説明

光学材料用樹脂の製造方法、その製造装置、プラスチックレンズ及びその製造方法

【課題】予備重合反応にかかる時間を短縮して生産性の向上を図ることができる光学材料用樹脂の製造方法の提供。
【解決手段】混合容器1の本体1Aの内部に化合物(a)及び化合物(b)を投入し、一度、攪拌機構2で攪拌した後、(d)触媒を本体1Aの内部に投入する。そして、混合容器1の内部を密閉状態にし、排気機構3の開閉弁3Bを開放操作して排気管3Aを通じて混合容器1の内部を排気する。開閉弁3Bを閉塞して排気管3Aから混合容器1の内部の排気を終了したら、開閉弁4Cを開放操作して硫化水素ガス供給機構4から混合容器1の内部に硫化水素ガスを導入する。硫化水素ガスが導入されたら、混合容器1の内部を所定温度に維持しながら攪拌機構2を操作して予備重合反応を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫黄原子及び/又はセレン原子を有する無機化合物を使用して得られる光学材料用樹脂を製造する方法及び装置、並びに、当該光学材料用樹脂を用いて製造されるプラスチックレンズ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチック材料は軽量かつ靭性に富み、また染色が容易であることから、各種光学部品、特に眼鏡レンズに多用されている。この眼鏡レンズに要求される最も重要な性能は、高屈折率と高アッベ数であり、近年、屈折率とアッベ数のバランスに優れたポリエピスルフィド化合物が多く利用されている。そして、より高屈折率化を志向して、硫黄原子及び/又はセレン原子を有する無機化合物を用いた光学材料用樹脂が提案されている。
ここで、光学材料用樹脂で製造される光学部品の透明性を確保するために、化合物の調製には予備重合反応及び脱気処理が必要であるが、これら予備重合反応及び脱気処理を行うと組成物の粘度が上昇する等の不都合が生じる。
【0003】
この不都合を回避するため、エポキシ系原料に無機硫黄を混合し、予備反応させてから硬化する製造方法が知られており、具体的には、エポキシ系原料と硫黄とに、加硫触媒を添加し、温度をかけて予備重合反応を行った後、冷却し、チオール系原料やUVA(紫外線吸収剤)を混合した後、重合触媒を添加して硬化する従来例がある(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開2006−348285
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、予備重合反応において発生する硫化水素ガスが反応に寄与している。発生する硫化水素ガスの量は予備重合反応の速度に影響を与え、硫化水素ガスの量が少ないと予備重合反応の進行に時間がかかるという課題がある。
混合容器は、硫化水素ガスを閉じ込める目的の他、圧力を制御する目的のために密閉可能な構造とされる。混合容器の内容積に対して調合量が少ないと、発生する硫化水素ガスが少量になってしまうため、硫化水素ガスと原料との反応確立が低下することにより予備重合反応が進行しにくくなり、その結果、予備重合反応に非常に時間がかかってしまい、生産性の低下を招いてしまう。
【0006】
この課題を解決するためには、混合容器の内容積に対して一定量以上の調合量を確保し、硫化水素ガスとの接触確立を増加させる方法が考えられるが、製造上、混合容器の内容積を自由に変更できる構造を採用することは困難である。
そのため、光学材料用樹脂を一度に大量に製造するには、硫化水素ガスの発生量を多くする必要があり、それには、調合量を多くすればよいが、それでは、少量の光学材料を製造することができないという課題が生じる。
【0007】
本発明は、予備重合反応にかかる時間を短縮して生産性の向上を図ることができる光学材料用樹脂の製造方法、その製造装置、プラスチックレンズ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光学材料用樹脂の製造方法は、(a)1〜50質量部の硫黄原子及び/又はセレン原子を有する無機化合物(以下、(a)化合物)、(b)50〜99質量部の下記(1)式で表される化合物(以下、(b)化合物)、
【0009】
【化1】

(c)1〜20質量部のSH基を1個以上有する化合物(以下、(c)化合物)を混合容器の内部で混合し、前記(a)化合物と前記(b)化合物とを予め予備重合反応させて光学材料用樹脂を製造する方法であって、前記(a)化合物と前記(b)化合物とを含む原料を予め予備重合反応させる際に、前記混合容器の内部に外部から硫化水素ガスを導入することを特徴とする。
【0010】
本発明の光学材料用樹脂の製造装置は、(a)1〜50質量部の硫黄原子及び/又はセレン原子を有する無機化合物(以下、(a)化合物)、(b)50〜99質量部の下記(1)式で表される化合物(以下、(b)化合物)、
【0011】
【化2】

及び(c)1〜20質量部のSH基を1個以上有する化合物(以下、(c)化合物)を混合する混合容器と、この混合容器で前記(a)化合物と前記(b)化合物とを予め予備重合反応させる際に、硫化水素ガスを前記混合容器の内部に導入する硫化水素ガス供給機構とを備えたことを特徴とする。
【0012】
以上の構成の本発明では、前記(a)化合物と前記(b)化合物とを予め予備重合反応させ、その後、前記(c)化合物を混合して光学材料用樹脂を製造する。ここで、予備重合反応を実施する工程において、予備重合反応に不足する硫化水素ガスを混合容器の内部へ硫化水素ガス供給機構から個別に導入する。
予備重合反応工程では、この反応に伴って発生する硫化水素ガスだけでなく、外部から導入される硫化水素ガスが予備重合反応に寄与することになり、予備重合進行速度が上がることになる。そのため、予備重合反応を短時間で終了させることが可能となり、生産効率が向上する。
【0013】
本発明では、前記硫化水素ガスを、前記混合容器の内容積に対して前記原料の体積が30%以下の場合に導入することが好ましい。
この構成の発明では、原料体積が混合容器の内容積に対して30%以下という小さな割合であっても、従来と同様の反応時間で予備重合反応を終了させることができる。
つまり、原料体積が混合容器の内容積に対して一定以上の従来例において、外部から硫化水素ガスを導入しない場合にかかる予備重合反応の時間と、本発明でかかる予備重合反応との時間とが略同じであるので、光学材料用樹脂を製造するための作業時間の管理が従来と同様にできる。
【0014】
さらに、本発明では、前記混合容器の内部を、81×10Pa〜152×10Pa(0.8atm〜1.5atmをSI単位系に換算した値)になるまで硫化水素ガスを導入する構成が好ましい。
この構成の発明では、硫化水素ガスの導入後の圧力が81×10Pa未満であると、硫化水素ガスの量が十分ではなく予備重合反応が短時間で行えなくなり、152×10Paを超えると、製造される光学部品、例えば、プラスチックレンズの透明性が著しく低下することになる。
同様に、本発明では、前記混合容器の内部を減圧した後、この減圧時の圧力値に対して、6〜12倍になるまで硫化水素ガスを導入する構成が好ましい。
この構成の発明では、6倍未満であると、硫化水素ガスの量が十分ではなく予備重合反応が短時間で行えなくなり、12倍を超えると製造される光学部品の透明性が低下することになる。
【0015】
本発明では、前記予備重合反応を、(d)0.001〜10質量部の重合触媒(以下(d)触媒)を添加して、0℃〜150℃の条件で行うことが好ましい。
この構成の発明では、前記(d)触媒を(a)化合物と(b)化合物に添加することで、予備重合反応を促進させることができる。ここで、(d)触媒を0.001質量部より小さくすると、反応促進が十分ではなく、10質量部より大きいと、コストが高いものとなる。
【0016】
前記(a)化合物が硫黄である構成が好ましい。
この構成の発明では、硫黄は従来使用されている材料であることから容易に入手することができ、製造コストを低く抑えることができる。
【0017】
前記(b)化合物が、ビス(β−エピチオプロピル)スルフィド及び/又はビス(β−エピチオプロピル)ジスルフィドである構成が好ましい。
この構成の発明では、(b)化合物が従来使用されている材料であることから容易に入手することができ、製造コストを低く抑えることができる。
【0018】
本発明のプラスチックレンズは、前述の製造方法で製造された光学材料用樹脂からなることを特徴とする。
この構成の発明では、前述の効果を奏することができるプラスチックレンズを提供することができる。
本発明のプラスチックレンズの製造方法は、前述の製造方法で製造された光学材料用樹脂を互いに対向配置される一対のレンズ成形型を有する成型用モールドのキャビティに注入し、前記光学材料用樹脂が硬化した後、前記レンズ成形型を離型することを特徴とする。
この構成の発明では、前述の効果を奏することができるプラスチックレンズの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
まず、プラスチックレンズ製造装置について説明する。図1にはプラスチックレンズ製造装置の概略構成が示されている。
図1において、プラスチックレンズ製造装置100は、眼鏡レンズを製造する装置であり、成型用モールド設置部10と、供給部20と、供給制御部としての制御装置30と、吸引原料貯蓄部40と、原料供給装置50と、を備えている。
【0020】
成型用モールド設置部10には、複数のモールド抑え部11が配設され、これらのモールド抑え部11により成型用モールド12が保持されている。
成型用モールド12は、互いに対向配置される一対のレンズ成形型を、粘着テープ15で固定して形成されるものであり、これらに囲まれる空間がキャビティとされる。そして、粘着テープ15の一部には、光学材料用樹脂を注入するための注入口(図示せず)が形成されている。
【0021】
供給部20は、成型用モールド12のキャビティにプラスチックレンズの材料となる光学材料用樹脂を注入するものである。この供給部20は、供給部本体21と、供給部本体21に接続される図示しないノズル取付部と、供給部本体21に接続される図示しない排出部と、供給部本体21に接続されるセンサ部24と、供給部本体21に接続され光学材料用樹脂を成形用モールド12に供給する原料供給部25と、を備えている。
供給部本体21は、原料供給部25側に図示しない供給孔が形成され、この供給孔から原料を供給する供給管がノズル取付部22側に向かって供給部本体21の内部を貫通している。
