説明

光分岐接続装置

【課題】カセットの脱着作業を容易にする。
【解決手段】複数の光ファイバコードがコネクタ接続されるカセット11と、該カセット11を一定間隔を空けて多数並べて保持するキャリア10とを有し、カセット11は上下方向に突出するガイドフィン2a,2bを備えると共に上端あるいは下端の少なくとも一方に横方向に弾性変形しキャリア10に対する当該カセット11の離脱方向において係合するロック爪部1cを備え、キャリア10はカセット11を奥行き方向に収納可能な空間13とカセット11の着脱方向と直交する方向に並べられた複数のガイド溝3a,4aとを備え、かつ一方のガイド溝4aがカセット11のガイドフィン2aを嵌合するスリットであり、他方のガイド溝3aがガイドフィン2aとロック爪部1cの双方を嵌合させる幅のスリットとしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光加入者線局内装置から出てくる光ファイバーを複数の光加入者線宅内装置に分岐接続するための光分岐接続箱に関する。さらに詳述すると、本発明は、FTTx方式の光アクセスネットワークを構築するのに好適なコネクタ接続の光分岐接続箱に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、PON方式を利用したFTTx方式の光通信ネットワーク例えばFTTHが広く構築されている。PON方式は、設備センター側の1つのOLT(Optical Line Terminal:光加入者線局内装置)に光スプリッタを介して複数のONU(Optical Network Unit:光加入者線宅内装置)が接続される形態(1対多接続)のポイント・ツー・マルチポイントシステムで構築されたネットワーク方式である。このPON方式の場合には、32分岐まで分波が行われるので、OLTからの出力ファイバを局内で4分岐あるいは8分岐(場合によっては16分岐)してから加入者宅近傍の架空光クロージャーでさらに8分岐あるいは4分岐(場合によっては2分岐)するようにしているのが一般的である。また、大口加入者のケースでは、加入者のビル内までOLTからの出力ファイバを引き込んで、加入者宅内で分岐することもある。
【0003】
この光ファイバの分岐は局内に配置された光分岐接続装置あるいは光接続箱若しくは光配線架と呼ばれるもので行われている。例えば、分岐モジュールとコネクタとを内部に収納した薄板状のパッケージとして架台に多数並べて配設するようにした光配線架がある(特許文献1)。この光配線架は、薄板状パッケージの後端側から導入したテープコードを分岐モジュールで分岐させて薄板状パッケージの前端に設置した光コネクタに接続するようにしたものであり、フレームの端子パネルに前端の光コネクタ部分を嵌め込むと共に薄板状パッケージの後端を架台に対してビス止めするようにして固定している。
【0004】
また、光アダプタには対応する線番表示が必要となる。この線番表示は光アダプタの両側に設けなければならないが、光配線箱を薄型化して光ファイバの配線の高密度化を達成しようとする場合には、光アダプタの横に線番のスペースをとることができないことがある。そこで、光アダプタの両側に取り付け部を張り出させる一方、この取り付け部を当接させて固定するための光アダプタ突当て部を光配線箱の前端面に設けると共に、光アダプタの両側の取り付け部を光アダプタ突当て部に押し当てた状態で全ての光アダプタの取り付け部を跨ぐ押さえ部材で前側から押さえるようにしながらビス止めして固定する取り付け構造とし、最も前面に配置される押さえ部材の表面に線番表示をするようにしたものがある(特許文献2)。この光配線箱は光アダプタ突当て部を光配線架にビス止めすることにより、並べて実装するようにしている。
【0005】
さらに、光分接続装置においては、配線する光ファイバコードが光配線架の中で垂れ下がる際にキンクを起こしてしまう虞があるので、そのような箇所にはRガイド部を配置するようにしている。このRガイド部は一般に金属板を湾曲させたようなものであり、その上にコードを載せることでキンクしないように支えるようにしている(特許文献3)。
【0006】
【特許文献1】特開平8−152529
【特許文献2】特開2005−165075
【特許文献3】特開平10−90525
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、局内設備の小型化並びに高密度化のために、薄板状のパッケージとして架台に多数並べて配設するようにした光配線架としても、架台に対してビス止めするのではカセットの脱着操作がビス固定では面倒であると共に作業時間を要してしまう。そうかといって、所謂ローラキャッチやマグネット式の固定具を用いてカセットの固定を図る場合には、コネクタの挿入時あるいは脱着時にカセット全体が架台から取り外される虞があり、却って手間がかかってしまう。
