説明

光学フィルムの搬送方法および搬送装置

【課題】光学フィルムの搬送過程において光学フィルムの擦れを回避し、光学フィルムの品質の低下を抑制することが可能な光学フィルムの搬送方法および搬送装置を提供する。
【解決手段】間欠搬送部から搬送部に枚葉の光学フィルムを受け渡す際に、間欠搬送部において搬送部に向けて搬送される枚葉の光学フィルムの搬送速度である第1の搬送速度と搬送部において搬送される枚葉の光学フィルムの搬送速度である第2の搬送速度とが近付くように、第2の搬送速度を可変に制御し、複数の搬送部のうち、上流側搬送部から下流側搬送部に枚葉の光学フィルムを受け渡す際に、上流側搬送部から下流側搬送部に向けて搬送される枚葉の光学フィルムの搬送速度である第3の搬送速度と下流側搬送部上で搬送される枚葉の光学フィルムの搬送速度である第4の搬送速度とが近付くように、第3の搬送速度または第4の搬送速度を可変に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルムの搬送方法および搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶パネルなどの基板に貼り付ける偏光フィルム、位相差フィルムなどの光学フィルムが知られている。このような光学フィルムの搬送方法として、帯状の光学フィルムを所定長さの枚葉に切断して搬送する方法が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1では、帯状の光学フィルムを送り出しながら切断部で所定長さの枚葉に切断し、切断部から間欠的に搬送された枚葉の光学フィルムを切断部の下流側に続く間欠搬送部および連続搬送部で搬送している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2010/021026号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような光学フィルムの搬送方法においては、光学フィルムの受け渡し箇所が、切断部から間欠搬送部と、間欠搬送部から連続搬送部との2箇所存在する。そのため、切断部と間欠搬送部との間あるいは間欠搬送部と連続搬送部との間に大きな搬送速度の差が存在すると、光学フィルムを受け渡す際に光学フィルムに擦れが生じ、光学フィルムの品質を低下させるおそれがある。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、光学フィルムの搬送過程において光学フィルムの擦れを回避し、光学フィルムの品質の低下を抑制することが可能な光学フィルムの搬送方法および搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用した。
(1)すなわち、本発明の第一の態様に係る光学フィルムの搬送方法は、枚葉の光学フィルムを搬送する光学フィルムの搬送方法であって、帯状の前記光学フィルムを切断部において所定長さの枚葉に切断する切断工程と、前記切断工程で得られた前記枚葉の光学フィルムを間欠搬送部において間欠的に搬送する間欠搬送工程と、前記間欠搬送部から搬送されてきた前記枚葉の光学フィルムを前記間欠搬送部の下流側に続く複数の搬送部において停止させることなく連続的に搬送する連続搬送工程と、を含み、前記間欠搬送部から前記搬送部に前記枚葉の光学フィルムを受け渡す際に、前記間欠搬送部において前記搬送部に向けて搬送される前記枚葉の光学フィルムの搬送速度である第1の搬送速度と前記搬送部において搬送される前記枚葉の光学フィルムの搬送速度である第2の搬送速度とが近付くように、前記第2の搬送速度を可変に制御し、前記複数の搬送部のうち、上流側搬送部から下流側搬送部に前記枚葉の光学フィルムを受け渡す際に、前記上流側搬送部から前記下流側搬送部に向けて搬送される前記枚葉の光学フィルムの搬送速度である第3の搬送速度と前記下流側搬送部上で搬送される前記枚葉の光学フィルムの搬送速度である第4の搬送速度とが近付くように、前記第3の搬送速度または前記第4の搬送速度を可変に制御する。
【0008】
(2)上記(1)に記載の光学フィルムの搬送方法では、前記間欠搬送部から前記搬送部に前記枚葉の光学フィルムを受け渡す際に、前記間欠搬送部における一の前記間欠搬送工程の終了時点において、前記間欠搬送部から前記光学フィルムの後端が離間するように前記枚葉の光学フィルムが送り出されてもよい。
【0009】
(3)上記(1)または(2)に記載の光学フィルムの搬送方法では、前記間欠搬送部から前記搬送部に前記枚葉の光学フィルムを受け渡す際に、前記第2の搬送速度の前記第1の搬送速度に対する比を0.8以上1.2以下としてもよい。
【0010】
(4)上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の光学フィルムの搬送方法では、前記上流側搬送部から前記下流側搬送部に前記枚葉の光学フィルムを受け渡す際に、前記第3の搬送速度の前記第4の搬送速度に対する比を0.8以上1.2以下としてもよい。
【0011】
(5)上記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の光学フィルムの搬送方法では、前記間欠搬送部から前記搬送部に前記枚葉の光学フィルムを受け渡した後、前記枚葉の光学フィルムの搬送速度が、前記間欠搬送部から前記搬送部に前記枚葉の光学フィルムが受け渡された際の前記枚葉の光学フィルムの搬送速度よりも大きくなるように、前記搬送部の搬送速度を大きくしてもよい。
【0012】
(6)本発明の第二の態様に係る光学フィルムの搬送装置は、枚葉の光学フィルムを搬送する光学フィルムの搬送装置であって、帯状の光学フィルムを供給する供給部と、前記供給部から供給された帯状の光学フィルムを所定長さの枚葉の光学フィルムに切断する切断部と、前記所定長さに切断された前記枚葉の光学フィルムを間欠的に搬送する間欠搬送部と、前記間欠搬送部から搬送されてくる前記枚葉の光学フィルムを受け取りながら停止させることなく連続的に搬送する複数の搬送部と、前記搬送装置の統括制御を行う制御部と、を備え、前記制御部は、前記間欠搬送部からこの間欠搬送部の下流側に続く前記搬送部に前記枚葉の光学フィルムを受け渡す際に、前記間欠搬送部において前記搬送部に向けて搬送される前記枚葉の光学フィルムの搬送速度である第1の搬送速度と前記搬送部上で搬送される前記枚葉の光学フィルムの搬送速度である第2の搬送速度とが近付くように前記第2の搬送速度を可変に制御し、且つ、前記搬送部のうちの上流側搬送部から下流側搬送部に前記枚葉の光学フィルムを受け渡す際に、前記上流側搬送部から前記下流側搬送部に向けて搬送される前記枚葉の光学フィルムの搬送速度である第3の搬送速度と前記下流側搬送部上で搬送される前記枚葉の光学フィルムの搬送速度である第4の搬送速度とが近付くように前記第3の搬送速度または前記第4の搬送部の搬送速度を可変に制御する。
