説明

光変調装置および試験装置

【課題】変調歪が少なく、任意の光強度および消光比を有する光変調信号を発生させる。
【解決手段】連続波光を発生する光源と、連続波光を一対の光導波路360に分岐させる光分岐器311と、一対の光導波路360の伝播光を合波する光合波器313と、一対の光導波路360の一方の伝播光を変調する光変調器330と、いずれかの光導波路360において伝播光の位相を変化させる光位相制御器350と、光変調器330が受ける連続波光の光強度を減衰させる第1光強度調節器320と、連続波光の強度を減衰させる第2光強度調節器340と、原信号から、第1光強度調節器320を制御する第1強度制御信号、光変調器330を制御する変調制御信号、第2光強度調節器340を制御する第2強度制御信号、および、光位相制御器350を制御する位相制御信号を発生する分離制御部370とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調装置および試験装置に関する。より詳細には、光信号を処理する機能を有する被試験デバイスを試験する場合に用い得る試験装置と、当該試験装置において光試験信号発生装置として用い得る光変調装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路等の被試験デバイスに試験信号を処理させてその機能および性能を評価する試験装置がある。被試験デバイスの多くは電気信号を取り扱う半導体回路等であるが、近年は、光信号を処理するデバイスも試験の対象となりつつある。
【0003】
下記の特許文献1には、テスト用光信号発生器が発生したテスト用光信号を、光ファイバを通じてテストヘッドに供給することが記載される。これにより、テストヘッドに対する接続が簡潔になると共に、劣化の少ない試験信号を伝送できる。
【0004】
これに対して、下記の特許文献2には、光試験信号として用い得る光信号を発生できるマッハツェンダ導波路型電気光学光強度変調器が記載される。特許文献2に記載される通り、この種の光強度変調器は、ニオブ酸リチウム等の強誘電体材料におけるポッケルス効果を利用して、高速な光信号を発生させることができる。
【特許文献1】特開2000−249746号公報
【特許文献2】特開2004−004589号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、試験装置においては、様々な強度、消光比、信号パターン等の光試験信号が求められる。ところが、レーザダイオード等の電気光変換素子の変換特性は、バイアス電流および変調信号の振幅により変化する。このため、光試験信号に不可避に波形歪が生じて、精度の高い試験には用いることができない。また、マッハツェンダ型光変調器も、変調信号の振幅と出力光信号強度との間には2次関数的な関係がある。このため、波形歪が生じない信号強度の範囲は制限される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、上記課題を解決すべく、本発明の第1の形態として、信号源が発生した電気的な原信号が入力されて原信号の信号波形に応じて変調された変調光信号を出力する光変調装置であって、連続波光を発生する光源と、光源が発生した連続波光を一対の光導波路に分岐させる光分岐器と、一対の光導波路の伝播光を合波して出力する光合波器と、一対の光導波路の一方に配され、当該一方の光導波路の伝播光を変調する光変調部と、一対の光導波路のいずれかに配され、当該光導波路を伝播する伝播光の位相を変化させる光位相制御部と、光分岐器の入力側または一方の光導波路に配されて、光変調部が受ける連続波光の光強度を減衰させる第1光強度制御部と、一対の光導波路の他方、または、光合波器の出力側のいずれかに配され、連続波光の強度を減衰させる第2光強度制御部と、原信号を入力された場合に、変調光信号の振幅に対応して第1光強度制御部を制御する第1強度制御信号、光変調部が変調特性の直線性が高い領域において動作する振幅を有して原信号の変動成分に対応した変調成分を含んで光変調部を制御する変調制御信号、変調光信号の定常的な信号強度および消光比に対応して第2光強度制御部を制御する第2強度制御信号、および、変調光信号の定常的な信号強度および消光比に対応して光位相制御部を制御する位相制御信号を出力する分離制御部とを備える光変調装置が提供される。
【0007】
