説明

光学素子の製造方法、及び、光学素子の製造装置

【課題】光学素子の製造方法及び製造装置において、光学素子材料の位置決めを確実に行い、高精度な光学素子を製造する。
【解決手段】光学素子の製造方法は、下型3の上に配置された光学素子材料100に外周からガスGを吹き付けて、光学素子材料100を位置決めする位置決め工程と、位置決めされた光学素子材料100を加熱する加熱工程と、加熱された光学素子材料100を上型2及び下型3により加圧する加圧工程と、加圧された光学素子材料100を冷却する冷却工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子材料を位置決めして光学素子を製造する光学素子の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上下一対の成形型間で光学素子材料を加熱、加圧、冷却することによって、レンズ、プリズム、ミラー等の光学素子を製造する光学素子の製造方法が知られている。
例えば、上下一対の成形型間にガラス素材を搬送し径方向に伸縮自在な搬送部材によってガラス素材の位置を決め、光学素子の成形を行う方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、水平方向へ摺動可能なツメを有するガラス素材保持部材によりガラス素材を保持して加熱軟化させ、下型がガラス素材に接触する前に、下型の上昇に伴ってツメが開くことにより、ガラス素材を下型の成形面上に載置して上型と下型とで押圧成形する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、金型内にガラス素材を収容し、金型の型面上を進退可能な位置決め部材によってガラス素材を保持しつつ位置決めし、ガラス素材を位置決めの後に上下の金型で挟みこみ、成形を行う方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−43261号公報
【特許文献2】特開平9−124325号公報
【特許文献3】特許第4488311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の成形方法は、光学素子の成形を行う高温の温度域では、搬送部材の弾性が数回の使用で失われて伸縮しなくなるために、光学素材の位置決めが行われなくなるという欠点があった。
【0007】
また、特許文献2記載の成形方法は、上型と接触する前にガラス素材を下型で持ち上げるので、光学素材が偏り、成形後の光学素子が偏ったものになるという欠点があった。更には、ツメのバネ性が失われることで、光学素材の保持が行われなくなるという欠点があった。
【0008】
また、特許文献3記載の成形方法では、光学素材が固い状態では、上型が軽い場合に搬送時の振動で光学素材が位置ズレするという欠点があった。
更には、特許文献1〜3記載の成形方法は、位置決め部材等が光学素材に触れるために、光学素材に異物がついたり、キズが入ったりするという欠点があった。
【0009】
本発明の目的は、光学素子材料の位置決めを確実に行い、高精度な光学素子を製造することができる光学素子の製造方法及び製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の光学素子の製造方法は、下型の上に配置された光学素子材料に外周からガスを吹き付けて、上記光学素子材料を位置決めする位置決め工程と、位置決めされた上記光学素子材料を加熱する加熱工程と、加熱された上記光学素子材料を上型及び上記下型により加圧する加圧工程と、加圧された上記光学素子材料を冷却する冷却工程と、を含む。
【0011】
また、上記光学素子の製造方法において、上記下型の成形面は、凸型の球面形状若しくは非球面形状、又は平面形状を呈し、上記下型の上記成形面上に配置されたときの上記光学素子材料における上記成形面に対向する部分は、凸型の球面形状又は非球面形状を呈するようにしてもよい。
【0012】
また、上記光学素子の製造方法において、上記光学素子材料の中央部分が上記下型又は上記上型の成形面形状に変形し始めたとき以降に上記ガスの吹き付けを停止するようにしてもよい。
【0013】
また、上記光学素子の製造方法において、上記ガスは、加熱ガスであるようにしてもよい。
