説明

光学式油検知器

【課題】光ファイバ(油センサ)の外周面における水以外の付着物の発生を抑制あるいは防止することを目的とする。
【解決手段】光学式油検知器は、光ファイバ31に入射された検知光を用いて油を検知する光学式油検知器であって、光ファイバ31を振動させる超音波振動子40を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式油検知器に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバを用いて水中の油の有無を検知する光学式油検知器が知られている。光学式油検知器は、水面近傍で浮遊するフロートと、フロートの表面に固定された光ファイバと、光ファイバの一端に検知光を入射する投光部と、光ファイバの他端から出射された検知光を電気信号に変換する受光部とを備え、投光部から光ファイバを介して受光部に入射される検知光の減少量に基づいて水中の油の有無を検知している(下記特許文献1参照)。
【0003】
より詳細に説明すると、水の屈折率は光ファイバの外周部の屈折率よりも小さいので、外周面に水のみが存在する場合には、上記検知光は光ファイバ内を外周面で反射しながら通過する。しかしながら、光ファイバの外周面に油が付着すると、油の屈折率のほうが光ファイバの外周部の屈折率よりも大きいので、上記検知光は油の付着箇所から外部に一部漏洩することになる。このように光学式油検知器は、上述の原理に基づいて光ファイバを通過する検知光の減少量から水中の油の有無(すなわち光ファイバに付着した油の有無)を検知するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4008910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来技術において、油センサとして機能する光ファイバは水に浸漬された状態のまま長期間放置されるので、その外周面に水中に存在する微生物や藻などが付着することがある。このような事態が発生すると、外周面に発生した水以外の付着物の影響により検知光の減少量に変化が生じるため、検知結果の信憑性が低下するという問題が生じることになる。このような信憑性の低下を回避する方法として、光ファイバに付着した付着物を除去する清掃作業を行うことが考えられるが、このような清掃作業は、フロート(つまり光ファイバ)を水中から引き上げて行わなければならないため極めて煩雑である。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、光ファイバ(油センサ)の外周面における水以外の付着物の発生を抑制あるいは防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、光学式油検知器に係る第1の解決手段として、光ファイバに入射された検知光を用いて油を検知する光学式油検知器であって、前記光ファイバを振動させる加振部を具備するという手段を採用する。
【0008】
本発明では、光学式油検知器に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記加振部は、前記光ファイバに対向して設けられた超音波振動子を備え、該超音波振動子から前記光ファイバに向けて超音波を放射して前記光ファイバを振動させるという手段を採用する。
【0009】
本発明では、光学式油検知器に係る第3の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記加振部は、圧電素子を備え、前記圧電素子により前記光ファイバを振動させるという手段を採用する。
【0010】
本発明では、光学式油検知器に係る第4の解決手段として、上記第1〜第3のいずれかの解決手段において、前記加振部は、所定の時間間隔で前記光ファイバを振動させるという手段を採用する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、加振部が光ファイバを振動させるので、付着物の発生を抑制または防止できる。したがって、光ファイバを水中から引き上げて清掃する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光学式油検知器Aの全体構成を示す概略図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る光学式油検知器Aのフロート型検知部1の構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る光学式油検知器Aのフロート型検知部1の断面図である。
【図4】図3のX−X線に沿った断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る光学式油検知器Aのフロート型検知部1における光ファイバ31の外周面を示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態におけるフロート型検知部1Aの構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
〔第1実施形態〕
第1実施形態に係る光学式油検知器Aは、排水ピットPに貯留された水に混入した油の有無を検知する検知器である。光学式油検知器Aは、図1に示すようにフロート型検知部1と、監視部2と、振動駆動部3と、ロッド4と、ケーブル5とを備えている。
【0014】
フロート型検知部1は、排水ピットPに貯留された水の水面近傍で浮遊し、水中の油の有無を検知し、検知結果を油検知信号として監視部2に出力する。なお、フロート型検知部1の詳細は後述する。
監視部2は、排水ピットPの近傍に設置され、水中の油を検出した場合に警報信号を外部のコンピュータなどに出力する機器であり、フロート型検知部1から入力される油検知信号に基づいて警報信号を発生する警報発生部2aと、フロート型検知部1の油検知機能及び警報発生部2aが必要とする電力を発生する監視用電源2bとを具備する。