また、本発明の第2の形態として、信号源が発生した電気的な原信号が入力されて原信号の信号波形に対応して変調された変調光信号を出力する光変調装置であって、連続波光を発生する光源と、光源が発生した連続波光を一対の光導波路に分岐させる光分岐器と、一対の光導波路の伝播光を合波して出力する光合波器と、一対の光導波路の一方に配され、当該一方の光導波路の伝播光を変調する光変調部と、一対の光導波路のいずれかに配され、当該光導波路を伝播する伝播光の位相を変化させる光位相制御部と、光源の出力する連続波光の光強度を変化させる第1光強度制御部と、一対の光導波路の他方、または、光合波器の出力側のいずれかに配され、連続波光の強度を減衰させる第2光強度制御部と、原信号を入力された場合に、変調光信号の振幅に対応して第1光強度制御部を制御する第1強度制御信号、光変調部が変調特性の直線性が高い領域において動作する振幅を有して原信号の変動成分に対応した変調成分を含んで光変調部を制御する変調制御信号、変調光信号の定常的な信号強度および消光比に対応して第2光強度制御部を制御する第2強度制御信号、および、変調光信号の定常的な信号強度および消光比に対応して光位相制御部を制御する位相制御信号を出力する分離制御部とを備える光変調装置が提供される。
【0008】
更に、本発明の第3の形態として、試験信号源が発生した電気的な原試験信号が入力されて当該原試験信号の変動成分に対応して変調された光試験信号を出力する光試験信号発生装置を含む試験装置であって、光試験信号発生装置が、連続波光を発生する光源と、光源が発生した連続波光を一対の光導波路に分岐させる光分岐器と、一対の光導波路の伝播光を合波して出力する光合波器と、一対の光導波路の一方に配され、当該一方の光導波路の伝播光を変調する光変調部と、一対の光導波路のいずれかに配され、当該光導波路を伝播する伝播光の位相を変化させる光位相制御部と、光分岐器の入力側または一方の光導波路に配されて、光変調部が受ける連続波光の光強度を減衰させる第1光強度制御部と、一対の光導波路の他方、または、光合波器の出力側のいずれかに配され、連続波光の強度を減衰させる第2光強度制御部と、原信号を入力された場合に、変調光信号の振幅に対応して第1光強度制御部を制御する第1強度制御信号、光変調部が変調特性の直線性が高い領域において動作する振幅を有して原信号の変動成分に対応した変調成分を含んで光変調部を制御する変調制御信号、光試験信号の定常的な信号強度および消光比に対応して第2光強度制御部を制御する第2強度制御信号、および、光試験信号の定常的な信号強度および消光比に対応して光位相制御部を制御する位相制御信号を出力する分離制御部とを備える試験装置が提供される。
【0009】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。従って、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが課題の解決に必須であるとは限らない。
【0011】
図1は、ひとつの実施形態に係る試験装置100全体の構造を模式的に示す図である。同図に示すように、試験装置100は、ハンドラ110、テストヘッド130およびホスト装置150を備える。
【0012】
ハンドラ110は、試験の対象となる被試験デバイス120を物理的に操作する機能を有する。これにより、多数の被試験デバイスから、試験装置100が処理できる数の被試験デバイスを順次供給して試験に供する作業を自動化する。また、試験後に、試験結果に応じて被試験デバイス120を分別して収納する機能を設ける場合もある。
【0013】
テストヘッド130は、被試験デバイス120の仕様に応じたインターフェイスとなるパフォーマンスボード160を備え、試験装置100および被試験デバイス120の間の信号伝送路を形成する。また、テストヘッド130は、複数のピンエレクトロニクスボード170(図2参照)を収容して、パフォーマンスボード160を介して被試験デバイス120に試験信号を供給する。なお、仕様の異なる被試験デバイス120を試験する場合は、パフォーマンスボード160を交換することにより同じテストヘッド130を用いることができる。また、ピンエレクトロニクスボード170を交換または追加することにより、既存のテストヘッド130の機能を変更または追加することができる。
【0014】
ホスト装置150は、接続ケーブル140を介してハンドラ110およびテストヘッド130に接続される。これにより、試験装置100全体の動作を制御すると共に、制御信号およびデータ信号をハンドラ110およびテストヘッド130に供給して、被試験デバイス120の試験を実行する。接続ケーブル140には、電気信号を伝送するメタルケーブルの他に、光信号を伝送する光ファイバケーブルが収容される場合もある。
【0015】
図2は、試験装置100におけるテストヘッド130の内部構造を模式的に示す図である。同図に示すように、テストヘッド130の上部にはパフォーマンスボード160が装着される。また、テストヘッド130の内部には、複数のピンエレクトロニクスボード170が収容される。
【0016】
