光学的に有効な表面レリーフ微細構造及びその製造方法
本発明は、光学的に有効な特異な表面レリーフ微細構造(12)を有する表面区域を含む要素に関する。表面レリーフ微細構造は、上部領域(13)及び下部領域(14)の表面変調を有し、表面区域の第一の横方向において、上部領域から下部領域まで又はその逆に各20マイクロメートル以内に平均で少なくとも一つの移行部があり、第一の方向に対して垂直であるマスクの第二の横方向において、第一のゾーンから第二のゾーンまで又はその逆に各200マイクロメートル以内に平均で少なくとも一つの移行部があり、(i)第一の方向において移行部の横方向配設が非周期性であり、(ii)上部領域が同じ上部レリーフ平坦域(15)に実質的に位置し、下部領域が同じ下部レリーフ平坦域(16)に実質的に位置する。散乱効果により、表面レリーフ微細構造は、有利には、明確な飽和色外観を有すると同時に虹色を示さない、ポジ・ネガイメージフリップを有するイメージを表示するのに適している。本発明はまた、当該要素を製造する方法及び当該要素を含む安全保障装置に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば偽造及び変造に対して書類及び物品を安全保障するために使用することができる、特徴的な色外観を有する光学装置に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、光学的に有効な表面レリーフ微細構造を有する少なくとも一つの表面区域を有する要素及び当該要素の製造方法に関する。
【0003】
発明の背景
偽造、不正改造に対する防護及び製品保護一般のための光学装置の使用は今や十分に確立された技術である。
【0004】
詐欺行為及び偽造の増加のせいで、新規な対偽造手段が絶えず求められている。長年、ホログラムが好ましい安全保障技術であった。そうこうするうち、この技術は30年余りを経過し、したがって、周知であり、広まっている。ホログラフィーフォイルは今やどのギフトショップででも見つけることができる。多くの人々がホログラム技術を手に入れることができるため、この状況は安全保障の危険を表す。デジタルホログラムプリンタが利用可能になるとともに、使いやすいホログラフィーマスタリングシステムへの道がさらに開かれた。このようなプリンタは、多くの異なるタイプのホログラムの製造を可能にし、ホログラフィーセットアップ又はレーザライタの知識は最小限しか要らない。このような設備は、後続のメタルマスタ製造のためのマスタの調製及び薄膜への大量複製を可能にする。
【0005】
したがって、ホログラフィー装置から明確に区別可能である新規な安全保障機能によって安全保障装置のパレットを拡張することが非常に望ましい。そのような新規な装置の例が代替の光学可変装置(OVD)である。OVDとは、視角又は照明角が変化するとともに外観を変化させる装置である。OVDのサブグループがカラーシフト装置である。カラーシフトOVDは、視角又は照明角が変化するとともに色を変化させる。顕著な代表的カラーシフトOVDは、コレステリック又は干渉膜及びそのような膜のフレークに基づく光学装置である。いずれも、装置が垂直な視角に対して傾くとともに顕著なカラーシフトを示す。標準的な量産ホログラフィー装置の特徴である虹色は、これらのタイプのカラーシフト装置では見られない。
【0006】
光学薄膜における光の干渉によるカラーシフト効果は、現代の薄膜コンポーネントの歴史において長い伝統を有する(たとえば、「Optical Document Security」(R. L. van Renesse編、Artechouse Boston 1998)におけるJ. A. Dobrowolskiの「Optical thin-film security devices」)。多くの異なる組成の成層薄膜系が可能である。たとえば直角の光入射の場合に特徴的な反射スペクトルが得られる。入射角が増大するとともに反射又は透過スペクトルは短波長側にシフトする。また、多層薄膜系、多くの場合、誘電体層と金属層との組み合わせは、誘電体材料だけででも可能である。この場合、異なる屈折率の薄膜が必要である。
【0007】
干渉膜又はそのような膜のフレークに基づく安全保障装置は今や市販されている。例は、たとえば、Flex Products社の米国特許第5084351号及び米国特許第6686042号に見ることができる。
【0008】
他の手法は散乱装置である。OVDにおける等方性の散乱効果及びより異方性の散乱効果の使用が光学的魅力を有意に高めることができる。特に、異方性の光散乱は、視角感応性装置を生成するのに有用な手段である。図1.1及び1.2は、それぞれ等方性光散乱及び異方性光散乱をを示す。
【0009】
等方性構造化面、たとえば新聞紙又は家財で見られる大部分の表面における反射は、方位方向が好まれないような反射である。図1.1に示すように、平行な入射光1が散乱面2で方向転換されて、特徴的な軸対称出力光分布及び特徴的な開き角4を示しながら新たな出射方向3に進む。
【0010】
しかし、異方性構造化面は、特定の方向の光を顕著なやり方で反射し、他の方向の光を抑制する。図1.2では、平行な入射光1が異方性散乱面5に衝突し、対応する方位角8、8’に依存する特徴的な出力光分布7を示しながら新たな出射方向6に方向転換される。
【0011】
情報の表示の場合、異方性散乱挙動及び異なる異方性方向延伸を有する個々の画素のパターンを作ることができる。このようにして、対応する装置は、文字又は写真などのようなイメージを表すパターン付き異方性散乱面を含むことができる。所与の方向の光は特定の画素延伸に依存して反射又は抑制されるため、明るい画素及び暗い画素のイメージが見られる。加えて、これらの装置は、傾けられる又は回転させられると、ポジ画像からネガ画像への顕著な変化を示す。このようなパターン付き表面装置は、たとえば、次のように生成することができる。まず、対象のグレースケールイメージをラスタリングする、すなわち、そのイメージを、特定の画素解像度で暗ゾーン及び明ゾーンに分割する。そして、暗ゾーン(画素)を、第一の延伸方向の異方性散乱ゾーンに帰属させ、明ゾーンを、たとえば第一の延伸向に対して垂直な異なる延伸方向を有する、異方性散乱ゾーンに帰属させる。そのような延伸配列を有する2×2画素の正方形が図2に示されている。画素10及び10’は一つの方向に延伸し、画素11及び11’は交差方向に延伸している。このような配設された画素のパターンを有する装置は、第一の視角の下ではポジに見え、装置がたとえば90°回転すると、ネガにフリップする。
【0012】
パターン付き異方性を有する異方性散乱膜を製造する公知の方法が、Rolic社の国際特許出願WO−01/29148及びたとえばIbn-Elhajらの「Optical polymer thin films with isotropic and anisotropic nano-corrugated surface topologies」Nature, 2001, vol. 410, p. 796-799に記載されている。表面構造を製造する場合、いわゆるモノマーコルゲーション(MC)技術が使用される。これは、基材に塗布された特殊な混合物又はブレンドの相分離が、たとえば紫外線への暴露による架橋によって誘発されるという事実に依存する。その後、非架橋成分を除去すると、特定の表面トポロジーを有する構造が残る。トポロジーは、下にあるアライメント層のアライメントによって、またパターン付きアライメント層を使用することによって異方性にすることができ、パターン付けされた異方性散乱面トポロジーを創製することが可能である。
【0013】
上述したように、多くの目的、特に安全保障装置としての応用のための興味深く望ましい特徴は、特殊な色及びカラーシフト効果である。国際特許出願WO−2006/007742では、一つの例(実施例5)により、MC技術に基づくと、パステルカラーの外観を生じさせるのに十分な深さである変調深さに達することが原理的に可能であることが示されている。しかし、MC表面トポロジーの平均変調深さ及び平均周期性をいくつかの手段によってチューニングすることはできるが、二つのパラメータを互いから独立させることはできない。したがって、MC技術によって誘発される特徴的な表面変調形状のせいで、MC生成散乱面の色飽和は限られる。多くの用途にとって不可欠である、より飽和した色は、対応する装置では可能ではない。
【0014】
光学装置に関しては、US2003/0072412A1が参照される。この文献では、ランド部とランド部との間に配置された溝を含む多層構造を有する基材を含む光学的に活性な表面構造が開示されている。dと指定される各有効周期の中ではランド部はランダムに分布しているが、これらの周期それぞれの中では同じランダムパターンが使用されると具体的に記されているため、US2003/0072412A1で開示されている構造は原則的に周期構造であることが注目される。したがって、一つの周期内に、各周期中で同一に反復するランダムな分布がある。したがって、この構造は周期性である。類似した構造がDE10 2004 003 984A1及びUS2005/0094277A1に開示されている。
【0015】
等周期表面構造が、反射防止コーティングに関してUS2005/0219253A1に開示されている。本文には、突出する光学部品のランダムな配置が述べられているという事実にもかかわらず、そのような光学部品の非周期性配設の表示はない。他方、反射防止コーティング構造を製造するための開示された実際の方法は、表示装置で与えられるような突出する光学部品を有する、すなわち一定の変調深さを有する構造につながらないことは明白である。
【0016】
US2003/0011870A1は、ベース材料上に形成された複数の凸部の高さ又は凹部の深さが実質的に同じに指定されている光反射膜を有する基材を開示している。複数の凸部又は凹部の二次元形状は、独立した円及び多角形又はそれらのいずれかの二次元形状であるように指定されている。加えて、複数の凸部又は凹部は平面方向にランダムに配設されている。基材は、光透過部分又は光非透過部分がドットのユニットとして形成され、その数がドット領域の数よりも小さいマスクを使用して形成される。ドットは、各ユニット中に不規則に配設され、複数のユニットが含まれる。
【0017】
JP2005−215642は、高い散乱輝度を有する拡散反射体を製造するためのフォトマスク及び当該フォトマスクを使用することによって拡散反射体を製造する方法を提供する。フォトマスクは、単位パターン領域がマトリックス中に敷設されているパターン領域を有する。パターン領域は、マトリックス中に敷設された多数の長方形の光透過部分、各光透過部分を包囲するように規則的又はランダムに敷設された多数の円形の微細な光透過部分及びそれらを包囲する遮光部分を有する。さらには、光透過部分を包囲するストリップ部分は微細な光透過部分を有さず、ストリップ部分の幅は1μm〜5μmである。
【0018】
発明の概要
したがって、本発明の目的は、それだけで、すなわちさらなる要素又は層の必要なしに、(a)虹色なしでイメージ及びポジ・ネガイメージフリップを表示するのに適した散乱効果ならびに(b)明確な飽和色の外観を同時に示す表面構造を提供することである。
【0019】
本発明のさらなる目的は、当該表面構造を製造する方法を提供することである。
【0020】
したがって、本発明の一つの態様にしたがうと、光学的に有効な表面レリーフ微細構造を有する少なくとも一つの表面区域を有する要素であって、表面レリーフ微細構造が下部領域から上部領域まで及び上部領域から下部領域までの移行部の表面変調を有し、表面区域の(第一の)横方向において、上部領域から下部領域まで又はその逆に各20マイクロメートル以内に(平均で)少なくとも一つの移行部があり、好ましくはさらに、第一の方向に対して垂直である表面区域の第二の横方向において、上部領域から下部領域まで又はその逆に各200マイクロメートル以内に平均で少なくとも一つの移行部があり、
(i)(第一の)方向において移行部の横方向配設が非周期性であり、
(ii)レリーフ変調深さが表面区域全体で実質的に等しくなるよう、上部領域が同じ上部レリーフ平坦域に実質的に位置し、下部領域が同じ下部レリーフ平坦域に実質的に位置することを特徴とする要素が提供される。
【0021】
本発明の上記説明及び以降の説明をより完全に理解することができるよう、いくつかの定義を与える。
【0022】
当業者には周知であるように、周期関数とは、定期間がその独立変数に加えられたのちそれ自体の値を繰り返す関数である。それに対し、非周期関数とは、それ自体の値を繰り返すための定期間を規定することができない関数をいう。周期性は、多数の方法によって決定することができ、その一つが、一以上の次元における相関関数の決定である。
【0023】
同じく当業者に周知であるように、関数の平坦域とは、そのドメインのうち、関数が一定の値を有する部分である。したがって、本発明に関連して、上部レリーフ平坦域及び下部レリーフ平坦域は、表面を規定する関数が基材の平面に対して直交する方向(z方向)において本質的に一定の値を有する領域である。表面構造内の上部と下部との間にそのような領域及び本質的に連続的又は準連続的でない、たとえば正弦波状の移行部を実際に有することが差別的特徴であるということが注目される。
【0024】
これら二つの平坦域のレベルの間の高さの違いは、表面区域上で等しい又は実質的に等しい。すなわち、表面区域上、z方向における二つの平坦域のこの高さの変化は、通常は20%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満である。これらの平坦域の存在及びこれら二つの平坦域のレベルの間の高さの違いが表面区域上で等しいか又は実質的に等しいという事実はまた、以下さらに詳細に記すメリット関数を使用して定量化することができる。
【0025】
異方性軸とは、表面が最小の変調を有する方向の軸であり、したがって、通常は、表面トポロジー中の溝又は溝様構造の方向である。
【0026】
表面レリーフ充填ファクタとは、すべての上部領域及びすべての下部領域の積分面積に対する上部領域の合計面積の比と定義される。
【0027】
特徴(i)は、他の技術で生じる虹色が存在しない主な理由の一つであり、特徴(ii)は、主として飽和色の外観を提供すると考えられる。
【0028】
本発明の要素をさらに特徴付けるために、異方性表面変調の場合には異方性軸に対して垂直の方向である少なくとも一つの方向における表面レリーフ微細構造の平均化一次元自己相関関数AC(x)を導入する。自己相関関数は、自己相関関数の包絡線がx=0でACの10%まで減衰する範囲の長さである相関距離、すなわち自己相関距離を定義する。本発明に関して、「非周期性」とは、通常、自己相関距離が上部及び下部領域の隣接する移行部どうしの間の平均横方向距離の3倍よりも小さい状態に関して使用される。
【0029】
好ましい実施態様にしたがうと、移行部の横方向配設は、第一の方向に対して垂直である第二の方向においても非周期性である。
【0030】
もう一つの好ましい実施態様にしたがうと、要素は、光学的に有効な表面レリーフ微細構造を有する複数の表面区域のパターンを有する。パターンは、文字又は写真などのようなイメージを表すこともできるし、文字又は写真などのようなイメージの一部であってもよい。イメージはまた、光学的に有効な表面レリーフ微細構造を有しない区域を含むこともできる。その結果、そのような区域は、表面レリーフ微細構造を示す区域に典型的である飽和色の外観を呈示しない。
【0031】
さらなる態様では、本発明は、当該要素を含む安全保障装置に関する。
【0032】
本発明のもう一つの態様では、光学的に有効な表面レリーフ微細構造を有する少なくとも一つの表面区域を有する要素を製造する方法が提供される。この方法では、まず、異なる透明度の第一及び第二のゾーンの微細構造を有し、(第一の)横方向において、第一のゾーンから第二のゾーンまで又はその逆に各20マイクロメートル以内に(平均で)少なくとも一つの移行部があり、好ましくはさらに、第一の方向に対して垂直である第二の横方向において、第一のゾーンから第二のゾーンまで又はその逆に各200マイクロメートル以内に平均で少なくとも一つの移行部があり、(第一の)方向において移行部の横方向配設が非周期性であるマスクを創製する。次に、そのマスクを用いて、樹脂又はレジストの表面にレリーフ微細構造を生成して、マスクの第一のゾーンに対応する上部領域及びマスクの第二のゾーンに対応する下部領域を製造する。それにより、レリーフ変調深さが表面区域全体で実質的に等しくなるよう、上部領域は上部レリーフ平坦域に実質的に位置し、下部領域は下部レリーフ平坦域に実質的に位置する。
【0033】
したがって、この方法の原理は、たとえば上述のMC技術によって利用可能であり、容易に入手可能であるように、異なる透明度の第一及び第二のゾーンの微細構造が使用され、マスクの(第一の)横方向において、第一のゾーンから第二のゾーンまで又はその逆に各20マイクロメートル以内に(平均で)少なくとも一つの移行部があり、好ましくはさらに、第一の方向に対して垂直であるマスクの第二の横方向において、第一のゾーンから第二のゾーンまで又はその逆に各200マイクロメートル以内に平均で少なくとも一つの移行部があり、第一の方向において移行部の横方向配設が非周期性であるということにまとめることができる。このMC技術の欠点又は制限は、そのような微細構造中に存在する二次元異方性トポロジーパターンのみを原則的に使用することにより、また、その二次元異方性トポロジーパターンを、はるかに明白かつ明確に構造化されたプロフィールを第三の次元、すなわち微細構造の平面に対して垂直な方向で生成するための「テンプレート」として使用することにより、回避される。この明白かつ明確なプロフィールとは、最後に生成される構造の上部領域が上部レリーフ平坦域に実質的に位置し、下部領域が下部レリーフ平坦域に実質的に位置することを意味する。
【0034】
極端な場合、これは、二次元異方性トポロジーパターン、基本的には、たとえばMC技術によって利用可能であるような微細構造中のカットが第三の次元に沿って投影されて、この二次元トポロジーをそのとおりに有する上部平坦域及びこの二次元トポロジーのネガを有する下部平坦域が得られ、それらの間に垂直移行部が得られるようにすることを意味する。なおも本発明の範囲内であるさほど極端ではないケースは、たとえば、以下に説明するメリット関数Mによって特徴付けられるような第三の次元に沿った特定の二頂性分布を特徴とすることができる。
【0035】
本方法の好ましい実施態様にしたがうと、マスクの異なる透明度の第一及び第二のゾーンの微細構造は以下のステップによって創製される。まず、トポロジー的に構造化された波形面構造を有する膜をマスク材料の層に被着させる。次に、波形面の下ゾーンの膜の材料が除去され、下にあるマスク材料の一部が露呈するまで膜の厚さを減らす。その後、マスクの露呈部分を除去する。
【0036】
