説明

光学機器

【課題】動画撮影において、絞り羽根を滑らかに移動させ続けて高い絞り値精度を得る。
【解決手段】光学機器は、複数の絞り羽根204aと、該複数の絞り羽根を開閉方向に移動させる開閉機構204bと、開閉機構を駆動するアクチュエータ205と、アクチュエータの駆動を制御する制御手段207とを有する。制御手段は、動画撮影において絞り羽根を第1の位置から第2の位置に移動させる際に、該第1の位置から該第2の位置までの移動量に対応するアクチュエータの目標駆動量と、第1および第2の位置のうち少なくとも一方と絞り羽根の移動方向とに応じて変化するアクチュエータの駆動補正量との加算値を求め、該加算値に応じてアクチュエータの駆動を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光量調節装置を搭載したレンズ装置や撮像装置等の光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に絞り装置と称される光量調節装置は、ステッピングモータ等のアクチュエータによって複数の絞り羽根を開閉方向に移動させることにより、該複数の絞り羽根によって形成される絞り開口の大きさを変化させ、該絞り開口を通過する光の量を増減させる。
【0003】
このような絞り装置を動作させながら動画撮影を行う場合、撮影中の被写体輝度の変動に応じて常に絞り羽根を滑らかに移動させ続け、高い絞り値精度を確保する必要がある。ただし、アクチュエータの駆動力を絞り羽根に伝達してこれを開閉方向に移動させる開閉機構に含まれるガタ(バックラッシ)やステッピングモータのコギングの影響によって、絞り羽根を滑らかに移動させ続けることができない可能性がある。
【0004】
特許文献1には、レンズを移動させる駆動機構において、該レンズの移動方向が反転する場合に本来のレンズ移動量に対して付加移動量を加算してアクチュエータを制御することで、駆動機構のガタによる合焦精度の低下を回避する光学機器が開示されている。このような付加移動量を絞り羽根の本来の移動量に加算してアクチュエータを制御することで、絞り装置においても、開閉機構のガタやステッピングモータのコギングの影響を低減し、滑らかで高い絞り値精度が得られる絞り羽根駆動を行うことも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3535603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、絞り装置では、複数の絞り羽根同士の重なり合いや各絞り羽根の反りによって摺動抵抗が生じる。そして、該摺動抵抗は、絞り羽根の位置(絞り値)や移動方向によって変動する。例えば、絞り羽根の反りによって生じる摺動抵抗は、特に小絞り状態から開放方向に移動させる際に大きくなる。このように、絞り装置では、開閉機構のガタやステッピングモータのコギングだけでなく、絞り羽根の位置や移動方向も考慮する必要がある。
【0007】
この点、特許文献1にて開示された光学機器では、駆動機構のガタによる合焦精度の低下を回避するための付加移動量は、レンズの位置にかかわらず一定である。したがって、単に特許文献1にて開示された一定の付加移動量の加算だけでは、絞り装置を滑らかに移動させ続けることが難しい。
【0008】
本発明は、動画撮影において絞り羽根を滑らかに移動させ続けて高い絞り値精度が得られるようにした光学機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面としての光学機器は、複数の絞り羽根と、該複数の絞り羽根を開閉方向に移動させる開閉機構と、開閉機構を駆動するアクチュエータと、アクチュエータの駆動を制御する制御手段とを有する。そして、制御手段は、動画撮影において絞り羽根を第1の位置から第2の位置に移動させる際に、該第1の位置から該第2の位置までの移動量に対応するアクチュエータの目標駆動量と、該第1および第2の位置のうち少なくとも一方と絞り羽根の移動方向とに応じて変化するアクチュエータの駆動補正量との加算値を求め、該加算値に応じてアクチュエータの駆動を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の絞り羽根同士の重なり合いや絞り羽根の反りによって発生する摺動抵抗が絞り羽根の位置(絞り値)や移動方向によって変動する場合でも、動画撮影において絞り羽根を滑らかに移動させ続けて高い絞り値精度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例であるカメラシステムの動作を示すフローチャート。