また、上記光学素子の製造方法において、上記位置決め工程は、上記光学素子材料の位置を検出する検出工程と、上記検出工程の検出結果に基づき上記ガスの吹き付け量を調整する工程と、を有するようにしてもよい。
【0014】
また、上記光学素子の製造方法において、上記位置決め工程では、上記光学素子材料の周囲に前記下型の中心軸を中心として均等に分散して設けられた3箇所以上の吹き付け位置から上記光学素子材料に上記ガスを吹き付けるようにしてもよい。
【0015】
本発明の光学素子の製造装置は、下型の成形面上に配置された光学素子材料に外周からガスを吹き付けて、上記光学素子材料を位置決めするガス吹き付け部と、上記光学素子材料を加熱する加熱部と、上型及び上記下型により上記光学素子材料を加圧する加圧部と、を備える。
【0016】
また、上記光学素子の製造装置において、上記光学素子材料の位置を検出する位置検出部と、上記位置検出部により検出された検出結果に基づき、上記ガス吹き付け部による上記ガスの吹き付け量を調整する吹き付け量調整部と、を備えるようにしてもよい。
【0017】
また、上記光学素子の製造装置において、上記ガス吹き付け部は、上記光学素子材料に上記ガスを吹き付ける吹き付け位置と、この吹き付け位置よりも上記光学素子材料から離れた後退位置と、に移動するようにしてもよい。
【0018】
また、上記光学素子の製造装置において、上記上型及び上記下型の外周には、スリーブが配置され、上記ガス吹き付け部は、上記吹き付け位置において上記スリーブを貫通してこのスリーブの内部空間に突出し、上記後退位置において上記スリーブの内部空間に突出しないようにしてもよい。
【0019】
また、上記光学素子の製造装置において、上記ガス吹き付け部は、上記光学素子材料の周囲に上記下型の中心軸を中心として均等に分散して3つ以上設けられているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、光学素子材料の位置決めを確実に行い、高精度な光学素子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1A】本発明の一実施の形態に係る光学素子の製造装置の要部を示す部分断面斜視図(その1)である。
【図1B】本発明の一実施の形態に係る光学素子の製造装置の要部を示す部分断面斜視図(その2)である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る光学素子の製造装置の要部を示す部分断面斜視図(その3)である。
【図3A】図2のA−A断面を模式的に表した、光学素子の製造装置を示す断面図(その1)である。
【図3B】図2のA−A断面を模式的に表した、光学素子の製造装置を示す断面図(その2)である。
【図3C】図2のA−A断面を模式的に表した、光学素子の製造装置を示す断面図(その3)である。
【図3D】図2のA−A断面を模式的に表した、光学素子の製造装置を示す断面図(その4)である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態に係る光学素子の製造方法及び製造装置について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1A及び図1B並びに図2は、本発明の一実施の形態に係る光学素子の製造装置の要部を示す部分断面斜視図である。
図3A〜図3Dは、図2のA−A断面を模式的に表した、光学素子の製造装置1を示す断面図である。
【0024】
図1A〜図3Aに示すように、光学素子の製造装置1は、対向して配置された上型2及び下型3と、スリーブ4と、ガス吹き付け部の一例である3本のガスパイプ5と、加熱部の一例であるヒータ6a,7aを有する上当接部材6及び下当接部材7と、加圧部の一例であるシリンダ駆動部8と、位置検出部9と、吹き付け量調整部10と、ガス供給部11と、を備える。
【0025】
上型2は、円柱形状を呈する。上型2の底面には、凸型の球面形状又は非球面形状を呈する成形面2aが形成されている。この成形面2aは、例えばガラス材料である光学素子材料100に凹型の球面形状又は非球面形状を転写する。上型2の上端には、フランジ部2bが形成されている。
【0026】
