光制御素子、表示装置及び応力測定装置
【課題】耐光性、耐熱性が高く、光応答特性を高速に制御することが可能な光制御素子を実現する。
【解決手段】本発明の光制御素子は、物理的に特性を変化させることが可能な材料からなる基板(または膜)1と、入射する光の波長以下のサイズをもつ金属微小構造体2を有し、複数個の金属微小構造体2の組み合わせを単位とした集合構造体3を、基板(または膜)1の上部(または内部)に設けた構造を有する。この光制御素子において、前記基板(または膜)1は、電圧を印加することにより屈折率の変化を生じる材料(電気光学結晶等)、または、光を照射することにより屈折率の変化を生じる材料(非線形光学材料等)、あるいは、電圧を印加することにより変形を生じる材料(電歪材料等)、のいずれかにより構成される。
【解決手段】本発明の光制御素子は、物理的に特性を変化させることが可能な材料からなる基板(または膜)1と、入射する光の波長以下のサイズをもつ金属微小構造体2を有し、複数個の金属微小構造体2の組み合わせを単位とした集合構造体3を、基板(または膜)1の上部(または内部)に設けた構造を有する。この光制御素子において、前記基板(または膜)1は、電圧を印加することにより屈折率の変化を生じる材料(電気光学結晶等)、または、光を照射することにより屈折率の変化を生じる材料(非線形光学材料等)、あるいは、電圧を印加することにより変形を生じる材料(電歪材料等)、のいずれかにより構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部制御手段により光学応答特性を制御する機能を有する光制御素子に関するものであり、さらには、前記光制御素子を利用した表示装置、及び、前記光制御素子を利用して、微小な変形、変位を光学的に測定する応力測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイやプロジェクタ装置は、電気的に、または機械的に光源からの光を遮断する、または透過させる機構を有している。液晶パネルを用いた装置では、液晶分子の配向で偏光面の回転を制御し、液晶パネルを挟んだ二枚の偏光板によりON/OFFを制御する。また、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いるものでは、DMD(Digital Micro-mirror Device)と呼ばれる微小なミラーを静電気力により高速に動かすことにより、ON/OFFを切り替えている。
【0003】
液晶を利用する表示装置では、液晶分子をはじめ、配向膜、偏光板など、偏光を制御する素子は一般的に有機材料で構成されている。例えば偏光板は、ポリビニルアルコールなどの基板フィルムにヨウ素や有機染料などの二色性の材料を染色・吸着させ、高度に延伸・配向させることで吸収二色性を発現させるものが多用されているが、表示素子の高輝度化、高コントラスト化の要求に対して、有機材料は耐光性、耐熱性が弱いという課題がある。これを回避するために、金属細線による偏光板(ナノワイヤグリッド偏光板)などが利用されている。配向膜や液晶分子自身も有機材料により構成されており、耐光性、耐熱性が十分に高いとは言えない。したがって、液晶を利用する表示装置では、使用温度条件に制限がある、冷風機構が必要となる、といった課題があり、プロジェクタ装置のような高輝度および高コントラストの表示装置を実現することは困難である。また、液晶パネルは粘性のある液体中で液晶分子を電位に沿って配向させているが、その応答速度が遅いといった課題もある。また、液晶パネルを用いた表示装置では、カラー表示の際に赤、緑、青(以下、RGBと記す)の3つの波長の光をダイクロイックミラーにより分離し、それぞれの光に対して液晶パネルで画像処理を行い、再びプリズムを介して3つの波長の光を合成している。しかし、この表示装置では、偏光板やダイクロイックミラー、フィルタなど、多数の光学素子が必要となり、生産コストが高くなる。また、RGBの各波長の光を分岐する必要から、空間的なスペースが必要となり、装置の小型化が困難である。
【0004】
一方、MEMS技術を用いたプロジェクタ等の表示装置も広く利用されている。このタイプの表示装置は、カラーホイールと呼ばれるRGBの三つの波長に対応する波長フィルタを有する素子を回転させ、各波長の光を時分割してDMDに入射させる。DMDは反射角を入射光の色に同期して切り替えることによりON/OFFを制御し、画像情報処理を行う。このような装置では、一度に処理できる光は、単一波長に限られるために、入射光に対し利用できる光量は必然的に1/3となり、光利用効率が低いという欠点がある。また、MEMSデバイスは可動部分が存在するために、摩擦による加熱があり、劣化の問題を避けられない。さらには、MEMSデバイスはデバイス構造に依存した共振周波数で走査するため、その動作速度に固有の制限がある。
【0005】
表示装置とは異なる応用として、微小な位置変化による光学特性の変化を利用した光学デバイスが提案されている。例えば、MEMS技術を応用した変位センサーや、可変波長フィルタなどである。これらは、加工精度の問題や、信号が微弱であるといった課題があり、実用化には至っていない。
【0006】
また、本発明と同様の非線形光学結晶や電気光学結晶などの屈折率変調材料を用いて光の状態を制御する技術が提案されている。例えば、光導波路素子や偏光分離素子などをフォトニック結晶により構成し、外部より電気的または光学的に屈折率変化を生じさせることにより、光学特性を変調している。フォトニック結晶は周期構造が大きな領域に渡って精密に作製されている必要があるが、加工精度の問題から、光学素子として利用できる十分な特性は得られていない。また、これらのデバイスは、主に光通信用途に開発されている。
【0007】
ここで、液晶分子を用いた光学特性が可変である光制御素子として、従来技術1の「光学特性可変光学素子」が提案されている(特許文献1参照)。
この従来技術1では、光学特性可変光学素子の光の利用効率を高め、光学特性が変化する時間を短くすることを課題としており、図25(a)に示すように、この光学素子は、透明基板104,105間に、負の屈折率異方性を有する液晶層101と、配向膜102と、透明電極103とを有し、配向膜102にならって液晶分子110が配向している。このとき、透過する光に対し液晶分子110の屈折率は常光線の屈折率noとなり、該光学素子は凸レンズとして働く。次に図25(b)に示すように、スイッチ109をONにすると、液晶分子110が光軸方向に配向し、常光線と異常光線の屈折率(no+ne)/2が液晶分子の屈折率となる。この結果、レンズの焦点距離が伸びる。また、可変抵抗113を設けることにより、焦点距離の変化を連続かつ可変にすることができる。また、電界の代わりに、磁場又は温度変化を与えても同様の光学特性の変化が得られる。
従来の液晶を用いる可変光学素子は、液晶分子の偏光選択性を利用するものが多く、素子の前面に偏光板を設ける必要があるが、図25に示す光学素子では偏光板は不要であるため、光の利用効率が高い。また、光軸106に垂直な方向に電極103を設け、電界をかけることにより、液晶分子110の配向変化を高速に行うことができる。
【0008】
次に、サブ波長構造を有し、静電気力により変位させることにより反射光または透過光強度を変調し、フィルタリング、センシングを行うデバイスとして、従来技術2の「波長程度の周期構造を設けた光フィルタ」が提案されており(特許文献2参照)、さらには従来技術3の光学素子が提案されている(非特許文献1参照)。
【0009】
従来技術2では、低コストで生産できるMEMS技術を使って、単純な構造の共鳴格子を形成することにより、設計の自由度が高く、高性能な特性が得られる光フィルタ、及びこれらの光フィルタを使った光情報通信装置を提供することを課題としており、表面に絶縁膜を有する基板上にギャップを介して共鳴格子を設け、前記共鳴格子に入射する光のなかから共鳴波長を選択して取り出すことを特徴としている。
図26は、従来技術2に係る反射率可変波長選択フィルタの概念図であり、共鳴格子膜としてサブ波長構造が形成されたシリコン(Si)自立膜202がエアギャップ(g)を挟んでSi基板201上に平行配置されている。サブ波長構造に入射したある特定の波長(共鳴波長)はSi周期構造と強く結合し、透過波を発生しない。従って狭帯域反射フィルタとして機能する。この条件を満たすサブ波長構造をGuided Mode Resonance Grating(GMRG)と呼ぶ。Si自立膜−基板間に電圧を印加することにより静電引力が発生し、Si自立膜が基板方向へ引き付けられる。ギャップ(g)が狭くなると基板との相互作用が強くなり、反射率が変化する。この光フィルタは波長分割多重(WDM)通信の光スイッチにおける波長選択に利用できる。
【0010】
従来技術3の光学素子は、上下に重ねて配置した2枚の微細格子を有し、格子はSi製で、2枚の格子間が300nmの隙間を持つ構成であり、2枚の格子を静電気力により駆動する。上側の格子がわずかに横方向に変位すると反射光の光強度が大きく変化し、これを反射率の最大値で規格化すると、25%程度の変化が現れる。この反射光強度の変化を測定することにより、10nm程度の変位が検出できる。図27は、従来技術3に記載の光学素子を斜め上方から見た電子顕微鏡写真を複写したものであり、中央の微細格子210が静電気力により可動し、この格子の下側に固定された微細格子が配置されている。上下の櫛歯状の構造211,212は静電気力により微細格子を左右に振動させる機構である。
【0011】
さらに、MEMS技術を用いた代表的な光制御素子として、従来技術4の「空間変調器」が提案されている(特許文献3参照)。
この従来技術4では、より効率的なリセット動作等、DMDの性能を向上することを課題としており、増加した性能パラメータを有するDMD型の空間光変調器である。図28は上記空間変調器の概略構成図である。この空間変調器は、画素ミラー(高架ミラー)330がヨーク332によって支持され、高架ミラー330と高架アドレス電極350,352の間と、ヨーク332と下部アドレス電極326,328の間に電子静電引力374,378,382,384が生じる。その結果、画素ミラー30は、従来の世代のデバイスに比べ、高アドレス・トルク、高ラッチ・トルク、高い復元力、及びより大きなマージンを達成する。基板アドレス電極326,328上のヨーク332の近接により、大きな引力が実現され、画素はアドレス・アップセットに感度が低く、より小さなリセット電圧を必要とし、スイッチスピードをより早める。
【0012】
また、電気光学効果および非線形光学効果による屈折率変化を利用することにより、実質的な微細構造間の距離を変化させ反射光または透過光強度を変調し、光導波制御、スイッチング、偏光分離などを行うデバイスとして、従来技術5、従来技術6の光学素子、光学装置、光学デバイスが提案されている(特許文献4、特許文献5参照)。
従来技術5では、複数の波長(周波数)の光信号を同時に選択できることが可能な波長可変機能を有する光学素子及びそれを用いた光学装置を提供することを課題としている。
図29は光学装置の一例である多チャンネルフィルタの概略図であり、符号401,402は光学媒体、403は欠陥、4041〜404nは欠陥導波路、501は固定基板、502は移動基板である。この多チャンネルフィルタは、屈折率の異なる領域が繰り返されて配置されている構造(フォトニック結晶)を用いた光学素子を複数個(W1、W2、・・・、Wn)配置して、機械的、電気的、熱的、及び材料的機構によりフォトニック結晶の繰り返しの間隔や屈折率を変化させることにより、複数の光学素子が対象とする波長を同時に変化させる。
【0013】
従来技術6では、対象波長以下の周期を持つ凹凸形状からなる微細周期構造を有する光学素子において、特定領域に一定電界を印加でき、安定した屈折率変化が可能な光学素子を提供することを課題としている。
図30は光学素子の断面図であり、基板602とこの基板602に形成された微細周期構造603とを有する光学素子601であって、凹凸形状の凹部603aに電圧が印加される導電性部材604を充填することで、凸部603b部分に大きな電界を印加することができ、凸部603bに設けた電気光学効果を有する材料に、大きな電気光学効果を生じさせることができ、これにより、屈折率を大きく変化させることができるようにしている。これにより、電気光学効果を用いた小型の光変調器、光アッテネータ等を実現でき、さらには、微細周期構造603全体若しくは一部に、選択的に一定の電界を印加することが可能となり、小型の光ルータ、光偏向器等も実現可能となる。
【0014】
【特許文献1】特開2000−19472号公報
【特許文献2】特開2005−331581号公報
【特許文献3】特開平8−334709号公報
【特許文献4】特開2004−328102号公報
【特許文献5】特開2004−317540号公報
【特許文献6】特開2005−158191号公報
【非特許文献1】OplusE Vol.27,No.1(Laser Focus World,Dec.2004より転載)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従来技術1に示す光学特性可変光学素子は、外部電界、磁界、温度を加えることにより液晶分子の配向を制御し、光学応答特性を変化させている。ここで、電極の配置により配向変化の高速化を図っているが、配向変化の速度は液晶層の粘性による限界があり、十分な高速化は期待できない。さらに、液晶分子の配向された状態とランダムな状態の間の相転移温度があり、高輝度のプロジェクタなど、投射型表示素子での光量に制限がある。また、液晶分子や配向膜は有機材料により構成されるため、熱的なダメージを受ける可能性があり、必要な耐光性や耐熱性が得られないといった課題がある。また、カラーの表示装置として利用する場合には、RGBの3色に分離して使う必要があり、光学素子数の増加や、小型化が困難であるといった課題がある。
【0016】
従来技術2は、MEMS技術を利用し、Siにより作製されたサブ波長構造をもつ格子と基板との距離を静電気力により変化させることにより、波長選択と反射率の可変性を有する光フィルタを実現している。しかし、この光フィルタは、通信技術への応用を目指したものであり、可視光領域の光学デバイスには利用できない。また、共鳴波長以外は損失となるため光利用効率が低いといった課題がある。
【0017】
従来技術3に示すナノ変位センサーは、MEMS技術により、波長程度の微細な格子2枚を静電気力により変位させることにより、ナノサイズの変位を測定することを可能にしている。しかしながら、変位量が小さくなると反射率の差異を読み取ることが困難となり、十分な感度が得られない場合がある。また、変位部分が自立中空構造を有しており、使用環境などの影響を受け易い。
【0018】
従来技術4に示す空間光変調器は、代表的なDMD型の空間光変調器であるが、RGBの3色の波長を時間的に分割して利用するため、高い光利用効率を実現することはできない。また、可動部分が存在するために、摩擦による劣化の問題を避けられない。また、デバイス構造に依存した共振周波数で走査するため、その動作速度に固有の制限がある。
【0019】
従来技術5、6は、本発明に係る光制御素子に類似した素子構成を有しているが、いずれも光通信技術における波長選択性をもつ光導波制御、スイッチング、偏光分離に関連するものであり、2次元的な周期構造体内を伝搬する光波を対象としたものである。また、使用する光は1.5μm帯の通信波長であるため、表示装置、測定装置等へ応用することはできない。
【0020】
以上のような従来技術の課題に対し、本発明は以下のような目的を持ってなされたものである。
本発明の第1の目的は、耐光性、耐熱性が高く、光応答特性を高速に制御することが可能な光制御素子を提供することにある。
本発明の第2の目的は、上記の光制御素子において、物理的に特性を変化させることが可能な具体的な材料を提供することにある。
本発明の第3の目的は、上記の光制御素子を実現するために利用する具体的な金属材料を提供することにある。
本発明の第4の目的は、上記の光制御素子において、所望する光応答特性を実現するための金属微小構造体の具体的な配置を提供することにある。
本発明の第5の目的は、上記の光制御素子を用いた表示装置の具体的な構成を提供することにある。また、光学素子数を低減できる表示装置を提供することにある。
本発明の第6の目的は、上記の光制御素子を用いた高感度な応力測定装置の具体的な構成を提供することにある。また、作製が容易であり、且つ高感度を得られる応力測定装置の具体的な構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記の目的を達成するため、本発明では以下のような技術的手段を採っている。
本発明の第1の手段は、光制御素子であって、物理的に特性を変化させることが可能な材料からなる基板または膜と、入射する光の波長以下のサイズをもつ金属微小構造体を有し、複数個の前記金属微小構造体の組み合わせを単位とした集合構造体を、前記基板または前記膜の上部または内部に設けた構造を有することを特徴とする。
【0022】
本発明の第2の手段は、第1の手段の光制御素子において、前記基板または前記膜が、電圧を印加することにより屈折率の変化を生じる材料により構成されることを特徴とする。