パフォーマンスボード160は、被試験デバイス120を装着するソケット162を上面に、パフォーマンスボード160自体をピンエレクトロニクスボード170のいずれかに接続する場合に用いるコネクタ164を下面に、それぞれ備える。コネクタ164は、両端にコネクタを備えた集合ケーブル168により、ピンエレクトロニクスボード170のコネクタ171に電気的に接続される。また、被試験デバイス120およびピンエレクトロニクスボード170は、光ファイバケーブル166を介して、相互に光信号を入出力する。
【0017】
このテストヘッド130に装着されたピンエレクトロニクスボード170の少なくともひとつは、光試験信号を発生して被試験デバイス120に送り出す光ドライバ部200と、被試験デバイス120が試験動作により処理した後に出力した光試験信号を受信して被試験デバイス120の動作を評価する光コンパレータ部400とを備える。また、光ドライバ部200および光コンパレータ部400を含むピンエレクトロニクスボード170全体の動作の基準となるタイミングを発生するタイミング発生器172も備える。
【0018】
光ドライバ部200は、クロック光信号源210、プログラム発生器220、変調信号発生部230、光源250および光試験信号発生部300を備える。クロック光信号源210は、タイミング発生器172から供給されるタイミング信号に従って一定の繰り返し周波数を有するパルス信号であるクロック光信号を発生する。プログラム発生器220は、パフォーマンスボード160に実装された被試験デバイス120において実行される試験内容に従って、後述する光試験信号発生部300に供給する変調信号を発生させるプログラムを装備する。
【0019】
光試験信号発生部300は、変調信号発生部230において発生された変調信号と、光源250から供給される連続波光とを供給される。なお、光試験信号発生部300の構造と動作については図3以下を参照して後述する。
【0020】
一方、光コンパレータ部400は、光電気変換部410、データ分離部420およびデータ比較部430を備える。光電気変換部410は、被試験デバイス120から受信した光信号を電気信号に変換する。データ分離部420は、電気信号に変換された受信信号から有意なデータ列を抽出する。更に、データ比較部430は、試験に供されたデータと抽出されたデータとを比較する。これにより、パフォーマンスボード160に実装された被試験デバイス120の機能、性能、特性等が評価される。
【0021】
図3は、ひとつの実施形態に係る光試験信号発生部300の構造を示す図である。同図に示すように、光試験信号発生部300は、強誘電体基板310上に形成された光導波路360と、光導波路360の一部に沿って形成された複数対の強度制御電極326、346と、位相制御電極356と、変調制御電極336とを備える。また、この光試験信号発生部300は、強度制御電極326、346、位相制御電極356および変調制御電極336に印加する強度制御信号、位相制御信号または変調制御信号を発生する分離制御部370を備える。
【0022】
光導波路360には、光源250が発生した連続波光を注入される入射端の直後においてひとつの光分岐器311が形成される。また、最終的に光試験信号を出力する出射端の直前においてもひとつの光合波器313が形成される。これら光分岐器311および光合波器313の間に形成された一対の光導波路のうち、図上で上側に位置する一方の光導波路には、第1光強度調節器320および光変調器330が順次挿入される。また、図上で下側に位置する他方の光導波路には、第2光強度調節器340および位相制御器350が順次挿入される。
【0023】
第1光強度調節器320および第2光強度調節器340の各々において、光導波路は、各入射端の直後に光分岐器321、341を、各出射端の直前に光合波器323、343を形成する。また、これら光分岐器321、341および光合波器323、343の間に形成された一対の光導波路322、324、342、344のうち、一方の光導波路322、342を挟んで、それぞれ1対の強度制御電極326、346が配置される。強度制御電極326、346の各々には、分離制御部370において個別に発生された第1光強度制御信号および第2光強度制御信号が印加される。なお、強度制御電極326、346は、一対の光導波路322、324、一対の光導波路342、344をそれぞれはさんで配置することにより、プッシュプル動作するように形成することもできる。
【0024】
また、光変調器330においても、光導波路は、入射端の直後に光分岐器331を、出射端の直前に光合波器333を形成する。また、これら光分岐器331および光合波器333の間に形成された一対の光導波路332、334のうち、一方の光導波路332を挟んで1対の変調制御電極336が配置される。変調制御電極336には、変調信号発生部230が発生した変調信号が印加される。なお、変調制御電極336は、光導波路332と334の両方をはさんで配置することにより、プッシュプル動作するように形成することもできる。
【0025】
