説明

光学素材の製造方法、及び、光学素材の製造装置

【課題】光学素材の製造方法及び製造装置において、光学素材の製造装置を小型化すると共に、1滴毎の重量を安定させて光学素材を製造する。
【解決手段】光学素子の製造方法は、ノズル11の供給口(上端11p)から固体のガラス素材(ガラスロッド101)を挿入するガラス素材挿入工程と、ノズル11内でガラス素材(101)を加熱溶融させる加熱溶融工程と、ノズル11の先端開口(下端11q)から溶融ガラス102を強制的に押し出して液滴にする液滴化工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、光学素子を製造するのに用いられる光学素材の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラスからなる光学素材を製造する技術として、ガラスファイバの先端部を液状化し、液状化された部分を滴下することで光学素材を製造する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、貯留槽に貯留されたガラスを加熱溶融させることで光学素材を製造する技術も知られている(例えば、特許文献2及び3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−87828号公報
【特許文献2】特開平11−322347号公報
【特許文献3】特開2004−250267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載されているようにガラスファイバの先端部を液状化し、液状化された部分を滴下すると、ガラスが溶ける範囲が限定できず1滴毎の重量が安定しない。
【0006】
また、上記特許文献2及び3に記載されているように貯留槽に貯留されたガラスを加熱溶融させると、光学素材の製造装置が大型化する。
【0007】
本発明の目的は、光学素材の製造装置を小型化することができると共に、1滴毎の重量を安定させて光学素材を製造することができる光学素材の製造方法及び製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光学素材の製造方法は、ノズルの供給口から固体のガラス素材を挿入するガラス素材挿入工程と、上記ノズル内で上記ガラス素材を加熱溶融させる加熱溶融工程と、上記ノズルの先端開口から溶融ガラスを強制的に押し出して液滴にする液滴化工程と、を含む。
【0009】
また、上記光学素材の製造方法において、上記液滴化工程では、少なくとも、上記ガラス素材を連続的に加圧することによって、上記先端開口から連続的に上記溶融ガラスを押し出すようにしてもよい。
【0010】
また、上記光学素材の製造方法において、上記液滴化工程では、上記ガラス素材を気体で加圧するようにしてもよい。
また、上記光学素材の製造方法において、上記液滴化工程では、少なくとも、上記溶融ガラスが押し出される空間を減圧することによって、上記先端開口から上記溶融ガラスを押し出すようにしてもよい。
【0011】
また、上記光学素材の製造方法において、上記ガラス素材挿入工程では、上記ガラス素材が上記ノズルの内周面を摺動するように、上記ガラス素材を挿入するようにしてもよい。
【0012】
本発明の光学素材の製造装置は、供給口から固体のガラス素材が挿入されるノズルと、上記ノズル内で上記ガラス素材を加熱溶融させる加熱溶融手段と、上記ノズルの先端開口から溶融ガラスを強制的に押し出して液滴にする液滴化手段と、を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光学素材の製造装置を小型化することができると共に、1滴毎の重量を安定させて光学素材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態に係る光学素材の製造装置を模式的に示す部分断面図である。
【図2】本発明の他の実施の形態に係る光学素材の製造装置を模式的に示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態に係る、光学素材の製造方法及び製造装置について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施の形態に係る光学素材の製造装置10を模式的に示す部分断面図である。
図1に示すように、光学素材の製造装置10は、ノズル11と、加熱溶融手段の一例である加熱部12と、液滴化手段(強制排出手段)の一例である加圧部13と、液滴化手段(強制排出手段)の一例である減圧ポンプ14と、を備える。
【0017】