供給部本体21は、制御装置30から入力される制御信号を受信し、注入管に流入される光学材料用樹脂の流入量を制御する構成を備えている。
センサ部24は、供給部本体21の内部を流れる吸引管から吸引された光学材料用樹脂の吸引量を検出し、吸引量に応じた検出信号を制御装置30に出力する。
原料供給部25は、原料供給装置50から供給される眼鏡レンズの光学材料用樹脂を供給管を通して供給するものであり、その上部には、固定部251が取り付けられている。この固定部251は、供給部20をプラスチックレンズ製造装置100の所定の位置に固定する。
【0022】
吸引原料貯蓄部40は、吸引管にて吸引した光学材料用樹脂を貯蓄する貯蓄部41と、この貯蓄部41に設けられる蓋部42とを備えている。蓋部42には、貯蓄部41の内部と外部とを連通する2つの窓部が形成されており、これらの窓部のうち1つは排出管23Aが挿通されて、他方の窓部には、ポンプ管43が挿通されている。このポンプ管43の一端部は貯蓄部41の内部に挿通され、他端部には、図示しない真空ポンプなどが設けられている。
【0023】
以上の構造のプラスチックレンズ製造装置100でプラスチックレンズを製造するには、 成型用モールド設置部10に成型用モールド12を設置し、この成型用モールド12の注入口に注入管の注入針を挿通させる。
この後、原料供給装置50から光学材料用樹脂を供給部20に供給し、注入管から成型用モールド12のキャビティに注入する。そして、注入口から光学材料用樹脂が溢れ出ると、溢れ出た光学材料用樹脂を吸引管で吸引する。注入口から注入針の先端が完全に離れるとプラスチックレンズの原料の注入を終了する。
そして、成型用モールド12を炉に入れ、重合硬化(本硬化)させる。炉から取り出された成型用モールド12は、離型されてプラスチックレンズ用基材が形成される。この基材は必要に応じ研磨や表面処理等の工程を経て、プラスチックレンズとなる。
【0024】
次に、本発明の一実施形態にかかる光学材料用樹脂の製造装置について説明する。この製造装置で製造された光学材料用樹脂は図1の原料供給装置50に蓄えられる。
図2には本実施形態にかかる光学材料用樹脂の製造装置の概略構成が示されている。
図2において、光学材料用樹脂の製造装置は、複数種類の化合物,その他の材料を収納する混合容器1と、この混合容器1の内部に収納された材料を攪拌する攪拌機構2と、混合容器1の内部を排気する排気機構3と、混合容器1の内部に硫化水素ガスを導入するための硫化水素ガス供給機構4と、混合容器1で製造された光学材料用樹脂を排出する樹脂排出機構5とを備えている。
【0025】
混合容器1は、内部が所定の容積を有する本体1Aと、この本体1Aに着脱自在に設けられた蓋体1Bとを備え、この蓋体1Bが本体1Aに装着された状態では容器内部は密閉された構造とされる。
蓋体1Bが外された状態で、本体1Aの内部に化合物(a)、化合物(b)、化合物(c)、触媒(d)、その他の材料が投入される。
本体1Aの外部には容器内部の温度を調整するためのウォータジャケット1Cが設けられている。このウォータジャケット1Cは図示しない制御装置で温度調整が可能とされる。
【0026】
攪拌機構2は本体1Aの内部に回転自在に設けられる攪拌部材2Aと、この攪拌部材2Aを回転駆動するモータ等の駆動源2Bとを有する。
攪拌部材2Aは下方に配置された攪拌用プロペラに軸部の一端が固定され、この軸部の他端側が本体1Aの頂部に軸支された構造である。
排気機構3は、本体1Aの頂部に一端部が接続された排気管3Aと、この排気管3Aの他端部に接続された図示しない吸引装置と、排気管3Aの途中に設けられた開閉弁3Bとを有し、この開閉弁3Bを開放操作することにより、混合容器1の内部が排気されて減圧される。
【0027】
硫化水素ガス供給機構4は本体1Aの頂部に一端が取り付けられたガス供給管4Aと、このガス供給管4Aの他端に設けられ内部に硫化水素ガスが充填されたボンベ4Bと、ガス供給管4Aに設けられた開閉弁4Cとを備えており、開閉弁4Cを開放操作することでボンベ4Bに充填されている硫化水素ガスが本体1Aの内部に導入される。
樹脂排出機構5は本体1Aの底部に一端部が接続された排出管5Aと、この排出管5Aの他端部に接続された図示しないポンプと、排出管5Aの途中に設けられた開閉弁5Bとを有し、この開閉弁5Bを開放操作することにより、混合容器1で製造された光学材料用樹脂が排出管5Aを通って別の容器に移される。
【0028】
混合容器1に投入される材料としては、(a)化合物、(b)化合物、(c)化合物、(d)触媒及び(e)化合物等がある。
化合物(a)は1〜50質量部の硫黄原子及び/又はセレン原子を有する無機化合物である。
(a)化合物である硫黄原子及び/又はセレン原子を有する無機化合物は、硫黄原子及び/又はセレン原子を1個以上有する全ての無機化合物を包含する。ここでいう無機化合物とは、「標準化学用語辞典」(日本化学会編(1991)丸善)に記載されている通りとする。(a)化合物は、化合物中の硫黄原子及び/又はセレン原子の合計重量の割合が30%以上であることが好ましい。この割合が、30%未満である場合、光学材料用組成物中の硫黄原子及び/又はセレン原子の重量の割合の上昇分が小幅となるために、樹脂の高屈折率化の効果が小さくなる。(a)化合物の添加量は、(a)及び(b)化合物の合計を100質量部とした場合、1〜50質量部使用するが、好ましくは5〜50質量部、より好ましくは10〜45質量部、特に好ましくは15〜40質量部、最も好ましくは20〜35質量部である。目的とする樹脂の屈折率としては、好ましくは1.72以上、より好ましくは1.73以上、特に好ましくは1.74以上、最も好ましくは1.75以上であり、高屈折率になるほど本発明の効果が顕著に現れる。
硫黄原子を有する無機化合物の具体例としては、硫黄、硫化水素、二硫化炭素、セレノ硫化炭素、硫化アンモニウム、二酸化硫黄、三酸化硫黄等の硫黄酸化物、チオ炭酸塩、硫酸及びその塩、硫酸水素塩、亜硫酸塩、次亜硫酸塩、過硫酸塩、チオシアン酸塩、チオ硫酸塩、二塩化硫黄、塩化チオニル、チオホスゲン等のハロゲン化物、硫化硼素、硫化窒素、硫化珪素、硫化リン、硫化砒素、金属硫化物、金属水硫化物等があげられる。これらの中で好ましいものは硫黄、二硫化炭素、硫化リン、硫化セレン、金属硫化物及び金属水硫化物であり、より好ましくは硫黄、二硫化炭素及び硫化セレンであり、特に好ましくは硫黄である。
【0029】
セレン原子を有する無機化合物とは、硫黄原子を含む無機化合物の具体例として挙げたセレノ硫化炭素、硫化セレンを除き、この条件を満たす無機化合物をすべて包括する。具体例としては、セレン、セレン化水素、二酸化セレン、二セレン化炭素、セレン化アンモニウム、二酸化セレン等のセレン酸化物、セレン酸及びその塩、亜セレン酸及びその塩、セレン酸水素塩、セレノ硫酸及びその塩、セレノピロ硫酸及びその塩、四臭化セレン、オキシ塩化セレン等のハロゲン化物、セレノシアン酸塩、セレン化硼素、セレン化リン、セレン化砒素、金属のセレン化物等があげられる。これらの中で好ましいものは、セレン、二セレン化炭素、セレン化リン、金属のセレン化物であり、特に好ましくはセレン及び二セレン化炭素である。これら硫黄原子及びセレン原子を有する無機化合物は、単独でも、2種類以上を混合して使用しても良い。
(b)化合物の添加量は、(a)及び(b)化合物の合計を100質量部とした場合、50〜99質量部使用するが、好ましくは50〜95質量部、より好ましくは60〜90質量部、特に好ましくは65〜85質量部、最も好ましくは70〜80質量部である。
(b)化合物の具体例としては、下記(1)式で表される化合物である。
【0030】
【化3】

【0031】
つまり、ビス(β−エピチオプロピル)スルフィド、ビス(β−エピチオプロピル)ジスルフィド、ビス(β−エピチオプロピル)トリスルフィド、ビス(β−エピチオプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)エタン、1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ブタン、ビス(β−エピチオプロピルチオエチル)スルフィドなどのエピスルフィド類があげられる。(a)化合物は単独でも、2種類以上を混合して用いてもかまわない。中でも好ましい具体例は、ビス(β−エピチオプロピル)スルフィド及び/又はビス(β−エピチオプロピル)ジスルフィドであり、最も好ましい具体例は、ビス(β−エピチオプロピル)スルフィドである。
【0032】
(a)化合物と(b)化合物からなる樹脂用組成物から低黄色な光学材料用樹脂を得るためには、活性水素を有する基を1個以上有する化合物の添加が必要である。低粘度な樹脂用組成物を実現させる活性水素を有する基を1個以上有する化合物を鋭意検討した結果、SH基を1個だけ有する化合物である(c)化合物が効果的である。
(c)化合物の添加量は、(a)及び(b)化合物の合計を100質量部とした場合、1〜20質量部使用するが、好ましくは2〜18質量部、より好ましくは3〜15質量部、特に好ましくは4〜12質量部、最も好ましくは5〜10質量部である。
また、(c)化合物のうち、得られる光学材料の高屈折率、低黄色、(c)化合物のハンドリングを考慮すると特定な構造を有する(c)化合物が好ましい。(c)化合物としては、光学材料の高屈折率を維持するためには芳香環を有する(c)化合物が好ましく、光学材料の低黄色を実現するためには(c)化合物の分子量は200未満が好ましく、(c)化合物が液状又は固状で臭気が弱くハンドリングしやすい面から(c)化合物の分子量は100以上が好ましい。