更に、位相制御器350においては、光導波路352に沿って一対の位相制御電極356が配置される。位相制御電極356には、変調信号発生部230において発生された位相制御信号が印加される。本実施形態においては、光分岐器311、321、331、341の各々において、伝播光は等分されるものとする。
【0026】
なお、分離制御部370は、変調信号発生部230から供給された変調信号から、変調制御信号と強度制御信号とを抽出する。ここで、変調制御信号は、後述するように、光変調器330を、その変換特性の直線性が高い領域で動作させる変動成分を含む。また、強度制御信号は、入力変調信号の定常的な光強度に対応した成分を含む。
【0027】
図4は、図3に示した光試験信号発生部300の動作を説明する波形図である。なお、同図に示す各信号波形は、図3に記入したノードAからノードFまでの各々における信号波形を表す。
【0028】
同図(A)に示すように、ノードAにおける連続波光は、一定の光強度Pと周波数を有する。このような連続波光は、光分岐器311において分岐され、信号強度が3dB低下した状態で、依然として連続波光として各光導波路を伝播する。
【0029】
第1光強度調節器320において、連続波光は、光分岐器321において更に3dB強度が低下した2つの連続波光に分岐される。ここで、強度制御電極326に対して第1光強度制御信号として直流電圧を印加した場合、光導波路322を伝播する連続波光はポッケルス効果により位相がシフトする。一方、光導波路324では、連続波光は当初の位相を維持したまま伝播する。
【0030】
上記のように相互に位相のずれた伝播光が光合波器323において伝播光が合波された場合、双方の位相差が逆相の状態では一部が打ち消しあい、双方の位相差が同相の状態では一部が強め合う。従って、図4(B)に示すように、ノードBにおける伝播光の光強度Pは、第1光強度調節器320に入力された伝播光の光強度に対して低下する。なお、強度制御電極326に電圧が印加されていない場合は、合波された伝播光は分岐前の元の光強度と略同じになる。このように、第1光強度制御信号を変化させることにより、光変調器330に入射する伝播光の強度を調節することができる。
【0031】
第1光強度調節器320から出射された伝播光は、次に、光変調器330に入射される。光変調器330においては、光分岐器331により分岐されて光導波路332を伝播する伝播光に対して、変調制御電極336に印加された変調制御信号に応じた電界が印加される。変調制御信号は、入力変調信号の変動成分を含んでいるので、光導波路332の伝播光は、入力変調信号の信号パターンに応じて位相がシフトされる。
【0032】
一方、光導波路334の伝播光は当初の位相を維持している。従って、光合波器333において合波されてノードCに伝播する伝播光は、光強度Pを上限として、入力変調信号の信号パターンを重畳された光信号となる。換言すれば、第1光強度調節器320において光強度Pを調節することにより、変調された光信号の信号振幅を変化させることができる。
【0033】
一方、第2光強度調節器340においても、第1光強度調節器320と同様に、伝播光は光分岐器341において更に3dB強度が低下した2つの連続波光に分岐される。ここで、強度制御電極346に対して第2光強度制御信号として直流電圧を印加した場合、光導波路342を伝播する連続波はポッケルス効果により位相がシフトする。一方、光導波路344では、連続波光は当初の位相を維持したまま伝播する。
【0034】
このような2つの伝播光が光合波器343において合波された場合、双方の位相差が逆相の状態では一部が打ち消しあい、双方の位相差が同相の状態では一部が強め合う。従って、図4(D)に示すように、ノードDにおける伝播光の光強度Pは、第2光強度調節器340に対して低下して出力される。このように、第2光強度制御信号を変化させることにより、ノードDにおける伝播光の光強度を調節できる。
【0035】
更に、位相制御器350においては、光導波路352を挟んで配置された電極に、位相制御信号としての直流電圧が印加される。これにより、ノードEにおける伝播光は位相がシフトする。ただし、ノードEでは、位相はシフトするが光強度は変化しない。
【0036】
こうして、光変調器330から出力されたノードCの光信号と、位相制御器350から出力されたノードEの光信号は、光合波器313において合波される。ここで、既に説明したように、ノードEにおける光信号は、当初の連続波光に対して位相がシフトしている。従って、これらが合波された場合、双方の位相差が逆相の状態では一部が打ち消しあい、双方の位相差が同相の状態では一部が強め合うので、ノードFにおける伝播光の光強度は位相差により上下方向に変化する。こうして所望の光信号強度を有して、変調信号に応じた信号波形を有する光信号が、光試験信号として外部に出力される。
【0037】
