説明

光メモリ

【課題】 コア層とクラッド層との界面の平坦性が高く、記録情報の再現性が良好な光メモリを提供する。
【解決手段】 光メモリ10には、屈折率の異なるコア層13とクラッド層14とが交互に積層され、1つまたは複数の光導波路17が構成されている。コア層13の下側の界面には、光導入面18からコア層13に導入されたレーザ光を散乱させる情報用凹凸部16が形成されている。コア層13は、硬化性官能基を有する化合物を1つまたは複数個含む光硬化性樹脂からなり、硬化性官能基1つ当たりの分子量を、各化合物の重量分率に基づいて平均した値が160以上である。また、硬化性官能基1つ当たりの分子量が200以上である化合物の重量分率の合計が25%以上である。この条件において、コア層13は、製造時の光照射による硬化収縮量が小さく、平坦性を示す表面変動量が約100nm以下となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コア層とクラッド層とを交互に積層してなる光導波路型の光メモリに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、樹脂製のコア層と、このコア層の上下に積層された樹脂製のクラッド層とからなり、コア層とクラッド層との一方の界面に、再生像を得るため情報用凹凸部を形成した平面型の光導波路を、1個又は複数個積層してなる光メモリ(情報記録媒体)が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図6に示すように、コア層101とクラッド層102とが交互に積層されてなる光メモリ100に記録された記録情報を読み出す際には、側部に形成された光導入面103に対して、シリンドリカルレンズ104によって縦方向に絞った光(レーザ光)を照射し、所望のコア層101に光を導入する。コア層101に導入された光は、界面に形成された情報用凹凸部によって散乱されながら伝播する。この時、情報用凹凸部で散乱された散乱光(再生光)は導入光に対して交差する方向(上下方向)に光メモリ100内を透過し、光メモリ100の上面及び下面から外部へ放出される。
【0004】
この例では、光メモリ100の上面から放出された散乱光をイメージセンサ105で受光するようにしている。イメージセンサ105が受光した散乱光の2次元干渉パターン(再生像)をデジタル情報に復調することで、光メモリ100に記録された記録情報が再現する。
【特許文献1】特開2002−120286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記光メモリ100において、情報用凹凸部が存在しないコア層101とクラッド層102との界面の平坦性は、記録情報の再現性(ビットエラーレート)に影響を与える。つまり、上記界面の平坦性が劣化していると、導入光の伝播に支障が生じることや、散乱光に位相のずれが生じて再生像の輝点が再現されないことが原因となり、記録情報の再現性が低下する。
【0006】
コア層101およびクラッド層102は、光硬化性樹脂を塗布し、これを光照射して硬化させることによって形成されるため、硬化収縮の影響が大きい場合には上記界面の平坦性が劣化し、記録情報の再現性が低下するという問題がある。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、コア層とクラッド層との界面の平坦性が高く、記録情報の再現性が良好な光メモリを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の光メモリは、屈折率の異なる第1樹脂層と第2樹脂層とが交互に積層され、前記第1樹脂層の下面と前記第2樹脂層の上面とが接する界面に情報再生用の凹凸部が形成されてなる光導波路型の光メモリにおいて、前記第1樹脂層は、硬化性官能基を有する化合物を1つまたは複数個含む光硬化性樹脂からなり、前記硬化性官能基1つ当たりの分子量を、前記各化合物の重量分率に基づいて平均した値が160以上であることを特徴とする光メモリ。
【0009】
