説明

光学表示装置

【課題】基板厚さやパネルサイズに関わらず、偏光板リワーク時におけるギャップムラや基板割れなどの不良を防止することができる光学表示装置の提供。
【解決手段】本発明の光学表示装置は、光学表示パネルと、前記光学表示パネル表面の少なくとも一方を覆うように配置された光学フィルム(例えば、偏光板106)と、前記光学フィルムを前記光学表示パネルに固定するための接着層107と、を有し、前記接着層107は、前記光学表示パネルの表示面の法線方向から見て、前記光学表示パネルを構成する透明基板(例えば、TFT基板101や対向基板102)よりも外側に配置され、かつ、前記光学フィルムと前記光学表示パネルの表示領域との間には気体層が無いことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学表示装置に関し、特に、液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光学表示装置の代表である液晶表示パネルは、一般的に、TFT基板と、対向基板と、TFT基板と対向基板との間に挟持される液晶材と、液晶材を一対の基板間に封止する為に設けられたシール材と、TFT基板と対向基板の表面を覆うように配置された偏光板と、を備えている。
【0003】
偏光板は、延伸したポリビニルアルコール(PVA)膜をヨウ素で染色する事で形成された偏光子を、トリアセテートセルロース(TAC)膜で挟持したものが一般的に使用され、このような偏光板は、液晶表示パネルを構成する基板上に全面にわたって均一に接着層を介して接着されている。
【0004】
ここで、液晶表示パネルの製造工程中において、基板と偏光板の界面への異物混入や偏光板貼り付け位置不良が発生した場合や、偏光板自体に異常がある場合には、偏光板のリワーク作業を行う。そのリワーク作業において偏光板を剥す際に、偏光板全面に付与された粘着層を介して基板へストレスが加わるため、基板が大きく変形してしまう。また、このときにセルギャップを支持しているスペーサ材の移動や塑性変形が発生し、ギャップムラが生じてしまう。
【0005】
上記問題の対策として、下記特許文献1には、第1の基板と、第2の基板と、第1の基板と第2の基板の間に挟持された液晶組成物と、第1の基板に接着した第1の偏光板と、第2の基板に接着した第2の偏光板と、を備える横電界方式の液晶表示パネルにおいて、第1の基板に第1の偏光板を接着する接着層と、第2の基板に第2の偏光板を接着する接着層の接着強度が1000g/20mmを超えない範囲とする事で、ギャップムラを抑制する構成が開示されている。
【0006】
また、下記特許文献2には、光学フィルム素材の片面又は両面に、官能基濃度が5×1/10モル/g以下のアクリル系重合体をベースポリマーとし、剥離側被着体に対する90度剥離接着力が600g/20mm以下の粘着層を有する構成が開示されている。
【0007】
その他に、下記特許文献3には、偏光板を液晶表示パネルに貼り合わせる粘着層等の内部に発生する気泡による表示品位の低下を防止するために、液晶表示パネルと偏光板とを枠形状の接着性部材にて貼り合わせる構成が開示されている(図9参照)。
【0008】
【特許文献1】特開平11−119212号公報
【特許文献2】特開平10−44291号公報
【特許文献3】実開昭60−54121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1、2のように、偏光板を基板に接着する接着剤の接着強度を低くする事で、基板へ加わるストレスを低減させ、偏光板リワーク時におけるギャップムラをある程度抑制することは可能である。
【0010】
しかしながら、近年、液晶表示パネルの更なる軽量化、薄型化が要求されており、薄いガラス基板や樹脂フィルムを用いた液晶表示パネルが供給されており、薄い基板で形成された液晶表示パネルにおいては、偏光板をはがす際の弱いストレスでも基板が大きく変形してしまう。そこで、偏光板の接着強度をさらに低くする必要があるが、接着強度をあまり小さくしすぎると偏光板の剥がれや信頼性評価試験で温度による収縮等の問題が生じてしまうため、これまで以上に大幅な接着強度の低下は困難である。
【0011】
更に、薄い基板で形成された液晶表示パネルにおいては、パネル自体の機械的強度が低下してしまうため、リワーク時に偏光板を剥がす際に基板自体が割れてしまうといった問題も新たに生じてしまう。
【0012】
この他に、パネルサイズが大きくなると、先に述べたギャップムラや基板割れの問題がより顕著となる。
【0013】