【0013】
(7)上記(6)に記載の光学フィルムの搬送装置では、前記制御部は、前記間欠搬送部から前記搬送部に前記枚葉の光学フィルムを受け渡す際に、前記間欠搬送部における一の間欠搬送工程の終了時点において、前記間欠搬送部から前記光学フィルムの後端が離間するように前記枚葉の光学フィルムの送り出しを制御してもよい。
【0014】
(8)上記(6)または(7)に記載の光学フィルムの搬送装置では、前記制御部は、前記間欠搬送部から前記搬送部に前記枚葉の光学フィルムを受け渡す際に、前記第2の搬送速度の前記第1の搬送速度に対する比を0.8以上1.2以下とするように制御してもよい。
【0015】
(9)上記(6)〜(8)のいずれか一項に記載の光学フィルムの搬送装置では、前記制御部は、前記上流側搬送部から前記下流側搬送部に前記枚葉の光学フィルムを受け渡す際に、前記第3の搬送速度の前記第4の搬送速度に対する比を0.8以上1.2以下とするように制御してもよい。
【0016】
(10)上記(6)〜(9)のいずれか一項に記載の光学フィルムの搬送装置では、前記制御部は、前記間欠搬送部から前記搬送部に前記枚葉の光学フィルムを受け渡した後、前記搬送部における前記枚葉の光学フィルムの搬送速度を、前記間欠搬送部からこの搬送部に前記枚葉の光学フィルムが受け渡された際の前記枚葉の光学フィルムの搬送速度よりも大きくなるように制御してもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、光学フィルムの搬送過程において光学フィルムの擦れを回避し、光学フィルムの品質の低下を抑制することが可能な光学フィルムの搬送方法および搬送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光学フィルムの搬送装置を示す模式図である。
【図2】同実施形態に係る搬送装置の要部を示す模式図である。
【図3】同実施形態に係る搬送装置において、切断機構の要部を示す断面図である。
【図4】同実施形態に係る搬送装置の動作を示す説明図である。
【図5】図4に続く、搬送装置の動作を示す説明図である。
【図6】同実施形態に係る光学フィルムの搬送方法を示すフローチャートである。
【図7】図6に続く、光学フィルムの搬送方法を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第2実施形態に係る搬送装置の動作を示す説明図である。
【図9】図8に続く、搬送装置の動作を示す説明図である。
【図10】図9に続く、搬送装置の動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。また、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態の光学フィルムの搬送装置の一例を示す模式図である。図2は、本実施形態の光学フィルムの搬送装置の要部を示す模式図である。
図1に示す搬送装置1は、例えば液晶パネルや有機ELパネルなどの光学表示パネルの基板に貼り付ける偏光フィルム、位相差フィルムなどの光学フィルムを搬送する。光学フィルムは、可撓性を有する帯状の機能性フィルムであれば特に限定されるものではなく、本実施形態では偏光フィルムを例に挙げて説明する。
【0021】
図1及び図2に示すように、搬送装置1は、帯状の偏光フィルムFを繰り出し供給する供給部2と、帯状の偏光フィルムFを搬送方向において所定長さの枚葉に切断する切断機構3(切断部10)と、所定長さに切断された偏光フィルムFを間欠的に搬送する間欠搬送部3Aと、間欠搬送部3Aから搬送された偏光フィルムFを連続的に搬送する搬送機構4と、搬送機構4から搬送された偏光フィルムFを次工程に搬出する搬出機構5と、これらの機構の統括制御を行う制御部6と、を含んで構成されている。なお、「間欠的に搬送」とは、偏光フィルムFを搬送する過程で偏光フィルムFをいったん停止させることを含む搬送である。また、「連続的に搬送」とは、偏光フィルムFを搬送する過程で偏光フィルムFを停止させることなく偏光フィルムFの送り出しを継続する搬送である。
【0022】
供給部2は、帯状の偏光フィルムFをロール状態にした原反ロール7がボビン8に装填されている。ボビン8は、モーターなどの駆動装置に接続されており、回転可能になっている。
【0023】
供給部2と切断機構3との間には、ダンサローラDが配置されている。ダンサローラDは、切断機構3の吸着テーブル9で吸着保持されている偏光フィルムFがレーザー装置(切断部)10で切断されて吸着保持が解除される間に、供給部2から供給される偏光フィルムFの繰り出し量を吸収する。
【0024】
また、供給部2と切断機構3との間には、偏光フィルムFの搬送経路を形成する複数のローラが配置されている。以下の説明においては、搬送経路上の任意の位置に対して、搬送経路の始点(供給部2)に近づく側を上流側、搬送経路の終点(搬出機構5)に近づく側を下流側という。
【0025】
図2に示すように、切断機構3は、偏光フィルムFを裏面から吸着保持する吸着テーブル9と、偏光フィルムFをカットするレーザーを射出するレーザー装置(切断部)10と、レーザー装置10を挟んで上流側と下流側とで偏光フィルムFを把持する一対の把持ローラ11,12と、偏光フィルムFのアライメントを確認するためのアライメントカメラ13と、を備えている。
【0026】
本実施形態において、切断機構3は、レーザー装置10、一対の把持ローラ11,12、およびアライメントカメラ13をそれぞれ2組有している。すなわち、本実施形態においては、供給部2から供給される偏光フィルムFを所定の切断作用位置で2箇所同時に切断し、枚葉の偏光フィルムFを一回の切断動作で2枚切り出し2枚ずつ搬送する。
【0027】
図3は、切断機構3の要部を示す断面図である。図3においては、上述した2組の構成のうち便宜上1組のみを図示している。
【0028】
図3に示すように、吸着テーブル9の上面には高さが同一の2個の保持ブロック9a,9bが、偏光フィルムFの搬送方向に沿って近接して固定されている。つまり、両保持ブロック9a,9bの対向する内側壁によって偏光フィルムFの搬送方向に直交する吸着溝14が形成されている。この吸着溝14は、レーザー装置10から射出されるレーザーの走査経路となる。なお、レーザーが走査される位置(吸着溝14が形成される位置)が偏光フィルムFの切断作用位置となる。
【0029】
レーザー装置10は、偏光フィルムFを吸着溝14(偏光フィルムFの搬送方向に直交する方向)に沿って切断するよう水平移動可能になっている。
【0030】
把持ローラ11,12は、偏光フィルムFを挟んで対向配置された、駆動ローラ11a,12aと、昇降ローラ11b,12bと、から構成されている。把持ローラ11,12は、例えば金属からなる芯材の表面にウレタン(硬度30〜90程度)などの弾性材が被覆されて構成されている。把持ローラ11,12の構成は、これに限らず、金属ローラやゴムローラなどを必要に応じて適宜組み合わせて用いることができる。
