを解決し、音響波の伝搬方向および伝搬の向きを検出することができる光マイクロホンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の光マイクロホンは、環境流体を伝搬する音響波を、光波を用いて検出する光マイクロホンであって、固体の伝搬媒質によって構成されており、前記音響波が伝搬する伝搬媒質部、および、前記伝搬媒質部を支持する支持部を含む音響受波部と、前記伝搬媒質部中を伝搬する前記音響波を横切って、前記伝搬媒質部を透過する光波を出射する光源と、前記伝搬媒質部を透過した前記光波を受光し、電気信号を出力する複数の光電変換素子を有する光電変換部とを備え、前記音響受波部において、前記伝搬媒質部は、前記光波が入射および出射する1対の主面と、前記1対の主面間に位置し、前記環境流体から音響波が入射する少なくとも1つの側面とを有し、前記支持部は、前記少なくとも1つの側面の少なくとも一部を露出する開口と前記開口以外の領域において、前記1対の主面間を覆う遮音部とを含む。
【0011】
本発明の光マイクロホンは、環境流体を伝搬する音響波を、光波を用いて検出する光マイクロホンであって、固体の伝搬媒質によって構成されており、前記音響波が伝搬する伝搬媒質部、および、前記伝搬媒質部を支持する支持部を含む音響受波部と、前記伝搬媒質部中を伝搬する前記音響波を横切って、前記伝搬媒質部を透過する光波を出射する光源と、前記伝搬媒質部を透過した前記光波を受光し、電気信号を出力する光電変換素子、および、前記光波の光軸を中心として回転可能であり前記光波の一部を遮光する遮光部を有する光電変換部とを備え、前記音響受波部において、前記伝搬媒質部は、前記光波が入射および出射する1対の主面と、前記1対の主面間に位置し、前記環境流体から音響波が入射する少なくとも1つの側面を有し、前記支持部は、前記少なくとも1つの側面の少なくとも一部を露出する開口と前記開口以外の領域において、前記1対の主面間を覆う遮音部とを含む。
【0012】
本発明の光マイクロホンは、環境流体を伝搬する音響波を、光波を用いて検出する光マイクロホンであって、固体の伝搬媒質によって構成されており、前記音響波が伝搬する伝搬媒質部、および、前記伝搬媒質部を支持する支持部を含む音響受波部と、前記伝搬媒質部中を伝搬する前記音響波を横切って、前記伝搬媒質部を透過する光波を出射する光源と、受光面を有し、前記伝搬媒質部を透過した前記光波を前記受光面で受光し、電気信号を出力する光電変換部であって、前記伝搬媒質部を透過した前記光波の一部を受光しないように前記光波の光軸に対して前記受光面の中心がシフトしており、前記光波の光軸を中心として前記受光面が回転可能な光電変換部とを備え、前記音響受波部において、前記伝搬媒質部は、前記光波が入射および出射する1対の主面と、前記1対の主面間に位置し、前記環境流体から音響波が入射する少なくとも1つの側面を有し、前記支持部は、前記少なくとも1つの側面の少なくとも一部を露出する開口と前記開口以外の領域において、前記1対の主面間を覆う遮音部とを含む。
【0013】
ある好ましい実施形態において、光マイクロホンは、ビームスプリッタとミラーとをさらに備え、前記ビームスプリッタは前記光源と音響受波部との間に位置し、前記音響受波部は前記ビームスプリッタと前記ミラーとの間に位置し、前記光源から出射した光波は、ビームスプリッタおよび前記伝搬媒質部を透過して前記ミラーで反射し、前記ミラーで反射した光波は、前記伝搬媒質部を再度透過し、前記ビームスプリッタで反射され前記光電変換部へ入射する。
【0014】
ある好ましい実施形態において、前記遮音部は、前記伝搬媒質部を透過する光波の周りを90°以上の角度で覆っている。
【0015】
ある好ましい実施形態において、前記遮音部は、前記伝搬媒質部を透過する光波の周りを180°以上の角度で覆っている。
【0016】
ある好ましい実施形態において、前記少なくとも1つの側面は曲面であり、前記開口において露出している任意の部分から前記伝搬媒質部を透過している光波までの距離は等しい。
【0017】
ある好ましい実施形態において、前記伝搬媒質部は、前記環境流体から音響波が入射する複数の側面を有し、前記複数の側面は、前記伝搬媒質部を透過する光波と垂直な平面において、前記光波の周りに配置されており、前記複数の側面は平面であり、前記開口において、前記複数の側面は露出しており、前記複数の側面から前記伝搬媒質部を透過している光波までの距離は等しい請求項1から4のいずれかに記載の光マイクロホン。
【0018】
ある好ましい実施形態において、前記支持部は、前記光波に対して不透明であって、前記支持部は、前記伝搬媒質部の前記1対の主面のそれぞれ一部を露出する孔を有し、前記光波は前記孔を通過する。
【0019】
ある好ましい実施形態において、光マイクロホンは、前記第1開口に設けられた複数のホーンをさらに備え、前記複数のホーンは、前記伝搬媒質部を透過する光波と垂直な平面において、前記光波の周りに等角度で配置されている。
【0020】
ある好ましい実施形態において、前記支持部は、前記開口を複数の開口部分に分割する少なくとも1つの区切りを有し、前記少なくとも1つの区切りによって分割された複数の開口部分は、前記伝搬媒質部を透過する光波と垂直な平面において、前記光波の周りに等角度で配置されている。
【0021】
ある好ましい実施形態において、前記光電変換素部において、前記複数の光電変換素子は、前記光波の周りに等角度で配置されている。
【0022】
ある好ましい実施形態において、前記光波の光軸周りにおける、前記複数の側面の各境界の方位と、前記複数の光電変換素子の各境界の方位は一致している。
【0023】
ある好ましい実施形態において、光マイクロホンは、前記伝搬媒部はシリカナノ多孔体によって構成されている。
【0024】
本発明の光マイクロホンは上記いずれかに規定される光マイクロホンを2つ備え、一方の光マイクロホンの音響受波部の遮光部と、他方の光マイクロホンの音響受波部の遮光部とが対向して配置されている。
【発明の効果】
【0025】
本発明の光マイクロホンによれば、音響波が入射する開口以外の領域において、伝搬媒質部の光波が入射および出射する主面の間を遮音部が覆っているため、環境流体を伝搬する音響波の伝搬方向のみならず伝搬の向きを同定することができる。また、各伝搬方向毎に分離して音響波に対応する信号を取得することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1A】本発明による光マイクロホンの第1の実施形態を示す概略的な斜視図である。
【図1B】伝搬媒質部の側面が曲面形状である実施形態を示す図である。
【図2】第1の実施形態における開口の位置する角度と検出可能領域を説明する図である。
【図3】伝搬媒質部中の音響波による光波の回折を表す図である。
【図4】(a)および(b)は0次回折光波と±1次回折光波との重なりを示す図である。
【図5】(a)および(b)は、説明のための音響受波部および光電変換部の構造を示す図である。
【図6】(a)から(f)は、伝搬方向の異なる音響波が図5(a)に示す音響受波部に入射した場合における回折光波の位置を示す図である。
【図7】(a)および(b)は、光電変換部から得られる電気信号を示す図である。
【図8】第1の実施形態の光マイクロホンの実験例の構造を示す図である。
【図9】実験例における音響波を検出した場合の出力波形を示す図である。
【図10】音響波を検出しなかった場合の出力波形を示す図である。
【図11】第1の実施形態による光マイクロホンの別の形態を示す図である。
【図12】音響波1が空気から伝搬媒質部3へ屈折伝搬する様子を示す図である。
【図13】音響受波部の他の形態を示す図であって、ホーンを有する音響受波部を示す図である。
【図14】音響受波部の他の形態を示す図であって、伝搬媒質部からなるホーンを有する音響受波部を示す図である。
【図15】音響受波部の他の形態を示す図であって、開口に区切りを有する音響受波部を示す図である。
【図16】本発明による光マイクロホンの第2の実施形態を示す概略的な斜視図である。
【図17】(a)から(c)は、第2の実施形態における、光波と回転遮光板との位置関係を示す図である。