ノズル11は、パイプ状ノズルであり、例えば、白金や金などの貴金属からなる。ノズル11には、一方の開口部である上端(ガラス素材の供給口)11pから、固体のガラス素材の一例であるガラスロッド101が挿入される。ガラスロッド101の直径は、ノズル11の内径と同一又は略同一であり、ガラスロッド101は、ノズル11の内周面を摺動するようにノズル11に挿入される。
【0018】
ノズル11は、他方(ガラスロッド101の挿入側とは反対側)の開口部である下端(先端開口)11qと供給口である上端11pとの間に、例えば、下端11qに位置する小径部11aと、小径部11aよりも径の大きな大径部11cと、この大径部11cから小径部11aにいくほど徐々に内径が小さくなるテーパ部11bと、を備えている。小径部11aや大径部11cの内径は例えば一定である。なお、ガラスロッド101は、円柱形状を呈するが、多角柱形状などの他の形状を呈するものでもよい。また、ノズル11も、円筒形状を呈するが、多角筒形状などの他の形状を呈するものでもよい。
【0019】
ノズル11には、溶融ガラス102を貯留させる貯留槽は設けられていないが、ノズル11は、ガラスロッド101よりも大きい内径を有し、ガラスロッド101が内周面を摺動しないものでもよい。
【0020】
加熱部12は、ノズル11内のガラスロッド101を加熱溶融させる。加熱部12は、特に限定されないが、例えば、スポット光源ヒータや、高周波加熱を行うヒータ,ノズル11の直接通電加熱を行うヒータである。
【0021】
詳しくは後述するが、本実施の形態では、ガラスロッド101の挿入によっても、ノズル11の下端11qから連続的に溶融ガラス102が強制的に押し出されて液滴になる。また、本実施の形態では、ガラスロッド101がノズル11の内周面を摺動するため、ガラスロッド101がノズル11からの溶融ガラス102の逆流を防止すると共に溶融ガラス102の揮発を防止する。これらの観点からは、ノズル11内でガラスロッド101に溶融していない部分があることが望ましい。したがって、加熱部12は、局所的にノズル11を加熱するとよい。
【0022】
加圧部13は、ガラスロッド101を連続的に加圧してノズル11に挿入する。加圧部13は、例えば、駆動源13aと、この駆動源13aの駆動によりガラスロッド101を接触して押圧する押圧部材13bと、を有する。駆動源13aは、例えば、サーボモータやエアシリンダである。なお、加圧部13がガラスロッド101を加圧する圧力は、一定でもよいが、ガラスロッド101が短くなるにつれて、ガラスロッド101の溶融分の自重を付加するようにしてもよい。
【0023】
減圧ポンプ14は、排出室15の排出空間Sを減圧する。この排出空間Sは、ガラスロッド101が溶融してなる溶融ガラス102が押し出される空間の一例である。
排出室15内には、溶融ガラス102が固化してなる光学素材の一例であるガラスボール103を受ける受け皿16や、この受け皿16を転動するガラスボール103を収容する収容容器17が配置されている。
【0024】
以下、光学素材の一例であるガラスボール103を製造する流れについて、上述の説明と重複する点については適宜省略しながら説明する。
まず、図示しないロボット等が、ノズル11の一方である上端11pから固体のガラスロッド101の一部を挿入する(ガラス素材挿入工程)。ガラスロッド101は、ノズル11の上端11pからノズル11の内周面を摺動するように挿入される。
【0025】
次に、加熱部12は、ノズル11内でガラスロッド101を加熱溶融させる(加熱溶融工程)。
このようにガラスロッド101を加熱溶融させてなる溶融ガラス102は、ノズル11の下端11qから強制的に押し出されて液滴となる(液滴化工程)。溶融ガラス102を強制的に押し出すために、本実施の形態では、減圧ポンプ14が排出室15の排出空間Sを減圧する。更には、本実施の形態では、加圧部13がガラスロッド101を連続的に加圧してノズル11内に挿入していくことによっても、溶融ガラス102を強制的に押し出している。
【0026】
なお、ガラスロッド101が短くなって加圧部13の押圧部材13bによって押圧できなくなったときには、新たなガラスロッド101を図示しないロボットによりノズル11に挿入すればよい。
【0027】
上述の液滴化工程(強制排出工程)によってノズル11から液滴となって排出される溶融ガラス102は、排出室15内において固化し、光学素材の一例であるガラスボール103となる。このガラスボール103は、例えば、受け皿16を転動し、収容容器17に収容される。
【0028】
以上説明した本実施の形態では、ノズル11内でガラスロッド101を加熱溶融させるため、貯留槽においてガラス素材を加熱溶融させる場合に比べて、製造装置を小型化することができる。また、本実施の形態では、ガラスロッド(ガラス素材)101は、ノズル11内で加熱されるため、ノズル11の小径部11aの径によって一定の大きさのガラスボール103を得ることができ、ガラスボール103の重量を安定させることができる。