【図2】実施例のカメラシステムの構成を示すブロック図。
【図3】実施例の絞り装置における絞り位置と絞り駆動方向に応じた付加移動量を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0013】
図2には、本発明の実施例である光学機器(撮像装置)としてのレンズ交換型の一眼レフカメラシステムの構成を示している。なお、本実施例では、交換レンズとカメラ本体を含むカメラシステム全体を光学機器として説明するが、絞り装置を搭載している交換レンズ単体を光学機器として扱ってもよい。また、本実施例では、レンズ交換型一眼レフカメラシステムについて説明するが、本発明は、レンズ一体型カメラ(光学機器、撮像装置)にも適用することができる。
【0014】
図2において、100はカメラ本体であり、200はカメラ本体100に着脱可能な交換レンズである。これらカメラ本体100と交換レンズ200とによってカメラシステムが構成される。
【0015】
交換レンズ200において、201は第1レンズユニット、202はフォーカスレンズユニット、203は変倍レンズユニット、204は絞り装置である。これらレンズユニット201〜203および絞り装置204により、撮影光学系が構成される。
【0016】
絞り装置204は、複数の絞り羽根204aと、該複数の絞り羽根204aを開閉方向に移動させる開閉機構204bと、該開閉機構204bを駆動する絞りアクチュエータ205とを有する。絞り装置204は、光軸周りに配置された複数の絞り羽根204aの一部同士が重なり合って光軸上に絞り開口を形成する、いわゆる虹彩絞りである。絞り開口の大きさ(絞り開口径)、つまりは絞り値(F値)は、複数の絞り羽根204aの開閉方向の位置(以下、絞り位置ともいう)に応じて増減する。絞り位置に応じて、複数の絞り羽根204aの重なり量も変化する。
【0017】
絞りアクチュエータ205は、ステッピングモータにより構成され、後述するレンズCPU(制御手段)207によってその駆動が制御される。さらに、絞り装置204には、絞り値に対応する絞り羽根204aの開閉方向での位置(絞り位置)を検出する絞り位置検出器204cが設けられている。
【0018】
210はフォーカスレンズユニット202の位置を検出するフォーカス位置検出器である。
【0019】
レンズCPU207は、カメラCPU111とレンズ通信部212およびカメラ通信部103を介して各種情報の送受信を行うとともに、カメラCPU111と一体となって交換レンズ200の動作全体の制御を司る。
【0020】
フォーカスモータ209は、ステッピングモータや振動型モータ等により構成され、フォーカス駆動機構220を介してフォーカスレンズユニット202を移動させる。レンズCPU207は、フォーカスモータ209の駆動(駆動方向および駆動量)を制御する。具体的には、フォーカスモータ209に印加するフォーカス駆動信号の極性を変えることでフォーカスモータ209の駆動方向を制御し、フォーカス駆動信号のパルス数を増減させることでフォーカスモータ209の駆動量(回転量)を制御する。これにより、フォーカスレンズユニット202の駆動量(つまりは位置)を制御する。このとき、レンズCPU207は、フォーカスレンズ位置検出器210からのフォーカス位置情報を参照する。
【0021】
また、レンズCPU207は、絞りアクチュエータ205の駆動(駆動方向および駆動量)を制御する。具体的には、絞りアクチュエータ205に印加する絞り駆動信号の極性を変えることで絞りアクチュエータ205の駆動方向を制御し、絞り駆動信号のパルス数を増減させることで絞りアクチュエータ205の駆動量を制御する。これにより、絞り羽根204aの移動量(つまりは絞り位置)を制御する。このとき、レンズCPU207は、絞り位置検出器204cからの絞り位置情報を参照する。
【0022】