【図18】(a)から(e)は、第2の実施形態において、回転遮光板の角度を変えた場合における、回転遮光板と回折光波との位置関係を示す図である。
【図19】第2の実施形態の他の例を示す図であって、回転可能に支持される光電変換部を示す模式的な図である。
【図20】本発明による光マイクロホンの第3の実施形態を示す概略的な図である。
【図21】本発明による光マイクロホンの第4の実施形態を示す概略的な斜視図である。
【図22】従来の光マイクロホンを示す図である。
【図23】従来の他の光マイクロホンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1の実施形態)
以下、本発明による光マイクロホンの第1の実施形態を説明する。図1は、第1の実施形態の光マイクロホン101の構成を概略的に示す斜視図である。なお、本願明細書において、「伝搬方向」とは音響波等がある直線に沿って伝搬する場合において、基準線や基準面に対する直線のなす角度をいい、「伝搬の向き」とは、その直線上において、音響波等が近づく向きであるか遠ざかる向きであるかをいう。「伝搬方向」および「伝搬の向き」が特定される場合「伝搬方位」が定まる。
【0028】
1.光マイクロホン101の構成
光マイクロホン101は、その外部を音響波1が伝搬する環境流体で囲まれている。環境流体は、たとえば空気であるが、他の気体であってもよいし、水などの液体であってもよい。光マイクロホン101は、音響受波部2と、光源4と、光電変換部6とを備える。環境流体を伝搬する音響波1は、音響受波部2に受波され、音響受波部2内を伝搬する。光源4から出射する光波5は、音響受波部2を透過することによって、音響受波部2を伝搬する音響波1と作用する。音響受波部2を透過した光波5は光電変換部6によって検出される。本実施形態では、以下において詳細に説明するように、音響波1の伝搬方向を含む音響波1の情報を検出するために光電変換部6が複数の光電変換素子7−1〜7−12を有している。
【0029】
(光源4)
光源4は、音響受波部2に向けて光波5を出射する。音響受波部2を透過した光波5は光電変換部6に入射する。この際、光波5の光路と音響波1の伝搬方向が一致した場合、音響波1の信号を検出することができない。そのため、光波5の伝搬方向と音響波1の伝搬方向とは少なくとも交差することが好ましい。より好ましくは、光波5の光路と音響波1の伝搬方向とは互いに垂直である。
【0030】
光波5が音響受波部2を透過する必要があるので、音響受波部2での伝搬ロスが大きくならないように、光波5の波長を選ぶ必要がある。以下において説明するように音響受波部2の伝搬媒質部3としてシリカ乾燥ゲルを用いる場合、光源4の波長は600nm以上であることが好ましい。
【0031】
光波5はコヒーレントな光であってもよいし、インコヒーレントな光であってもよい。ただし、レーザー光のようなコヒーレントな光であるほうが、回折光波の干渉が生じやすく、音響波1を検出しやすい。
【0032】
光源4は、たとえば、レーザー光源で構成される。光源4は、レーザー光源と光ファイバとで構成しても良い。この場合、光波5は光ファイバの出力端から出力される。
【0033】
(音響受波部2)
音響受波部2は、伝搬媒質部3と支持部9とを含む。
【0034】
・伝搬媒質部3
伝搬媒質部3は、光波5が入射および出射する1対の主面3a、3bと、1対の主面3a、3b間に位置し、環境流体から音響波1が入射する少なくとも1つの側面を有する。本実施形態では、音響波1が入射する側面3c1、3c2、3c3、3c4、3c5、3c6を有している。以下、これらの側面をまとめて参照するときは側面3c1〜3c6と記す。側面3c1〜3c6のそれぞれは、平面形状を有しており、好ましくは、同じ形状で同じ面積を有する。側面3c1〜3c6から伝搬媒質部3に入射した音響波1が平面波として伝搬し、音響波1の伝搬方向が同定しやすくなるからである。伝搬媒質部3は、側面3c1〜3c6以外に、1対の主面3a、3b間に位置する側面3d、3e、3fを有している。
【0035】
音響波1は、伝搬方向に応じて側面3c1〜3c6のいずれかから伝搬媒質部3の内部へ入射し、音響波1が伝搬媒質部3内を伝搬し、伝搬媒質部3を透過している光波5を横切る。側面3c1〜3c6から伝搬媒質部3を透過している光波5までの距離は互い等しいことが好ましい。以下において説明するように、側面3d、3e、3fから音響波1は入射しない。また、本実施形態では、伝搬媒質部3を透過している光波5に垂直な面内の、光波5の周りの180°の角度において、音響波1の伝搬方向を検出することができる。
【0036】
音響波1が入射する側面が設けられている光波5の周りの角度が一定であれば、側面の数は、多いほど、伝搬方向および向き(進行方向)、つまり、音響波1の伝搬方位を正確に特定することが可能となる。これらのことから、側面3c1〜3c6は、音響媒質部3を透過する光波5の光軸を中心軸とする正多角形柱の側面であることが好ましい。
【0037】
図1Bに示すように、伝搬媒質部3において、音響波1が入射する面は1つであってもよい。この場合、音響波1は、入射可能角度において、曲面形状の側面3c’を有していることが好ましい。より具体的には、側面3c’は伝搬媒質部3を透過している光波5の光軸を中心軸とする円柱側面の一部であることが好ましい。側面3c’の任意の位置から光波5の光軸までの距離を等しくできるからである。
【0038】
効率よく音響波1を伝搬媒質部3に入射させるため、環境流体と音響媒質部3との音響インピーダンス差は小さいことが好ましい。音響インピーダンスは、音響波が伝搬する物質の密度とその物質における音速の積であらわすことができる。ガラスやアクリルなどの通常の固体材料では、空気との音響インピーダンスの差が大きいため、入力界面で大部分が音響波が反射してしまい、音響波を効率よく内部に取り込むことができない。
【0039】
本実施形態では、音響媒質部3として、シリカ乾燥ゲルを用いることが好ましい。シリカ乾燥ゲルの密度は、70kg/m3以上280kg/m3以下であり、シリカ乾燥ゲルの音速は空気中の音速よりも小さく、50m/sec以上150m/sec以下程度である。たとえば、100kg/m3の密度および50m/secの音速を有するシリカ乾燥ゲルを用いた場合、音響インピーダンスは、空気の音響インピーダンスの11.3倍程度となる。このため、界面での音響波1の反射は70%にとどまり、音響波1のエネルギーの30%程度が界面で反射されずに、シリカ乾燥ゲルの内部へ取り込まれる。つまり、空気中の音響波を効率よくシリカ乾燥ゲル内部に取り込むことができる。こうした理由から、伝搬媒質部3を構成する伝搬媒質にシリカ乾燥ゲルを用いることによって、空気中を伝搬する音響波1を効率よく入射させることができる。
【0040】
また、伝搬媒質部3としては、音響波1が伝搬した際に、入力音圧に対する屈折率変化量Δnが大きい材料を用いるのが好ましい。シリカ乾燥ゲルは光波の屈折率変化量Δnも大きいという特長がある。空気の屈折率変化量Δnは、1Paの音圧変化に対して2.0×10-9であるのに対して、シリカ乾燥ゲルの1Paの音圧変化に対しての屈折率変化量Δnは1.0×10-7程度と大きく、そのため10cmを超えるような大きな伝搬媒質を用意しなくても十分な感度が得られる。
【0041】
・支持部9
支持部9は、伝搬媒質部3を支持する。このために支持部9は、音響波用の開口9aおよび開口9aにつながる内空間を有し、内空間に伝搬媒質部3が配置され、支持される。伝搬媒質部3の側面3c1〜3c6は開口9aにおいて露出しており、環境流体と接している。環境流体を伝搬する音響波1は開口9a中の側面3c1〜3c6のいずれかから伝搬媒質部3に取り込まれる。また、支持部9は、開口9a以外の領域において、伝搬媒質部3の1対の主面3a、3b間を覆う遮音部9bを有する。
【0042】
図2(a)から(c)は、伝搬媒質部3を透過している光波5に垂直な面内の、光波5の周りにおける、開口9aと遮音部9bとの位置関係を示している。図2(a)に示すように、光波5の周りの180°の角度において遮音部9bが設けられている場合、開口9aは、光波5の周りの180°の角度において伝搬媒質部3露出する。この場合、開口9aが位置する180°の角度全体において、音響波1の伝搬方向および向きを検出することできる。
