説明

光学フィルタ

【課題】表示画像のコントラストを向上させることができるとともに、画像の透過部位である透光性領域が汚染されたり傷が付かない光学フィルタを提供する。
【解決手段】透明基材シート上に導電体パターン層を形成した電磁波遮蔽シートと、該導電体パターン層の凹凸を埋めて平坦化層となり得る厚みの接着剤層と、画像コントラスト向上層100とがこの順に積層されてなる光学フィルタであって、該画像コントラスト向上層が、透明基材の一方の面に、該透明基材の面内方向に沿って平行に並設された直線状の、且つその延長方向に直交する断面形状が台形又は略台形の暗色部と、隣接する前記暗色部間の透光性領域とを有する。前記暗色部は、断面形状が台形又は略台形の溝状凹部3内に、暗色粒子と透明樹脂とで充填されてなり、前記透光性領域は、その表面が透明樹脂からなる透明保護層で覆われてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種の用途の光学フィルタ、中でも特に画像表示装置(ディスプレイ)の前面に配置するのに好適な、画像コントラスト向上機能と電磁波遮蔽機能とを有するフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイ装置(PDP)、液晶ディスプレイ装置(LCD)、陰極線管ディスプレイ装置(CRT)、電界発光ディスプレイ装置(EL)等の画像表示装置においては、その画像品質を向上させるための検討が行われてきた。
【0003】
特に画像表示装置の前面側に機能部材を設けて画質改善を図った例として、例えば特許文献1には、画像のチラツキを防止するため、素線を縦横に編んで交叉させた網状膜を画面の前面に配置することが提案されている。この網状膜は画像のチラツキを防止する点では効果があったものと考えられるが、日光や電燈光等の外光(外来光ともいう。)が画面に入射すると、画像コントラストが低下するという問題がある。こうした問題に対しては、例えば素線を光吸収性能のある黒色繊維とすることが考えられる。しかし、外光は画面の斜め方向から入射し、一方、画像光は画面と直交方向に出射するので、画像光を吸収せずに外光のみを高効率で吸収して画像コントラストを向上させようとするためには、黒色繊維の奥行き方向(すなわち画像表示装置と観察者とを結ぶ方向、言い換えれば画面の直交方向のこと。)の長さを長くして画面の斜め方向から入射する外光を広い面積で受ける必要がある。ところが、繊維の奥行き方向の長さを長くするためには繊維径を太くする必要があり、そうすると、必然的に幅(画面と平行な方向)が大きくなって観察者側に透過する画像光が黒色繊維で妨げられるという問題が生じる。
【0004】
また、例えば特許文献2では、カラー陰極線管ディスプレイ装置の画面での反射を防止するためのマイクロメッシュタイプの反射防止フィルタが提案されている。この反射防止フィルタは、ナイロン単繊維をメッシュ状に平織りしたマイクロメッシュからなるものであり、そのマイクロメッシュを、蛍光膜のドットピッチの水平ピッチ及び垂直ピッチに対して一定のピッチ範囲とし、かつそのマイクロメッシュの横糸を水平走査線に対して一定の角度範囲としたものである。こうした反射防止フィルタは、モアレの発生を防止する点では効果があったものと考えられるが、日光や電燈光等の外光が画面に入射すると、画像コントラストが低下するという問題は解決できない。
【0005】
画像コントラストを向上させるという問題を解決するため、例えば特許文献3では、画面に貼り合わされるPDP用前面フィルタを構成するコントラスト向上層として、層の面方向に沿った所定方向に直線状に連なり、その延長方向に対して垂直な断面が幅広の下底を観察者側に向ける台形となる形状を有し、且つ、光を透過するレンズ部と、そのレンズ部と平行な方向に直線状に連なり、その延長方向に対して垂直な断面が幅広の下底をPDP側に向ける楔型となる形状を有し、且つ、光を吸収する光吸収部とを、交互に多数噛み合わせて配列してなるものを提案している。この前面フィルタは、光吸収部の幅を狭くして画像光の透過率を維持しつつ同時に該光吸収部の奥行きも深くして外光を吸収できるため、画像コントラスト向上効果は良好である。且つ電磁波遮蔽機能を併せ持つ態様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭34−8069号公報
【特許文献2】特開昭62−136741号公報
【特許文献3】特開2007−272161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献3で提案されたコントラスト向上層(コントラスト向上フィルタ)は、より一層の実用化と高品質化に向けて不十分な点があり、その解決が要請される。
【0008】
すなわち、上記特許文献3で提案されたコントラスト向上層は、楔型の溝に暗色樹脂からなる塗料が充填されて光吸収部を形成しているが、その光吸収部は、楔型の溝部が並設された面に暗色樹脂からなる塗料を塗工した後、ドクターブレード等で掻き取って形成される。しかしながら、ドクターブレード等で掻き取る際に、溝以外の透明基材表面である透光性領域(前記の溝状凹部に対して凸部として現れる。)にも暗色樹脂が残留し、透光性領域の光透過率が低下して表示画像が暗くなるという難点がある。なお、暗色樹脂が透光性領域に残留する原因は、透光性領域の平坦性が硝子板や金属板等の平坦な剛体とは異なり不完全なこと、ドクターブレード等を押圧することにより変形や撓みが生じること、且つ暗色樹脂塗料が液状であり、僅かな隙間にも滲み出すこと、等のために完全に掻き取ることは不可能であることによる。
【0009】
なお、透光性領域に残留した暗色塗料を、有機溶剤を滲み込ませた布で拭き取ったり、研磨したりして除去することも可能ではあるが、工程数が増える上に、有機溶剤により透光性領域が膨潤・溶出により白濁したり、研磨に付随して擦り傷が入ったりし、今度はこれらの要因によって表示画像が白濁するという問題が発生する。
【0010】
さらに、特許文献3のコントラスト向上層は、その白濁や透過率低下を改善するために透光性領域上の残留暗色塗料を除去した場合には、該透光性領域表面は基本的には露出状態となっているため、搬送工程や保管工程の際等に、露出した透光性領域が汚染されたり傷付いたりして、その結果、表示画像の画質が低下するという問題も生じる。
【0011】
本発明の目的は、上記問題点を解決した画像コントラスト向上層、すなわち、表示画像のコントラストを向上させることができるとともに、画像の透過部位である透光性領域が汚染されたり傷が付かないようにした、画像コントラスト向上層と、透明基材シート上に導電体パターン層が形成された電磁波遮蔽シートとを接着剤で貼り合わせた光学フィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、透明基材シート上に導電体パターン層を形成した電磁波遮蔽シートと、該導電体パターン層の凹凸を埋めて平坦化層となり得る厚みの接着剤層と、画像コントラスト向上層とがこの順に積層されてなる光学フィルタであって、該画像コントラスト向上層が、透明基材の一方の面に、該透明基材の面内方向に沿って平行に並設された直線状の、且つその延長方向に直交する断面形状が台形又は略台形の暗色部と、隣接する前記暗色部間の透光性領域とを有する、画像コントラスト向上層であって、前記暗色部は、断面形状が台形又は略台形の溝状凹部内に、暗色粒子と透明樹脂とで充填されてなり、前記透光性領域は、その表面が透明樹脂からなる透明保護層で覆われてなり、前記暗色粒子の最小粒径dmin及び最大粒径dmaxと、前記透明保護層の厚さtと、前記溝状凹部の最大幅W及び深さHとの間に、t<dmin<dmax<W、且つ、t<dmin<dmax<H、の関係が成り立つ画像コントラスト向上層であることを特徴とする光学フィルタを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明で用いる画像コントラスト向上層は、透光性領域には暗色粒子が存在せず、その透光性領域を通過する光の光透過性が低下しないので、表示画像が暗くなって表示画像の視認性を損なうことがない。しかも、暗色部が外光を効果的に吸収すると同時に画像光は高透過率で透過するので、画像のコントラストを向上させることができる。さらに、透明基材の透光性領域は透明樹脂からなる透明保護層で覆われているので、搬送工程や保管工程の際等に、画像の透過部位である透光性領域が汚染されたり傷が付いたりしない。その結果、表示画像の画質を低下することがなく、高品質の画像を表示することができる。