【0008】
また、線番表示のために光アダプタの両側に取り付け部を張り出させて表面に線番表示を施した押さえ部材で固定するような工夫をしても、結局は光アダプタの横幅が大型化するために光配線架の構造が大型し、光配線架に収納するファイバ数を増加させることは難しい。このため、従来のアダプタの構成を採用する場合には、カセットの小型化・高密度化を図る際には正面に表示場所がなくなってしまうことから、正面から見える場所にアダプタ番号を印刷またはシールなどで表示することができなかった。このため、無闇に光配線箱を高密度化に対応させても、線番表示が十分でない場合には、カセットをいちいち架台から取り出して線番表示を確認しながら作業を進める必要があるので、工事が面倒となり、更にそれ故に確認を怠って誤接続を招いたりする事故を完全に排除できないものとなる虞がある。このため、高密度化に対応することが難しいという問題があった。
【0009】
さらに、従来、コードが装置端面を通過する場合、板金・樹脂等にてR部材を形成していたが、光ファイバコードが垂れ下がる際にR部材から逸脱してキャリアの縁などでキンクを引き起こしたり、R部材そのものの縁でキンクを引き起こす虞がある。特に、接続ファイバ数が増える程にキンクの虞が増す。
【0010】
そこで本発明は、カセットの脱着作業が容易な光分岐接続装置を提供することを目的とする。また、本発明は、カセットの小型化・高密度化を図ってもアダプタ番号・線番表示を正面から見ることができる構造の光分岐接続装置を提供することを目的とする。また、本発明は、接続ファイバ数が増えても光ファイバコードのキンクを防ぐことができる光分岐接続装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる目的を達成するため、本発明の光分岐接続装置は、複数の光ファイバコードがコネクタ接続されるカセットと、該カセットを一定間隔を空けて多数並べて保持するキャリアとを有し、前記カセットには上下方向に突出するガイドフィンを備えると共に上端あるいは下端の少なくとも一方に横方向に弾性変形し前記キャリアに対する当該カセットの離脱方向において係合するロック爪部を備え、前記キャリアは前記カセットを奥行き方向に収納可能な空間と前記カセットの着脱方向と直交する方向に並べられた複数のガイド溝とを備え、かつ上端側あるいは下端側の前記ガイド溝の少なくとも一方が前記カセットのガイドフィンを嵌合するものであり、他方が前記カセットのガイドフィンと前記ロック爪部の双方を嵌合させるものであるようにしている。
【0012】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の光分岐接続装置において、キャリアのスプリッタカセット収容空間の手前側に光ファイバコードのケーブルの余長部を載せる余長収容部を備えると共にその両端に接続した光ファイバコードを固定する固定部を備えるようにしている。
【0013】
また、本発明の光分岐接続装置は、複数の光ファイバコードがコネクタ接続されるカセットをキャリアに並べて保持する光分岐接続装置において、前記キャリアのカセット収容空間の手前側に設置された光ファイバコードの余長部を載せる余長収容部の両端に固定した光ファィバコードを支える弾性支持シートを備え、かつ該弾性支持シートはその両端にケーブル引き出し方向に突出する突起を備え、前記光ファイバコードの幅方向への移動を規制するようにしている。
【0014】
さらに、本発明の光分岐接続装置は、複数の光ファイバコードがコネクタ接続されるカセットをキャリアに並べて保持する光分岐接続装置において、前記カセットの一側面にアダプタ番号を表示した可撓性のアダプタ番号シートが、前記アダプタ番号を表示した部分を前記スプリッタカセットより前方へはみ出させるように設けて備えられ、前記アダプタ番号を表示した部分を捲って正面側に向けることで前記アダプタ番号を読み取り可能とし、アダプタに差し込まれたコネクタの線番を特定可能とするようにしている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の光分岐接続装置によれば、カセットのガイドフィンをキャリアのスリットに嵌合させて押し込むだけでキャリアの所定位置にカセットを固定でき、カセットのロック爪部を弾性変形させながら引き出すだけでキャリアから離脱させることができる。つまり、ワンタッチでカセットのキャリアに対する脱着を行うことができる。しかも、カセットとキャリアとの係合をはかるロック爪部はスリットが並ぶ方向・横方向に変形するようにしているので、キャリアにカセットの重量で撓みが生じても、ロック爪部の係合不良が起こることがなく、確実に保持可能である。