【0043】
また、図2(b)に示すように、光波5の周りの180°よりも大きく360°よりも小さい角度θにおいて、遮音部9bが設けられている場合、開口9aは、光波5の周りの(360−θ)°の角度において伝搬媒質部3露出し、この角度全体において、音響波1の伝搬方向および向きを検出することできる。
【0044】
一方、図2(c)に示すように、光波5の周りの0°よりも大きく180°よりも小さい角度θにおいて、遮音部9bが設けられている場合、開口9aは、光波5の周りの(360−θ)°の角度において伝搬媒質部3露出する。しかし、この場合、開口9aが設けられた角度より狭いθの範囲において、音響波1の伝搬方向および向きを検出することができ、この角度の領域を挟むそれぞれ(180−θ)°の領域では、伝搬方向を検出することはできるが、向きを検出することはできない。つまり、遮音部9bが設けられた角度以上の角度で音響波1の伝搬方向および向きを検出することはできない。
【0045】
角度θの大きさは、本実施形態の光マイクロホン101に求められる用途に応じた仕様によって決定し得る。
【0046】
このように、遮音部9bが光波5に垂直な面内の、光波5の周りを180°以上覆っている場合には、音響波1の伝搬方向および向きを検出することできる。一方、遮音部9bが光波5に垂直な面内の、光波5の周りを0°よりも大きく180°よりも小さい角度θで覆っている場合には、角度θの範囲でしか音響波1の伝搬方向および向きを検出するこができないが、より広い範囲で音響波が伝搬しているかどうかを検出することができる。たとえば、45°≦θ≦90°を満たすようにθを決定することによって、270°以上315°以下の範囲で音響波1の伝搬を検出することでき、45°以上90°以下の範囲において、音響波1の伝搬方向および向きを検出することできる。
【0047】
支持部9を遮音部9bと一体的に構成する場合、音響波1を遮音することができる材料によって支持部9を構成することが好ましい。そのため、シリカナノ多孔体のような音響インピーダンスが環境流体のインピーダンスに近い材料ではなく、ガラス、アクリル、金属など通常の固体材料を用いればよい。支持部9は光源4から出射する光波5に対して透明であることが好ましい。そのため、ガラスやアクリルなどの透明材料を用いるのが好ましい。金属のような透光性のない材料を用いる場合には、伝搬媒質部3の一対の主面3a、3bの一部が露出するように、光波5の入射する位置及び出射する位置に光波5より十分大きいサイズの孔を設け、そこから光波5を入出射させれば良い。
【0048】
(光電変換部6)
光電変換部6は、複数の光電変換素子を含む。好ましくは、複数の光電変換素子は、1点を中心として円周方向に配列されている。本実施形態では、光電変換部6は光電変換素子7−1〜7−12を含む。光電変換素子7−1〜7−12は、それぞれ、等しい扇形状を有しており、扇形の頂点を合わせて円周方向に配列されている。図1Aに示すように、扇形の頂点が光波5の光軸に位置するように、光電変換部6は光源4に対し配置される。このため光電変換素子7−1〜7−12は、音響受波部2を透過した光波5の周りに等角度で配置されている。
【0049】
好ましくは、光波5の周りにおける、光電変換素子7−1〜7−12の各境界の方位は、伝搬媒質部3の側面3c1〜3c6の各境界の方位と一致している。たとえば、図1Aに示すように、光波5を中心とし側面3c1と遮音部9bとの境界を0°の方位とした場合、光電変換素子7−1と光電変換素子7−2との境界、および、側面3c1と側面3c2との境界はいずれも30°の方位に位置している。他の光電変換素子の境界の方位も、対応する側面の境界の方位と一致している。
【0050】
以下において説明するように、本実施形態の光マイクロホン101は、音響受波部を透過することによって音響波1の伝搬方向に生じる、+1次回折光波および−1次回折光波のいずれか一方を検出し、音響波の伝搬方向および向きを検出する。光波5に垂直な面内において、+1次回折光波および−1次回折光波は光波5に対して対称な位置、つまり、光波5に対して180°異なる方位に生成する。したがって、音響波の伝搬方向および向きを検出するために、光電変換部6は、光波5に対して180°以下の範囲で光電変換素子を配置すればよい。
【0051】
開口9aが光波5の周りに180°より小さい角度で設けられている場合には、開口9aが設けられている方位の範囲内にのみ光電変換素子を配置してもよいし、この方位の範囲の、光波5に対して点対称となる方位の範囲内にのみ光電変換素子を配置してもよい。また、遮音部9bが光波5の周りに180°より小さい角度で設けられている場合には、遮音部9bが設けられている方位の範囲内にのみ光電変換素子を配置してもよいし、この方位の範囲の光波5に対して点対称となる方位の範囲内のみ光電変換素子を配置してもよい。
【0052】
たとえば、図1Aに示す光マイクロホン101の場合、光電変換素子7−1〜7−12のうち、光電変換素子7−1〜7−6、または、光電変換素子7−7〜7−12を設けなくてもよい。
【0053】
光波5の周りに360°の範囲で光電変換素子を設ける場合、光波5に対して対称な位置になる一対の光電変換素子から得られる電気信号を足し合わせてもよい。この場合、2つの電気信号のうち一方の位相を反転させる。これによって、より大きな検出信号を得ることができる。
【0054】
なお、本実施形態では光電変換素子7−1〜7−12は扇形の形状を有しているが、必ずしも円を分割した形状でなくてもよく、円周方向に配置される限り、他の形状であってもよい。光電変換素子の数も図示した数に限られない。また、光電変換素子7−1〜7−12の面積も等しくなくてよい。また、光電変換素子7−1〜7−12のそれぞれを複数の光電変換素子から構成してもよい。たとえば、より小さな光電変換素子を配置し、前述した光電変換素子と同様の形状にグルーピングし、グループ内の光電変換素子の出力信号を足し合わせて取得することで、これらのグループを一つの光電変換素子7−1〜7−12の1つとして動作させてもよい。
【0055】
2.光マイクロホン101の動作
次に、動作について説明する。図1に示すように、空気中を伝搬する音響波1は、開口9aを介して伝搬媒質部3の側面3c1〜3c6から取り込まれ、伝搬媒質部3の内部を伝搬する。光源4より出力された光波5は、伝搬媒質部3に入射され、伝搬媒質部3中で音響波1と接触する。
【0056】
図3は、伝搬媒質部3中で音響波1と光波5が接触する様子を示している。伝搬媒質部3中での音響波1の波長をΛとし、周波数をfとする。また、光源4から出射される光波5の波長をλとし、周波数をf0とする。伝搬媒質部3中を音響波1が伝搬することにより、伝搬媒質部3の伝搬媒質の密度が変化し、それに応じて屈折率が変化する。つまり、音響波1の伝搬に伴い、波長Λに相当する周期で屈折率が変化する屈折率分布パターンが、音響波1の伝搬方向に伝搬する。これに、光波5が接触すると、音響波1による屈折率分布パターンは回折格子のようにふるまう。このため、音響波1と接触した後に伝搬媒質部3から出射する光波5には、回折光波が含まれる。音響波1が伝搬する方向に回折する光波を+1次回折光波5a、音響波1が伝搬する方向と逆向きに回折する光波を−1次回折光波5cと呼び、また、回折されずにそのまま出射する光波を0次回折光波5bと呼ぶ。音響波1の音圧が大きい場合には、2次以上の高次の回折光波も出力する。以下では、高次回折光波が無視できる場合を考え、図3に示す3つの回折光波を用いて説明する。
【0057】
音響波1は伝搬媒質部3中を図3において矢印で示す方向に伝搬するため、屈折率分布パターンによる回折格子も運動量を持って音響波1の伝搬方向に伝搬する。このため、屈折率分布パターンによる回折光はドップラーシフトを受ける。具体的には、+1次回折光波5aの周波数はf0+fとなり、−1次回折光波5cの周波数はf0−fとなる。0次回折光波5bは回折されないため、0次回折光波5bの周波数は伝搬媒質部3に入射される前と同じくf0のままである。また、+1次回折光波5aと−1次回折光波5cの位相は互いに反転しており、180°位相が異なっている。