図5は、上記のような光試験信号発生部300における光変調器330の変換特性を説明する図である。同図に示すように、図3に示した光変調器330の変換特性は2次曲線状の特性を有する。このため、図5に示すように、光変調器330の動作範囲には変調制御信号および出力光信号の相関が直線的な領域(以下、「線形領域」と記載する)と非直線的な領域(以下、「非線形領域」と記載する)とがある。
【0038】
図6は、原信号および変調制御信号の各信号強度について相互の関係を示す図である。同図に示すように、分離制御部370が発生する変調制御信号は、光変調器330の変調動作が線形領域で実行されるように、信号強度および信号振幅が調整される。
【0039】
即ち、図6(A)に示すように、当初の変調信号の信号振幅が、線形領域よりも大きい場合は、変調信号を圧縮した変調制御信号が生成される。これにより、変調信号の信号パターンを維持したまま、線形領域において連続波光を変調できる。
【0040】
また、図6(B)に示すように、当初の変調信号の振幅が範囲Lに納まる場合は、変調信号がそのまま変調制御信号として光変調器330に供給される。更に、範囲Lよりも変調信号の振幅が小さい場合は、図6(C)に示すように、変調信号をそのまま変調制御信号としてもよいし、変調信号の振幅を範囲Lまで伸張して変調制御信号としてもよい。これにより、光試験信号において、より大きな消光比を得ることができる。
【0041】
上記のように、光変調器330を線形領域で動作させることにより、歪の少ない光試験信号を発生させることができる。ただし、発生させる光試験信号の信号振幅および信号強度は限定的となる。これに対して、図3に示した光試験信号発生部300においては、光変調器330の変調制御電極336に印加する変調信号により、連続波光を光試験信号としての信号波形に変調できる。
【0042】
また、第1光強度調節器320の強度制御電極326に印加する第1光強度制御信号により、変調の対象となる連続波光の光強度を調節して、変調信号の信号振幅を変化させることができる。更に、位相制御器350の位相制御電極356に印加する位相制御信号により、出力される光試験信号全体の信号レベルを変化させることができる。また更に、第2光強度調節器340の強度制御電極346に印加する第2光強度制御信号により、信号レベルの調節の対象となる連続波光の光強度を調節できる。
【0043】
従って、光変調器330を、その線形領域に限って動作させても、求められた強度および消光比を有する光試験信号を発生させることができる。また、光変調器330を線形領域で動作させて精度の高い光試験信号を発生させることができるので、被試験デバイスの試験を高い精度で実行できる。
【0044】
図7は、光試験信号発生部300の変形例に係る光試験信号発生部301の構造を示す図である。同図に示すように、図3に示した光試験信号発生部300と比較すると、位相制御器350が、光変調器330および光合波器313の間に配置された点が相違する。
【0045】
図4を参照して既に説明した通り、光分岐器311において分岐された光導波路360のうち、図中の上側を伝播した伝播光と下側を伝播した伝播光とが光合波器313において合波される場合に、相互の位相差に応じて出力される光試験信号の強度が変化する。このとき、位相制御器350が上側の伝播光の位相を変化させても、図3に示した光試験信号発生部300と同様の効果を得ることができる。
【0046】
なお、図7に示した実施形態と、図3に示した実施形態との相違は、レイアウト上の相違に過ぎず、機能的な相違点はない。しかしながら、このようなレイアウトを採った場合には、図8から図11を参照して以下に説明する利点を享受できる。
【0047】
図8は、図7に示した光試験信号発生部301の一部に換えて実装できる複合光変調器401の構造を示す図である。同図に示すように、この複合光変調器401においては、光分岐器331および光合波器333の間で分岐して形成された一対の光導波路332、334が延長される。
【0048】
また、一対の光導波路332、334の一部に挟まれた変調制御電極336と、変調制御電極336および一対の光導波路332、334を外側から挟む一対の基準電位電極335とが配置され、光変調器330が形成される。即ち、基準電位電極335は一定の基準電位に保たれる一方、変調制御電極336には変調制御信号が印加される。これにより、変調制御電極336および基準電位電極335の間に形成される電界が、印加された変調制御信号の変化に応じて変化するので、光導波路332、334を伝播する連続波光が変調制御信号の変化に応じて変調される。
【0049】