また、本発明の第3の手段は、第1の手段の光制御素子において、前記基板または前記膜が、光を照射することにより屈折率の変化を生じる材料により構成されることを特徴とする。
さらに本発明の第4の手段は、第1の手段の光制御素子において、前記基板または前記膜が、電圧を印加することにより変形を生じる材料により構成されることを特徴とする。
【0023】
本発明の第5の手段は、第1乃至第4のいずれか1つの手段の光制御素子において、前記集合構造体が、2個以上の金属微小構造体を単一または複数の軸上に配列した構造を有し、該集合構造体が全て等しい配向を有して配置されていることを特徴とする。
また、本発明の第6の手段は、第1乃至第5のいずれか1つの手段の光制御素子において、前記金属微小構造体が、入射する光の波長に対してプラズモンを励振できる単一または複数の金属材料により構成されることを特徴とする。ここで、上記のプラズモンとは、金属材料中の電子の集団運動を意味している。
【0024】
本発明の第7の手段は、表示装置であって、光制御手段として第1乃至第6のいずれか1つの手段の光制御素子を用い、白色光源もしくは、赤、緑、青(以下、RGBと記す)の3色の波長を有する光源(例えば3色の発光ダイオード(LED)等)と、前記RGBの各波長に対して前記基板または前記膜の物理的特性を変調することにより前記光制御素子の前記RGBの各波長の光に対する透過率を変調する外部変調手段とを少なくとも備えることを特徴とする。
【0025】
本発明の第8の手段は、応力測定装置であって、光制御手段として第1乃至第6のいずれか1つの手段の光制御素子を用い、単色光源と、前記光制御素子を変調する外部変調手段と、変形または変位により生じる金属微小構造体間の相対的な位置関係の変化を偏光状態の変化として検出する偏光検出手段とを少なくとも備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明の第1、第2の手段に係る光制御素子においては、物理的に特性を変化させることが可能な材料として例えば電気光学効果を有する材料からなる基板または膜を用い、基板または膜の上部または内部に第5、第6の手段の構成を有する金属微小構造体を配置することにより、外部電圧制御手段を介して、本光制御素子の光応答特性を高速に制御することが可能となる。また、本光制御素子は無機材料により構成されており、耐光性、耐熱性の優れた素子を実現することができる。また、可動部分を持たない光制御素子を実現することができる。
【0027】
本発明の第1、第3の手段に係る光制御素子においては、物理的に特性を変化させることが可能な材料として例えば非線形光学効果を有する材料からなる基板または膜を用い、基板または膜の上部または内部に第5、第6の手段の構成を有する金属微小構造体を配置することにより、外部電圧制御手段を介して、本光制御素子の光応答特性を高速に制御することが可能となる。また、本光制御素子は無機材料により構成されており、耐光性、耐熱性の優れた素子を実現することができる。また、可動部分をもたない光制御素子を実現することができる。
【0028】
本発明の第1、第4の手段に係る光制御素子においては、物理的に特性を変化させることが可能な材料として例えば電歪効果を有する材料からなる基板または膜を用い、基板または膜の上部または内部に第5、第6の手段の構成を有する金属微小構造体を配置することにより、外部電圧制御手段を介して、本光制御素子の光応答特性を高速に制御することが可能となる。また、本光制御素子は無機材料により構成されており、耐光性、耐熱性の優れた光制御素子を実現することができる。
【0029】
本発明の第7の手段の表示装置においては、光制御手段として第1乃至第6のいずれか1つの手段の光制御素子を用い、該光制御素子をRGBの3色の波長の光に対して設け、また、各波長の光を空間的に制御する外部光変調手段を備えることにより、各波長の光を時間的または空間的に分離することなく利用することができており、光利用効率の高い表示素子を実現することができる。また、本光制御素子は、波長フィルタと波長板の両機能を備えているので、表示装置の光学素子数を低減することができる。
【0030】
本発明の第8の手段の応力測定装置においては、光制御手段として第1乃至第6のいずれか1つの手段の光制御素子を用い、起歪体上に本発明の光制御素子を構成し、外部より電気的または光学的に変調を施すことにより、応力により微小な変形を高感度に検出することができる。また、複雑な形状を有さないことから、作製が容易であり、且つ高感度な応力測定装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の構成、動作および作用効果を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例】
【0032】
[実施例1]
本実施例は、前述の第1、第2、第5、第6の手段に係る光制御素子に関するものである。
本実施例の光制御素子に関して、図1〜9に基づいて説明する。図1は、本実施例の光制御素子の一構成例を説明する光制御素子の断面図である。図1に示すように、本光制御素子は、電圧を印加することにより屈折率が変化する材料、すなわち電気光学効果を有した電気光学結晶を基板材料に用い、この電気光学結晶基板1の上に、光の波長以下のサイズをもつ金属微小構造体2を有し、複数個の金属微小構造体2の組み合わせを単位とした集合構造体3を設けた構成を有している。また、電気光学結晶の屈折率を制御するために、電気光学結晶基板1の上部と下部に薄膜電極5,6を配置し、外部に電圧制御手段7を有している。本光制御素子は透過光に対し、強度および偏光状態を制御するため、透過面側の電極は透明導電材料からなる透明薄膜電極とする必要がある。また、反射型の光制御素子として利用する場合には、下部側の薄膜電極6は金属材料を用いることができる。
【0033】
本光制御素子では、金属微小構造体2の酸化や劣化を防ぐため、また、金属微小構造体2に励振されるプラズモン(金属材料中の電子の集団運動)に共鳴する光の波長を選択するため、金属微小構造体を被膜する透明な保護膜4を設けることが好ましい。また、透明導電材料により被膜することで、電極と保護膜を兼ねることもできる。なお、図1では、金属微小構造体2を配した側から光を入射しているが、電気光学結晶基板1側から光を入射する構成であっても構わない。
【0034】
次に図2および図3は、本実施例の光制御素子を実現する別の構成例を説明する図である。
図2は、金属微小構造体2の集合構造体3を電気光学結晶基板1の内部に埋め込んだ構造を有しており、電気光学結晶基板1を挟んだ両面に透明薄膜電極5,6を有している。
図3は、透明な支持基板9上に、透明導電材料による透明薄膜電極6、金属微小構造体2の集合構造体3、電気光学効果を示す薄膜(電気光学結晶被膜)8、透明導電材料による透明薄膜電極5を順に積層または加工した構成を有している。
図2と図3は透過型の光制御素子について説明しているが、反射型の光制御素子としても利用することができ、その場合は金属材料などの不透明な導電性材料を電極として利用できる。図1、図2、図3のいずれの構成の場合も、電圧制御手段7で薄膜電極5,6間に電圧を印加することにより、金属微小構造2に接触または金属微小構造体2を被覆する基板または膜の屈折率を、電気光学効果を利用して変調し、透過または反射する光の状態を制御することが可能となっている。
【0035】
次に本実施例の光制御素子の各構成要素に使用する材料について説明する。図3に示す支持基板9は、透過型の素子を構成する場合には、高効率化のために可視領域の波長において吸収の低い材料が好ましく、石英ガラスや、BK7、パイレックス(登録商標)などの硼珪酸ガラス、CaF2、Si、ZnSe、Al2O3などの光学結晶材料などを利用する。また、反射型の素子を構成する場合には、反射率の高い材料が好ましく、上記の光学ガラス、光学結晶材料に、AlやAuなどの金属膜コーティングを施す。この際の膜厚は、金属中に光がしみ込む表皮深さよりも厚くする必要があり、30nmから100nm程度の膜厚とする。また、誘電体多層膜による全反射コーティングを施したものであっても良い。また、透過光と反射光の両方を利用するビームスプリッタなどとして利用する場合には、部分反射膜としてCrコーティングなどを利用する。
【0036】
薄膜電極5,6は、透過型の光制御素子の場合には透明である必要があり、また、吸収率の低い材料が好ましい。このような透明な導電性材料には、ITO、SnO2、IZO、ZnO、導電性ポリマーなどが利用できる。また、反射型の光学素子を構成する場合には、Au、Al、Cu、Cr、Mo、もしくはこれらの合金などの金属材料や、Si、Geなどの半導体材料が利用できる。これらの導電性薄膜は、スパッタ法、蒸着法、スピンコートなどの塗布法等で製膜することができる。
【0037】
電気光学結晶基板1または電気光学効果を示す膜(電気光学結晶被膜)8に用いる材料は、強誘電体材料であり、BBO、LiTaO3、KTB、LiNb3、LiNbO3、KTB、KTP、KTNなどの無機結晶、PZT、PLZTなどのセラミックス、アゾ系色素、スチルベンゼン系色素などの有機分子または有機結晶が利用できる。基板として用いるには、研磨により平滑化する。電気光学効果を示す材料の製膜方法としては、エピタキシャル成長を用いる方法や、エアロゾルデポジッション法と呼ばれる常温衝撃固化現象が利用できる。
【0038】
金属微小構造体2は空気中に剥き出しになっている必要はなく、金属微小構造体2の劣化を防ぐために、むしろ図1に示すような誘電体による保護膜4等を有しているほうが好ましい。また、金属微小構造体2を被覆する材料の光学定数(屈折率、消衰係数)に依存して金属微小構造体内部に励起されるプラズモンの共鳴波長がシフトするため、特定の波長の光を選択的に制御する、波長選択フィルタとしての機能も有する。保護膜4となる誘電体材料は吸収の少ないものが適しており、ZnS−SiO2などの光記録媒体の保護膜として利用される遷移金属酸化物などが利用できる。保護膜の作製は、スパッタ法やCVD法等を用いて行う。
なお、保護膜を設ける代わりに、図2に示すように、金属微小構造体2を電気光学結晶基板1の内部に埋め込んで薄膜電極5で覆う構造としてもよく、また、図3に示すように、金属微小構造体2を電気光学結晶被膜8で被覆する構造としてもよい。
【0039】
本実施例の光制御素子は、金属微小構造体中の電子の集団運動、すなわちプラズモンを介在することにより、透過光または反射光を制御する。したがって、金属微小構造体2を構成する金属材料は、可視光領域でプラズモンを効率良く励振できる必要がある。また、プラズモンは特定の波長の光により共鳴的に励振されるため、金属材料の選択の仕方により、光制御素子の稼動範囲を選択することができる。可視光領域でプラズモンを効率良く励振できる金属材料としては、Ag、Pt、Al、Cuなどが利用できる。
【0040】
このような金属微小構造体および集合構造体の作製は、様々な加工方法により可能である。電子ビームリソグラフィ技術を用いた方法や、DUV(遠紫外線)・EUV(深紫外線)リソグラフィ技術による一括露光を行う方法、モールドと呼ばれる型を用い、熱をかけて押し付けるナノインプリント技術などが利用できる。また、本出願人が先に出願した参考技術「光記録媒体の製造方法および光記録媒体」(特許文献6参照)に示すような、相変化材料や遷移金属酸化物材料にレーザー光を照射することにより、材料特性を変化させ、エッチングレートの違いを利用してエッチングする手法を利用することができる。
【0041】
次に本実施例の光制御素子の動作原理と、複数の金属微小構造体の配列方法について、数値計算結果を元に説明する。数値計算は、電磁界の運動を記述するマクスウェル方程式を時空間の差分方程式に近似して解く、有限時間領域差分法(FDTD法)を用いて行った。図4は、数値計算に使用したモデルを表しており、金属微小構造体2として、空気中に存在するサイズ(直径)が40nmの二つのAu球における近接する端部の間隔Dを0〜80nmまで変化させた場合の、反射遠方場における偏光状態の変化を調べた。Auの光学定数は、屈折率n=0.072、k=1.496を用いた。この値は、Auのプラズモン共鳴波長近傍である500nmの波長をもつ光に対する誘電率を、金属中の電子運動方程式から導出したDrudeモデルを適用することにより得られた値である。
【0042】
FDTD法により得られた金属微小構造体(Au)2の集合構造体(二つのAu球)の近傍の電界分布から遠方場光の特性を得るために、電界分布のフーリエ変換により角度θ=0°の成分を抽出し、図4に示すx方向とy方向の振幅比と位相差を算出した。40nmのAu微小球のプラズモン共鳴波長近傍である波長544nmを用い、図4に示すxy面内においてx軸から45°の方向に電界の振動方向をもつ平面波を照射する計算を行った。
【0043】
図5に示すグラフは金属微粒子間距離に対する振幅比を表しており、金属微粒子間距離Dが大きな領域においては振幅比が1に近づき、偏光面(電界の振動方向)が入射光の偏光方向と一致していることがわかる。これに対し、D=0近傍に近づくにつれて、振幅比が増加し、すなわち偏光面がy方向へ傾く。
一方、図6は金属微粒子間距離に対する電界のx成分とy成分の位相差を表している。金属微粒子間距離Dがゼロに近づくほど、位相差が大きくなり、D=0の場合に位相差が45°程度となる。FDTD法によるシミュレーションの結果から、Au球の間隔を制御することにより、偏光面を回転させることができ、また、偏光状態を、例えば直線偏光から楕円偏光に変換することが可能であることが確認できた。
【0044】
したがって、本実施例の光制御素子は、金属微小構造体2の相対的な位置関係を選択することにより、位相板ないしは偏光板として機能させることができる。また、金属材料としてAg微小球を使用した場合にも、同様の計算結果が得られるが、この場合、偏光状態に変化の生じる波長領域はAg球のプラズモン共鳴波長近傍である波長400nm近傍であった。
【0045】
上述の数値計算結果から分かるように、二つの金属微小構造体2が近接してくると、金属微小構造体2のサイズ程度に局在して分布する近接場光と呼ばれる電磁場を介在して、二つの金属微小構造体2が相互作用を生じ、この相互作用の大きさが、金属微小構造体2の配列の向きと入射する偏光の向きが平行は場合と垂直な場合とで異なるために、透過光または反射光に異方性が生じてくる。この効果は、金属微小構造体内に励振されるプラズモンの共鳴周波数近傍で最大となる。金属微小構造体2のサイズおよび形状は、プラズモンの共鳴波長を決定するものであり、これらは二つの金属微小構造体2において一致しているならば、どのようなサイズ、形状であっても構わない。
【0046】
図7は、金属球のサイズに対するプラズモンの共鳴波長の変化を調べるために、ミー散乱理論により解析的に計算した空気中に配置された単一Au球の中心部における電界強度を波長に対してプロットした図である。Au球の半径が5nm程度になると、ほとんどサイズには依存しなくなるが、半径25nmの場合と比較して約25nm程度の共鳴波長のシフトが生じ、サイズの増加に伴って電界強度が増強されることが確認された。共鳴波長のシフトと電界強度の増強は、金属材料や誘電体薄膜材料にも依存する。電界強度の増強はAu微小球の体積に比例した電気双極子モーメントの増大を意味しており、その結果、近接場光による相互作用も増強される。したがって、金属微小構造体2のサイズを変えることにより、本光制御素子の偏光制御特性および動作波長を制御することが可能である。また、金属微小構造体間のサイズのばらつきは、使用する金属微小構造体のサイズに依存するが、図7から、半径15nm以下のドットであれば、プラズモンの励振される領域の重なりは十分に大きく、特に考慮する必要はない。逆に、半径20nmを越える金属微小構造体を利用する場合は、およそ5nm以下の精度で半径が揃っている必要がある。また、ドットのサイズが10〜100nmの範囲にあれば、偏光特性の変化が観測できることも確かめられている。
【0047】
図8(a),(b)は、金属微小構造体2の形状の例を示した図である。金属微小構造体2の形状またはサイズが揃っていれば、図8(a)のように円柱形状のドット(金属微小構造体)2が二つ組み合わさった集合構造体3により構成されていてもよいし、図8(b)のように半球状のドット(金属微小構造体)2が二つ組み合わさった集合構造体3により構成されていてもよい。金属微小構造体2が形状に強く依存していないことは、加工精度に余裕をもたせることができ、素子を作製する上で有利な特性である。
【0048】
また、三つ以上の金属ドット(金属微小構造体)2を配置した構成を取ることもできる。図9(a),(b)は三つの金属ドット(金属微小構造体)2の配置例を説明する図であり、L字またはV字構造に配置した例を示している。この場合、金属ドットが配列する二本の軸に対して、それぞれ異なった位相差と振幅差が生じ、三つの金属ドットの配置に依存した偏光特性が得られる。また、二本の軸の交差する角度θが小さな場合には、さらにもう一対の金属ドット同士に相互作用が生じ、三本の軸に対し、それぞれ偏光特性が定まる。金属ドットの数を増やすことにより、さらに高度な偏光特性の制御が可能となる。
【0049】