【0058】
0次回折光波5bと+1次回折光波5a、または、0次回折光波5bと−1次回折光波5cを干渉させると、周波数がfである差周波光成分が発生する。これを光電変換部6において光電変換すると、周波数fの電気信号が得られる。この電気信号は音響波1を電気信号に変換したものである。なお、音響波1の音圧が大きく、高次の回折光波が生じる場合には、光電変換部6から出力される電気信号には高調波が重畳する。
【0059】
図4は、伝搬媒質部3を透過した光波5の回折光を、光波5の伝搬方向に垂直な面において、光電変換部6から音響受波部2に向かう向き(光波5の出射方向とは逆の方向)から見た図である。+1次回折光波5aおよび−1次回折光波5bの回折角が大きい場合や音響受波部2からの距離が大きい場合、図4(b)に示すように+1次回折光波5aと−1次回折光波5cとは互いに重ならず分離している。しかし、+1次回折光波5aおよび−1次回折光波5bの回折角が小さい場合や音響受波部2からの距離が小さい場合には、図4(a)に示すように、+1次回折光波5aと−1次回折光波5cとは互いに一部が重なる。
【0060】
+1次回折光波5aと0次回折光波5bとの干渉光、および、−1次回折光波5cと0次回折光波5bとの干渉光を同時に光電変換部6で受光すると、二組の干渉光の位相が180°ずれているため、互いに相殺して信号を検出することができない。このため、図4(a)に示すように、+1次回折光波5aと−1次回折光波5cとが互いに重なり、かつ0次回折光波5bと重なる領域5fでは、干渉光が検出できない。図4(a)および図4(b)のいずれの場合も、図中に示した領域5d、5eにおいては、音響波に応じて強度が変化する干渉光が得られる。
【0061】
+1次回折光波5aおよび−1次回折光波5bが生じる方向は、音響波1が伝搬する方向と一致する。このため、0次回折光波5bである音響受波部2を透過した光波5の周りにおいて、領域5d、5eによる干渉光を検出すれば、+1次回折光波5aおよび−1次回折光波5bが生じている方向が特定でき、音響波1が伝搬する方向も特定できる。
【0062】
以下、分かりやすさのため、図5(a)に示すように、伝搬媒質部3の形状が正六角形柱であり、正六角形の側面3c1〜3c6に音響波1が入射した場合に発生する+1次回折光波5aと0次回折光波5bとの干渉光を説明する。図6(a)から(f)は、音響波1が側面3c1〜3c6のそれぞれから伝搬媒質部3に入力される様子と、その音響波11〜16と光波5とが接触して+1次回折光波5aおよび−1次回折光波5cが発生する際の回折光波の位置関係を示している。
【0063】
図6(a)から(f)に示すように、+1次回折光波5aおよび−1次回折光波5bは、0次回折光波5bに対して、音響波1の伝搬方向にシフトした位置に生じ、音響波1の伝搬方向が変われば、+1次回折光波5aおよび−1次回折光波5bが発生する方向も変化する。したがって、図5(b)に示すように、側面3c1〜3c6の方位に対応した方位に光電変換素子7−1〜7−6が設けられた光電変換部6で、+1次回折光波5aおよび−1次回折光波5cを受光した場合、光電変換素子7−1〜7−6のうちの特定の2つの光電変換素子から得られる電気信号の強度が大きくなる。したがって、これらの光電変換素子が位置する方向から音響波1が伝搬していることがわかる。たとえば、側面3c1から音響波1が入射する場合、光電変換素子7−1、7−4から最も大きな電気信号が出力される。また、側面3c2から音響波1が入射する場合、光電変換素子7−2、7−5から最も大きな電気信号が出力される。このように、音響波1が入射する側面の位置に対応した位置にある光電変換素子および、その光電変換素子と光波5に対して対称な位置に配置された光電変換素子において、最も強度の大きい電気信号が得られる。
【0064】
図6(a)および図6(d)からわかるように、音響波1の伝搬方向が互いに逆向き(180°異なる)である場合、+1次回折光波5aと−1次回折光波5cとの位置が逆転するだけで、同じ配置になっているのがわかる。そのため、音響波1が側面3c1から入射する場合および側面3c4から入射する場合、いずれも光電変換素子7−1、7−4dかもっとも強度の大きい信号が得られる。そのため、音響波1が側面3c1から入射したか側面3c4から入射したかを信号強度から判別することはできない。同様の理由で、互いに逆向きに伝搬する2つの音響波1を区別して検出することはできない。
【0065】
上述したように、+1次回折光波5aと0次回折光波5bとの干渉光、および、−1次回折光波5cと0次回折光波5bとの干渉光は互いに位相が逆転している。このため、音響波1の信号の位相があらかじめわかっていれば、光電変換素子7−1と光電変換素子7−4の出力信号の位相を音響波1の位相と比較し、同相か逆相かを特定することにより、伝搬の向き、つまり方位を特定することは可能である。しかし、音響波1の位相があらかじめ分かっていることは、一般的ではない。このため、この方法で音響波1の伝搬の向きを同定することは困難である。
【0066】
本実施形態の光マイクロホン101はこの点を考慮し、図2を参照して説明したように、音響受波部2に遮音部9bを設け、伝搬媒質部3に入射する音響波の方位を制限する。上述したように、光波5の周りの180°以上の角度において遮音部9bを設ける場合、図2(a)、(b)に示すように、開口9aは、光波5の周りの180°以下の角度において伝搬媒質部3露出し、開口9aが位置する180°以下の角度全体において、音響波1の伝搬方向および向きを検出することできる。一方、光波5の周りの180°以上の角度において遮音部9bを設ける場合には、遮音部9bが設けられた角度内において、音響波1の伝搬方向および向きを検出することができる。
【0067】
上述したように、音響波1の伝搬方向および向きは、図1Aに示す光電変換部6において、光電変換素子7−1から7−6のいずれ得られる電気信号の強度を比較することにより検出できる。図7は光電変換素子から得られる電気信号の波形を模式的に示している。
図7(a)に示すように、音響波1が伝搬していない場合、あるいは、音響波1の伝搬方向とは異なる方向に位置する光電変換素子7から得られる電気信号には、音響波1の振幅成分は含まれない。これに対し、音響波1が伝搬しており、音響波1の伝搬方向に位置する光電変換素子7から得られる電気信号には音響波1の振幅成分が含まれる。したがって、図7(a)に示す信号と図7(b)に示す信号の差異を検出できればどのような方法によって、音響波1の伝搬方向および向きを特定してもよい。たとえば、光電変換素子7−1から7−6から得られる電気信号をハイパスフィルタに通過させることにより直流(DC)成分をカットすれば、音響波1が伝搬する方向および向きに位置する光電変換素子7からのみ電気信号が得られる。このため、光電変換素子7−1から7−6を伝搬媒質部3の側面3c1〜3c6の方位に対応させることにより、音響波1の伝搬方向および向きが特定できる。
【0068】
図1Aに示すように、光電変換部6からの出力に基づき、伝搬方向を決定する伝搬方向定部51を光マイクロホン101は備えていてもよい。伝搬方向決定部51は、光電変換部6の光電変換素子7−1〜7−6からの電気信号を受け取り、音響波1の伝搬方位を基準方向からの角度φで表す信号を出力する。
【0069】
たとえば、図1Aに光電変換素子7−1と光電変換素子7−12との境界を基準とし、時計まわりに方位をとる。光電変換素子7−1〜7−6の方位を、それぞれの素子の円周方向の中心値とし、表1に示すように、方位に対応させる。伝搬方向決定部515は、このような光電変換素子と方位とを対応付けたデータが記録されたメモリを有する。
【0070】
【表1】
【0071】
伝搬方向決定部51は、光電変換部6から出力を受け取り、メモリを参照して、光電変換素子7−1〜7−6のうち、所定の強度以上の電気信号が出力された光電変換素子に対応する方位φ’を出力する。これにより、音響波の伝搬方位が検出される。
【0072】