下型3は、円柱形状を呈する。下型3の上面には、平面形状を呈する成形面3aが形成されている。この成形面3aは、光学素子材料100に平面形状を転写する。下型3の下端には、フランジ部3bが形成されている。なお、平面形状とは、凹型でも凸型でもない形状をいい、粗面を含む。
【0027】
スリーブ4は、円筒形状を呈し、下型3のフランジ部3b上において上型2及び下型3の外周に配置されている。スリーブ4には、上型2及び下型3が挿入される。スリーブ4の内径は、例えば、スリーブ4の内周面と上型2及び下型3の外周面とが互いに摺動可能な大きさである。スリーブ4には、ガスパイプ5の後述する先端部5aに貫通される貫通孔4aが、光学素子材料100の図1A〜図2に示す周方向Dに120°間隔で3箇所に形成されている。
【0028】
3本のガスパイプ5は、それぞれ、先端部5aと、この先端部5bよりも大径の本体部5bと、を有している。3本のガスパイプ5は、光学素子材料100の周囲に下型3の中心軸(軸方向は上下方向)を中心として均等に分散して設けられている。3本のガスパイプ5は、例えば光学素子材料100の周方向Dに120°の間隔で分散して設けられている。なお、ガスパイプ5は、例えば180°以上の間隔を隔てずに分散して設けられるようにするとよい。3本のガスパイプ5の高さ位置は、例えば、全て同じである。
【0029】
ガスパイプ5は、例えば、先端部5aがスリーブ4を貫通してスリーブ4の内部空間(中空部分)に突出する吹き付け位置(図3A及び図3Bの位置P1)において、光学素子材料100に外周からガスGを吹き付け、光学素子材料100を位置決めする。ガスGは、例えば、不活性ガスである窒素ガスが加熱された加熱ガスである。
【0030】
なお、ガスパイプ5の吹き付け位置(P1)は、例えば、ガスパイプ5の本体部5bがスリーブ4の外周面に当接した位置である。また、ガスGを加熱ガスとする場合、ガスパイプ5が、その流路中に配置されてガスGを加熱するガス加熱部を有するようにしてもよいし、或いは、後述するガス供給部11がガスGを供給する時点で既にガスGが加熱されているようにしてもよい。
【0031】
ガスパイプ5は、シリンダやサーボモータなどの図示しない移動手段によって上記吹き付け位置(P1)と、この吹き付け位置(P1)よりも光学素子材料100から離れた後退位置(図3C及び図3Dの位置P2)とに移動(例えば、往復移動)する。
【0032】
なお、ガスパイプ5は、後退位置(P2)において、スリーブ4の内部空間に突出しないことが望ましく、スリーブ4の外部まで後退した位置としてもよい。
上当接部材6及び下当接部材7には、例えばそれぞれ3本のヒータ6a,7aが挿入されている。ヒータ6a,7aが昇温することで、上型2及び下型3を介した熱伝導により光学素材材料100が加熱される。
【0033】
上当接部材6は、上型2の上面に当接する。本実施の形態では、上型2は、上当接部材6に固定されている。
下当接部材7は、下型3の底面に当接する。本実施の形態では、下型3は、下当接部材7に固定されている。
【0034】
シリンダ駆動部8は、上当接部材6に連結され、この上当接部材6を上下動させる。後述する加圧工程においては、シリンダ駆動部8は、上当接部材6を下降させて、上型2及び下型3により光学素子材料100を加圧する。
【0035】
位置検出部9は、例えば、光学センサ等のセンサ或いは撮像部であり、上型2が光学素子材料100上に配置される前に光学素子材料100の上方から、或いは、スリーブ4に設けられた孔を通して外周から、光学素子材料100の位置を検出する。
【0036】
吹き付け量調整部10は、例えば、光学素子の製造装置1の制御装置であり、位置検出部9により検出された検出結果に基づき、ガス供給部11によるガスGの供給量を調整することで、ガス供給部11に連結されたガスパイプ5によるガスGの吹き付け量を調整する。
【0037】
ガスGの吹き付け量の調整は、光学素子材料100が中央に移動するように、例えば、各ガスパイプ5のガスGの吹き付け量を増減させるか、或いは、一部のガスパイプ5のガスGの吹き付けを停止するとよい。
【0038】
以下、本実施の形態に係る光学素子の製造方法について、上述の説明と重複する点については適宜省略しながら説明する。