また、本発明のフィルタは、(気泡の混入なく)パターン層の凹凸を埋めて平坦化層となり得る厚みの接着剤層によって、電磁波遮蔽シートと画像コントラスト向上層とが貼り合わされていることにより、優れた画像コントラスト向上性とともに、可視光透明性を損なうことなく電磁波遮蔽性が付与された、特にディスプレイ用に好適な、光学フィルタとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の光学フィルタの一例を示す模式的な断面図である。
【図2】本発明の画像コントラスト向上層の一例を示す模式的な断面図(A)と、これを暗色部側から見た平面図(B)である。
【図3】透明支持体を備えた本発明の画像コントラスト向上層の斜視図である。
【図4】本発明の画像コントラスト向上層の製造方法の一例を示す工程フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の光学フィルタは、図1に示すように、基本的に、画像コントラスト向上層と、透明基材シート上に導電体パターン層が形成された電磁波遮蔽シートとを接着剤で貼り合わせてなる。
【0016】
[画像コントラスト向上層]
図2は、本発明で用いる画像コントラスト向上層の一例を示す模式的な断面図(A)と、これを暗色部側から見た平面図(B)であり、図3は、透明支持体を備えた本発明で用いる画像コントラスト向上層の斜視図である。
【0017】
本発明で用いる画像コントラスト向上層100(100A,100B)は、図2及び図3に示すように、透明基材4の一方の面に、その透明基材4の面内方向に沿って平行に並設された直線状の、且つその延長方向に直交する断面形状が台形又は略台形の暗色部10と、隣接する暗色部10,10間の透光性領域20とを有している。暗色部10は、断面形状が台形又は略台形の溝状凹部3内に、暗色粒子1と透明樹脂2とで充填されて構成されている。また、透光性領域20は、透明基材4の平坦部8(溝状凹部3が形成されていない部分)の表面S1が透明樹脂2からなる透明保護層2Lで覆われて構成されている。そして、本発明は、暗色粒子1の最小粒径dmin及び最大粒径dmaxと、透明保護層2Lの厚さtと、溝状凹部3の最大幅W及び深さHとの間に、t<dmin<dmax<W、且つ、t<dmin<dmax<H、の関係が成り立つことを特徴とする。
【0018】
こうした構成からなる画像コントラスト向上層100は、透光性領域20には暗色粒子1が存在せず、その透光性領域を通過する光の光透過性が低下しないので、表示画像が暗くなって表示画像の視認性を損なうことがない。また、暗色部10では、暗色粒子1が外光を効果的に吸収するので、画像のコントラスト(画像の白部と黒部との輝度の比、差等で定義)を向上させることができる。また、透光性領域20が透明保護層2Lで覆われているので、搬送工程や保管工程の際においても、画像の透過部位である透光性領域20が汚染されたり傷が付いたりせず、表示画像の画質を低下することがなく、高品質の画像を表示することができる。
【0019】
以下、本発明で用いる画像コントラスト向上層の各構成要素について詳しく説明する。
【0020】
(透明基材)
透明基材4としては、電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等の樹脂材料、あるいは硝子等の無機透明材料が各種使用可能である。通常は、溝状凹部3を形成し易く、軽量で薄くすることが可能であり、可撓性にも優れるという点で、樹脂材料が好ましく用いられる。電離放射線硬化性樹脂と熱硬化性樹脂については、後述の透明樹脂の説明箇所で例示するものと同様のものの中から選択して使用できる。また、熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の含ハロゲン樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体等のスチレン系樹脂、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセテートブチレートセルロース等のセルロース樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、等が使用できる。
【0021】
この透明基材4には溝状凹部3が形成されるため、その厚さは溝状凹部3の深さHよりも厚い必要があり、通常、20μm〜5000μm程度の範囲である。即ち、透明基材4は厚さ的には、所謂フィルム、シート、或は板の各種形態をとり得る。
【0022】
(暗色部)
暗色部10は、図2及び図3に示すように、透明基材4の一方の面に形成されており、透明基材4の面内方向に沿って平行に並設された直線状の、且つその延長方向に直交する断面形状が台形又は略台形の形態からなるものである。そして、この暗色部10は、断面形状が台形又は略台形の溝状凹部3内に、暗色粒子1と透明樹脂2とが充填されて構成されている。
【0023】
先ず、溝状凹部3の形状について説明する。溝状凹部3は、図2及び図3に示すように、断面形状が台形又は略台形である。ここで、断面形状とは、直線状に延びる溝状凹部3の延長方向に直交する断面の形状をいう。また、台形の溝状凹部とは、図4(A)に示すように、透明基材4の一方の面S1側の辺(下底)の幅Wが広く、他方の面S2側の辺(上底)の幅が狭い態様で構成されたものである。また、略台形の溝状凹部としては、両辺(上底と下底)の幅の差が小さい形状、すなわち長方形や正方形に近い形状を含み、また、楔型の3角形の頂点近傍をS1側の辺(下底)に平行に切断した3角形に近似する形状も含む。なお、溝状凹部3はこうした台形又は略台形に限らず、正方形、長方形等の4角形や、3角形、5角形等の多角形であってもよいが、好ましくは上記した台形又は略台形である。
【0024】
特に、外光存在下の画像コントラスト向上効果、画像の明るさ(輝度)、及び画像の高視野角との両立性の点では、溝状凹部3は、その断面形状が台形で、且つ対向する両辺(上底と下底)の幅に有意差があり、画像表示装置側(すなわち面S1側)に幅広の底辺、観察者側(すなわち面S2側)に幅狭の底辺を備え、且つ溝深さHが大きい方の辺(下底)の幅(最大幅)Wよりも大きいことが好ましい。なお、勿論、これとは逆に、後述のように、画像表示装置側に幅狭の底辺、観察者側に幅広の底辺を備える向きに設置することも可能である。
【0025】
このように、溝状凹部3は、従来技術の黒色纖維とは異なり、最大幅Wと深さHとを独立に設定することができるので、最大幅Wを小さくし、必要であれば更に溝状凹部間の繰り返し周期を大きくて、開口率を大きくした上で、且つ深さHを大きくし、斜方向から入射する外光の大部分を吸収する暗色部10の側面部(深さH方向に伸びる側面)の表面積を大きくすることが可能である。その結果、黒色繊維メッシュでは不可能であった画像光の高光透過率と外光の高光吸収率との両立が可能となる。なお、ここでの開口率とは、画像コントラスト向上層100の法線方向から見た全面積に対する開口部(暗色部10を形成していない部分、すなわち透光性領域20)の面積の比率をいう。
【0026】
溝状凹部3と透明基材4との界面からなる斜面5が出光面の法線(画像コントラスト向上層100に対する垂直入射光に平行な線P)となす角度θは、所定の角度に形成されていることが好ましく、例えばθが3°〜15°の範囲であることが好ましい。θが3°以上であると、画像表示装置からの表示光が観察者側に十分に到達し、輝度向上効果が得られる。しかも、画面に斜め方向に入射する外光については、十分な断面積を持つ暗色部10で吸収できるため、外光反射を抑止して画像コントラストを向上させることができる。一方、θが15°以下であると、外光を吸収する暗色部10の側面の断面積を維持しつつ、画像光が通過する透光性領域(暗色部非形成領域)の面積も高く保てるため、画像光の強度(輝度)を高く保つことができる。