2つ以上の光電変換素子で電気信号が所定の強度以上である場合、電気信号の強度の大きさに基づき平均を求め、方位を決定してもよい。
【0073】
また、図7(b)に示すように、光電変換素子から得られる電気信号には、音響波1の振幅成分が含まれるため、光電変換部6によって音響波1も検出できる。また、光電変換部6の光電変換素子7−1〜7−6の出力は独立しているため、環境流体中を複数の方向から音響波が伝搬している場合において、特定の方位の音響波を分離して検出することが可能である。なお、この場合、光電変換素子7−1と光電変換素子7−7等、光波5を中心として対称な位置にある2つの光電変換素子からは位相が反転した干渉光による電気信号が得られる。このため、これら2つの電気信号を加算してしまうと、位相差によって音響波1の信号成分は相殺されてしまう。
【0074】
このように本実形態の光マイクロホンによれば、音響波受波部に遮音部を設け、音響波が音響波受波部に入射する方位を制限するため、複数の光電変換素子を含む光電変換部を用いて、音響波の伝搬方向および向き(方位)を特定することができる。また、固体の伝搬媒質中に音響波を入射させ、光波と音響波とを作用させることによって音響波を検出するため、空気の対流などの影響を抑制することができる。また、伝搬媒質が固体であるため、音響波が伝搬媒質部を伝搬することによって生じる屈折率変化が大きくなり、高い感度で音響波を検出することができる。また、音響波による変調成分を0次回折光波と+1次回折光波または−1次回折光波との干渉成分として検出するため、干渉成分の光量変化が検出すべき音響波に対応する。したがって、レーザードップラー振動計のように大掛かりな光学系を用いなくても、簡単な光電変換素子を用いれば干渉成分を検出することが可能となる。このため、光マイクロホンの構成を小型かつ簡単にすることができる。
【0075】
(光マイクロホンの実験結果)
本願発明者は、本実施形態の光マクロホンを試作し、実験を行った。図8に試作した光マイクロホンを示す。
【0076】
伝搬媒質部3としては、108kg/m3の密度および51m/secの音速を有するシリカ乾燥ゲルを用いた。シリカ乾燥ゲルはゾルーゲル法により作製した。具体的には、テトラメトキシシラン(TMOS)をエタノールなどの溶媒と混合したゾル液に触媒水を加え、加水分解および縮重合反応によって湿潤ゲルを生成し、得られた湿潤ゲルに疎水化処理を施した。湿潤ゲルを20mm×20mm×5mmの直方体形状の内空間を有する型に充填し、超臨界乾燥により乾燥させ、20mm×20mm×5mmの直方体形状の伝搬媒質部3を得た。正方形の面を光波5の入出射面とし、5mm×20mmの面の内の隣り合う2面を音響波1が入力される側面3c1、3c2とした。
【0077】
支持部9は厚さ3mmの透明なアクリル板によって形成した。支持部9は20mm×20mm×5mmの直方体形状の内空間を有し、隣り合う2つの側面に、5mm×20mmのサイズを有しする開口9aを設け側面3c1、3c2を露出させた。
【0078】
光源4には、波長633nmのHe−Neレーザーを用いた。光波5を光源4から出射させ、支持部9の正方形の面に垂直に入射させた。音響受波部2を透過した光波を光電変換部6で検出した。光源4と音響受波部2との距離は約15cmであった。光波5のスポット径は約0.6mmであった。
【0079】
光電変換部6としては、簡単のため、2つの光電変換素子71、72を含むものを用いた。音響受波部2と光電変換部6との距離は25cmであった。光電変換素子71、72とし、シリコンダイオードによるフォトディテクタを用いた。光電変換素子71、72は、光波5の光軸(中心軸)に対して対称となるようにy方向に配置した。
【0080】
光電変換部6の出力をオシロスコープに入力し、y軸の負の方向へ伝搬する音響波1aを音響受波部2に入射させ波形の観察を行った。40kHzの周波数を有し、15波の正弦波からなるバースト信号をツイータに入力し、音響波を環境流体である空気に出射させた。オシロスコープで観察された波形を図9に示す。これより、入力した音響波1aに対応する波形が得られることが確認できた。これは、光電変換素子71、72が、0次回折光波5bに対して+1次回折光波5aおよび−1次回折光波5bの生じる方向にシフトして配置されているためである。また、光電変換素子71および72信号は逆相になることも確認できた。
【0081】
次に、音響波1aとは垂直な方向に伝搬する音響波1bを入力して、光電変換素子71の出力波形の観察を行った。オシロスコープで観察された波形を図10に示す。この場合には、音響波1bに対応する信号は確認されなかった。これは、光電変換素子71が、0次回折光波5bに対して+1次回折光波5aおよび−1次回折光波5bの生じる方向にシフトして配置されていないためである。
【0082】
図9および図10より、本実験による光マイクロホンを用いて波形を観測することにより、音響波1の伝搬方向を特定することができることが確認できた。
【0083】
本実験では、簡単のため光電変換部6を2つの光電変換素子71、72から構成したが、図11に示すように、90°の角度を有する頂点を合わせるように、4つの光電変換素子71、72、73、74が配置された光電変換部6を用いれば、y軸の負の方向へ伝搬する音響波1aに加えて、x軸の負の方向へ伝搬する音響波1bを検出することができる。
【0084】
(音響受波部の他の構成)
音響受波部2を構成する伝搬媒質部3の形状が図1Aに示すように多角形柱状を有する場合、音響波1が側面3c1〜3c6のいずれかに入射する際に、側面の端部において回折波を生じるなどして、音響波1が隣接する側面にも入射することが考えられる。特に、伝搬媒質部3を構成する材料の密度ρnおよび音速Cnが空気の密度ρaおよび音速Caに対して以下の式(1)を満たす場合、音響波1が反射を伴わずに伝搬媒質部3の内部に屈折伝搬する場合がある。
【0085】
図12は音響波1が空気と伝搬媒質部3の境界面を伝搬する様子を示している。音響波1が反射を伴わずに伝搬媒質部3の内部に屈折伝搬するのは、音響波1の入射角θaが式(2)を満たす場合である。
【0086】
たとえば、伝搬媒質部3の密度が100kg/m3、音速が50m/secの場合、音響波1の入射角θa=85.4°の場合に屈折角θn=8.4°で伝搬媒質部3の内部に屈折伝搬する。
【0087】
音響波1が側面3c1〜3c6のいずれかに対して垂直に入射し、伝搬媒質部3の内部を伝搬する際、側面の端部で生じる回折波が、上述の入射角度に近い角度で隣接する側面に入射すると、音響波1は側面3c1〜3c6のいずれかの側面およびこれに隣接する側面のいずれからも伝搬媒質部3に入射する。このため、音響波1の伝搬方向の同定が困難になる場合も考えられる。
【0088】
このような隣接する側面からの音響波1の入射が問題となる場合には、音響波1の回折波が隣接する側面に入射しない構造を音響受波部2に設ければよい。
【0089】
たとえば、図13に示すように、支持部9の開口9aにおいて、側面3c1〜3c6のそれぞれに対応したホーン16を設け、音響波1の回折波が隣接する側面に入射しないようにしてもよい。また、図14に示すように、ホーン16を伝搬媒質部3で構成することも可能である。
【0090】
さらに図15に示すように、支持部9の開口9aに区切り17を設け、音響波1の回折波の伝搬を抑制してもよい。区切り17は開口9aを複数の開口部分に分割し、伝搬媒質部3が支持部9の開口9aから露出している伝搬媒質部3の各側面とこれに隣接する側面と境界3hを覆っている。区切り17の高さhは、側面の幅Dに対して、h≧D・tanθaを満たしていることが好ましい。また、区切り17は側面3c1〜3c6と接していることが好ましい。区切り17は、伝搬媒質部3が平面によって構成される複数の側面を有している場合だけでなく、図1Bに示すように、曲面形状の側面3c’に設けてもよい。
【0091】
このように、ホーン16や区切り17を設け、音響波1の回折波が隣接する側面に入射しないようにすることによって、不要波を抑制しながら音響波1を正確に伝搬媒質部3内を伝搬させることができ、より正確に音響波1の伝搬方位を検出することが可能となる。
【0092】