(c)化合物の具体例としては、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、n−プロピルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−デシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−オクタデシルメルカプタン、i−プロピルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、t−ノニルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、アリルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、2−(2−メルカプトエチルチオ)エタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、2−メルカプト−1,3−プロパンジオール、メルカプト酢酸、メルカプトグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、メチルメルカプトグリコレート、メチルメルカプトプロピオネート、(2−メルカプトエチルチオ酢酸)メチルエステル、(2−メルカプトエチルチオプロピオン酸)メチルエステル、2−ジメチルアミノエタンチオール、2−ジエチルアミノエタンチオール、2−ジブチルアミノエタンチオール、2-(1−ピロリジニル)エタンチオール、2−(1−ピペリジニル)エタンチオール、2−(4−モルフォリニル)エタンチオール、2−(N−メチルアニリノ)エタンチオール、2−(N−エチルアニリノ)エタンチオール、2−(2−メルカプトエチルメチルアミノ)−エタンチオール、シクロペンチルメルカプタン、シクロヘキシルメルカプタン、メルカプト−1,4−ジチアン、メルカプトメチル−1,4−ジチアン、メルカプトエチルチオメチル−1,4−ジチアン、チオフェノール、4−ヒドロキシチオフェノール、2−メチルチオフェノール、3−メチルチオフェノール、4−メチルチオフェノール、4−t−ブチルチオフェノール、2,4−ジメチルチオフェノール、2,5−ジメチルチオフェノール、3−メトキシチオフェノール、4−メトキシチオフェノール、5−t−ブチル−2−メチルチオフェノール、2−クロロチオフェノール、3−クロロチオフェノール、4−クロロチオフェノール、2,5−ジクロロチオフェノール、3,4−ジクロロチオフェノール、2,3−ジクロロチオフェノール、2,6−ジクロロチオフェノール、3,5−ジクロロチオフェノール、2,4−ジクロロチオフェノール、2,4,5−トリクロロチオフェノール、ペンタクロロチオフェノール、2−アミノ−4−クロロチオフェノール、2−ブロモチオフェノール、3−ブロモチオフェノール、4−ブロモチオフェノール、4−ニトロチオフェノール、2−アミノチオフェノール、3−アミノチオフェノール、4−アミノチオフェノール、ベンジルメルカプタン、4−メトキシベンジルメルカプタン、4−クロロベンジルメルカプタン、2,4−ジクロロベンジルメルカプタン、4−ブロモベンジルメルカプタン、3−ビニルベンジルメルカプタン、4−ビニルベンジルメルカプタン、2−フェニルチオエタンチオール、2−ベンジルチオエタンチオール、2−メルカプトナフタレン、1−メルカプトフラン、2−メルカプトフラン、1−メルカプトメチルフラン、2−メルカプトメチルフラン、1−メルカプトチオフェン、2−メルカプトチオフェン、1−メルカプトメチルチオフェン、2−メルカプトメチルチオフェン、2−メルカプトピリジン、4−メルカプトピリジン、2−メルカプトビフェニル、4−メルカプトビフェニル、メルカプト安息香酸等があげられる。(c)化合物は単独でも、2種類以上を混合して用いてもかまわない。中でも好ましい具体例は、チオフェノール、2−メチルチオフェノール、3−メチルチオフェノール、4−メチルチオフェノール、ベンジルメルカプタン、4−クロロベンジルメルカプタン、1−メルカプトメチルフラン、2−メルカプトエタノール、シクロヘキシルメルカプタンであり、最も好ましい具体例は、ベンジルメルカプタンである。
【0033】
樹脂用組成物を重合硬化する際には、必要に応じて重合触媒である(d)触媒を添加することができる。
重合触媒としては、アミン類、ホスフィン類、第4級アンモニウム塩類、第4級ホスホニウム塩類、アルデヒドとアミン系化合物の縮合物、カルボン酸とアンモニアとの塩、ウレタン類、チオウレタン類、グアニジン類、チオ尿素類、チアゾール類、スルフェンアミド類、チウラム類、ジチオカルバミン酸塩類、キサントゲン酸塩、第3級スルホニウム塩類、第2級ヨードニウム塩類、鉱酸類、ルイス酸類、有機酸類、ケイ酸類、四フッ化ホウ酸類、過酸化物、アゾ系化合物、酸性リン酸エステル類を挙げることができる。以下に、(d)触媒の代表的な具体例を示す。
(1)エチルアミン、n−プロピルアミン、sec−プロピルアミン、n−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、i−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ミスチリルアミン、1,2−ジメチルヘキシルアミン、3−ペンチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、アリルアミン、アミノエタノール、1−アミノプロパノール、2−アミノプロパノール、アミノブタノール、アミノペンタノール、アミノヘキサノール、3−エトキシプロピルアミン、3−プロポキシプロピルアミン、3−イソプロポキシプロピルアミン、3−ブトキシプロピルアミン、3−イソブトキシプロピルアミン、3−(2−エチルヘキシロキシ)プロピルアミン、アミノシクロペンタン、アミノシクロヘキサン、アミノノルボルネン、アミノメチルシクロヘキサン、アミノベンゼン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、α−フェニルエチルアミン、ナフチルアミン、フルフリルアミン等の1級アミン;エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノブタン、1,3−ジアミノブタン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ビス−(3−アミノプロピル)エーテル、1,2−ビス−(3−アミノプロポキシ)エタン、1,3−ビス−(3−アミノプロポキシ)−2,2’−ジメチルプロパン、アミノエチルエタノールアミン、1,2−、1,3−あるいは1,4−ビスアミノシクロヘキサン、1,3−あるいは1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,3−あるいは1,4−ビスアミノエチルシクロヘキサン、1,3−あるいは1,4−ビスアミノプロピルシクロヘキサン、水添4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2−あるいは4−アミノピペリジン、2−あるいは4−アミノメチルピペリジン、2−あるいは4−アミノエチルピペリジン、N−アミノエチルピペリジン、N−アミノプロピルピペリジン、N−アミノエチルモルホリン、N−アミノプロピルモルホリン、イソホロンジアミン、メンタンジアミン、1,4−ビスアミノプロピルピペラジン、o−、m−、あるいはp−フェニレンジアミン、2,4−あるいは2,6−トリレンジアミン、2,4−トルエンジアミン、m−アミノベンジルアミン、4−クロロ−o−フェニレンジアミン、テトラクロロ−p−キシリレンジアミン、4−メトキシ−6−メチル−m−フェニレンジアミン、m−、あるいはp−キシリレンジアミン、1,5−あるいは、2,6−ナフタレンジアミン、ベンジジン、4,4’−ビス(o−トルイジン)、ジアニシジン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−(4,4’−ジアミノジフェニル)プロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−チオジアニリン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジトリルスルホン、メチレンビス(o−クロロアニリン)、3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、N−アミノエチルピペラジン、N−アミノプロピルピペラジン、1,4−ビス(アミノエチルピペラジン)、1,4−ビス(アミノプロピルピペラジン)、2,6−ジアミノピリジン、ビス(3,4−ジアミノフェニル)スルホン等の1級ポリアミン;ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、ジ−3−ペンチルアミン、ジヘキシルアミン、オクチルアミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミン、メチルヘキシルアミン、ジアリルアミン、ピロリジン、ピペリジン、2−、3−、4−ピコリン、2,4−、2,6−、3,5−ルペチジン、ジフェニルアミン、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、ジベンジルアミン、メチルベンジルアミン、ジナフチルアミン、ピロール、インドリン、インドール、モルホリン等の2級アミン;N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチル−1,2−ジアミノプロパン、N,N’−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N’−ジメチル−1,2−ジアミノブタン、N,N’−ジメチル−1,3−ジアミノブタン、N,N’−ジメチル−1,4−ジアミノブタン、N,N’−ジメチル−1,5−ジアミノペンタン、N,N’−ジメチル−1,6−ジアミノヘキサン、N,N’−ジメチル−1,7−ジアミノヘプタン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチル−1,2−ジアミノプロパン、N,N’−ジエチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N’−ジエチル−1,2−ジアミノブタン、N,N’−ジエチル−1,3−ジアミノブタン、N,N’−ジエチル−1,4−ジアミノブタン、N,N’−ジエチル−1,6−ジアミノヘキサン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、2,5−あるいは2,6−ジメチルピペラジン、ホモピペラジン、1,1−ジ−(4−ピペリジル)メタン、1,2−ジ−(4−ピペリジル)エタン、1,3−ジ−(4−ピペリジル)プロパン、1,4−ジ−(4−ピペリジル)ブタン、テトラメチルグアニジン等の2級ポリアミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−iso−プロピルアミン、トリ−1,2−ジメチルプロピルアミン、トリ−3−メトキシプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