【0029】
よって、本実施の形態によれば、光学素材の製造装置10を小型化することができると共に、1滴毎の重量を安定させて光学素材(ガラスボール103)を製造することができる。
【0030】
更には、本実施の形態では、ノズル11内でガラスロッド101を加熱溶融させるため、貯留槽においてガラス素材を加熱溶融させる場合のような溶融ガラスの対流に起因する脈理の発生を抑えることができると共に例えば光学素材(ガラスボール103)を少量生産する場合にも効率良く光学素材を製造することができる。
【0031】
また、本実施の形態では、加圧部13がガラスロッド101を連続的に加圧してノズル11に挿入することによって、ノズル11の下端(先端開口)11qから連続的に溶融ガラス102を強制的に押し出して液滴にする。そのため、簡素な構成で溶融ガラス101を強制的に押し出して液滴にすることができると共に、1滴毎の重量を安定させて光学素材(ガラスボール103)を製造することができる。
【0032】
また、本実施の形態では、減圧ポンプ14が排出室15の排出空間Sを減圧することによって、ノズル11の下端(先端開口)11qから連続的に溶融ガラス102を押し出す。そのため、簡素な構成で溶融ガラス101を押し出して液滴にすることができると共に、1滴毎の重量を安定させて光学素材(ガラスボール103)を製造することができる。
【0033】
また、本実施の形態では、ガラスロッド101は、ノズル11の上端(供給口)11pからノズル11の内周面を摺動するように挿入される。そのため、ノズル11からの溶融ガラス102の逆流を防止することができると共に、溶融ガラス102の揮発を防止することができる。
【0034】
なお、本実施の形態では、加圧部13及び減圧ポンプ14の両方によって溶融ガラス102をノズル11から強制的に押し出して液滴にしている。しかしながら、加圧部13及び減圧ポンプ14のうちの一方を省略しても、溶融ガラス102をノズル11から強制的に押し出して液滴にすることは可能である。なお、加圧部13を省略しても、減圧ポンプ14による排出空間Sの減圧によって、ガラスロッド101をノズル11内に連続的に進入させることは可能である。
【0035】
図2は、本発明の他の実施の形態に係る光学素材の製造装置20を模式的に示す部分断面図である。
本実施の形態では、加圧部23が気体でガラスロッド101を連続的に加圧してノズル11に挿入する点及びこれに関連する点において、上述の一実施の形態と相違し、その他の点は同様である。そのため、詳細な説明は省略する。
【0036】
図2に示すように、光学素材の製造装置20は、ノズル21と、加熱溶融手段の一例である加熱部22と、液滴化手段(強制排出手段)の一例である加圧部23と、液滴化手段(強制排出手段)の一例である減圧ポンプ24と、を備える。
【0037】
加圧部23は、例えば増圧ポンプであり、継手28を介してノズル21内のガラスロッド101を気体で連続的に加圧する。そのため、継手28は、気体の流路を形成するよう中空になっている。
【0038】
ノズル21の小径部21a、テーパ部21b、大径部21c、上端(供給口)21p及び下端(先端開口)21q、加熱部22、減圧ポンプ24、排出室25、受け皿26、並びに、収容部27については、上述の一実施の形態のものと同様である。
【0039】
本実施の形態においても、ガラスロッド101は、ノズル21の上端21pから内周面を摺動してノズル21に挿入される。
【0040】
以下、光学素材の一例であるガラスボール103を製造する流れについて、上述の説明と重複する点については適宜省略しながら説明する。
まず、図示しないロボット等が、継手28を外した状態のノズル21の一方である上端21pから固体のガラスロッド101の一部を挿入し(ガラス素材挿入工程)、継手28をノズル21に装着する。ガラスロッド101は、ノズル21の上端21pからノズル21の内周面を摺動するように挿入される。
【0041】
次に、加熱部22は、ノズル21内でガラスロッド101を加熱溶融させる(加熱溶融工程)。
このようにガラスロッド101を加熱溶融させてなる溶融ガラス102は、ノズル21の下端21qから連続的に強制的に押し出されて液滴となる(液滴化工程)。溶融ガラス102を強制的に押し出すために、本実施の形態においても、減圧ポンプ24が排出室25の排出空間Sを減圧する。更には、加圧部23がガラスロッド101を気体で連続的に加圧してノズル21内に挿入していくことによっても、溶融ガラス102を強制的に押し出している。
【0042】