(第2の実施形態)
以下、本発明による光マイクロホンの第2の実施形態を説明する。図16は、第2の実施形態の光マイクロホン102の構成を概略的に示す斜視図である。光マイクロホン102は、音響受波部2と、光源4と、回転遮光板11と、光電変換部12とを備える。光マイクロホン102は、光電変換部12が1つの光電変換素子を含み、回転遮光板11を備える点で第1の実施形態と異なる。
【0093】
光マイクロホン102は、回転遮光板11を用いて光波5の一部を方向を変えながら遮光し、光電変換部12で光波5を検出する。
【0094】
以下、回転遮光板11および光電変換部12を詳細に説明する。
【0095】
(回転遮光板11)
回転遮光板11は、音響受波部2を透過した光波5の一部を遮光する位置に配置する。回転遮光板は11、光波5を透過しない材料で構成され、光波5の光軸(中心軸)周りに回転する回転機構を備える。
【0096】
光波5は、回転遮光板11の一つの稜線を境界として、一部が遮光され、残りの部分が遮光されずに伝搬する。この稜線を遮光稜13と呼ぶことにする。遮光稜13は直線である方が好ましい。音響波1の伝搬方向の同定が行いやすからである。遮光稜13は、図17(b)に示すように、光波5の光軸を通るように配置した場合に、光電変換部13から得られる電気信号に音響波1の成分が最も多く含まれる。このため遮光稜13は光波5の光軸を通る(交差する)のが好ましい。しかし、遮光稜13を、図17(a)および図17(c)に示すように光波5の光軸からずらして配置しても、振幅は小さくなるものの、音響波1を検出することが可能である。回転遮光板11は、光波5の光軸を回転中心として、回転する機構を備える。回転遮光板11を回転させながら光電変換部12から電気信号を取得してもよいし、任意の角度で調整し停止させて電気信号を取得してもよい。
【0097】
(光電変換部12)
光電変換部12は、光波5よりも十分に大きい受光面を有する光電変換素子を含み、回転遮光板11で遮光されずに伝搬する光波5を受光する。また、光電変換部12は、回転遮光板11の遮光稜13の回転角の情報をリアルタイムで取得する。光電変換部12の出力信号は、遮光稜13の回転角の情報と対応付けて検出・記録される。
【0098】
次に、図18を参照しながら光マイクロホン102の動作を説明する。
【0099】
図18(a)から(e)は、種々の回転角度にある回転遮光板11と、音響波1が伝搬媒質部3を透過している音響受波部2を光波が透過することにより生じる、+1次回折光波5a、−1次回折光波5cおよび0次回折光波5bの位置との関係を模式的に示している。音響波1は、図においてy軸を負の方向へ伝搬している。このとき、回転遮光板11の遮光稜13の角度をx軸に対して時計まわりにφととる。回転遮光板11の遮光稜13は0次回折光波5bの光軸を通っている。
【0100】
図18(a)から(e)に示すように、+1次回折光波5aおよび−1次回折光波5cは0次回折光波5bに対して音響波1の伝搬方向の伝搬する方向側および逆側に生成する。
【0101】
図18(a)に示すように、φ=0°である場合、回転遮光板11は+1次回折光波5aと0次回折光波5bとが交わる領域を遮光しており、0次回折光波5bと−1次回折光波5cとが重なる領域5eが光電変換部6に検出される。このため、音響波1によって変調された領域5eからの干渉光のみが検出される。
【0102】
図18(b)、(c)、(d)に示すように、回転遮光板11の回転角度φが大きくなると、回転遮光板11によって領域5eの一部が遮られ、0次回折光波5bと+1次回折光波5aとが重なる領域5dからの干渉光が検出されるようになる。回転角度φが大きくなるにつれて、領域5eの面積が小さくなり、領域5eから得られる干渉光の光量も低下する。一方、領域5dの面積は大きくなり、領域5dから得られる干渉光の光量が増大する。
【0103】
図4を参照して説明したように、領域5eから得られる干渉と、領域5dから得られる干渉光とは互いに位相が逆転しているため、これらを同時に光電変換部12で検出すると、音響波1の信号成分の一部は相殺され、検出されなくなる。
【0104】
このため、回転角度φが大きくなるにつれて、光電変換部12から得られる電気信号中の音響波1の成分の振幅が小さくなる。図18(e)に示すように、φ=90°になると、領域5eおよび領域5dの面積が等しくなるため、光電変換部12から得られる電気信号中の音響波1の成分はゼロとなる。この時、遮光稜13は音響波1の伝搬方向と平行である。
【0105】
このように、回転遮光板11の回転角度φが0°のとき、光電変換部12から得られる電気信号の振幅が最大となり、90°のとき、電気信号が最少となる。つまり、電気信号の振幅が最大となるとき、遮光稜13が音響波1の伝搬方向に対して垂直に位置しており、電気信号の振幅が最少となるとき、遮光稜13が音響波1の伝搬方向に対して平行に位置する。遮音部9bによって、回転角度φが180°以上360°以下に相当する方位から音響波1は音響受波部2に入射しない。したがって、光電変換部12の電気信号の振幅が最少となるときの角度φが音響波1の伝搬方位と一致する。
【0106】
本実施形態では、回転遮光板11を用いて光電変換部12入射する光波の一部を制限し、また、遮光する領域を回転させていた。しかし、回転遮光板11を用いる代わりに、光電変換部12に回転機構を持たせても同様の操作を行うことができる。この場合、図19に示すように、光電変換部12は光波5の一部を受光する位置に配置し、光波5の光軸を中心として回転させることによって同様の効果を得ることができる。この場合、光電変換部12の受光面を規定し、光波の光軸に近接した辺12eが遮光稜として機能する。
【0107】
このように、本実施形態の光マイクロホンによれば、回転遮光板の角度、あるいは光電変換部の回転角度に応じて、光電変換部から得られる電気信号強度が変化し、信号強度の変化は、遮光領域と、回折光波の位置、つまり音響波の伝搬方向と対応している。したがって、回転遮光板の角度または光電変換部12の回転角度から音響波1の伝搬方位を特定することができる。
【0108】
(第3の実施形態)
以下、本発明による光マイクロホンの第3の実施形態を説明する。図20は、第3の実施形態の光マイクロホン103の構成を概略的に示す斜視図である。光マイクロホン103は、音響受波部2と、光源4と、光電変換部6と、ビームスプリッタ15と、ミラー14とを備える。光マイクロホン103は、ミラー14によって光波5が2回、音響受波部2を透過する点で第1の実施形態とは異なる。
【0109】
ビームスプリッタ15は光源4と音響受波部2との間に設けられ、ミラー14は、音響受波部2の光源4とは反対側に設けられる。このため音響受波部2はビームスプリッタ15とミラー14との間に位置している。ミラー14は、音響受波部2の光源4とは反対側の面に密着して設けられていることが好ましい。
【0110】
光マイクロホン103では、第1の実施形態と同様に、空気中を伝搬する音響波1を、側面3c1〜3c6から伝搬媒質部3の内部に取り込む。光源4より出射された光波5は、ビームスプリッタ15を透過し、音響受波部2の伝搬媒質部3に入射する。伝搬媒質部3中で光波5は音響波1と作用しながら音響受波部2から出射し、ミラー14に到達する。
【0111】
光波5はミラー14によって反射され、再び音響受波部2の伝搬媒質部3を透過する。このため、光波5は、作用長が2倍である伝搬媒質部3を透過しているように、ミラー14に到達するまでの往路、および、ミラー14からの反射による復路において一体的に音響波1と作用する。その結果、伝搬媒質部3からビームスプリッタ15へ向けて出射する際に、2倍の作用長の伝搬媒質部を透過したのと同程度の回折効果で、0次回折光波、+1次回折光波および−1次回折光波が生じる。これらの光波を含む光波5は、ビームスプリッタ15に入射され、ビームスプリッタのハーフミラーによって光電変換部6へ向けて反射される。
【0112】
光電変換部6に到達する光波5には、第1の実施形態と同様、+1次回折光波5a、0次回折光波5b、−1次回折光波5cの3つの光波が存在する。ただし、+1次回折光波5aおよび−1次回折光波5cの強度は、伝搬媒質部3を一度透過する際に得られる回折光波の強度の2倍になっている。