−iso−ブチルアミン、トリ−sec−ブチルアミン、トリ−ペンチルアミン、トリ−3−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−2−エチルヘキシルアミン、トリ−ドデシルアミン、トリ−ラウリルアミン、ジシクロヘキシルエチルアミン、シクロヘキシルジエチルアミン、トリ−シクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルヘキシルアミン、N−メチルジヘキシルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルジシクロヘキシルアミン、N、N−ジエチルエタノールアミン、N、N−ジメチルエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリベンジルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、ジエチルベンジルアミン、トリフェニルアミン、N,N−ジメチルアミノ−p−クレゾール、N,N−ジメチルアミノメチルフェノール、2−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、ピリジン、キノリン、N−メチルモルホリン、N−メチルピペリジン、2−(2−ジメチルアミノエトキシ)−4−メチル−1,3,2−ジオキサボルナン等の3級アミン;テトラメチルエチレンジアミン、ピラジン、N,N’−ジメチルピペラジン、N,N’−ビス((2−ヒドロキシ)プロピル)ピペラジン、ヘキサメチレンテトラミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ブタンアミン、2−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシプロパン、ジエチルアミノエタノール、N,N,N−トリス(3−ジメチルアミノプロピル)アミン、2,4,6−トリス(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール、ヘプタメチルイソビグアニド等の3級ポリアミン;イミダゾール、N−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、N−エチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、4−エチルイミダゾール、N−ブチルイミダゾール、2−ブチルイミダゾール、N−ウンデシルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、N−フェニルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、N−ベンジルイミダゾール、2−ベンジルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、N−(2’−シアノエチル)−2−メチルイミダゾール、N−(2’−シアノエチル)−2−ウンデシルイミダゾール、N−(2’−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾール、3,3−ビス−(2−エチル−4−メチルイミダゾリル)メタン、2−メルカプトイミダゾール、2−メルカプト−1−メチルイミダゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、3−メルカプト−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール、5−メルカプト−1−メチル−テトラゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、アルキルイミダゾールとイソシアヌール酸の付加物、アルキルイミダゾールとホルムアルデヒドの縮合物等のイミダゾール類;3,5−ジメチルピラゾール、3,5−ジ(2-ピリジル)ピラゾール、3,5−ジメチル−1−ヒドロキシメチルピラゾール、3,5−ジイソプロピルピラゾール、3,5−ジメチル−1−フェニルピラゾール、3−メチルピラゾール、4−メチルピラゾール、N−メチルピラゾール、5−(チエニル)ピラゾール等のピラゾール類;1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のアミジン類;等に代表されるアミン系化合物。
【0034】
(2)トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ−iso−プロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリ−n−ヘキシルホスフィン、トリ−n−オクチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリベンジルホスフィン、トリス(2−メチルフェニル)ホスフィン、トリス(3−メチルフェニル)ホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン、トリス(ジエチルアミノ)ホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン、ジエチルフェニルホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、クロロジフェニルホスフィン等のホスフィン類。
(3)テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムアセテート、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムアセテート、テトラ−n−ブチルアンモニウムフルオライド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロライド、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムヨーダイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムアセテート、テトラ−n−ブチルアンモニウムボロハイドライド、テトラ−n−ブチルアンモニウムヘキサフルオロホスファイト、テトラ−n−ブチルアンモニウムハイドロゲンサルファイト、テトラ−n−ブチルアンモニウムテトラフルオロボーレート、テトラ−n−ブチルアンモニウムテトラフェニルボーレート、テトラ−n−ブチルアンモニウムパラトルエンスルフォネート、テトラ−n−ヘキシルアンモニウムクロライド、テトラ−n−ヘキシルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ヘキシルアンモニウムアセテート、テトラ−n−オクチルアンモニウムクロライド、テトラ−n−オクチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−オクチルアンモニウムアセテート、トリメチル−n−オクチルアンモニウムクロライド、トリメチルデシルアンモニウムクロライド、トリメチルドデシルアンモニウムクロライド、トリメチルセチルアンモニウムクロライド、トリメチルラウリルアンモニウムクロライド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、トリメチルベンジルアンモニウムブロマイド、トリエチル−n−オクチルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムブロマイド、トリ−n−ブチル−n−オクチルアンモニウムクロライド、トリ−n−ブチルベンジルアンモニウムフルオライド、トリ−n−ブチルベンジルアンモニウムクロライド、トリ−n−ブチルベンジルアンモニウムブロマイド、トリ−n−ブチルベンジルアンモニウムヨーダイド、n−ブチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、n−オクチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、デシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ドデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、セチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、メチルトリフェニルアンモニウムクロライド、メチルトリベンジルアンモニウムクロライド、メチルトリフェニルアンモニウムブロマイド、メチルトリベンジルアンモニウムブロマイド、エチルトリフェニルアンモニウムクロライド、エチルトリベンジルアンモニウムクロライド、エチルトリフェニルアンモニウムブロマイド、エチルトリベンジルアンモニウムブロマイド、n−ブチルトリフェニルアンモニウムクロライド、n−ブチルトリベンジルアンモニウムクロライド、n−ブチルトリフェニルアンモニウムブロマイド、n−ブチルトリベンジルアンモニウムブロマイド、1−メチルピリジニウムクロライド、1−メチルピリジニウムブロマイド、1−エチルピリジニウムクロライド、1−エチルピリジニウムブロマイド、1−n−ブチルピリジニウムクロライド、1−n−ブチルピリジニウムブロマイド、1−n−ヘキシルピリジニウムクロライド、1−n−ヘキシルピリジニウムブロマイド、1−n−オクチルピリジニウムブロマイド、1−n−ドデシルピリジニウムクロライド、1−n−ドデシルピリジニウムブロマイド、1−n−セチルピリジニウムクロライド、1−n−セチルピリジニウムブロマイド、1−フェニルピリジニウムクロライド、1−フェニルピリジニウムブロマイド、1−ベンジルピリジニウムクロライド、1−ベンジルピリジニウムブロマイド、1−メチルピコリニウムクロライド、1−メチルピコリニウムブロマイド、1−エチルピコリニウムクロライド、1−エチルピコリニウムブロマイド、1−n−ブチルピコリニウムクロライド、1−n−ブチルピコリニウムブロマイド、1−n−ヘキシルピコリニウムクロライド、1−n−ヘキシルピコリニウムブロマイド、1−n−オクチルピコリニウムクロライド、1−n−オクチルピコリニウムブロマイド、1−n−ドデシルピコリニウムクロライド、1−n−ドデシルピコリニウムブロマイド、1−n−セチルピコリニウムクロライド、1−n−セチルピコリニウムブロマイド、1−フェニルピコリニウムクロライド、1−フェニルピコリニウムブロマイド1−ベンジルピコリニウムクロライド、1−ベンジルピコリニウムブロマイド等の第4級アンモニウム塩類。