【0027】
なお、溝状凹部3の大きい方の底辺の長さ(すなわち最大幅W)は10μm〜100μm程度であることが好ましく、小さい方の底辺の長さは5μm〜50μm程度であることが好ましく、深さHは10μm〜200μm程度であることが好ましく、溝状凹部3の周期(ピッチ)は10μm〜900μm程度であることが好ましく、開口率は50%〜90%程度であることが好ましい。
【0028】
次に、暗色部10を構成する材料、すなわち溝状凹部3に充填される材料について説明する。暗色部10は、可視光線波長域の大部分を吸収し、入射する可視光線(外光)を高い割合で吸収することが望ましく、その結果、暗色部10で反射する外光が目立たず、その反射光が画像光に混入しても画像コントラストの低下が目立たないようになる。したがって、暗色部10には、そうした作用を発揮する色に設定することが望ましい。暗色部10の色は完全な黒色が理想であるが、実用上は完全な黒色にする必要はなく、上記の作用を発揮するものであれば有彩色であってもよい。具体的には、黒、濃い灰色等の無彩色、褐色、臙脂色、紺色、深緑色、濃紫色等の低明度の有彩色であってもよい。
【0029】
暗色部10を構成する暗色粒子1としては、所定の粒径からなる各色の粒子を用いることができる。例えば、黒色粒子としては、カーボンブラック(墨)、黒色酸化鉄等の黒色顔料や、アクリル等の透明粒子をカーボンブラック等の黒色顔料で染色した樹脂粒子等が用いられる。
【0030】
また、暗色粒子1は、黒色粒子以外の、青色、紫色、黄色、赤色の各種顔料を混合して無彩色化した顔料粒子であってもよいし、それらの顔料で染色した樹脂粒子であってもよい。青色顔料としては、銅フタロシアニンブルー、インダスレンブルー、コバルトブルー、群青等が用いられ、紫色顔料としては、ジオキサジンバイオレット等が用いられ、黄色顔料としては、ジスアゾイエロー、イソインドリノンイエロー、黄鉛等が用いられ、赤色顔料としては、クロモフタルレッドタイペル、キナクリドンレッド、弁柄等が用いられ、緑色顔料としては、銅フタロシアニングリーン、緑青等が用いられる。また、低明度の有彩色とした暗色粒子1であってもよく、その例としては、前記の青色、紫色、黄色、赤色、又は緑色の各種顔料を1種類又は2種類以上適宜混合分散し、必要に応じ、更に黒色顔料を混合した着色顔料、あるいは、アクリル等の透明粒子をこれら顔料で着色した樹脂粒子であってもよい。これらの暗色粒子1の中では、黒色粒子がもっとも光吸収性が高く、しかも画像コントラスト向上層自体の色相に影響を与えないので好ましい。
【0031】
暗色粒子1の粒子径として、特にその最小粒径dminと最大粒径dmaxが後述する関係を満たすことが必要である。すなわち、少なくとも暗色粒子1の最大粒径dmaxは、溝状凹部3の最大幅Wよりも小さく、且つその深さHよりも小さいことが必要である。一方、暗色粒子1の最小粒径dminは透明保護層2Lの厚さよりは大きいことも必要である。したがって、暗色粒子1の粒子径はそうした条件を満たすものを任意に選択して用いられるが、通常は、0.1μm〜100μmの範囲内から任意に選択される。なお、暗色粒子1の最小粒径dminと最大粒径dmaxは、用いる暗色粒子1を電子顕微鏡観察して測定することができる。
【0032】
暗色粒子1とともに暗色部10を構成する透明樹脂2としては、電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が各種使用可能である。電離放射線硬化性樹脂とは、電磁波又は荷電粒子線、例えば紫外線又は電子線等を照射することにより、架橋又は重合反応にて硬化する樹脂を意味する。このような電離放射線硬化性樹脂としては、例えば電離放射線重合性プレポリマー及び/又は電離放射線重合性モノマーを挙げることができる。
【0033】
電離放射線重合性プレポリマー(オリゴマーも包含する)としては、例えばポリエステ
ル(メタ)アクリレート系、エポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリオール(メタ)アクリレート系、シリコーン(メタ)アクリレート、不飽和ポリエステル系等の分子中にラジカル重合性官能基を有する重合性オリゴマー、あるいはノボラック系型エポキシ樹脂プレポリマー、芳香族ビニルエーテル系樹脂プレポリマー等のエポキシ系樹脂等の分子中にカチオン重合性官能基を有する重合性オリゴマー等が挙げられる。これらの電離放射線重合性プレポリマーは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、ここで、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。
【0034】
また、電離放射線重合性モノマー(単量体)としては、分子中にラジカル重合性官能基を有する重合性モノマーである多官能性(メタ)アクリレートが好ましく、具体的にはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。カチオン重合性官能基を有するモノマーとして、例えば、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート等の脂環式エポキシド類、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等グリシジルエーテル類、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル等ビニルエーテル類、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン等オキセタン類等が挙げられる。これらの電離放射線重合性モノマーは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、前記電離放射線重合性プレポリマーと併用してもよい。
【0035】
電離放射線硬化性樹脂として紫外線硬化性樹脂を用いる場合には、光重合用開始剤を電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して、0.1重量部〜5質量部程度添加することが望ましい。光重合用開始剤としては、従来慣用されているものから適宜選択することができ、特に限定されない。
【0036】
分子中にラジカル重合性官能基を有する重合性モノマーや重合性オリゴマーに対しては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール等が挙げられる。また、分子中にカチオン重合性官能基を有する重合性モノマーや重合性オリゴマー等に対しては、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等が挙げられる。また、光増感剤としては、例えばp−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤等を用いることができる。
【0037】
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、フェノール−ホルマリン樹脂、尿素樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル−メラミン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ−メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリシロキサン樹脂、ポリウレタン樹脂、汎用の2液硬化型アクリル樹脂(アクリルポリオール硬化物)等を例示することができる。
【0038】
(透光性領域)