【0031】
駆動ローラ11a,12aは偏光フィルムFの下面側に配置されている。駆動ローラ11a,12aは、モーターなどの駆動装置に接続されており、偏光フィルムFを繰り出し可能になっている。
【0032】
昇降ローラ11b,12bは偏光フィルムFの上面側に配置されている。昇降ローラ11b,12bの昇降は、ローラの中心軸にネジ固定されたブラケット18にロッド19を介して連結されたエアーシリンダ20によって行われる。昇降ローラ11b,12bは、上方の待機位置と偏光フィルムFを駆動ローラ11a,12aと協働して把持する作用位置とに亘って昇降する。
【0033】
アライメントカメラ13は、偏光フィルムFの上方に配置されている。アライメントカメラ13の撮像結果により、偏光フィルムFが所定の切断作用位置に達するまで送り出されているかなど、偏光フィルムFのアライメントが精度よくなされているかを確認することができる。
【0034】
把持ローラ11,12は、所定長さに切断された偏光フィルムFを下流側の搬送機構4に間欠的に搬送する間欠搬送部3Aとして機能する。
【0035】
図1及び図2に示すように、搬送機構4は、間欠搬送部3Aの下流側に配置された第1連続搬送コンベア(搬送部)21と、この第1連続搬送コンベア21の下流側に配置された第2連続搬送コンベア(搬送部)22と、を備えている。第1連続搬送コンベア21は、間欠搬送部3Aから間欠的に搬送されてくる偏光フィルムFを受け取りながら連続的に搬送する。第2連続搬送コンベア22は、第1連続搬送コンベア21から搬送されてくる偏光フィルムFを受け取りながら連続的に搬送する。
【0036】
第1連続搬送コンベア21は、間欠搬送部3Aの下流側に配置された第1搬送コンベア(搬送部)21aと、この第1搬送コンベア21aの下流側に配置された第2搬送コンベア(搬送部)21bと、を備えている。
【0037】
本実施形態における第1搬送コンベア21aおよび第2搬送コンベア21bは、切断機構3で切断されて間欠搬送部3Aから送り出された2枚の偏光フィルムFを所定ピッチで平面保持できる長さに設定されている。
【0038】
搬出機構5は、搬送機構4の終端(下流側)下方に連続配置されたローラコンベアにより構成されている。搬出機構5の始端部分には、搬送機構4(第2連続搬送コンベア22)から落下してくる偏光フィルムFを回収するトレー15が配置されている。
【0039】
制御部6は、間欠搬送部3Aからこの間欠搬送部3Aの下流側に続く第1搬送コンベア21aに枚葉の偏光フィルムFを受け渡す際に、間欠搬送部3Aにおける一の間欠搬送過程の終了時点において、間欠搬送部3Aから偏光フィルムFの後端が離間するように、枚葉の偏光フィルムFの送り出しを制御する。具体的には、切断後の枚葉の偏光フィルムFを後端が次の間欠搬送時に間欠搬送部3Aを越えるよう送り出し、この間欠搬送部3Aの下流側に続く第1搬送コンベア21aに受け渡す。「間欠搬送部3Aを越えるように送り出す」とは、切断後の枚葉の偏光フィルムFの後端が間欠搬送部3Aから離間すること、すなわち、切断後の枚葉の偏光フィルムFの後端が間欠搬送部3Aの最も下流側にある搬送ローラと離間することを意味する。これにより、切断後の偏光フィルムFは、間欠搬送部3Aを越えて下流側の第1搬送コンベア21a上に載置される。
【0040】
制御部6は、偏光フィルムFを間欠搬送部3Aから第1搬送コンベア21aへ受け渡す際に、第1搬送コンベア21aにおける偏光フィルムFの搬送速度を間欠搬送部3Aにおける偏光フィルムFの搬送速度に近づける。
【0041】
制御部6は、偏光フィルムFを間欠搬送部3Aから第1搬送コンベア21aへ受け渡す際に、第1搬送コンベア21aにおける偏光フィルムFの搬送速度を間欠搬送部3Aにおける偏光フィルムFの搬送速度に概ね一致させるように制御することが望ましい。ここで、「概ね一致させる」とは、間欠搬送部3A(駆動ローラ11a,12a)で偏光フィルムFを搬送する際の速度と第1搬送コンベア21aで偏光フィルムFを搬送する際の速度とを、両者の間にまたがって搬送される偏光フィルムFに大きな擦れが生じない範囲で、若干異ならせてもよいことを意味する。例えば、間欠搬送部3Aで偏光フィルムFを搬送する際の速度V1と第1搬送コンベア21aで偏光フィルムFを搬送する際の速度V2との比V2/V1が0.8/1以上1.2/1以下の範囲であれば、両者の速度は概ね一致していると言える。このような範囲であれば、間欠搬送部3Aと第1搬送コンベア21aとの搬送速度差による偏光フィルムFの擦れを十分に抑制することができる。
【0042】
制御部6は、間欠搬送部3Aから第1搬送コンベア21aに受け渡された偏光フィルムFを、この偏光フィルムの後端が次に第1搬送コンベア21aに受け渡される偏光フィルムFの先端と離間するよう加速させる。つまり、間欠搬送部3Aからこの間欠搬送部3Aの下流側に続く第1搬送コンベア21aに枚葉の偏光フィルムFを受け渡した後、枚葉の偏光フィルムFの搬送速度が、間欠搬送部3Aから第1搬送コンベア21aに枚葉の偏光フィルムFが受け渡された際の枚葉の偏光フィルムFの搬送速度よりも大きくなるように、第1搬送コンベア21aの搬送速度を大きくする。これにより、第1搬送コンベア21a上において、切断後の2枚の偏光フィルムFが、次に受け渡される間欠搬送部3A上の2枚の偏光フィルムFと所定ピッチを空けて搬送される。
【0043】
制御部6は、偏光フィルムFを第1搬送コンベア21aから第2搬送コンベア21bに受け渡す際に、第1搬送コンベア21aにおける偏光フィルムFの搬送速度を第2搬送コンベア21bにおける偏光フィルムFの搬送速度に概ね一致させることが望ましい。ここで、「概ね一致させる」とは、上述のV2/V1と同様の考えに基づくものであり、第1搬送コンベア21aにおける偏光フィルムFの搬送速度と第2搬送コンベア21bにおける偏光フィルムFの搬送速度の比が0.8/1以上1.2/1以下の範囲であれば、両者の速度は概ね一致していると言える。そして、第1搬送コンベア21aで加速された偏光フィルムFを第2搬送コンベア21bに受け渡す。
【0044】
制御部6は、第1搬送コンベア21aから受け渡された第2搬送コンベア21bの先頭にある偏光フィルムFの後端が第2搬送コンベア21bを越えるよう送り出し、この第2搬送コンベア21bの下流側に続く第2連続搬送コンベア22に受け渡す。これにより、偏光フィルムFは、第2搬送コンベア21bを越えて下流側の第2連続搬送コンベア22上に載置される。
【0045】
偏光フィルムFを第2搬送コンベア21bから第2連続搬送コンベア22へ受け渡す際に、第2搬送コンベア21bにおける偏光フィルムFの搬送速度を第2連続搬送コンベア22における偏光フィルムFの搬送速度に近づける。