【0016】
さらに請求項2記載の光分岐接続装置によれば、キャリアのカセット収容空間の手前側に光ファイバコードの余長部を載せる余長収容部を備えると共にその両端に接続した光ファイバコードを固定する固定部を備えるようにしているので、十分な余長を設定してコネクタに負荷がかかるのを防ぐと共にコードの底擦りを防ぐことができる。
【0017】
また請求項3記載の光分岐接続装置によれば、光ファイバコードの余長を余長収容部に載せて支持してコネクタに負荷がかかるのを防いだ状態で光ファイバコードのキャリアの外に引き出される部分が弾性支持シートによって緩やかに撓むように支持されるので、キンクの虞がない。しかも、弾性支持シートの両端に突出する突起によって光ファイバコードの両側を規制するようにしているので、コードの量が増えて弾性支持シートの撓み量が増えても光ファイバコードが弾性支持シートから脱落することがない。
【0018】
さらに請求項4記載の光分岐接続装置によれば、カセットを隙間なく並べるようにキャリアに保持させて高密度化を図るようにしても、光ファイバコードの接続先を切り換える場合には、可撓性のアダプタ番号シートを捲って正面側に向けることでアダプタ番号を読み取ることができ、アダプタに差し込まれたコネクタの線番を特定することができるので、作業が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の構成を図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0020】
図1から図9に本発明の光分岐接続装置の実施の一形態を示す。この光分岐接続装置は、図示していないラックに固定されるキャリア10に対してコネクタ接続のカセット11をワンタッチで脱着可能に保持させるようにしたものである。本実施形態の場合、カセット11はスプリッタとその入力側ファイバ及び出力側ファイバを内蔵するスプリッタカセットである。
【0021】
本実施形態のスプリッタカセット11は、樹脂製筐体1とアルミ板製カバー2とで構成され、アルミ板製カバー2をガイド部材として兼用するようにしている。尚、本実施形態においては、樹脂製筐体1とアルミ板製カバー2とが採用されているが特に材質に限定されるものではない。
【0022】
樹脂製筐体1は、スプリッタ収納部1aとアダプタ収納溝1bと、ロック爪部1cと、カバー取り付け用ねじ孔1dを備えている。樹脂製筐体1の図7に示すスプリッタ保持部1aにスプリッタ(図示省略)を収容してから、スプリッタの入力側ファイバ並びに出力側ファイバを対応するアダプタ12と共に筐体1内に収納し、その上からカバー2をねじ止めすることでスプリッタカセット11が組み立てられている。
【0023】
さらに、スプリッタカセット11には、キャリア10と当該スプリッタカセット11の離脱方向において係合するロック爪部1cを備えている。このロック爪部1cは、カセット11の脱着方向に延びる板状を成し、基端部1gが樹脂製筐体1と一体化され、先端側が樹脂製筐体1から切り離されて樹脂ばね性を発揮する部分1hとなって幅方向に変形可能な自由端とされている。本実施形態では、縦長な板状を成し、全長のほぼ1/3程度の基端部1gが樹脂製筐体1と繋がり、残りの2/3程度の先端側1hが樹脂製筐体1と分離した状態とされるように、モールド樹脂成形されている。このロック爪部1cの樹脂ばね性を発揮する自由端1h側の中程には、幅方向に突出したロック爪1eが形成されている。このロック爪1eは、カセット挿入方向側の面が傾斜面とされて、キャリア10の縁即ち上部プレート4の折り曲げ部によって形成されるストッパ片4bに当接したときにロック爪1eを相対的に乗り越えるように幅方向に変形可能とさせている。そして、カセット離脱方向側の面は垂直面とされ、キャリア10側のストッパ片4bに当接して係合可能とされている。したがって、ロック爪1eがキャリア10のストッパ片4bと係合することでカセット11は先端摘み部1fを内側・ロック爪1eの係合を解除する方向に操作しない限り、カセット11を取り出せない構造とされている。
【0024】