透光性領域20は、図2及び図3に示すように、隣接する暗色部10,10間に位置し、透明基材4の表面S1が透明保護層2Lで覆われて構成されている。この透明保護層2Lは、溝状凹部3に暗色粒子1とともに充填される透明樹脂2のみが、透明基材4の溝状凹部非形成部(凸部、又は透光性開口部ともいう。)、すなわち透光性領域20を被覆して構成されたものである。透明保護層2Lの厚さtは、用いる暗色粒子1の最小粒径及び最大粒径との関係で規定されるが、後述する関係を満たす範囲であれば、0.1μm〜30μmの範囲であることが好ましい。透明保護層2Lの厚さtが0.1μm未満では、通常の製法において、透明基材4の溝状凹部3以外の平坦部8である凸部上に形成した透明保護層2Lを研磨や拭き取り無しで実現することは困難であるとともに、主に透光性領域20の表面の汚染や擦り傷からの保護層としても不十分となる。また、透明保護層2Lの厚さtが30μmを超えると、表面の保護機能としては過剰品質となり、不要な価格高騰をきたすため、好ましくない。透明保護層2Lを汚染や擦り傷から保護する上では、高硬度で耐擦傷性に優れる電離放射線硬化性樹脂、又は熱硬化性樹脂が好ましい。
【0039】
(暗色部と透光性領域の関係)
本発明の特徴は、暗色部10と透光性領域20の構成要素が以下の関係であるように構成した点にある、すなわち、暗色粒子1の最小粒径dmin及び最大粒径dmaxと、透明保護層2Lの厚さtと、溝状凹部3の最大幅W及び深さHとの間に、t<dmin<dmax<W、且つ、t<dmin<dmax<H、の関係が成り立つように構成されていることに特徴がある。
【0040】
画像コントラスト向上層100がこうした関係を満たすことにより、暗色粒子1は溝状凹部3内にのみ存在し、透光性領域20には存在しない。一方、透明樹脂2は暗色部10と透光性領域20の両方に渡って存在し、透光性領域20には、透明樹脂2のみからなる透明保護層2Lが被覆される。ここで、暗色粒子1が溝状凹部3内にのみ存在するとは、厳密には図1(A)に示すように、溝状凹部3内に暗色粒子1の一部が掛かっているものを含む。なお、特に最小粒径dminと厚さtの関係では、dmin/t=1.5〜10であることがより好ましく、また、最大粒径dmaxとW乃至Hとの関係では、W/dmax=2〜50であることがより好ましく、H/dmax=2〜100であることがより好ましい。なお、外光を吸収してコントラストをより向上させるという観点からは、H>Wであることがより好ましい。
【0041】
(透明支持体)
透明支持体6は、図3に示すように、透明基材3の透明保護層非形成側の面S2に必要に応じて設けることができる。なお、本願では、図3に示す透明支持体6を備えた画像コントラスト向上層を符号100Bで表し、図2に示す透明支持体6を備えない画像コントラスト向上層を符号100Aで表している。この透明支持体6は、透明基材4を支持し、透明基材4の機械的強度を補強したり、あるいは透明基材4の層形成、透明基材4上への溝状凹部3の形成、暗色部形成用組成物の溝状凹部3内への充填と透明保護層2Lの形成、画像コントラスト向上層100の他部材への積層等の加工工程における加工適性の付与等の目的で好ましく設けられるものである。この透明支持体6の材料は、上述した透明基材4のところで説明した材料から、透明支持体6を設ける目的に照らして適宜選択して適用できる。また、透明支持体6の厚さも透明支持体6を設ける目的に照らして適宜選択すればよい。
【0042】
なお、図3の斜視図からわかるように、暗色部10は、透明基材4の面内方向に沿って平行に多数並設されており、直線状で形成されており、且つその延長方向(図3中ではy方向)に直交する断面形状が台形又は略台形の形態からなっている。
【0043】
[画像コントラスト向上層の製造方法]
次に、本発明で用いる画像コントラスト向上層の製造例を説明する。図4は、本発明で用いる画像コントラスト向上層の製造方法の一例を示す工程フロー図である。
【0044】
先ず、図4(A)に示すように、一方の面S1の面内方向に沿って平行に並設された直線状の、且つその延長方向に直交する断面形状が台形又は略台形の溝状凹部3が形成されてなる透明基材4を準備する。溝状凹部3は各種の方法で加工することができる。例えば、加熱した賦形金型を熱可塑性樹脂に押圧する熱プレス法、熱可塑性樹脂組成物を賦形金型上に注入して固化させるキャスティング法、射出成形法、紫外線硬化型樹脂組成物を成形型内に注入して紫外線硬化させるUVキャスティング法、等の方法を任意に選択して形成することができる。これらの方法の中では、量産性に優れたUVキャスティング法がより好ましい。UVキャスティング法は、ロール状の金型を使用し、連続シートを供給しながら溝状凹部3を連続的に型押しして生産することができる。ロール状の金型は、例えば中空鉄円筒の表面に銅層を積層し、その銅層に形成すべき溝状凹部3の反転形状を賦形したものを例示できる。
【0045】
次に、図4(B)に示すように、溝状凹部3が形成された側の面S1に、暗色粒子1と透明樹脂2とを有する液状樹脂組成物7を塗布する。塗布は、ノズル71等を用いて行うことができる。液状樹脂組成物は、既述の暗色粒子1と透明樹脂2を任意に選択し、必要に応じて溶剤を配合して所定の粘度となるように調製したものである。なお、液状樹脂組成物には、製造上の容易さを向上させるため、必要に応じて脱泡剤やレベリング剤等の添加剤を添加してもよい。
【0046】
次に、図4(C)に示すように、塗布された液状樹脂組成物7を掻き取って、溝状凹部3内には暗色粒子1と透明樹脂2とを充填し、溝状凹部以外の平坦部8には暗色粒子1は存在させずに透明樹脂2のみを所定厚さt’で残す。掻き取りは、例えばドクターブレード72等を用いたワイピング法により行うことができるが、その際、ドクターブレード72等と平坦部8との間に所定の隙間を形成して行う。このときの所定の隙間としては、掻き取った後に平坦部8上に残る透明樹脂2の厚さt’が、次の固化工程によって形成される透明保護層2Lの厚さt以上となるように形成するとともに、後述の関係を満たすように形成する。
【0047】
最後に、図4(D)に示すように、透明樹脂2を固化して、溝状凹部3を暗色部10とし、平坦部8を所定厚さtの透明保護層2Lで覆われた透光性領域20とする。こうして本発明で用いる画像コントラスト向上層100を製造できる。
【0048】
こうした各工程を経て画像コントラスト向上層100(100A)を製造するが、本発明では、得られた画像コントラスト向上層100が以下の関係を有するように製造条件を設定する。すなわち、暗色粒子1の最小粒径dmin及び最大粒径dmaxと、平坦部8に残った透明樹脂2の厚さt’と、溝状凹部3の最大幅W及び深さHとの間に、t’<dmin<dmax<W、且つ、t’<dmin<dmax<H、の関係が成り立つようにする。したがって、準備する透明基材4に形成される溝状凹部3の最大幅Wと深さHの仕様については上記関係を満たすようにするとともに、液状樹脂組成物の調製にあたっても上記関係を満たすような暗色粒子1を選定し、ドクターブレード等で液状樹脂組成物を掻き落とす際にも上記厚さt’になるようにドクターブレード等と平坦部8との隙間を調製する。
【0049】
以上、本発明に係る画像コントラスト向上層の製造方法によれば、液状樹脂組成物7を掻き取った後の平坦部8に残った所定厚さt’の中には暗色粒子1が存在せず、透明樹脂2のみが存在する。そして、その後に透明樹脂2を固化することにより、溝状凹部3を暗色部10とし、平坦部8を所定厚さtの透明保護層2Lで覆われた透光性領域10とした画像コントラスト向上層を製造できる。こうして製造された画像コントラスト向上層100は、透光性領域20には暗色粒子1が存在しないことから、その透光性領域10を通過する光の光透過性が低下せず、表示画像が暗くなって表示画像の視認性を損なうことがない。しかも、暗色部10が外光を効果的に吸収するので、画像のコントラストを向上させることができる。さらに、透光性領域20が透明保護層2Lで覆われるので、搬送工程や保管工程の際等に、画像の透過部位である透光性領域20が汚染されたり傷が付いたりしない。その結果、表示画像の画質を低下することがなく、高品質の画像を表示することができる。
【0050】
〔電磁波遮蔽シート〕
本発明のフィルタを構成する電磁波遮蔽シート300は、透明基材シート301上に導電体パターン層302を形成したもので、電磁波遮蔽性能と光透過性とを両立させた電磁波遮蔽シートである。
【0051】
(透明基材シート)