なお、前記硬化性官能基1つ当たりの分子量が200以上である前記化合物の重量分率の合計が25%以上であることが好ましい。また、前記化合物は、前記硬化性官能基として、アクリレート基またはメタクリレート基を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光メモリは、表面に情報再生用の凹凸部が形成された第2樹脂層(クラッド層またはコア層)の上に形成された第1樹脂層(コア層またはクラッド層)は、硬化性官能基を有する化合物を1つまたは複数個含む光硬化性樹脂からなり、硬化性官能基1つ当たりの分子量を各化合物の重量分率に基づいて平均した値が160以上であるので、第1樹脂層は、光照射による硬化収縮量が小さく、表面の平坦性が向上する。これにより、導波路内の光の伝播が良好となるとともに、再生光の位相が乱されにくくなるため、記録情報の再現性が向上する。
【0011】
また、硬化性官能基1つ当たりの分子量が200以上である化合物の重量分率の合計が25%以上であると、さらに硬化収縮量が小さくなり、表面の平坦性が向上する。
【0012】
また、硬化性官能基として、アクリレート基またはメタクリレート基を有する化合物を用いると、硬化速度が速いという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1に示す積層導波路型の光メモリ10は、2つのユニット11が接着層12を介して上下に貼り合わされた構成となっている。ユニット11は、コア層13とクラッド層14とがフイルム15a上に交互に積層されており、最上層には、フイルム15bが貼着されている。
【0014】
コア層13及びクラッド層14は、アクリレート基などの硬化性官能基を含有する硬化性化合物からなる紫外線硬化樹脂によって形成されている。コア層13の厚さは、1.0〜1.5μm程度が適当であり、例えば、1.4μmにされている。クラッド層14の厚さは、8〜10μm程度が適当であり、例えば、10μmにされている。コア層13の屈折率はクラッド層14の屈折率より大きく、コア層13の屈折率は1.52、クラッド層14の屈折率は1.51とされている。
【0015】
クラッド層14の上面には、情報用凹凸部16が形成されており、この凹凸の高さ方向の差は100nm程度である。導波方向への凹凸の配列周期は、コア層13に入射されるレーザ光の波長(660nm)をコア層の屈折率(1.52)で割った値によって決定され、約440nmである。この情報用凹凸部16は、光メモリ10に記録すべきデジタル情報を2次元符号化し、その符号化されたデジタル情報を元に計算機によって合成されたパターン(計算機ホログラムと称される)が転写されたものである。一方、コア層13の上面は、約100nm以下の表面変動量(凹凸量)となるように平坦化されている。
【0016】
光導波路17は、1つのコア層13と、その上下に積層された2つのクラッド層14とによって構成されている。なお、各ユニット11の最上層に形成されたコア層13bの上にはクラッド層14が形成されていないが、その上に形成されたフイルム15bの屈折率をクラッド層14の屈折率とほぼ同一としているため、最上層のコア層13bも光導波路17を構成する。
【0017】
同図において、各ユニット11を3層の光導波路17で構成しているが、これは図を簡略化するためであり、実際には20層程度の光導波路17で各ユニット11を構成することが好ましい。この場合、ユニット11の厚さは、0.4mm程度となる。また、同図において、光メモリ10を2つのユニット11で構成しているが、これも図を簡略化するためであり、実際には5個程度のユニット11で光メモリ10を構成することが好ましい。
【0018】
ユニット11は、光導波路17が一定数積層された積層体の上下に比較的高剛性のフイルム15a,15bが貼着されてなる。フイルム15a,15bは、積層体の反りや撓みを抑えるために設けられている。フイルム15a,15bは、アートン(登録商標)等の非晶質ポリオレフィン、ポリカーボネート、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)などの樹脂からなり、その厚さは150μm程度である。
【0019】