【0046】
制御部6は、偏光フィルムFを第2搬送コンベア21bから第2連続搬送コンベア22へ受け渡す際に、第2搬送コンベア21bにおける偏光フィルムFの搬送速度を第2連続搬送コンベア22における偏光フィルムFの搬送速度に概ね一致させるように制御することが望ましい。ここで、「概ね一致させる」とは、第2搬送コンベア21bで偏光フィルムFを減速搬送する際の速度と第2連続搬送コンベア22で偏光フィルムFを搬送する際の速度とを、両者の間にまたがって搬送される偏光フィルムFに大きな擦れが生じない範囲で、若干異ならせてもよいことを意味する。例えば、第2搬送コンベア21bで偏光フィルムFを減速搬送する際の速度V2bと第2連続搬送コンベア22で偏光フィルムFを搬送する際の速度V3との比V3/V2bが0.8/1以上1.2/1以下の範囲であれば、両者の速度は概ね一致していると言える。このような範囲であれば、第2搬送コンベア21bと第2連続搬送コンベア22との搬送速度差による偏光フィルムFの擦れを十分に抑制することができる。
【0047】
本実施形態において、制御部6は、コンピュータシステムを含んで構成されている。このコンピュータシステムは、CPU等の演算処理部6aと、メモリーやハードディスク等の記憶部6bとを備える。また、この制御部6は、コンピュータシステムの外部の装置との通信を実行可能なインターフェースを含む。制御部6には、入力信号を入力可能な入力装置が接続されていてもよい。上記の入力装置は、キーボード、マウス等の入力機器、あるいはコンピュータシステムの外部の装置からのデータを入力可能な通信装置等を含む。制御部6は、搬送装置1の各部の動作状況を示す液晶表示ディスプレイ等の表示装置を含んでいてもよいし、表示装置と接続されていてもよい。
【0048】
制御部6の記憶部6bには、コンピュータシステムを制御するオペレーティングシステム(OS)がインストールされている。制御部6の記憶部6bには、演算処理部6aに搬送装置1の各部を制御させることによって、搬送装置1の各部に偏光フィルムFを精度よく搬送させるための処理を実行させるプログラムが記録されている。記憶部6bに記録されているプログラムを含む各種情報は、制御部6の演算処理部6aが読み取り可能である。制御部6は、搬送装置1の各部の制御に要する各種処理を実行するASIC等の論理回路を含んでいてもよい。
【0049】
本実施形態においては、偏光フィルムFを搬送する際のデータ(レシピ)が予め制御部6の記憶部6bに設定されている。例えば、枚葉の偏光フィルムFの長さが406.6mm、ピッチP(搬送過程において先頭にある偏光フィルムFの後端と次に続く偏光フィルムFの先端との間の距離)が51.4mmのように記憶部6bに設定されている。本実施形態では、第2連続搬送コンベア22に偏光フィルムFが完全に乗りきるように第2搬送コンベア21bが作動するので、第2搬送コンベア21bと第2連続搬送コンベア22とのギャップは、偏光フィルムFのピッチP以下に設定されている。
【0050】
図4及び図5は、本実施形態の搬送装置1の動作を示す説明図である。図6及び図7は、本実施形態の偏光フィルムの搬送方法のフローチャートである。以下、搬送装置1を用いて帯状の偏光フィルムFを切断して搬出するまでの動作を説明する。
【0051】
先ず、使用する偏光フィルムFの原反ロール7を供給部2に装填する。この装填が完了した後、オペレータは、操作パネルなどを利用して初期設定を行う(図6に示すステップS1)。例えば、偏光フィルムFの切断長さ、厚み、供給速度、レーザーの出力および焦点深度、駆動ローラ12aの繰り出し速度、第1搬送コンベア21aの搬送速度、第2搬送コンベア21bの搬送速度、第2連続搬送コンベア22の搬送速度などが設定される。
【0052】
初期設定が完了すると、原反ロール7から偏光フィルムFの供給が開始されるとともに、供給部2に設けられたモーターなどの駆動軸の回転数がロータリーエンコーダなどのセンサーにより検出され(図示略)、偏光フィルムFが供給部2から供給される(図6に示すステップS2)。
【0053】
供給部2から供給された偏光フィルムFは、切断機構3に搬送される(図4(a)参照)。偏光フィルムFの先端が把持ローラ11,12を通過して所定の位置K1に到達すると、制御部6の制御により、昇降ローラ11b,12bが作動する。これにより、偏光フィルムFが吸着テーブル9の両側で把持される。具体的には、両ローラ11b,12bと連結されたエアーシリンダ20が同調し、同時に両ローラ11b,12bを下降させる(図4(b)参照)。
【0054】
また、制御部6の制御により、この状態で吸引装置(図示略)を作動させて吸着テーブル9に偏光フィルムFを吸着保持させる。
【0055】
これらの動作に連動して、制御部6の制御により、ダンサローラDが作動する。これにより、供給部2から連続的に供給される偏光フィルムFがダンサローラD以降に繰り出さないよう調整される。
【0056】
偏光フィルムFが吸着テーブル9に吸着保持されると、制御部6の制御により、レーザー装置10が作動する(図4(c)参照)。これにより、吸着テーブル9に吸着保持された偏光フィルムFは、吸着溝14に沿って切断される。その結果、帯状の偏光フィルムFが所定長さの枚葉に切断される(図6に示すステップS3)。
【0057】
偏光フィルムFが切断されると、この偏光フィルムFに対する吸着テーブル9の吸着および把持ローラ11,12による把持とが解除される(図4(d)参照)。この解除動作と連動して、制御部6の制御により、駆動ローラ11a,12a、第1連続搬送コンベア21(第1搬送コンベア21a、第2搬送コンベア21b)、および第2連続搬送コンベア22が作動する。
【0058】
制御部6は、初期設定に基づいて最適なレシピを記憶部6bから読み出す。制御部6は、このレシピに従って、上流の切断機構3から間欠的に繰り出される枚葉の偏光フィルムFが第1搬送コンベア21a上にある偏光フィルムFに対して所定ピッチで平面保持されるよう駆動ローラ11a,12aおよび第1搬送コンベア21aを作動制御する。
【0059】
同時に、駆動ローラ11a,12aについては、切断後の偏光フィルムFの後端が次の間欠搬送時に間欠搬送部3Aを越えるように送り出されるように作動制御される。間欠搬送部3A(駆動ローラ11a,12a)は、切断後の偏光フィルムFを第1搬送コンベア21aに搬送する(図6に示すステップS4)。
【0060】
制御部6の制御により、偏光フィルムFを間欠搬送部3Aから第1搬送コンベア21aへ受け渡す際の第1搬送コンベア21aにおける偏光フィルムFの搬送速度と間欠搬送部3Aにおける偏光フィルムFの搬送速度とが概ね一致するように制御される。本実施形態においては、間欠搬送部3Aで偏光フィルムFを搬送する際の速度V1を90m/minとし、第1搬送コンベア21aで偏光フィルムFを搬送する際の速度V2を90m/minとし、搬送速度V1,V2が互いに等しくなるように制御する。