透明基材シート301は、可視領域での透明性(光透過性)、耐熱性、機械的強度等の要求物性を考慮して、公知の材料及び厚みを適宜選択すればよいが、生産性に優れるロール・トゥ・ロールでの連続加工適性を考慮すると、フレキシブルな樹脂フィルム(乃至樹脂シート)が好ましい。
樹脂フィルム、樹脂シートの樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、エチレングリコール−1,4シクロヘキサンジメタノール−テレフタール酸共重合体、エチレングリコール−テレフタール酸−イソフタール酸共重合体などのポリエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリプロピレン、シクロオレフィン重合体などのポリオレフィン系樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂等である。なかでも、ポリエチレンテレフタレートはその2軸延伸フィルムが耐熱性、機械的強度、光透過性、コスト等の点で好ましい樹脂である。
透明基材シートの厚みは基本的には特に制限はなく用途等に応じ適宜選択すればよいが、フレキシブルな樹脂フィルムを利用する場合、例えば12〜500μm、好ましくは25〜200μm程度である。
【0052】
(導電体パターン層)
導電体パターン層302は、電磁波遮蔽性能と光透過性とを両立させたパターン層であればよく、金属パターン層、導電性組成物印刷パターン層のいずれでもよい。
該パターンは、電磁波遮蔽層に通常採用されるメッシュ(格子)状、ストライプ(縞)状、或いはスパイラル(螺旋)状であってよく、その線幅と線間ピッチも通常採用されている寸法であればよい。例えば、線幅は5〜50μmとすることができ、線間ピッチは100〜500μmとすることができる。開口率(電磁波遮蔽パターンの全面積中における開口部の合計面積の占める比率)は、通常、50〜95%程度である。またメッシュやストライプ形状の電磁遮蔽パターンとは別に、それと導通を保ちつつ隣接した全ベタ等の接地パターンが設けられる場合もある。
また、導電体パターン層の厚さは、その導電体パターン層の抵抗値によっても異なるが、電磁波遮蔽性能と該導電体パターン層上への他部材の接着適性との兼ね合いから、その中央部(突起パターンの頂部)での測定において、通常、2μm以上50μm以下であり、好ましくは、5μm以上20μm以下である。
【0053】
金属パターン層としては、金、銀、白金、銅、白金、アルミニウム、錫、鉄、コバルト、ニッケル等の高導電率の金属のパターン層が挙げられる。
透明基材シート上への金属パターン層の形成方法としては、次のような方法が挙げられる。
(1)一旦、透明基材シート上に金属厚膜を接着剤層を介して全面連続被覆した後、フォトリソグラフィー等の手法により、不要部分を除去して、所望のパターンに形成する方法。
(2)先ず、透明基材シート上の金属層不要部分直上部をレジスト層で被覆し、しかる後、その上に真空蒸着、スパッタリング、電解又は無電解メッキ等で金属により、レジスト非形成部直上にのみ金属を堆積積層する方法。
(3)先ず、印刷法により、透明基材シート上の金属層必要部分直上部を無電解メッキで所望の金属を析出させ得る触媒層で被覆し、しかる後、その上に無電解メッキで金属層を堆積積層する方法。
【0054】
透明基材シート上への導電性組成物印刷パターン層の形成方法としては、次のような方法が挙げられる。
(1)WO2008/149969A1(PCT/JP2008/60427)記載の如き、(所謂「引抜プライマー」と我々が俗称する)凹版印刷法により、導電性組成物層を所望のパターン状に形成する方法。
(2)その他の印刷法(上記(1)以外の従来の通常凹版印刷、シルクスクリーン印刷等)により、導電性組成物層を所望のパターン状に形成する方法。
導電性組成物は、金、銀、白金、銅、ニッケルなどの高導電率の金属粒子、グラファイト粒子、カーボンブラック粒子などから選ばれる導電性粒子と、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂或いは熱可塑性樹脂であるバインダー樹脂からなり、凹版印刷のためには、一般的に印刷インキに用いられる溶剤を使用して流動性のあるインキとする(電離放射線硬化性樹脂を用いる場合には、もともと流動性があるため、必ずしも溶剤を必要としない)。
WO2008/149969A1記載の凹版印刷法では、透明基材シート上に形成した未硬化の電離放射線硬化性樹脂である液状プライマー層を介在させることで、凹版凹部内の導電性組成物との密着、及びプライマー層固化後の透明基材シートの離版により、高いインキ転移性を得る。
【0055】
導電性組成物からなるパターン層のみでは所望の導電率に不足する場合に、導電率を更に向上せしめるために、必要に応じ、銅、銀、金、クロム、ニッケル、錫などの金属層をめっきにより形成する。めっきの方法としては、生産性の高い電気めっきが好ましい。
【0056】
[接着剤層]
接着剤層200は、画像コントラスト向上層100と電磁波遮蔽シート300の導電体パターン層側とを貼り合わせる層であり、熱可塑性樹脂の接着剤が好ましく用いられる。
熱可塑性樹脂の接着剤は、室温(0〜30℃乃至その前後)で固体であり、100℃前後で溶融状態となり、しかる後、融点乃至溶融温度未満に冷却して固体化せしめることにより導電体パターン層と画像コントラスト向上層の両方に対して接着性を持つ材料である。斯かる形態で用いる熱可塑性樹脂の接着剤のことを熱溶融(ホットメルト;Hot Melt)型接着剤、感熱融着型接着剤、熱封着(ヒートシール;Heat Seal)型接着剤等とも呼称する。
そのような熱可塑性樹脂の接着剤の材料としては、例えば、アクリル樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等が好適に使用できる。
ここで、アクリル樹脂としては、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート−エチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート−スチレン共重合体、メチル(メタ)アクリレート−2ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート−2ヒドロキシ3フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート−2ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート−スチレン共重合体等が挙げられる(なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する)。
熱可塑性ポリエステル樹脂としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,4シクロヘキサンジメタノール等の多価アルコールと、テレフタール酸、イソフタール酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸等の多塩基酸とを縮重合させたものが挙げられる。
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体としては、例えば、酢酸ビニル含有量が5〜20質量%程度、平均重合度350〜900程度の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体が挙げられる。なお、必要に応じ、更にマレイン酸、フマル酸、(メタ)アクリル酸等のカルボン酸を共重合させたものでもよい。
【0057】
熱可塑性樹脂の接着剤層は、導電体パターン層の凹凸を埋めて平坦化層ともなるものであり、その厚みは金属パターン層の厚み以上であることを要する。
【0058】
本発明のフィルタを得るために、画像コントラスト向上層と電磁波遮蔽シートとを接着剤で貼り合わせる方法としては、次のような所謂ヒートシール方式によるのが好ましい。