本発明はまた、上記で概説した要素の好ましい使用に関する。好ましくは、当該要素は、安全保障装置における安全保障要素として使用される。安全保障装置は、安全保障書類に適用することもできるし、その中に組み込むこともできる。安全保障書類は、たとえば、銀行券、パスポート、免許証、株券及び債券、クーポン、小切手、クレジットカード、証明書、チケットなどである。安全保障装置はさらに、ブランド又は製品保護装置として適用することもできるし、それらに組み込むこともでき、包装のための手段、たとえば包装紙、包装箱、封筒などに組み込むこともできる。有利には、安全保障装置は、タグ、安全保障ストリップ、ラベル、繊維、糸、積層体又はパッチなどの形態をとることができる。
【0037】
本発明の重要な態様は、関連する光学効果が表面レリーフ変調界面から生じるものであるため、光学的に有効な表面レリーフ微細構造を適切な複製技術で複製することができることである。したがって、ひとたびマスタが利用可能になるならば、標準的な複製技術を適用してそのような装置を適当なコストで量産することが可能である。今日、二つの好評かつ費用効果的な複製技術はUVエンボス加工及び熱間エンボス加工である(たとえば、Microelectronic Engineering, Vol. 34, page 321 (1997)のM. T. Gale: "Replication techniques for diffractive optical elements"を参照)。
【0038】
好ましい実施態様にしたがって、光学的に有効な表面レリーフ微細構造は一つの材料で製造される。しかし、強い色反射を得るために、本発明の表面レリーフ微細構造は通常、反射性材料、たとえばアルミニウム、金、クロム、銅又は類似材料でコーティングされる。
【0039】
特に安全保障用途の場合、表面レリーフ微細構造は、機械的衝撃、汚染に対して装置を保護し、そのような装置の、権限のない非合法な複製品の製造を防ぐためにシールされなければならない。適切な保護及びパシベーション膜は、透明な誘電体又は装置の色外観をさらに高めることができる特定の吸収挙動を有する材料である。
【0040】
本発明の要素はまた、高解像度イメージ、グラフィカルコンポーネント、マイクロテキスト及び類似した特徴を保持することができる。色外観は通常、視角感応性であり、大きな視角では無色イメージに転じるかもしれない。イメージ画素の散乱性は、既定の方向に顕著な散乱が起こるようにチューニングすることができる。そのような挙動を有する画素が生成され、相応に配設されるならば、装置を傾動又は回転させたとき顕著なポジ・ネガイメージフリップが起こる。
【0041】
さらには、たとえば黄色、オレンジ色、バラ色、紫色、青色及び緑色の浅めから深めまでの変調から広い色パレットを得ることができる。さらに深い構造の場合、より高次の色が出現することができる。
【0042】
添付図面によって本発明をさらに説明する。様々な特徴が必ずしも原寸に比例して描かれてはいないことを強調しておく。
【0043】
発明の詳細な説明
図3に、本発明の表面レリーフ微細構造12の一例が、12マイクロメートル×12マイクロメートルの原子間力顕微鏡法(AFM)イメージの三次元画像として示されている。微細構造は、のちに記載する方法にしたがって製造したものである。
【0044】
表面変調が上部領域13から下部領域14までの移行部を構築する。上部領域13及び下部領域14の幅、ひいては平坦域の幅は通常、200ナノメートル〜約20マイクロメートルの範囲にある。表面変調が異方性であるということが可能であり、多くの用途の場合、必要条件である。これは、たとえば、図3に示す微細構造にも当てはまる。微細構造は溝状の下部領域を有し、この領域が実質的にY軸に沿って延びて、表面変調がY軸に対して平行な異方性軸を有するようになっている。異方性変調の場合、本発明の表面レリーフ微細構造の上部及び下部領域の横方向寸法は、第一の横方向において、下部領域から上部領域まで又はその逆に各20マイクロメートル以内に平均で少なくとも一つの移行部があり、第一の方向に対して垂直である表面区域の第二の横方向において、上部領域から下部領域まで又はその逆に各200マイクロメートル以内に少なくとも一つの移行部があるという事実によって説明することができる。
【0045】
図3で、第一の方向は、溝に対して直角の方向に対応し、第二の方向は、溝に沿う方向に対応する。したがって、前記第二の方向、すなわち、たとえば溝に対して平行なもう一つの横方向において、移行部は、はるかに大きく離間していてもよいし、微細構造全体に延びる溝の場合には移行部がなくてもよい。
【0046】
表面レリーフ微細構造は反射面を形成することができる。反射面は、たとえば、微細構造を覆う薄い金属膜、たとえばアルミニウム、クロムなどで製造することができる。あるいはまた、異なる屈折率を有する材料に対する移行部によって反射を生じさせることもできる。微細構造の表面は、空気に面することもできるし、たとえば、誘電体で覆われることもできる。また、装置の色外観を高めるために、カバー媒体が特定の色に対して吸収性であってもよい。
【0047】
本発明の表面レリーフ微細構造の好ましい実施態様では、表面区域の第一の横方向において、隣接する移行部どうしの間の平均横方向距離は、上部領域から下部領域まで又はその逆に、0.5マイクロメートル〜10マイクロメートルの範囲にある。有利には、平均横方向距離は0.5マイクロメートル〜5マイクロメートルの範囲にある。有利には、第一の横方向に対して垂直である第二の横方向において、移行部どうしの間の平均距離は、上部領域から下部領域まで、100マイクロメートル未満、より有利には50マイクロメートル未満である。
【0048】
光学変調深さは、好ましくは100ナノメートル〜1000ナノメートルの範囲にあり、より好ましくは100ナノメートル〜500ナノメートルの範囲にある。本発明に関連して、光学変調深さは、機械的レリーフ変調深さと表面変調を埋める材料の屈折率との積である。
【0049】
本発明の表面レリーフ微細構造は非常に特異的な表面変調を特徴とする。
【0050】
第一に、上部領域から下部領域まで及び下部領域から上部領域までの移行部の横方向配設が非周期性である。これは、たとえば光学格子及びホログラフィー表面構造とは特に対照的である。
【0051】
第二に、レリーフ変調深さが表面区域全体で実質的に等しくなるよう、上部領域は同じ上部レリーフ平坦域に実質的に位置し、下部領域は同じ下部レリーフ平坦域に実質的に位置している。図3では、上部及び下部レリーフ平坦域は、手前の部分に点線15及び16で示されている。図示する例では、レリーフ変調深さ(又は平坦域間の距離)は約290ナノメートルである。この第二の特徴、いわば「二頂性」変調が、上記導入部分で記載したMC技術に基づく既知の微細構造と特に対照的である。
【0052】
当業者には、様々な等方性及び異方性散乱特性を有する多様な天然及び人造面が存在するということが周知である。等方性散乱面のよく知られる例は、たとえば照明システムで使用されるすりガラスである。このような散乱ガラスは、特定の方位散乱方向を優先することなく光を透過又は反射させる。
【0053】
異方性表面レリーフ構造に基づく光学装置は、好ましい方位方向への光散乱又は回折を優先する。一次元ディフューザがこのクラスの光学装置に属する。それらの表面レリーフz(x,y)は、一つの横座標、たとえばxのみに依存する。したがって、表面レリーフ異方性軸は、他方の横座標、たとえばyに対して平行である。z−x面で伝搬する光はz−x面で散乱する。異方性光学散乱装置の他の例が上述のWO−01/29148及びWO−2006/007742に記載されている。これらに異方性散乱装置は、異方性であり、主として長細い溝又はパターン軸に対して主に垂直な光を散乱させる表面の溝又はパターンを有する。
【0054】
大部分の等方性及び異方性ディフューザは、照明システムで使用されるためのものであり、したがって、高い程度の無彩色性を保持する。これは、色外観を保持し、二つの散乱性表面レリーフ平坦域における散乱及び干渉に基づく本発明の光学装置とは対照的である。
【0055】
表面レリーフの異方性は、装置の輝度を高めることを可能にし、視角もしくは照射角に依存して、鮮明なグラフィカルデザイン、たとえばポジ・ネガフリップ又は動くグラフィカル要素の生成を可能にする。
【0056】
本発明のレリーフ微細構造を概略的に例示する可能な異方性表面レリーフパターンの例が図4.1、図4.2及び図4.3に示されている。各図では、二つの異方性表面レリーフ画素20/20’、21/21’及び22/22’が、それらの異方性軸が互いに対して90°回転した状態で示されている。異方性軸は、左の画素では垂直であり、右の画素では水平である。図4.1の異方性パターンは細長い長方形の溝23である。図4.2の異方性パターンは、細長い丸みを帯びた長方形の隆起部24である。図4.3の異方性パターンは細長いライン溝である。視認された光は基本的に細い溝又は隆起部で散乱又は回折する。本発明の他の異方性表面レリーフパターンは、本明細書中、以下に示す例から集めることができる。
【0057】
このタイプの構造をさらに説明するために、本発明に関して、「表面レリーフアスペクト比(SRAR)」を、異方性表面レリーフパターンの幅に対する長さの平均比と定義する。SRARは、表面レリーフ微細構造で散乱する光の方位光学的外観を強く決定する。少なくとも二つの横方向で平均して同じ長さを示す表面レリーフパターンに対応するSRAR=1の場合、入射光の散乱特性は、その光の方位入射角とはほとんど無関係である。したがって、SRAR=1のレリーフ構造の表面から反射する光の強さは、その表面レリーフ微細構造を含む要素がその要素の表面に対して垂直な軸に沿って回転した場合でもほとんど変化しない。
【0058】
SRAR>1を意味する異方性レリーフ構造の場合、反射光の強さは光の方位入射角に依存する。方位入射角に対するこの依存性を視認することができるよう、SRARは1.1よりも大きいべきである。異なる異方性軸を有する表面レリーフ構造のパターンのイメージセットアップの視覚的コントラストを高めるために、2よりも大きいSRAR値が好ましい。さらに好ましいものは、5よりも大きいSRAR値である。
【0059】
非常の大きいSRAR値の場合、有意な量の光が散乱して進入する方位角の範囲はますます小さくなり、それが、表面レリーフパターンで作られたイメージからの反射光を認識することをより困難にする。したがって、本発明の目的は、表面から反射する光の光学的外観がコントラスト及び可視性方位角範囲の点で最適化されるような表面レリーフ微細構造を設計するためにチューニングすることができるパラメータを提供することである。したがって、好ましい実施態様では、SRARは、50未満、より好ましくは20未満である。
【0060】
さらには、本発明の表面レリーフ微細構造の好ましい実施態様を、表面レリーフの適切に選択された横特性及び深さ特性によって幾何学的に特徴付けることができることがわかった。これらの特性を以下に説明する。これらの特性は、実際の表面から、好ましくはAFMイメージに基づいて決定することができる。
【0061】
一つの特性は、表面レリーフが強い相関関係を有しない、すなわち、短い自己相関距離を特徴とするという事実である。
【0062】
非周期性又は非確定的表面プロフィールを特徴付けるのに有用なパラメータは、自己相関関数及び関連する自己相関距離である。表面プロフィールの一次元又は二次元自己相関関数は、平面中で距離xによって空間的に隔てられた二つの点に関する表面プロフィールの予測精度の測度と理解することができる。
【0063】
表面レリーフ微細構造プロフィールのような関数P(x)の自己相関関数AC(x)は次のように規定することができる。
【0064】
【数2】
【0065】
自己相関関数及び対応するプログラミング問題に関するさらなる詳細は、たとえば、「Numerical recipes in C: the art of scientific computing / William H. Press; Saul A. Teukolsky; William T. Vetterling; Brian P. Hannery. - Cambridge; New York: Cambridge University Press, 1992」に見ることができる。イメージ処理におけるパターン認識のための自己相関関数の応用は、たとえば、「Digital image processing / William K. Pratt. - New York: Wiley, 2001」で論じられている。
【0066】
非周期性又は非確定的表面プロフィールの場合、自己相関関数はxの増大とともに急速に減衰する。他方、たとえば格子で見られる確定的表面プロフィールの場合、自己相関は減衰しない。しかし、格子の場合、自己相関関数は周期関数とともに変調する。また、ほぼ周期性の格子の場合、包絡線がxの増大とともに減衰する。
【0067】
一次元自己相関関数を用いて、一つの特性数として自己相関距離Lを規定することができる。これが、自己相関関数の包絡線が特定のしきい値まで減衰する場合の長さである。この目的には、AC(x=O)の10%のしきい値が適当であることが証明された。
【0068】
自己相関距離Lを規定するためには、さらなるパラメータとして溝間平均距離Pが規定される。本発明の微細構造の自己相関距離は、Pの単位で特定の値よりも小さくなければならない。
【0069】
したがって、本発明の表面レリーフ微細構造の好ましい実施態様は、異方性表面変調の場合で異方性軸に対して垂直な方向である少なくとも一つの方向における表面レリーフが、自己相関距離の範囲内でx=0におけるACの10%まで減衰する包絡線を有する平均化一次元自己相関関数AC(x)を有し、自己相関距離が上部及び下部領域の隣接する移行部どうしの間の平均横方向距離の3倍よりも小さいということを特徴とする。
【0070】
より好ましいものは、自己相関距離が上部及び下部領域の隣接する移行部どうしの間の平均横方向距離の2倍よりも小さい表面レリーフ微細構造である。さらに好ましいものは、自己相関距離が上部及び下部領域の隣接する移行部どうしの間の平均横方向距離の1倍よりも小さい表面レリーフ微細構造である。
【0071】
もう一つの好ましい実施態様で、自己相関距離(L)は、上部及び下部領域の隣接する移行部どうしの間の平均横方向距離の1/100よりも大きい。
【0072】
異方性散乱表面変調を有する本発明の表面レリーフ微細構造の場合、異方性軸は、たとえば、適切なAFMイメージ又は誘導された自己相関関数に基づいて見いだすことができる。そして、異方性軸に対して垂直な軸に沿って一次元自己相関関数を評価し、最終的に平均化して、平均化一次元自己相関関数が得られるようにしなければならない。この平均化一次元自己相関関数から、包絡線及び自己相関距離Lを決定する。
【0073】
表面レリーフ微細構造の上記の幾何学的特性決定を以下の二つの例によってさらに説明する。第一の例は、従来技術で周知の表面ホログラムの表面レリーフ微細構造である。対応するAFMイメージ及び自己相関関数が図5.1、5.2及び5.3に示されている。第二の例は、本発明の表面レリーフ微細構造であり、それに関して対応するAFMイメージ及び自己相関関数が図6.1、6.2及び6.3に示されている。
【0074】
図5.1は、表面ホログラムの表面レリーフ微細構造の15μm×15μmのAFMイメージを示す。図5.2には、図5.1のAFMイメージの二次元自己相関関数が示されている。明らかなように、AFMイメージ中に見られる乱れた可視格子がイメージ区域全体ですべての方向に相関している。AFMイメージ又は二次元自己相関関数から異方性軸を決定することができる。
【0075】
異方性軸に対して垂直な線に沿って評価される平均化水平一次元自己相関関数が図5.3に示されている。自己相関関数30は、ハッチングした曲線31によって示される包絡線を有する。図示する七つの横方向溝間距離(自己相関関数のピーク)の範囲内で、包絡線は位置0での自己相関関数の10%未満まで減衰しないということが見てとれる。したがって、10%までの包絡線の減衰によって規定される自己相関距離は、七つの横方向溝間距離よりも相当に大きい、図5.1に示す表面ホログラムに関するものである。
【0076】
次に、本発明の表面レリーフ微細構造の15μm×15μmのAFMイメージが図6.1に示され、対応する二次元自己相関関数が図6.2に示されている。図6.2の中心の自己相関関数の速やかな減衰から、本発明の微細構造がわずかにしか相関しないということが注目されることは興味深い。
【0077】
図6.1のAFMイメージから、本発明の微細構造の下部領域が、垂直方向に延びる溝の形態を有するということが見てとれる。したがって、異方性軸は垂直である。
【0078】
図6.3では、曲線34は、異方性軸に対して垂直な線に沿って評価される、図6.1の表面レリーフ微細構造の平均化水平一次元自己相関関数を表す。先の例の従来技術微細構造とは対照的に、この場合の一次元自己相関関数は急勾配で下降し、その包絡線は関数そのものと事実上一致している。したがって、包絡線は速やかに10%未満に減衰し、対応する自己相関距離Lは横方向溝間距離一つ分よりも小さい。
【0079】
本発明の表面レリーフ微細構造のもう一つの特性は二つの顕著な表面レリーフ平坦域である。これらの性質は、好ましい実施態様に関して、表面レリーフの高さ(又は深さ)ヒストグラムに基づく関数によって定量化することができる。
【0080】
理想的には、本発明の要素は、特徴的な平坦域間距離によって隔てられた平坦な上部及び下部領域で作られた純粋な二つの高さレベル系であろう。そのような光学要素で散乱した光は、二つのタイプの散乱光線、すなわち、上部領域で散乱する光線及び下部領域で散乱する光線を発生させる。これら二つの光線は干渉し合い、それにより、結果的に色効果を生じさせる。
【0081】
しかし、現実には、製造プロセスが、望ましい又は望ましくない不規則性を生じさせ、それにより、上部及び下部領域ならびに平坦域間距離を不明確にする。したがって、表面レリーフ微細構造の高さヒストグラムは、表面レリーフを特徴付けし、望ましい平坦域を可視化するのに良好な統計的手段であるかもしれない。ヒストグラムは、たとえば、適切なAFMイメージから導出することができる。関連する数学的処理は、大部分の数学ソフトウェア又は最新のイメージ処理ソフトウェアに含まれている。
【0082】
本発明の表面レリーフ微細構造は二つの顕著な表面レリーフ平坦域を保持するため、二つの顕著なピークがヒストグラム中に見られるはずである。これを図7.1及び7.2でさらに説明する。
【0083】
図7,1は、すでに図3に示した本発明の微細構造のAFMイメージであり、図7.2は、対応するヒストグラムを示す。二つの顕著なピークが明確に認められる。
【0084】