アルミ板製カバー2は、樹脂製筐体1の上面よりも上方へ突出した凸部(上ガイドフィン)2aと、樹脂製筐体1の下面よりも下方へ突出した凸部(下ガイドフィン)2bと、アダプタの位置決め用の突起を収納するためのアダプタ収納溝2cと、樹脂製筐体1のカバー取り付け用ねじ孔1dにねじ込むビスを貫通させるためのカバー取付用孔2dとを有している。この上下のガイドフィン2a,2bは、本実施形態の場合にはアルミ板製カバーと一体に形成しているが、場合によっては樹脂製筐体1側に一体的に形成するようにしても良い。カバー2とガイドフィン2a,2bとを一体的に形成してガイド手段としてのカバー2の共用化をする場合には、カセットを段重ねして分岐数を増大させる場合の手間を省いて容易に実施できる。つまり、筐体1とガイドフィン2a,2bとを樹脂で一体成形する場合には、カセットを連結して重ねる場合には、1組の上下のガイドフィン2a,2bを残して、他のカセットのガイドフィン2a,2b部分を取り除く手間がかかってしまう。
【0025】
さらに、アルミ板製カバー2には、アダプタ番号を表示した可撓性のアダプタ番号シート9が、番号表示部分9aをカバー2より前方へはみ出させるように設けられている。本実施形態の場合には、アダプタ番号シート9は接着剤を塗布した貼着部9bを有するシールで構成され、貼着部9bをアルミ製カバーに貼着することで取り付けられている。このアダプタ番号シート9は、番号表示部分9aを捲って正面側に向けることでアダプタ番号を読み取り可能とし、アダプタ12に差し込まれたコネクタの線番を特定可能としている。
【0026】
スプリッタカセット11の前面に縦一列に配置されている複数のアダプタ12は、図示していないが、スプリッタに接続された入力側ファイバ及び出力側ファイバに対応させてコネクタ接続されている。4分岐タイプの本実施形態のスプリッタカセット11の場合には、1つの入力用アダプタ(アダプタ番号0)と4つの出力用アダプタ(アダプタ番号1〜4)とを、1つのダミーを介在させて縦に並べて備えている。このアダプタ12は、スプリッタカセット11の前方、即ち手前側の端部に設けられた樹脂製筐体1側のアダプタ収納溝1bとアルミ板製カバー2側のアダプタ収納溝2cとの間にアダプタの固定用突起12aを嵌合させることで位置決めしてアルミ板製カバー2と樹脂製筐体1との間で固定されている。
【0027】
また、本実施形態のスプリッタカセット11は最大4段までの範囲で樹脂製筐体1を重ねて連結することで、分岐数を増大させることができる。例えば、1枚のアルミ板製カバー2に対して4分岐アダプタを装備する2個の樹脂製筐体1を段重ねすると共に、中間の樹脂製筐体1の抜き底1iを打ち抜いて空けた穴を利用して一方の筐体1内に配置したスプリッタからの出力ファイバを2つの筐体1内に分配して対応する8つのアダプタに接続するようにしても良い。これにより、1つのアルミ板製カバー2に支持された2段重ね(2列)の8分岐アダプタが構成される。勿論、この場合のスプリッタは1つであり、2列のアダプタの内の1つが入力用で、残りの8つが出力用である。この方法で、最大4段・16分岐のスプリッタトレイも構成できる。
【0028】
キャリア10は、本実施形態の場合には、曲げ加工によって得られた底部プレート3、上部プレート4、側板5及び前部プレート6から構成され、ビス止めなどで連結されて箱形のカセット収納空間13を形成するようにしている。底部プレート3には、スプリッタカセット11のアルミ板製カバー2の下方へ突出する下ガイドフィン2bが嵌合するガイド溝3aが形成されている。上部プレート4には、スプリッタカセット11のアルミ板製カバー2の上ガイドフィン2aと樹脂製筐体1のロック爪部1cが嵌合するガイド溝4aが設けられている。ガイド部3a,4aはスリットによって構成されている。尚、本実施形態では、構造強度を増すために上部プレート4の上方にさらにチャネル形状の補強プレート14が設けられている。
【0029】
キャリア10の底部プレート3並びに上部プレート4の前端縁には、折り返し部が形成されてスリット3a,4aによって各プレート3,4の端部が連続するように設けられて、機械的強度の向上が図られている。また、カセット11側のロック爪部1cが導かれる側のスリット4aの出口には、ロック爪1eが当接するストッパ片4bが折り曲げ部によって設けられている。本実施形態の場合、上部プレート4の端部が折り返しのために曲面となるので、その一部が切り起こされることによってストッパ片4bが残されている。
【0030】
キャリア10の側板5の前端には、縁部が外側に折り返されて図示しないラックに固定するためのフランジ5aが一体的に形成されている。このフランジ5aには、位置決め用のピンなどを通すためのU形の一対の溝5bと、位置調整可能とする長孔からなるねじを通すばか孔5cとを備えている。