一方の面に熱可塑性樹脂の接着剤層を成膜してなる画像コントラスト向上層を、その熱可塑性樹脂の接着剤層側を導電体パターン層に対面する向きで、電磁波遮蔽シート上に重ね合わせて、画像コントラスト向上層の上から熱ローラを当て、一方向に移動させて、熱圧を加える。加熱のみでもよいが、通常は、加熱及び加圧の両方を加える。加熱及び加圧(熱圧の付与)は、通常、鉄等の金屬の円筒状芯材の周囲をシリコンゴム等の耐熱性弾性体で表面を被覆した加熱ローラにて押圧する。斯かる加熱ローラによる熱圧条件としては、温度100〜220℃、圧力0.1〜50kgf/cm2、時間1〜60秒が好ましい。加熱、或いは加熱及び加圧し、溶融状態の接着剤が導電体パターンの凹凸を十分に充填し、凹部内の空気と十分に置換した後、該熱可塑性樹脂の接着剤層をその溶融温度乃至融点未満、最終的には室温迄に冷却し、該熱可塑性樹脂の接着剤層を固体化せしめる。斯かる冷却は、室温空気中に放置するのみでも足りるが、より効率的に冷却する場合は、冷風吹き付け、冷却ローラとの接触、冷水中への浸漬等の手段を採用する。
【0059】
なお、本発明のフィルタを得るために、画像コントラスト向上層と電磁波遮蔽シートとを接着剤で貼り合わせる際、画像コントラスト向上層の向きとしては、外光存在下の画像コントラスト向上効果等の点から、通常は、図1の如く、接着剤層側(画像表示装置側)に暗色部の幅広の底辺がくるように配置するのが好ましいが、逆向きであっても差し支えない。特に、画像の視野角を狭く規定したり、外光吸収性を高くしたい場合には、こちら(逆向き)の方が好ましい。
【0060】
[その他の層構成]
本発明のフィルタは、基本的に、画像コントラスト向上層100、接着剤層200及び電磁波遮蔽シート300で構成されるが、これらの層に加えて、各種の機能層を適宜積層位置に積層することができる。該機能層としては、例えば、図1の如く、画像コントラスト向上層、電磁波遮蔽シートの接着剤層とは接しない面側に、それぞれ、耐擦傷機能(ハードコート)層400、粘着剤層500が設けられていてもよい。耐擦傷機能層は本発明のフィルタを保護するための層であり、粘着剤層は、本発明のフィルタを画像表示装置本体又は画像表示装置基板に接着する役割を有する層である。その他、図示は略すが、該機能層としては、近赤外線吸収層、ネオン光吸収層、調色(着色)層、紫外線吸収層、反射防止層、防眩層、耐衝撃層、耐汚染層等が挙げられる。
また、本発明のフィルタにおいて、画像コントラスト向上層の透明基材部、接着剤層、粘着剤層のいずれか1層以上に、近赤外線吸収剤、ネオン光吸収剤、調色光吸収剤、紫外線吸収剤などの各種吸収剤を含有させ、これら層自体を、近赤外線吸収層、ネオン光吸収層、調色(着色)層、紫外線吸収層等と兼用させることもできる。
【0061】
(耐擦傷機能層)
耐擦傷機能(ハードコート)層は、JISK5600−5−4(1999)で規定される鉛筆硬度試験で「H」以上の硬度を示すものであることが好ましく、このような硬度と十分な透明性を実現できるものであれば、材料は特に限定されない。
耐擦傷機能(ハードコート)層は、通常樹脂硬化層として形成される。
用いる硬化性樹脂としては、電離放射線硬化性樹脂、その他公知の硬化性樹脂などを要求性能などに応じて適宜採用すればよい。電離放射線硬化性樹脂としては、アクリレート系、オキセタン系、シリコーン系などが挙げられる。例えば、アクリレート系の電離放射線硬化性樹脂は、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートプレポリマー、或いは、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレートモノマーを単独で或いはこれらの中から2種以上選択して組み合わせて配合した電離放射線硬化性樹脂を用いた塗膜として形成することができる。
耐擦傷機能(ハードコート)層は上記材料を必要に応じて溶剤で希釈して画像コントラスト向上層上に塗工等の湿式成膜法により形成することができる。
耐擦傷機能層の厚みは特に限定されるものではないが、1.0μm以上20μm以下が好ましく、より好ましくは3.0μm以上5μm以下である。
【0062】
(粘着剤層)
粘着剤層500は、電磁波遮蔽シートの接着剤層とは接しない面側、透明基材シート301の裏面上に形成され、本発明の光学フィルタを画像表示装置本体又は画像表示装置基板に接着する役割を有すると共に、後述の各種吸收剤を含有させるのに好ましい層である。
【0063】
粘着剤層500に用いる粘着剤としては、基本的には特に制限はなく、公知の粘着剤の中から、粘着性(接着力)、透明性、塗工適性などを有し、またそれ自体好ましくは無着色のものを適宜選択する。このような粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリエステル系粘着剤などが挙げられる。
【0064】
本発明の粘着剤層500は、前記粘着剤を適当な溶剤に溶解させた粘着剤溶液からなる塗工液を、電磁波遮蔽シートを構成する透明基材シート301の裏面上に塗工し、塗膜を形成させた後、乾燥させることにより形成される。
【0065】
これら粘着剤層500の厚さとしては、5〜800μmの範囲が好ましい。厚さが5μm以上であると、粘着剤としての機能を十分に果たし、硝子基板又は画像表示装置等との十分な接着を得ることができるとともに、所定の吸收剤を添加することによって近赤外線等の所定の不要輻射を十分に吸収することができる。粘着剤層5の厚さは10〜500μmの範囲がさらに好ましく、20〜300μmの範囲が特に好ましい。また、粘着剤層500の厚さを200μm以上とすることにより、画像表示装置に加わる衝撃力を吸收緩和する耐衝撃層としての機能を持たせることもできる。
【0066】
前述の如く、本発明においては、画像コントラスト向上層の透明基材部4、接着剤層200、粘着剤層500のいずれか1層以上に、近赤外線吸収剤、ネオン光吸収剤、調色光吸収剤、又は紫外線吸収剤の中から選択されるいずれか1種以上の吸収剤を含有させることにより、本発明の光学フィルタに、所望の光学フィルタ機能を持たせる。また、前述の如く、これらを添加するのに最も好適な層は粘着剤層500である。
【0067】
(近赤外線吸収剤)
近赤外線吸収剤は、本発明の光学フィルタの代表的な用途であるPDPに適用する場合、PDPがキセノンガス放電を利用して発光する際に生じる近赤外線領域、即ち、800nm〜1100nmの波長領域を吸収し、且つ可視光領域、即ち、380nm〜780nmの波長領域では吸収が少なくて十分な光線透過率を有する色素が好ましい。そして、粘着剤層500に添加する場合、上記近赤外線領域での近赤外線の吸収量が、透過率でいえば20%以下、更に好ましくは10%以下となるように、近赤外線吸収剤の種類、近赤外線吸収剤の粘着剤層中での含有量、及び粘着剤層の厚み等を設定するのが好ましい。
このような近赤外線吸収剤としては、具体的には、フタロシアニン系、イモニウム系、ジイモニウム系、ジチオール金屬錯体、シアニン系化合物、アゾ化合物、ポリメチン系化合物、キノン系化合物、ジフェニルメタン系化合物、トリフェニルメタン系化合物系等の有機系化合物からなる有機系近赤外線吸收剤、或いは金属酸化物、金属ホウ(硼)化物、金属窒化物などの無機系化合物から成る無機系近赤外線吸收剤が挙げられ、耐久性の面から、無機系近赤外線吸收剤が好ましい。
金属酸化物としては、例えば、酸化タングステン系化合物、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化亜鉛、酸化ルテニウム、酸化インジウム、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、酸化錫、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、酸化セシウムなどの微粒子が挙げられる。十分な可視光線透明性を発現せしめるためには、平均粒子径は可視光線の最低波長である380nm以下、特に平均粒子径40〜200nmのものが好ましい。
金属ホウ化物としては、多ホウ化金属化合物が好ましく、具体的には、ホウ化ランタン(LaB6)、ホウ化プラセオジウム(PrB6)、ホウ化ネオジウム(NdB6)、ホウ化セリウム(CeB6)、ホウ化イットリウム(YB6)、ホウ化チタン(TiB6)、ホウ化ジルコニウム(ZrB6)、ホウ化ハフニウム(HfB6)、ホウ化バナジウム(VB6)、ホウ化タンタル(TaB6)、ホウ化クロム(CrB、CrB6)、ホウ化モリブデン(MoB6、Mo25、MoB)、ホウ化タングステン(W25)などが挙げられ、また、金属窒化物としては、窒化チタン、窒化ニオブ、窒化タンタル、窒化ジルコニウム、窒化ハフニウム、窒化バナジウムなどが挙げられる。