表面レリーフ微細構造のもう一つの特性を定量化するために、表面レリーフ充填ファクタを導入する。本発明に関連して、表面レリーフ充填ファクタは、すべての上部及び下部領域の積分面積に対する上部領域の合計面積の比と定義される。良好及び最良の光学性能のためには、通常、上部領域と下部領域とが概ね同じ合計面積を有することが有利であるかもしれない。換言するならば、上部領域と下部領域とは互いに均衡するべきであり、それは、表面レリーフ充填ファクタが0.5に近いべきであることを意味する。これは、同じサイズの二つのピークを有するヒストグラムに対応する。図7.1に示す微細構造の場合、図7.2に示すヒストグラム中にわずかな非対称性が見られる。下部領域の合計面積が上部領域の合計面積よりもわずかに小さい。
【0085】
一般に、本発明の表面レリーフ微細構造の表面レリーフ充填ファクタは非常に広い範囲に入ることができる。好ましくは、表面レリーフ充填ファクタは、0.05〜0.95、好ましくは0.2〜0.8である。より好ましくは、表面レリーフ充填ファクタは0.3〜0.7又は0.4〜0.6である。
【0086】
さらには、高さヒストグラムに基づくメリット関数が、顕著な表面レリーフ平坦域を特徴付けるのに有用であることができる。考えられるメリット関数Mは以下である。
【0087】
【数3】
【0088】
メリット関数Mは、ピーク幅とレリーフ変調深さとの関係を使用する。平坦域の周囲における上部及び下部領域の偏差の範囲は、レリーフ変調深さの規定の部分内にあるべきである。△x1及び△x2は、全ピーク高さの高さ1/eのところで計測した二つのヒストグラムピークの幅であり、eは、自然対数の基数であり(e≒2.72)、dは、二つのピークの距離(平均平坦域間距離又はレリーフ変調深さに一致する)である。△x1、△x2及びdは図7.2に示されている。
【0089】
通常、高さヒストグラムのような評価の場合、dの値よりも少なくとも50倍小さい、好ましくはdの値よりも少なくとも100倍小さい、第三の次元のサンプリング幅を選択する。
【0090】
本発明の表面レリーフ微細構造の好ましい実施態様は、2よりも大きいメリット関数Mを有する。より好ましくは、Mは3.5よりも大きい。
【0091】
図7.1及び7.2の微細構造は、たとえば、概ね4.0のメリット関数Mを有する。
【0092】
本発明はさらに、上記のような表面レリーフ微細構造を有する要素を製造する方法に関する。
【0093】
一般に、方法は二つの主なステップを使用する。第一のステップで、異なる透明度の第一及び第二のゾーンの微細構造を有し、少なくとも一つの横方向において、第一のゾーンから第二のゾーンまで又はその逆に各200マイクロメートル以内に少なくとも一つの移行部があり、移行部の横方向配設が非周期性であるマスクを生成する。
【0094】
第二のステップで、そのマスクを用いて、樹脂又はレジストの表面をレリーフ微細構造化して、マスクの第一のゾーンに対応する上部領域及びマスクの第二のゾーンに対応する下部領域を製造して、レリーフ変調深さが表面区域全体で実質的に等しくなるよう、上部領域が上部レリーフ平坦域に実質的に位置し、下部領域が下部レリーフ平坦域に実質的に位置するようにする。
【0095】
通常、マスクは、構造化暴露プロセス、たとえばフォトリソグラフィー又はエッチングプロセスに使用することができる金属マスクである。
【0096】
普通、第一及び第二のゾーンの一方は完全に透明であり、たとえばマスク中の穴であり、他方は非透明であり、たとえば金属マスクの不透明材料で製造されている。しかし、当業者は、具体的な暴露プロセスに依存して、異なる透明度のゾーンを有するマスク(たとえばハーフトーンマスク又はグレースケールマスク)を使用してもよいことを理解するであろう。
【0097】
マスクの透明な方のゾーン及び透明でない方のゾーンの配設は、等方性表面レリーフ微細構造の製造の場合には等方性になり、異方性表面レリーフ微細構造の製造の場合には異方性になる。
【0098】
記載した方法の第一ステップで使用するためのマスクを製造するための好ましい方法では、トポロジー的に構造化された波形面構造を製造するための既知の技術を使用して、異なる透明度の第一及び第二のゾーンの微細構造を生成する。
【0099】
一つのそのような技術は、架橋性材料と非架橋性材料との混合物の相分離及び架橋に基づく。トポロジー的に構造化された波形面構造は、少なくとも一つが架橋性であり、少なくとも他の一つが非架橋性である少なくとも二つの材料の混合物を製造し、その混合物を基材に塗布し、可溶性材料の少なくとも実質的な部分を架橋させ、非架橋性材料の少なくとも実質的な部分を除去することによって得られる。異方性にしなければならない微細構造の場合、架橋中に、たとえば下にある延伸層又は延伸性基材面によって架橋性材料を延伸状態に維持することができる。
【0100】
より具体的には、適当なマスクを製造するのに有用なトポロジー的に構造化された波形面構造は、たとえば以下の方法で製造することができる。第一ステップで、薄いフォトアライメント膜を適当な基材にコーティングする。パターン付き線偏光UV光を用いて、たとえば一つ以上のフォトマスク及び繰返し露光(又は1ステップでパターン付き照射を生じさせるフォトマスク又は偏光マスクを用いる1回の露光又はレーザスキャン法など)を使用して、潜パターン又は潜像をこの薄いフォトアライメント膜に書き込む。このフォトアライメント技術のより詳細な説明は、たとえば、米国特許第5389698号に見ることができる。露光したフォトポリマーは、液晶混合物及び架橋性液晶プレポリマーを整列させる能力を有する。第二ステップで、パターン付きアライメント層を架橋性液晶材料と非架橋性液晶材料とのブレンドでコーティングする。そして、この液晶ブレンドを、好ましくは化学放射線(UV光)に暴露することによって架橋させる。このプロセスが液晶プレポリマーの相分離及び架橋を誘発する。その後、非架橋材料を、たとえば適切な溶媒を使用して除去して、異方性表面構造を有する波形薄膜が得られるようにする。微細な波形薄膜の基本製造原理及び光学的挙動は、たとえば国際特許出願WO−A−01/29148及びWO−A−2004/027500に開示されている。このような異方性表面構造を有する波形薄膜の製造に関して、WO−A−01/29148及びWO−A−2004/027500の開示を明示的に本明細書に取り込む。
【0101】
たとえば上記方法によって生成したトポロジー的に構造化された波形面構造を有する膜は、異なる透明度の第一及び第二のゾーンのマスク微細構造を製造するために使用することができる。このためには、そのような膜をマスク材料、たとえばクロムの層に被着させる。次いで、たとえばプラズマエッチングにより、波形面の下ゾーンの膜の材料が除去され、下にあるマスク材料の一部が露呈するまで膜の厚さを減らす。最後に、マスクの露呈部分をたとえばウェットエッチングによって除去する。
【0102】
記載した方法以外に、他の技術を使用して、表面レリーフ微細構造を有する要素を製造するための本発明の方法のためのマスクを製造することもできる。
【0103】
また、微細波形薄膜を調製するための上記プロセスの代替として、他にも公知の自己集合微細及びナノ構造化技術があり、それらを使用することもできる。とりわけ、たとえばコポリマーにおける自己組織化又はディウェッティングがある。
【0104】
可能な手法は、電子ビームライタを使用することである。そのようなライタのビーム径が非常に狭いレジスト露光区域を生じさせ、位置決めをナノメートルラスタでさえ実施することができる。
【0105】
また、さらには、金属又は半導体、たとえばアルミニウム又はケイ素の電気分解的エッチングが多孔質の微細及びナノ構造化面を生じさせる。
【0106】
次に、本発明をさらに説明するいくつかの実施例を記載する。
【0107】
すべての実施例において、異なる透明度の第一及び第二のゾーンの微細構造を有するマスクとして金属マスクを使用した。そのようなマスクの生成は、フォトリソグラフィーマスク又はドライエッチングマスクとして働く。
【0108】
実施例1
図8.1〜8.5は、表面レリーフ微細構造を有する要素を製造するための本発明の方法に適した、異なる透明度の第一及び第二のゾーンの微細構造を有するマスクの生成を示す。
【0109】
金属層42でコーティングされているガラス又はプラスチックプレート41が基材として働く。金属層の場合、コーティング厚さ10〜50ナノメートルのアルミニウム、クロムなどの金属が好都合に使用されている。
【0110】
金属層42の上に、トポロジー的に構造化された波形面構造を有する膜43を被着させる(図8.2)。膜43は、上述の、かつWO−A−01/29148及びWO−A−2004/027500に開示されている手順にしたがって製造したものである。局所的に、微細構造は等方性又は異方性であることができる。パターン付きアライメントにより、イメージ、グラフィカル作成物、マイクロテキストなどを膜の波形面に記すことが可能である。
【0111】
次に、膜43をプラズマエッチングして、下にある金属膜の一部が露呈するようにする(図8.3)。この処理は、標準的な酸素プラズマを使用して実施することができる。その結果、膜43の厚さを、金属層42が当初の膜43の上ゾーン43’の材料のみによって部分的に覆われるまでに減らす。
【0112】
次のステップで、適切なエッチング液を使用して、部分的に露呈した金属層42をウェットエッチングする(図8.4)。このプロセスにより、金属層42には、膜43の波形面の下ゾーンに対応する特異的に微細構造化された穴44が設けられる。したがって、これが、表面レリーフ微細構造を有する要素を製造するために本発明の方法で使用することができるマスクを構築する。必要ならば、残った層の上の膜43の残留材料43’をたとえば酸素プラズマによって除去することができる(図8.5)。
【0113】
実施例2
図9.1〜9.3には、実施例1の微細構造化マスクを次のステップで使用して、本発明の光学的に有効な表面レリーフ微細構造を有する表面区域を有する要素を製造する方法が示されている。
【0114】
ガラス又はプラスチックの基材48をポジフォトレジストの層49でコーティングする(図9.1)。たとえば、ShipleyのS1800シリーズフォトレジストが非常に適している。塗布されるレジスト層49の厚さが、表面レリーフ微細構造によって最終的に発される色を決定する。典型的なレジスト厚さは100ナノメートル〜500ナノメートルであるが、より厚い層もまた可能である。レジストのタイプに依存して、ベーキング、たとえばホットプレート上で110℃で1分間のベーキングが必要になるかもしれない。
【0115】
次に、プレート41上に調製された微細構造化金属マスク42をフォトレジスト層49に押し付け、紫外線光源50に暴露する(図9.2)。光源としては、たとえば、Dr. Hoenle, Germanyによる紫外線設備「Bluepoint 2」を使用することができる。
【0116】
露光時間は、現像後、良好な二頂性表面プロフィール、すなわち、二つの顕著な表面レリーフ平坦域51及び52を有するプロフィールが生じるようなやり方で調節する(図9.3)。
【0117】
ポジフォトレジストの代わりにネガフォトレジストを同様なプロセスで使用することもできることが理解されよう。
【0118】
本発明の良好な表面レリーフ微細構造がこの技術で得られた。金属マスクを多数回使用することができ、現像を含むフォトリソグラフィーステップが数分程度であるため、速やかな製造が可能である。微細構造はそれ自体で光学要素として使用することができるが、好ましくは、複製技術におけるマスタとして使用される。
【0119】
現在の技術水準のトポロジー的に構造化された波形面構造との間で全体の定性的比較を可能にするため、WO−A−01/29148及びWO−A−2004/027500にしたがって、実施例2にしたがって製造した構造を用いて、そのような現在の技術水準のトポロジー的に構造化された波形面構造に対応する上記膜43の光学的特性を実施例2の最終結果と比較し、表1にまとめる。
【0120】
【表1】
【0121】
実施例3
実施例2に記載した方法に代えて、他の手法を試験した。金属マスクの上にフォトレジスト層を適切な膜厚さで直接コーティングすることによって良好な結果を得ることができる。
【0122】
図10.1では、ここでもまた、プレート41上に調製された微細構造化金属マスク42が示され、今回は、図10.2で見てとれるように、フォトレジスト層55でコーティングされる。微細構造化金属マスクを上に有する基材の背面からUV暴露を実施する。
【0123】
次のステップで、微細構造化フォトレジストが生じるようなフォトレジスト現像を実施した。この場合にも、フォトリソグラフィープロセスのためにポジ又はネガフォトレジストを使用することもできる。図10.3は、得られた微細構造化フォトレジスト層55をポジレジストとともに示し、図10.4は、得られた微細構造化フォトレジスト層55をネガレジストとともに示す。
【0124】
実施例4
図11.1及び11.2を参照して、本発明の光学的に有効な表面レリーフ微細構造を有する表面区域を有する要素を製造するさらなる方法を説明する。
【0125】
基材として、ガラスプレート59をエッチング性材料、たとえば架橋性プレポリマーの層60でコーティングする。あるいはまた、ポリマー基材、たとえばプレキシグラスをさらなるコーティングなしで直接使用することもできる。
【0126】
次いで、実施例1に記載した方法にしたがって、基材の上に微細構造化金属マスク61を生成する(図11.1)。
【0127】
次のステップで、装置を、プラズマイオンが金属マスクの穴を貫通するようなドライエッチングに付した。酸素が適当なプラズマエッチング媒体である。ポリマー及び金属のエッチング選択性は非常に高い。したがって、ナノメートル厚さの金属ゾーンでさえ酸素プラズマによって攻撃され、微細又はナノ溝を生成することができる。プラズマエッチングの期間が下部領域の深さ、ひいては最終的な色外観を決定する。ガラスが基材として選択されるならば、ガラスは、エッチングの停止材料として働くこともできる。
【0128】
最後に、適当なウェットエッチング溶液を用いるウェットエッチングによって金属マスクを除去する。
【0129】
実施例5
前述のように、本発明の光学的に有効な表面レリーフ微細構造を有する表面区域を有する要素は、複製技術のためのマスタとして使用することができる。たとえば、実施例1〜4の方法にしたがって調製された要素が適当である。調製後、マスタの表面にある残留金属ゾーンを取り除くために、要素を短期間ウェットエッチング浴に暴露することができる。
【0130】
すると、微細構造化マスタは、金属シムの生成のために準備ができる。これは、薄い出発金属層、たとえば金、銀などを被着させたのち、ニッケルをガルバニック被着させることによって実施される。そして、このニッケルシムを使用して、適当な薄膜ポリマー材料への熱間エンボス加工によって、又は適当なUV硬化性材料へのUV注型成形によって複製を製造する。
【0131】
さらには、微細構造化複製物をアルミニウム又は類似金属で金属コーティングして良好な反射面を製造することができる。これは、特に、複製物が安全保障装置として適用される場合に当てはまる。
【0132】
最後に、装置を誘電性パシベーション膜で保護することもできるし、後で製品に適用するのに適した接着剤で直接コーティングすることもできる。このようにして、微細構造の表面変調を誘電体で埋める。
【0133】
上記方法に基づく反射装置は基本的にモノクローム反射を示す。調製に依存して、試料を傾けたときに色の変化が認められることもある。しかし、これらの装置の一つの特徴は、虹色が認められないこと及び、したがって、標準的なホログラムとは有意に異なるということである。
【0134】
実施例6
また、異なる表面レリーフ微細構造を有する二つ以上の区域を一つの要素に合わせる又は混合することが当然可能である。このより複雑なタイプの要素は、たとえばマルチカラーイメージを生成することを可能にし、それらの複雑さのおかげで、より高いレベルの安全保障を有することができる。
【0135】
図12.1〜12.4には、本発明の異なる表面レリーフ微細構造を有する二つの区域を有する要素を製造する方法の例が概説されている。
【0136】
ガラス又はプラスチックのプレート65及びエッチング性材料の層66を含む基材に対し、上記プロセスステップにしたがって微細構造化金属膜67をコーティングする(図12.1)。ここでもまた、適当なポリマーコーティングを有するガラスもしくはプラスチックプレート又はポリマープレート、たとえばPPMA(プレキシグラス)を使用することができる。
【0137】
次に、調製した基材の表面に1回目のプラズマエッチングを適用する。エッチング深さが最初の最終的に出現する色を決定する(図12.2)。
【0138】
次に、ここまで生成した表面レリーフ微細構造をポジフォトレジストの層68でコーティングし、特定区域69をUV光に暴露する。フォトレジストを現像することにより、区域69中の露光したレジスト材料を洗い流す(図12.3)。
【0139】
ここで、区域68中にすでに存在する微細構造を第二のエッチングステップでさらにエッチングすることができる(図12.4)。さらなるエッチングステップは深さを増し、区域68中の微細構造の色を決定する。その結果、異なる光学的に有効な表面レリーフ微細構造を有する二つの区域69及び70を有する要素が提供される。
【0140】
望むならば、一部の区域をカバーし、残りの露呈区域をエッチングする前記ステップを繰り返して、異なる微細構造を有する三つ以上の区域を提供することもできる。
【0141】
使用されるマスクは、10マイクロメートルを優に下回る画素サイズを保持する非常に高い解像度で達成することができる。したがって、色及び画素配設の適当な選択が、加法混色に基づくイメージの生成をも可能にする。
【0142】
実施例7
本発明の表面レリーフ微細構造はまた、反射性又は部分反射性にすることもできる。対応する実施例が図13.1及び13.2に示されている。
【0143】
一般に、強い色反射のためには、微細構造を反射性材料、たとえばアルミニウム、金、クロム、銅などの薄い層71でコーティングする。そのような膜71の厚さが、高反射性又は部分反射性の装置を得ることができるような反射及び透過の程度を決定する。
【0144】
層71のために部分反射性の金属膜を使用する代わりに、高又は低屈折率コーティングを使用することもできる。高屈折率材料の例はZnS、ZnSe、ITO又はITO2である。また、高屈折率材料のナノ粒子を含む複合材料が適当であるかもしれない。
【0145】
あるいはまた、微細構造を高反射性材料で部分的にコーティングすることにより、たとえばはじめに微細構造全体をコーティングし、次にコーティングを部分的に除去して微細構造全体の一部だけが反射性材料で覆われるようにすることにより、部分反射性装置を得ることもできる。これは、反射性材料の層71’が特定の部分72で途切れている図13.2に示されている。
【0146】