また、複合光変調器401においては、光導波路332、334の他の一部を外側から挟む一対の位相制御電極356と、位相制御電極356および光導波路332、334の他の一部とに挟まれた基準電位電極355とが配置され、位相制御器350が形成される。即ち、基準電位電極355は一定の基準電位に保たれる一方、位相制御電極356には互いに逆極性の位相制御信号が印加される。このような構造により、光導波路332、334に等しく作用する電界が形成され、位相制御信号に応じて光導波路332、334の屈折率が変化して、光変調器330により変調される伝播光の位相をずらすことができる。このように、複合光変調器401は光変調器330と位相制御器350とを含むので、複合光変調器401を実装することにより個別の位相制御器350を省くことができる。
【0050】
図9は、図8に示した複合光変調器401に換えて実装できる、他の構造を有する複合光変調器402を示す図である。同図に示すように、この複合光変調器402も、光変調器330において、光分岐器331および光合波器333の間で分岐された一対の光導波路332、334が延長される。また、両方の光導波路332、334を外側から挟む一対の位相制御電極356と、光導波路332、334の内側に挟まれた単一の変調制御電極336とを有する。
【0051】
このような構造により、基準電位電極335、355を設けることなく、図8に示した複合光変調器401と同等の機能が実現される。また、強誘電体基板310の上に形成する電極の数を半減させ組立体ことができるので、光試験信号発生部301の構造および製造工程を簡素化できる。
【0052】
図10は、図7に示した光試験信号発生部301に実装できる、また他の構造を有する複合光変調器403を示す図である。同図に示すように、この複合光変調器403は、光変調器330において分岐した一対の光導波路342、334を更に延長して、3組の電極を設けている。以下に説明するように、複合光変調器403は、図7に示した光試験信号発生部301における光導波路360の上側全体と同等の機能を有する。
【0053】
即ち、光導波路332、334における光の伝播方向について最上流側においては、双方の光導波路332、334を外側から挟む一対の光位相制御電極356と、光導波路332、334の内側に挟まれた単一の基準電位電極355とが配置される。これらの電極により位相制御器350が形成される。これにより、光位相制御電極356に極性の反転した位相制御信号を変化させることにより、この複合光変調器403を伝播する光の位相を変化させることができる。
【0054】
また、複合光変調器403においては、光の伝播方向について位相制御器350に続いて、第1光強度調節器320が形成される。即ち、光導波路332、334を外側から挟む一対の基準電位電極325と、光導波路332、334に挟まれた単一の光強度制御電極326とが配置される。これにより、光強度制御電極に印加する第1光強度制御信号を変化させることにより、複合光変調器403を伝播する光信号の強度を変化させることができる。
【0055】
更に、複合光変調器403においては、光の伝播方向について第1光強度調節器320に続いて、光変調器330が形成される。即ち、光導波路332、334を外側から挟む一対の基準電位電極335と、光導波路332、334に挟まれた単一の変調制御電極336とが配置される。これにより、変調制御電極に印加する変調制御信号の変化に応じて複合光変調器403の出力する光信号が変調される。
【0056】
図11は、図10に示した複合光変調器403に換えて実装できる、他の構造を有する複合光変調器404を示す図である。同図に示すように、この複合光変調器404は、図10に示した構造を有する複合光変調器403において、光位相制御器350および第1光強度調節器320を複合化している。
【0057】
即ち、複合光変調器404においては、光位相制御電極356が光導波路332、334を外側から挟み、第1光強度制御電極326が光導波路332、334の内側に挟まれる構造を有する。このような構造により、第1光強度調節器320および光位相制御器350を複合化して、電極数を削減できる。
【0058】
図12は、図3に示した光試験信号発生部300の変形例に係る光試験信号発生部302の構造を示す図である。同図に示すように、光試験信号発生部300と比較すると、この光試験信号発生部302においては、第1光強度調節器320が、光源と光分岐器311との間に配置された点が相違する。
【0059】
図4を参照して既に説明した通り、第1光強度調節器320は、求められる光試験信号の振幅に応じた第1光強度制御信号に基づいて、光変調器330が受ける連続波光の振幅を変化させる。従って、第1光強度制御部が光分岐器311よりも上流側に配置された場合においても、図3に示した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0060】
このように、第1光強度調節器320は、光変調器330に対して注入される連続波光の光路上であれば、任意の位置に配して同等の機能を発揮させることができる。同様に、第2光強度調節器340は、光分岐器311により分岐された分岐光のうち、光変調器330に注入されない分岐光の光路上であれば、任意の位置に配して同等の機能を発揮させることができる。