【0031】
また、底部プレート3の前方には、光ファイバコードの余長部を載せるための前部プレート6がキャリア10の側板5を利用して設けられている。この前部プレート6は、スプリッタカセット11の最も下のアダプタ12の位置よりも低い高さでケーブル余長部を支える余長収容部6cと中間傾斜部6aとを有し、中間傾斜部6aには、ミニクランプ6bをカセットの数とほぼ同数あるいは僅かに少ない数だけ備えられている。このミニクランプ6bは下部ガイド溝3aと下部ガイド溝3aとの間の空間に対応する位置、即ち2本の下部ガイド溝3aの間のスプリッタカセット11を収容する空間の前方に配置されている。アダプタ12よりも低い位置に配置されたミニクランプ6bを通して光ファイバコードがアダプタにコネクタ接続されるため、スプリッタカセット11の前方特に上部に空間が確保され、ロック解除の先端摘み部1fが容易に判別できる。
【0032】
前部プレート6の幅方向・横方向の両端近傍には、余長収納部6cに載せられた光ファイバコードを固定するためのクランプ8が設けられている。このクランプ8は樹脂ばね構造とフック8aとを利用して開閉可能としたものであり、弾力性に富む発泡性ゴムの板材8bを内張して弾力的にコードを挟持するように設けられている。
【0033】
さらに、前部プレート6の幅方向・横方向の両端には、前部プレート6の縁を覆うようにしてクランプ8よりもさらに端部側に、薄い樹脂板製の弾性支持シート7が取り付けられている。この弾性支持シート7は、前部フレート6から垂れ下がる光ファィバコードを支え、コードが垂れ下がるに沿ってシート7が撓むことによってキンクするのを防ぐものである。本実施形態の場合には、弾性支持シート7の先端側に向かう程撓みやすくして光りファイバのキンクにより対処できるようにするため、適宜孔7bをあけて撓み易くしている。さらに、可撓性の弾性支持シート7は、その両端にケーブル引き出し方向に突出する突起7aを備え、光ファイバコードの幅方向への移動を規制して、シート7の上から脱落するのを防ぐようにしている。
【0034】
以上のように構成された本実施形態の光分岐接続装置によれば、スプリッタカセット11の上下のガイドフィン2a,2bをキャリア10の上下のガイド溝4a,3aに嵌合させてからカセット収容空間13に向けて差し込めば、スプリッタカセット11のロック爪部1cが弾性変形してロック爪1eがキャリア10の前縁の折り曲げ部のストッパ片4bを乗り越えると同時にロック爪部1cが元位置に復帰してロック爪1eがストッパ片4bとスプリッタカセット11の離脱方向において係合し、スプリッタカセット11を自動的に固定する。この状態では、スプリッタカセット11はキャリア10に固定されているので、コネクタだけを把持してコネクタの抜き差しを行っても、スプリッタカセット11そのものがキャリア10から離脱することがないので、コネクタの抜き差しが容易に行える。ここで、スプリッタカセット11のアダプタに差し込まれたコネクタの線番の特定などは、アダプタ番号が表示された可撓性のアダプタ番号シート9を捲るように正面側に向けることで、ほぼ正面からアダプタ番号を読み取ることが可能となるので、カセットをキャリアからいちいち取り出さずに接続関係を判別できる。
【0035】
スプリッタカセット11をキャリア10から取り外すときには、キャリア10の前縁のストッパ片4bに係合するロック爪1eを先端摘み部1fを使ってロック爪部1cを係合が解除される方向(スリットが並ぶ方向)に弾性変形させながらスプリッタカセット11を引っ張ることによって、簡単にキャリア10から取り出すことができる。
【0036】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、本実施形態ではスプリッタを内蔵するスプリッタカセットを例に挙げて主に説明しているが、これに特に限られるものではなく、複数の光ファィバコードをコネクタ接続する様々な形態の光接続箱などに適用可能である。また、光ファィバコードを支える弾性支持シート7は、スプリッタカセット11を収容するキャリア10の前方に余長収容部を有する本実施形態の光分岐接続装置に適用することは好ましい例ではあるが必ずしもその用途が限定されるものではなく、どのような形態のキャリアにおいても光ファイバコードのキンクを防止する手段として独立して実施可能であることは言うまでもない。勿論、アダプタ番号シート9についても同様であり、スプリッタを内蔵しないカセット、例えばコネクタ接続によって光接続関係を切り替えるようなカセットにおいてアダプタ番号を表示するのに使用することも可能である。