また、上記特許文献3のように、液晶表示パネルと偏光板とを枠形状の接着性部材にて貼り合わせる構成においても、偏光板と基板との接着力は小さくなり偏光板リワーク時のストレスを軽減することができるが、この構成では、偏光板と基板との間に空気層が生じるために、基板及び偏光板と空気層との界面で光の反射や屈折が生じ、コントラスト低下などの問題が生じる。
【0014】
本発明は、上述した問題に鑑みなされたものであり、その主たる目的は、基板厚さやパネルサイズに関わらず、偏光板リワーク時におけるギャップムラや基板割れなどの不良を防止することができる光学表示装置、特に、液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記問題を解決するために、本発明の光学表示装置は、光学表示パネルと、前記光学表示パネル表面の少なくとも一方を覆うように配置された光学フィルムと、前記光学フィルムを前記光学表示パネルに固定するための接着層と、を有し、前記接着層は、前記光学表示パネルの表示面の法線方向から見て、前記光学表示パネルを構成する透明基板よりも外側に配置され、かつ、前記光学フィルムと前記光学表示パネルの表示領域との間には気体層が無いことを特徴とする。
【0016】
本発明においては、前記光学フィルムと前記光学表示パネルの表示領域との間に、前記光学表示パネルを構成する透明基板とほぼ同等の屈折率の流動物質が配置された構成とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、TFT基板101及び対向基板102と偏光板106の位置を固定するための接着層107を、TFT基板101外形及び対向基板102外形の外周部分に設け、TFT基板101及び対向基板102と偏光板106とが直接接着していないために、偏光板106を剥す際のストレスが表示領域部分へ加わり変形する事を防止し、液晶セルギャップを支持する球状スペーサ110や柱状スペーサ111等に対してストレスが加わらない。その為に、球状スペーサ110の移動によるギャップムラや、球状スペーサ110や柱状スペーサ111の潰れなどの塑性変形によるギャップムラを防止する効果が得られる。
【0018】
また、本発明では、TFT基板101及び対向基板102と偏光板106の位置を固定するための接着層107を、TFT基板101外形及び対向基板102外形の外周部分に設け、TFT基板101及び対向基板102と偏光板106とが直接接着していないために、偏光板106を剥す際のストレスがTFT基板101及び対向基板102に直接加わらない。その為に、偏光板を剥すことによる基板割れの問題を低減する効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
背景技術で示したように、薄い基板で形成された液晶表示パネルでは、偏光板を剥がす際の弱いストレスでも基板が大きく変形してしまい、その結果、セルギャップを支持しているスペーサ材の移動や塑性変形が発生してギャップムラが生じたり、偏光板を剥がす際に基板自体が割れたりしてしまうという問題が生じる。これらの問題について詳述する。
【0020】
まず、偏光板リワーク時におけるギャップムラに関して説明する。
【0021】
単純梁におけるガラス基板の最大たわみ量(δmax)は、集中荷重をP、支持間隔をa、ガラス断面の幅をb、ヤング率をE、ガラス断面の厚みをdとすると、式1のようになり、基板たわみ量は基板厚さの3乗に反比例し、基板が薄くなることにより変形量が大きくなる。
【0022】
δmax=(P・a)/(4・b・E・d) … (式1)
【0023】
上記関係を確認するために、従来の液晶表示パネルを用いて、単位荷重あたりの変形量を測定した。その結果を図7に示す。図7における基板厚さ(t0.5/t0.4/t0.3/t0.2/t0.1)は、液晶表示パネルを構成するガラス1枚の厚さであり、パネル厚はこのガラス基板厚さの2倍(1.0/0.8/0.6/0.4/0.2mm)である。また、偏光板は、接着層の接着強度が約2000g/20mmのものを用いた。また、測定では、対角2.7インチのパネルを長手方向で2辺支持し、パネル中央部分に支持部と平行な辺荷重を加え、負荷速度は0.1mm/secとした。図7に示す結果は、パネルの最大たわみ量(δmax)と荷重(P)を測定した結果より求め、t0.5パネルで規格化した値である。
【0024】
図7の測定結果から、基板厚さが薄くなることで、基板変形量が大きくなる事が分かる。
【0025】
また、液晶セルを封止するシール材部分でTFT基板と対向基板は接着されており、表示領域に該当する液晶セルのほぼ中央部分は、シール材からの距離が最も大きくなり、偏光板をはがす際に基板の変形量が最も大きくなる。たとえば、パネルサイズ対角3インチの製品を基準としたとき、対角5インチへ大きくなることにより、単位距離辺りの変形量が4.6倍に増加、対角8インチへ大きくなることにより、単位距離辺りの変形量が19倍に増加する事が式1により求められる。