振動駆動部3は、フロート型検知部1に設けられた超音波振動子40を駆動するものであり、タイマ3aと振動駆動電源3bとを具備する。タイマ3aは、超音波振動子40を駆動するための振動駆動信号を定期的に出力する。振動駆動電源3bは、フロート型検知部1における超音波振動子40が必要とする電力を発生する。
【0015】
ロッド4は、一端が側壁用ブラケット6によって排水ピットPの側壁に支持され、他端にフロート型検知部1が取り付けられている。側壁用ブラケット6は、このようなロッド4をある程度の範囲内で鉛直方向かつ水平方向に回動自在に支持する。
ケーブル5は、フロート型検知部1と監視部2及び振動駆動部3とを電気的に接続し、監視用電源2bの電力、振動駆動電源3bの電力及びタイマ3aの振動駆動信号をフロート型検知部1に供給するとともに、フロート型検知部1の油検知信号を監視部2に供給する。このようなケーブル5は、図示するようにロッド4に支持されてフロート型検知部1と監視部2及び振動駆動部3とを接続している。
【0016】
次に、図2〜4を参照してフロート型検知部1の詳細構成を説明する。
フロート型検知部1は、フロート10、基板20、光検知部30、超音波振動子40及び振動子支持部50を備えている。なお、超音波振動子40は、上述したタイマ3aとともに本実施形態における加振部を構成する。
フロート10は、防水状態で密閉された内部空間を有する樹脂製であり、下方に向かうに従い細くなる有底の略円筒状を呈し、図2及び図3に示すようにフロート型検知部1の外形を主に構成する部材であり、基板20などを収容する胴部11と、胴部11の側面に設けられた第1ガイド部12と、胴部11の底部に設けられた第2ガイド部13とを有している。第1ガイド部12及び第2ガイド部13は、後述する光ファイバ31を案内するための凹部を有している。なお、フロート10は、水面近傍に浮遊できるだけの浮力を有し、喫水線WL1,WL2(図1参照)が胴部11の上端よりもわずかに下方に位置するような浮力に調整されている。
【0017】
基板20は、円形であり、水平方向に配置されてフロート10内に収容されている。また、基板20は、後述する投光素子32に電力を供給する電源回路や受光素子33の出力を増幅する増幅回路等を有しており、投光素子32及び受光素子33に電気的に接続されている。
光検知部30は、フロート10に設けられ水中の油の有無を検知するものであり、フロート10の外周面に設けられる光ファイバ31と、光ファイバ31の一端から検知光を入射させる投光素子32と、光ファイバ31の他端から出射された検知光を受光する受光素子33とを有している。
【0018】
光ファイバ31は、アクリル製プラスチックから形成された単一芯線の光ファイバケーブルであり、図3に示すように、第1ガイド部12及び第2ガイド部13に案内されてフロート10の表面に縦方向に1周して固定されている。光ファイバ31の一端は、投光側コネクタ34を介して投光素子32に接続されており、他端は、受光側コネクタ35を介して受光素子33に接続されている。また、光ファイバ31は、所定の検知範囲Sに亘って被膜が剥がされて芯線(光ファイバ芯線)を露出している。この検知範囲Sは、喫水線WLを挟んで上下の検知範囲を含んでいるが、混濁してある程度の厚みをもつ油及び浮上してくる油を迅速に検出するために、喫水線WLの下方は上方よりも長くなるように構成されている。
投光素子32は、光ファイバ31に光を投光する発光ダイオード(LED)である。受光素子33は、投光素子32が投光する光を受光し電気信号に変換するフォトダイオード(PD)である。
【0019】
超音波振動子40は、光ファイバ31に向けて超音波ucを放射して振動させるものであり、振動子支持部50によってフロート10から吊り下げられた状態で支持され、また超音波放射口40aが光ファイバ31に対向するように配置されている。超音波振動子40は、ケーブル5を介して振動駆動部3と電気的に接続されており、振動駆動部3のタイマ3aから振動駆動信号が入力されると、超音波ucを放射する。なお、上記超音波振動子40は、振動駆動電源3bの電力に基づいて稼動するが、例えば、基板20と超音波振動子40とが電気的に接続されている場合に、基板20が監視用電源2bからの電力を超音波振動子40に振り分け、超音波振動子40は当該電力に基づいて稼動するようにしてもよい。その場合には、振動駆動電源3bを不要として、監視用電源2bの電力により振動駆動部3のタイマ3aの電力をまかなうようにしてもよい。
振動子支持部50は、超音波振動子40をフロート10から吊り下げる状態に支持する。
【0020】
次に、光学式油検知器Aの光ファイバ31に付着した微生物及び藻などの付着物の除去動作について説明する。
排水ピットPに貯留されている水の中には微生物や藻が自由に漂っており、光ファイバ31の検知範囲Sの外周面に付着する場合がある。そして、検知範囲Sの外周面に付着した微生物や藻などは徐々に成長し、光ファイバ31の正常な検知機能を阻害する場合がある。
【0021】
本光学式油検知器Aでは、このような光ファイバ31の機能障害を未然に防ぐために、タイマ3aから超音波振動子40に所定の時間間隔で振動駆動信号を出力し、以て超音波ucを光ファイバ31に向けて所定の時間間隔で放射する。すなわち、超音波振動子40は、タイマ3aから振動駆動信号が入力される度に超音波ucを光ファイバ31に向けて放射するので、これによって光ファイバ31は所定の時間間隔で振動する。この結果、光ファイバ31への微生物や藻などの付着、つまり光ファイバ31の外周面における水以外の付着物の発生が抑制あるいは防止される。
例えば、図5の(a)に示すように、光ファイバ31の外周面に細菌bc(黒色の斑点)が付着・繁殖した状態であっても、超音波ucを8分間放射することによって、図5の(b)に示すように細菌bcの付着は大幅に減少し、光ファイバ31の機能障害は解消される。