図3Aに示すように、ガスパイプ5は、スリーブ4を貫通してスリーブ4の内部空間に突出する吹き付け位置(P1)に配置されている。また、ガスパイプ5は、例えば、下型3の成形面3a上に光学素子材料100が配置される前から、ガスGを吐出する。
【0039】
なお、下型3の成形面3aは、平面形状を呈し、この成形面3a上に配置されたときの光学素子材料100は、例えば球体又は楕円球体であり、光学素子材料100における成形面3aに対向する部分は凸型の球面形状又は非球面形状を呈する。
【0040】
そして、ガスパイプ5は、光学素子材料100が下型3の上に配置された後も、ガスGを吐出し続け、光学素子材料100に外周からガスを吹き付けて、光学素子材料100を例えば下型3の成形面3aの中央などの所望の位置に位置決めする(位置決め工程)。
【0041】
この位置決め工程では、位置検出部9が光学素子材料100の位置を検出し(検出工程)、その検出結果に基づき、光学素子材料100が所望の位置に位置決めされるように、吹き付け量調整部10がガスGの吹き付け量を調整する。
【0042】
次に、図3Bに示すように、シリンダ駆動部8は、上型2を下降させ、光学素子材料100に当接させる。これにより、光学素子材料100が上型2及び下型3により挟持される。
【0043】
そして、光学素子材料100は、吹き付けられたガスGにより或いは上当接部材6及び下当接部材7のヒータ6a,7aからの熱伝導により、例えばガラス転移点以上の温度になるまで加熱される(加熱工程)。
【0044】
ガスパイプ5は、図3Cに示すように、光学素子材料100の底面中央部分100a及び上面中央部分100bの少なくとも一方が例えば加熱により或いは上型2の下降により、下型3の成形面3a形状に変形し始めたとき(即ち、光学素子材料100と下型3又は上型2の接触が点接触から面接触になったとき)に或いはそれよりも後にガスGの吹き付けを停止し、後退位置(P2)に後退する。
【0045】
なお、上型2と下型3との偏心精度が高ければ、光学素子材料100に上型2又は下型3からの横方向への力がかからず、光学素子材料100が下型3上を転がらないので、底面中央部分100a及び上面中央部分100bの一方のみが下型3の成形面3a形状に変形し始めたとき以降にガスGの吹き付けを停止してもよい。
【0046】
図3Dに示すように、シリンダ駆動部8は、加熱された光学素子材料100を、上型2及び下型3により加圧する(加圧工程)。
加圧された光学素子材料100は、例えば、ヒータ6a,7aの温度が降下することにより、例えばガラス転移点以下の温度になるまで冷却される(冷却工程)。
【0047】
冷却された光学素子材料100は、上型2及び下型3から離型し、スリーブ4内から取り出される。これにより、例えばガラスレンズである光学素子が得られる。
【0048】
以上説明した本実施の形態では、光学素子の製造方法は、下型3の上に配置された光学素子材料100に外周からガスGを吹き付けて、光学素子材料100を位置決めする位置決め工程と、光学素子材料100を加熱、加圧、及び冷却する加熱工程、加圧工程、及び冷却工程と、を含む。
【0049】
そのため、光学素子材料100の位置決めを確実に行うことができる。また、この位置決めにより光学素子の偏心精度を高めることができる。更には、非接触で光学素子材料100を位置決めすることができるため、光学素子にキズ等の欠陥が生じるのを抑えることができる。
【0050】
よって、本実施の形態によれば、光学素子材料100の位置決めを確実に行い、高精度な光学素子を製造することができる。
【0051】
また、本実施の形態では、下型3の成形面3aは、平面形状(後述するが、又は凸型の球面形状若しくは非球面形状)を呈し、下型3の成形面3a上に配置されたときの光学素子材料100における成形面3aに対向する部分は、凸型の球面形状又は非球面形状を呈する。そのため、光学素子材料100の位置が安定しない状況において、光学素子材料100の位置決めを有効に行うことができる。
【0052】
また、本実施の形態では、光学素子材料100の中央部分(底面中央部分100a又は上面中央部分100b)が下型3又は上型2の成形面2a,3a形状に変形し始めたとき以降にガスGの吹き付けを停止する。そのため、光学素子材料100の位置決めをより確実に行うことができる。
【0053】