なお、ガラスロッド101が短くなるか或いは全て加熱溶融したときには、継手28を取り外して新たなガラスロッド101を図示しないロボットによりノズル21に挿入すればよい。
【0043】
上述の液滴化工程(強制排出工程)によってノズル21から液滴となって排出される溶融ガラス102は、排出室25内において固化し、光学素材の一例であるガラスボール103となる。このガラスボール103は、例えば、受け皿26を転動し、収容容器27に収容される。
【0044】
以上説明した本実施の形態においても、ノズル21内でガラスロッド101を加熱溶融させるため、貯留槽においてガラス素材を加熱溶融させる場合に比べて、製造装置を小型化することができる。また、本実施の形態では、ガラスロッド(ガラス素材)101は、ノズル21内で加熱されるため、ノズル21の小径部21aの内径によって一定の大きさのガラスボール103を得ることができ、ガラスボール103の重量を安定させることができる。
【0045】
よって、本実施の形態によれば、上述の一実施の形態と同様の効果、例えば、光学素材の製造装置20を小型化することができると共に、1滴毎の重量を安定させて光学素材(ガラスボール103)を製造することができるという効果を得ることができる。
【0046】
また、本実施の形態では、加圧部23が気体でガラスロッド101を連続的に加圧してノズル21に挿入することによって、ノズル21の下端(先端開口)21qから連続的に溶融ガラス102を強制的に押し出して液滴にする。そのため、簡素な構成で溶融ガラス101を強制的に液滴にすることができると共に、1滴毎の重量を安定させて光学素材(ガラスボール103)を製造することができる。更には、ノズル21からの溶融ガラス102の逆流を防止することができると共に、溶融ガラス102の揮発を防止することができる。
【符号の説明】
【0047】
10 光学素材の製造装置
11 ノズル
11a 小径部
11b テーパ部
11c 大径部
11p 上端
11q 下端
12 加熱部
13 加圧部
13a 駆動源
13b 押圧部材
14 減圧ポンプ
15 排出室
16 受け皿
17 収容容器
20 光学素材の製造装置
21 ノズル
21a 小径部
21b テーパ部
21c 大径部
21p 上端
21q 下端
22 加熱部
23 加圧部
24 減圧ポンプ
25 排出室
26 受け皿
27 収容容器
28 継手
101 ガラスロッド
102 溶融ガラス
103 ガラスボール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルの供給口から固体のガラス素材を挿入するガラス素材挿入工程と、
前記ノズル内で前記ガラス素材を加熱溶融させる加熱溶融工程と、
前記ノズルの先端開口から溶融ガラスを強制的に押し出して液滴にする液滴化工程と、
を含む、光学素材の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の光学素材の製造方法において、
前記液滴化工程では、少なくとも、前記ガラス素材を連続的に加圧することによって、前記先端開口から連続的に前記溶融ガラスを押し出す、光学素材の製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の光学素材の製造方法において、
前記液滴化工程では、前記ガラス素材を気体で加圧する、光学素材の製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項記載の光学素材の製造方法において、
前記液滴化工程では、少なくとも、前記溶融ガラスが押し出される空間を減圧することによって、前記先端開口から前記溶融ガラスを押し出す、光学素材の製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項記載の光学素材の製造方法において、
前記ガラス素材挿入工程では、前記ガラス素材が前記ノズルの内周面を摺動するように、前記ガラス素材を挿入する、光学素材の製造方法。
【請求項6】
供給口から固体のガラス素材が挿入されるノズルと、
前記ノズル内で前記ガラス素材を加熱溶融させる加熱溶融手段と、
前記ノズルの先端開口から溶融ガラスを強制的に押し出して液滴にする液滴化手段と、を含む、光学素材の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−87024(P2012−87024A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236458(P2010−236458)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)