また、図13.1及び13.2には、装置の色出現をさらに高めるために、たとえば、特定の吸収挙動を有する透明な誘電体である保護及びパシベーション膜73が示されている。
【0147】
実施例8
本発明の表面レリーフ微細構造の光学挙動を実証するために、図14.1及び14.2に、例示的な要素の反射スペクトルが示されている。要素は、実施例4の方法(微細構造化金属マスクのエッチング)にしたがって、約20ナノメートルの最終的な薄膜アルミニウムコーティングを含めて製造し、約1.5の屈折率の透明なパシベーション膜を介して計測した。
【0148】
光学挙動は、この場合は緑である要素の散乱性非正反射色をもっとも明確な特徴とする。
【0149】
様々な照射角及び検出器角で反射スペクトルを測定することにより、製造した様々な例示的な要素を特性決定した。使用した分光光度計は、Perkin Elmer Lambda 900であり、調節可能な試料角及び調節可能な検出器角で反射スペクトルを計測することを可能にするPela 1030オプションを装備したものであった。300〜800ナノメートルの波長範囲で典型的な反射スペクトルを計測した。記載した計測のために特別な偏光装備は使用しなかった。鏡面反射ジオメトリ(入力角=出力角又は検出器角=試料角×2)の場合に相当する上述の正反射の場合に例外的な照射及び検出器条件が存在する。
【0150】
例示的な要素の反射スペクトルが図14.1に示されている。照射角又は試料角SAは30°である。この角度は、図中左上の挿絵で示すように、基材表面から照射垂直面までの角度の逸脱である。検出器角DAは、同じく左上の挿絵で示すように、照射方向と検出器方向との間の角度である。
【0151】
反射スペクトルは、525ナノメートルでの強い反射最大値、350ナノメートルでのもう一つの最大値及び400ナノメートルでの最小値を示す。これらの顕著な最大値及び最小値が、反射光の良好な色飽和の原因である。最大反射は、正反射から20°ずれている40°の検出器角で達成されている。30°及び50°の検出器角の場合、反射光輝度の低下が見られ、この場合、それに伴う波長シフトはあまり大きくない。
【0152】
正反射光は非正反射光とは異なる。正反射は飽和マゼンタ色に見える。対応する反射スペクトルが図14.2に示されている。正反射計測の場合、検出器角DAは試料角SAの2倍である。ここでもまた、図14.1で見られる散乱反射の相補スペクトルにほぼ対応する顕著な変調がチャート中に見られる。これは、発生している散乱の最大部分が図14.1の計測で得られているということに注目することによって理解することができる。主要な色感応性散乱又は吸収チャネルが存在しないならば、正反射に関する相補スペクトルが残される。約4%のバックグラウンドが、本ケースではガラスである装置の保護用パシベーション層における無色性反射に対応する。また、図14.2に見てとれるように、正反射光の色スペクトルは装置の傾動に対して非常に非感応性である。
【0153】
実施例9
図15.1及び15.2は、本発明の要素のもう一つの例の反射スペクトルを示す。要素は、実施例4の方法にしたがって製造した。その散乱色はオレンジである。
【0154】
図15.1を参照すると、照射角又は試料角SAは30°である。反射スペクトルは、583ナノメートルでの強い反射最大値、380ナノメートルでのもう一つの最大値及び453ナノメートルでの最小値を示す。これらの最大値及び最小値が明るいオレンジ色の反射光の原因である。最大反射は、正反射から20°ずれている40°の検出器角DAで達成されている。50°の検出器角の場合、反射光輝度の低下が認められ、それに伴う波長シフトは約30ナノメートルである。
【0155】
同じ例示的な要素の正反射が図15.2に示されている。ここでもまた、図15.1で見られる散乱反射の相補スペクトルにほぼ対応する顕著な変調が見られる。しかし、586ナノメートルでの最小値はあまり顕著ではなく、反射光の飽和度があまり高くないことを意味している。視認される装置色は不飽和青である。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1.1】等方性構造化面における光反射の図である。
【図1.2】異方性散乱面における反射からの特徴的な出力光分散を示す、図1.1に類似した図である。
【図2】異なる異方性方向延伸を有する画素を示す。
【図3】本発明の表面レリーフ微細構造の三次元図(AFMイメージ)を示す。
【図4.1】可能な異方性表面レリーフパターンの代表例を示す。
【図4.2】可能な異方性表面レリーフパターンの代表例を示す。
【図4.3】可能な異方性表面レリーフパターンの代表例を示す。
【図5.1】従来技術の表面ホログラム微細構造のAFMイメージを示す。
【図5.2】図5.1のAFMイメージの二次元自己相関関数を示す。
【図5.3】異方性軸に対して垂直な図5.1のAFMイメージの平均化水平一次元自己相関関数を示す。
【図6.1】本発明の異方性表面レリーフ微細構造のAFMイメージを示す。
【図6.2】図6.1のAFMイメージの二次元自己相関関数を示す。
【図6.3】異方性軸に対して垂直な図6.1のAFMイメージの平均化水平一次元自己相関関数を示す。
【図7.1】図3に示す微細構造のAFMイメージである。
【図7.2】図3及び図7.1に示す微細構造の高さヒストグラムを示す。
【図8.1】表面レリーフ微細構造を有する要素を製造するための本発明の方法に適したマスクの生成を示す。
【図8.2】表面レリーフ微細構造を有する要素を製造するための本発明の方法に適したマスクの生成を示す。
【図8.3】表面レリーフ微細構造を有する要素を製造するための本発明の方法に適したマスクの生成を示す。
【図8.4】表面レリーフ微細構造を有する要素を製造するための本発明の方法に適したマスクの生成を示す。
【図8.5】表面レリーフ微細構造を有する要素を製造するための本発明の方法に適したマスクの生成を示す。
【図9.1】本発明の光学的に有効な表面レリーフ微細構造を有する表面区域を有する要素を製造するための接触フォトリソグラフィーのための図8.5のマスクの使用を示す。
【図9.2】本発明の光学的に有効な表面レリーフ微細構造を有する表面区域を有する要素を製造するための接触フォトリソグラフィーのための図8.5のマスクの使用を示す。
【図9.3】本発明の光学的に有効な表面レリーフ微細構造を有する表面区域を有する要素を製造するための接触フォトリソグラフィーのための図8.5のマスクの使用を示す。
【図10.1】本発明の要素を製造するためのフォトリソグラフィーの異なる手法を示す。
【図10.2】本発明の要素を製造するためのフォトリソグラフィーの異なる手法を示す。
【図10.3】本発明の要素を製造するためのフォトリソグラフィーの異なる手法を示す。
【図10.4】本発明の要素を製造するためのフォトリソグラフィーの異なる手法を示す。
【図11.1】金属マスクを介する直接エッチングを使用する、本発明の要素を製造するためのさらに別の手法を示す。
【図11.2】金属マスクを介する直接エッチングを使用する、本発明の要素を製造するためのさらに別の手法を示す。
【図12.1】異なる表面レリーフ微細構造を有する二つの区域を有する要素を製造する方法を概説する。
【図12.2】異なる表面レリーフ微細構造を有する二つの区域を有する要素を製造する方法を概説する。
【図12.3】異なる表面レリーフ微細構造を有する二つの区域を有する要素を製造する方法を概説する。
【図12.4】異なる表面レリーフ微細構造を有する二つの区域を有する要素を製造する方法を概説する。
【図13.1】反射性又は部分反射性に作られる、本発明の表面レリーフ微細構造の例を示す。
【図13.2】反射性又は部分反射性に作られる、本発明の表面レリーフ微細構造の例を示す。
【図14.1】本発明の緑色反射性微細構造化要素の非正反射及び正反射スペクトルを示す。
【図14.2】本発明の緑色反射性微細構造化要素の非正反射及び正反射スペクトルを示す。
【図15.1】本発明のもう一つのオレンジ色反射性微細構造化要素の非正反射及び正反射スペクトルを示す。
【図15.2】本発明のもう一つのオレンジ色反射性微細構造化要素の非正反射及び正反射スペクトルを示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば偽造及び変造に対して書類及び物品を安全保障するために使用することができる、特徴的な色外観を有する光学装置に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、光学的に有効な表面レリーフ微細構造を有する少なくとも一つの表面区域を有する要素及び当該要素の製造方法に関する。
【0003】
発明の背景
偽造、不正改造に対する防護及び製品保護一般のための光学装置の使用は今や十分に確立された技術である。
【0004】
詐欺行為及び偽造の増加のせいで、新規な対偽造手段が絶えず求められている。長年、ホログラムが好ましい安全保障技術であった。そうこうするうち、この技術は30年余りを経過し、したがって、周知であり、広まっている。ホログラフィーフォイルは今やどのギフトショップででも見つけることができる。多くの人々がホログラム技術を手に入れることができるため、この状況は安全保障の危険を表す。デジタルホログラムプリンタが利用可能になるとともに、使いやすいホログラフィーマスタリングシステムへの道がさらに開かれた。このようなプリンタは、多くの異なるタイプのホログラムの製造を可能にし、ホログラフィーセットアップ又はレーザライタの知識は最小限しか要らない。このような設備は、後続のメタルマスタ製造のためのマスタの調製及び薄膜への大量複製を可能にする。
【0005】
したがって、ホログラフィー装置から明確に区別可能である新規な安全保障機能によって安全保障装置のパレットを拡張することが非常に望ましい。そのような新規な装置の例が代替の光学可変装置(OVD)である。OVDとは、視角又は照明角が変化するとともに外観を変化させる装置である。OVDのサブグループがカラーシフト装置である。カラーシフトOVDは、視角又は照明角が変化するとともに色を変化させる。顕著な代表的カラーシフトOVDは、コレステリック又は干渉膜及びそのような膜のフレークに基づく光学装置である。いずれも、装置が垂直な視角に対して傾くとともに顕著なカラーシフトを示す。標準的な量産ホログラフィー装置の特徴である虹色は、これらのタイプのカラーシフト装置では見られない。
【0006】
光学薄膜における光の干渉によるカラーシフト効果は、現代の薄膜コンポーネントの歴史において長い伝統を有する(たとえば、「Optical Document Security」(R. L. van Renesse編、Artechouse Boston 1998)におけるJ. A. Dobrowolskiの「Optical thin-film security devices」)。多くの異なる組成の成層薄膜系が可能である。たとえば直角の光入射の場合に特徴的な反射スペクトルが得られる。入射角が増大するとともに反射又は透過スペクトルは短波長側にシフトする。また、多層薄膜系、多くの場合、誘電体層と金属層との組み合わせは、誘電体材料だけででも可能である。この場合、異なる屈折率の薄膜が必要である。
【0007】
干渉膜又はそのような膜のフレークに基づく安全保障装置は今や市販されている。例は、たとえば、Flex Products社の米国特許第5084351号及び米国特許第6686042号に見ることができる。
【0008】
他の手法は散乱装置である。OVDにおける等方性の散乱効果及びより異方性の散乱効果の使用が光学的魅力を有意に高めることができる。特に、異方性の光散乱は、視角感応性装置を生成するのに有用な手段である。図1.1及び1.2は、それぞれ等方性光散乱及び異方性光散乱をを示す。
【0009】
等方性構造化面、たとえば新聞紙又は家財で見られる大部分の表面における反射は、方位方向が好まれないような反射である。図1.1に示すように、平行な入射光1が散乱面2で方向転換されて、特徴的な軸対称出力光分布及び特徴的な開き角4を示しながら新たな出射方向3に進む。
【0010】
しかし、異方性構造化面は、特定の方向の光を顕著なやり方で反射し、他の方向の光を抑制する。図1.2では、平行な入射光1が異方性散乱面5に衝突し、対応する方位角8、8’に依存する特徴的な出力光分布7を示しながら新たな出射方向6に方向転換される。
【0011】
情報の表示の場合、異方性散乱挙動及び異なる異方性方向延伸を有する個々の画素のパターンを作ることができる。このようにして、対応する装置は、文字又は写真などのようなイメージを表すパターン付き異方性散乱面を含むことができる。所与の方向の光は特定の画素延伸に依存して反射又は抑制されるため、明るい画素及び暗い画素のイメージが見られる。加えて、これらの装置は、傾けられる又は回転させられると、ポジ画像からネガ画像への顕著な変化を示す。このようなパターン付き表面装置は、たとえば、次のように生成することができる。まず、対象のグレースケールイメージをラスタリングする、すなわち、そのイメージを、特定の画素解像度で暗ゾーン及び明ゾーンに分割する。そして、暗ゾーン(画素)を、第一の延伸方向の異方性散乱ゾーンに帰属させ、明ゾーンを、たとえば第一の延伸向に対して垂直な異なる延伸方向を有する、異方性散乱ゾーンに帰属させる。そのような延伸配列を有する2×2画素の正方形が図2に示されている。画素10及び10’は一つの方向に延伸し、画素11及び11’は交差方向に延伸している。このような配設された画素のパターンを有する装置は、第一の視角の下ではポジに見え、装置がたとえば90°回転すると、ネガにフリップする。
【0012】
パターン付き異方性を有する異方性散乱膜を製造する公知の方法が、Rolic社の国際特許出願WO−01/29148及びたとえばIbn-Elhajらの「Optical polymer thin films with isotropic and anisotropic nano-corrugated surface topologies」Nature, 2001, vol. 410, p. 796-799に記載されている。表面構造を製造する場合、いわゆるモノマーコルゲーション(MC)技術が使用される。これは、基材に塗布された特殊な混合物又はブレンドの相分離が、たとえば紫外線への暴露による架橋によって誘発されるという事実に依存する。その後、非架橋成分を除去すると、特定の表面トポロジーを有する構造が残る。トポロジーは、下にあるアライメント層のアライメントによって、またパターン付きアライメント層を使用することによって異方性にすることができ、パターン付けされた異方性散乱面トポロジーを創製することが可能である。
【0013】
上述したように、多くの目的、特に安全保障装置としての応用のための興味深く望ましい特徴は、特殊な色及びカラーシフト効果である。国際特許出願WO−2006/007742では、一つの例(実施例5)により、MC技術に基づくと、パステルカラーの外観を生じさせるのに十分な深さである変調深さに達することが原理的に可能であることが示されている。しかし、MC表面トポロジーの平均変調深さ及び平均周期性をいくつかの手段によってチューニングすることはできるが、二つのパラメータを互いから独立させることはできない。したがって、MC技術によって誘発される特徴的な表面変調形状のせいで、MC生成散乱面の色飽和は限られる。多くの用途にとって不可欠である、より飽和した色は、対応する装置では可能ではない。
【0014】
光学装置に関しては、US2003/0072412A1が参照される。この文献では、ランド部とランド部との間に配置された溝を含む多層構造を有する基材を含む光学的に活性な表面構造が開示されている。dと指定される各有効周期の中ではランド部はランダムに分布しているが、これらの周期それぞれの中では同じランダムパターンが使用されると具体的に記されているため、US2003/0072412A1で開示されている構造は原則的に周期構造であることが注目される。したがって、一つの周期内に、各周期中で同一に反復するランダムな分布がある。したがって、この構造は周期性である。類似した構造がDE10 2004 003 984A1及びUS2005/0094277A1に開示されている。
【0015】
等周期表面構造が、反射防止コーティングに関してUS2005/0219253A1に開示されている。本文には、突出する光学部品のランダムな配置が述べられているという事実にもかかわらず、そのような光学部品の非周期性配設の表示はない。他方、反射防止コーティング構造を製造するための開示された実際の方法は、表示装置で与えられるような突出する光学部品を有する、すなわち一定の変調深さを有する構造につながらないことは明白である。
【0016】
US2003/0011870A1は、ベース材料上に形成された複数の凸部の高さ又は凹部の深さが実質的に同じに指定されている光反射膜を有する基材を開示している。複数の凸部又は凹部の二次元形状は、独立した円及び多角形又はそれらのいずれかの二次元形状であるように指定されている。加えて、複数の凸部又は凹部は平面方向にランダムに配設されている。基材は、光透過部分又は光非透過部分がドットのユニットとして形成され、その数がドット領域の数よりも小さいマスクを使用して形成される。ドットは、各ユニット中に不規則に配設され、複数のユニットが含まれる。
【0017】
JP2005−215642は、高い散乱輝度を有する拡散反射体を製造するためのフォトマスク及び当該フォトマスクを使用することによって拡散反射体を製造する方法を提供する。フォトマスクは、単位パターン領域がマトリックス中に敷設されているパターン領域を有する。パターン領域は、マトリックス中に敷設された多数の長方形の光透過部分、各光透過部分を包囲するように規則的又はランダムに敷設された多数の円形の微細な光透過部分及びそれらを包囲する遮光部分を有する。さらには、光透過部分を包囲するストリップ部分は微細な光透過部分を有さず、ストリップ部分の幅は1μm〜5μmである。
【0018】
発明の概要
したがって、本発明の目的は、それだけで、すなわちさらなる要素又は層の必要なしに、(a)虹色なしでイメージ及びポジ・ネガイメージフリップを表示するのに適した散乱効果ならびに(b)明確な飽和色の外観を同時に示す表面構造を提供することである。
【0019】
本発明のさらなる目的は、当該表面構造を製造する方法を提供することである。
【0020】
したがって、本発明の一つの態様にしたがうと、光学的に有効な表面レリーフ微細構造を有する少なくとも一つの表面区域を有する要素であって、表面レリーフ微細構造が下部領域から上部領域まで及び上部領域から下部領域までの移行部の表面変調を有し、表面区域の(第一の)横方向において、上部領域から下部領域まで又はその逆に各20マイクロメートル以内に(平均で)少なくとも一つの移行部があり、好ましくはさらに、第一の方向に対して垂直である表面区域の第二の横方向において、上部領域から下部領域まで又はその逆に各200マイクロメートル以内に平均で少なくとも一つの移行部があり、