(4)テトラメチルホスホニウムクロライド、テトラメチルホスホニウムブロマイド、テトラエチルホスホニウムクロライド、テトラエチルホスホニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムクロライド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムヨーダイド、テトラ−n−ヘキシルホスホニウムブロマイド、テトラ−n−オクチルホスホニウムブロマイド、メチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、メチルトリフェニルホスホニウムヨーダイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムヨーダイド、n−ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、n−ブチルトリフェニルホスホニウムヨーダイド、n−ヘキシルトリフェニルホスホニウムブロマイド、n−オクチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、テトラキスヒドロキシメチルホスホニウムクロライド、テトラキスヒドロキシメチルホスホニウムブロマイド、テトラキスヒドロキシエチルホスホニウムクロライド、テトラキスヒドロキシブチルホスホニウムクロライド等の第4級ホスホニウム塩類。
【0035】
(5)アセトアルデヒドとアンモニアの反応物、ホルムアルデヒドとパライルイジンの縮合物、アセトアルデヒドとパライルイジンの縮合物、ホルムアルデヒドとアニリンの反応物、アセトアルデヒドとアニリンの反応物、ブチルアルデヒドとアニリンの反応物、ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドとアニリンの反応物、アセトアルデヒドとブチルアルデヒドとアニリンの反応物、ブチルアルデヒドとモノブチルアミンの縮合物、ブチルアルデヒドとブチリデンアニリンの反応物、ヘプトアルデヒドとアニリンの反応物、トリクロトニリデン−テトラミンの反応物、α−エチル−β−プロピルアクロレインとアニリンの縮合物、ホルムアルデヒドとアルキルイミダゾールの縮合物等のアルデヒドとアミン系化合物の縮合物。
(6)酢酸アンモニウム、安息香酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、アンモニウムトリフルオロアセテート等のカルボン酸とアンモニアとの塩類。
(7)アルコールとイソシアネートの反応により得られるウレタン類。
(8)メルカプタンとイソシアネートの反応により得られるチオウレタン類。
(9)ジフェニルグアニジン、フェニルトリルグアニジン、フェニルキシリルグアニジン、トリルキシリルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルグアニド、ジフェニルグアニジンフタレート、テトラメチルグアニジン、グアニジンチオシアネート、トリフェニルグアニジン、アミノグアニジン硫酸塩、1,3−ジフェニルグアニジン硫酸塩、ジカテコールホウ酸のジオルトトリルグアニジン塩等のグアニジン類。
(10)チオカルボアニリド、ジオルトトリルチオ尿素、エチレンチオ尿素、ジエチルチオ尿素、ジブチルチオ尿素、ジラウリルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、ジメチルエチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、1,3−ジフェニル−2−チオ尿素、1−アリル−2−チオ尿素、グアニルチオ尿素等のチオ尿素類。
(11)2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、2−(2,4−ジニトロフェニルチオ)ベンゾチアゾール、2−(モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール、2−(2,6−ジメチル−4−モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、N,N−ジエチルチオカルバモイル−2−ベンゾチアゾリルスルフィド、1,3−ビス(2−ベンゾチアゾリルメルカプトメチル)尿素、ベンゾチアジアジルチオベンゾエート、2−メルカプトチアゾリン、2−メルカプト−5−メチル−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−5−メチルチオ−1,3,4−チアジアゾール、2−(モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾールのナトリウム塩、2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、ジベンゾチアジルジスルフィドと塩化亜鉛の錯塩等のチアゾール類。
(12)N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N−tert−オクチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N−ジエチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等のスルフェンアミド類。
(13)テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラエチルチウラムモノスルフィド、テトラブチルチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、N,N’−ジメチル−N,N’−ジフェニルチウラムジスルフィド、N,N’−ジエチル−N,N’−ジフェニルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、環状チウラム等のチウラム
類。
【0036】
(14)ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ペンタメチレンジチオカルバミン酸ナトリウム、シクロヘキシルエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸カリウム、ジメチルジチオカルバミン酸鉛、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ビスマス、ジエチルジチオカルバミン酸カドミウム、ペンタメチレンジチオカルバミン酸カドミウム、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、ジエチルジチオカルバミン酸セレン、ジメチルジチオカルバミン酸テルル、ジエチルジチオカルバミン酸テルル、ジメチルジチオカルバミン酸鉄、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸ジエチルアンモニウム、ジブチルジチオカルバミン酸N,N−シクロヘキシルアンモニウム、ペンタメチレンジチオカルバミン酸ピペリジン、シクロヘキシルエチルジチオカルバミン酸シクロヘキシルエチルアンモニウムナトリウム、メチルペンタメチレンジチオカルバミン酸ピペコリン、ピペコリルジチオカルバミン酸ピペコリウム、N−フェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛とピペリジンの錯化合物等のジチオカルバミン酸塩類。
(15)イソプロピルキサントゲン酸ナトリウム、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛、ブチルキサントゲン酸亜鉛、ジブチルキサントゲン酸ジスルフィド等のキサントゲン酸塩類。
(16)トリメチルスルホニウムブロマイド、トリエチルスルホニウムブロマイド、トリ−n−ブチルスルホニウムクロライド、トリ−n−ブチルスルホニウムブロマイド、トリ−n−ブチルスルホニウムヨーダイド、トリ−n−ブチルスルホニウムテトラフルオロボーレート、トリ−n−ヘキシルスルホニウムブロマイド、トリ−n−オクチルスルホニウムブロマイド、トリフェニルスルホニウムクロライド、トリフェニルスルホニウムブロマイド、トリフェニルスルホニウムヨーダイド等の第3級スルホニウム塩類。
(17)ジフェニルヨードニウムクロライド、ジフェニルヨードニウムブロマイド、ジフェニルヨードニウムヨーダイド等の第2級ヨードニウム塩類。
(18)塩酸、硫酸、硝酸、燐酸、炭酸等の鉱酸類及びこれらの半エステル類。
(19)3フッ化硼素、3フッ化硼素のエーテラート等に代表されるルイス酸類。
(20)有機酸類及びこれらの半エステル類。
(21)ケイ酸、四フッ化ホウ酸。
(22)クミルパーオキシネオデカノエート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジアリルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジミリスチルパーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオヘキサノエート、tert−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ヘキシルパーオキシネオヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシネオヘキサノエート、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−ter−ブチルパーオキサイド等のパーオキサイド類;クメンヒドロパーオキサイド、tert−ブチルヒドロパーオキサイド等の過酸化物類。
(23)2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、1−〔(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ〕ホルムアミド、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチル−バレロニトリル2、2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、2、2’−アゾビス(2、4、4−トリメチルペンタン)等のアゾ系化合物類。