これらの中で、近赤外線の高吸収率と可視光線の高透過率との両立性、及び高湿高湿度条件下における分光透過率特性の変化に対する耐久性の点から、特開2006−154516号公報等記載の酸化タングステン系化合物が好ましく、特にセシウム含有酸化タングステンが、近赤外線吸収能が高いことから特に好適である。
上記近赤外線吸収剤の含有量は、吸収層中に0.1〜15質量%程度であることが好ましい。
【0068】
(ネオン光吸収剤)
ネオン光吸収剤は、本発明の光学フィルタの代表的な用途であるPDPに適用する場合、PDPから放射されるネオン光を吸収させる色素である。該ネオン光は、ネオン原子の発光スペクトル帯域、即ち550〜640nmの波長領域(ネオン光領域)を吸収し、且つ該波長領域を除いた可視光領域380nm〜780nmの波長領域中ではなるべく吸収が少なくて十分な光線透過率を有する色素が好ましい。
そして、粘着剤層500に添加する場合、上記Ne光領域の中心波長を590nmとすれば、該590nmにおける光線の透過率が50%以下になるように、ネオン光吸収剤、ネオン光吸収剤の粘着剤層中での含有量、及び粘着剤層の厚み等を設定するのが好ましい。
このようなネオン光吸収剤としては、具体的には、シアニン系、オキソノール系、メチン系、サブフタロシアニン系もしくはポルフィリン系等が挙げられる。これらの中でもポルフィリン系が好ましく、中でも、テトラアザポルフィリン系色素が、分散性が良好で、且つ耐熱性、耐湿性、耐光性が良好な点から好ましい。
ネオン光吸収剤の含有量は、ネオン光吸収層中に、0.05〜5質量%であることが好ましい。含有量が0.05質量%以上であれば充分なネオン光吸収機能を発現でき、5質量%以下であれば、充分な量の可視光線を透過できる。
【0069】
(調色光吸収剤)
調色光吸収剤は、表示画像を好みの色調(天然色、或いは天然色から多少偏移した色)に補正するための色素である。このような調色光吸収剤としては、有機系色素、無機系色素などを1種単独使用、又は2種以上併用することができる。具体的には、アントラキノン系、ナフタレン系、アゾ系、フタロシアニン系、ピロメテン系、テトラアザポルフィリン系、スクアリリウム系、シアニン系等の色素が挙げられる。
調色光吸収剤の含有量は、補正すべき色に合わせて適宜調整され、特に限定されない。通常、調色層中に0.01〜10質量%程度含有する。
【0070】
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤としては、例えば、サリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、置換アクリロニトリル系、トリアジン系等の有機系化合物、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウムなどを微粒子化した粉体、あるいは二酸化チタン微粒子を酸化鉄で複合化処理してなるハイブリッド無機粉体、酸化セリウム微粒子の表面を非結晶性シリカでコーティングしてなるハイブリッド無機粉体等の無機系化合物からなる公知の化合物を用いることができる。
なお、紫外線吸収剤を添加する場合、他の吸収剤(色素)を外来光から保護するために、他の吸収剤(色素)を添加した層と同じ層か、或いはその層よりも観察者側に近い層に添加する。また、耐光性が堅牢な色素を使用する場合は、紫外線吸収剤の添加は不要である。
【0071】
本発明の光学フィルタは、各種用途に使用可能である。特に、各種の、テレビジョン受像装置、測定機器や計器類、事務用機器、医療機器、電算機器、電話機、遊戯機器等の表示部に用いられるプラズマディスプレイ(PDP)、ブラウン管ディスプレイ(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、電場発光ディスプレイ(EL)などの画像表示装置の前面フィルタ用として好適であり、特にプラズマディスプレイ用として好適である。また、その他、住宅、学校、病院、こと務所、店舗等の建築物の窓、車両、航空機、船舶等の乗物の窓、電子レンジの窓等の等の各種家電製品の窓等の電磁波遮蔽及び反射防止(或いは視野角規制)用途にも使用可能である。
【実施例】
【0072】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例により何ら限定されるものではない。
【0073】
[実施例1]
<画像コントラスト向上層の作製>
先ず、透明支持体6として、両面易接着処理された厚さ188μmのポリエチレンテレフタレート(PET)シート(東洋紡績社製;品名A4300)を準備し、その上に、ウレタンアクリレートプレポリマーからなる紫外線硬化性樹脂を厚さ300μmとなるように塗布し、未硬化状態の透明基材を形成した。この未硬化状態の透明基材表面に、ピッチが70μmで溝状凹部3を形成した側の開口幅が20μmで深さが120μmの溝状凹部3を形成できる金属製賦形型ロールを押し当て、所望の溝状凹部形状を刻設しながら背面から紫外線を照射して透明基材4を硬化させた。こうして、ピッチが70μmで溝状凹部3を形成した側の開口幅が20μmで深さが120μmの溝状凹部3を形成した。なお、賦形型ロールは、その円周方向に溝状凹部3が賦形されているので、シート部材上で回転させることにより、シート部材の長手方向に延びるように溝状凹部3を形成することができる。
次に、透明アクリル系の紫外線硬化性プレポリマー100質量部中に、最小粒径が2μmで最大粒径が3μmの黒い球状ビーズ状粒子50質量部、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名:イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)2質量部を混合して液状の紫外線硬化性樹脂組成物7を調製した。この液状樹脂組成物7を、上記のようにして得られた溝状凹部形成済みの透明基材4の該溝状凹部形成面側上に塗工し、その後、ドクターブレード72でワイピングした。ワイピングに際しては、同時に背面から紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂である透明樹脂2を硬化させた。ワイピングでは、透明基材4の平坦部8とドクターブレード72との隙間を1.5μmとして行い、そのワイピングを2回繰り返した。その結果、溝状凹部3には透明樹脂2である紫外線硬化性樹脂と暗色粒子1である黒い球状ビーズが充填され、一方、平坦部8の上には透明樹脂2のみを厚さ1.5μmで残留させることができ、同時に行ったUV照射によりその透明樹脂2を硬化させて厚さ1μmの透明保護層2Lを形成した。こうして、実施例1の画像コントラスト向上層100を得た。なお、上記において、[透明樹脂の屈折率]−[球状ビーズの屈折率]=−0.003であった。
【0074】
<画像コントラスト向上層へのハードコート層とヒートシール層の形成>
作製した画像コントラスト向上層の透明支持体形成面に、アクリル系樹脂からなる紫外線硬化性樹脂(DIC株式会社製、RC25−750)をバーコートし、紫外線照射装置(光源Hバルブ)を用いて照射線量760mJ/cm2で紫外線照射を行い、塗膜を硬化させてハードコート層を形成した。該ハードコート層の膜厚は、硬化後の厚みが5μmであった。
続いて、画像コントラスト向上層の透明樹脂層形成面に、熱可塑性ポリエステル系樹脂からなるヒートシール型接着剤(DIC株式会社製、A−970)をバーコートし乾燥させて溶剤を除去することで塗膜を形成した。これを「部材1」とする。該接着剤層の膜厚は、乾燥後の厚みが30μmであった。
【0075】
<メッシュパターン状電磁波遮蔽層の形成>