【0061】
偏光フィルムFを間欠搬送部3Aから第1搬送コンベア21aへ受け渡す際、切断後の偏光フィルムFの後端が間欠搬送部3Aを越えたか否かの判定が行われる(図6に示すステップS5)。例えば、切断後の偏光フィルムFの後端が間欠搬送部3Aを越えたか否かの判定は、予め制御部6の記憶部6bに記憶されたタイムテーブルにより行われる。具体的には、初期設定において偏光フィルムFを切断する際の所定長さ、間欠搬送部3Aにおける駆動ローラ11a,12aの回転速度(偏光フィルムFの搬送速度)、間欠搬送部3Aと第1搬送コンベア21aとの間の距離を設定しておく。これにより、偏光フィルムFを間欠搬送部3Aにおいてどのくらいの時間だけ搬送すれば切断後の偏光フィルムFの後端が間欠搬送部3Aを越えたか否かを判定することができる。
【0062】
そして、切断後の偏光フィルムFの後端が間欠搬送部3Aを越えた(Yes)と判定された場合には、偏光フィルムFを第1搬送コンベア21aへ受け渡す動作が完了する(図6に示すステップS6)。これにより、切断後の偏光フィルムFは、間欠搬送部3Aを越えて下流側の第1搬送コンベア21a上に載置される(図4(e)参照)。
【0063】
切断後の偏光フィルムFの後端が間欠搬送部3Aを越えていない(No)と判定された場合には、切断後の偏光フィルムFの後端が間欠搬送部3Aを越えた(Yes)と判定されるまで、偏光フィルムFの搬送が継続される(図6に示すステップS7)。
【0064】
偏光フィルムFを第1搬送コンベア21aへ受け渡す動作が完了すると、制御部6の制御により、第1搬送コンベア21aに受け渡された偏光フィルムFは、後端が次にこの第1搬送コンベア21aに受け渡される偏光フィルムFの先端と所定ピッチPだけ離間するように加速される(図5(a)参照、図7に示すステップS8)。
【0065】
本実施形態においては、第1搬送コンベア21aで偏光フィルムFを加速した後の速度V2aを103.5m/minとし、間欠搬送部3Aで偏光フィルムFを搬送する際の速度V1(90m/min)よりも加速後の偏光フィルムFの速度V2aのほうが大きくなるように制御する(V2a>V1)。
【0066】
そして、制御部6の制御により、偏光フィルムFを第1搬送コンベア21aから第2搬送コンベア21bに受け渡す際の第1搬送コンベア21aにおける偏光フィルムFの搬送速度と第2搬送コンベア21bにおける偏光フィルムFの搬送速度とが概ね一致するように制御される。これにより、第1搬送コンベア21aで加速された偏光フィルムFは一定の速度(103.5m/min)で第2搬送コンベア21bに受け渡される。
【0067】
上記加速後の偏光フィルムFは、第2搬送コンベア21b上を所定の距離だけ搬送される(図5(b)参照)。その後、制御部6の制御により、偏光フィルムFを第2搬送コンベア21bから第2連続搬送コンベア22へ受け渡す際の第2搬送コンベア21bにおける偏光フィルムFの搬送速度が、第2連続搬送コンベア22における偏光フィルムFの搬送速度に近づけられる。具体的には、第2搬送コンベア21bにおいて加速後の偏光フィルムFの先端が所定の位置K2に到達すると、制御部6の制御により、第2搬送コンベア21bにおける偏光フィルムFが減速される(図5(c)参照、図7に示すステップS9)。
【0068】
偏光フィルムFの先端が所定の位置K2に到達したことは、第2搬送コンベア21bの上方に配置された減速用センサー23により確認される。減速用センサー23が加速後の偏光フィルムFの先端を検知すると、制御部6の制御により、加速後の偏光フィルムFが減速される。
【0069】
減速された偏光フィルムFは、第2連続搬送コンベア22に搬送される(図5(d)参照、図7に示すステップS10)。
【0070】
制御部6の制御により、偏光フィルムFを第2搬送コンベア21bから第2連続搬送コンベア22へ受け渡す際の第2搬送コンベア21bにおける偏光フィルムFの搬送速度と第2連続搬送コンベア22における偏光フィルムFの搬送速度とが概ね一致するように制御される。ここで、「概ね一致する」とは、第2搬送コンベア21bにおける減速後の偏光フィルムFの搬送速度V2bと第2連続搬送コンベア22で偏光フィルムFを搬送する際の速度V3との比であるV3/V2bが0.8/1以上1.2/1以下の範囲である。本実施形態においては、第2搬送コンベア21bで偏光フィルムFを減速した後の速度V2bを50m/minとし、第2連続搬送コンベア22で偏光フィルムFを搬送する際の速度V3を60m/minとし、搬送速度V2b,V3が概ね一致するように制御する。
【0071】
上述の受け渡しの際、減速後の偏光フィルムFの後端が第2搬送コンベア21bを越えたか否かの判定が行われる(図7に示すステップS11)。例えば、減速後の偏光フィルムFの後端が第2搬送コンベア21bを越えたか否かの判定は、第2搬送コンベア21bの上方に配置された加速用センサー24により確認される。加速用センサー24が減速後の偏光フィルムFの後端を検知すると、制御部6の制御により、第2搬送コンベア21bの搬送速度が切り換えられる。
【0072】
加速用センサー24が減速後の偏光フィルムFの後端を検知すると、制御部6の制御により、第2搬送コンベア21bの搬送速度は、減速時の50m/minから加速時の103.5m/minへと切り換えられる。これにより、第1搬送コンベア21aにより加速された偏光フィルムFを第2搬送コンベア21bにスムーズに受け渡すことが可能となる。
【0073】
そして、減速後の偏光フィルムFの後端が第2搬送コンベア21bを越えた(Yes)と判定された場合には、この偏光フィルムFを第2連続搬送コンベア22へ受け渡す動作が完了する(図7に示すステップS12)。これにより、減速後の偏光フィルムFは、第2搬送コンベア21bを越えて下流側の第2連続搬送コンベア22上に載置される(図5(e)参照)。
【0074】
減速後の偏光フィルムFの後端が第2搬送コンベア21bを越えていない(No)と判定された場合には、減速後の偏光フィルムFの後端が第2搬送コンベア21bを越えた(Yes)と判定されるまで、この偏光フィルムFの搬送が継続される(図7に示すステップS13)。
【0075】
偏光フィルムFを第2連続搬送コンベア22へ受け渡す動作が完了すると、第2連続搬送コンベア22に受け渡された偏光フィルムFは、搬出機構5に向けて搬送される。
【0076】
搬出機構5の始端部分にはトレー15が配置されている。したがって、搬送機構4の終端位置から落下してくる偏光フィルムFは、トレー15の内部に逐次収納される。
【0077】
上記一連の動作を繰り返し、トレー15に所定枚数の偏光フィルムFが積層された後、トレー15を退避位置に退避させる。その後、搬出機構5を作動して積層された偏光フィルムFを次工程に搬出させる。