また、本実施の形態では、ガスGは、加熱ガスである。そのため、光学素子材料100を外周から均等に加熱することができ、より高精度な光学素子を製造することができる。更には、加熱工程を短時間で行うことができ、光学素子の製造サイクルタイムを短縮することもできる。
【0054】
また、本実施の形態の位置決め工程は、例えば位置検出部9により光学素子材料100の位置を検出する検出工程と、この検出工程の検出結果に基づき例えば吹き付け量調整部10がガスGの吹き付け量を調整する工程と、を有する。そのため、光学素子材料100の位置決めをより確実に行うことができる。
【0055】
また、本実施の形態の位置決め工程では、光学素子材料100の周囲に下型3の中心軸を中心として均等に分散して設けられた3箇所以上の吹き付け位置(ガス吹き付け部の一例であるガスパイプ5)から光学素子材料100にガスGを吹き付ける。そのため、光学素子材料100の位置決めをより確実に行うことができる。なお、ガスGを吹き付ける圧力の方向は、水平方向が望ましいが、機械の取り付け誤差により水平方向のみに吹き付けることが困難な場合がある。このような場合には、(1)複数の吹き付け位置からのガス吹き付け圧力の水平方向のベクトルが、光学素子材料100と下型3との摩擦力よりも小さく、且つ、(2)複数の吹き付け位置からのガス吹き付け圧力の鉛直方向のベクトルの合計が、光学素子材料100の質量よりも小さければ、光学素子材料100が浮上することは無い。従って、上記のようにガスGを吹き付けることで、光学素子材料100の位置決めを行うことができる。また、例えば、複数の吹き付け位置からのガス吹き付け圧力の鉛直方向のベクトルが下向きとなっても、複数の吹き付け位置からの水平方向のベクトルの合計が、上述した摩擦力よりも小さければ位置決めは可能である。この場合、鉛直方向の合成ベクトルが下向きだと光学素子材料100が転がり易くなるため、ガス吹き付け圧力の制御と、最初に光学素子材料100を下型3の上に配置する際の中心位置合わせとを、より高精度に行うことが望ましい。
【0056】
また、本実施の形態では、ガスパイプ(ガス吹き付け部)5は、光学素子材料100にガスGを吹き付ける吹き付け位置P1と、この吹き付け位置P1よりも光学素子材料100から離れた後退位置P2と、に移動する。そのため、ガスパイプ5は、吹き付け位置P1において、少量のガスGで位置決めを行うことができ、後退位置P2において、光学素子材料100、上型2、又は下型3との干渉を防ぐことができる。
【0057】
また、本実施の形態では、ガスパイプ(ガス吹き付け部)5は、吹き付け位置P1においてスリーブ4を貫通してこのスリーブ4の内部空間に突出し、後退位置P2においてスリーブ4の内部空間に突出しない。
【0058】
なお、ガスパイプ(ガス吹き付け部)5は、光学素子材料100の周方向Dに移動可能であれば1本とすることもでき、このように移動させない場合でも対向する2本とすることができる。しかしながら、光学素子材料100の周方向Dに分散して、好ましくは180°以上の間隔を隔てずに分散して3つ以上設けられていることが望ましい。
【0059】
また、本実施の形態では、位置検出部9が光学素子材料100の位置を検出し、吹き付け量調整部10がガスGの吹き付け量を調整しているが、位置を検出せずに各ガスパイプ5から一定量のガスGを光学素子材料100に吹き付けることでも、光学素子材料100の位置決めは可能である。
【0060】
また、本実施の形態では、ガスパイプ5は、吹き付け位置(P1)及び後退位置(P2)に移動するが、光学素子材料100、上型2、及び下型3に干渉しない位置からガスGを吹き付ける場合には、ガスパイプ5を後退させなくともよい。
【0061】
また、スリーブ4には、ガスパイプ5により吐出されるガスGの排気孔を形成してもよいが、スリーブ4と上型2との隙間からガスGを排気することも可能である。
また、スリーブ4を省略することも可能である。
【0062】
また、本実施の形態では、下型3の成形面3aは、平面形状を呈するが、凸型の球面形状又は非球面形状を呈する場合にも、光学素子材料100が下型3上で移動してしまうため、上述の位置決め工程が特に必要となる。上型2の成形面2aの形状は、凸型でなく、凹型又は平面形状であってもよい。
【0063】