各ユニット11を接着する接着層12としては、紫外線硬化樹脂が用いられる。接着層12の屈折率が、フイルム15a,15bの屈折率と大きく異なると、接着層12とフイルム15a,15bとの界面で再生光が反射して、光量やS/N比が低下してしまうことがあるため、接着層12とフイルム15a,15bとの屈折率はほぼ等しく設定されている。
【0020】
各ユニット11の端部には、光導入面18が形成されている。光導入面18からコア層13に光(レーザ光)が導入されると、導入光は、クラッド層14との界面で反射されながらコア層13を伝播するとともに、一部が情報用凹凸部16によって散乱(回折)される。
【0021】
光メモリ10を構成するコア層13、クラッド層14、フイルム15a,15b、及び接着層12の各層は、情報用凹凸部16で散乱された散乱光(再生光)の波長に対して透明であるので、各光導波路17から上下に放出される再生光は各層を透過し、光メモリ10の上面及び下面から外部へ放出される。この再生光をCCDなどの2次元イメージセンサで受光し、イメージセンサの撮像信号をデジタル信号化し、所定の画像処理を行うことで、元の記録情報が再現する。
【0022】
以下に、光メモリ10の製造方法について説明する。図2(A)において、まず、ガラス基板21を用意する。ガラス基板21は、厚さ約1mm程度であり、その上面及び下面は凹凸がなく平坦である。このガラス基板21の表面に硬化後の屈折率が1.51の紫外線硬化樹脂をスピンコータによって塗布して接着層12を形成する。
【0023】
図2(B)において、接着層12の上にフイルム15aをラミネート(貼着)し、フイルム15aの上方から紫外線照射装置によって紫外線照射(露光量900mJ/cm2,波長365nm)を行う。このフイルム15aは、紫外線に対して透過性を有しており、接着層12は、フイルム15aを透過した紫外線を受けて硬化する。この結果、フイルム15aは、接着層12を介してガラス基板21上に接着される。
【0024】
図2(C)において、フイルム15a上に硬化後の屈折率が1.52の紫外線硬化樹脂であるコア材(液体コア樹脂)をスピンコータによって塗布してコア層13aを形成し、紫外線照射装置を用い、窒素雰囲気下にて紫外線照射(露光量900mJ/cm2,波長365nm)を行い、コア層13aを硬化させる。
【0025】
図3(A)において、コア層13aの上に硬化後の屈折率が1.51の紫外線硬化樹脂であるクラッド材(液体クラッド樹脂)をスピンコータによって塗布してクラッド層14を形成する。図3(B)において、クラッド層14の上に、可撓性を有する樹脂スタンパ22をラミネートする。樹脂スタンパ22は、紫外線に対して透過性を有しており、下面には、前述の情報用凹凸部16に対応した凹凸パターンが形成されている。この状態で、樹脂スタンパ22の上方から紫外線照射装置によって紫外線照射(露光量1500mJ/cm2,波長365nm)を行い、クラッド層14を硬化させる。
【0026】
図3(C)において、樹脂スタンパ22をクラッド層14から剥離すると、クラッド層14の表面に情報用凹凸部16が転写される。図3(D)において、クラッド層14の上に、前述のコア材をスピンコータによって塗布してコア層13を形成し、紫外線照射装置を用い、窒素雰囲気下にて紫外線照射(露光量1500mJ/cm2,波長365nm)を行い、コア層13を硬化させる。
【0027】
このようにして、フイルム15a上に、コア層13とクラッド層14とが形成される。この後、図3(A)〜図3(D)の工程を繰り返し実施して、コア層13とクラッド層14とを交互に積層することにより、図4(A)に示すように、コア層13とその上下のクラッド層14とからなる光導波路17が形成される。
【0028】
所望の数の光導波路17を形成した後、図4(B)において、最上層のクラッド層14の上に、前述のコア材をスピンコータによって塗布してコア層13bを形成し、このコア層13bの上に、前述のフイルム15aと同様のフイルム15bをラミネートする。この状態で、フイルム15bの上方から紫外線照射装置によって紫外線照射(露光量1500mJ/cm2,波長365nm)を行い、コア層13bを硬化させる。
【0029】