(i)(第一の)方向において移行部の横方向配設が非周期性であり、
(ii)レリーフ変調深さが表面区域全体で実質的に等しくなるよう、上部領域が同じ上部レリーフ平坦域に実質的に位置し、下部領域が同じ下部レリーフ平坦域に実質的に位置することを特徴とする要素が提供される。
【0021】
本発明の上記説明及び以降の説明をより完全に理解することができるよう、いくつかの定義を与える。
【0022】
当業者には周知であるように、周期関数とは、定期間がその独立変数に加えられたのちそれ自体の値を繰り返す関数である。それに対し、非周期関数とは、それ自体の値を繰り返すための定期間を規定することができない関数をいう。周期性は、多数の方法によって決定することができ、その一つが、一以上の次元における相関関数の決定である。
【0023】
同じく当業者に周知であるように、関数の平坦域とは、そのドメインのうち、関数が一定の値を有する部分である。したがって、本発明に関連して、上部レリーフ平坦域及び下部レリーフ平坦域は、表面を規定する関数が基材の平面に対して直交する方向(z方向)において本質的に一定の値を有する領域である。表面構造内の上部と下部との間にそのような領域及び本質的に連続的又は準連続的でない、たとえば正弦波状の移行部を実際に有することが差別的特徴であるということが注目される。
【0024】
これら二つの平坦域のレベルの間の高さの違いは、表面区域上で等しい又は実質的に等しい。すなわち、表面区域上、z方向における二つの平坦域のこの高さの変化は、通常は20%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満である。これらの平坦域の存在及びこれら二つの平坦域のレベルの間の高さの違いが表面区域上で等しいか又は実質的に等しいという事実はまた、以下さらに詳細に記すメリット関数を使用して定量化することができる。
【0025】
異方性軸とは、表面が最小の変調を有する方向の軸であり、したがって、通常は、表面トポロジー中の溝又は溝様構造の方向である。
【0026】
表面レリーフ充填ファクタとは、すべての上部領域及びすべての下部領域の積分面積に対する上部領域の合計面積の比と定義される。
【0027】
特徴(i)は、他の技術で生じる虹色が存在しない主な理由の一つであり、特徴(ii)は、主として飽和色の外観を提供すると考えられる。
【0028】
本発明の要素をさらに特徴付けるために、異方性表面変調の場合には異方性軸に対して垂直の方向である少なくとも一つの方向における表面レリーフ微細構造の平均化一次元自己相関関数AC(x)を導入する。自己相関関数は、自己相関関数の包絡線がx=0でACの10%まで減衰する範囲の長さである相関距離、すなわち自己相関距離を定義する。本発明に関して、「非周期性」とは、通常、自己相関距離が上部及び下部領域の隣接する移行部どうしの間の平均横方向距離の3倍よりも小さい状態に関して使用される。
【0029】
好ましい実施態様にしたがうと、移行部の横方向配設は、第一の方向に対して垂直である第二の方向においても非周期性である。
【0030】
もう一つの好ましい実施態様にしたがうと、要素は、光学的に有効な表面レリーフ微細構造を有する複数の表面区域のパターンを有する。パターンは、文字又は写真などのようなイメージを表すこともできるし、文字又は写真などのようなイメージの一部であってもよい。イメージはまた、光学的に有効な表面レリーフ微細構造を有しない区域を含むこともできる。その結果、そのような区域は、表面レリーフ微細構造を示す区域に典型的である飽和色の外観を呈示しない。
【0031】
さらなる態様では、本発明は、当該要素を含む安全保障装置に関する。
【0032】
本発明のもう一つの態様では、光学的に有効な表面レリーフ微細構造を有する少なくとも一つの表面区域を有する要素を製造する方法が提供される。この方法では、まず、異なる透明度の第一及び第二のゾーンの微細構造を有し、(第一の)横方向において、第一のゾーンから第二のゾーンまで又はその逆に各20マイクロメートル以内に(平均で)少なくとも一つの移行部があり、好ましくはさらに、第一の方向に対して垂直である第二の横方向において、第一のゾーンから第二のゾーンまで又はその逆に各200マイクロメートル以内に平均で少なくとも一つの移行部があり、(第一の)方向において移行部の横方向配設が非周期性であるマスクを創製する。次に、そのマスクを用いて、樹脂又はレジストの表面にレリーフ微細構造を生成して、マスクの第一のゾーンに対応する上部領域及びマスクの第二のゾーンに対応する下部領域を製造する。それにより、レリーフ変調深さが表面区域全体で実質的に等しくなるよう、上部領域は上部レリーフ平坦域に実質的に位置し、下部領域は下部レリーフ平坦域に実質的に位置する。
【0033】
したがって、この方法の原理は、たとえば上述のMC技術によって利用可能であり、容易に入手可能であるように、異なる透明度の第一及び第二のゾーンの微細構造が使用され、マスクの(第一の)横方向において、第一のゾーンから第二のゾーンまで又はその逆に各20マイクロメートル以内に(平均で)少なくとも一つの移行部があり、好ましくはさらに、第一の方向に対して垂直であるマスクの第二の横方向において、第一のゾーンから第二のゾーンまで又はその逆に各200マイクロメートル以内に平均で少なくとも一つの移行部があり、第一の方向において移行部の横方向配設が非周期性であるということにまとめることができる。このMC技術の欠点又は制限は、そのような微細構造中に存在する二次元異方性トポロジーパターンのみを原則的に使用することにより、また、その二次元異方性トポロジーパターンを、はるかに明白かつ明確に構造化されたプロフィールを第三の次元、すなわち微細構造の平面に対して垂直な方向で生成するための「テンプレート」として使用することにより、回避される。この明白かつ明確なプロフィールとは、最後に生成される構造の上部領域が上部レリーフ平坦域に実質的に位置し、下部領域が下部レリーフ平坦域に実質的に位置することを意味する。
【0034】
極端な場合、これは、二次元異方性トポロジーパターン、基本的には、たとえばMC技術によって利用可能であるような微細構造中のカットが第三の次元に沿って投影されて、この二次元トポロジーをそのとおりに有する上部平坦域及びこの二次元トポロジーのネガを有する下部平坦域が得られ、それらの間に垂直移行部が得られるようにすることを意味する。なおも本発明の範囲内であるさほど極端ではないケースは、たとえば、以下に説明するメリット関数Mによって特徴付けられるような第三の次元に沿った特定の二頂性分布を特徴とすることができる。
【0035】
本方法の好ましい実施態様にしたがうと、マスクの異なる透明度の第一及び第二のゾーンの微細構造は以下のステップによって創製される。まず、トポロジー的に構造化された波形面構造を有する膜をマスク材料の層に被着させる。次に、波形面の下ゾーンの膜の材料が除去され、下にあるマスク材料の一部が露呈するまで膜の厚さを減らす。その後、マスクの露呈部分を除去する。
【0036】
本発明はまた、上記で概説した要素の好ましい使用に関する。好ましくは、当該要素は、安全保障装置における安全保障要素として使用される。安全保障装置は、安全保障書類に適用することもできるし、その中に組み込むこともできる。安全保障書類は、たとえば、銀行券、パスポート、免許証、株券及び債券、クーポン、小切手、クレジットカード、証明書、チケットなどである。安全保障装置はさらに、ブランド又は製品保護装置として適用することもできるし、それらに組み込むこともでき、包装のための手段、たとえば包装紙、包装箱、封筒などに組み込むこともできる。有利には、安全保障装置は、タグ、安全保障ストリップ、ラベル、繊維、糸、積層体又はパッチなどの形態をとることができる。
【0037】
本発明の重要な態様は、関連する光学効果が表面レリーフ変調界面から生じるものであるため、光学的に有効な表面レリーフ微細構造を適切な複製技術で複製することができることである。したがって、ひとたびマスタが利用可能になるならば、標準的な複製技術を適用してそのような装置を適当なコストで量産することが可能である。今日、二つの好評かつ費用効果的な複製技術はUVエンボス加工及び熱間エンボス加工である(たとえば、Microelectronic Engineering, Vol. 34, page 321 (1997)のM. T. Gale: "Replication techniques for diffractive optical elements"を参照)。
【0038】
好ましい実施態様にしたがって、光学的に有効な表面レリーフ微細構造は一つの材料で製造される。しかし、強い色反射を得るために、本発明の表面レリーフ微細構造は通常、反射性材料、たとえばアルミニウム、金、クロム、銅又は類似材料でコーティングされる。
【0039】
特に安全保障用途の場合、表面レリーフ微細構造は、機械的衝撃、汚染に対して装置を保護し、そのような装置の、権限のない非合法な複製品の製造を防ぐためにシールされなければならない。適切な保護及びパシベーション膜は、透明な誘電体又は装置の色外観をさらに高めることができる特定の吸収挙動を有する材料である。
【0040】
本発明の要素はまた、高解像度イメージ、グラフィカルコンポーネント、マイクロテキスト及び類似した特徴を保持することができる。色外観は通常、視角感応性であり、大きな視角では無色イメージに転じるかもしれない。イメージ画素の散乱性は、既定の方向に顕著な散乱が起こるようにチューニングすることができる。そのような挙動を有する画素が生成され、相応に配設されるならば、装置を傾動又は回転させたとき顕著なポジ・ネガイメージフリップが起こる。
【0041】
さらには、たとえば黄色、オレンジ色、バラ色、紫色、青色及び緑色の浅めから深めまでの変調から広い色パレットを得ることができる。さらに深い構造の場合、より高次の色が出現することができる。
【0042】
添付図面によって本発明をさらに説明する。様々な特徴が必ずしも原寸に比例して描かれてはいないことを強調しておく。
【0043】
発明の詳細な説明
図3に、本発明の表面レリーフ微細構造12の一例が、12マイクロメートル×12マイクロメートルの原子間力顕微鏡法(AFM)イメージの三次元画像として示されている。微細構造は、のちに記載する方法にしたがって製造したものである。
【0044】
表面変調が上部領域13から下部領域14までの移行部を構築する。上部領域13及び下部領域14の幅、ひいては平坦域の幅は通常、200ナノメートル〜約20マイクロメートルの範囲にある。表面変調が異方性であるということが可能であり、多くの用途の場合、必要条件である。これは、たとえば、図3に示す微細構造にも当てはまる。微細構造は溝状の下部領域を有し、この領域が実質的にY軸に沿って延びて、表面変調がY軸に対して平行な異方性軸を有するようになっている。異方性変調の場合、本発明の表面レリーフ微細構造の上部及び下部領域の横方向寸法は、第一の横方向において、下部領域から上部領域まで又はその逆に各20マイクロメートル以内に平均で少なくとも一つの移行部があり、第一の方向に対して垂直である表面区域の第二の横方向において、上部領域から下部領域まで又はその逆に各200マイクロメートル以内に少なくとも一つの移行部があるという事実によって説明することができる。
【0045】
図3で、第一の方向は、溝に対して直角の方向に対応し、第二の方向は、溝に沿う方向に対応する。したがって、前記第二の方向、すなわち、たとえば溝に対して平行なもう一つの横方向において、移行部は、はるかに大きく離間していてもよいし、微細構造全体に延びる溝の場合には移行部がなくてもよい。
【0046】
表面レリーフ微細構造は反射面を形成することができる。反射面は、たとえば、微細構造を覆う薄い金属膜、たとえばアルミニウム、クロムなどで製造することができる。あるいはまた、異なる屈折率を有する材料に対する移行部によって反射を生じさせることもできる。微細構造の表面は、空気に面することもできるし、たとえば、誘電体で覆われることもできる。また、装置の色外観を高めるために、カバー媒体が特定の色に対して吸収性であってもよい。
【0047】
本発明の表面レリーフ微細構造の好ましい実施態様では、表面区域の第一の横方向において、隣接する移行部どうしの間の平均横方向距離は、上部領域から下部領域まで又はその逆に、0.5マイクロメートル〜10マイクロメートルの範囲にある。有利には、平均横方向距離は0.5マイクロメートル〜5マイクロメートルの範囲にある。有利には、第一の横方向に対して垂直である第二の横方向において、移行部どうしの間の平均距離は、上部領域から下部領域まで、100マイクロメートル未満、より有利には50マイクロメートル未満である。
【0048】
光学変調深さは、好ましくは100ナノメートル〜1000ナノメートルの範囲にあり、より好ましくは100ナノメートル〜500ナノメートルの範囲にある。本発明に関連して、光学変調深さは、機械的レリーフ変調深さと表面変調を埋める材料の屈折率との積である。
【0049】
本発明の表面レリーフ微細構造は非常に特異的な表面変調を特徴とする。
【0050】
第一に、上部領域から下部領域まで及び下部領域から上部領域までの移行部の横方向配設が非周期性である。これは、たとえば光学格子及びホログラフィー表面構造とは特に対照的である。
【0051】
第二に、レリーフ変調深さが表面区域全体で実質的に等しくなるよう、上部領域は同じ上部レリーフ平坦域に実質的に位置し、下部領域は同じ下部レリーフ平坦域に実質的に位置している。図3では、上部及び下部レリーフ平坦域は、手前の部分に点線15及び16で示されている。図示する例では、レリーフ変調深さ(又は平坦域間の距離)は約290ナノメートルである。この第二の特徴、いわば「二頂性」変調が、上記導入部分で記載したMC技術に基づく既知の微細構造と特に対照的である。
【0052】
当業者には、様々な等方性及び異方性散乱特性を有する多様な天然及び人造面が存在するということが周知である。等方性散乱面のよく知られる例は、たとえば照明システムで使用されるすりガラスである。このような散乱ガラスは、特定の方位散乱方向を優先することなく光を透過又は反射させる。
【0053】
異方性表面レリーフ構造に基づく光学装置は、好ましい方位方向への光散乱又は回折を優先する。一次元ディフューザがこのクラスの光学装置に属する。それらの表面レリーフz(x,y)は、一つの横座標、たとえばxのみに依存する。したがって、表面レリーフ異方性軸は、他方の横座標、たとえばyに対して平行である。z−x面で伝搬する光はz−x面で散乱する。異方性光学散乱装置の他の例が上述のWO−01/29148及びWO−2006/007742に記載されている。これらに異方性散乱装置は、異方性であり、主として長細い溝又はパターン軸に対して主に垂直な光を散乱させる表面の溝又はパターンを有する。
【0054】
大部分の等方性及び異方性ディフューザは、照明システムで使用されるためのものであり、したがって、高い程度の無彩色性を保持する。これは、色外観を保持し、二つの散乱性表面レリーフ平坦域における散乱及び干渉に基づく本発明の光学装置とは対照的である。
【0055】
表面レリーフの異方性は、装置の輝度を高めることを可能にし、視角もしくは照射角に依存して、鮮明なグラフィカルデザイン、たとえばポジ・ネガフリップ又は動くグラフィカル要素の生成を可能にする。
【0056】
本発明のレリーフ微細構造を概略的に例示する可能な異方性表面レリーフパターンの例が図4.1、図4.2及び図4.3に示されている。各図では、二つの異方性表面レリーフ画素20/20’、21/21’及び22/22’が、それらの異方性軸が互いに対して90°回転した状態で示されている。異方性軸は、左の画素では垂直であり、右の画素では水平である。図4.1の異方性パターンは細長い長方形の溝23である。図4.2の異方性パターンは、細長い丸みを帯びた長方形の隆起部24である。図4.3の異方性パターンは細長いライン溝である。視認された光は基本的に細い溝又は隆起部で散乱又は回折する。本発明の他の異方性表面レリーフパターンは、本明細書中、以下に示す例から集めることができる。
【0057】
このタイプの構造をさらに説明するために、本発明に関して、「表面レリーフアスペクト比(SRAR)」を、異方性表面レリーフパターンの幅に対する長さの平均比と定義する。SRARは、表面レリーフ微細構造で散乱する光の方位光学的外観を強く決定する。少なくとも二つの横方向で平均して同じ長さを示す表面レリーフパターンに対応するSRAR=1の場合、入射光の散乱特性は、その光の方位入射角とはほとんど無関係である。したがって、SRAR=1のレリーフ構造の表面から反射する光の強さは、その表面レリーフ微細構造を含む要素がその要素の表面に対して垂直な軸に沿って回転した場合でもほとんど変化しない。
【0058】
SRAR>1を意味する異方性レリーフ構造の場合、反射光の強さは光の方位入射角に依存する。方位入射角に対するこの依存性を視認することができるよう、SRARは1.1よりも大きいべきである。異なる異方性軸を有する表面レリーフ構造のパターンのイメージセットアップの視覚的コントラストを高めるために、2よりも大きいSRAR値が好ましい。さらに好ましいものは、5よりも大きいSRAR値である。
【0059】
非常の大きいSRAR値の場合、有意な量の光が散乱して進入する方位角の範囲はますます小さくなり、それが、表面レリーフパターンで作られたイメージからの反射光を認識することをより困難にする。したがって、本発明の目的は、表面から反射する光の光学的外観がコントラスト及び可視性方位角範囲の点で最適化されるような表面レリーフ微細構造を設計するためにチューニングすることができるパラメータを提供することである。したがって、好ましい実施態様では、SRARは、50未満、より好ましくは20未満である。
【0060】
さらには、本発明の表面レリーフ微細構造の好ましい実施態様を、表面レリーフの適切に選択された横特性及び深さ特性によって幾何学的に特徴付けることができることがわかった。これらの特性を以下に説明する。これらの特性は、実際の表面から、好ましくはAFMイメージに基づいて決定することができる。
【0061】
一つの特性は、表面レリーフが強い相関関係を有しない、すなわち、短い自己相関距離を特徴とするという事実である。
【0062】
非周期性又は非確定的表面プロフィールを特徴付けるのに有用なパラメータは、自己相関関数及び関連する自己相関距離である。表面プロフィールの一次元又は二次元自己相関関数は、平面中で距離xによって空間的に隔てられた二つの点に関する表面プロフィールの予測精度の測度と理解することができる。
【0063】
表面レリーフ微細構造プロフィールのような関数P(x)の自己相関関数AC(x)は次のように規定することができる。
【0064】
【数2】
【0065】