【0026】
即ち、基板厚さが薄くなるほど、また、パネルサイズが大きくなるほど、従来の液晶表示パネルでは偏光板剥がし等のストレスにより基板変形量が大きくなる。
【0027】
ここで、セルギャップの支持に球状スペーサを用いた場合、球状スペーサは基板表面に強固に固着していない為、基板にストレスが加わり変形することによりセル内部のスペーサへ力が加わり、スペーサが移動してしまう。その結果として球状スペーサ品では、基板厚さが薄くなるほど、また、パネルサイズが大きくなるほど、偏光板リワーク時のストレスによる基板変形量が増加し、スペーサ分布の不均一によるギャップムラ不良が発生しやすくなってしまう。
【0028】
また、セルギャップの支持に柱状スペーサを用いた場合においては、柱状スペーサは強固に対向基板に固着しているために、先に球状スペーサの場合で述べたようなスペーサが移動する事に起因するギャップ不良は生じない。しかし、一般的に使用される柱状スペーサは感光性のアクリル系材料等からなり、球状スペーサと比較して弾性率が小さい。このため、偏光板を剥がす時の基板変形により、局部的に一部の柱スペーサにストレスが加わると、柱スペーサ材料自身が塑性変形を生じてしまい、その部分がギャップムラとなる。
【0029】
次に、もう一つの課題である偏光板リワーク時に生じる基板割れに関して説明する。
【0030】
ガラス基板の最大曲げ応力(σmax)は、集中荷重をP、支持間隔をa、ガラス断面の幅をb、ヤング率をE、ガラス断面の厚みをdとすると、式2のようになり、基板の最大曲げ応力は基板厚さの2乗に反比例しており、基板が薄くなることにより曲げ応力が著しく大きくなり、基板割れが生じやすくなる事が分かる。
【0031】
σmax=(3・P・a)/(b・d) … (式2)
【0032】
上記関係を確認するために、従来の液晶表示パネルを用いて、破壊荷重を測定した。その結果を図8に示す。図8における基板厚さ(t0.5/t0.4/t0.3/t0.2/t0.1)は、液晶表示パネルを構成するガラス1枚の厚さを示しており、パネルの厚さはこの基板厚さの2倍(1.0/0.8/0.6/0.4/0.2mm)である。また、また、偏光板は、接着層の接着強度が約2000g/20mmのものを用いた。また、測定では、対角2.7インチのパネルを長手方向で2辺支持し、パネル中央部分に支持部と平行な辺荷重を加え、負荷速度は0.1mm/secとした。
【0033】
図8の測定結果からも、基板厚さが薄くなることで、基板が割れやすくなることが分かる。
【0034】
以上の結果より、偏光板リワークによるギャップムラや基板割れを防止するためには、偏光板と基板の接着力を小さくする事が重要となる。
【0035】
そこで、本発明では、TFT基板と、対向基板と、前記TFT基板と前記対向基板との間に挟持される液晶材と、前記液晶材を前記TFT基板と前記対向基板との間に封止する為に設けられたシール材と、前記TFT基板と前記対向基板の表面を覆うように配置された偏光板と、前記偏光板を前記TFT基板と前記対向基板に固定する為の接着層を有する液晶表示パネルにおいて、前記接着層を、前記液晶表示パネル外形の外周部に設け、偏光板を含む表示領域部分には接着層を設けない構成とする。
【0036】
また、特許文献3のように、偏光板と基板との間に空気層が生じると、基板及び偏光板と空気層との界面で光の反射や屈折が生じ、コントラスト低下などの問題が生じる。そこで、本発明では、上記構成に加えて、偏光板と表示面の界面を密着させるかまたは界面に流動物質を塗布する構成とする。
【0037】
これにより、基板厚さが薄くなっても、ギャップムラや基板割れを防止することができる。
【0038】
本発明の効果を確認するために、偏光板リワークを行った際のガラス基板厚さと基板割れ及びギャップムラとの関係について調べた。その結果を表1に示す。なお、従来例では、偏光板の接着層の接着強度が約2000g/20mmと、約600g/20mmの偏光板の2種類を用い、本発明では、後述する第2の実施例に示す構造とした。
【0039】
【表1】

【0040】
表1より、従来の構成においては、接着層の接着強度が約2000g/20mmの偏光板では、ガラス厚がt0.4mm以下のパネルにおいてギャップムラを生じやすくなり、更にはガラス厚がt0.3mm以下のパネルでは基板割れの問題が生じやすくなる。また、接着層の接着強度が約600g/20mmの偏光板では、ガラス厚がt0.3mm以下のパネルにおいてギャップムラを生じやすくなり、更にはガラス厚がt0.2mm以下のパネルでは基板割れの問題が生じやすくなる。
【0041】