【0061】
図13は、図12に示した光試験信号発生部302の更に他の実施形態に係る光試験信号発生部303の構造を示す図である。同図に示すように、この光試験信号発生部303においては、第1光強度制御信号は、光源そのものの光出力を制御する。このような構造により、強誘電体基板310上に形成する光導波路360等のレイアウトを簡素化できる。なお、図示は省略したが、光試験信号発生部303において、第2光強度調節器340と光位相制御器350とを、図11に示した複合光変調器404のように一体化させることにより、強誘電体基板310上のレイアウトは更に簡潔になる。
【0062】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加え得ることは当業者に明らかである。また、その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】ひとつの実施形態に係る試験装置100の構造を示す模式図である。
【図2】テストヘッド130の構造を模式的に示す図である。
【図3】光試験信号発生部300の構造を示す図である。
【図4】光試験信号発生部300の動作を示す波形図である。
【図5】光変調器330の変換特性を説明する図である。
【図6】原信号および変調制御信号の各信号強度の関係を示す図である。
【図7】他の実施形態に係る光試験信号発生部301の構造を示す図である。
【図8】他の実施形態に係る複合光変調器401の構造を示す図である。
【図9】他の実施形態に係る複合光変調器402の構造を示す図である。
【図10】他の実施形態に係る複合光変調器403の構造を示す図である。
【図11】他の実施形態に係る複合光変調器404の構造を示す図である。
【図12】他の実施形態に係る光試験信号発生部302の構造を示す図である。
【図13】他の実施形態に係る光試験信号発生部304の構造を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
試験装置100、 ハンドラ110、 被試験デバイス120、130 テストヘッド、140 接続ケーブル、150 ホスト装置、160 パフォーマンスボード、162 ソケット、164、171 コネクタ、166 光ファイバケーブル、168 集合ケーブル、170 ピンエレクトロニクスボード、172 タイミング発生器、200 光ドライバ部、210 クロック光信号源、220 プログラム発生器、230 変調信号発生部、250 光源、300、301、302、303、304、305 光試験信号発生部、310 強誘電体基板、311、321、331、341 光分岐器、313、323、333、343 光合波器、320 第1光強度調節器、326、346 強度制御電極、322、324、332、334、342、344、352 光導波路、325、335、355 基準電位電極、330 光変調器、336 変調制御電極、340 第2光強度調節器、350 位相制御器、356 位相制御電極、360 光導波路、370 分離制御部、400 光コンパレータ部、401、402、403、404 複合光変調器、410 光電気変換部、420 データ分離部、430 データ比較部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号源が発生した電気的な原信号を入力されて前記原信号の信号波形に応じて変調された変調光信号を出力する光変調装置であって、
連続波光を発生する光源と、
前記光源が発生した連続波光を一対の光導波路に分岐させる光分岐器と、
前記一対の光導波路の伝播光を合波して出力する光合波器と、
前記一対の光導波路の一方に配され、当該一方の光導波路の伝播光を変調する光変調部と、
前記一対の光導波路のいずれかに配され、当該光導波路を伝播する伝播光の位相を変化させる光位相制御部と、
前記光分岐器の入力側または前記一方の光導波路に配されて、前記光変調部が受ける連続波光の光強度を減衰させる第1光強度制御部と、
前記一対の光導波路の他方、または、前記光合波器の出力側のいずれかに配され、前記連続波光の強度を減衰させる第2光強度制御部と、
前記原信号を入力された場合に、前記変調光信号の振幅に対応して前記第1光強度制御部を制御する前記第1強度制御信号、前記光変調部が変調特性の直線性が高い領域において動作する振幅を有して前記原信号の変動成分に対応した変調成分を含んで前記光変調部を制御する変調制御信号、前記変調光信号の定常的な信号強度および消光比に対応して前記第2光強度制御部を制御する前記第2強度制御信号、および、前記変調光信号の定常的な信号強度および消光比に対応して前記光位相制御部を制御する位相制御信号を出力する分離制御部と
を備える光変調装置。
【請求項2】