本実施例の光制御素子においては、上述の金属微小構造体2による集合構造体3が、光を照射される面内に均一に設けられている必要がある。本実施例の光制御素子の集合構造体の配置例について、図10により説明する。図10(a)は、電気光学結晶基板1(または電気光学結晶被膜、あるいは保護膜)の上または内部に、二つの金属ドット(金属微小構造体)2により構成される集合構造体3を、正方格子状に配列したものである。ここで、隣接する集合構造体3の間隔は、入射する光の半波長よりも小さいものとする。この条件により、本実施例の光制御素子に作用した光を遠方で観測した場合に、光の干渉による影響が現れない。また、図10(b)に示すように、間隔を半波長程度とし、ストライプ状に配列することにより、回折格子と偏光制御機構を併せもつ光制御素子を実現することもできる。また、より高密度化するには、図10(c)に示すように、六方格子状に配置する。このように高密度化することにより、入射光と金属微小構造体2との相互作用の頻度が増し、偏光状態の変化をより強めることができる。また、集合構造体3は、図10(d)に示すように、集合構造体3の配向が揃っていれば、平面上にランダムに分布していてもよい。これは、光制御素子の作製精度を緩和することができ、低コスト化を図ることができる。
【0050】
本実施例で示した光制御素子に電圧制御手段7により電圧を印加すると、電圧の大きさに応じて電気光学結晶基板1または電気光学効果を示す膜(電気光学結晶被膜)8の屈折率が変化する。金属微小構造体2は電気光学結晶基板1または電気光学結晶被膜8に接して配置されており、屈折率が変化することは、光の伝達速度が変わり、実効的に金属微小構造体間の距離が変化することに相当する。したがって、外部より金属微小構造体間の距離を制御することができ、しいては、入射光の偏光状態を制御することが可能となる。これが、本実施例の光制御素子の駆動原理である。
【0051】
本実施例の光制御素子は、電気光学効果による微小な屈折率変化に対し、極めて敏感に偏光状態を変化させる。したがって、低い印加電圧で効率良く光制御が実現できる。また、金属微小構造体2にはプラズモン共鳴にともなう波長選択性があり、特定の波長に対してのみ偏光状態を制御することが可能となっている。また、電気光学効果の時間応答は極めて早く、高速の光制御が可能となっている。
【0052】
[実施例2]
本実施例は、前述の第1、第3、第5、第6の手段に係る光制御素子に関するものである。
本実施例の光制御素子に関して、図11〜図13に基づいて説明する。図11〜図13は、本実施例の光制御素子の構成例を説明するための光制御素子の断面図である。基本的な構成は、図1〜図3に示した第一の実施例と同様であるが、電気光学結晶基板または膜の代わりに、光を照射することにより屈折率が変化する非線形光学材料を基板または膜として利用する。
【0053】
図11は透過型の光制御素子の例であり、非線形光学材料基板10(または非線形光学材料被膜)の上部に金属微小構造体2の集合構造体3を設けた構成となっている。金属微小構造体2を構成する位置は、第一の実施例と同様に、非線形光学材料基板10の上部に設けられた構成の他、図12に示す構成例のように、非線形光学材料基板10の内部に埋め込まれた構成、図13に示す構成例のように、非線形光学材料による膜11に覆われた構成のいずれであっても構わない。図13の構成例では、非線形光学材料による膜11を形成するため、ならびに金属微小構造体2を固定された位置に配置するために、支持基板12が必要である。支持基板12は、透過型の光制御素子では、第一の実施例で述べたように、透明なガラス材料、光学結晶材料を用いる。
【0054】
本実施例の光制御素子では、非線形光学効果を制御するために、外部に入射する光の波長とは異なる波長を有する制御用光源を備えている。反射型の光制御素子として利用する場合には、非線形光学材料基板10(または非線形光学材料被膜)の下部に金属薄膜や誘電体多層膜構造を設ける。さらに、図11や図12の構成例では、金属微小構造体2の酸化や劣化を防ぐため、また、金属微小構造体2に励振されるプラズモンに共鳴する光の波長を選択するため、金属微小構造体2を被膜する透明な保護膜4を設けることが好ましい。また、図13の構成例のように、非線形光学材料により被膜11することで、屈折率制御と保護膜の機能を兼ねることもできる。なお、図11〜図13の構成例では、金属微小構造体2を配した側から光を入射しているが、非線形光学材料基板10(または非線形光学材料被膜)や、支持基板12の側から光を入射する構成であってもよい。
【0055】
非線形光学材料には、入射する光の強度に対して二次または三次の非線形定数を有する材料が利用できる。高効率で屈折率を変化させるためには大きな非線形定数を有する材料が適しており、二次の非線形光学効果を利用する場合は、二次の非線形定数が0.01pm/V以上、より好ましくは二次の非線形定数が1pm/V以上であるとよい。または、三次の非線形光学効果を利用する場合には、三次の非線形光学定数が0.01×10−22m2/V2以上であり、より好ましくは三次の非線形定数が1×10−22m2/V2以上の材料であるとよい。このような材料には、3元素の結晶であるBBO、LBO、BIBO結晶、4元素の結晶であるKTP、KDP結晶などの無機結晶がある。また、半導体量子井戸構造を用いることにより大きな非線形定数を得ることができる。このような材料としては、Ga、In、Al、As、P、N、Sb、Zn、SeによるIII−V族、II−VI族半導体混晶が利用できる。非線形光学材料の加工および製膜は、研磨による方法や、スパッタ法を用いた堆積、CVDやエビタキシャル成長法といった結晶成長技術を用いた方法により行う。
【0056】
金属微小構造体2およびその集合構造体3は、第一の実施例に記載したものと同様であり、入射する光の波長に対して十分に小さい必要があり、好ましくは10〜100nmのサイズであればよい。また、金属微小構造体2は、図4〜図8を参照して説明したように、二個を一定の方向に配列し、その間隔を調整することにより所望する偏光状態を得るものでも良いし、図9に示したように、三個以上をL字、V字構造等に間隔を調整して配列し、所望する偏光状態を得るものでもよい。集合構造体3の配置についても、第一の実施例に記載したもの(図10)と同様であり、正方格子、六方格子、ストライプ、ランダムな配置などとする。金属微小構造体2を構成する材料は、可視光領域でプラズモンを励振する金属材料で、Au、Ag、Pt、Al、Cuなどが利用できる。作製方法は、第一の実施例で示した、電子ビームリソグラフィ技術を用いた方法や、DUV(遠紫外線)・EUV(深紫外線)リソグラフィ技術による一括露光を行う方法、モールドと呼ばれる型を用い、熱をかけて押し付けるナノインプリント技術による方法、エッチングレートの違いを利用してエッチングする手法などが利用できる。
【0057】
第一の実施例と同様に、金属微小構造体2は空気中に剥き出しになっている必要はなく、金属微小構造体2の劣化を防ぐために、図11や図12に示すように、むしろ誘電体による保護膜4を有しているほうが好ましい。また、金属微小構造体2を被覆する材料の光学定数(屈折率、消衰係数)に依存して金属微小構造体内部に励起されるプラズモンの共鳴波長がシフトするため、特定の波長の光を選択的に制御する、波長選択フィルタとしての機能も有する。保護膜4となる誘電体材料は吸収の少ないものが適しており、ZnS−SiO2などの光記録媒体の保護膜として利用される遷移金属酸化物などが利用できる。保護膜の作製は、スパッタ法やCVD法を用いて行う。なお、保護膜を設ける代わりに、図13に示すように、金属微小構造体2を非線形光学材料被膜11で被覆する構造としてもよい。
【0058】
次に本実施例の光制御素子における、光制御の原理について説明する。外部に設けた非線形光学効果制御用の図示しない光源により制御光(変調光)の強度を変化させることにより、非線形光学材料の屈折率が変化する。金属微小構造体2は、非線形光学材料からなる基板または膜に接して配置されており、屈折率の変化は、実効的に金属微小構造体間の距離を変化させることになり、隣接して配置された複数の金属微小構造体間の近接場光を介在した相互作用の強さに変化が生じる。その結果、金属微小構造体間に働く近接場相互作用の大きさが、金属微小構造体2の配置と入射する光の偏光方向に依存して変化し、透過光または反射光に偏光の異方性が現れる。偏光の異方性は、非線形光学材料の屈折率変化に対して、極めて敏感であり、制御光の強度により、偏光状態をアクティブに制御することができる。
【0059】
なお、非線形光学材料の屈折率制御に利用する光源は、非線形性を強く生じる波長であり、且つ入射光(信号光)と分離される必要があることから、金属微小構造体のプラズモン共鳴周波数から十分に離れた波長の光を利用する。
【0060】
本実施例の光制御素子は、非線形光学効果による微小な屈折率変化に対し、極めて敏感に偏光状態を変化させる。したがって、高効率光制御が可能となっている。また、金属微小構造体2にはプラズモン共鳴にともなう波長選択性があり、特定の波長に対してのみ偏光状態を制御することが可能となっている。また、非線形光学材料を使うことにより、電気的な配線が不要であり、極めて簡単な構成で光制御が実現できる。
【0061】
[実施例3]
本実施例は、前述の第1、第4、第5、第6の手段に係る光制御素子に関するものである。
本実施例の光制御素子に関して、図14に基づいて説明する。図14は、本実施例の光制御素子の構成例を説明するための光制御素子の断面図である。基本的な構成は、図1に示した第一の実施例と同様であるが、電気光学結晶基板または膜により屈折率を電気的に変調する代わりに、電圧を印加することにより変形(伸縮)を生じる電歪材料を利用する。図14は透過型の光制御素子の例であり、透明な支持基板14上に電歪材料膜13を設けたものを基板とし、基板上に金属微小構造体2の集合構造体3を設けた構成となっている。また、電歪材料膜13の変形量を制御するために、外部に電圧制御手段7を備えている。
【0062】
反射型の光制御素子として利用する場合には、不透明な電歪材料膜13を用いることができる。また、電歪材料膜13を形成した支持基板14の下部に金属薄膜や誘電体多層膜構造を設けてもよい。金属微小構造体2の酸化や劣化を防ぐため、また、金属微小構造体2に励振されるプラズモンに共鳴する光の波長を選択するため、金属微小構造体2を被膜する透明な保護膜4を設けることが好ましい。なお、図14に示す構成例では、金属微小構造体2を配した側から光を入射しているが、電歪材料膜13を形成した支持基板14の側から光を入射する構成であってもよい。
【0063】
電歪材料は、低電力で変形を生じる材料が適しており、水晶、ZnO、LiNbO3、LiTaO3、Li2B4O7、AlNなどの無機結晶が利用できる。また、チタン酸ジルコン酸鉛などのセラミックス材料や、ロッシェル塩、トルマリン(電気石)などの有機結晶が利用できる。電歪材料の加工および製膜は、研磨による方法や、スパッタ法を用いた堆積、CVDやエビタキシャル成長法といった結晶成長技術を用いた方法により行う。
【0064】
金属微小構造体2およびその集合構造体3は、第一の実施例に記載したものと同様であり、入射する光の波長に対して十分に小さい必要があり、好ましくは10〜100nmのサイズであればよい。また、金属微小構造体2は、図4〜図8を参照して説明したように、二個を一定の方向に配列し、その間隔を調整することにより所望する偏光状態を得るものでも良いし、図9に示したように、三個以上をL字、V字構造等に間隔を調整して配列し、所望する偏光状態を得るものでもよい。集合構造体3の配置についても、第一の実施例に記載したもの(図10)と同様であり、正方格子、六方格子、ストライプ、ランダムな配置などとする。金属微小構造体2を構成する材料は、可視光領域でプラズモンを励振する金属材料で、Au、Ag、Pt、Al、Cuなどが利用できる。作製方法は、第一の実施例で示した、電子ビームリソグラフィ技術を用いた方法や、DUV(遠紫外線)・EUV(深紫外線)リソグラフィ技術による一括露光を行う方法、モールドと呼ばれる型を用い、熱をかけて押し付けるナノインプリント技術による方法、エッチングレートの違いを利用してエッチングする手法などが利用できる。
【0065】
第一の実施例と同様に、金属微小構造体2は空気中に剥き出しになっている必要はなく、金属微小構造体2の劣化を防ぐために、図14に示すように、むしろ誘電体による保護膜4を有しているほうが好ましい。また、金属微小構造体2を被覆する材料の光学定数(屈折率、消衰係数)に依存して金属微小構造体内部に励起されるプラズモンの共鳴波長がシフトするため、特定の波長の光を選択的に制御する、波長選択フィルタとしての機能も有する。保護膜4となる誘電体材料は吸収の少ないものが適しており、ZnS−SiO2などの光記録媒体の保護膜として利用される遷移金属酸化物などが利用できる。保護膜の作製は、スパッタ法やCVD法を用いて行う。
【0066】
次に本実施例の光制御素子における、光制御の原理について説明する。外部に設けた電圧制御手段7により、印加電圧を変化させることにより、電歪材料膜13は変形(伸縮)を生じる。図14では、電歪材料膜13に平行な方向に電圧が印加される構成であり、電歪材料膜13は、支持基板14に平行な方向に伸縮する。したがって、金属微小構造体間の距離を変化させることになり、金属微小構造体間に働く近接場相互作用の大きさが、金属微小構造体2の配置と入射する光の偏光方向に依存して変化し、透過光または反射光に偏光の異方性が現れる。偏光の異方性は、金属微小構造体2の変位に対して、極めて敏感であり、印加電圧を制御することにより、偏光状態をアクティブに制御することができる。
【0067】
本実施例の光制御素子は、電歪材料による微小な変形に対し、極めて敏感に偏光状態を変化させる。したがって、高効率光制御が可能となっている。また、金属微小構造体2にはプラズモン共鳴にともなう波長選択性があり、特定の波長に対してのみ偏光状態を制御することが可能となっている。また、電歪効果の時間応答は極めて早く、高速の光制御が可能となっている。
【0068】
[実施例4]
本実施例例は、前述の第7の手段に係る表示装置に関するものである。
本実施例の光制御素子を用いた表示装置に関して、図15および図16〜図21に基づいて説明する。
図15は、本実施例の表示装置の構成例を説明するための概略構成図である。本実施例の表示装置は、光源(白色光源または、赤(R)緑(G)青(B)の3色の波長をもつLED光源)20と、実施例1〜3で説明した光制御素子の集合により構成される偏光制御素子22および偏光制御素子を制御するための外部光変調手段23と、偏光状態を透過光強度情報に変換するための二枚の偏光板(第1偏光板21および第2偏光板24)と、偏光制御素子22により変調された信号をスクリーン26に表示するための投射光学系25により構成されている。
【0069】
この表示装置に組み込まれる偏光制御素子22は、RGBの各波長に対して作用することから、それぞれの光の波長に対応した三種類の偏光制御素子要素(例えば1/2波長板として機能)22R,22G,22Bが必要であり、図15は、これら偏光制御素子要素22R,22G,22Bを直列に並べた構成を有している。各波長に対する偏光制御素子要素22R,22G,22Bは、それぞれ100μm〜1mm平方程度のサイズをもつ画素に分割されており、各画素は、各偏光制御素子要素22R,22G,22Bに対応する外部光変調手段23R,23G,23Bにより独立に変調される。各画素が実施例1〜3で説明した光制御素子に対応している。
【0070】
光制御素子は、RGBの3色それぞれの波長の光に対して、プラズモン共鳴が生じるように、金属微小構造体を構成する材料ならびに波長選択性を有する保護膜の材料を選択する必要がある。図16〜図21は、これを実現する構成の一例を示した計算結果である。計算は、ミー散乱理論に基づき、半径が5〜25nmのAu金属球またはAg金属球が、代表的な被膜材料で覆われている系について行い、金属球中心部分の電界強度を算出した。被膜材料として用いたのは、空気(屈折率:n=1.0)(図16)、CaF2(n=1.3)(図17)、SiO2(n=1.5)(図18、図19)、ZnO(n=2.1)(図20)、ZnS−SiO2(n=2.3)(図21)である。同一のグラフ中において、5本の曲線a〜eは、半径がa=5nm、b=10nm、c=15nm、d=20nm、e=25nmの場合の計算結果を表しており、長波長側にピークがシフトするほど半径が大きな金属となっている。赤色(R)の光にプラズモンの共鳴条件を合わせるには、Ag金属球をSiO2またはこれに近い屈折率を有する材料により被覆する。緑色(G)の光にプラズモンの共鳴条件を合わせるには、Au金属球をCaF2など屈折率nが1.3程度の材料で被膜する。もしくは、Ag金属球をZnOなどの屈折率nが2.1程度の材料で被膜する。青色(B)の光にプラズモンの共鳴条件を合わせるには、Au金属球をSiO2などの屈折率nが1.5程度の材料で被膜する。もしくは、Ag金属球をZnS−SiO2などの屈折率nが2.3程度の材料で被膜する。これらは、金属微小構造体2のサイズや形状、金属微小構造体2を配置する基板の光学特性、波長選択性を有する保護膜の膜厚などに依存するため、光制御素子の構成に依存して最適化する必要がある。