【0113】
光電変換部6を用いて音響波1の伝搬方向および向き(方位)を特定する方法は、第1の実施形態と同様である。光電変換部6の代わりに第2の実施形態の光電変換部112および回転遮光板11を用いて音響波1の伝搬方向および向き(方位)を特定してもよい。
【0114】
本実施形態の光マイクロホンによれば、光波5がミラー14で反射されることにより、伝搬媒質部3内を往復して伝搬するため、より大きな回折効果が得られる。このため、伝搬媒質部3の厚さが同じである場合には、第1の実施形態よりも感度の高い光マイクロホンを提供することができる。
【0115】
(第4の実施形態)
以下、本発明による光マイクロホンの第4の実施形態を説明する。図21は、第4の実施形態の光マイクロホン104の構成を概略的に示す斜視図である。光マイクロホン104は、音響受波部2の遮音部9bが設けられた方位が異なる2組の光マイクロホン101’、101’’を備えている。
【0116】
光マイクロホン101’は、光源4と、音響受波部2と、光電変換部6と、ビームスプリッタ15とを備えている。また、光マイクロホン101’’は、音響受波部2と、光電変換部6と、ミラー14とを備えている。
【0117】
ビームスプリッタ15は光マイクロホン101’の光源4と音響受波部2との間に設けられ、光源から出射した光波5の一部をミラー14へ向けて出射する。光マイクロホン101’’は、ミラーによって反射された光波5の音響受波部2’へ入射させる。
【0118】
光マイクロホン101’の音響受波部2の開口9aと光マイクロホン101’’の音響受波部2’’の開口9a’’とは互いに対向しないように配置されている。具体的には、光マイクロホン101’の音響受波部2の開口9aが光波5の周りの180°の角度で設けられており、音響受波部2の遮音部9bが設けられた範囲で、光マイクロホン101’’の音響受波部2’’の開口9a’’が設けられている。
【0119】
このように2つの光マイクロホンを配置することによって、光波5の周りの360°の範囲で音響波1の伝搬方向および向きを特定することができる。
【0120】
本実施形態では、光マイクロホン101’’は光源4を備えていないが、ビームスプリッタ15およびミラー14に代えて、光マイクロホン101’’は他の光源4を備えていてもよい。また、光マイクロホン101’、101’’として第2、第3の実施形態の光マイクロホン102、13を用いてもよく、光マイクロホン101’と光マイクロホン101’’とは、同じ形態であってもよいし、互いに異なる形態であってもよい。
【0121】
本実施形態の光マイクロホンによれば、360°の方位で音響波1の伝搬方向および向きを特定することが可能であり、特に伝搬方位が不明である音響波の検出および伝搬方位の特定に好適に用いられる。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明の光マイクロホンは、小型の超音波センサ等あるいは可聴音マイクロホン等として有用である。また、超音波を用いた周囲環境計測システムに用いる超音波受波センサ等としても応用できる。
【符号の説明】
【0123】
1 音響波
1a、1b 音響波
2 音響受波部
3 伝搬媒質部
4 光源
5 光波
5a +1次回折光波
5b 0次回折光波
5c −1次回折光波
5d、5e 検出領域
6 光電変換部
7 光電変換素子
7−1〜7−12、71〜74 光電変換素子
9 支持部部
11 回転遮光部
12 光電変換部
13 遮光稜
14 ミラー
15 ビームスプリッタ
16 ホーン
101 出射系光学部品
102 受光系光学部品
201 開口部
202 音響導波路
203 光音響伝搬媒質
204 レーザードップラー振動計
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境流体を伝搬する音響波を、光波を用いて検出する光マイクロホンであって、
固体の伝搬媒質によって構成されており、前記音響波が伝搬する伝搬媒質部、および、前記伝搬媒質部を支持する支持部を含む音響受波部と、
前記伝搬媒質部中を伝搬する前記音響波を横切って、前記伝搬媒質部を透過する光波を出射する光源と、
前記伝搬媒質部を透過した前記光波を受光し、電気信号を出力する複数の光電変換素子を有する光電変換部とを備え、
前記音響受波部において、
前記伝搬媒質部は、前記光波が入射および出射する1対の主面と、前記1対の主面間に位置し、前記環境流体から音響波が入射する少なくとも1つの側面を有し、
前記支持部は、前記少なくとも1つの側面の少なくとも一部を露出する開口と前記開口以外の領域において、前記1対の主面間を覆う遮音部とを含む光マイクロホン。
【請求項2】
環境流体を伝搬する音響波を、光波を用いて検出する光マイクロホンであって、
固体の伝搬媒質によって構成されており、前記音響波が伝搬する伝搬媒質部、および、前記伝搬媒質部を支持する支持部を含む音響受波部と、
前記伝搬媒質部中を伝搬する前記音響波を横切って、前記伝搬媒質部を透過する光波を出射する光源と、
前記伝搬媒質部を透過した前記光波を受光し、電気信号を出力する光電変換素子、および、前記光波の光軸を中心として回転可能であり前記光波の一部を遮光する遮光部を有する光電変換部と
を備え、
前記音響受波部において、
前記伝搬媒質部は、前記光波が入射および出射する1対の主面と、前記1対の主面間に位置し、前記環境流体から音響波が入射する少なくとも1つの側面を有し、
前記支持部は、前記少なくとも1つの側面の少なくとも一部を露出する開口と前記開口以外の領域において、前記1対の主面間を覆う遮音部とを含む光マイクロホン。
【請求項3】
環境流体を伝搬する音響波を、光波を用いて検出する光マイクロホンであって、
固体の伝搬媒質によって構成されており、前記音響波が伝搬する伝搬媒質部、および、前記伝搬媒質部を支持する支持部を含む音響受波部と、
前記伝搬媒質部中を伝搬する前記音響波を横切って、前記伝搬媒質部を透過する光波を出射する光源と、
受光面を有し、前記伝搬媒質部を透過した前記光波を前記受光面で受光し、電気信号を出力する光電変換部であって、前記伝搬媒質部を透過した前記光波の一部を受光しないように前記光波の光軸に対して前記受光面の中心がシフトしており、前記光波の光軸を中心として前記受光面が回転可能な光電変換部と
を備え、
前記音響受波部において、
前記伝搬媒質部は、前記光波が入射および出射する1対の主面と、前記1対の主面間に位置し、前記環境流体から音響波が入射する少なくとも1つの側面を有し、
前記支持部は、前記少なくとも1つの側面の少なくとも一部を露出する開口と前記開口以外の領域において、前記1対の主面間を覆う遮音部とを含む光マイクロホン。
【請求項4】
ビームスプリッタとミラーとをさらに備え、
前記ビームスプリッタは前記光源と音響受波部との間に位置し、
前記音響受波部は前記ビームスプリッタと前記ミラーとの間に位置し、
前記光源から出射した光波は、ビームスプリッタおよび前記伝搬媒質部を透過して前記ミラーで反射し、
前記ミラーで反射した光波は、前記伝搬媒質部を再度透過し、前記ビームスプリッタで反射され前記光電変換部へ入射する請求項1から4のいずれかに記載の光マイクロホン。
【請求項5】
前記遮音部は、前記伝搬媒質部を透過する光波の周りを90°以上の角度で覆っている請求項1から4のいずれかに記載の光マイクロホン。
【請求項6】
前記遮音部は、前記伝搬媒質部を透過する光波の周りを180°以上の角度で覆っている請求項1から4のいずれかに記載の光マイクロホン。
【請求項7】
前記少なくとも1つの側面は曲面であり、前記開口において露出している任意の部分から前記伝搬媒質部を透過している光波までの距離は等しい請求項1から4のいずれかに記載の光マイクロホン。
【請求項8】
前記伝搬媒質部は、
前記環境流体から音響波が入射する複数の側面を有し、
前記複数の側面は、前記伝搬媒質部を透過する光波と垂直な平面において、前記光波の周りに配置されており、
前記複数の側面は平面であり、
前記開口において、前記複数の側面は露出しており、