前記光分岐器、前記第1強度制御部、前記第2強度制御部、前記光変調部、前記位相制御部および前記光合波器が、共通の基板の上に形成された光導波路を含む請求項1に記載の光変調装置。
【請求項3】
前記光分岐器は、前記光源の出力を受け、
前記第1光強度制御部は、前記光分岐器の一方の出力を受け、
前記光変調部は、前記第1光強度制御部の出力を受け、
前記第2光強度制御部は、前記光分岐器の他方の出力を受け、
前記光位相制御部は、前記第2光強度制御部の出力を受け、
前記光合波器は、前記光変調部の出力および前記光位相制御部の出力を受ける
請求項1に記載の光変調装置。
【請求項4】
前記光分岐器は、前記光源の出力を受け、
前記第1光強度制御部は、前記光分岐器の一方の出力を受け、
前記光変調部は、前記第1光強度制御部の出力を受け、
前記光位相制御部は、前記光変調部の出力を受け、
前記第2光強度制御部は、前記光分岐器の他方の出力を受け、
前記光合波器は、前記光変調部の出力および前記第2光強度制御部の出力を受ける
請求項1に記載の光変調装置。
【請求項5】
前記第1光強度制御部は、前記光源の出力を受け、
前記光分岐器は、前記第1光強度制御部の出力を受け、
前記光変調部は、前記光分岐器の一方の出力を受け、
前記第2光強度制御部は、前記光分岐器の他方の出力を受け、
前記光位相制御部は、前記第2光強度制御部の出力を受け、
前記光合波器は、前記光変調部の出力および前記光位相制御部の出力を受ける
請求項1に記載の光変調装置。
【請求項6】
信号源が発生した電気的な原信号が入力されて前記原信号の信号波形に応じて変調された変調光信号を出力する光変調装置であって、
連続波光を発生する光源と、
前記光源が発生した連続波光を一対の光導波路に分岐させる光分岐器と、
前記一対の光導波路の伝播光を合波して出力する光合波器と、
前記一対の光導波路の一方に配され、当該一方の光導波路の伝播光を変調する光変調部と、
前記一対の光導波路のいずれかに配され、当該光導波路を伝播する伝播光の位相を変化させる光位相制御部と、
前記光源の出力する連続波光の光強度を変化させる第1光強度制御部と、
前記一対の光導波路の他方、または、前記光合波器の出力側のいずれかに配され、前記連続波光の強度を減衰させる第2光強度制御部と、
前記原信号を入力された場合に、前記変調光信号の振幅に対応して前記第1光強度制御部を制御する前記第1強度制御信号、前記光変調部が変調特性の直線性が高い領域において動作する振幅を有して前記原信号の変動成分に対応した変調成分を含んで前記光変調部を制御する変調制御信号、前記変調光信号の定常的な信号強度および消光比に対応して前記第2光強度制御部を制御する前記第2強度制御信号、および、前記変調光信号の定常的な信号強度および消光比に対応して前記光位相制御部を制御する位相制御信号を出力する分離制御部と
を備える光変調装置。
【請求項7】
試験信号源が発生した電気的な原試験信号が入力されて当該原試験信号の変動成分に応じて変調された光試験信号を出力する光試験信号発生装置を含む試験装置であって、
前記光試験信号発生装置が、
連続波光を発生する光源と、
前記光源が発生した連続波光を一対の光導波路に分岐させる光分岐器と、
前記一対の光導波路の伝播光を合波して出力する光合波器と、
前記一対の光導波路の一方に配され、当該一方の光導波路の伝播光を変調する光変調部と、
前記一対の光導波路のいずれかに配され、当該光導波路を伝播する伝播光の位相を変化させる光位相制御部と、
前記光分岐器の入力側または前記一方の光導波路に配されて、前記光変調部が受ける連続波光の光強度を減衰させる第1光強度制御部と、
前記一対の光導波路の他方、または、前記光合波器の出力側のいずれかに配され、前記連続波光の強度を減衰させる第2光強度制御部と、
前記原試験信号を入力された場合に、前記光試験信号の振幅に対応して前記第1光強度制御部を制御する前記第1強度制御信号、前記光変調部が変調特性の直線性が高い領域において動作する振幅を有して前記原信号の変動成分に対応した変調成分を含んで前記光変調部を制御する変調制御信号、前記光試験信号の定常的な信号強度および消光比に対応して前記第2光強度制御部を制御する前記第2強度制御信号、および、前記光試験信号の定常的な信号強度および消光比に対応して前記光位相制御部を制御する位相制御信号を出力する分離制御部と
を備える試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−53553(P2009−53553A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−221683(P2007−221683)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【出願人】(390005175)株式会社アドバンテスト (1,005)
【Fターム(参考)】