図4(C)において、ガラス基板21を接着層12から剥離することによってユニット11が形成される。そして、ユニット11の両端部をダイシング装置で切断し、適宜の大きさに切断されたユニット11を上下に積層して、加圧及び加熱を施すことにより、接着層12を介してユニット11が互いに接続され、図1に示す光メモリ10が完成する。
【0030】
上記製造工程において用いた紫外線硬化樹脂は、紫外線照射によって硬化する際に、硬化性官能基同士が互いに反応して共有結合を作り、分子間距離が縮まるため、硬化収縮を起こす。従って、単位量中における硬化性官能基の数が多いほど、硬化収縮が大きく、緻密な架橋構造が得られる。紫外線硬化樹脂が単一の硬化性化合物からなる場合には、その分子量Mを硬化性官能基の数fで割った値(硬化性官能基1つ当たりの分子量:M/f)によって、硬化収縮量を見積もることができる。紫外線硬化樹脂が複数の硬化性化合物からなる場合には、各硬化性化合物のM/fを、各硬化性化合物の重量分率に基づいて平均した値(硬化性官能基1つ当たりの分子量の重量平均値:(M/f)a)によって、硬化収縮量を見積もることができる。(M/f)aは、具体的には下式のように表される。
【0031】
【数1】

【0032】
ここで、fi、Mi、Wiはそれぞれ、紫外線硬化樹脂を構成する硬化性化合物iの硬化性官能基数、分子量、重量分率を表す。なお、下記実施例1で示すが、コア層13の硬化収縮を低減し、約160nm以下の表面変動量を達成するためには、(M/f)a≧160の紫外線硬化樹脂を用いる。また、約100nm以下の表面変動量を達成するためには、(M/f)a≧160でかつ、Mi/fi≧200を満たす硬化性化合物の重量分率の合計が25%以上である紫外線硬化樹脂を用いる。
【0033】
また、上記実施形態では、クラッド層14の上面に情報用凹凸部16を形成する場合を例に説明したが、これに限定されず、コア層13の上面に情報用凹凸部16を形成してもよい。この場合には、コア層13の上に紫外線硬化樹脂を塗布してクラッド層14を形成した後、窒素雰囲気下にて紫外線照射を行い、クラッド層14を硬化させる。同様に、クラッド層14の硬化収縮を低減し、約160nm以下の表面変動量を達成するためには、(M/f)a≧160の紫外線硬化樹脂を用いる。また、約100nm以下の表面変動量を達成するためには、(M/f)a≧160でかつ、Mi/fi≧200を満たす硬化性化合物の重量分率の合計が25%以上である紫外線硬化樹脂を用いる。
【0034】
ただし、Mi/fiが大きくなるにつれ、硬化性化合物の粘度、すなわち紫外線硬化樹脂の粘度が上昇するため、スピンコータでの塗布時間が増大して生産性が悪くなる。また、Mi/fiが大きくなるにつれ、硬度の低下やTgの低下などにより、耐傷性劣化や環境依存性劣化、耐久性劣化などが生じる。これらを考慮すると、Mi/fiの上限は1000程度となる。
【0035】
なお、硬化性化合物が有する硬化性官能基は、アクリレート基に限られず、メタクリレート基、ビニルエーテル基、エポキシ基、オセキタン基などであってもよい。アクリレート基またはメタクリレート基を有する硬化性化合物は、硬化収縮量が大きいが、ラジカル重合性であり、硬化速度が速い点が好ましい。一方、エポキシ基またはオセキタン基を有する硬化性化合物は、開環をともなうカチオン重合性であり、硬化速度は遅いが、開環により、硬化収縮量が少なくなる点が好ましい。
【0036】
また、上記実施形態では、コア層13およびクラッド層14を紫外線硬化樹脂によって形成しているが、これに限定されず、紫外線硬化樹脂に代えて、紫外線以外の波長の光(例えば可視光)によって硬化する光硬化性樹脂を用いてもよい。この場合にも同様に、上記条件を満たす光硬化性樹脂でコア層13および/またはクラッド層14を形成する。
【0037】
さらに、上記実施形態では、樹脂の塗布にスピンコータを用いているが、これに限定されず、スピンコータに代えて、ブレードコート法、グラビアコート法、ダイコート法等を利用した塗布装置を用いてもよい。
【実施例1】
【0038】
上記製造方法を用いて図5に示す測定用サンプル、および光メモリ(ユニット11)を製造して実験1〜8を実施し、コア層14の表面の平坦性(表面変動量)、およびビットエラーレート(BER)の測定を行った。
【0039】