【0037】
また、本実施形態では、キャリアは板金による折り曲げ加工で製作するようにして金型を不要にしているが、場合によってはモールド成型による樹脂製キャリアとしても良いし、スプリッタカセット11のカバー2も必要に応じて樹脂製とすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の光分岐接続装置の一実施形態を示す前方から見た斜視図である。
【図2】同光分岐接続装置の後方から見た斜視図である。
【図3】スプリッタカセットの一実施形態を示す斜視図である。
【図4】同光分岐接続装置のキャリアのコード固定部と弾性支持シート付近の拡大斜視図である。
【図5】同光分岐接続装置のキャリアとロック爪部との関係を上から見た拡大斜視図である。
【図6】同光分岐接続装置のキャリアとロック爪部との関係を下から見た拡大斜視図である。
【図7】スプリッタカセットの筐体の一実施形態を示す側面図である。
【図8】スプリッタカセットの筐体のロック爪部を拡大して示す図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図9】スプリッタカセットのカバーの一実施形態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 樹脂製筐体
1c ロック爪部
1e ロック爪
1f 先端摘み部
2 アルミ板製カバー
2a 上ガイドフィン
2b 下ガイドフィン
3 底部プレート
3a ガイド溝(スリット)
4 上部プレート
4a ガイド溝(上ガイドフィンとロック爪部を嵌合するスリット)
6 前部プレート
6b ミニクランプ
6c 余長収納部
7 弾性支持シート
7a 凸部
8 クランプ
9 アダプタ番号シート
9a 番号表示部分
9b 貼着部
11 スプリッタカセット
12 アダプタ
13 スプリッタカセット収容空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光ファイバコードがコネクタ接続されるカセットと、該カセットを一定間隔を空けて多数並べて保持するキャリアとを有し、前記カセットには上下方向に突出するガイドフィンを備えると共に上端あるいは下端の少なくとも一方に横方向に弾性変形し前記キャリアに対する当該カセットの離脱方向において係合するロック爪部を備え、前記キャリアは前記カセットを奥行き方向に収納可能な空間と前記カセットの着脱方向と直交する方向に並べられた複数のガイド溝とを備え、かつ上端側あるいは下端側の前記ガイド溝の少なくとも一方が前記カセットのガイドフィンを嵌合するものであり、他方が前記カセットのガイドフィンと前記ロック爪部の双方を嵌合させるものである光分岐接続装置。
【請求項2】
前記キャリアのカセット収容空間の手前側に光ファイバコードの余長部を載せる余長収容部を備えると共にその両端に接続した光ファイバコードを固定する固定部を備えたものである請求項1記載の光分岐接続装置。
【請求項3】
複数の光ファイバコードがコネクタ接続されるカセットをキャリアに並べて保持する光分岐接続装置において、前記キャリアのカセット収容空間の手前側に設置された光ファイバコードの余長部を載せる余長収容部の両端に固定した光ファィバコードを支える弾性支持シートを備え、かつ該弾性支持シートはその両端にケーブル引き出し方向に突出する突起を備え、前記光ファイバコードの幅方向への移動を規制するものである光分岐接続装置。
【請求項4】
複数の光ファイバコードがコネクタ接続されるカセットをキャリアに並べて保持する光分岐接続装置において、前記カセットの一側面にアダプタ番号を表示した可撓性のアダプタ番号シートが、前記アダプタ番号を表示した部分を前記スプリッタカセットより前方へはみ出させるように設けて備えられ、前記アダプタ番号を表示した部分を捲って正面側に向けることで前記アダプタ番号を読み取り可能とし、アダプタに差し込まれたコネクタの線番を特定可能としたことを特徴とする光分岐接続装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−180817(P2008−180817A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−13150(P2007−13150)
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【出願人】(591236172)株式会社ハタ研削 (20)
【Fターム(参考)】