【0037】
(24)モノ−及び/又はジメチルリン酸、モノ−及び/又はジエチルリン酸、モノ−及び/又はジプロピルリン酸、モノ−及び/又はジブチルリン酸、モノ−及び/又はジヘキシルリン酸、モノ−及び/又はジオクチルリン酸、モノ−及び/又はジデシルリン酸、モノ−及び/又はジドデシルリン酸、モノ−及び/又はジフェニルリン酸、モノ−及び/又はジベンジルリン酸、モノ−及び/又はジデカノ−ルリン酸等の酸性リン酸エステル類。
以上、(d)触媒を例示したが、重合硬化を発現するものであれば、これら列記化合物に限定されるものではない。また、これら(d)触媒は単独でも2種類以上を混合して使用してもかまわない。これらのうち好ましい具体例は、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、セチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、1−n−ドデシルピリジニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド等の第4級ホスホニウム塩が挙げられる。これらの中で、さらに好ましい具体例は、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド及び/又はテトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイドであり、最も好ましい具体例は、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイドである。
(d)触媒の添加量は、(a)化合物及び(b)化合物の合計100質量部に対して、0.001〜5質量部であり、好ましくは0.002〜5質量部であり、より好ましくは0.005〜3質量部である。
樹脂用組成物を重合硬化する際に、ポットライフの延長や重合発熱の分散化などを目的として、必要に応じて重合調整剤である(e)化合物を添加することができる。重合調整剤は、長期周期律表における第13〜16族のハロゲン化物を挙げることができる。以下にこれらの代表的な具体例を示す。
(1)四塩化ケイ素、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、エチルトリクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、トリエチルクロロシラン、プロピルトリクロロシラン、ジプロピルジクロロシラン、トリプロピルクロロシラン、n−ブチルトリクロロシラン、ジn−ブチルジクロロシラン、トリn−ブチルクロロシラン、t−ブチルトリクロロシラン、ジt−ブチルジクロロシラン、トリt−ブチルクロロシラン、オクチルトリクロロシラン、ジオクチルジクロロシラン、トリオクチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、トリフェニルクロロシラン、アリルクロロジメチルシラン、トリクロロアリルシラン、t−ブチルクロロジメチルシラン、ジフェニルーt−ブチルクロロシラン、t−ブトキシクロロジフェニルシラン、トリメチル(2−クロロアリル)シラン、トリメチルクロロメチルシラン、n−ブチルクロロジメチルシラン、及びこれらの塩素の全部又は一部をフッ素、臭素、ヨウ素へ変えた化合物等のシランのハロゲン化物。
(2)四塩化ゲルマニウム、メチルゲルマニウムトリクロライド、ジメチルゲルマニウムジクロライド、トリメチルゲルマニウムクロライド、エチルゲルマニウムトリクロライド、ジエチルゲルマニウムジクロライド、トリエチルゲルマニウムクロライド、プロピルゲルマニウムトリクロライド、ジプロピルゲルマニウムジクロライド、トリプロピルゲルマニウムクロライド、n−ブチルゲルマニウムトリクロライド、ジn−ブチルゲルマニウムジクロライド、トリn−ブチルゲルマニウムクロライド、t−ブチルゲルマニウムトリクロライド、ジt−ブチルゲルマニウムジクロライド、トリt−ブチルゲルマニウムクロライド、アミルゲルマニウムトリクロライド、ジアミルゲルマニウムジクロライド、トリアミルゲルマニウムクロライド、オクチルゲルマニウムトリクロライド、ジオクチルゲルマニウムジクロライド、トリオクチルゲルマニウムクロライド、フェニルゲルマニウムトリクロライド、ジフェニルゲルマニウムジクロライド、トリフェニルゲルマニウムクロライド、トルイルゲルマニウムトリクロライド、ジトルイルゲルマニウムジクロライド、トリトルイルゲルマニウムクロライド、ベンジルゲルマニウムトリクロライド、ジベンジルゲルマニウムジクロライド、トリベンジルゲルマニウムクロライド、シクロヘキシルゲルマニウムトリクロライド、ジシクロヘキシルゲルマニウムジクロライド、トリシクロヘキシルゲルマニウムクロライド、ビニルゲルマニウムトリクロライド、ジビニルゲルマニウムジクロライド、トリビニルゲルマニウムクロライド、アリルトリクロロゲルマン、ビス(クロロメチル)ジメチルゲルマン、クロロメチルトリクロロゲルマン、t−ブチルジメチルクロロゲルマン、カルボキシエチルトリクロロゲルマン、クロロメチルトリメチルゲルマン、ジクロロメチルトリメチルゲルマン、3−クロロプロピルトリクロロゲルマン、フェニルジメチルクロロゲルマン、3−(トリクロロゲルミル)プロピオニルクロライド、及びこれらの塩素の全部又は一部をフッ素、臭素、ヨウ素へ変えた化合物等のゲルマニウムのハロゲン化物。
(3)四塩化スズ、ジエチルジクロロシラン、ジメチルスズジクロライド、トリメチルスズクロライド、エチルスズトリクロライド、ジエチルスズジクロライド、トリエチルスズクロライド、プロピルスズトリクロライド、ジプロピルスズジクロライド、トリプロピルスズクロライド、n−ブチルスズトリクロライド、ジn−ブチルスズジクロライド、トリn−ブチルスズクロライド、t−ブチルスズトリクロライド、ジt−ブチルスズジクロライド、トリt−ブチルスズクロライド、アミルスズトリクロライド、ジアミルスズジクロライド、トリアミルスズクロライド、オクチルスズトリクロライド、ジオクチルスズジクロライド、トリオクチルスズクロライド、フェニルスズトリクロライド、ジフェニルスズジクロライド、トリフェニルスズクロライド、トルイルスズトリクロライド、ジトルイルスズジクロライド、トリトルイルスズクロライド、ベンジルスズトリクロライド、ジベンジルスズジクロライド、トリベンジルスズクロライド、シクロヘキシルスズトリクロライド、ジシクロヘキシルスズジクロライド、トリシクロヘキシルスズクロライド、ビニルスズトリクロライド、ジビニルスズジクロライド、トリビニルスズクロライド、ブチルクロロジヒドロキシスズ、ビス(2,4−ペンタジオナート)ジクロロスズ、カルボメトキシエチルトリクロロスズ、クロロメチルトリメチルスズ、ジアリルジクロロスズ、ジブチルブトキシクロロスズ、トリn−ペンチルクロロスズ、及びこれらの塩素の全部又は一部をフッ素、臭素、ヨウ素へ変えた化合物等のスズのハロゲン化物。
(4)五塩化アンチモン、メチルアンチモンテトラクロライド、ジメチルアンチモントリクロライド、トリメチルアンチモンジクロライド、テトラメチルアンチモンクロライド、エチルアンチモンテトラクロライド、ジエチルアンチモントリクロライド、トリエチルアンチモンジクロライド、テトラエチルアンチモンクロライド、ブチルアンチモンテトラクロライド、ジブチルアンチモントリクロライド、トリブチルアンチモンジクロライド、テトラブチルアンチモンクロライド、フェニルアンチモンテトラクロライド、ジフェニルアンチモントリクロライド、トリフェニルアンチモンジクロライド、テトラフェニルアンチモンクロライド、及びこれらの塩素の全部又は一部をフッ素、臭素、ヨウ素へ変えた化合物等のアンチモンのハロゲン化物。
【0038】
(5)塩化アルミニウム、塩化インジウム、塩化タリウム、三塩化リン、五塩化リン、塩化ビスマス等の塩化物及びこれらの塩素の全部又は一部をフッ素、臭素、ヨウ素へ変えた化合物、ジフェニルクロロホウ素、フェニルジクロロホウ素、ジエチルクロロガリウム、ジメチルクロロインジウム、ジエチルクロロタリウム、ジフェニルクロロタリウム、エチルジクロロホスフィン、ブチルジクロロホスフィン、トリフェニルホスフィンジクロライド、ジフェニルクロロヒ素、テトラフェニルクロロヒ素、ジフェニルジクロロセレン、フェニルクロロセレン、ジフェニルジクロロテルル等のハロゲンと炭化水素基を有する化合物及びこれらの塩素の全部又は一部をフッ素、臭素、ヨウ素へ変えた化合物、クロロフェノール、ジクロロフェノール、トリクロロフェノール、クロロアニリン、ジクロロアニリン、クロロニトロベンゼン、ジクロロニトロベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、クロロアセトフェノン、クロロトルエン、クロロニトロアニリン、クロロベンジルシアナイド、クロロベンズアルデヒド、クロロベンゾトリクロライド、クロロナフタレン、ジクロロナフタレン、クロロチオフェノール、ジクロロチオフェノール、メタリルクロライド、塩化ベンジル、塩化ベンジルクロライド、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、クロロコハク酸、シュウ酸ジクロライド、トリグリコールジクロライド、メタンスルホニルクロライド、クロロ安息香酸、クロロサリチル酸、4,5−ジクロロフタル酸、3,5−ジクロロサリチル酸、イソプロピルクロライド、アリルクロライド、エピクロロヒドリン、クロロメチルチイラン、プロピレンクロロヒドリン、クロラニル、ジクロロジシアノベンゾキノン、ジクロロフェン、ジクロロ−1,4−ベンゾキノン、ジクロロベンゾフェノン、N−クロロフタルイミド、1,3−ジクロロ−2−プロパノール、2,3−ジクロロプロピオン酸メチル、p−クロロベンゼンスルホン酸、2−クロロプロピオン酸エチル、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等の炭化水素のハロゲン置換体や安息香酸クロライド、フタル酸クロライド、イソフタル酸クロライド、テレフタル酸クロライド、メタクリル酸クロライド、コハク酸クロライド、フマル酸クロライド、ニコチン酸クロライド、クロロニコチン酸クロライド、オレイン酸クロライド、塩化ベンゾイル、クロロベンゾイルクロライド、プロピオン酸クロライド等の酸クロライドに代表される有機ハロゲン化物及びこれらの塩素の全部又は一部をフッ素、臭素、ヨウ素へ変えたその他のハロゲン化合物等が挙げられる。