[実験1]
ガラス基板21にシランカップリング処理を行い、このガラス基板21の上に下記の組成のクラッド材を、スピンコータによって約10μmの膜厚になるように塗布し、クラッド層14を形成した。次いで、このクラッド層14の上に、気泡が入らないように樹脂スタンパ22をラミネートし、この状態で、樹脂スタンパ22の上方から紫外線照射(露光量1500mJ/cm2,波長365nm)を行ってクラッド層14を硬化させた後、樹脂スタンパ22を剥離した。そして、情報用凹凸部16が転写されたクラッド層14の上に下記の組成のコア材Aを、スピンコータによって約1.4μmの膜厚になるように塗布してコア層13を形成し、窒素雰囲気下にて紫外線照射(露光量1500mJ/cm2,波長365nm)を実施してコア層13を硬化させた。
【0040】
この状態で、白色干渉計(Zygo社製 NewView5000)を用い、可干渉深度を1μm(測定深さ設定+オフセット)に調整して表面形状を測定することで、硬化後のコア層13の表面変動量(測定長2mmあたりの最大値)を求めた。
【0041】
また、ガラス基板21上に接着層12およびフイルム15aを形成し、この上にクラッド層14とコア層13とを交互に積層して光メモリ(ユニット11)を作成し、BERの測定を行った。BERの測定は、発振波長660nm、パワー10mWのレーザ光をコア層13に入射して、情報用凹凸部16による散乱光の2次元干渉パターンをイメージセンサで取り込み、これをデジタル情報に復調して元のデジタル情報と比較することにより行った。このBERの測定では、イメージセンサに取り込まれたデータをエリアごとに元のデジタル情報と比較し、BERが10-4未満のエリアの全体に対する割合を百分率で算出する。つまり、この百分率が大きいほどエラーが少ない(記録情報の再現性が高い)。
【0042】
[クラッド材]
ライトアクリレ−トTMP-A(共栄社化学(株)製アクリレ−トモノマ−) 20質量部
ライトアクリレ−ト1,6-HX-A(共栄社化学(株)製アクリレ−トモノマ−)40質量部
UV6100B(日本合成化学(株)製ウレタンアクリレ−トオリゴマ−) 40質量部
ダロキュア1173(チバ・ガイギー(株)製光重合開始材) 0.5質量部
【0043】
[コア材A]
ライトアクリレ−ト1,6-HX-A(共栄社化学(株)製アクリレ−トモノマ−)40質量部
アロニックスM320(東亜合成(株)製アクリレ−トモノマ−) 20質量部
ライトアクリレ−トDCP-A(共栄社化学(株)製アクリレ−トモノマ−) 10質量部
カラヤッドR-712(日本化薬(株)製アクリレ−トモノマ−) 30質量部
ダロキュア1173(チバ・ガイギー(株)製光重合開始材) 0.5質量部
【0044】
下表1に示す分子量Miと硬化性官能基の数fiとを用いると、コア材Aは、(M/f)a≒179、Mi/fi≧200を満たす硬化性化合物の重量分率の合計は約50%と算出される。
【0045】
[実験2]
実験2は、コア層13を下記の組成のコア材Bを用いて形成したほかは実験1と同様であり、図5の測定用サンプルを作成してコア層13の表面変動量(最大値)を測定した。また、光メモリ(ユニット11)を作成してBERの測定を行った。
【0046】
[コア材B]
ライトアクリレ−ト1,6-HX-A(共栄社化学(株)製アクリレ−トモノマ−)40質量部
アロニックスM320(東亜合成(株)製アクリレ−トモノマ−) 23質量部
ライトアクリレ−トDCP-A(共栄社化学(株)製アクリレ−トモノマ−) 17質量部
カラヤッドR-712(日本化薬(株)製アクリレ−トモノマ−) 20質量部
ダロキュア1173(チバ・ガイギー(株)製光重合開始材) 0.5質量部
【0047】
下表1に示す分子量Miと硬化性官能基の数fiとを用いると、コア材Bは、(M/f)a≒171、Mi/fi≧200を満たす硬化性化合物の重量分率の合計は約43%と算出される。
【0048】
[実験3]
実験3は、コア層13を下記の組成のコア材Cを用いて形成したほかは実験1と同様であり、図5の測定用サンプルを作成してコア層13の表面変動量(最大値)を測定した。また、光メモリ(ユニット11)を作成してBERの測定を行った。
【0049】