また、本実施の形態では、上型2及び下型3が上当接部材6又は下当接部材7に固定される場合を例に説明したが、上型2及び下型3を有する型セットが、加熱、加圧、又は冷却が行われる各ステージに順次移送される場合には、上当接部材6及び下当接部材7には、上型2又は下型3が固定されない。そして、この場合、ガスパイプ5は、後退位置(P2)において、スリーブ4の外側まで後退することになる。
【符号の説明】
【0064】
1 光学素子の製造装置
2 上型
2a 成形面
2b フランジ部
3 下型
3a 成形面
3b フランジ部
4 スリーブ
4a 貫通孔
5 ガスパイプ(ガス吹き付け部)
5a 先端部
5b 本体部
6 上当接部材
6a ヒータ(加熱部)
7 下当接部材
7a ヒータ(加熱部)
8 シリンダ駆動部(加圧部)
9 位置検出部
10 吹き付け量調整部
11 ガス供給部
100 光学素子材料
100a 底面中央部分
100b 上面中央部分
D 光学素子材料の周方向
G ガス(加熱ガス)
P1 吹き付け位置
P2 後退位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下型の上に配置された光学素子材料に外周からガスを吹き付けて、前記光学素子材料を位置決めする位置決め工程と、
位置決めされた前記光学素子材料を加熱する加熱工程と、
加熱された前記光学素子材料を上型及び前記下型により加圧する加圧工程と、
加圧された前記光学素子材料を冷却する冷却工程と、を含む、光学素子の製造方法。
【請求項2】
前記下型の成形面は、凸型の球面形状若しくは非球面形状、又は平面形状を呈し、
前記下型の前記成形面上に配置されたときの前記光学素子材料における前記成形面に対向する部分は、凸型の球面形状又は非球面形状を呈する、請求項1記載の光学素子の製造方法。
【請求項3】
前記光学素子材料の中央部分が前記下型又は前記上型の成形面形状に変形し始めたとき以降に前記ガスの吹き付けを停止する、請求項1又は請求項2記載の光学素子の製造方法。
【請求項4】
前記ガスは、加熱ガスである、請求項1から請求項3のいずれか1項記載の光学素子の製造方法。
【請求項5】
前記位置決め工程は、
前記光学素子材料の位置を検出する検出工程と、
前記検出工程の結果に基づき前記ガスの吹き付け量を調整する工程と、を有する、請求項1から請求項4のいずれか1項記載の光学素子の製造方法。
【請求項6】
前記位置決め工程では、前記光学素子材料の周囲に前記下型の中心軸を中心として均等に分散して設けられた3箇所以上の吹き付け位置から前記光学素子材料に前記ガスを吹き付ける、請求項1から請求項5のいずれか1項記載の光学素子の製造方法。
【請求項7】
下型の成形面上に配置された光学素子材料に外周からガスを吹き付けて、前記光学素子材料を位置決めするガス吹き付け部と、
前記光学素子材料を加熱する加熱部と、
上型及び前記下型により前記光学素子材料を加圧する加圧部と、を備える、光学素子の製造装置。
【請求項8】
前記光学素子材料の位置を検出する位置検出部と、
前記位置検出部により検出された検出結果に基づき、前記ガス吹き付け部による前記ガスの吹き付け量を調整する吹き付け量調整部と、を備える、請求項7記載の光学素子の製造装置。
【請求項9】
前記ガス吹き付け部は、前記光学素子材料に前記ガスを吹き付ける吹き付け位置と、該吹き付け位置よりも前記光学素子材料から離れた後退位置と、に移動する、請求項7又は請求項8記載の光学素子の製造装置。
【請求項10】
前記上型及び前記下型の外周には、スリーブが配置され、
前記ガス吹き付け部は、前記吹き付け位置において前記スリーブを貫通して該スリーブの内部空間に突出し、前記後退位置において前記スリーブの内部空間に突出しない、請求項9記載の光学素子の製造装置。
【請求項11】
前記ガス吹き付け部は、前記光学素子材料の周囲に前記下型の中心軸を中心として均等に分散して3つ以上設けられている、請求項7から請求項10のいずれか1項記載の光学素子の製造装置。

【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−224510(P2012−224510A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93847(P2011−93847)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)