【0071】
次に本実施例の表示装置の動作原理について説明する。本実施例の表示装置は、二枚の偏光板21,24を直交させて、偏光制御素子22(22R,22G,22B)の前後に配置した構成であり、偏光制御素子22(22R,22G,22B)には第1偏光板21を介して直線偏光が入射される。ここで、外部光変調手段23(23R,23G,23B)により、電圧、制御光、変位が入力された際に、偏光が90°回転するように、金属微小構造体2の間隔や配置を調整しておくと、偏光の向きが変化した成分のみが第2偏光板24を透過することができ、スクリーン26上に結像される。RGBの3色の波長に対し、偏光制御素子22(22R,22G,22B)の各画素に対応する光制御素子でこのON/OFFを制御することにより、スクリーン26上で3色が合成されたカラー画像が形成できる。
【0072】
なお、図15には明記していないが、入射される光は、ランダムな偏光状態を有しており、第1偏光板21により光量の1/2を損失してしまう。これを回避するため、第1偏光板21の前部に反射される偏光成分を回転させて再び入力する偏光変換素子(図示せず)を配置することにより、光利用効率を高め、また高輝度の表示装置を実現することができる。
【0073】
以上のように、本実施例の表示装置は、光制御素子を電気的または光学的な屈折率変化により制御する場合には、可動部分をもたず、極めて高速な動作を実現することができる。光制御素子を電歪材料の変形を利用して制御する場合においても、極めて微小な物理的変化を透過光強度に反映することができ、高速且つ低消費電力動作が可能となる。また、液晶パネルを用いた表示素子のようにRGBの3つの波長を分離して情報処理を行う必要がないため、光学素子数を格段に減らすことが可能となり、生産コストの削減や、表示装置の小型化が可能となる。
【0074】
[実施例5]
本実施例は、前述の第7の手段に係る表示装置に関するものであり、実施例4とは異なる構成によるものである。
本実施例の光制御素子を用いた表示装置に関して、図22、図23に基づいて説明する。図22は、本実施例の表示装置の構成例を説明するための概略構成図である。本実施例の表示装置は、光源30としてRGBの各波長をもつ三つの独立したLED光源30R,30G,30Bと、実施例1〜3で説明した光制御素子の集合により構成される偏光制御素子(例えば1/2波長板として機能)33および偏光制御素子を制御するための外部光変調手段34と、偏光状態を透過光強度情報に変換するための二枚の偏光板(第1偏光板31および第2偏光板36)と、各画素へ光を投入するためのマイクロレンズアレイ32と、各画素を透過した光を合成するコリメートレンズ35と、偏光制御素子33の光制御素子により変調された信号をスクリーン38に表示するための投射光学系37により構成されている。
【0075】
本実施例で実施例4と異なる部分は、図22および図23に示すように、偏光制御素子33が、RGBの3色に対応する三種類の光制御素子33R,33G,33Bを単板上に配列することにより構成されているところである。RGBの3色の波長に対する光制御素子33R,33G,33Bが100μm〜1mm平方程度の領域中に全て配置されたものが、1画素を構成する。各光制御素子33R,33G,33Bは、外部光変調手段34により独立に変調される。各画素を構成する三つの光制御素子33R,33G,33Bのそれぞれが実施例1〜3で説明した光制御素子に対応している。光制御素子を構成する材料は、実施例4で示したものと同様であり、Au、Agなどの金属材料と、CaF2、SiO2、ZnO、ZnS−SiO2などの一般的な被膜材料を、RGBの各波長の光が金属微小構造体中のプラズモン共鳴条件近傍に調整されるように選択する。
【0076】
偏光制御素子33は、RGBの3色の波長に対応する光制御素子33R,33G,33Bが単板上に交互に配列しているため、RGB各波長の光をこれらの光制御素子33R,33G,33Bに分配する必要がある。これは、マイクロレンズアレイ32を用い、各マイクロレンズ32aに入射する入射光の角度をRGBの各波長に対して調整することで実現できる。図23は、図22における1つのマイクロレンズ32aと光制御素子33R,33G,33Bを含む点線部分39を拡大したものであり、入射角に依存したRGB各波長の光の集光状態を説明するための図である。垂直に入射される光は、マイクロレンズ32aの中心に位置する光制御素子33Gに集光される。一方、斜めに入射される光は、焦点位置がマイクロレンズ32aへの入射角度に依存して変化する。したがって、マイクロレンズ32aへの入射角度を変化させることにより、二次元的には配列した3つの光制御素子33R,33G,33Bへ、それぞれ対応した波長の光を導入することができる。
【0077】
本実施例の表示装置の動作原理は、実施例4と同様であり、外部光変調手段34により、電圧、または制御光が入力された際に、偏光が90°回転するように、金属微小構造体の間隔や配置を調整しておくことにより、偏光の向きが変化した成分のみが第2偏光板36を透過することができ、スクリーン38上で3色が合成されたカラー画像が形成される。
【0078】
なお、図22には明記していないが、入射される光は、ランダムな偏光状態を有しており、第1偏光板31により光量の1/2を損失してしまう。これを回避するため、第1偏光板31の前部に反射される偏光成分を回転させて再び入力する偏光変換素子(図示せず)を配置することにより、光利用効率を高め、また高輝度の表示装置を実現することができる。
【0079】
以上のように、本実施例の表示装置は、光制御素子を電気的または光学的な屈折率変化により制御する場合には、可動部分をもたず、極めて高速な動作を実現することができる。光制御素子を電歪材料の変形を利用して制御する場合においても、極めて微小な物理的変化を透過光強度に反映することができ、高速且つ低消費電力動作が可能となる。また、単板でRGBの3つの波長に対する光制御を行っているため、光学素子数を格段に減らすことが可能となり、生産コストの削減や、表示装置の小型化が可能となる。
【0080】
[実施例6]
本実施例は、前述の第8の手段に係る応力測定装置に関するものである。
本実施例の光制御素子を用いた応力測定装置に関して、図24および前述の図16〜21に基づいて説明する。図24は、本実施例の応力測定装置を説明するための概略構成図である。本実施例の応力測定装置は、単色光源40と偏光子41と、実施例1〜3で説明した光制御素子53を備えた変形機構(支持基板51と起歪体52)と、該光制御素子53を制御するための外部変調手段44と、光制御素子53の変形または変位により生じる金属微小構造体間の相対的な位置関係の変化を偏光状態の変化として検出する偏光検出手段(例えば検光子42と光検出器43)とにより構成されている。また、光制御素子53は、圧力や温度に起因した応力を微小な変形として感知できるよう、支持基板51上に起歪体52を配置し、該起歪体52に接して配置されている。
【0081】
本実施例の応力測定装置に用いる単色光源40は、光制御素子53を構成する金属微小構造体中にプラズモンを共鳴的に励振する波長を有する必要がある。Auを金属材料とした金属微小構造体では、544nm程度の波長をもつレーザーダイオード(LD)を用いる。なお、光源40は、単色LEDや固体レーザーであっても構わないが、装置の小型化、高感度化の目的から、レーザーダイオード(LD)を利用するほうが、より好ましい。また、Agを金属材料として用いる場合には、400nm程度の短波長の光源が必要である。また、金属微小構造体を被覆する保護膜の選択により、使用する光の波長を調整することができる。
図16〜21は前述したように、ミー散乱理論を用いて様々な被覆材料に覆われた金属球の球中心における電界強度を計算した結果であり、金属材料と保護膜の組み合わせにより、プラズモンの共鳴波長を自由に選択できることを示している。図16〜21から分かるように、短波長の光を用いるほど、共鳴ピーク値は大きくなり、微小な変形に起因した偏光状態の変化が、より顕著に現れる。
【0082】
光制御素子53を備えた変形機構は、Siの自立膜が微小な隙間を有して平行に配置された起歪体52を有した構造となっている。このような構造は、Si半導体の製造プロセスにより作製される。例えば、SOI(Silicon On Insulator)ウェハを用い、光リソグラフィ技術によりパターンを切り出し、SiO2層をドライエッチングで除去することにより、隙間部分を作製することができる。この起歪体52に接して本発明の光制御素子53を配置する。
【0083】
偏光検出手段においては、変形による偏光状態の変化を検出するために、光検出器43の直前に検光子42を設けている。また、単色光源40の近傍には偏光子41が設けられている。偏光子41は、光制御素子中の金属微小構造の配向すなわち偏光異方性を生じる軸に沿った向きの直線偏光となるように配置されている。また、偏光検出手段の検光子42は自由に回転できる構成とすることにより、偏光状態の変化量を定量的に検出することができる。
【0084】
次に本実施例の応力測定装置による微小な変形の測定方法について説明する。圧力や温度に依存した起歪体52の変形が比較的大きな場合は、電気的な変調を施さずとも、直接偏光状態の変化を検出可能であるが、より微小な変位を高感度に検出するために、光制御素子53に変調をかける外部変調手段44を設けている。ここで、外部変調手段44とは、第2〜第4の手段で説明する、物理的に特性を変化させることが可能な材料に応じて、電気的、光学的に制御信号を与えるための手段である。この外部変調手段44により、光制御素子53に周期的な変調をかけ、これに同期した偏光状態の変化を光検出器43により検出することで、ノイズ信号を除去することが可能であり、起歪体52の変形による効果のみを高感度に検出することが可能である。金属微小構造体間の近接場光を介在した相互作用は、金属微小構造体間の距離に極めて敏感であり、サイズ50nm程度の金属微小構造体を用いた場合、1〜50nm程度の変形を測定することが可能である。
【0085】
以上のように、本実施例の応力測定装置は、光制御素子53に電気的または光学的な変調を加えることにより、微小な応力による変形を、入射する光の偏光状態の変化として、偏光検出手段の光検出器43で高感度に検出することが可能である。また、光制御素子53を構成する金属微小構造体は、厳格な形状を有する必要はないことから、作製精度に関する制限を緩和することができ、装置の低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の第1の実施例の光制御素子の一構成例を説明するための図であり、金属微小構造体を電気光学結晶基板の上面に配置した構成の光制御素子の断面図である。
【図2】本発明の第1の実施例の光制御素子の別の構成例を説明するための図であり、金属微小構造体を電気光学結晶基板の内部に配置した構成の光制御素子の断面図である。
【図3】本発明の第1の実施例の光制御素子のさらに別の構成例を説明するための図であり、金属微小構造体を電気光学結晶被膜で被覆した構成の光制御素子の断面図である。
【図4】金属微小構造体を2個配置した場合の数値シミュレーションのモデルを説明する図である。
【図5】数値シミュレーションにより得られた振幅比の計算結果を示す図である。
【図6】数値シミュレーションにより得られた位相差の計算結果を示す図である。
【図7】ミー散乱理論に基づき算出した、金属微小構造体のサイズ依存性を示す図である。
【図8】金属微小構造体の形状の任意性を説明するための図である。
【図9】3つの金属微小構造体による集合構造体の構成を説明するための図である。
【図10】集合構造体の配列の仕方を説明するための図である。
【図11】本発明の第2の実施例の光制御素子の一構成例を説明するための図であり、金属微小構造体を非線形光学材料基板の上面に配置した構成の光制御素子の断面図である。
【図12】本発明の第2の実施例の光制御素子の別の構成例を説明するための図であり、金属微小構造体を非線形光学材料基板の内部に配置した構成の光制御素子の断面図である。
【図13】本発明の第2の実施例の光制御素子のさらに別の構成例を説明するための図であり、金属微小構造体を非線形光学材料被膜で被覆した構成の光制御素子の断面図である。
【図14】本発明の第3の実施例の光制御素子を説明するためのであり、金属微小構造体を、電歪材料膜を形成した基板の上面に配置した構成の光制御素子の断面図である。
【図15】本発明の第4の実施例の表示装置の構成例を説明するための概略構成図である。
【図16】ミー散乱理論に基づき計算した、金属材料と空気の組み合わせによるプラズモン共鳴波長の選択方法を説明する図である。
【図17】ミー散乱理論に基づき計算した、金属材料と被膜材料の組み合わせによるプラズモン共鳴波長の選択方法を説明する図である。
【図18】ミー散乱理論に基づき計算した、金属材料と被膜材料の別の組み合わせによるプラズモン共鳴波長の選択方法を説明する図である。
【図19】ミー散乱理論に基づき計算した、金属材料と被膜材料の別の組み合わせによるプラズモン共鳴波長の選択方法を説明する図である。
【図20】ミー散乱理論に基づき計算した、金属材料と被膜材料の別の組み合わせによるプラズモン共鳴波長の選択方法を説明する図である。
【図21】ミー散乱理論に基づき計算した、金属材料と被膜材料の別の組み合わせによるプラズモン共鳴波長の選択方法を説明する図である。
【図22】本発明の第5の実施例の表示装置の構成例を説明するための概略構成図である。
【図23】図22のマイクロレンズアレイと偏光制御素子の一部を拡大して示す要部拡大図である。
【図24】本発明の第6の実施例の応力測定装置の構成例を説明するための概略構成図である。
【図25】従来技術1に記載の光学素子の構成説明図である。
【図26】従来技術2に記載の反射率可変波長選択フィルタの概念図である。
【図27】従来技術3に記載の光学素子を斜め上方から見た電子顕微鏡写真を複写した図である。
【図28】従来技術4に記載の空間変調器の概略構成図である。
【図29】従来技術5に記載の光学装置の一例である多チャンネルフィルタの概略平面図である。
【図30】従来技術6に記載の光学素子の概略断面図である。
【符号の説明】
【0087】
1:電気光学結晶基板
2:金属微小構造体
3:集合構造体
4:保護膜
5:薄膜電極
6:薄膜電極
7:電圧制御手段
8:電気光学結晶被膜
9:支持基板
10:非線形光学材料基板
11:非線形光学材料被膜
12:支持基板
13:電歪材料膜
14:透明支持基板
20:光源
21:第1偏光板
22:偏光制御素子
22R,22G,22B:偏光制御素子要素
23(23R,23G,23B):外部変調手段
24:第2偏光板
25,37:投射光学系
26,38:スクリーン
30:光源
30R,30G,30B:LED光源
31:第1偏光板
32:マイクロレンズアレイ
32a:マイクロレンズ
33:偏光制御素子
33R,33G,33B:光制御素子
34:外部変調手段
35:コリメートレンズ
36:第2偏光板
40:単色LD光源
41:偏光子
42:検光子(偏光検出手段)
43:光検出器(偏光検出手段)
44:外部変調手段
51:支持基板
52:起歪体
53:光制御素子
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部制御手段により光学応答特性を制御する機能を有する光制御素子に関するものであり、さらには、前記光制御素子を利用した表示装置、及び、前記光制御素子を利用して、微小な変形、変位を光学的に測定する応力測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイやプロジェクタ装置は、電気的に、または機械的に光源からの光を遮断する、または透過させる機構を有している。液晶パネルを用いた装置では、液晶分子の配向で偏光面の回転を制御し、液晶パネルを挟んだ二枚の偏光板によりON/OFFを制御する。また、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いるものでは、DMD(Digital Micro-mirror Device)と呼ばれる微小なミラーを静電気力により高速に動かすことにより、ON/OFFを切り替えている。
【0003】
液晶を利用する表示装置では、液晶分子をはじめ、配向膜、偏光板など、偏光を制御する素子は一般的に有機材料で構成されている。例えば偏光板は、ポリビニルアルコールなどの基板フィルムにヨウ素や有機染料などの二色性の材料を染色・吸着させ、高度に延伸・配向させることで吸収二色性を発現させるものが多用されているが、表示素子の高輝度化、高コントラスト化の要求に対して、有機材料は耐光性、耐熱性が弱いという課題がある。これを回避するために、金属細線による偏光板(ナノワイヤグリッド偏光板)などが利用されている。配向膜や液晶分子自身も有機材料により構成されており、耐光性、耐熱性が十分に高いとは言えない。したがって、液晶を利用する表示装置では、使用温度条件に制限がある、冷風機構が必要となる、といった課題があり、プロジェクタ装置のような高輝度および高コントラストの表示装置を実現することは困難である。また、液晶パネルは粘性のある液体中で液晶分子を電位に沿って配向させているが、その応答速度が遅いといった課題もある。また、液晶パネルを用いた表示装置では、カラー表示の際に赤、緑、青(以下、RGBと記す)の3つの波長の光をダイクロイックミラーにより分離し、それぞれの光に対して液晶パネルで画像処理を行い、再びプリズムを介して3つの波長の光を合成している。しかし、この表示装置では、偏光板やダイクロイックミラー、フィルタなど、多数の光学素子が必要となり、生産コストが高くなる。また、RGBの各波長の光を分岐する必要から、空間的なスペースが必要となり、装置の小型化が困難である。