[コア材C]
ライトアクリレ−ト1,6-HX-A(共栄社化学(株)製アクリレ−トモノマ−)45質量部
アロニックスM320(東亜合成(株)製アクリレ−トモノマ−) 15質量部
ライトアクリレ−トDCP-A(共栄社化学(株)製アクリレ−トモノマ−) 20質量部
カラヤッドR-712(日本化薬(株)製アクリレ−トモノマ−) 20質量部
ダロキュア1173(チバ・ガイギー(株)製光重合開始材) 0.5質量部
【0050】
下表1に示す分子量Miと硬化性官能基の数fiとを用いると、コア材Cは、(M/f)a≒164、Mi/fi≧200を満たす硬化性化合物の重量分率の合計は約35%と算出される。
【0051】
[実験4]
実験4は、コア層13を下記の組成のコア材Dを用いて形成したほかは実験1と同様であり、図5の測定用サンプルを作成してコア層13の表面変動量(最大値)を測定した。また、光メモリ(ユニット11)を作成してBERの測定を行った。
【0052】
[コア材D]
ライトアクリレ−ト1,6-HX-A(共栄社化学(株)製アクリレ−トモノマ−)40質量部
NKエステルAT-20E(新中村化学(株)製アクリレ−トモノマ−) 10質量部
ライトアクリレ−トDCP-A(共栄社化学(株)製アクリレ−トモノマ−) 35質量部
カラヤッドR-712(日本化薬(株)製アクリレ−トモノマ−) 20質量部
ダロキュア1173(チバ・ガイギー(株)製光重合開始材) 0.5質量部
【0053】
下表1に示す分子量Miと硬化性官能基の数fiとを用いると、コア材Dは、(M/f)a≒193、Mi/fi≧200を満たす硬化性化合物の重量分率の合計は約28%と算出される。
【0054】
[実験5]
実験5は、コア層13を下記の組成のコア材Eを用いて形成したほかは実験1と同様であり、図5の測定用サンプルを作成してコア層13の表面変動量(最大値)を測定した。また、光メモリ(ユニット11)を作成してBERの測定を行った。
【0055】
[コア材E]
ライトアクリレ−ト1,6-HX-A(共栄社化学(株)製アクリレ−トモノマ−)40質量部
ライトアクリレ−トTMP-A(共栄社化学(株)製アクリレ−トモノマ−) 35質量部
ライトアクリレ−トDCP-A(共栄社化学(株)製アクリレ−トモノマ−) 20質量部
カラヤッドR-712(日本化薬(株)製アクリレ−トモノマ−) 15質量部
ダロキュア1173(チバ・ガイギー(株)製光重合開始材) 0.5質量部
【0056】
下表1に示す分子量Miと硬化性官能基の数fiとを用いると、コア材Eは、(M/f)a≒132、Mi/fi≧200を満たす硬化性化合物の重量分率の合計は約15%と算出される。
【0057】
[実験6]
実験6は、コア層13を下記の組成のコア材Fを用いて形成したほかは実験1と同様であり、図5の測定用サンプルを作成してコア層13の表面変動量(最大値)を測定した。また、光メモリ(ユニット11)を作成してBERの測定を行った。
【0058】
[コア材F]
ライトアクリレ−ト1,6-HX-A(共栄社化学(株)製アクリレ−トモノマ−)40質量部
ライトアクリレ−トTMP-A(共栄社化学(株)製アクリレ−トモノマ−) 20質量部
ライトアクリレ−トDCP-A(共栄社化学(株)製アクリレ−トモノマ−) 20質量部
カラヤッドR-712(日本化薬(株)製アクリレ−トモノマ−) 20質量部
ダロキュア1173(チバ・ガイギー(株)製光重合開始材) 0.5質量部
【0059】
下表1に示す分子量Miと硬化性官能基の数fiとを用いると、コア材Fは、(M/f)a≒145、Mi/fi≧200を満たす硬化性化合物の重量分率の合計は約20%と算出される。
【0060】
[実験7]
実験7は、コア層13を下記の組成のコア材Gを用いて形成したほかは実験1と同様であり、図5の測定用サンプルを作成してコア層13の表面変動量(最大値)を測定した。また、光メモリ(ユニット11)を作成してBERの測定を行った。
【0061】
[コア材G]
ライトアクリレ−ト1,6-HX-A(共栄社化学(株)製アクリレ−トモノマ−)45質量部
アロニックスM310(東亜合成(株)製アクリレ−トモノマ−) 15質量部
ライトアクリレ−トDCP-A(共栄社化学(株)製アクリレ−トモノマ−) 20質量部