自己相関関数及び対応するプログラミング問題に関するさらなる詳細は、たとえば、「Numerical recipes in C: the art of scientific computing / William H. Press; Saul A. Teukolsky; William T. Vetterling; Brian P. Hannery. - Cambridge; New York: Cambridge University Press, 1992」に見ることができる。イメージ処理におけるパターン認識のための自己相関関数の応用は、たとえば、「Digital image processing / William K. Pratt. - New York: Wiley, 2001」で論じられている。
【0066】
非周期性又は非確定的表面プロフィールの場合、自己相関関数はxの増大とともに急速に減衰する。他方、たとえば格子で見られる確定的表面プロフィールの場合、自己相関は減衰しない。しかし、格子の場合、自己相関関数は周期関数とともに変調する。また、ほぼ周期性の格子の場合、包絡線がxの増大とともに減衰する。
【0067】
一次元自己相関関数を用いて、一つの特性数として自己相関距離Lを規定することができる。これが、自己相関関数の包絡線が特定のしきい値まで減衰する場合の長さである。この目的には、AC(x=O)の10%のしきい値が適当であることが証明された。
【0068】
自己相関距離Lを規定するためには、さらなるパラメータとして溝間平均距離Pが規定される。本発明の微細構造の自己相関距離は、Pの単位で特定の値よりも小さくなければならない。
【0069】
したがって、本発明の表面レリーフ微細構造の好ましい実施態様は、異方性表面変調の場合で異方性軸に対して垂直な方向である少なくとも一つの方向における表面レリーフが、自己相関距離の範囲内でx=0におけるACの10%まで減衰する包絡線を有する平均化一次元自己相関関数AC(x)を有し、自己相関距離が上部及び下部領域の隣接する移行部どうしの間の平均横方向距離の3倍よりも小さいということを特徴とする。
【0070】
より好ましいものは、自己相関距離が上部及び下部領域の隣接する移行部どうしの間の平均横方向距離の2倍よりも小さい表面レリーフ微細構造である。さらに好ましいものは、自己相関距離が上部及び下部領域の隣接する移行部どうしの間の平均横方向距離の1倍よりも小さい表面レリーフ微細構造である。
【0071】
もう一つの好ましい実施態様で、自己相関距離(L)は、上部及び下部領域の隣接する移行部どうしの間の平均横方向距離の1/100よりも大きい。
【0072】
異方性散乱表面変調を有する本発明の表面レリーフ微細構造の場合、異方性軸は、たとえば、適切なAFMイメージ又は誘導された自己相関関数に基づいて見いだすことができる。そして、異方性軸に対して垂直な軸に沿って一次元自己相関関数を評価し、最終的に平均化して、平均化一次元自己相関関数が得られるようにしなければならない。この平均化一次元自己相関関数から、包絡線及び自己相関距離Lを決定する。
【0073】
表面レリーフ微細構造の上記の幾何学的特性決定を以下の二つの例によってさらに説明する。第一の例は、従来技術で周知の表面ホログラムの表面レリーフ微細構造である。対応するAFMイメージ及び自己相関関数が図5.1、5.2及び5.3に示されている。第二の例は、本発明の表面レリーフ微細構造であり、それに関して対応するAFMイメージ及び自己相関関数が図6.1、6.2及び6.3に示されている。
【0074】
図5.1は、表面ホログラムの表面レリーフ微細構造の15μm×15μmのAFMイメージを示す。図5.2には、図5.1のAFMイメージの二次元自己相関関数が示されている。明らかなように、AFMイメージ中に見られる乱れた可視格子がイメージ区域全体ですべての方向に相関している。AFMイメージ又は二次元自己相関関数から異方性軸を決定することができる。
【0075】
異方性軸に対して垂直な線に沿って評価される平均化水平一次元自己相関関数が図5.3に示されている。自己相関関数30は、ハッチングした曲線31によって示される包絡線を有する。図示する七つの横方向溝間距離(自己相関関数のピーク)の範囲内で、包絡線は位置0での自己相関関数の10%未満まで減衰しないということが見てとれる。したがって、10%までの包絡線の減衰によって規定される自己相関距離は、七つの横方向溝間距離よりも相当に大きい、図5.1に示す表面ホログラムに関するものである。
【0076】
次に、本発明の表面レリーフ微細構造の15μm×15μmのAFMイメージが図6.1に示され、対応する二次元自己相関関数が図6.2に示されている。図6.2の中心の自己相関関数の速やかな減衰から、本発明の微細構造がわずかにしか相関しないということが注目されることは興味深い。
【0077】
図6.1のAFMイメージから、本発明の微細構造の下部領域が、垂直方向に延びる溝の形態を有するということが見てとれる。したがって、異方性軸は垂直である。
【0078】
図6.3では、曲線34は、異方性軸に対して垂直な線に沿って評価される、図6.1の表面レリーフ微細構造の平均化水平一次元自己相関関数を表す。先の例の従来技術微細構造とは対照的に、この場合の一次元自己相関関数は急勾配で下降し、その包絡線は関数そのものと事実上一致している。したがって、包絡線は速やかに10%未満に減衰し、対応する自己相関距離Lは横方向溝間距離一つ分よりも小さい。
【0079】
本発明の表面レリーフ微細構造のもう一つの特性は二つの顕著な表面レリーフ平坦域である。これらの性質は、好ましい実施態様に関して、表面レリーフの高さ(又は深さ)ヒストグラムに基づく関数によって定量化することができる。
【0080】
理想的には、本発明の要素は、特徴的な平坦域間距離によって隔てられた平坦な上部及び下部領域で作られた純粋な二つの高さレベル系であろう。そのような光学要素で散乱した光は、二つのタイプの散乱光線、すなわち、上部領域で散乱する光線及び下部領域で散乱する光線を発生させる。これら二つの光線は干渉し合い、それにより、結果的に色効果を生じさせる。
【0081】
しかし、現実には、製造プロセスが、望ましい又は望ましくない不規則性を生じさせ、それにより、上部及び下部領域ならびに平坦域間距離を不明確にする。したがって、表面レリーフ微細構造の高さヒストグラムは、表面レリーフを特徴付けし、望ましい平坦域を可視化するのに良好な統計的手段であるかもしれない。ヒストグラムは、たとえば、適切なAFMイメージから導出することができる。関連する数学的処理は、大部分の数学ソフトウェア又は最新のイメージ処理ソフトウェアに含まれている。
【0082】
本発明の表面レリーフ微細構造は二つの顕著な表面レリーフ平坦域を保持するため、二つの顕著なピークがヒストグラム中に見られるはずである。これを図7.1及び7.2でさらに説明する。
【0083】
図7,1は、すでに図3に示した本発明の微細構造のAFMイメージであり、図7.2は、対応するヒストグラムを示す。二つの顕著なピークが明確に認められる。
【0084】
表面レリーフ微細構造のもう一つの特性を定量化するために、表面レリーフ充填ファクタを導入する。本発明に関連して、表面レリーフ充填ファクタは、すべての上部及び下部領域の積分面積に対する上部領域の合計面積の比と定義される。良好及び最良の光学性能のためには、通常、上部領域と下部領域とが概ね同じ合計面積を有することが有利であるかもしれない。換言するならば、上部領域と下部領域とは互いに均衡するべきであり、それは、表面レリーフ充填ファクタが0.5に近いべきであることを意味する。これは、同じサイズの二つのピークを有するヒストグラムに対応する。図7.1に示す微細構造の場合、図7.2に示すヒストグラム中にわずかな非対称性が見られる。下部領域の合計面積が上部領域の合計面積よりもわずかに小さい。
【0085】
一般に、本発明の表面レリーフ微細構造の表面レリーフ充填ファクタは非常に広い範囲に入ることができる。好ましくは、表面レリーフ充填ファクタは、0.05〜0.95、好ましくは0.2〜0.8である。より好ましくは、表面レリーフ充填ファクタは0.3〜0.7又は0.4〜0.6である。
【0086】
さらには、高さヒストグラムに基づくメリット関数が、顕著な表面レリーフ平坦域を特徴付けるのに有用であることができる。考えられるメリット関数Mは以下である。
【0087】
【数3】
【0088】
メリット関数Mは、ピーク幅とレリーフ変調深さとの関係を使用する。平坦域の周囲における上部及び下部領域の偏差の範囲は、レリーフ変調深さの規定の部分内にあるべきである。△x1及び△x2は、全ピーク高さの高さ1/eのところで計測した二つのヒストグラムピークの幅であり、eは、自然対数の基数であり(e≒2.72)、dは、二つのピークの距離(平均平坦域間距離又はレリーフ変調深さに一致する)である。△x1、△x2及びdは図7.2に示されている。
【0089】
通常、高さヒストグラムのような評価の場合、dの値よりも少なくとも50倍小さい、好ましくはdの値よりも少なくとも100倍小さい、第三の次元のサンプリング幅を選択する。
【0090】
本発明の表面レリーフ微細構造の好ましい実施態様は、2よりも大きいメリット関数Mを有する。より好ましくは、Mは3.5よりも大きい。
【0091】
図7.1及び7.2の微細構造は、たとえば、概ね4.0のメリット関数Mを有する。
【0092】
本発明はさらに、上記のような表面レリーフ微細構造を有する要素を製造する方法に関する。
【0093】
一般に、方法は二つの主なステップを使用する。第一のステップで、異なる透明度の第一及び第二のゾーンの微細構造を有し、少なくとも一つの横方向において、第一のゾーンから第二のゾーンまで又はその逆に各200マイクロメートル以内に少なくとも一つの移行部があり、移行部の横方向配設が非周期性であるマスクを生成する。
【0094】
第二のステップで、そのマスクを用いて、樹脂又はレジストの表面をレリーフ微細構造化して、マスクの第一のゾーンに対応する上部領域及びマスクの第二のゾーンに対応する下部領域を製造して、レリーフ変調深さが表面区域全体で実質的に等しくなるよう、上部領域が上部レリーフ平坦域に実質的に位置し、下部領域が下部レリーフ平坦域に実質的に位置するようにする。
【0095】
通常、マスクは、構造化暴露プロセス、たとえばフォトリソグラフィー又はエッチングプロセスに使用することができる金属マスクである。
【0096】
普通、第一及び第二のゾーンの一方は完全に透明であり、たとえばマスク中の穴であり、他方は非透明であり、たとえば金属マスクの不透明材料で製造されている。しかし、当業者は、具体的な暴露プロセスに依存して、異なる透明度のゾーンを有するマスク(たとえばハーフトーンマスク又はグレースケールマスク)を使用してもよいことを理解するであろう。
【0097】
マスクの透明な方のゾーン及び透明でない方のゾーンの配設は、等方性表面レリーフ微細構造の製造の場合には等方性になり、異方性表面レリーフ微細構造の製造の場合には異方性になる。
【0098】
記載した方法の第一ステップで使用するためのマスクを製造するための好ましい方法では、トポロジー的に構造化された波形面構造を製造するための既知の技術を使用して、異なる透明度の第一及び第二のゾーンの微細構造を生成する。
【0099】
一つのそのような技術は、架橋性材料と非架橋性材料との混合物の相分離及び架橋に基づく。トポロジー的に構造化された波形面構造は、少なくとも一つが架橋性であり、少なくとも他の一つが非架橋性である少なくとも二つの材料の混合物を製造し、その混合物を基材に塗布し、可溶性材料の少なくとも実質的な部分を架橋させ、非架橋性材料の少なくとも実質的な部分を除去することによって得られる。異方性にしなければならない微細構造の場合、架橋中に、たとえば下にある延伸層又は延伸性基材面によって架橋性材料を延伸状態に維持することができる。
【0100】
より具体的には、適当なマスクを製造するのに有用なトポロジー的に構造化された波形面構造は、たとえば以下の方法で製造することができる。第一ステップで、薄いフォトアライメント膜を適当な基材にコーティングする。パターン付き線偏光UV光を用いて、たとえば一つ以上のフォトマスク及び繰返し露光(又は1ステップでパターン付き照射を生じさせるフォトマスク又は偏光マスクを用いる1回の露光又はレーザスキャン法など)を使用して、潜パターン又は潜像をこの薄いフォトアライメント膜に書き込む。このフォトアライメント技術のより詳細な説明は、たとえば、米国特許第5389698号に見ることができる。露光したフォトポリマーは、液晶混合物及び架橋性液晶プレポリマーを整列させる能力を有する。第二ステップで、パターン付きアライメント層を架橋性液晶材料と非架橋性液晶材料とのブレンドでコーティングする。そして、この液晶ブレンドを、好ましくは化学放射線(UV光)に暴露することによって架橋させる。このプロセスが液晶プレポリマーの相分離及び架橋を誘発する。その後、非架橋材料を、たとえば適切な溶媒を使用して除去して、異方性表面構造を有する波形薄膜が得られるようにする。微細な波形薄膜の基本製造原理及び光学的挙動は、たとえば国際特許出願WO−A−01/29148及びWO−A−2004/027500に開示されている。このような異方性表面構造を有する波形薄膜の製造に関して、WO−A−01/29148及びWO−A−2004/027500の開示を明示的に本明細書に取り込む。
【0101】
たとえば上記方法によって生成したトポロジー的に構造化された波形面構造を有する膜は、異なる透明度の第一及び第二のゾーンのマスク微細構造を製造するために使用することができる。このためには、そのような膜をマスク材料、たとえばクロムの層に被着させる。次いで、たとえばプラズマエッチングにより、波形面の下ゾーンの膜の材料が除去され、下にあるマスク材料の一部が露呈するまで膜の厚さを減らす。最後に、マスクの露呈部分をたとえばウェットエッチングによって除去する。
【0102】
記載した方法以外に、他の技術を使用して、表面レリーフ微細構造を有する要素を製造するための本発明の方法のためのマスクを製造することもできる。
【0103】
また、微細波形薄膜を調製するための上記プロセスの代替として、他にも公知の自己集合微細及びナノ構造化技術があり、それらを使用することもできる。とりわけ、たとえばコポリマーにおける自己組織化又はディウェッティングがある。
【0104】
可能な手法は、電子ビームライタを使用することである。そのようなライタのビーム径が非常に狭いレジスト露光区域を生じさせ、位置決めをナノメートルラスタでさえ実施することができる。
【0105】
また、さらには、金属又は半導体、たとえばアルミニウム又はケイ素の電気分解的エッチングが多孔質の微細及びナノ構造化面を生じさせる。
【0106】
次に、本発明をさらに説明するいくつかの実施例を記載する。
【0107】
すべての実施例において、異なる透明度の第一及び第二のゾーンの微細構造を有するマスクとして金属マスクを使用した。そのようなマスクの生成は、フォトリソグラフィーマスク又はドライエッチングマスクとして働く。
【0108】
実施例1
図8.1〜8.5は、表面レリーフ微細構造を有する要素を製造するための本発明の方法に適した、異なる透明度の第一及び第二のゾーンの微細構造を有するマスクの生成を示す。
【0109】
金属層42でコーティングされているガラス又はプラスチックプレート41が基材として働く。金属層の場合、コーティング厚さ10〜50ナノメートルのアルミニウム、クロムなどの金属が好都合に使用されている。
【0110】
金属層42の上に、トポロジー的に構造化された波形面構造を有する膜43を被着させる(図8.2)。膜43は、上述の、かつWO−A−01/29148及びWO−A−2004/027500に開示されている手順にしたがって製造したものである。局所的に、微細構造は等方性又は異方性であることができる。パターン付きアライメントにより、イメージ、グラフィカル作成物、マイクロテキストなどを膜の波形面に記すことが可能である。
【0111】
次に、膜43をプラズマエッチングして、下にある金属膜の一部が露呈するようにする(図8.3)。この処理は、標準的な酸素プラズマを使用して実施することができる。その結果、膜43の厚さを、金属層42が当初の膜43の上ゾーン43’の材料のみによって部分的に覆われるまでに減らす。
【0112】
次のステップで、適切なエッチング液を使用して、部分的に露呈した金属層42をウェットエッチングする(図8.4)。このプロセスにより、金属層42には、膜43の波形面の下ゾーンに対応する特異的に微細構造化された穴44が設けられる。したがって、これが、表面レリーフ微細構造を有する要素を製造するために本発明の方法で使用することができるマスクを構築する。必要ならば、残った層の上の膜43の残留材料43’をたとえば酸素プラズマによって除去することができる(図8.5)。
【0113】
実施例2
図9.1〜9.3には、実施例1の微細構造化マスクを次のステップで使用して、本発明の光学的に有効な表面レリーフ微細構造を有する表面区域を有する要素を製造する方法が示されている。
【0114】
ガラス又はプラスチックの基材48をポジフォトレジストの層49でコーティングする(図9.1)。たとえば、ShipleyのS1800シリーズフォトレジストが非常に適している。塗布されるレジスト層49の厚さが、表面レリーフ微細構造によって最終的に発される色を決定する。典型的なレジスト厚さは100ナノメートル〜500ナノメートルであるが、より厚い層もまた可能である。レジストのタイプに依存して、ベーキング、たとえばホットプレート上で110℃で1分間のベーキングが必要になるかもしれない。
【0115】
次に、プレート41上に調製された微細構造化金属マスク42をフォトレジスト層49に押し付け、紫外線光源50に暴露する(図9.2)。光源としては、たとえば、Dr. Hoenle, Germanyによる紫外線設備「Bluepoint 2」を使用することができる。
【0116】
露光時間は、現像後、良好な二頂性表面プロフィール、すなわち、二つの顕著な表面レリーフ平坦域51及び52を有するプロフィールが生じるようなやり方で調節する(図9.3)。
【0117】
ポジフォトレジストの代わりにネガフォトレジストを同様なプロセスで使用することもできることが理解されよう。
【0118】
本発明の良好な表面レリーフ微細構造がこの技術で得られた。金属マスクを多数回使用することができ、現像を含むフォトリソグラフィーステップが数分程度であるため、速やかな製造が可能である。微細構造はそれ自体で光学要素として使用することができるが、好ましくは、複製技術におけるマスタとして使用される。
【0119】
現在の技術水準のトポロジー的に構造化された波形面構造との間で全体の定性的比較を可能にするため、WO−A−01/29148及びWO−A−2004/027500にしたがって、実施例2にしたがって製造した構造を用いて、そのような現在の技術水準のトポロジー的に構造化された波形面構造に対応する上記膜43の光学的特性を実施例2の最終結果と比較し、表1にまとめる。