【0004】
一方、MEMS技術を用いたプロジェクタ等の表示装置も広く利用されている。このタイプの表示装置は、カラーホイールと呼ばれるRGBの三つの波長に対応する波長フィルタを有する素子を回転させ、各波長の光を時分割してDMDに入射させる。DMDは反射角を入射光の色に同期して切り替えることによりON/OFFを制御し、画像情報処理を行う。このような装置では、一度に処理できる光は、単一波長に限られるために、入射光に対し利用できる光量は必然的に1/3となり、光利用効率が低いという欠点がある。また、MEMSデバイスは可動部分が存在するために、摩擦による加熱があり、劣化の問題を避けられない。さらには、MEMSデバイスはデバイス構造に依存した共振周波数で走査するため、その動作速度に固有の制限がある。
【0005】
表示装置とは異なる応用として、微小な位置変化による光学特性の変化を利用した光学デバイスが提案されている。例えば、MEMS技術を応用した変位センサーや、可変波長フィルタなどである。これらは、加工精度の問題や、信号が微弱であるといった課題があり、実用化には至っていない。
【0006】
また、本発明と同様の非線形光学結晶や電気光学結晶などの屈折率変調材料を用いて光の状態を制御する技術が提案されている。例えば、光導波路素子や偏光分離素子などをフォトニック結晶により構成し、外部より電気的または光学的に屈折率変化を生じさせることにより、光学特性を変調している。フォトニック結晶は周期構造が大きな領域に渡って精密に作製されている必要があるが、加工精度の問題から、光学素子として利用できる十分な特性は得られていない。また、これらのデバイスは、主に光通信用途に開発されている。
【0007】
ここで、液晶分子を用いた光学特性が可変である光制御素子として、従来技術1の「光学特性可変光学素子」が提案されている(特許文献1参照)。
この従来技術1では、光学特性可変光学素子の光の利用効率を高め、光学特性が変化する時間を短くすることを課題としており、図25(a)に示すように、この光学素子は、透明基板104,105間に、負の屈折率異方性を有する液晶層101と、配向膜102と、透明電極103とを有し、配向膜102にならって液晶分子110が配向している。このとき、透過する光に対し液晶分子110の屈折率は常光線の屈折率noとなり、該光学素子は凸レンズとして働く。次に図25(b)に示すように、スイッチ109をONにすると、液晶分子110が光軸方向に配向し、常光線と異常光線の屈折率(no+ne)/2が液晶分子の屈折率となる。この結果、レンズの焦点距離が伸びる。また、可変抵抗113を設けることにより、焦点距離の変化を連続かつ可変にすることができる。また、電界の代わりに、磁場又は温度変化を与えても同様の光学特性の変化が得られる。
従来の液晶を用いる可変光学素子は、液晶分子の偏光選択性を利用するものが多く、素子の前面に偏光板を設ける必要があるが、図25に示す光学素子では偏光板は不要であるため、光の利用効率が高い。また、光軸106に垂直な方向に電極103を設け、電界をかけることにより、液晶分子110の配向変化を高速に行うことができる。
【0008】
次に、サブ波長構造を有し、静電気力により変位させることにより反射光または透過光強度を変調し、フィルタリング、センシングを行うデバイスとして、従来技術2の「波長程度の周期構造を設けた光フィルタ」が提案されており(特許文献2参照)、さらには従来技術3の光学素子が提案されている(非特許文献1参照)。
【0009】
従来技術2では、低コストで生産できるMEMS技術を使って、単純な構造の共鳴格子を形成することにより、設計の自由度が高く、高性能な特性が得られる光フィルタ、及びこれらの光フィルタを使った光情報通信装置を提供することを課題としており、表面に絶縁膜を有する基板上にギャップを介して共鳴格子を設け、前記共鳴格子に入射する光のなかから共鳴波長を選択して取り出すことを特徴としている。
図26は、従来技術2に係る反射率可変波長選択フィルタの概念図であり、共鳴格子膜としてサブ波長構造が形成されたシリコン(Si)自立膜202がエアギャップ(g)を挟んでSi基板201上に平行配置されている。サブ波長構造に入射したある特定の波長(共鳴波長)はSi周期構造と強く結合し、透過波を発生しない。従って狭帯域反射フィルタとして機能する。この条件を満たすサブ波長構造をGuided Mode Resonance Grating(GMRG)と呼ぶ。Si自立膜−基板間に電圧を印加することにより静電引力が発生し、Si自立膜が基板方向へ引き付けられる。ギャップ(g)が狭くなると基板との相互作用が強くなり、反射率が変化する。この光フィルタは波長分割多重(WDM)通信の光スイッチにおける波長選択に利用できる。
【0010】
従来技術3の光学素子は、上下に重ねて配置した2枚の微細格子を有し、格子はSi製で、2枚の格子間が300nmの隙間を持つ構成であり、2枚の格子を静電気力により駆動する。上側の格子がわずかに横方向に変位すると反射光の光強度が大きく変化し、これを反射率の最大値で規格化すると、25%程度の変化が現れる。この反射光強度の変化を測定することにより、10nm程度の変位が検出できる。図27は、従来技術3に記載の光学素子を斜め上方から見た電子顕微鏡写真を複写したものであり、中央の微細格子210が静電気力により可動し、この格子の下側に固定された微細格子が配置されている。上下の櫛歯状の構造211,212は静電気力により微細格子を左右に振動させる機構である。
【0011】
さらに、MEMS技術を用いた代表的な光制御素子として、従来技術4の「空間変調器」が提案されている(特許文献3参照)。
この従来技術4では、より効率的なリセット動作等、DMDの性能を向上することを課題としており、増加した性能パラメータを有するDMD型の空間光変調器である。図28は上記空間変調器の概略構成図である。この空間変調器は、画素ミラー(高架ミラー)330がヨーク332によって支持され、高架ミラー330と高架アドレス電極350,352の間と、ヨーク332と下部アドレス電極326,328の間に電子静電引力374,378,382,384が生じる。その結果、画素ミラー30は、従来の世代のデバイスに比べ、高アドレス・トルク、高ラッチ・トルク、高い復元力、及びより大きなマージンを達成する。基板アドレス電極326,328上のヨーク332の近接により、大きな引力が実現され、画素はアドレス・アップセットに感度が低く、より小さなリセット電圧を必要とし、スイッチスピードをより早める。
【0012】
また、電気光学効果および非線形光学効果による屈折率変化を利用することにより、実質的な微細構造間の距離を変化させ反射光または透過光強度を変調し、光導波制御、スイッチング、偏光分離などを行うデバイスとして、従来技術5、従来技術6の光学素子、光学装置、光学デバイスが提案されている(特許文献4、特許文献5参照)。
従来技術5では、複数の波長(周波数)の光信号を同時に選択できることが可能な波長可変機能を有する光学素子及びそれを用いた光学装置を提供することを課題としている。
図29は光学装置の一例である多チャンネルフィルタの概略図であり、符号401,402は光学媒体、403は欠陥、4041〜404nは欠陥導波路、501は固定基板、502は移動基板である。この多チャンネルフィルタは、屈折率の異なる領域が繰り返されて配置されている構造(フォトニック結晶)を用いた光学素子を複数個(W1、W2、・・・、Wn)配置して、機械的、電気的、熱的、及び材料的機構によりフォトニック結晶の繰り返しの間隔や屈折率を変化させることにより、複数の光学素子が対象とする波長を同時に変化させる。
【0013】
従来技術6では、対象波長以下の周期を持つ凹凸形状からなる微細周期構造を有する光学素子において、特定領域に一定電界を印加でき、安定した屈折率変化が可能な光学素子を提供することを課題としている。
図30は光学素子の断面図であり、基板602とこの基板602に形成された微細周期構造603とを有する光学素子601であって、凹凸形状の凹部603aに電圧が印加される導電性部材604を充填することで、凸部603b部分に大きな電界を印加することができ、凸部603bに設けた電気光学効果を有する材料に、大きな電気光学効果を生じさせることができ、これにより、屈折率を大きく変化させることができるようにしている。これにより、電気光学効果を用いた小型の光変調器、光アッテネータ等を実現でき、さらには、微細周期構造603全体若しくは一部に、選択的に一定の電界を印加することが可能となり、小型の光ルータ、光偏向器等も実現可能となる。
【0014】
【特許文献1】特開2000−19472号公報
【特許文献2】特開2005−331581号公報
【特許文献3】特開平8−334709号公報
【特許文献4】特開2004−328102号公報
【特許文献5】特開2004−317540号公報
【特許文献6】特開2005−158191号公報
【非特許文献1】OplusE Vol.27,No.1(Laser Focus World,Dec.2004より転載)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従来技術1に示す光学特性可変光学素子は、外部電界、磁界、温度を加えることにより液晶分子の配向を制御し、光学応答特性を変化させている。ここで、電極の配置により配向変化の高速化を図っているが、配向変化の速度は液晶層の粘性による限界があり、十分な高速化は期待できない。さらに、液晶分子の配向された状態とランダムな状態の間の相転移温度があり、高輝度のプロジェクタなど、投射型表示素子での光量に制限がある。また、液晶分子や配向膜は有機材料により構成されるため、熱的なダメージを受ける可能性があり、必要な耐光性や耐熱性が得られないといった課題がある。また、カラーの表示装置として利用する場合には、RGBの3色に分離して使う必要があり、光学素子数の増加や、小型化が困難であるといった課題がある。
【0016】
従来技術2は、MEMS技術を利用し、Siにより作製されたサブ波長構造をもつ格子と基板との距離を静電気力により変化させることにより、波長選択と反射率の可変性を有する光フィルタを実現している。しかし、この光フィルタは、通信技術への応用を目指したものであり、可視光領域の光学デバイスには利用できない。また、共鳴波長以外は損失となるため光利用効率が低いといった課題がある。
【0017】
従来技術3に示すナノ変位センサーは、MEMS技術により、波長程度の微細な格子2枚を静電気力により変位させることにより、ナノサイズの変位を測定することを可能にしている。しかしながら、変位量が小さくなると反射率の差異を読み取ることが困難となり、十分な感度が得られない場合がある。また、変位部分が自立中空構造を有しており、使用環境などの影響を受け易い。
【0018】
従来技術4に示す空間光変調器は、代表的なDMD型の空間光変調器であるが、RGBの3色の波長を時間的に分割して利用するため、高い光利用効率を実現することはできない。また、可動部分が存在するために、摩擦による劣化の問題を避けられない。また、デバイス構造に依存した共振周波数で走査するため、その動作速度に固有の制限がある。
【0019】
従来技術5、6は、本発明に係る光制御素子に類似した素子構成を有しているが、いずれも光通信技術における波長選択性をもつ光導波制御、スイッチング、偏光分離に関連するものであり、2次元的な周期構造体内を伝搬する光波を対象としたものである。また、使用する光は1.5μm帯の通信波長であるため、表示装置、測定装置等へ応用することはできない。
【0020】
以上のような従来技術の課題に対し、本発明は以下のような目的を持ってなされたものである。
本発明の第1の目的は、耐光性、耐熱性が高く、光応答特性を高速に制御することが可能な光制御素子を提供することにある。
本発明の第2の目的は、上記の光制御素子において、物理的に特性を変化させることが可能な具体的な材料を提供することにある。
本発明の第3の目的は、上記の光制御素子を実現するために利用する具体的な金属材料を提供することにある。
本発明の第4の目的は、上記の光制御素子において、所望する光応答特性を実現するための金属微小構造体の具体的な配置を提供することにある。
本発明の第5の目的は、上記の光制御素子を用いた表示装置の具体的な構成を提供することにある。また、光学素子数を低減できる表示装置を提供することにある。
本発明の第6の目的は、上記の光制御素子を用いた高感度な応力測定装置の具体的な構成を提供することにある。また、作製が容易であり、且つ高感度を得られる応力測定装置の具体的な構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記の目的を達成するため、本発明では以下のような技術的手段を採っている。
本発明の第1の手段は、光制御素子であって、物理的に特性を変化させることが可能な材料からなる基板または膜と、入射する光の波長以下のサイズをもつ金属微小構造体を有し、複数個の前記金属微小構造体の組み合わせを単位とした集合構造体を、前記基板または前記膜の上部または内部に設けた構造を有することを特徴とする。
【0022】
本発明の第2の手段は、第1の手段の光制御素子において、前記基板または前記膜が、電圧を印加することにより屈折率の変化を生じる材料により構成されることを特徴とする。
また、本発明の第3の手段は、第1の手段の光制御素子において、前記基板または前記膜が、光を照射することにより屈折率の変化を生じる材料により構成されることを特徴とする。
さらに本発明の第4の手段は、第1の手段の光制御素子において、前記基板または前記膜が、電圧を印加することにより変形を生じる材料により構成されることを特徴とする。
【0023】
本発明の第5の手段は、第1乃至第4のいずれか1つの手段の光制御素子において、前記集合構造体が、2個以上の金属微小構造体を単一または複数の軸上に配列した構造を有し、該集合構造体が全て等しい配向を有して配置されていることを特徴とする。
また、本発明の第6の手段は、第1乃至第5のいずれか1つの手段の光制御素子において、前記金属微小構造体が、入射する光の波長に対してプラズモンを励振できる単一または複数の金属材料により構成されることを特徴とする。ここで、上記のプラズモンとは、金属材料中の電子の集団運動を意味している。
【0024】
本発明の第7の手段は、表示装置であって、光制御手段として第1乃至第6のいずれか1つの手段の光制御素子を用い、白色光源もしくは、赤、緑、青(以下、RGBと記す)の3色の波長を有する光源(例えば3色の発光ダイオード(LED)等)と、前記RGBの各波長に対して前記基板または前記膜の物理的特性を変調することにより前記光制御素子の前記RGBの各波長の光に対する透過率を変調する外部変調手段とを少なくとも備えることを特徴とする。
【0025】
本発明の第8の手段は、応力測定装置であって、光制御手段として第1乃至第6のいずれか1つの手段の光制御素子を用い、単色光源と、前記光制御素子を変調する外部変調手段と、変形または変位により生じる金属微小構造体間の相対的な位置関係の変化を偏光状態の変化として検出する偏光検出手段とを少なくとも備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明の第1、第2の手段に係る光制御素子においては、物理的に特性を変化させることが可能な材料として例えば電気光学効果を有する材料からなる基板または膜を用い、基板または膜の上部または内部に第5、第6の手段の構成を有する金属微小構造体を配置することにより、外部電圧制御手段を介して、本光制御素子の光応答特性を高速に制御することが可能となる。また、本光制御素子は無機材料により構成されており、耐光性、耐熱性の優れた素子を実現することができる。また、可動部分を持たない光制御素子を実現することができる。
【0027】
本発明の第1、第3の手段に係る光制御素子においては、物理的に特性を変化させることが可能な材料として例えば非線形光学効果を有する材料からなる基板または膜を用い、基板または膜の上部または内部に第5、第6の手段の構成を有する金属微小構造体を配置することにより、外部電圧制御手段を介して、本光制御素子の光応答特性を高速に制御することが可能となる。また、本光制御素子は無機材料により構成されており、耐光性、耐熱性の優れた素子を実現することができる。また、可動部分をもたない光制御素子を実現することができる。
【0028】
本発明の第1、第4の手段に係る光制御素子においては、物理的に特性を変化させることが可能な材料として例えば電歪効果を有する材料からなる基板または膜を用い、基板または膜の上部または内部に第5、第6の手段の構成を有する金属微小構造体を配置することにより、外部電圧制御手段を介して、本光制御素子の光応答特性を高速に制御することが可能となる。また、本光制御素子は無機材料により構成されており、耐光性、耐熱性の優れた光制御素子を実現することができる。