これら(e)化合物は単独でも2種類以上を混合して使用してもかまわない。これらのうち好ましいものはケイ素、ゲルマニウム、スズ、アンチモンのハロゲン化物である。より好ましいはケイ素、ゲルマニウム、スズ、アンチモンの塩化物であり、さらに好ましくはアルキル基を有するゲルマニウム、スズ、アンチモンの塩化物である。最も好ましいものの具体例はジブチルスズジクロライド、ブチルスズトリクロライド、ジオクチルスズジクロライド、オクチルスズトリクロライド、ジブチルジクロロゲルマニウム、ブチルトリクロロゲルマニウム、ジフェニルジクロロゲルマニウム、フェニルトリクロロゲルマニウム、トリフェニルアンチモンジクロライドである。
(e)化合物の添加量は、(a)及び(b)化合物の合計100質量部に対して、0.001〜5質量部であり、好ましくは0.002〜5質量部であり、より好ましくは0.005〜3質量部である。
【0039】
次に、本発明の一実施形態にかかる光学材料用樹脂の製造方法を図3及び図4に基づいて説明する。図3は予備重合工程の手順が示され、図4は予備重合工程後の本重合工程の手順が示されている。
まず、予備重合反応工程を図3に基づいて説明する。
図3(A)に示される通り、混合容器1の蓋体1Bを外し、本体1Aの内部に化合物(a)及び化合物(b)を投入し、これらの材料を一度、攪拌機構2で攪拌した後、(d)触媒を本体1Aの内部に投入する。
ここで、(a)化合物及び(b)化合物の材料の合計の体積は混合容器1の内部容積に対して所定割合は30%以下である。30%以下とするのは、原料体積が混合容器の内容積に対して一定以上であり、外部から硫化水素ガスを導入しない従来例にかかる予備重合反応の時間に、本実施形態でかかる予備重合反応との時間を合わせるためである。
さらに、図3(B)に示される通り、混合容器1の内部を密閉状態にし、排気機構3の開閉弁3Bを開放操作して排気管3Aを通じて混合容器1の内部を排気する。これにより、混合容器1の内部は減圧されることになる。この減圧は所定圧力、例えば、133×10Paまで実施する。なお、133×10Paは0.13atm気圧(100torr)をSI単位系で換算した値である。なお、本実施形態では、図3(B)で示される減圧工程を省略してもよい。
【0040】
そして、図3(C)に示される通り、開閉弁3Bを閉塞して排気管3Aから混合容器1の内部の排気を終了し、開閉弁4Cを開放操作して硫化水素ガス供給機構4から混合容器1の内部に硫化水素ガスを導入する。
ここで、混合容器1の内部は、図3(B)で示される減圧工程の有無にかかわらず、硫化水素ガスの導入により所定圧力まで上昇、例えば、81×10Pa〜152×10Paまで上昇させる。ここで、81×10Paは0.8atm(608torr)をSI単位系で換算した値であり、152×10Paは1.5atm(1140torr)をSI単位系で換算した値である。
硫化水素ガスの導入後の圧力が81×10Pa未満であると、硫化水素ガスの量が十分ではなく予備重合反応が短時間で行えなくなる。硫化水素ガスの導入後の圧力が152×10Paを超えると、製造されるプラスチックレンズの透明性が低下する。
【0041】
そして、図3(B)で示される減圧工程を実施した後では、所定の圧力、例えば、133×10Paまで減圧された後では、減圧時の圧力値に対して、6〜12倍となるように硫化水素ガスを混合容器1の内部に導入する。ここで、6倍未満であると、硫化水素ガスの量が十分ではなく予備重合反応が短時間で行えなくなり、12倍を超えると製造されるプラスチックレンズの透明性が低下する。
硫化水素ガスの導入は混合容器1の内容積に対して原料の体積が所定割合、例えば30%以下の場合に行う。
硫化水素ガスが導入されたら、図3(D)に示される通り、ウォータジャケット1Cによって混合容器1の内部を所定温度、例えば、60℃に維持しながら攪拌機構2を操作して予備重合反応を実施する。
【0042】
次に、本重合反応工程を図4に基づいて説明する。
図4(A)に示される通り、ウォータジャケット1Cによって混合容器1の内部を所定温度、例えば、20℃まで低下させた状態で、(c)化合物、(d)触媒及び(e)化合物を混合容器1の内部に投入する。そして、攪拌機構2を操作して混合容器1の内部を攪拌する。
その後、脱気処理を行う。つまり、図4(B)に示される通り、開閉弁3Bを開放して排気管3Aから混合容器1の内部を排気する。
脱気処理条件は、例えば、0.001〜50torrの減圧下、例えば、1分間〜24時間、0℃〜100℃で行う。
減圧度は、好ましくは0.005〜25torrであり、より好ましくは0.01〜10torrであり、これらの範囲で減圧度を可変しても構わない。
脱気時間は、好ましくは5分間〜18時間であり、より好ましくは10分間〜12時間である。
脱気の際の温度は、好ましくは5℃〜80℃であり、より好ましくは10℃〜60℃であり、これらの範囲で温度を可変しても構わない。
脱気処理の際は、撹拌によって、樹脂の界面を更新することは、脱気効果を高める上で好ましい。脱気処理により、除去される成分は、主に硫化水素等の溶存ガスや低分子量のメルカプタン等の低沸点物等であるが、脱気処理の効果を発現するのであれば、特に種類は限定されない。
そして、本重合反応工程が終了したら、図4(C)に示される通り、混合容器1から光学材料用樹脂を取り出す。そのため、樹脂排出機構5の開閉弁5Bを開放操作して本体1Aの底部から排出管5Aを通じて光学材料用樹脂を別の容器、例えば、原料供給装置50に移す。
【実施例】
【0043】
次に、本発明の実施例について説明する。
各実施例及び比較例において、(a)化合物として硫黄を用い、(b)化合物としてビス(β−エピチオプロピル)スルフィドを用い、(c)化合物としてベンジルメルカプタンを用いた。
[実施例1]
混合容器1として内容積950cm3のものを用い、その容器中に、体積269cm3(体積比約28%、重量約350g)の原料を仕込んだ。ここで、原料として、(a)化合物を67g、(b)化合物を267gとした。
その時の容器内温度を65℃として混合攪拌を行った。次いで、(d)触媒として2−メルカプト−1−メチルイミダゾール1.7gを加え、その後、硫化水素ガスを152×10Pa(1.5atm)となるように導入し、60℃で予備重合反応を行ったところ、約45分で狙いとなる屈折率(20℃)1.679に到達した。
その後、得られた樹脂組成物を20℃に冷却した。そこへ、(c)化合物を17g、(d)触媒としてトリエチルベンジルアンモニウムクロライド0.1g、同じく、(e)化合物としてジn−ブチルスズジクロライド0.67gを加え、よく混合し均一とした溶液を加えて均一な光学材料用樹脂とした。得られた光学材料用樹脂を、13×10Pa(10torr)、10分間、20℃の条件下で脱気処理した。
この樹脂を、成形用モールドを模した鋳型、つまり、2枚の鏡面仕上げのガラスフラット板の周囲を粘着テープで保持して成形された鋳型の中に注入し、30℃から100℃まで20時間かけて昇温し、重合硬化させた。室温まで放冷した後、重合硬化された部材をモールドから離型し、硬化したプラスチックレンズを得た。
実施例1の効果を確認するために樹脂用組成物の屈折率の評価をした。この評価は、アタゴ社のアッベ屈折率計を用いてd線(波長589nm)で測定した。
レンズの屈折率の評価は、アタゴ社のアッベ屈折率計を用いてe線(波長546nm)で測定した。屈折率を測定するために、2mm厚のフラット板を生成して、測定に使用した。フラット板は、厚みが2mmとなる様にテープにて外周部を封止した2枚のガラス平板中に、樹脂組成物を注入し、レンズ基材の製造条件で、重合硬化、離型及びアニール処理して製造した。
Tg(ガラス転移点)は、熱機械分析装置((株)島津製作所製:TMA60)を用いて、荷重50g、針入プローブ(2mmφ)、昇温スピードが10℃/minの条件により測定した。
実施例1では、得られた2mm厚のプラスチック板の屈折率の測定を行ったところ、nd=1.75であった。また、ガラス転移点は76℃であった。また、レンズの透明性を検査したところ、問題はなかった。
【0044】
[実施例2]
実施例2は実施例1と同じ内容積の混合容器中に、同じ体積の原料を仕込んだ。そのとき、(a)化合物67gと、(b)化合物267gとを混合攪拌し、その時の調合タンク内温度を65℃とした。次いで、(d)触媒として、2−メルカプト−1−メチルイミダゾール1.7gを加えた後、実施例1とは異なり、0.13気圧(100Torr)に排気後、硫化水素ガスを1.0気圧となるように導入し、60℃で予備重合反応を行った。その結果、約1時間で狙いとなる屈折率(20℃)1.679に到達した。
その後、実施例1と同様に、得られた樹脂組成物を20℃に冷却し、そこへ、(c)化合物を17g、(d)触媒としてトリエチルベンジルアンモニウムクロライドを0.1g、同じく、(e)化合物としてジn−ブチルスズジクロライド0.67gを加え、よく混合し均一とした溶液を加えて均一な光学材料用樹脂とした。得られた光学材料用樹脂を、10torr、10分間、20℃の条件下で脱気処理した。この樹脂を2枚の鏡面仕上げのガラスフラット板を用い、粘着テープで保持して成形用モールドを模した鋳型中に注入し、30℃から100℃まで20時間かけて昇温し、重合硬化させた。室温まで放冷した後、モールドから離型し、硬化した光学材料を得た。
実施例2では、得られた2mm厚のプラスチック板の屈折率の測定を行ったところ、nd=1.75であった。また、ガラス転移点は76℃であった。また、レンズの透明性を検査したところ、問題はなかった。
【0045】
[実施例3]
実施例3では、内容積950cm3の混合容器中に、体積92cm3(体積比約10%、重量約120g)の原料を仕込んだ。そのとき、(a)化合物を23g、(b)化合物を91g混合攪拌した。その時の調合タンク内温度を65℃として混合攪拌を行った。次いで、(d)触媒として、2−メルカプト−1−メチルイミダゾール0.6gを加え、0.13気圧(100Torr)に排気後、実施例2とは異なり、硫化水素ガスを0.8気圧となるように導入し、60℃で予備重合反応を行ったところ、約1時間で狙いとなる屈折率(20℃)1.679に到達した。