【0120】
【表1】
【0121】
実施例3
実施例2に記載した方法に代えて、他の手法を試験した。金属マスクの上にフォトレジスト層を適切な膜厚さで直接コーティングすることによって良好な結果を得ることができる。
【0122】
図10.1では、ここでもまた、プレート41上に調製された微細構造化金属マスク42が示され、今回は、図10.2で見てとれるように、フォトレジスト層55でコーティングされる。微細構造化金属マスクを上に有する基材の背面からUV暴露を実施する。
【0123】
次のステップで、微細構造化フォトレジストが生じるようなフォトレジスト現像を実施した。この場合にも、フォトリソグラフィープロセスのためにポジ又はネガフォトレジストを使用することもできる。図10.3は、得られた微細構造化フォトレジスト層55をポジレジストとともに示し、図10.4は、得られた微細構造化フォトレジスト層55をネガレジストとともに示す。
【0124】
実施例4
図11.1及び11.2を参照して、本発明の光学的に有効な表面レリーフ微細構造を有する表面区域を有する要素を製造するさらなる方法を説明する。
【0125】
基材として、ガラスプレート59をエッチング性材料、たとえば架橋性プレポリマーの層60でコーティングする。あるいはまた、ポリマー基材、たとえばプレキシグラスをさらなるコーティングなしで直接使用することもできる。
【0126】
次いで、実施例1に記載した方法にしたがって、基材の上に微細構造化金属マスク61を生成する(図11.1)。
【0127】
次のステップで、装置を、プラズマイオンが金属マスクの穴を貫通するようなドライエッチングに付した。酸素が適当なプラズマエッチング媒体である。ポリマー及び金属のエッチング選択性は非常に高い。したがって、ナノメートル厚さの金属ゾーンでさえ酸素プラズマによって攻撃され、微細又はナノ溝を生成することができる。プラズマエッチングの期間が下部領域の深さ、ひいては最終的な色外観を決定する。ガラスが基材として選択されるならば、ガラスは、エッチングの停止材料として働くこともできる。
【0128】
最後に、適当なウェットエッチング溶液を用いるウェットエッチングによって金属マスクを除去する。
【0129】
実施例5
前述のように、本発明の光学的に有効な表面レリーフ微細構造を有する表面区域を有する要素は、複製技術のためのマスタとして使用することができる。たとえば、実施例1〜4の方法にしたがって調製された要素が適当である。調製後、マスタの表面にある残留金属ゾーンを取り除くために、要素を短期間ウェットエッチング浴に暴露することができる。
【0130】
すると、微細構造化マスタは、金属シムの生成のために準備ができる。これは、薄い出発金属層、たとえば金、銀などを被着させたのち、ニッケルをガルバニック被着させることによって実施される。そして、このニッケルシムを使用して、適当な薄膜ポリマー材料への熱間エンボス加工によって、又は適当なUV硬化性材料へのUV注型成形によって複製を製造する。
【0131】
さらには、微細構造化複製物をアルミニウム又は類似金属で金属コーティングして良好な反射面を製造することができる。これは、特に、複製物が安全保障装置として適用される場合に当てはまる。
【0132】
最後に、装置を誘電性パシベーション膜で保護することもできるし、後で製品に適用するのに適した接着剤で直接コーティングすることもできる。このようにして、微細構造の表面変調を誘電体で埋める。
【0133】
上記方法に基づく反射装置は基本的にモノクローム反射を示す。調製に依存して、試料を傾けたときに色の変化が認められることもある。しかし、これらの装置の一つの特徴は、虹色が認められないこと及び、したがって、標準的なホログラムとは有意に異なるということである。
【0134】
実施例6
また、異なる表面レリーフ微細構造を有する二つ以上の区域を一つの要素に合わせる又は混合することが当然可能である。このより複雑なタイプの要素は、たとえばマルチカラーイメージを生成することを可能にし、それらの複雑さのおかげで、より高いレベルの安全保障を有することができる。
【0135】
図12.1〜12.4には、本発明の異なる表面レリーフ微細構造を有する二つの区域を有する要素を製造する方法の例が概説されている。
【0136】
ガラス又はプラスチックのプレート65及びエッチング性材料の層66を含む基材に対し、上記プロセスステップにしたがって微細構造化金属膜67をコーティングする(図12.1)。ここでもまた、適当なポリマーコーティングを有するガラスもしくはプラスチックプレート又はポリマープレート、たとえばPPMA(プレキシグラス)を使用することができる。
【0137】
次に、調製した基材の表面に1回目のプラズマエッチングを適用する。エッチング深さが最初の最終的に出現する色を決定する(図12.2)。
【0138】
次に、ここまで生成した表面レリーフ微細構造をポジフォトレジストの層68でコーティングし、特定区域69をUV光に暴露する。フォトレジストを現像することにより、区域69中の露光したレジスト材料を洗い流す(図12.3)。
【0139】
ここで、区域68中にすでに存在する微細構造を第二のエッチングステップでさらにエッチングすることができる(図12.4)。さらなるエッチングステップは深さを増し、区域68中の微細構造の色を決定する。その結果、異なる光学的に有効な表面レリーフ微細構造を有する二つの区域69及び70を有する要素が提供される。
【0140】
望むならば、一部の区域をカバーし、残りの露呈区域をエッチングする前記ステップを繰り返して、異なる微細構造を有する三つ以上の区域を提供することもできる。
【0141】
使用されるマスクは、10マイクロメートルを優に下回る画素サイズを保持する非常に高い解像度で達成することができる。したがって、色及び画素配設の適当な選択が、加法混色に基づくイメージの生成をも可能にする。
【0142】
実施例7
本発明の表面レリーフ微細構造はまた、反射性又は部分反射性にすることもできる。対応する実施例が図13.1及び13.2に示されている。
【0143】
一般に、強い色反射のためには、微細構造を反射性材料、たとえばアルミニウム、金、クロム、銅などの薄い層71でコーティングする。そのような膜71の厚さが、高反射性又は部分反射性の装置を得ることができるような反射及び透過の程度を決定する。
【0144】
層71のために部分反射性の金属膜を使用する代わりに、高又は低屈折率コーティングを使用することもできる。高屈折率材料の例はZnS、ZnSe、ITO又はITO2である。また、高屈折率材料のナノ粒子を含む複合材料が適当であるかもしれない。
【0145】
あるいはまた、微細構造を高反射性材料で部分的にコーティングすることにより、たとえばはじめに微細構造全体をコーティングし、次にコーティングを部分的に除去して微細構造全体の一部だけが反射性材料で覆われるようにすることにより、部分反射性装置を得ることもできる。これは、反射性材料の層71’が特定の部分72で途切れている図13.2に示されている。
【0146】
また、図13.1及び13.2には、装置の色出現をさらに高めるために、たとえば、特定の吸収挙動を有する透明な誘電体である保護及びパシベーション膜73が示されている。
【0147】
実施例8
本発明の表面レリーフ微細構造の光学挙動を実証するために、図14.1及び14.2に、例示的な要素の反射スペクトルが示されている。要素は、実施例4の方法(微細構造化金属マスクのエッチング)にしたがって、約20ナノメートルの最終的な薄膜アルミニウムコーティングを含めて製造し、約1.5の屈折率の透明なパシベーション膜を介して計測した。
【0148】
光学挙動は、この場合は緑である要素の散乱性非正反射色をもっとも明確な特徴とする。
【0149】
様々な照射角及び検出器角で反射スペクトルを測定することにより、製造した様々な例示的な要素を特性決定した。使用した分光光度計は、Perkin Elmer Lambda 900であり、調節可能な試料角及び調節可能な検出器角で反射スペクトルを計測することを可能にするPela 1030オプションを装備したものであった。300〜800ナノメートルの波長範囲で典型的な反射スペクトルを計測した。記載した計測のために特別な偏光装備は使用しなかった。鏡面反射ジオメトリ(入力角=出力角又は検出器角=試料角×2)の場合に相当する上述の正反射の場合に例外的な照射及び検出器条件が存在する。
【0150】
例示的な要素の反射スペクトルが図14.1に示されている。照射角又は試料角SAは30°である。この角度は、図中左上の挿絵で示すように、基材表面から照射垂直面までの角度の逸脱である。検出器角DAは、同じく左上の挿絵で示すように、照射方向と検出器方向との間の角度である。
【0151】
反射スペクトルは、525ナノメートルでの強い反射最大値、350ナノメートルでのもう一つの最大値及び400ナノメートルでの最小値を示す。これらの顕著な最大値及び最小値が、反射光の良好な色飽和の原因である。最大反射は、正反射から20°ずれている40°の検出器角で達成されている。30°及び50°の検出器角の場合、反射光輝度の低下が見られ、この場合、それに伴う波長シフトはあまり大きくない。
【0152】
正反射光は非正反射光とは異なる。正反射は飽和マゼンタ色に見える。対応する反射スペクトルが図14.2に示されている。正反射計測の場合、検出器角DAは試料角SAの2倍である。ここでもまた、図14.1で見られる散乱反射の相補スペクトルにほぼ対応する顕著な変調がチャート中に見られる。これは、発生している散乱の最大部分が図14.1の計測で得られているということに注目することによって理解することができる。主要な色感応性散乱又は吸収チャネルが存在しないならば、正反射に関する相補スペクトルが残される。約4%のバックグラウンドが、本ケースではガラスである装置の保護用パシベーション層における無色性反射に対応する。また、図14.2に見てとれるように、正反射光の色スペクトルは装置の傾動に対して非常に非感応性である。
【0153】
実施例9
図15.1及び15.2は、本発明の要素のもう一つの例の反射スペクトルを示す。要素は、実施例4の方法にしたがって製造した。その散乱色はオレンジである。
【0154】
図15.1を参照すると、照射角又は試料角SAは30°である。反射スペクトルは、583ナノメートルでの強い反射最大値、380ナノメートルでのもう一つの最大値及び453ナノメートルでの最小値を示す。これらの最大値及び最小値が明るいオレンジ色の反射光の原因である。最大反射は、正反射から20°ずれている40°の検出器角DAで達成されている。50°の検出器角の場合、反射光輝度の低下が認められ、それに伴う波長シフトは約30ナノメートルである。
【0155】
同じ例示的な要素の正反射が図15.2に示されている。ここでもまた、図15.1で見られる散乱反射の相補スペクトルにほぼ対応する顕著な変調が見られる。しかし、586ナノメートルでの最小値はあまり顕著ではなく、反射光の飽和度があまり高くないことを意味している。視認される装置色は不飽和青である。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1.1】等方性構造化面における光反射の図である。
【図1.2】異方性散乱面における反射からの特徴的な出力光分散を示す、図1.1に類似した図である。
【図2】異なる異方性方向延伸を有する画素を示す。
【図3】本発明の表面レリーフ微細構造の三次元図(AFMイメージ)を示す。
【図4.1】可能な異方性表面レリーフパターンの代表例を示す。
【図4.2】可能な異方性表面レリーフパターンの代表例を示す。
【図4.3】可能な異方性表面レリーフパターンの代表例を示す。
【図5.1】従来技術の表面ホログラム微細構造のAFMイメージを示す。
【図5.2】図5.1のAFMイメージの二次元自己相関関数を示す。
【図5.3】異方性軸に対して垂直な図5.1のAFMイメージの平均化水平一次元自己相関関数を示す。
【図6.1】本発明の異方性表面レリーフ微細構造のAFMイメージを示す。
【図6.2】図6.1のAFMイメージの二次元自己相関関数を示す。
【図6.3】異方性軸に対して垂直な図6.1のAFMイメージの平均化水平一次元自己相関関数を示す。
【図7.1】図3に示す微細構造のAFMイメージである。
【図7.2】図3及び図7.1に示す微細構造の高さヒストグラムを示す。
【図8.1】表面レリーフ微細構造を有する要素を製造するための本発明の方法に適したマスクの生成を示す。
【図8.2】表面レリーフ微細構造を有する要素を製造するための本発明の方法に適したマスクの生成を示す。
【図8.3】表面レリーフ微細構造を有する要素を製造するための本発明の方法に適したマスクの生成を示す。
【図8.4】表面レリーフ微細構造を有する要素を製造するための本発明の方法に適したマスクの生成を示す。
【図8.5】表面レリーフ微細構造を有する要素を製造するための本発明の方法に適したマスクの生成を示す。
【図9.1】本発明の光学的に有効な表面レリーフ微細構造を有する表面区域を有する要素を製造するための接触フォトリソグラフィーのための図8.5のマスクの使用を示す。
【図9.2】本発明の光学的に有効な表面レリーフ微細構造を有する表面区域を有する要素を製造するための接触フォトリソグラフィーのための図8.5のマスクの使用を示す。
【図9.3】本発明の光学的に有効な表面レリーフ微細構造を有する表面区域を有する要素を製造するための接触フォトリソグラフィーのための図8.5のマスクの使用を示す。
【図10.1】本発明の要素を製造するためのフォトリソグラフィーの異なる手法を示す。
【図10.2】本発明の要素を製造するためのフォトリソグラフィーの異なる手法を示す。
【図10.3】本発明の要素を製造するためのフォトリソグラフィーの異なる手法を示す。
【図10.4】本発明の要素を製造するためのフォトリソグラフィーの異なる手法を示す。
【図11.1】金属マスクを介する直接エッチングを使用する、本発明の要素を製造するためのさらに別の手法を示す。
【図11.2】金属マスクを介する直接エッチングを使用する、本発明の要素を製造するためのさらに別の手法を示す。
【図12.1】異なる表面レリーフ微細構造を有する二つの区域を有する要素を製造する方法を概説する。
【図12.2】異なる表面レリーフ微細構造を有する二つの区域を有する要素を製造する方法を概説する。
【図12.3】異なる表面レリーフ微細構造を有する二つの区域を有する要素を製造する方法を概説する。
【図12.4】異なる表面レリーフ微細構造を有する二つの区域を有する要素を製造する方法を概説する。
【図13.1】反射性又は部分反射性に作られる、本発明の表面レリーフ微細構造の例を示す。
【図13.2】反射性又は部分反射性に作られる、本発明の表面レリーフ微細構造の例を示す。
【図14.1】本発明の緑色反射性微細構造化要素の非正反射及び正反射スペクトルを示す。
【図14.2】本発明の緑色反射性微細構造化要素の非正反射及び正反射スペクトルを示す。
【図15.1】本発明のもう一つのオレンジ色反射性微細構造化要素の非正反射及び正反射スペクトルを示す。
【図15.2】本発明のもう一つのオレンジ色反射性微細構造化要素の非正反射及び正反射スペクトルを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学的に有効な表面レリーフ微細構造(12)を有する少なくとも一つの表面区域を有する要素であって、
表面レリーフ微細構造が上部領域(13)から下部領域(14)まで及び下部領域(14)から上部領域(13)までの移行部の表面変調を有し、
少なくとも表面区域の一つの横方向において、上部領域(13)から下部領域(14)まで又はその逆に各20マイクロメートル以内に少なくとも一つの移行部があり、
(i)移行部の横方向配設が非周期性であり、
(ii)レリーフ変調深さが表面区域全体で実質的に等しくなるよう、上部領域(13)が上部レリーフ平坦域(15、51)に実質的に位置し、下部領域が下部レリーフ平坦域(16、52)に実質的に位置することを特徴とする要素。
【請求項2】
少なくとも表面区域の一つの横方向において、隣接する移行部どうしの間の平均横方向距離が上部領域(13)から下部領域(14)まで又はその逆に0.2マイクロメートル〜10マイクロメートルの範囲にある、請求項1記載の要素。
【請求項3】
隣接する移行部どうしの間の平均横方向距離が0.2マイクロメートル〜5マイクロメートルの範囲にある、請求項2記載の要素。
【請求項4】
表面区域の第一の横方向において、上部領域(13)から下部領域(14)まで又はその逆に各20マイクロメートル以内に、好ましくは0.2マイクロメートル〜10マイクロメートルの範囲に、より好ましくは0.2マイクロメートル〜5マイクロメートルの範囲に平均で少なくとも一つの移行部があり、第一の方向に対して垂直である前記表面区域の第二の横方向において、上部領域から下部領域まで又はその逆に各200マイクロメートル以内に平均で少なくとも一つの移行部があり、少なくとも第一の横方向において移行部の横方向配設が非周期性である、請求項1〜3のいずれか記載の要素。
【請求項5】
表面区域の第二の横方向において、上部領域から下部領域まで又はその逆に各100マイクロメートル以内に少なくとも一つの移行部がある、請求項4記載の要素。
【請求項6】
表面区域の第二の横方向において、上部領域から下部領域まで又はその逆に各50マイクロメートル以内に少なくとも一つの移行部がある、請求項4記載の要素。
【請求項7】
レリーフ変調深さと表面変調を充填する材料の屈折率との積として定義される光学変調深さが、100ナノメートル〜1000ナノメートルの範囲にある、請求項1〜6のいずれか1項記載の要素。
【請求項8】
光学変調深さが100ナノメートル〜500ナノメートルの範囲にある、請求項7記載の要素。
【請求項9】
表面レリーフ微細構造(12)が異方性である、請求項1〜8のいずれか1項記載の要素。
【請求項10】
1.1よりも大きい表面レリーフアスペクト比を有する、請求項9記載の要素。
【請求項11】
表面レリーフアスペクト比が2よりも大きい、請求項10記載の要素。
【請求項12】
表面レリーフアスペクト比が5よりも大きい、請求項10記載の要素。
【請求項13】
表面レリーフアスペクト比が50未満である、請求項1〜12のいずれか記載の要素。
【請求項14】
表面レリーフアスペクト比が20未満である、請求項1〜13のいずれか記載の要素。
【請求項15】
表面レリーフ微細構造が、異方性表面変調の場合には異方性軸に対して垂直の方向である少なくとも一つの方向において、自己相関距離(L)内でx=0におけるACの10%まで減衰する包絡線(31)を有する平均化一次元自己相関関数AC(x)を有し、自己相関距離(L)が、上部領域(13)及び下部領域(14)の隣接する移行部どうしの間の平均横方向距離の2倍よりも小さい、請求項1〜14のいずれか1項記載の要素。
【請求項16】