【0029】
本発明の第7の手段の表示装置においては、光制御手段として第1乃至第6のいずれか1つの手段の光制御素子を用い、該光制御素子をRGBの3色の波長の光に対して設け、また、各波長の光を空間的に制御する外部光変調手段を備えることにより、各波長の光を時間的または空間的に分離することなく利用することができており、光利用効率の高い表示素子を実現することができる。また、本光制御素子は、波長フィルタと波長板の両機能を備えているので、表示装置の光学素子数を低減することができる。
【0030】
本発明の第8の手段の応力測定装置においては、光制御手段として第1乃至第6のいずれか1つの手段の光制御素子を用い、起歪体上に本発明の光制御素子を構成し、外部より電気的または光学的に変調を施すことにより、応力により微小な変形を高感度に検出することができる。また、複雑な形状を有さないことから、作製が容易であり、且つ高感度な応力測定装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の構成、動作および作用効果を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例】
【0032】
[実施例1]
本実施例は、前述の第1、第2、第5、第6の手段に係る光制御素子に関するものである。
本実施例の光制御素子に関して、図1〜9に基づいて説明する。図1は、本実施例の光制御素子の一構成例を説明する光制御素子の断面図である。図1に示すように、本光制御素子は、電圧を印加することにより屈折率が変化する材料、すなわち電気光学効果を有した電気光学結晶を基板材料に用い、この電気光学結晶基板1の上に、光の波長以下のサイズをもつ金属微小構造体2を有し、複数個の金属微小構造体2の組み合わせを単位とした集合構造体3を設けた構成を有している。また、電気光学結晶の屈折率を制御するために、電気光学結晶基板1の上部と下部に薄膜電極5,6を配置し、外部に電圧制御手段7を有している。本光制御素子は透過光に対し、強度および偏光状態を制御するため、透過面側の電極は透明導電材料からなる透明薄膜電極とする必要がある。また、反射型の光制御素子として利用する場合には、下部側の薄膜電極6は金属材料を用いることができる。
【0033】
本光制御素子では、金属微小構造体2の酸化や劣化を防ぐため、また、金属微小構造体2に励振されるプラズモン(金属材料中の電子の集団運動)に共鳴する光の波長を選択するため、金属微小構造体を被膜する透明な保護膜4を設けることが好ましい。また、透明導電材料により被膜することで、電極と保護膜を兼ねることもできる。なお、図1では、金属微小構造体2を配した側から光を入射しているが、電気光学結晶基板1側から光を入射する構成であっても構わない。
【0034】
次に図2および図3は、本実施例の光制御素子を実現する別の構成例を説明する図である。
図2は、金属微小構造体2の集合構造体3を電気光学結晶基板1の内部に埋め込んだ構造を有しており、電気光学結晶基板1を挟んだ両面に透明薄膜電極5,6を有している。
図3は、透明な支持基板9上に、透明導電材料による透明薄膜電極6、金属微小構造体2の集合構造体3、電気光学効果を示す薄膜(電気光学結晶被膜)8、透明導電材料による透明薄膜電極5を順に積層または加工した構成を有している。
図2と図3は透過型の光制御素子について説明しているが、反射型の光制御素子としても利用することができ、その場合は金属材料などの不透明な導電性材料を電極として利用できる。図1、図2、図3のいずれの構成の場合も、電圧制御手段7で薄膜電極5,6間に電圧を印加することにより、金属微小構造2に接触または金属微小構造体2を被覆する基板または膜の屈折率を、電気光学効果を利用して変調し、透過または反射する光の状態を制御することが可能となっている。
【0035】
次に本実施例の光制御素子の各構成要素に使用する材料について説明する。図3に示す支持基板9は、透過型の素子を構成する場合には、高効率化のために可視領域の波長において吸収の低い材料が好ましく、石英ガラスや、BK7、パイレックス(登録商標)などの硼珪酸ガラス、CaF2、Si、ZnSe、Al2O3などの光学結晶材料などを利用する。また、反射型の素子を構成する場合には、反射率の高い材料が好ましく、上記の光学ガラス、光学結晶材料に、AlやAuなどの金属膜コーティングを施す。この際の膜厚は、金属中に光がしみ込む表皮深さよりも厚くする必要があり、30nmから100nm程度の膜厚とする。また、誘電体多層膜による全反射コーティングを施したものであっても良い。また、透過光と反射光の両方を利用するビームスプリッタなどとして利用する場合には、部分反射膜としてCrコーティングなどを利用する。
【0036】
薄膜電極5,6は、透過型の光制御素子の場合には透明である必要があり、また、吸収率の低い材料が好ましい。このような透明な導電性材料には、ITO、SnO2、IZO、ZnO、導電性ポリマーなどが利用できる。また、反射型の光学素子を構成する場合には、Au、Al、Cu、Cr、Mo、もしくはこれらの合金などの金属材料や、Si、Geなどの半導体材料が利用できる。これらの導電性薄膜は、スパッタ法、蒸着法、スピンコートなどの塗布法等で製膜することができる。
【0037】
電気光学結晶基板1または電気光学効果を示す膜(電気光学結晶被膜)8に用いる材料は、強誘電体材料であり、BBO、LiTaO3、KTB、LiNb3、LiNbO3、KTB、KTP、KTNなどの無機結晶、PZT、PLZTなどのセラミックス、アゾ系色素、スチルベンゼン系色素などの有機分子または有機結晶が利用できる。基板として用いるには、研磨により平滑化する。電気光学効果を示す材料の製膜方法としては、エピタキシャル成長を用いる方法や、エアロゾルデポジッション法と呼ばれる常温衝撃固化現象が利用できる。
【0038】
金属微小構造体2は空気中に剥き出しになっている必要はなく、金属微小構造体2の劣化を防ぐために、むしろ図1に示すような誘電体による保護膜4等を有しているほうが好ましい。また、金属微小構造体2を被覆する材料の光学定数(屈折率、消衰係数)に依存して金属微小構造体内部に励起されるプラズモンの共鳴波長がシフトするため、特定の波長の光を選択的に制御する、波長選択フィルタとしての機能も有する。保護膜4となる誘電体材料は吸収の少ないものが適しており、ZnS−SiO2などの光記録媒体の保護膜として利用される遷移金属酸化物などが利用できる。保護膜の作製は、スパッタ法やCVD法等を用いて行う。
なお、保護膜を設ける代わりに、図2に示すように、金属微小構造体2を電気光学結晶基板1の内部に埋め込んで薄膜電極5で覆う構造としてもよく、また、図3に示すように、金属微小構造体2を電気光学結晶被膜8で被覆する構造としてもよい。
【0039】
本実施例の光制御素子は、金属微小構造体中の電子の集団運動、すなわちプラズモンを介在することにより、透過光または反射光を制御する。したがって、金属微小構造体2を構成する金属材料は、可視光領域でプラズモンを効率良く励振できる必要がある。また、プラズモンは特定の波長の光により共鳴的に励振されるため、金属材料の選択の仕方により、光制御素子の稼動範囲を選択することができる。可視光領域でプラズモンを効率良く励振できる金属材料としては、Ag、Pt、Al、Cuなどが利用できる。
【0040】
このような金属微小構造体および集合構造体の作製は、様々な加工方法により可能である。電子ビームリソグラフィ技術を用いた方法や、DUV(遠紫外線)・EUV(深紫外線)リソグラフィ技術による一括露光を行う方法、モールドと呼ばれる型を用い、熱をかけて押し付けるナノインプリント技術などが利用できる。また、本出願人が先に出願した参考技術「光記録媒体の製造方法および光記録媒体」(特許文献6参照)に示すような、相変化材料や遷移金属酸化物材料にレーザー光を照射することにより、材料特性を変化させ、エッチングレートの違いを利用してエッチングする手法を利用することができる。
【0041】
次に本実施例の光制御素子の動作原理と、複数の金属微小構造体の配列方法について、数値計算結果を元に説明する。数値計算は、電磁界の運動を記述するマクスウェル方程式を時空間の差分方程式に近似して解く、有限時間領域差分法(FDTD法)を用いて行った。図4は、数値計算に使用したモデルを表しており、金属微小構造体2として、空気中に存在するサイズ(直径)が40nmの二つのAu球における近接する端部の間隔Dを0〜80nmまで変化させた場合の、反射遠方場における偏光状態の変化を調べた。Auの光学定数は、屈折率n=0.072、k=1.496を用いた。この値は、Auのプラズモン共鳴波長近傍である500nmの波長をもつ光に対する誘電率を、金属中の電子運動方程式から導出したDrudeモデルを適用することにより得られた値である。
【0042】
FDTD法により得られた金属微小構造体(Au)2の集合構造体(二つのAu球)の近傍の電界分布から遠方場光の特性を得るために、電界分布のフーリエ変換により角度θ=0°の成分を抽出し、図4に示すx方向とy方向の振幅比と位相差を算出した。40nmのAu微小球のプラズモン共鳴波長近傍である波長544nmを用い、図4に示すxy面内においてx軸から45°の方向に電界の振動方向をもつ平面波を照射する計算を行った。
【0043】
図5に示すグラフは金属微粒子間距離に対する振幅比を表しており、金属微粒子間距離Dが大きな領域においては振幅比が1に近づき、偏光面(電界の振動方向)が入射光の偏光方向と一致していることがわかる。これに対し、D=0近傍に近づくにつれて、振幅比が増加し、すなわち偏光面がy方向へ傾く。
一方、図6は金属微粒子間距離に対する電界のx成分とy成分の位相差を表している。金属微粒子間距離Dがゼロに近づくほど、位相差が大きくなり、D=0の場合に位相差が45°程度となる。FDTD法によるシミュレーションの結果から、Au球の間隔を制御することにより、偏光面を回転させることができ、また、偏光状態を、例えば直線偏光から楕円偏光に変換することが可能であることが確認できた。
【0044】
したがって、本実施例の光制御素子は、金属微小構造体2の相対的な位置関係を選択することにより、位相板ないしは偏光板として機能させることができる。また、金属材料としてAg微小球を使用した場合にも、同様の計算結果が得られるが、この場合、偏光状態に変化の生じる波長領域はAg球のプラズモン共鳴波長近傍である波長400nm近傍であった。
【0045】
上述の数値計算結果から分かるように、二つの金属微小構造体2が近接してくると、金属微小構造体2のサイズ程度に局在して分布する近接場光と呼ばれる電磁場を介在して、二つの金属微小構造体2が相互作用を生じ、この相互作用の大きさが、金属微小構造体2の配列の向きと入射する偏光の向きが平行は場合と垂直な場合とで異なるために、透過光または反射光に異方性が生じてくる。この効果は、金属微小構造体内に励振されるプラズモンの共鳴周波数近傍で最大となる。金属微小構造体2のサイズおよび形状は、プラズモンの共鳴波長を決定するものであり、これらは二つの金属微小構造体2において一致しているならば、どのようなサイズ、形状であっても構わない。
【0046】
図7は、金属球のサイズに対するプラズモンの共鳴波長の変化を調べるために、ミー散乱理論により解析的に計算した空気中に配置された単一Au球の中心部における電界強度を波長に対してプロットした図である。Au球の半径が5nm程度になると、ほとんどサイズには依存しなくなるが、半径25nmの場合と比較して約25nm程度の共鳴波長のシフトが生じ、サイズの増加に伴って電界強度が増強されることが確認された。共鳴波長のシフトと電界強度の増強は、金属材料や誘電体薄膜材料にも依存する。電界強度の増強はAu微小球の体積に比例した電気双極子モーメントの増大を意味しており、その結果、近接場光による相互作用も増強される。したがって、金属微小構造体2のサイズを変えることにより、本光制御素子の偏光制御特性および動作波長を制御することが可能である。また、金属微小構造体間のサイズのばらつきは、使用する金属微小構造体のサイズに依存するが、図7から、半径15nm以下のドットであれば、プラズモンの励振される領域の重なりは十分に大きく、特に考慮する必要はない。逆に、半径20nmを越える金属微小構造体を利用する場合は、およそ5nm以下の精度で半径が揃っている必要がある。また、ドットのサイズが10〜100nmの範囲にあれば、偏光特性の変化が観測できることも確かめられている。
【0047】
図8(a),(b)は、金属微小構造体2の形状の例を示した図である。金属微小構造体2の形状またはサイズが揃っていれば、図8(a)のように円柱形状のドット(金属微小構造体)2が二つ組み合わさった集合構造体3により構成されていてもよいし、図8(b)のように半球状のドット(金属微小構造体)2が二つ組み合わさった集合構造体3により構成されていてもよい。金属微小構造体2が形状に強く依存していないことは、加工精度に余裕をもたせることができ、素子を作製する上で有利な特性である。
【0048】
また、三つ以上の金属ドット(金属微小構造体)2を配置した構成を取ることもできる。図9(a),(b)は三つの金属ドット(金属微小構造体)2の配置例を説明する図であり、L字またはV字構造に配置した例を示している。この場合、金属ドットが配列する二本の軸に対して、それぞれ異なった位相差と振幅差が生じ、三つの金属ドットの配置に依存した偏光特性が得られる。また、二本の軸の交差する角度θが小さな場合には、さらにもう一対の金属ドット同士に相互作用が生じ、三本の軸に対し、それぞれ偏光特性が定まる。金属ドットの数を増やすことにより、さらに高度な偏光特性の制御が可能となる。
【0049】
本実施例の光制御素子においては、上述の金属微小構造体2による集合構造体3が、光を照射される面内に均一に設けられている必要がある。本実施例の光制御素子の集合構造体の配置例について、図10により説明する。図10(a)は、電気光学結晶基板1(または電気光学結晶被膜、あるいは保護膜)の上または内部に、二つの金属ドット(金属微小構造体)2により構成される集合構造体3を、正方格子状に配列したものである。ここで、隣接する集合構造体3の間隔は、入射する光の半波長よりも小さいものとする。この条件により、本実施例の光制御素子に作用した光を遠方で観測した場合に、光の干渉による影響が現れない。また、図10(b)に示すように、間隔を半波長程度とし、ストライプ状に配列することにより、回折格子と偏光制御機構を併せもつ光制御素子を実現することもできる。また、より高密度化するには、図10(c)に示すように、六方格子状に配置する。このように高密度化することにより、入射光と金属微小構造体2との相互作用の頻度が増し、偏光状態の変化をより強めることができる。また、集合構造体3は、図10(d)に示すように、集合構造体3の配向が揃っていれば、平面上にランダムに分布していてもよい。これは、光制御素子の作製精度を緩和することができ、低コスト化を図ることができる。
【0050】
本実施例で示した光制御素子に電圧制御手段7により電圧を印加すると、電圧の大きさに応じて電気光学結晶基板1または電気光学効果を示す膜(電気光学結晶被膜)8の屈折率が変化する。金属微小構造体2は電気光学結晶基板1または電気光学結晶被膜8に接して配置されており、屈折率が変化することは、光の伝達速度が変わり、実効的に金属微小構造体間の距離が変化することに相当する。したがって、外部より金属微小構造体間の距離を制御することができ、しいては、入射光の偏光状態を制御することが可能となる。これが、本実施例の光制御素子の駆動原理である。
【0051】
本実施例の光制御素子は、電気光学効果による微小な屈折率変化に対し、極めて敏感に偏光状態を変化させる。したがって、低い印加電圧で効率良く光制御が実現できる。また、金属微小構造体2にはプラズモン共鳴にともなう波長選択性があり、特定の波長に対してのみ偏光状態を制御することが可能となっている。また、電気光学効果の時間応答は極めて早く、高速の光制御が可能となっている。
【0052】
[実施例2]
本実施例は、前述の第1、第3、第5、第6の手段に係る光制御素子に関するものである。
本実施例の光制御素子に関して、図11〜図13に基づいて説明する。図11〜図13は、本実施例の光制御素子の構成例を説明するための光制御素子の断面図である。基本的な構成は、図1〜図3に示した第一の実施例と同様であるが、電気光学結晶基板または膜の代わりに、光を照射することにより屈折率が変化する非線形光学材料を基板または膜として利用する。
【0053】
図11は透過型の光制御素子の例であり、非線形光学材料基板10(または非線形光学材料被膜)の上部に金属微小構造体2の集合構造体3を設けた構成となっている。金属微小構造体2を構成する位置は、第一の実施例と同様に、非線形光学材料基板10の上部に設けられた構成の他、図12に示す構成例のように、非線形光学材料基板10の内部に埋め込まれた構成、図13に示す構成例のように、非線形光学材料による膜11に覆われた構成のいずれであっても構わない。図13の構成例では、非線形光学材料による膜11を形成するため、ならびに金属微小構造体2を固定された位置に配置するために、支持基板12が必要である。支持基板12は、透過型の光制御素子では、第一の実施例で述べたように、透明なガラス材料、光学結晶材料を用いる。