【0078】
以上のような光学フィルムの搬送方法および搬送装置1によれば、切断機構3から間欠的に繰り出される偏光フィルムFは、後端が次の間欠搬送時に間欠搬送部3Aを越えるよう送り出され、この間欠搬送部3Aの下流側に続く第1搬送コンベア21aに受け渡される。このため、間欠搬送部3Aで切断された偏光フィルムFの先端部分が第1搬送コンベア21aに接触したまま停止して擦れることを回避することができる。また、偏光フィルムFを間欠搬送部3Aから第1搬送コンベア21aへ受け渡す際に、第1搬送コンベア21aにおける偏光フィルムFの搬送速度が間欠搬送部3Aにおける偏光フィルムFの搬送速度に近づけられるので、間欠搬送部3Aから第1搬送コンベア21aへの受け渡しがスムーズとなる。その結果、間欠搬送部3Aと第1搬送コンベア21aとの間の速度差により偏光フィルムFが擦れることを回避することができる。さらに、偏光フィルムFを第2搬送コンベア21bから第2連続搬送コンベア22へ受け渡す際に、第2搬送コンベア21bにおける偏光フィルムFの搬送速度が第2連続搬送コンベア22における偏光フィルムFの搬送速度に近づけられるので、第2搬送コンベア21bから第2連続搬送コンベア22への受け渡しがスムーズとなる。その結果、第2搬送コンベア21bと第2連続搬送コンベア22との間の速度差により偏光フィルムFが擦れることを回避することができる。
したがって、偏光フィルムFの搬送過程において偏光フィルムFの擦れを回避し、偏光フィルムFの品質の低下を抑制することが可能となる。
【0079】
さらに、間欠搬送部3Aで偏光フィルムFを搬送する際の速度V1と、第1搬送コンベア21aで偏光フィルムFを搬送する際の速度V2とが互いに等しくなるように制御されるので、偏光フィルムFを間欠搬送部3Aから第1搬送コンベア21aへよりスムーズに受け渡すことができる。これにより、間欠搬送部3Aと第1搬送コンベア21aとの間の速度差により偏光フィルムFが擦れることを回避することができる。
【0080】
さらに、第2搬送コンベア21bで偏光フィルムFを減速した後の速度V2bと、第2連続搬送コンベア22で偏光フィルムFを搬送する際の速度V3とが概ね一致するように制御されるので、偏光フィルムFを第2搬送コンベア21bから第2連続搬送コンベア22へよりスムーズに受け渡すことができる。これにより、第2搬送コンベア21bと第2連続搬送コンベア22との間の速度差により偏光フィルムFが擦れることを回避することができる。
【0081】
また、第1搬送コンベア21aに受け渡された偏光フィルムFの後端が次に第1搬送コンベア21aに受け渡される偏光フィルムFの先端と離間するよう加速されるので、切断機構3で切断された偏光フィルムFを第1搬送コンベア21aに送り出す際に、前後の偏光フィルムFが衝突することを回避することができる。
【0082】
また、第1搬送コンベア21aにおいて偏光フィルムFを加速させ、第2搬送コンベア21bにおいて加速された偏光フィルムFを減速させている。すなわち、偏光フィルムFの搬送速度を可変に制御することを第1搬送コンベア21aと第2搬送コンベア21bとで別個独立に行うことができる。よって、偏光フィルムFの搬送速度を可変に制御することを容易に実現することができる。
【0083】
本実施形態においては、切断機構3で切断される枚葉の偏光フィルムFの枚数が2枚の場合を例に挙げて説明したが、これに限らない。例えば、切断機構3で切断される枚葉の偏光フィルムFの枚数は、1枚であってもよいし、3枚以上であってもよい。
【0084】
また、本実施形態においては、光学フィルムとして偏光フィルムを例に挙げて説明したが、これに限らず、セパレータ付きの偏光フィルムにおいても適用することができる。
【0085】
また、本実施形態においては、第1連続搬送コンベア21が第1搬送コンベア21aと第2搬送コンベア21bとを備えて構成された例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、第1連続搬送コンベア21が1の搬送コンベアのみを備えて構成されていてもよいし、3以上の搬送コンベアを備えて構成されていてもよい。
【0086】
また、本実施形態においては、第1搬送コンベア21aにおいて偏光フィルムFを加速させ、第2搬送コンベア21bにおいて加速後の偏光フィルムFを減速させる構成を例に挙げて説明したが、これに限らない。例えば、第1搬送コンベア21aにおいて偏光フィルムFを加速させるとともに、加速後の偏光フィルムFを減速させる構成においても本発明を適用可能である。
【0087】
(第2実施形態)
図8〜図10は、本発明の第2実施形態の搬送装置の動作を示す説明図である。以下、第2実施形態の搬送装置を用いて帯状の偏光フィルムFを切断して搬出するまでの動作を説明する。本実施形態の搬送装置の動作は、第1搬送コンベア21aに載置される枚葉の偏光フィルムFの枚数が1枚である点、第1搬送コンベア21aにおいて偏光フィルムFを加速させるとともに加速後の偏光フィルムFを減速させている点が上記第1実施形態の搬送装置の動作と異なる。
【0088】
なお、使用する偏光フィルムFの原反ロール7を供給部2に装填してから搬送装置の初期設定を行うまでの工程は上記第1実施形態と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0089】
供給部2から供給された偏光フィルムFは、切断機構3に搬送される(図8(a)参照)。偏光フィルムFの先端が把持ローラ12を通過して所定の位置K1に到達すると、制御部6の制御により、昇降ローラ11b,12bが作動する。これにより、偏光フィルムFが吸着テーブル9の両側で把持される。具体的には、両ローラ11b,12bと連結されたエアーシリンダ20が同調し、同時に両ローラ11b,12bを下降させる(図8(b)参照)。
【0090】
また、制御部6の制御により、この状態で吸引装置(図示略)を作動させて吸着テーブル9に偏光フィルムFを吸着保持させる。
【0091】
これらの動作に連動して、制御部6の制御により、ダンサローラDが作動する。これにより、供給部2から連続的に供給される偏光フィルムFがダンサローラD以降に繰り出さないよう調整される。
【0092】
偏光フィルムFが吸着テーブル9に吸着保持されると、制御部6の制御により、レーザー装置10が作動する(図8(c)参照)。これにより、吸着テーブル9に吸着保持された偏光フィルムFは、吸着溝14に沿って切断される。その結果、帯状の偏光フィルムFが所定長さの枚葉(1枚)に切断される。
【0093】
偏光フィルムFが切断されると、偏光フィルムFに対する吸着テーブル9の吸着および把持ローラ11,12による把持とが解除される(図8(d)参照)。この解除動作と連動して、制御部6の制御により、駆動ローラ11a,12a、第1連続搬送コンベア21(第1搬送コンベア21a、第2搬送コンベア21b)、および第2連続搬送コンベア22が作動する。