【0022】
第1実施形態によれば、超音波振動子40が光ファイバ31に超音波ucを定期的に放射して振動させるので、光ファイバ31の付着物を除去することが可能であり、よって光ファイバ31の外周面における付着物の発生を抑制あるいは防止することができる。したがって、光ファイバ31を水中から引き上げて清掃することなく、付着物に起因する光ファイバ31の機能障害を防止することができる。
【0023】
〔第2実施形態〕
次に、図6を参照して第2実施形態に係る光学式油検知器Bについて説明する。
なお、本光学式油検知器Bは、上述した第1実施形態に係る光学式油検知器Aに対してフロート型検知部のみが異なる。したがって、図6では、本光学式油検知器Bにおけるフロート型検知部1Aの構成を示すと共に、以下ではフロート型検知部1Aの構成の特徴を説明する。また、図6に示すフロート型検知部1Aにおいて、図2に示すフロート型検知部1の構成要素と同一の要素については同一の符号を付している。
【0024】
フロート型検知部1Aにおけるフロート10Aは、胴部11の側面上部に設けられた第3ガイド部14を有している。この第3ガイド部14は、フロート10Aの表面において水平方向に周回する光ファイバ31Aを案内する凹部を有している。
【0025】
光ファイバ31Aは、図6に示すように第1ガイド部12及び第2ガイド部13に案内されてフロート10Aの表面に縦方向に1周するとともに第3ガイド部14に案内されてフロート10Aの表面において水平方向に1周して固定されている。光ファイバ31Aは、第1実施形態における検知範囲S(図3参照)だけでなく、フロート10Aの表面を水平方向に1周する範囲も芯線が露出している。すなわち、光ファイバ31Aにおいて、検知範囲Sとともにフロート10Aの表面を水平方向に1周する範囲も油の検知範囲となる。
【0026】
超音波振動子40Aは、図6に示すように2つ設けられている。それぞれの超音波振動子40Aは、フロート10Aの表面において縦方向及び水平方向に周回する光ファイバ31Aに超音波放射口40aAが対向するように配置されている。
振動子支持部50Aは、フロート10Aの表面に水平方向に周回する光ファイバ31Aに超音波放射口40aAが対向するように2つの超音波振動子40Aを支持する。
【0027】
次に、このように構成されたフロート型検知部1Aの光ファイバ31Aに発生した付着物の除去動作について説明する。
振動駆動部3のタイマ3aは、所定の時間間隔で振動駆動信号を2つの超音波振動子40Aに出力する。各々の超音波振動子40Aは、タイマ3aから振動駆動信号が入力されると、超音波ucを光ファイバ31Aに向けて放射する。この結果、光ファイバ31Aが振動し、当該光ファイバ31Aに発生した付着物が剥がれ落ちる。
【0028】
すなわち、本フロート型検知部1Aでは、2つの超音波振動子40Aが光ファイバ31Aに向けて超音波ucを放射するので、フロート10Aの表面において縦方向及び水平方向に周回する光ファイバ31Aに付着物が発生することを抑制あるいは防止することが可能である。
【0029】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく、例えば以下のような変形が考えられる。
すなわち、上記実施形態では、加振部に超音波振動子40,40Aを用いたが、本発明はこれに限定されない。
例えば、超音波振動子40,40Aに代えて圧電素子を用いるようにしてもよい。具体的には、光ファイバ31、31Aの一部に接触するように圧電素子を取り付け、圧電素子をタイマ3aで駆動することにより光ファイバ31、31Aを直接振動させて、光ファイバ31、31Aにおける付着物の発生を抑制または防止するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0030】
A,B…光学式油検知器、1,1A…フロート型検知部、2…監視部、2a…警報発生部、2b…監視用電源、3…振動駆動部、3a…タイマ(加振部)、3b…振動駆動電源、4…ロッド、5…ケーブル、6…側壁用ブラケット、10,10A…フロート、11…胴部、12…第1ガイド部、13…第2ガイド部、14…第3ガイド部、20…基板、30,30A…光検知部、31,31A…光ファイバ、32…投光素子、33…受光素子、34…投光側コネクタ、35…受光側コネクタ、40,40A…超音波振動子(加振部)、40a,40aA…超音波放射口、50,50A…振動子支持部、WL1,WL2,WL…喫水線、uc…超音波、bc…細菌


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバに入射された検知光を用いて油を検知する光学式油検知器であって、
前記光ファイバを振動させる加振部を具備することを特徴とする光学式油検知器。
【請求項2】
前記加振部は、前記光ファイバに対向して設けられた超音波振動子を備え、該超音波振動子から前記光ファイバに向けて超音波を放射して前記光ファイバを振動させることを特徴とする請求項1に記載の光学式油検知器。
【請求項3】
前記加振部は、圧電素子を備え、前記圧電素子により前記光ファイバを振動させることを特徴とする請求項1に記載の光学式油検知器。
【請求項4】
前記加振部は、所定の時間間隔で前記光ファイバを振動させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学式油検知器。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−220839(P2011−220839A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90485(P2010−90485)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【出願人】(503223223)株式会社IHIエスキューブ (27)