その後、得られた樹脂用組成物を20℃に冷却した。そこへ、(c)化合物を19g、(d)触媒としてトリエチルベンジルアンモニウムクロライドを0.111g、(e)化合物としてジn−ブチルスズジクロライド0.76gを加えよく混合し均一とした溶液を加えて均一な光学材料用樹脂とした。得られた樹脂を、10torr、10分間、20℃の条件下で脱気処理した。
それ以降は実施例1と同様の方法でプラスチック板を得た。得られた2mm厚のプラスチック板の屈折率の測定を行ったところ、nd=1.75であった。また、ガラス転移点は76℃であった。また、レンズの透明性を検査したところ、問題はなかった。
【0046】
[実施例4]
実施例4では、予備重合反応時の硫化水素ガスの導入を1.5atmまで実施する以外は、実施例3と同じである。得られた2mm厚のプラスチック板の屈折率の測定を行ったところ、nd=1.75であった。また、ガラス転移点は76℃であった。また、レンズの透明性を検査したところ、問題はなかった。
【0047】
[実施例5]
実施例5では、硫化水素ガスを0.5atmになるまで導入する以外は実施例2と同様にしてプラスチック板を得た。実施例5では、予備重合反応工程において、屈折率(20℃)が1.679に到達するのに、2時間程度要したが、実際の製造工程においてはさほど問題がなかった。得られた2mm厚のプラスチック板の屈折率の測定を行ったところ、nd=1.75であった。また、ガラス転移点は76℃であった。また、レンズの透明性を検査したところ、問題はなかった。
【0048】
[実施例6]
実施例6では、硫化水素ガスを2atmになるまで導入する以外は実施例3と同様にしてプラスチック板を得た。実施例6では、予備重合反応工程において、1時間以内で屈折率(20℃)が1.679に到達した。得られた2mm厚のプラスチック板の屈折率の測定を行ったところ、nd=1.75であった。また、ガラス転移点は76℃であった。また、レンズの透明性を検査したところ、若干の白濁が確認されたが、眼鏡レンズとしての使用に問題はなかった。
【0049】
[比較例1]
硫化水素ガスを導入しなかった以外は実施例2と同様である。光学材料用樹脂を得ようと試みたが、予備重合反応において、屈折率(20℃)が1.679に到達しなかったため、反応を断念した。そのため、所要時間以内ではプラスチックレンズを製造することができないことがわかった。プラスチックレンズが製造されないので、レンズ透明性の試験も行えなかった。
以上の実施例及び比較例の結果を表1として示す。なお、表1において、レンズ透明性は、暗室内においてプロジェクター用ライトをレンズの側面から照射し、レンズの白濁の有無を観察した。白濁が観察されないものを「○」、若干の白濁が観察されるものを「△」とした。レンズが製造されず試験ができないものを「−」とした。
また、所要時間内か否かは、従来の同様の1時間以内で予備重合反応が終了するものを「○」とし、若干、時間がかかるが製造工程上、問題が少ないものを「△」とし、レンズを製造できないかあるいは時間がかかり過ぎて製造工程上問題があるものを「×」とした。
【0050】
【表1】

【0051】
従って、本実施形態では次の作用効果を奏することができる。
(a)化合物と(b)化合物とを予め予備重合反応させる際に、予備重合反応に不足する硫化水素ガスを混合容器1の内部へ硫化水素ガス供給機構4から個別に導入するから、予備重合反応工程に伴って発生する硫化水素ガスだけでなく、硫化水素ガス供給機構4から導入される硫化水素ガスが予備重合反応に寄与することになり、予備重合進行速度が上がることになる。例えば、実施例2と比較例1とは硫化水素ガスの導入の有無のみ相違し、他の条件は同じであるが、硫化水素ガスを導入した実施例2では予備重合反応の時間が1時間であるのに対して、硫化水素ガスを導入しない比較例1では、所望のプラスチックレンズを製造することができなかった。
そのため、本実施形態では、予備重合反応を短時間で終了させることが可能となり、生産効率が向上する。
【0052】
硫化水素ガスを混合容器1の内容積に対して原料の体積が30%以下、実施例1,2,5では28%、実施例3,4,6では10%で導入したから、従来と同様の反応時間で予備重合反応を終了させることができるので、本実施形態の予備重合反応の工程を用いても、他の製造工程は今までと同じ時間管理でプラスチックレンズを製造することができる。
【0053】
予備重合反応を、0.001〜10質量部の(d)触媒を添加すれば、予備重合反応の促進と製造コストの低減とを達成することができる。つまり、(d)触媒を0.001質量部より小さくすると、反応促進が十分ではなく、10質量部より大きいと、コストが高いものとなる。
(a)化合物を従来、利用されている硫黄とすれば、入手が容易であるために、製造コストを低く抑えることができる。
同様に、(b)化合物を、従来、利用されているビス(β−エピチオプロピル)スルフィド及び/又はビス(β−エピチオプロピル)ジスルフィドとすれば、製造コストを抑えることができる。
【0054】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では眼鏡用のプラスチックレンズを製造する工程を説明したが、本発明では、眼鏡用以外の用途のプラスチックレンズや、その他の光学部品、例えば、プリズム、マイクロレンズアレイ等としてもよい。
そして、プラスチックレンズの製造方法は前記実施形態に限定されるものではなく、従来使用されるプリズムやレンズアレイを製造する方法にも本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は眼鏡用のプラスチックレンズ、その他の光学部品を製造する工程で利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態にかかるプラスチックレンズ製造装置の概略構成図。
【図2】本発明の一実施形態にかかる光学材料用樹脂の製造装置の概略構成図。
【図3】本発明の一実施形態にかかる予備重合工程の手順を示す図。
【図4】予備重合工程後の本重合工程の手順を示す図。
【符号の説明】
【0057】
1…混合容器、2…攪拌機構、3… 排気機構、3A…排気管、4…硫化水素ガス供給機構、4A…ガス供給管、4B…ボンベ、5…樹脂排出機構、5A…排出管、12…成型用モールド、15…粘着テープ、50…原料供給装置、100…プラスチックレンズ製造装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1〜50質量部の硫黄原子及び/又はセレン原子を有する無機化合物(以下、(a)化合物)、
(b)50〜99質量部の下記(1)式で表される化合物(以下、(b)化合物)、
【化1】

(c)1〜20質量部のSH基を1個以上有する化合物(以下、(c)化合物)
を混合容器の内部で混合し、前記(a)化合物と前記(b)化合物とを予め予備重合反応させて光学材料用樹脂を製造する方法であって、
前記(a)化合物と前記(b)化合物とを含む原料を予め予備重合反応させる際に、前記混合容器の内部に外部から硫化水素ガスを導入することを特徴とする光学材料用樹脂の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載された光学材料用樹脂の製造方法において、
前記硫化水素ガスを、前記混合容器の内容積に対して前記原料の体積が30%以下の場合に導入することを特徴とする光学材料用樹脂の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載された光学材料用樹脂の製造方法において、
前記混合容器の内部を、81×10Pa〜152×10Paになるまで硫化水素ガスを導入することを特徴とする光学材料用樹脂の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載された光学材料用樹脂の製造方法において、
前記混合容器の内部を減圧した後、この減圧時の圧力値に対して、6〜12倍になるまで硫化水素ガスを導入することを特徴とする光学材料用樹脂の製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載された光学材料用樹脂の製造方法において、
前記予備重合反応を、(d)0.001〜10質量部の重合触媒(以下(d)触媒)を添加して、0℃〜150℃の条件で行うことを特徴とする光学材料用樹脂の製造方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載された光学材料用樹脂の製造方法において、
前記(a)化合物が硫黄であることを特徴とする光学材料用樹脂の製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載された光学材料用樹脂の製造方法において、
前記(b)化合物が、ビス(β−エピチオプロピル)スルフィド及び/又はビス(β−エピチオプロピル)ジスルフィドであることを特徴とする光学材料用樹脂の製造方法。
【請求項8】
(a)1〜50質量部の硫黄原子及び/又はセレン原子を有する無機化合物(以下、(a)化合物)、
(b)50〜99質量部の下記(1)式で表される化合物(以下、(b)化合物)、
【化2】

及び(c)1〜20質量部のSH基を1個以上有する化合物(以下、(c)化合物)を混合する混合容器と、この混合容器で前記(a)化合物と前記(b)化合物とを予め予備重合反応させる際に、硫化水素ガスを前記混合容器の内部に導入する硫化水素ガス供給機構とを備えたことを特徴とする光学材料用樹脂の製造装置。
【請求項9】
請求項1から請求項7のいずれかに記載された光学材料用樹脂の製造方法で製造された光学材料用樹脂からなることを特徴とするプラスチックレンズ。
【請求項10】
請求項1から請求項7のいずれかに記載された光学材料用樹脂の製造方法で製造された光学材料用樹脂を互いに対向配置される一対のレンズ成形型を有する成型用モールドのキャビティに注入し、前記光学材料用樹脂が硬化した後、前記レンズ成形型を離型することを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−53279(P2010−53279A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221169(P2008−221169)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】