【0094】
切断後の偏光フィルムFは、間欠搬送部3Aを越えて下流側の第1搬送コンベア21a上に載置される(図8(e)参照)。
【0095】
偏光フィルムFを第1搬送コンベア21aへ受け渡す動作が完了すると、制御部6の制御により、第1搬送コンベア21aに受け渡された偏光フィルムFは、後端が次にこの第1搬送コンベア21aに受け渡される偏光フィルムFの先端と所定ピッチPだけ離間するように加速される(図9(a)参照)。
【0096】
本実施形態においては、第1搬送コンベア21aで偏光フィルムFを加速した後の速度V2aを103.5m/minとし、間欠搬送部3Aで偏光フィルムFを搬送する際の速度V1(90m/min)よりも加速後の偏光フィルムFの速度V2aのほうが大きくなるように制御する(V2a>V1)。
【0097】
加速された偏光フィルムFは、所定距離だけ第1搬送コンベア21a上を進行する(図9(b)参照)。その後、制御部6の制御により、偏光フィルムFを第1搬送コンベア21aから第2搬送コンベア21bへ受け渡す際の第1搬送コンベア21aにおける偏光フィルムFの搬送速度が第2搬送コンベア21bにおける偏光フィルムFの搬送速度に近づけられる。具体的には、第1搬送コンベア21aにおいて加速後の偏光フィルムFの先端が所定の位置K3に到達すると、制御部6の制御により、加速後の偏光フィルムFが減速される(図9(c)参照)。
【0098】
加速後の偏光フィルムFの先端が所定の位置K3に到達したことは、第1搬送コンベア21aの上方に配置された減速用センサー25により確認される。減速用センサー25が加速後の偏光フィルムFの先端を検知すると、制御部6の制御により、加速後の偏光フィルムFが減速される。
【0099】
制御部6の制御により、偏光フィルムFを第1搬送コンベア21aから第2搬送コンベア21bに受け渡す際の第1搬送コンベア21aにおける偏光フィルムFの搬送速度と、第2搬送コンベア21bにおける偏光フィルムFの搬送速度とは概ね一致するように制御されることが望ましい。ここで、「概ね一致する」とは、第1搬送コンベア21aにおける減速後の偏光フィルムFの搬送速度V4と第2搬送コンベア21bで偏光フィルムFを搬送する際の速度V5との比V5/V4が0.8/1以上1.2/1以下の範囲である。本実施形態においては、第1搬送コンベア21aで偏光フィルムFを減速した後の速度V4を42m/minとし、第2搬送コンベア21bで偏光フィルムFを搬送する際の速度V5を50m/minとし、搬送速度V4,V5が概ね一致するように制御する。
【0100】
減速後の偏光フィルムFは、第1搬送コンベア21aから第2搬送コンベア21bへ搬送される(図9(d)参照)。このとき、減速後の偏光フィルムFの後端が第1搬送コンベア21aを越えたか否かの判定が行われる。例えば、減速後の偏光フィルムFの後端が第1搬送コンベア21aを越えたか否かの判定は、第1搬送コンベア21aの上方に配置された加速用センサー26により行われる。加速用センサー26が減速後の偏光フィルムFの後端を検知すると、制御部6の制御により、第1搬送コンベア21aの搬送速度が切り換えられる。
【0101】
本実施形態においては、第1搬送コンベア21aの搬送速度は、減速時の42m/minから通常時の90m/minへと切り換えられる。これにより、間欠搬送部3Aから送り出される偏光フィルムFをスムーズに受け取ることが可能となる。
【0102】
そして、減速後の偏光フィルムFの後端が第1搬送コンベア21aを越えたと判定された場合には、偏光フィルムFを第2搬送コンベア21bへ受け渡す動作が完了する。これにより、減速後の偏光フィルムFは、第1搬送コンベア21aを越えて下流側の第2搬送コンベア21b上に載置される(図9(e)参照)。
【0103】
減速後の偏光フィルムFの後端が第1搬送コンベア21aを越えていないと判定された場合には、減速後の偏光フィルムFの後端が第1搬送コンベア21aを越えたと判定されるまで、偏光フィルムFの搬送が継続される。
【0104】
偏光フィルムFを第2搬送コンベア21bへ受け渡す動作が完了すると、第2搬送コンベア21bに受け渡された偏光フィルムFは、第2連続搬送コンベア22に向けて搬送される(図10(a)参照)。
【0105】
制御部6の制御により、偏光フィルムFを第2搬送コンベア21bから第2連続搬送コンベア22へ受け渡す際の第2搬送コンベア21bにおける偏光フィルムFの搬送速度と第2連続搬送コンベア22における偏光フィルムFの搬送速度とが概ね一致するように制御される。
【0106】
そして、第2連続搬送コンベア22に受け渡された偏光フィルムFは、搬出機構5に向けて搬送される(図10(b)参照)。
【0107】
搬出機構5の始端部分にはトレー15が配置されている。したがって、搬送機構4の終端位置から落下してくる偏光フィルムFは、トレー15の内部に逐次収納される。
【0108】
上記一連の動作を繰り返し、トレー15に所定枚数の偏光フィルムFが積層された後、トレー15を退避位置に退避させる。その後、搬出機構5を作動して積層された偏光フィルムFを次工程に搬出させる。
【0109】
本実施形態によれば、間欠搬送部3Aで切断された偏光フィルムFの先端部分が第1搬送コンベア21aに接触したまま停止して擦れることを回避することができる。また、切断機構3で切断された偏光フィルムFを第1搬送コンベア21aに送り出す際に、前後の偏光フィルムFが衝突することを回避することができる。さらに、第1搬送コンベア21aで減速された偏光フィルムFの先端部分が第2搬送コンベア21bに接触したまま変速(加速)されて擦れることを回避することができる。したがって、偏光フィルムFの品質の低下を抑制することができる。
【0110】
また、第1搬送コンベア21aにおいて偏光フィルムFを加速させるとともに、この加速された偏光フィルムFを減速させている。すなわち、偏光フィルムFの搬送速度を可変に制御することを第1搬送コンベア21aのみで行うことができる。よって、偏光フィルムFの搬送速度を可変に制御することを簡単な構成で実現することができる。
【0111】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明によれば、光学フィルムの搬送過程において光学フィルムの擦れを回避し、光学フィルムの品質の低下を抑制することが可能な光学フィルムの搬送方法及び搬送装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0113】