自己相関距離(L)が、上部領域(13)及び下部領域(14)の隣接する移行部どうしの間の平均横方向距離の1倍よりも小さい、請求項15記載の要素。
【請求項17】
自己相関距離(L)が、上部領域(13)及び下部領域(14)の隣接する移行部どうしの間の平均横方向距離の1/100よりも大きい、請求項15〜16のいずれか1項記載の要素。
【請求項18】
表面レリーフ充填ファクタを有し、表面レリーフ充填ファクタが、0.050〜0.95の範囲、好ましくは0.2〜0.8の範囲、さらに好ましくは0.3〜0.7の範囲にある、請求項1〜17のいずれか1項記載の要素。
【請求項19】
表面レリーフ充填ファクタが0.4〜0.6の範囲にある、請求項18記載の要素。
【請求項20】
表面レリーフ微細構造の高さヒストグラムが第一及び第二の顕著なピークを有して、メリット関数
【数1】
(式中、△x1は、全ピーク高さの高さ1/eのところで計測した第一のピークの幅であり、△x2は、全ピーク高さの高さ1/eのところで計測した第二のピークの幅であり、dは二つのピークの距離である)
を規定することができ、メリット関数Mが2よりも大きい、請求項1〜19のいずれか1項記載の要素。
【請求項21】
メリット関数Mが3.5よりも大きい、請求項20記載の要素。
【請求項22】
光学的に有効な表面レリーフ微細構造を有する複数の表面区域のパターンを有する、請求項1〜21のいずれか1項記載の要素。
【請求項23】
パターンが、異なる異方性方向延伸を有する異方性表面レリーフ微細構造を有する表面区域の少なくとも二つのタイプを含む、請求項22記載の要素。
【請求項24】
パターンが、異なる光学変調深さを有する表面レリーフ微細構造を有する少なくとも二つのタイプの表面区域を含む、請求項22記載の要素。
【請求項25】
パターンがイメージを表す、請求項22〜24のいずれか1項記載の要素。
【請求項26】
パターンがイメージの一部を表す、請求項22〜24のいずれか1項記載の要素。
【請求項27】
表面レリーフ微細構造が反射材料でコーティングされている、請求項1〜26のいずれか1項記載の要素。
【請求項28】
表面レリーフ微細構造が誘電体の層でコーティングされている、請求項1〜27のいずれか1項記載の要素。
【請求項29】
請求項1〜28のいずれか1項記載の光学的に有効な表面レリーフ微細構造を有する少なくとも一つの表面区域を有する要素を含む安全保障装置。
【請求項30】
請求項1〜28のいずれか1項記載の要素を担持する物品であって、好ましくは銀行券、パスポート、免許証、株券及び債券、クーポン、小切手、クレジットカード、証明書、チケットから選択され、安全保障装置が、タグ、安全保障ストリップ、ラベル、繊維、糸、積層体又はパッチの形態をとることができる物品。
【請求項31】
光学的に有効な表面レリーフ微細構造を有する少なくとも一つの表面区域を有する要素を製造する方法であって、
異なる透明度の第一及び第二のゾーンの微細構造を有し、少なくとも一つの横方向、好ましくは第一の横方向において、第一のゾーンから第二のゾーンまで又はその逆に各20マイクロメートル以内に好ましくは平均で少なくとも一つの移行部があり、好ましくは、第一の方向に対して垂直である第二の横方向において、第一のゾーンから第二のゾーンまで又はその逆に各200マイクロメートル以内に平均で少なくとも一つの移行部があり、好ましくは第一の方向において移行部の横方向配設が非周期性であるマスクを創製すること、
マスクを用いて、樹脂又はレジスト(49、55、60、66)の表面にレリーフ微細構造を生成して、マスクの第一のゾーンに対応する上部領域(13)及びマスクの第二のゾーンに対応する下部領域(14)を製造し、レリーフ変調深さが表面区域全体で実質的に等しくなるよう、上部領域(13)が上部レリーフ平坦域(15、51)に実質的に位置し、下部領域(14)が下部レリーフ平坦域(16、52)に実質的に位置するようにすること
を含む方法。
【請求項32】
マスクの異なる透明度の第一及び第二のゾーンの微細構造が、
トポロジー的に構造化された波形面構造を有する膜(43)をマスク材料の層(42)に被着させ、
波形面の下ゾーンの膜の材料が除去され、下にあるマスク材料の一部(44)が露呈するまで膜(43)の厚さを減らし、
マスクの露呈部分(44)を除去する
ことによって創製される、請求項31記載の方法。
【請求項33】
トポロジー的に構造化された波形面構造が、少なくとも一つが架橋性であり、少なくとも他の一つが非架橋性である少なくとも二つの材料の混合物を製造し、その混合物をマスク材料の層に塗布し、架橋性材料の少なくとも実質的な部分を架橋させ、非架橋性材料の少なくとも実質的な部分を除去することによって製造される、請求項32記載の方法。
【請求項34】
架橋性材料が架橋中に延伸状態に維持される、請求項33記載の方法。
【請求項35】
請求項1〜28のいずれか記載の要素を製造するための、請求項31〜34の1項記載の方法。
【請求項36】
請求項27〜30のいずれか記載のプロセスを使用することによって得られる要素。
【請求項37】
請求項31〜34のいずれか記載のプロセスを使用することによって得られる要素。
【請求項38】
請求項1〜28のいずれか1項記載の光学的に有効な表面レリーフ微細構造を有する少なくとも一つの表面区域を有する要素の、安全保障装置における安全保障要素としての使用。
【請求項39】
安全保障装置が、銀行券、パスポート、免許証、株券及び債券、クーポン、小切手、クレジットカード、証明書、チケットのような安全保障書類に塗布される又はそれらに組み込まれ、安全保障装置が、タグ、安全保障ストリップ、ラベル、繊維、糸、積層体又はパッチの形態をとることができる、請求項38記載の使用。
【請求項40】
安全保障装置が、ブランド又は製品保護装置として塗布される又はそれらに組み込まれ、安全保障装置が、タグ、安全保障ストリップ、ラベル、繊維、糸、積層体又はパッチの形態をとることができる、請求項38記載の使用。
【請求項41】
安全保障装置が、包装のための手段、たとえば包装紙、包装箱、封筒に塗布される又はそれらに組み込まれ、安全保障装置が、タグ、安全保障ストリップ、ラベル、繊維、糸、積層体又はパッチの形態をとることができる、請求項38記載の使用。
【請求項42】
請求項1〜28のいずれか1項記載の光学的に有効な表面レリーフ微細構造を有する少なくとも一つの表面区域を有する要素の、装飾用途のための使用。
【請求項1】
光学的に有効な表面レリーフ微細構造(12)を有する少なくとも一つの表面区域を有する要素であって、
表面レリーフ微細構造が上部領域(13)から下部領域(14)まで及び下部領域(14)から上部領域(13)までの移行部の表面変調を有し、
少なくとも表面区域の一つの横方向において、上部領域(13)から下部領域(14)まで又はその逆に各20マイクロメートル以内に少なくとも一つの移行部があり、
(i)移行部の横方向配設が非周期性であり、
(ii)レリーフ変調深さが表面区域全体で実質的に等しくなるよう、上部領域(13)が上部レリーフ平坦域(15、51)に実質的に位置し、下部領域が下部レリーフ平坦域(16、52)に実質的に位置することを特徴とする要素。
【請求項2】
少なくとも表面区域の一つの横方向において、隣接する移行部どうしの間の平均横方向距離が上部領域(13)から下部領域(14)まで又はその逆に0.2マイクロメートル〜10マイクロメートルの範囲にある、請求項1記載の要素。
【請求項3】
隣接する移行部どうしの間の平均横方向距離が0.2マイクロメートル〜5マイクロメートルの範囲にある、請求項2記載の要素。
【請求項4】
表面区域の第一の横方向において、上部領域(13)から下部領域(14)まで又はその逆に各20マイクロメートル以内に、好ましくは0.2マイクロメートル〜10マイクロメートルの範囲に、より好ましくは0.2マイクロメートル〜5マイクロメートルの範囲に平均で少なくとも一つの移行部があり、第一の方向に対して垂直である前記表面区域の第二の横方向において、上部領域から下部領域まで又はその逆に各200マイクロメートル以内に平均で少なくとも一つの移行部があり、少なくとも第一の横方向において移行部の横方向配設が非周期性である、請求項1〜3のいずれか記載の要素。
【請求項5】
表面区域の第二の横方向において、上部領域から下部領域まで又はその逆に各100マイクロメートル以内に少なくとも一つの移行部がある、請求項4記載の要素。
【請求項6】
表面区域の第二の横方向において、上部領域から下部領域まで又はその逆に各50マイクロメートル以内に少なくとも一つの移行部がある、請求項4記載の要素。
【請求項7】
レリーフ変調深さと表面変調を充填する材料の屈折率との積として定義される光学変調深さが、100ナノメートル〜1000ナノメートルの範囲にある、請求項1〜6のいずれか1項記載の要素。
【請求項8】
光学変調深さが100ナノメートル〜500ナノメートルの範囲にある、請求項7記載の要素。
【請求項9】
表面レリーフ微細構造(12)が異方性である、請求項1〜8のいずれか1項記載の要素。
【請求項10】
1.1よりも大きい表面レリーフアスペクト比を有する、請求項9記載の要素。
【請求項11】
表面レリーフアスペクト比が2よりも大きい、請求項10記載の要素。
【請求項12】
表面レリーフアスペクト比が5よりも大きい、請求項10記載の要素。
【請求項13】
表面レリーフアスペクト比が50未満である、請求項1〜12のいずれか記載の要素。
【請求項14】
表面レリーフアスペクト比が20未満である、請求項1〜13のいずれか記載の要素。
【請求項15】
表面レリーフ微細構造が、異方性表面変調の場合には異方性軸に対して垂直の方向である少なくとも一つの方向において、自己相関距離(L)内でx=0におけるACの10%まで減衰する包絡線(31)を有する平均化一次元自己相関関数AC(x)を有し、自己相関距離(L)が、上部領域(13)及び下部領域(14)の隣接する移行部どうしの間の平均横方向距離の2倍よりも小さい、請求項1〜14のいずれか1項記載の要素。
【請求項16】
自己相関距離(L)が、上部領域(13)及び下部領域(14)の隣接する移行部どうしの間の平均横方向距離の1倍よりも小さい、請求項15記載の要素。
【請求項17】
自己相関距離(L)が、上部領域(13)及び下部領域(14)の隣接する移行部どうしの間の平均横方向距離の1/100よりも大きい、請求項15〜16のいずれか1項記載の要素。
【請求項18】
表面レリーフ充填ファクタを有し、表面レリーフ充填ファクタが、0.050〜0.95の範囲、好ましくは0.2〜0.8の範囲、さらに好ましくは0.3〜0.7の範囲にある、請求項1〜17のいずれか1項記載の要素。
【請求項19】
表面レリーフ充填ファクタが0.4〜0.6の範囲にある、請求項18記載の要素。
【請求項20】
表面レリーフ微細構造の高さヒストグラムが第一及び第二の顕著なピークを有して、メリット関数
【数1】
(式中、△x1は、全ピーク高さの高さ1/eのところで計測した第一のピークの幅であり、△x2は、全ピーク高さの高さ1/eのところで計測した第二のピークの幅であり、dは二つのピークの距離である)
を規定することができ、メリット関数Mが2よりも大きい、請求項1〜19のいずれか1項記載の要素。
【請求項21】
メリット関数Mが3.5よりも大きい、請求項20記載の要素。
【請求項22】
光学的に有効な表面レリーフ微細構造を有する複数の表面区域のパターンを有する、請求項1〜21のいずれか1項記載の要素。
【請求項23】
パターンが、異なる異方性方向延伸を有する異方性表面レリーフ微細構造を有する表面区域の少なくとも二つのタイプを含む、請求項22記載の要素。
【請求項24】
パターンが、異なる光学変調深さを有する表面レリーフ微細構造を有する少なくとも二つのタイプの表面区域を含む、請求項22記載の要素。
【請求項25】
パターンがイメージを表す、請求項22〜24のいずれか1項記載の要素。
【請求項26】
パターンがイメージの一部を表す、請求項22〜24のいずれか1項記載の要素。
【請求項27】
表面レリーフ微細構造が反射材料でコーティングされている、請求項1〜26のいずれか1項記載の要素。
【請求項28】
表面レリーフ微細構造が誘電体の層でコーティングされている、請求項1〜27のいずれか1項記載の要素。
【請求項29】
請求項1〜28のいずれか1項記載の光学的に有効な表面レリーフ微細構造を有する少なくとも一つの表面区域を有する要素を含む安全保障装置。
【請求項30】
請求項1〜28のいずれか1項記載の要素を担持する物品であって、好ましくは銀行券、パスポート、免許証、株券及び債券、クーポン、小切手、クレジットカード、証明書、チケットから選択され、安全保障装置が、タグ、安全保障ストリップ、ラベル、繊維、糸、積層体又はパッチの形態をとることができる物品。
【請求項31】
光学的に有効な表面レリーフ微細構造を有する少なくとも一つの表面区域を有する要素を製造する方法であって、
異なる透明度の第一及び第二のゾーンの微細構造を有し、少なくとも一つの横方向、好ましくは第一の横方向において、第一のゾーンから第二のゾーンまで又はその逆に各20マイクロメートル以内に好ましくは平均で少なくとも一つの移行部があり、好ましくは、第一の方向に対して垂直である第二の横方向において、第一のゾーンから第二のゾーンまで又はその逆に各200マイクロメートル以内に平均で少なくとも一つの移行部があり、好ましくは第一の方向において移行部の横方向配設が非周期性であるマスクを創製すること、
マスクを用いて、樹脂又はレジスト(49、55、60、66)の表面にレリーフ微細構造を生成して、マスクの第一のゾーンに対応する上部領域(13)及びマスクの第二のゾーンに対応する下部領域(14)を製造し、レリーフ変調深さが表面区域全体で実質的に等しくなるよう、上部領域(13)が上部レリーフ平坦域(15、51)に実質的に位置し、下部領域(14)が下部レリーフ平坦域(16、52)に実質的に位置するようにすること
を含む方法。
【請求項32】
マスクの異なる透明度の第一及び第二のゾーンの微細構造が、
トポロジー的に構造化された波形面構造を有する膜(43)をマスク材料の層(42)に被着させ、
波形面の下ゾーンの膜の材料が除去され、下にあるマスク材料の一部(44)が露呈するまで膜(43)の厚さを減らし、
マスクの露呈部分(44)を除去する
ことによって創製される、請求項31記載の方法。
【請求項33】
トポロジー的に構造化された波形面構造が、少なくとも一つが架橋性であり、少なくとも他の一つが非架橋性である少なくとも二つの材料の混合物を製造し、その混合物をマスク材料の層に塗布し、架橋性材料の少なくとも実質的な部分を架橋させ、非架橋性材料の少なくとも実質的な部分を除去することによって製造される、請求項32記載の方法。
【請求項34】
架橋性材料が架橋中に延伸状態に維持される、請求項33記載の方法。
【請求項35】
請求項1〜28のいずれか記載の要素を製造するための、請求項31〜34の1項記載の方法。
【請求項36】
請求項27〜30のいずれか記載のプロセスを使用することによって得られる要素。
【請求項37】
請求項31〜34のいずれか記載のプロセスを使用することによって得られる要素。
【請求項38】
請求項1〜28のいずれか1項記載の光学的に有効な表面レリーフ微細構造を有する少なくとも一つの表面区域を有する要素の、安全保障装置における安全保障要素としての使用。
【請求項39】
安全保障装置が、銀行券、パスポート、免許証、株券及び債券、クーポン、小切手、クレジットカード、証明書、チケットのような安全保障書類に塗布される又はそれらに組み込まれ、安全保障装置が、タグ、安全保障ストリップ、ラベル、繊維、糸、積層体又はパッチの形態をとることができる、請求項38記載の使用。
【請求項40】
安全保障装置が、ブランド又は製品保護装置として塗布される又はそれらに組み込まれ、安全保障装置が、タグ、安全保障ストリップ、ラベル、繊維、糸、積層体又はパッチの形態をとることができる、請求項38記載の使用。
【請求項41】
安全保障装置が、包装のための手段、たとえば包装紙、包装箱、封筒に塗布される又はそれらに組み込まれ、安全保障装置が、タグ、安全保障ストリップ、ラベル、繊維、糸、積層体又はパッチの形態をとることができる、請求項38記載の使用。
【請求項42】
請求項1〜28のいずれか1項記載の光学的に有効な表面レリーフ微細構造を有する少なくとも一つの表面区域を有する要素の、装飾用途のための使用。
【図1.1】
【図1.2】
【図2】
【図3】
【図4.1】
【図4.2】
【図4.3】
【図5.1】
【図5.2】
【図5.3】
【図6.1】
【図6.2】
【図6.3】
【図7.1】
【図7.2】
【図8.1】
【図8.2】
【図8.3】
【図8.4】
【図8.5】
【図9.1】
【図9.2】
【図9.3】
【図10.1】
【図10.2】
【図10.3】
【図10.4】
【図11.1】
【図11.2】
【図12.1】
【図12.2】
【図12.3】
【図12.4】
【図13.1】
【図13.2】
【図14.1】
【図14.2】
【図15.1】
【図15.2】
【図1.2】
【図2】
【図3】
【図4.1】
【図4.2】
【図4.3】
【図5.1】
【図5.2】
【図5.3】
【図6.1】
【図6.2】
【図6.3】
【図7.1】
【図7.2】
【図8.1】
【図8.2】
【図8.3】
【図8.4】
【図8.5】
【図9.1】
【図9.2】
【図9.3】
【図10.1】
【図10.2】
【図10.3】
【図10.4】
【図11.1】
【図11.2】
【図12.1】
【図12.2】
【図12.3】
【図12.4】
【図13.1】
【図13.2】
【図14.1】
【図14.2】
【図15.1】
【図15.2】
【公表番号】特表2009−536883(P2009−536883A)
【公表日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−508082(P2009−508082)
【出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【国際出願番号】PCT/CH2007/000227
【国際公開番号】WO2007/131375
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(596098438)ロリク アーゲー (22)
【氏名又は名称原語表記】ROLIC AG
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【国際出願番号】PCT/CH2007/000227
【国際公開番号】WO2007/131375
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(596098438)ロリク アーゲー (22)
【氏名又は名称原語表記】ROLIC AG
【Fターム(参考)】
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