211は静止画撮影モードと動画撮影モードとを切り替えるためにユーザにより操作される撮影モード切替えスイッチである。本実施例では、交換レンズ200に撮影モード切替えスイッチ211を設けているが、カメラ本体100に設けてもよい。
【0023】
208はROM等で構成されるメモリであり、フォーカスレンズユニット202および絞り装置204に対してそれぞれ設けられた後述する駆動補正量(フォーカス駆動補正量および絞り駆動補正量)のデータを格納(記憶)している。メモリ208に格納された駆動補正量のデータは、レンズCPU207が随時読み出すことができる。
【0024】
被写体300からの光(被写体光)は、交換レンズ200内の撮影光学系を通過してカメラ本体100内に入射する。カメラ本体100では、クイックリターンミラー101が光路から退避した状態にて、該被写体光により撮像素子102上に被写体像が形成される。撮像素子102は、CCDセンサまたはCMOSセンサ等の光電変換素子により構成され、被写体像を光電変換する。
【0025】
また、クイックリターンミラー101が光路内に配置されている場合には、被写体光はクイックリターンミラー101により反射されてペンタプリズム108に導かれる。ペンタプリズム108にて反射した被写体光は、ファインダ光学系114を通過してユーザの眼に導かれる。こうして、ユーザは被写体像を観察することができる。
【0026】
109はクイックリターンミラー制御部であり、クイックリターンミラー101のアップ/ダウン動作をカメラCPU111からの制御信号に応じて制御する。110は測光部であり、撮像素子102の出力信号(撮像信号)または後述する画像処理回路にて生成された映像信号から被写体輝度を算出し、これを測光情報としてカメラCPU111に伝達する。
【0027】
104は焦点検出部であり、静止画撮影モードにおいて、クイックリターンミラー101の背後に設けられた不図示のサブミラーで反射された被写体光を用いて位相差検出方式により撮影光学系の焦点状態を検出する。そして、該焦点状態を示す焦点情報をカメラCPU111に伝達する。カメラCPU111は、焦点情報に基づいて、フォーカス駆動部209を介してフォーカスレンズユニット202の位置を制御し、合焦状態を得る。
【0028】
また、カメラCPU111は、動画撮影モードにおいて、後述する画像処理回路にて生成された映像信号から、映像のコントラスト状態を示すコントラスト情報を生成する。そして、コントラスト情報に基づいて、フォーカスレンズユニット202の位置を制御して合焦状態を得る。
【0029】
さらに、カメラCPU111は、測光情報に基づいて、絞り装置204において設定すべき絞り値や、静止画撮影モードにおいて撮像素子102の露光量を制御する不図示のシャッタの動作速度(シャッタ速度)を算出する。
【0030】
113はレリーズスイッチであり、ユーザにより半押し操作(SW1 ON)がなされることによってSW1信号を出力し、全押し操作(SW2 ON)がなされることによってSW2信号を出力する。カメラCPU111は、SW1信号の入力に応じて測光および焦点検出等の静止画撮影準備動作を開始し、SW2信号の入力に応じて記録用静止画の撮影動作を開始する。
【0031】
115は動画撮影スイッチであり、ユーザによって操作されるごとに、動画撮影開始信号と動画撮影停止信号とを交互に出力する。カメラCPU111は、動画撮影開始信号の入力に応じて記録用動画の撮影動作を開始し、動画撮影停止信号の入力に応じて該撮影動作を停止する。なお、本実施例では、動画撮影スイッチ115をレリーズスイッチ113と別に設けているが、レリーズスイッチ113が動画撮影スイッチを兼ねてもよい。
【0032】
撮像素子102から出力された撮像信号に対して、不図示の画像処理回路にて増幅および様々な画像処理が行われることにより、デジタル映像信号が生成される。該映像信号は、カメラCPU111に入力される。カメラCPU111は、該映像信号を用いて、記録用静止画、表示用動画および記録用動画を生成する。表示用動画は、LCDパネル等の表示素子を含む表示部112にて電子ビューファインダ画像として表示される。記録用静止画および記録用動画は、記録装置105にて半導体メモリ等の記録媒体に記録される。
【0033】
次に、上記のように構成されたカメラシステムの動作について、図1のフローチャートを用いて説明する。