1…搬送装置、2…供給部、3…切断機構、3A…間欠搬送部、4…搬送機構、6…制御部、10…レーザー装置(切断部)、21…第1連続搬送コンベア(搬送部)、21a…第1搬送コンベア(搬送部)、21b…第2搬送コンベア(搬送部)、22…第2連続搬送コンベア(搬送部)、V1…光学フィルムを間欠搬送部から第1連続搬送コンベアに受け渡す際の間欠搬送部における光学フィルムの搬送速度、V2…光学フィルムを間欠搬送部から第1連続搬送コンベアに受け渡す際の第1連続搬送コンベアにおける光学フィルムの搬送速度、V2a…光学フィルムを第1搬送コンベアで加速した後の光学フィルムの搬送速度、V2b…光学フィルムを第1連続搬送コンベアから第2連続搬送コンベアに受け渡す際の第1連続搬送コンベアにおける光学フィルムの搬送速度、V3…光学フィルムを第1連続搬送コンベアから第2連続搬送コンベアに受け渡す際の第2連続搬送コンベアにおける光学フィルムの搬送速度、V4…第1搬送コンベアにおける減速後の光学フィルムの搬送速度、V5…第2搬送コンベアで偏光フィルムを搬送する際の搬送速度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枚葉の光学フィルムを搬送する光学フィルムの搬送方法であって、
帯状の前記光学フィルムを切断部において所定長さの枚葉に切断する切断工程と、
前記切断工程で得られた前記枚葉の光学フィルムを間欠搬送部において間欠的に搬送する間欠搬送工程と、
前記間欠搬送部から搬送されてきた前記枚葉の光学フィルムを前記間欠搬送部の下流側に続く複数の搬送部において停止させることなく連続的に搬送する連続搬送工程と、
を含み、
前記間欠搬送部から前記搬送部に前記枚葉の光学フィルムを受け渡す際に、前記間欠搬送部において前記搬送部に向けて搬送される前記枚葉の光学フィルムの搬送速度である第1の搬送速度と前記搬送部において搬送される前記枚葉の光学フィルムの搬送速度である第2の搬送速度とが近付くように、前記第2の搬送速度を可変に制御し、
前記複数の搬送部のうち、上流側搬送部から下流側搬送部に前記枚葉の光学フィルムを受け渡す際に、前記上流側搬送部から前記下流側搬送部に向けて搬送される前記枚葉の光学フィルムの搬送速度である第3の搬送速度と前記下流側搬送部上で搬送される前記枚葉の光学フィルムの搬送速度である第4の搬送速度とが近付くように、前記第3の搬送速度または前記第4の搬送速度を可変に制御することを特徴とする光学フィルムの搬送方法。
【請求項2】
前記間欠搬送部から前記搬送部に前記枚葉の光学フィルムを受け渡す際に、前記間欠搬送部における一の前記間欠搬送工程の終了時点において、前記間欠搬送部から前記光学フィルムの後端が離間するように前記枚葉の光学フィルムが送り出されることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルムの搬送方法。
【請求項3】
前記間欠搬送部から前記搬送部に前記枚葉の光学フィルムを受け渡す際に、前記第2の搬送速度の前記第1の搬送速度に対する比を0.8以上1.2以下とすることを特徴とする請求項1または2に記載の光学フィルムの搬送方法。
【請求項4】
前記上流側搬送部から前記下流側搬送部に前記枚葉の光学フィルムを受け渡す際に、前記第3の搬送速度の前記第4の搬送速度に対する比を0.8以上1.2以下とすることを特徴とする請求項1または2に記載の光学フィルムの搬送方法。
【請求項5】
前記間欠搬送部から前記搬送部に前記枚葉の光学フィルムを受け渡した後、前記枚葉の光学フィルムの搬送速度が、前記間欠搬送部から前記搬送部に前記枚葉の光学フィルムが受け渡された際の前記枚葉の光学フィルムの搬送速度よりも大きくなるように、前記搬送部の搬送速度を大きくすることを特徴とする請求項1または2に記載の光学フィルムの搬送方法。
【請求項6】
枚葉の光学フィルムを搬送する光学フィルムの搬送装置であって、
帯状の光学フィルムを供給する供給部と、
前記供給部から供給された帯状の光学フィルムを所定長さの枚葉の光学フィルムに切断する切断部と、
前記所定長さに切断された前記枚葉の光学フィルムを間欠的に搬送する間欠搬送部と、
前記間欠搬送部から搬送されてくる前記枚葉の光学フィルムを受け取りながら停止させることなく連続的に搬送する複数の搬送部と、
前記搬送装置の統括制御を行う制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記間欠搬送部からこの間欠搬送部の下流側に続く前記搬送部に前記枚葉の光学フィルムを受け渡す際に、前記間欠搬送部において前記搬送部に向けて搬送される前記枚葉の光学フィルムの搬送速度である第1の搬送速度と前記搬送部上で搬送される前記枚葉の光学フィルムの搬送速度である第2の搬送速度とが近付くように前記第2の搬送速度を可変に制御し、且つ、前記搬送部のうちの上流側搬送部から下流側搬送部に前記枚葉の光学フィルムを受け渡す際に、前記上流側搬送部から前記下流側搬送部に向けて搬送される前記枚葉の光学フィルムの搬送速度である第3の搬送速度と前記下流側搬送部上で搬送される前記枚葉の光学フィルムの搬送速度である第4の搬送速度とが近付くように前記第3の搬送速度または前記第4の搬送部の搬送速度を可変に制御することを特徴とする光学フィルムの搬送装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記間欠搬送部から前記搬送部に前記枚葉の光学フィルムを受け渡す際に、前記間欠搬送部における一の間欠搬送工程の終了時点において、前記間欠搬送部から前記光学フィルムの後端が離間するように前記枚葉の光学フィルムの送り出しを制御することを特徴とする請求項6に記載の光学フィルムの搬送装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記間欠搬送部から前記搬送部に前記枚葉の光学フィルムを受け渡す際に、前記第2の搬送速度の前記第1の搬送速度に対する比を0.8以上1.2以下とするように制御することを特徴とする請求項6または7に記載の光学フィルムの搬送装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記上流側搬送部から前記下流側搬送部に前記枚葉の光学フィルムを受け渡す際に、前記第3の搬送速度の前記第4の搬送速度に対する比を0.8以上1.2以下とするように制御することを特徴とする請求項6または7に記載の光学フィルムの搬送装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記間欠搬送部から前記搬送部に前記枚葉の光学フィルムを受け渡した後、前記搬送部における前記枚葉の光学フィルムの搬送速度を、前記間欠搬送部からこの搬送部に前記枚葉の光学フィルムが受け渡された際の前記枚葉の光学フィルムの搬送速度よりも大きくなるように制御することを特徴とする請求項6または7に記載の光学フィルムの搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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