【0054】
本実施例の光制御素子では、非線形光学効果を制御するために、外部に入射する光の波長とは異なる波長を有する制御用光源を備えている。反射型の光制御素子として利用する場合には、非線形光学材料基板10(または非線形光学材料被膜)の下部に金属薄膜や誘電体多層膜構造を設ける。さらに、図11や図12の構成例では、金属微小構造体2の酸化や劣化を防ぐため、また、金属微小構造体2に励振されるプラズモンに共鳴する光の波長を選択するため、金属微小構造体2を被膜する透明な保護膜4を設けることが好ましい。また、図13の構成例のように、非線形光学材料により被膜11することで、屈折率制御と保護膜の機能を兼ねることもできる。なお、図11〜図13の構成例では、金属微小構造体2を配した側から光を入射しているが、非線形光学材料基板10(または非線形光学材料被膜)や、支持基板12の側から光を入射する構成であってもよい。
【0055】
非線形光学材料には、入射する光の強度に対して二次または三次の非線形定数を有する材料が利用できる。高効率で屈折率を変化させるためには大きな非線形定数を有する材料が適しており、二次の非線形光学効果を利用する場合は、二次の非線形定数が0.01pm/V以上、より好ましくは二次の非線形定数が1pm/V以上であるとよい。または、三次の非線形光学効果を利用する場合には、三次の非線形光学定数が0.01×10−22m2/V2以上であり、より好ましくは三次の非線形定数が1×10−22m2/V2以上の材料であるとよい。このような材料には、3元素の結晶であるBBO、LBO、BIBO結晶、4元素の結晶であるKTP、KDP結晶などの無機結晶がある。また、半導体量子井戸構造を用いることにより大きな非線形定数を得ることができる。このような材料としては、Ga、In、Al、As、P、N、Sb、Zn、SeによるIII−V族、II−VI族半導体混晶が利用できる。非線形光学材料の加工および製膜は、研磨による方法や、スパッタ法を用いた堆積、CVDやエビタキシャル成長法といった結晶成長技術を用いた方法により行う。
【0056】
金属微小構造体2およびその集合構造体3は、第一の実施例に記載したものと同様であり、入射する光の波長に対して十分に小さい必要があり、好ましくは10〜100nmのサイズであればよい。また、金属微小構造体2は、図4〜図8を参照して説明したように、二個を一定の方向に配列し、その間隔を調整することにより所望する偏光状態を得るものでも良いし、図9に示したように、三個以上をL字、V字構造等に間隔を調整して配列し、所望する偏光状態を得るものでもよい。集合構造体3の配置についても、第一の実施例に記載したもの(図10)と同様であり、正方格子、六方格子、ストライプ、ランダムな配置などとする。金属微小構造体2を構成する材料は、可視光領域でプラズモンを励振する金属材料で、Au、Ag、Pt、Al、Cuなどが利用できる。作製方法は、第一の実施例で示した、電子ビームリソグラフィ技術を用いた方法や、DUV(遠紫外線)・EUV(深紫外線)リソグラフィ技術による一括露光を行う方法、モールドと呼ばれる型を用い、熱をかけて押し付けるナノインプリント技術による方法、エッチングレートの違いを利用してエッチングする手法などが利用できる。
【0057】
第一の実施例と同様に、金属微小構造体2は空気中に剥き出しになっている必要はなく、金属微小構造体2の劣化を防ぐために、図11や図12に示すように、むしろ誘電体による保護膜4を有しているほうが好ましい。また、金属微小構造体2を被覆する材料の光学定数(屈折率、消衰係数)に依存して金属微小構造体内部に励起されるプラズモンの共鳴波長がシフトするため、特定の波長の光を選択的に制御する、波長選択フィルタとしての機能も有する。保護膜4となる誘電体材料は吸収の少ないものが適しており、ZnS−SiO2などの光記録媒体の保護膜として利用される遷移金属酸化物などが利用できる。保護膜の作製は、スパッタ法やCVD法を用いて行う。なお、保護膜を設ける代わりに、図13に示すように、金属微小構造体2を非線形光学材料被膜11で被覆する構造としてもよい。
【0058】
次に本実施例の光制御素子における、光制御の原理について説明する。外部に設けた非線形光学効果制御用の図示しない光源により制御光(変調光)の強度を変化させることにより、非線形光学材料の屈折率が変化する。金属微小構造体2は、非線形光学材料からなる基板または膜に接して配置されており、屈折率の変化は、実効的に金属微小構造体間の距離を変化させることになり、隣接して配置された複数の金属微小構造体間の近接場光を介在した相互作用の強さに変化が生じる。その結果、金属微小構造体間に働く近接場相互作用の大きさが、金属微小構造体2の配置と入射する光の偏光方向に依存して変化し、透過光または反射光に偏光の異方性が現れる。偏光の異方性は、非線形光学材料の屈折率変化に対して、極めて敏感であり、制御光の強度により、偏光状態をアクティブに制御することができる。
【0059】
なお、非線形光学材料の屈折率制御に利用する光源は、非線形性を強く生じる波長であり、且つ入射光(信号光)と分離される必要があることから、金属微小構造体のプラズモン共鳴周波数から十分に離れた波長の光を利用する。
【0060】
本実施例の光制御素子は、非線形光学効果による微小な屈折率変化に対し、極めて敏感に偏光状態を変化させる。したがって、高効率光制御が可能となっている。また、金属微小構造体2にはプラズモン共鳴にともなう波長選択性があり、特定の波長に対してのみ偏光状態を制御することが可能となっている。また、非線形光学材料を使うことにより、電気的な配線が不要であり、極めて簡単な構成で光制御が実現できる。
【0061】
[実施例3]
本実施例は、前述の第1、第4、第5、第6の手段に係る光制御素子に関するものである。
本実施例の光制御素子に関して、図14に基づいて説明する。図14は、本実施例の光制御素子の構成例を説明するための光制御素子の断面図である。基本的な構成は、図1に示した第一の実施例と同様であるが、電気光学結晶基板または膜により屈折率を電気的に変調する代わりに、電圧を印加することにより変形(伸縮)を生じる電歪材料を利用する。図14は透過型の光制御素子の例であり、透明な支持基板14上に電歪材料膜13を設けたものを基板とし、基板上に金属微小構造体2の集合構造体3を設けた構成となっている。また、電歪材料膜13の変形量を制御するために、外部に電圧制御手段7を備えている。
【0062】
反射型の光制御素子として利用する場合には、不透明な電歪材料膜13を用いることができる。また、電歪材料膜13を形成した支持基板14の下部に金属薄膜や誘電体多層膜構造を設けてもよい。金属微小構造体2の酸化や劣化を防ぐため、また、金属微小構造体2に励振されるプラズモンに共鳴する光の波長を選択するため、金属微小構造体2を被膜する透明な保護膜4を設けることが好ましい。なお、図14に示す構成例では、金属微小構造体2を配した側から光を入射しているが、電歪材料膜13を形成した支持基板14の側から光を入射する構成であってもよい。
【0063】
電歪材料は、低電力で変形を生じる材料が適しており、水晶、ZnO、LiNbO3、LiTaO3、Li2B4O7、AlNなどの無機結晶が利用できる。また、チタン酸ジルコン酸鉛などのセラミックス材料や、ロッシェル塩、トルマリン(電気石)などの有機結晶が利用できる。電歪材料の加工および製膜は、研磨による方法や、スパッタ法を用いた堆積、CVDやエビタキシャル成長法といった結晶成長技術を用いた方法により行う。
【0064】
金属微小構造体2およびその集合構造体3は、第一の実施例に記載したものと同様であり、入射する光の波長に対して十分に小さい必要があり、好ましくは10〜100nmのサイズであればよい。また、金属微小構造体2は、図4〜図8を参照して説明したように、二個を一定の方向に配列し、その間隔を調整することにより所望する偏光状態を得るものでも良いし、図9に示したように、三個以上をL字、V字構造等に間隔を調整して配列し、所望する偏光状態を得るものでもよい。集合構造体3の配置についても、第一の実施例に記載したもの(図10)と同様であり、正方格子、六方格子、ストライプ、ランダムな配置などとする。金属微小構造体2を構成する材料は、可視光領域でプラズモンを励振する金属材料で、Au、Ag、Pt、Al、Cuなどが利用できる。作製方法は、第一の実施例で示した、電子ビームリソグラフィ技術を用いた方法や、DUV(遠紫外線)・EUV(深紫外線)リソグラフィ技術による一括露光を行う方法、モールドと呼ばれる型を用い、熱をかけて押し付けるナノインプリント技術による方法、エッチングレートの違いを利用してエッチングする手法などが利用できる。
【0065】
第一の実施例と同様に、金属微小構造体2は空気中に剥き出しになっている必要はなく、金属微小構造体2の劣化を防ぐために、図14に示すように、むしろ誘電体による保護膜4を有しているほうが好ましい。また、金属微小構造体2を被覆する材料の光学定数(屈折率、消衰係数)に依存して金属微小構造体内部に励起されるプラズモンの共鳴波長がシフトするため、特定の波長の光を選択的に制御する、波長選択フィルタとしての機能も有する。保護膜4となる誘電体材料は吸収の少ないものが適しており、ZnS−SiO2などの光記録媒体の保護膜として利用される遷移金属酸化物などが利用できる。保護膜の作製は、スパッタ法やCVD法を用いて行う。
【0066】
次に本実施例の光制御素子における、光制御の原理について説明する。外部に設けた電圧制御手段7により、印加電圧を変化させることにより、電歪材料膜13は変形(伸縮)を生じる。図14では、電歪材料膜13に平行な方向に電圧が印加される構成であり、電歪材料膜13は、支持基板14に平行な方向に伸縮する。したがって、金属微小構造体間の距離を変化させることになり、金属微小構造体間に働く近接場相互作用の大きさが、金属微小構造体2の配置と入射する光の偏光方向に依存して変化し、透過光または反射光に偏光の異方性が現れる。偏光の異方性は、金属微小構造体2の変位に対して、極めて敏感であり、印加電圧を制御することにより、偏光状態をアクティブに制御することができる。
【0067】
本実施例の光制御素子は、電歪材料による微小な変形に対し、極めて敏感に偏光状態を変化させる。したがって、高効率光制御が可能となっている。また、金属微小構造体2にはプラズモン共鳴にともなう波長選択性があり、特定の波長に対してのみ偏光状態を制御することが可能となっている。また、電歪効果の時間応答は極めて早く、高速の光制御が可能となっている。
【0068】
[実施例4]
本実施例例は、前述の第7の手段に係る表示装置に関するものである。
本実施例の光制御素子を用いた表示装置に関して、図15および図16〜図21に基づいて説明する。
図15は、本実施例の表示装置の構成例を説明するための概略構成図である。本実施例の表示装置は、光源(白色光源または、赤(R)緑(G)青(B)の3色の波長をもつLED光源)20と、実施例1〜3で説明した光制御素子の集合により構成される偏光制御素子22および偏光制御素子を制御するための外部光変調手段23と、偏光状態を透過光強度情報に変換するための二枚の偏光板(第1偏光板21および第2偏光板24)と、偏光制御素子22により変調された信号をスクリーン26に表示するための投射光学系25により構成されている。
【0069】
この表示装置に組み込まれる偏光制御素子22は、RGBの各波長に対して作用することから、それぞれの光の波長に対応した三種類の偏光制御素子要素(例えば1/2波長板として機能)22R,22G,22Bが必要であり、図15は、これら偏光制御素子要素22R,22G,22Bを直列に並べた構成を有している。各波長に対する偏光制御素子要素22R,22G,22Bは、それぞれ100μm〜1mm平方程度のサイズをもつ画素に分割されており、各画素は、各偏光制御素子要素22R,22G,22Bに対応する外部光変調手段23R,23G,23Bにより独立に変調される。各画素が実施例1〜3で説明した光制御素子に対応している。
【0070】
光制御素子は、RGBの3色それぞれの波長の光に対して、プラズモン共鳴が生じるように、金属微小構造体を構成する材料ならびに波長選択性を有する保護膜の材料を選択する必要がある。図16〜図21は、これを実現する構成の一例を示した計算結果である。計算は、ミー散乱理論に基づき、半径が5〜25nmのAu金属球またはAg金属球が、代表的な被膜材料で覆われている系について行い、金属球中心部分の電界強度を算出した。被膜材料として用いたのは、空気(屈折率:n=1.0)(図16)、CaF2(n=1.3)(図17)、SiO2(n=1.5)(図18、図19)、ZnO(n=2.1)(図20)、ZnS−SiO2(n=2.3)(図21)である。同一のグラフ中において、5本の曲線a〜eは、半径がa=5nm、b=10nm、c=15nm、d=20nm、e=25nmの場合の計算結果を表しており、長波長側にピークがシフトするほど半径が大きな金属となっている。赤色(R)の光にプラズモンの共鳴条件を合わせるには、Ag金属球をSiO2またはこれに近い屈折率を有する材料により被覆する。緑色(G)の光にプラズモンの共鳴条件を合わせるには、Au金属球をCaF2など屈折率nが1.3程度の材料で被膜する。もしくは、Ag金属球をZnOなどの屈折率nが2.1程度の材料で被膜する。青色(B)の光にプラズモンの共鳴条件を合わせるには、Au金属球をSiO2などの屈折率nが1.5程度の材料で被膜する。もしくは、Ag金属球をZnS−SiO2などの屈折率nが2.3程度の材料で被膜する。これらは、金属微小構造体2のサイズや形状、金属微小構造体2を配置する基板の光学特性、波長選択性を有する保護膜の膜厚などに依存するため、光制御素子の構成に依存して最適化する必要がある。
【0071】
次に本実施例の表示装置の動作原理について説明する。本実施例の表示装置は、二枚の偏光板21,24を直交させて、偏光制御素子22(22R,22G,22B)の前後に配置した構成であり、偏光制御素子22(22R,22G,22B)には第1偏光板21を介して直線偏光が入射される。ここで、外部光変調手段23(23R,23G,23B)により、電圧、制御光、変位が入力された際に、偏光が90°回転するように、金属微小構造体2の間隔や配置を調整しておくと、偏光の向きが変化した成分のみが第2偏光板24を透過することができ、スクリーン26上に結像される。RGBの3色の波長に対し、偏光制御素子22(22R,22G,22B)の各画素に対応する光制御素子でこのON/OFFを制御することにより、スクリーン26上で3色が合成されたカラー画像が形成できる。
【0072】
なお、図15には明記していないが、入射される光は、ランダムな偏光状態を有しており、第1偏光板21により光量の1/2を損失してしまう。これを回避するため、第1偏光板21の前部に反射される偏光成分を回転させて再び入力する偏光変換素子(図示せず)を配置することにより、光利用効率を高め、また高輝度の表示装置を実現することができる。
【0073】
以上のように、本実施例の表示装置は、光制御素子を電気的または光学的な屈折率変化により制御する場合には、可動部分をもたず、極めて高速な動作を実現することができる。光制御素子を電歪材料の変形を利用して制御する場合においても、極めて微小な物理的変化を透過光強度に反映することができ、高速且つ低消費電力動作が可能となる。また、液晶パネルを用いた表示素子のようにRGBの3つの波長を分離して情報処理を行う必要がないため、光学素子数を格段に減らすことが可能となり、生産コストの削減や、表示装置の小型化が可能となる。
【0074】
[実施例5]
本実施例は、前述の第7の手段に係る表示装置に関するものであり、実施例4とは異なる構成によるものである。
本実施例の光制御素子を用いた表示装置に関して、図22、図23に基づいて説明する。図22は、本実施例の表示装置の構成例を説明するための概略構成図である。本実施例の表示装置は、光源30としてRGBの各波長をもつ三つの独立したLED光源30R,30G,30Bと、実施例1〜3で説明した光制御素子の集合により構成される偏光制御素子(例えば1/2波長板として機能)33および偏光制御素子を制御するための外部光変調手段34と、偏光状態を透過光強度情報に変換するための二枚の偏光板(第1偏光板31および第2偏光板36)と、各画素へ光を投入するためのマイクロレンズアレイ32と、各画素を透過した光を合成するコリメートレンズ35と、偏光制御素子33の光制御素子により変調された信号をスクリーン38に表示するための投射光学系37により構成されている。
【0075】
本実施例で実施例4と異なる部分は、図22および図23に示すように、偏光制御素子33が、RGBの3色に対応する三種類の光制御素子33R,33G,33Bを単板上に配列することにより構成されているところである。RGBの3色の波長に対する光制御素子33R,33G,33Bが100μm〜1mm平方程度の領域中に全て配置されたものが、1画素を構成する。各光制御素子33R,33G,33Bは、外部光変調手段34により独立に変調される。各画素を構成する三つの光制御素子33R,33G,33Bのそれぞれが実施例1〜3で説明した光制御素子に対応している。光制御素子を構成する材料は、実施例4で示したものと同様であり、Au、Agなどの金属材料と、CaF2、SiO2、ZnO、ZnS−SiO2などの一般的な被膜材料を、RGBの各波長の光が金属微小構造体中のプラズモン共鳴条件近傍に調整されるように選択する。