【0034】
ステップS001において、カメラ本体100の電源がON(投入)されると、カメラCPU111が起動されるとともに、交換レンズ200にも電源が供給されてレンズCPU207も起動する。カメラCPU111とレンズCPU207は、相互に通信を開始する。
【0035】
次に、ステップS002では、カメラCPU111は、撮影モード切替えスイッチ211を通じて設定されている撮影モードが動画撮影モードか静止画撮影モードかを判定する。動画撮影モードであればステップS103に進み、静止画撮影モードであればステップS203に進む。
【0036】
ステップS103では、カメラCPU111は、動画撮影スイッチ115から動画撮影開始信号が出力されているか否かを判定する。動画撮影開始信号が出力されていれば、ステップS104に進む。
【0037】
ステップS104では、カメラCPU111は、クイックリターンミラー101をアップ動作させるとともにシャッタを開放して、撮像素子102による光電変換および画像処理回路による動画(映像信号)の生成・記録を開始させる。また、カメラCPU111は、映像信号から生成したコントラスト情報に基づいたAF評価を行い、フォーカスレンズユニット202を移動させるべき方向(フォーカス駆動方向)と駆動量(目標フォーカス駆動量)とを決定する。また、カメラCPU111は、測光部110からの測光情報に基づいて、設定すべき絞り値(目標絞り値)を演算する。そして、決定したフォーカス駆動方向、目標フォーカス駆動量および目標絞り値の情報を、レンズCPU207に送信する。
【0038】
次にステップS105では、レンズCPU207は、ステップS104でカメラCPU111から受信したフォーカス駆動方向と、フォーカス駆動履歴情報として記憶していた前回フォーカスレンズユニット202を駆動したときのフォーカス駆動方向とを比較する。そして、今回のフォーカス駆動方向が前回のフォーカス駆動方向に対して逆か同じか、つまりはフォーカス駆動方向が反転するか否かを判定し、反転しない場合はステップS107に進み、反転する場合はステップS106に進む。
【0039】
ステップS106では、レンズCPU207は、ステップS104でカメラCPU111から受信した目標フォーカス駆動量(パルス数)に対して、メモリ208に格納されたフォーカス駆動補正量(パルス数)を付加して、補正後フォーカス駆動量を算出する。フォーカス駆動補正量は、フォーカス駆動機構220においてフォーカス駆動方向が反転することにより生じるガタつき(反転ガタ)の量に応じて予め決定されており、フォーカスレンズユニット202の位置にかかわらず一定である。
【0040】
次にステップS107では、レンズCPU207は、補正後フォーカス駆動量に応じたパルス数を有し、かつフォーカス駆動方向に対応する回転方向にフォーカスモータ209を回転させるためのフォーカス駆動信号を生成する。該フォーカス駆動信号をフォーカスモータ209に出力することで、フォーカスモータ209は、フォーカス駆動方向に対応する回転方向に、上記パルス数に対応する回転量だけ回転する。これにより、フォーカスレンズユニット202は、フォーカス駆動機構220の反転ガタにかかわらず、本来の目標フォーカス駆動量に対応した位置(例えば、合焦位置)に高精度に移動する。
【0041】
さらに、ステップS108では、レンズCPU207は、ステップS104でカメラCPU111から受信した目標絞り値と、絞り駆動履歴情報として記憶していた現在および前回の絞り値とを比較する。そして、現在の絞り値(絞り羽根204aの第1の位置)から目標絞り値(絞り羽根204aの第2の位置)への絞り羽根204aの移動方向が、前回の絞り値から現在の絞り値への絞り羽根204aの移動方向に対して逆か同じかを判定する。言い換えれば、今回の絞り羽根204aの移動方向が、前回の移動時の移動方向に対して反転するか否かを判定する。反転しない場合はステップS110に進み、反転する場合はステップS109に進む。なお、以下の説明において、絞り羽根204aの移動方向を、絞り駆動方向という。
【0042】