カラヤッドR-712(日本化薬(株)製アクリレ−トモノマ−) 20質量部
ダロキュア1173(チバ・ガイギー(株)製光重合開始材) 0.5質量部
【0062】
下表1に示す分子量Miと硬化性官能基の数fiとを用いると、コア材Gは、(M/f)a≒155、Mi/fi≧200を満たす硬化性化合物の重量分率の合計は約20%と算出される。
【0063】
[実験8]
実験8は、コア層13を下記の組成のコア材Hを用いて形成したほかは実験1と同様であり、図5の測定用サンプルを作成してコア層13の表面変動量(最大値)を測定した。また、光メモリ(ユニット11)を作成してBERの測定を行った。
【0064】
[コア材H]
ライトアクリレ−ト1,6-HX-A(共栄社化学(株)製アクリレ−トモノマ−)30質量部
アロニックスM310(東亜合成(株)製アクリレ−トモノマ−) 22質量部
ライトアクリレ−トDCP-A(共栄社化学(株)製アクリレ−トモノマ−) 25質量部
カラヤッドR-712(日本化薬(株)製アクリレ−トモノマ−) 23質量部
ダロキュア1173(チバ・ガイギー(株)製光重合開始材) 0.5質量部
【0065】
下表1に示す分子量Miと硬化性官能基の数fiとを用いると、コア材Hは、(M/f)a≒164、Mi/fi≧200を満たす硬化性化合物の重量分率の合計は約23%と算出される。
【0066】
【表1】

【0067】
以下に、上記の各コア材を構成する各硬化性化合物の化学式を示す。
【0068】
【化1】

【0069】
【化2】

【0070】
【化3】

【0071】
【化4】

【0072】
【化5】

【0073】
【化6】

【0074】
【化7】

【0075】
以上の実験1〜実験8によって得られた実験結果を下表2に示す。この実験結果から、(M/f)a≧160の場合には、コア層13の表面変動量(最大値)は160nm以下に抑えられるとともに、BERが10-4未満のエリアの割合は90%以上となり、記録情報の再現性が良好であった。また、(M/f)a≧160でかつ、Mi/fi≧200を満たす硬化性化合物の重量分率が25%以上である場合に、コア層13の表面変動量(最大値)は100nm以下に抑えられるとともに、BERが10-4未満のエリアの割合は100%となり、記録情報の再現性がさらに向上することを確認した。
【0076】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】光メモリの構成を示す縦断面図である。
【図2】光メモリの製造方法(前処理工程)を示す縦断面図である。
【図3】光メモリの製造方法(積層工程)を示す縦断面図である。
【図4】光メモリの製造方法(後処理工程)を示す縦断面図である。
【図5】測定用サンプルの作成例を示す縦断面図である。
【図6】従来の光メモリとその動作原理を説明する外観斜視図である。
【符号の説明】
【0078】
10 光メモリ
13 コア層
14 クラッド層
16 情報用凹凸部
17 光導波路
22 樹脂スタンパ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈折率の異なる第1樹脂層と第2樹脂層とが交互に積層され、前記第1樹脂層の下面と前記第2樹脂層の上面とが接する界面に情報再生用の凹凸部が形成されてなる光導波路型の光メモリにおいて、
前記第1樹脂層は、硬化性官能基を有する化合物を1つまたは複数個含む光硬化性樹脂からなり、前記硬化性官能基1つ当たりの分子量を前記各化合物の重量分率に基づいて平均した値が160以上であることを特徴とする光メモリ。
【請求項2】
前記硬化性官能基1つ当たりの分子量が200以上である前記化合物の重量分率の合計が25%以上であることを特徴とする請求項1記載の光メモリ。
【請求項3】
前記化合物は、前記硬化性官能基として、アクリレート基またはメタクリレート基を有することを特徴とする請求項1または2記載の光メモリ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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