【0076】
偏光制御素子33は、RGBの3色の波長に対応する光制御素子33R,33G,33Bが単板上に交互に配列しているため、RGB各波長の光をこれらの光制御素子33R,33G,33Bに分配する必要がある。これは、マイクロレンズアレイ32を用い、各マイクロレンズ32aに入射する入射光の角度をRGBの各波長に対して調整することで実現できる。図23は、図22における1つのマイクロレンズ32aと光制御素子33R,33G,33Bを含む点線部分39を拡大したものであり、入射角に依存したRGB各波長の光の集光状態を説明するための図である。垂直に入射される光は、マイクロレンズ32aの中心に位置する光制御素子33Gに集光される。一方、斜めに入射される光は、焦点位置がマイクロレンズ32aへの入射角度に依存して変化する。したがって、マイクロレンズ32aへの入射角度を変化させることにより、二次元的には配列した3つの光制御素子33R,33G,33Bへ、それぞれ対応した波長の光を導入することができる。
【0077】
本実施例の表示装置の動作原理は、実施例4と同様であり、外部光変調手段34により、電圧、または制御光が入力された際に、偏光が90°回転するように、金属微小構造体の間隔や配置を調整しておくことにより、偏光の向きが変化した成分のみが第2偏光板36を透過することができ、スクリーン38上で3色が合成されたカラー画像が形成される。
【0078】
なお、図22には明記していないが、入射される光は、ランダムな偏光状態を有しており、第1偏光板31により光量の1/2を損失してしまう。これを回避するため、第1偏光板31の前部に反射される偏光成分を回転させて再び入力する偏光変換素子(図示せず)を配置することにより、光利用効率を高め、また高輝度の表示装置を実現することができる。
【0079】
以上のように、本実施例の表示装置は、光制御素子を電気的または光学的な屈折率変化により制御する場合には、可動部分をもたず、極めて高速な動作を実現することができる。光制御素子を電歪材料の変形を利用して制御する場合においても、極めて微小な物理的変化を透過光強度に反映することができ、高速且つ低消費電力動作が可能となる。また、単板でRGBの3つの波長に対する光制御を行っているため、光学素子数を格段に減らすことが可能となり、生産コストの削減や、表示装置の小型化が可能となる。
【0080】
[実施例6]
本実施例は、前述の第8の手段に係る応力測定装置に関するものである。
本実施例の光制御素子を用いた応力測定装置に関して、図24および前述の図16〜21に基づいて説明する。図24は、本実施例の応力測定装置を説明するための概略構成図である。本実施例の応力測定装置は、単色光源40と偏光子41と、実施例1〜3で説明した光制御素子53を備えた変形機構(支持基板51と起歪体52)と、該光制御素子53を制御するための外部変調手段44と、光制御素子53の変形または変位により生じる金属微小構造体間の相対的な位置関係の変化を偏光状態の変化として検出する偏光検出手段(例えば検光子42と光検出器43)とにより構成されている。また、光制御素子53は、圧力や温度に起因した応力を微小な変形として感知できるよう、支持基板51上に起歪体52を配置し、該起歪体52に接して配置されている。
【0081】
本実施例の応力測定装置に用いる単色光源40は、光制御素子53を構成する金属微小構造体中にプラズモンを共鳴的に励振する波長を有する必要がある。Auを金属材料とした金属微小構造体では、544nm程度の波長をもつレーザーダイオード(LD)を用いる。なお、光源40は、単色LEDや固体レーザーであっても構わないが、装置の小型化、高感度化の目的から、レーザーダイオード(LD)を利用するほうが、より好ましい。また、Agを金属材料として用いる場合には、400nm程度の短波長の光源が必要である。また、金属微小構造体を被覆する保護膜の選択により、使用する光の波長を調整することができる。
図16〜21は前述したように、ミー散乱理論を用いて様々な被覆材料に覆われた金属球の球中心における電界強度を計算した結果であり、金属材料と保護膜の組み合わせにより、プラズモンの共鳴波長を自由に選択できることを示している。図16〜21から分かるように、短波長の光を用いるほど、共鳴ピーク値は大きくなり、微小な変形に起因した偏光状態の変化が、より顕著に現れる。
【0082】
光制御素子53を備えた変形機構は、Siの自立膜が微小な隙間を有して平行に配置された起歪体52を有した構造となっている。このような構造は、Si半導体の製造プロセスにより作製される。例えば、SOI(Silicon On Insulator)ウェハを用い、光リソグラフィ技術によりパターンを切り出し、SiO2層をドライエッチングで除去することにより、隙間部分を作製することができる。この起歪体52に接して本発明の光制御素子53を配置する。
【0083】
偏光検出手段においては、変形による偏光状態の変化を検出するために、光検出器43の直前に検光子42を設けている。また、単色光源40の近傍には偏光子41が設けられている。偏光子41は、光制御素子中の金属微小構造の配向すなわち偏光異方性を生じる軸に沿った向きの直線偏光となるように配置されている。また、偏光検出手段の検光子42は自由に回転できる構成とすることにより、偏光状態の変化量を定量的に検出することができる。
【0084】
次に本実施例の応力測定装置による微小な変形の測定方法について説明する。圧力や温度に依存した起歪体52の変形が比較的大きな場合は、電気的な変調を施さずとも、直接偏光状態の変化を検出可能であるが、より微小な変位を高感度に検出するために、光制御素子53に変調をかける外部変調手段44を設けている。ここで、外部変調手段44とは、第2〜第4の手段で説明する、物理的に特性を変化させることが可能な材料に応じて、電気的、光学的に制御信号を与えるための手段である。この外部変調手段44により、光制御素子53に周期的な変調をかけ、これに同期した偏光状態の変化を光検出器43により検出することで、ノイズ信号を除去することが可能であり、起歪体52の変形による効果のみを高感度に検出することが可能である。金属微小構造体間の近接場光を介在した相互作用は、金属微小構造体間の距離に極めて敏感であり、サイズ50nm程度の金属微小構造体を用いた場合、1〜50nm程度の変形を測定することが可能である。
【0085】
以上のように、本実施例の応力測定装置は、光制御素子53に電気的または光学的な変調を加えることにより、微小な応力による変形を、入射する光の偏光状態の変化として、偏光検出手段の光検出器43で高感度に検出することが可能である。また、光制御素子53を構成する金属微小構造体は、厳格な形状を有する必要はないことから、作製精度に関する制限を緩和することができ、装置の低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の第1の実施例の光制御素子の一構成例を説明するための図であり、金属微小構造体を電気光学結晶基板の上面に配置した構成の光制御素子の断面図である。
【図2】本発明の第1の実施例の光制御素子の別の構成例を説明するための図であり、金属微小構造体を電気光学結晶基板の内部に配置した構成の光制御素子の断面図である。
【図3】本発明の第1の実施例の光制御素子のさらに別の構成例を説明するための図であり、金属微小構造体を電気光学結晶被膜で被覆した構成の光制御素子の断面図である。
【図4】金属微小構造体を2個配置した場合の数値シミュレーションのモデルを説明する図である。
【図5】数値シミュレーションにより得られた振幅比の計算結果を示す図である。
【図6】数値シミュレーションにより得られた位相差の計算結果を示す図である。
【図7】ミー散乱理論に基づき算出した、金属微小構造体のサイズ依存性を示す図である。
【図8】金属微小構造体の形状の任意性を説明するための図である。
【図9】3つの金属微小構造体による集合構造体の構成を説明するための図である。
【図10】集合構造体の配列の仕方を説明するための図である。
【図11】本発明の第2の実施例の光制御素子の一構成例を説明するための図であり、金属微小構造体を非線形光学材料基板の上面に配置した構成の光制御素子の断面図である。
【図12】本発明の第2の実施例の光制御素子の別の構成例を説明するための図であり、金属微小構造体を非線形光学材料基板の内部に配置した構成の光制御素子の断面図である。
【図13】本発明の第2の実施例の光制御素子のさらに別の構成例を説明するための図であり、金属微小構造体を非線形光学材料被膜で被覆した構成の光制御素子の断面図である。
【図14】本発明の第3の実施例の光制御素子を説明するためのであり、金属微小構造体を、電歪材料膜を形成した基板の上面に配置した構成の光制御素子の断面図である。
【図15】本発明の第4の実施例の表示装置の構成例を説明するための概略構成図である。
【図16】ミー散乱理論に基づき計算した、金属材料と空気の組み合わせによるプラズモン共鳴波長の選択方法を説明する図である。
【図17】ミー散乱理論に基づき計算した、金属材料と被膜材料の組み合わせによるプラズモン共鳴波長の選択方法を説明する図である。
【図18】ミー散乱理論に基づき計算した、金属材料と被膜材料の別の組み合わせによるプラズモン共鳴波長の選択方法を説明する図である。
【図19】ミー散乱理論に基づき計算した、金属材料と被膜材料の別の組み合わせによるプラズモン共鳴波長の選択方法を説明する図である。
【図20】ミー散乱理論に基づき計算した、金属材料と被膜材料の別の組み合わせによるプラズモン共鳴波長の選択方法を説明する図である。
【図21】ミー散乱理論に基づき計算した、金属材料と被膜材料の別の組み合わせによるプラズモン共鳴波長の選択方法を説明する図である。
【図22】本発明の第5の実施例の表示装置の構成例を説明するための概略構成図である。
【図23】図22のマイクロレンズアレイと偏光制御素子の一部を拡大して示す要部拡大図である。
【図24】本発明の第6の実施例の応力測定装置の構成例を説明するための概略構成図である。
【図25】従来技術1に記載の光学素子の構成説明図である。
【図26】従来技術2に記載の反射率可変波長選択フィルタの概念図である。
【図27】従来技術3に記載の光学素子を斜め上方から見た電子顕微鏡写真を複写した図である。
【図28】従来技術4に記載の空間変調器の概略構成図である。
【図29】従来技術5に記載の光学装置の一例である多チャンネルフィルタの概略平面図である。
【図30】従来技術6に記載の光学素子の概略断面図である。
【符号の説明】
【0087】
1:電気光学結晶基板
2:金属微小構造体
3:集合構造体
4:保護膜
5:薄膜電極
6:薄膜電極
7:電圧制御手段
8:電気光学結晶被膜
9:支持基板
10:非線形光学材料基板
11:非線形光学材料被膜
12:支持基板
13:電歪材料膜
14:透明支持基板
20:光源
21:第1偏光板
22:偏光制御素子
22R,22G,22B:偏光制御素子要素
23(23R,23G,23B):外部変調手段
24:第2偏光板
25,37:投射光学系
26,38:スクリーン
30:光源
30R,30G,30B:LED光源
31:第1偏光板
32:マイクロレンズアレイ
32a:マイクロレンズ
33:偏光制御素子
33R,33G,33B:光制御素子
34:外部変調手段
35:コリメートレンズ
36:第2偏光板
40:単色LD光源
41:偏光子
42:検光子(偏光検出手段)
43:光検出器(偏光検出手段)
44:外部変調手段
51:支持基板
52:起歪体
53:光制御素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理的に特性を変化させることが可能な材料からなる基板または膜と、入射する光の波長以下のサイズをもつ金属微小構造体を有し、複数個の前記金属微小構造体の組み合わせを単位とした集合構造体を、前記基板または前記膜の上部または内部に設けた構造を有することを特徴とする光制御素子。
【請求項2】
請求項1記載の光制御素子において、
前記基板または前記膜が、電圧を印加することにより屈折率の変化を生じる材料により構成されることを特徴とする光制御素子。
【請求項3】
請求項1記載の光制御素子において、
前記基板または前記膜が、光を照射することにより屈折率の変化を生じる材料により構成されることを特徴とする光制御素子。
【請求項4】
請求項1記載の光制御素子において、
前記基板または前記膜が、電圧を印加することにより変形を生じる材料により構成されることを特徴とする光制御素子。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光制御素子において、
前記集合構造体が、2個以上の金属微小構造体を単一または複数の軸上に配列した構造を有し、該集合構造体が全て等しい配向を有して配置されていることを特徴とする光制御素子。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光制御素子において、
前記金属微小構造体が、入射する光の波長に対してプラズモンを励振できる単一または複数の金属材料により構成されることを特徴とする光制御素子。
【請求項7】
光制御手段として請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光制御素子を用い、白色光源もしくは、赤、緑、青(以下、RGBと記す)の3色の波長を有する光源と、前記RGBの各波長に対して前記基板または前記膜の物理的特性を変調することにより前記光制御素子の前記RGBの各波長の光に対する透過率を変調する外部変調手段とを少なくとも備えることを特徴とする表示装置。
【請求項8】
光制御手段として請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光制御素子を用い、単色光源と、前記光制御素子を変調する外部変調手段と、変形または変位により生じる金属微小構造体間の相対的な位置関係の変化を偏光状態の変化として検出する偏光検出手段とを少なくとも備えることを特徴とする応力測定装置。
【請求項1】
物理的に特性を変化させることが可能な材料からなる基板または膜と、入射する光の波長以下のサイズをもつ金属微小構造体を有し、複数個の前記金属微小構造体の組み合わせを単位とした集合構造体を、前記基板または前記膜の上部または内部に設けた構造を有することを特徴とする光制御素子。
【請求項2】
請求項1記載の光制御素子において、
前記基板または前記膜が、電圧を印加することにより屈折率の変化を生じる材料により構成されることを特徴とする光制御素子。
【請求項3】
請求項1記載の光制御素子において、
前記基板または前記膜が、光を照射することにより屈折率の変化を生じる材料により構成されることを特徴とする光制御素子。
【請求項4】
請求項1記載の光制御素子において、
前記基板または前記膜が、電圧を印加することにより変形を生じる材料により構成されることを特徴とする光制御素子。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光制御素子において、
前記集合構造体が、2個以上の金属微小構造体を単一または複数の軸上に配列した構造を有し、該集合構造体が全て等しい配向を有して配置されていることを特徴とする光制御素子。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光制御素子において、
前記金属微小構造体が、入射する光の波長に対してプラズモンを励振できる単一または複数の金属材料により構成されることを特徴とする光制御素子。
【請求項7】
光制御手段として請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光制御素子を用い、白色光源もしくは、赤、緑、青(以下、RGBと記す)の3色の波長を有する光源と、前記RGBの各波長に対して前記基板または前記膜の物理的特性を変調することにより前記光制御素子の前記RGBの各波長の光に対する透過率を変調する外部変調手段とを少なくとも備えることを特徴とする表示装置。
【請求項8】
光制御手段として請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光制御素子を用い、単色光源と、前記光制御素子を変調する外部変調手段と、変形または変位により生じる金属微小構造体間の相対的な位置関係の変化を偏光状態の変化として検出する偏光検出手段とを少なくとも備えることを特徴とする応力測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【公開番号】特開2007−240617(P2007−240617A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−59649(P2006−59649)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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