ステップS109では、レンズCPU207は、目標絞り値と現在の絞り値との差に対応する駆動量(移動量)だけ絞り羽根204aを移動させるのに本来必要な絞りアクチュエータ205の目標駆動量である目標絞り駆動量(パルス数)を算出する。そして、メモリ208に格納された絞り駆動補正量のデータから、今回の絞り駆動方向と現在の絞り値に対応する絞り位置とに応じた絞り駆動補正量を選択して、目標絞り駆動量に加算することにより、加算値としての補正後絞り駆動量を算出する。
【0043】
ここで、絞り駆動方向と絞り位置とに応じた絞り駆動補正量を図3に示す。絞り装置204における絞り羽根204aの位置精度の低下要因としては、フォーカス駆動機構220と同様に、開閉機構204bの反転ガタや絞りアクチュエータ(ステッピングモータ)205のコギングの影響がある。しかも、絞り装置204では、複数の絞り羽根204a同士の重なり合いや各絞り羽根の反りによって生じる摺動抵抗も絞り羽根204aの位置精度の低下要因となる。特に、摺動抵抗は、絞り駆動方向や絞り位置によって変動する。このため、図3に示すように、絞り駆動補正量として、現在の絞り位置(絞り値)と絞り駆動方向(開放方向および絞り込み方向)とに応じて変化する値を設定している。
【0044】
前述したように、絞り羽根204aの反りによる摺動抵抗は、小絞り状態から開放方向への駆動時に特に大きくなる。このため、図3では、絞り駆動方向が開放方向であるときの絞り駆動補正量が、絞り駆動方向が絞り込み方向であるときの絞り駆動補正量よりも大きく設定されている。また、絞り駆動方向が開放方向および絞り込み方向であるときのいずれにおいても、絞り値が高い(小絞り側である)ほど大きい絞り駆動補正量が設定されている。
【0045】
なお、開閉機構204bの反転ガタ、絞りアクチュエータ205のコギングおよび絞り羽根204aの摺動抵抗は、絞り装置204における部品精度や組み立て精度のばらつきによって異なる。このため、交換レンズ200の工場出荷前において、設定すべき絞り駆動補正量を絞り駆動方向および絞り位置ごとに実測してメモリ208に格納するとよい。
【0046】
図3に示した絞り駆動補正量は例であり、絞り位置と絞り駆動方向に応じて変化する絞り駆動補正量であれば、図3に示した以外の絞り駆動補正量を設定してもよく、また必ずしも全ての絞り駆動補正量が異なっている必要はない。
【0047】
また、本実施例では、絞り駆動補正量が、現在の絞り位置である第1の位置に応じて変化するように設定している。しかし、絞り駆動補正量を、目標絞り位置である第2の位置に応じて変化するように設定してもよい。つまり、絞り駆動補正量は、第1および第2の位置のうち少なくとも一方に応じて変化するように設定すればよい。
【0048】
図2に戻り、ステップS110では、レンズCPU207は、今回の絞り駆動方向と補正後絞り駆動量とに応じた絞り駆動信号を生成し、該絞り駆動信号を絞りアクチュエータ205に印加する。これにより、絞り羽根204aは、開閉機構204bの反転ガタ、絞りアクチュエータ205のコギングおよび絞り羽根204aの摺動抵抗にかかわらず、本来の目標絞り駆動量に対応した絞り位置に高精度に移動し、高い絞り値精度が得られる。
【0049】
そして、ステップS111では、カメラCPU111は、動画撮影スイッチ115から動画撮影停止信号が出力されているか否かを判定する。動画撮影停止信号が出力されていなければステップS104に戻って動画撮影を続け、動画撮影停止信号が出力されていれば動画撮影を停止する(クイックリターンミラー101をダウン動作させ、シャッタを閉じる)とともに、ステップS002に戻る。
【0050】
一方、ステップS002において、静止画撮影モードであると判定したカメラCPU111は、ステップS203にて、レリーズスイッチ113からSW1信号が出力されたか否かを判定する。SW1信号が出力された場合はステップS204に進む。
【0051】
ステップS204では、カメラCPU111は、焦点検出部104からの焦点情報に基づいたAF評価を行い、フォーカス駆動方向と目標フォーカス駆動量とを決定する。また、カメラCPU111は、測光部110からの測光情報に基づいて、目標絞り値を演算する。そして、決定したフォーカス駆動方向、目標フォーカス駆動量および目標絞り値の情報を、レンズCPU207に送信する。
【0052】