透明基材シートとして、片面に易接着処理がされた幅1000mmで厚さ100μmの長尺ロール巻の無色透明な2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いた。供給部にセットしたPETフィルムを繰り出し、易接着処理面にプライマー層用の光硬化性樹脂組成物を厚さ5μmとなるように塗布形成した。塗布方式は、通常のグラビアリバースコート法を採用し、光硬化性樹脂組成物としては、エポキシアクリレートプレポリマー35質量部、ウレタンアクリレートプレポリマー12質量部、フェノキシエチルアクリレートからなる単官能アクリレートモノマー44質量部、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸トリアクリレートからなる3官能アクリレートモノマー9質量部、さらに光開始剤としてイルガキュア184を3質量部添加したものを使用した。このときの粘度は約1300mPa・s(25℃、B型粘度計)であり、塗布後のプライマー層は触ると流動性を示すものの、PETフィルム上から流れ落ちることはなかった。
次に、プライマー層が形成されたPETフィルムを転写工程を行う凹版ロールに供するが、それに先だって、開口部の線幅が20μmで線ピッチが300μm、版深10μmの正方格子状のメッシュパターンとなる凹部が形成された凹版ロールの版面に、導電性組成物をピックアップロールで塗布し、ドクターブレードで凹部内以外の導電性組成物を掻き取って凹部内のみに導電性組成物を充填させた。なお、用いた導電性組成物は、以下の組成の銀ペーストを用いた。
導電性組成物(銀ペースト)の作製:
導電性粉末として平均粒径約2μmの鱗片状銀粉末93質量部、バインダー樹脂として熱可塑性のポリエステルウレタン樹脂7質量部、溶剤としてブチルカルビトールアセテート25質量部を配合し、十分に攪拌混合した後、3本ロールで混練りして導電性組成物を作製した。
次いで行われる転写工程は以下の通りである。先ず、プライマー層が形成されたPETフィルムを、そのプライマー層が凹版ロールの版面側に対向した状態で、凹版ロールとニップロールとの間に挟む。その凹版ロールとニップロールとの間でPETフィルムのプライマー層は版面に押し付けられる。プライマー層は流動性を有しているので、版面に押し付けられたプライマー層は、導電性組成物が充填された凹部内にも流入し、凹部内で生じた導電性組成物の凹みを充填する。こうしてプライマー層は導電性組成物に対して隙間なく密着した状態となる。その後、さらに凹版ロールが回転して高圧水銀燈からなるUVランプによって紫外線が照射され、光硬化性樹脂組成物からなるプライマー層が硬化する。プライマー層の硬化により、凹版ロールの凹部内の導電性組成物はプライマー層と密着し、その後、出口側のニップロールによってフィルムが凹版ロールから剥離され、プライマー層上には導電性組成物層が転写形成される。このようにして得られた電磁波遮蔽フィルムを、110℃の乾燥ゾーンを通過させて銀ペーストの溶剤を蒸発させて固化せしめ、プライマー層上にメッシュパターンからなる導電パターン層を形成した。このときの導電パターン層が存在するパターン部分の厚さ(導電パターン層が形成されているメッシュパターン部分とそれ以外の部分との厚さの差)は9.5μmで、版の深さとほぼ同等の厚さで転移しており、版の凹部内の銀ペーストが高い転移率(版深に対する転移した銀ペーストの比として定義する転移率は、(9.5/10)×100=95%)で転移していた。転移後の凹部内を目視で観察したところ、ペーストの版凹部内での残りは見られず、また、メッシュパターンの断線や形状不良も見られなかった。
次いで、得られた転写フィルムに対し、銅めっきを行った。得られた転写フィルムを硫酸銅めっき液に浸漬し、その表面に形成されたメッシュ状の導電性パターン層を陰極として、銅板を陽極として、2A/dm2の電流を流して電解銅めっきを行った。銅めっき膜(金属層)は、導電性組成物からなるパターン層上に選択的に、厚さ2μmで形成された。
【0076】
<画像コントラスト向上層と電磁波遮蔽シートの貼り合わせ>
上記で得たメッシュパターン状電磁波遮蔽シートのメッシュパターン側と、上記で得た部材1の画像コントラスト向上層の片面上に形成されたヒートシール型接着剤層側とを対峙させて重ね合わせた。
画像コントラスト向上層上の他方の面上に形成されたハードコート層の上から熱ローラを押し付けることにより、ヒートシール型接着剤が溶融してメッシュ凹部に流入し、気泡を残すことなく該メッシュ凹部内に充填する。そののち、室温(23℃)雰囲気中で冷却して、該ヒートシール型接着剤層を固化せしめて、メッシュパターン状電磁波遮蔽シート上に画像コントラスト向上層をラミネートした光学フィルタを得た。
ここで、熱ローラによる熱圧条件は、温度100℃、圧力30kgf/cm2、時間20秒である。
【0077】
<評価>
光学顕微鏡で観察したところ、メッシュ面に対してヒートシール型接着剤が気泡なく充填されていることが確認された。
【0078】
[比較例1]
実施例1において、上記球状ビーズ状粒子に代えて、最小粒径が0.2μmで最大粒径が3μmの黒い球状ビーズ状粒子を用いた他は、実施例1と同様にして画像コントラスト向上層を得、さらに実施例1と同様にして比較例1の光学フィルタを得た。
【0079】
<評価>
実施例1と比較例1で得た画像コントラスト向上層の平坦部8を顕微鏡で拡大して観察した結果、実施例1の画像コントラスト向上層は、透光性領域20である平坦部8上に黒い球状ビーズは無かったが、比較例1の画像コントラスト向上層は、平坦部8上に黒い球状ビーズが載っていた。
【符号の説明】
【0080】
1 暗色粒子
2 透明樹脂
2L 透明保護層
3 溝状凹部
4 透明基材
5 斜面
6 透明支持体
7 液状樹脂組成物
8 平坦部
10 暗色部
20 透光性領域
100,100A,100B 画像コントラスト向上層
200 接着剤層
300 電磁波遮蔽シート
301 透明基材シート
302 導電体パターン層
400 耐擦傷機能(ハードコート)層
500 粘着剤層
dmin 暗色粒子の最小粒径
dmax 暗色粒子の最大粒径
t 透明保護層の厚さ
t’ 平坦部上の透明樹脂の厚さ
H 溝状凹部の深さ
W 溝状凹部の最大幅
P 法線
θ 斜面と法線との角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材シート上に導電体パターン層を形成した電磁波遮蔽シートと、該導電体パターン層の凹凸を埋めて平坦化層となり得る厚みの接着剤層と、画像コントラスト向上層とがこの順に積層されてなる光学フィルタであって、
該画像コントラスト向上層が、
透明基材の一方の面に、該透明基材の面内方向に沿って平行に並設された直線状の、且つその延長方向に直交する断面形状が台形又は略台形の暗色部と、隣接する前記暗色部間の透光性領域とを有する、画像コントラスト向上層であって、
前記暗色部は、断面形状が台形又は略台形の溝状凹部内に、暗色粒子と透明樹脂とで充填されてなり、
前記透光性領域は、その表面が透明樹脂からなる透明保護層で覆われてなり、
前記暗色粒子の最小粒径dmin及び最大粒径dmaxと、前記透明保護層の厚さtと、前記溝状凹部の最大幅W及び深さHとの間に、t<dmin<dmax<W、且つ、t<dmin<dmax<H、の関係が成り立つ画像コントラスト向上層
であることを特徴とする光学フィルタ。
【請求項2】
透明基材シート上に、導電体パターン層を形成するパターン層形成工程と、
前記パターン層形成工程後、その一方の面にパターン層の凹凸を埋めて平坦化層となり得る厚みの熱可塑性樹脂の接着剤層を成膜してなる画像コントラスト向上層を、その熱可塑性樹脂の接着剤層側をパターンに対面する向きで、パターン層上に重ねて、これを熱可塑性樹脂の融点乃至溶融温度以上に加熱して該接着剤層を液状物化せしめ、しかる後、冷却して固体化せしめる画像コントラスト向上層積層工程とを有することを特徴とする、請求項1に記載の光学フィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−7950(P2011−7950A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150048(P2009−150048)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】