前記複数の側面から前記伝搬媒質部を透過している光波までの距離は等しい請求項1から4のいずれかに記載の光マイクロホン。
【請求項9】
前記支持部は、前記光波に対して不透明であって、
前記支持部は、前記伝搬媒質部の前記1対の主面のそれぞれ一部を露出する孔を有し、
前記光波は前記孔を通過する請求項1から4のいずれかに記載の光マイクロホン。
【請求項10】
前記第1開口に設けられた複数のホーンをさらに備え、
前記複数のホーンは、前記伝搬媒質部を透過する光波と垂直な平面において、前記光波の周りに等角度で配置されている請求項1から4のいずれかに記載の光マイクロホン。
【請求項11】
前記支持部は、前記開口を複数の開口部分に分割する少なくとも1つの区切りを有し、
前記少なくとも1つの区切りによって分割された複数の開口部分は、前記伝搬媒質部を透過する光波と垂直な平面において、前記光波の周りに等角度で配置されている請求項1から4のいずれかに記載の光マイククロホン。
【請求項12】
前記光電変換部において、前記複数の光電変換素子は、前記光波の周りに等角度で配置されている請求項1から4のいずれかに記載の光マイククロホン。
【請求項13】
前記光波の光軸周りにおける、前記複数の側面の各境界の方位と、前記複数の光電変換素子の各境界の方位は一致している請求項8に記載の光マイクロホン。
【請求項14】
前記伝搬媒部はシリカナノ多孔体によって構成されている請求項1から4のいずれかに記載の光マイクロホン。
【請求項15】
請求項1から14のいずれかに規定される光マイクロホンを2つ備え、
一方の光マイクロホンの音響受波部の遮光部と、他方の光マイクロホンの音響受波部の遮光部とが対向して配置された光マイクロホン。
【請求項1】
環境流体を伝搬する音響波を、光波を用いて検出する光マイクロホンであって、
固体の伝搬媒質によって構成されており、前記音響波が伝搬する伝搬媒質部、および、前記伝搬媒質部を支持する支持部を含む音響受波部と、
前記伝搬媒質部中を伝搬する前記音響波を横切って、前記伝搬媒質部を透過する光波を出射する光源と、
前記伝搬媒質部を透過した前記光波を受光し、電気信号を出力する複数の光電変換素子を有する光電変換部とを備え、
前記音響受波部において、
前記伝搬媒質部は、前記光波が入射および出射する1対の主面と、前記1対の主面間に位置し、前記環境流体から音響波が入射する少なくとも1つの側面を有し、
前記支持部は、前記少なくとも1つの側面の少なくとも一部を露出する開口と前記開口以外の領域において、前記1対の主面間を覆う遮音部とを含む光マイクロホン。
【請求項2】
環境流体を伝搬する音響波を、光波を用いて検出する光マイクロホンであって、
固体の伝搬媒質によって構成されており、前記音響波が伝搬する伝搬媒質部、および、前記伝搬媒質部を支持する支持部を含む音響受波部と、
前記伝搬媒質部中を伝搬する前記音響波を横切って、前記伝搬媒質部を透過する光波を出射する光源と、
前記伝搬媒質部を透過した前記光波を受光し、電気信号を出力する光電変換素子、および、前記光波の光軸を中心として回転可能であり前記光波の一部を遮光する遮光部を有する光電変換部と
を備え、
前記音響受波部において、
前記伝搬媒質部は、前記光波が入射および出射する1対の主面と、前記1対の主面間に位置し、前記環境流体から音響波が入射する少なくとも1つの側面を有し、
前記支持部は、前記少なくとも1つの側面の少なくとも一部を露出する開口と前記開口以外の領域において、前記1対の主面間を覆う遮音部とを含む光マイクロホン。
【請求項3】
環境流体を伝搬する音響波を、光波を用いて検出する光マイクロホンであって、
固体の伝搬媒質によって構成されており、前記音響波が伝搬する伝搬媒質部、および、前記伝搬媒質部を支持する支持部を含む音響受波部と、
前記伝搬媒質部中を伝搬する前記音響波を横切って、前記伝搬媒質部を透過する光波を出射する光源と、
受光面を有し、前記伝搬媒質部を透過した前記光波を前記受光面で受光し、電気信号を出力する光電変換部であって、前記伝搬媒質部を透過した前記光波の一部を受光しないように前記光波の光軸に対して前記受光面の中心がシフトしており、前記光波の光軸を中心として前記受光面が回転可能な光電変換部と
を備え、
前記音響受波部において、
前記伝搬媒質部は、前記光波が入射および出射する1対の主面と、前記1対の主面間に位置し、前記環境流体から音響波が入射する少なくとも1つの側面を有し、
前記支持部は、前記少なくとも1つの側面の少なくとも一部を露出する開口と前記開口以外の領域において、前記1対の主面間を覆う遮音部とを含む光マイクロホン。
【請求項4】
ビームスプリッタとミラーとをさらに備え、
前記ビームスプリッタは前記光源と音響受波部との間に位置し、
前記音響受波部は前記ビームスプリッタと前記ミラーとの間に位置し、
前記光源から出射した光波は、ビームスプリッタおよび前記伝搬媒質部を透過して前記ミラーで反射し、
前記ミラーで反射した光波は、前記伝搬媒質部を再度透過し、前記ビームスプリッタで反射され前記光電変換部へ入射する請求項1から4のいずれかに記載の光マイクロホン。
【請求項5】
前記遮音部は、前記伝搬媒質部を透過する光波の周りを90°以上の角度で覆っている請求項1から4のいずれかに記載の光マイクロホン。
【請求項6】
前記遮音部は、前記伝搬媒質部を透過する光波の周りを180°以上の角度で覆っている請求項1から4のいずれかに記載の光マイクロホン。
【請求項7】
前記少なくとも1つの側面は曲面であり、前記開口において露出している任意の部分から前記伝搬媒質部を透過している光波までの距離は等しい請求項1から4のいずれかに記載の光マイクロホン。
【請求項8】
前記伝搬媒質部は、
前記環境流体から音響波が入射する複数の側面を有し、
前記複数の側面は、前記伝搬媒質部を透過する光波と垂直な平面において、前記光波の周りに配置されており、
前記複数の側面は平面であり、
前記開口において、前記複数の側面は露出しており、
前記複数の側面から前記伝搬媒質部を透過している光波までの距離は等しい請求項1から4のいずれかに記載の光マイクロホン。
【請求項9】
前記支持部は、前記光波に対して不透明であって、
前記支持部は、前記伝搬媒質部の前記1対の主面のそれぞれ一部を露出する孔を有し、
前記光波は前記孔を通過する請求項1から4のいずれかに記載の光マイクロホン。
【請求項10】
前記第1開口に設けられた複数のホーンをさらに備え、
前記複数のホーンは、前記伝搬媒質部を透過する光波と垂直な平面において、前記光波の周りに等角度で配置されている請求項1から4のいずれかに記載の光マイクロホン。
【請求項11】
前記支持部は、前記開口を複数の開口部分に分割する少なくとも1つの区切りを有し、
前記少なくとも1つの区切りによって分割された複数の開口部分は、前記伝搬媒質部を透過する光波と垂直な平面において、前記光波の周りに等角度で配置されている請求項1から4のいずれかに記載の光マイククロホン。
【請求項12】
前記光電変換部において、前記複数の光電変換素子は、前記光波の周りに等角度で配置されている請求項1から4のいずれかに記載の光マイククロホン。
【請求項13】
前記光波の光軸周りにおける、前記複数の側面の各境界の方位と、前記複数の光電変換素子の各境界の方位は一致している請求項8に記載の光マイクロホン。
【請求項14】
前記伝搬媒部はシリカナノ多孔体によって構成されている請求項1から4のいずれかに記載の光マイクロホン。
【請求項15】
請求項1から14のいずれかに規定される光マイクロホンを2つ備え、
一方の光マイクロホンの音響受波部の遮光部と、他方の光マイクロホンの音響受波部の遮光部とが対向して配置された光マイクロホン。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2013−55599(P2013−55599A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193992(P2011−193992)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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