次に、ステップS205〜S207では、レンズCPU207は、ステップS105〜S107と同じ処理を行う。
【0053】
続いて、ステップS208では、レリーズスイッチ113からSW2信号が出力されたか否かを判定する。SW2信号が出力されていなければステップS203に戻り、出力された場合はステップS209に進む。
【0054】
ステップS209では、レンズCPU207は、目標絞り値と現在の絞り値との差に対応する駆動量だけ絞り羽根204aを移動させるのに必要な絞りアクチュエータ205の駆動量である目標絞り駆動量(パルス数)を算出する。そして、メモリ208に格納された絞り駆動補正量を目標絞り駆動量に加算することにより、加算値としての補正後絞り駆動量を算出する。ただし、静止画撮影においては、絞り装置204は常に開放状態から絞り込み方向にのみ駆動されるため、ここでの絞り駆動補正量は、絞り位置や絞り駆動方向にかかわらず一定である。
【0055】
次に、ステップS210では、レンズCPU207は、今回の絞り駆動方向と補正後絞り駆動量とに応じた絞り駆動信号を生成し、該絞り駆動信号を絞りアクチュエータ205に印加する。これにより、絞り羽根204aは、目標絞り駆動量に対応した絞り位置に高精度に移動する。
【0056】
続いてステップS211およびS212では、カメラCPU111は、クイックリターンミラー101をアップ動作させるとともにシャッタを開閉動作させて、撮像素子102による光電変換および画像処理回路による静止画の生成・記録を行わせる。
【0057】
本実施例によれば、複数の絞り羽根204a同士の重なり合いや絞り羽根204aの反りによって発生する摺動抵抗が絞り位置(絞り値)や絞り駆動方向によって変動する場合でも、絞り羽根204aを滑らかに移動させ続けることができる。したがって、動画撮影において、高い絞り値精度を得ることができる。
【0058】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
動画撮影において高い絞り値精度が得られる光学機器を提供できる。
【符号の説明】
【0060】
100 カメラ本体
200 交換レンズ
204 絞り装置
204a 絞り羽根
204b 開閉機構
205 絞りアクチュエータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絞り羽根と、
該複数の絞り羽根を開閉方向に移動させる開閉機構と、
前記開閉機構を駆動するアクチュエータと、
前記アクチュエータの駆動を制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、動画撮影において前記絞り羽根を第1の位置から第2の位置に移動させる際に、該第1の位置から該第2の位置までの移動量に対応する前記アクチュエータの目標駆動量と、前記第1および第2の位置のうち少なくとも一方と前記絞り羽根の移動方向とに応じて変化する前記アクチュエータの駆動補正量との加算値を求め、該加算値に応じて前記アクチュエータの駆動を制御することを特徴とする光学機器。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第1の位置から前記第2の位置に移動する際の前記絞り羽根の移動方向が、該移動の前の前記第1の位置への移動方向に対して反転する方向である場合に前記加算値を求め、該加算値に応じて前記アクチュエータの駆動を制御することを特徴とする請求項1に記載の光学機器。
【請求項3】
前記駆動補正量は、前記絞り羽根を絞り込み方向に駆動する場合よりも、開放方向に駆動する場合の方が大きいことを特徴とする請求項1または2に記載の光学機器。
【請求項4】
前記駆動補正量は、絞り値が高いほど大きいことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の光学機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−3083(P2012−3083A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138620(P2010−138620)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】