これに対して、本発明の構成においては、ガラス厚がt0.3mm以下のパネルにおいても、ギャップムラや基板割れの問題が発生しておらず、特に、平均約500g/20mmの荷重で割れを生じるガラス厚t0.1mmの基板においても、ギャップムラや基板割れの問題が発生しない。
【0042】
また、本発明の構成では、偏光板とガラス基板を直接接着していないために、いかなるパネルサイズ(式1及び式2の“a”に関係)や、ガラス厚(式1及び式2の“d”に関係)においても、式1及び式2の“P”に該当する基板へのストレスが非常に小さいため、偏光板リワーク時のパネル曲げ応力を極めて小さく抑えることが出来、上述した問題を生じることのない光学表示装置の提供が可能となる。
【実施例1】
【0043】
上記した本発明の実施の形態についてさらに詳細に説明すべく、本発明の第1の実施例に係る液晶表示装置について、図1及び図2を参照して説明する。図1は、本実施例の液晶表示装置の構成を示す平面図であり、図2(a)は、図1のA−A’線における断面図、図2(b)、(c)は、図2(a)の部分拡大図である。
【0044】
図1、図2に示すように、本実施例の液晶表示パネルは、主に、TFT基板101と、対向基板102と、対向基板102側の周縁部を囲うように設けられた額縁ブラックマトリクス104(以降、額縁BM104と称す。)と、TFT基板101と対向基板102との間に挟持される液晶材105と、液晶材105のセルギャップを規定するためにTFT基板101と対向基板102の間に形成されたスペーサ材(図2(b)、(c)参照)と、液晶材105をTFT基板101と対向基板102の間に封止する事を目的とし、表示領域外である額縁BM104に重複する位置に形成されたシール材103と、TFT基板101及び対向基板102の表面を覆い密着する偏光板106と、TFT基板101及び対向基板102と各々の基板表面を覆い密着する偏光板106との相対位置を固定するために、表示面の法線方向から見て、TFT基板101及び対向基板102の外周部分に該当する偏光板106の周縁部に設けた接着層107と、TFT基板101の端子部分に接続されたフレキシブル基板108と、から構成される。
【0045】
なお、TFT基板101や対向基板102に用いる基材には、ガラス基板やポリエチレンテレフタレート(poly ethylene terephthalate;以降PETと称す。)、ポリエチレンナフタレート(poly ethylene naphthalate;以降PENと称す。)等の樹脂フィルム等を用いることが可能である。
【0046】
また、シール材103と樹脂BM104は必ずしも重複した位置でなくてもよく、樹脂BM104よりも更に外周側の領域にシール材103が形成された構成としても良い。このように、シール材103を樹脂BM104の外周に設けることで、光硬化性のシール材料を用いたときに対向基板102側からの光照射が可能となる。
【0047】
また、シール材103には、アクリル・エポキシ系の光+熱硬化型の材料を用い、接着強度は20000g/20mm以上が得られている。接着層107の接着強度は、十分な強度を持ちつつ、シール材103の接着強度よりも小さくし、偏光板を剥がす際にパネルのシール剥がれが生じない範囲とする必要性があり、5000〜10000g/20mmの範囲とすることが望ましい。接着層107の材料としてはアクリル系の材料を用いた。
【0048】
ここで、偏光板106とTFT基板101及び対向基板102との間に気泡や空気層が残ってしまうと、空気との屈折率の違いにより、空気層との界面での光の反射や屈折が生じ、黒画面での輝度上昇等の特性低下を招いてしまう。
【0049】
そこで、本実施例では、TFT基板101及び対向基板102の表示領域部分と各々の基板表面を覆う偏光板106との間には空気層が無く、密着した構成とした。
【0050】
次に、第1の実施例の液晶表示装置の製造方法について説明する。
【0051】
まず、TFT基板101の周縁部分にシール材103を形成した後に、TFT基板101と対向基板102とを重ね合わせ、両基板間に液晶材105を封止して液晶パネルを形成する。
【0052】
次に、フレキシブル基板108をTFT基板101の端子部分に実装する。
【0053】
次に、TFT基板101側を覆う偏光板106の、フレキシブル基板108と接着する部分に、2液性の材料からなる接着層107の描画を行う。
【0054】
次に、液晶パネルを偏光板106と所定の位置にアライメントした後に重ね合わせを行い、上記接着層107により、フレキシブル基板108とTFT基板101を覆う偏光板106とを接着する。
【0055】
次に、対向基板102を覆う偏光板106の周縁部分に接着層107の描画を行う。
【0056】
次に、TFT基板101を覆う偏光板106の所定の位置にアライメントした後に、圧力ローラーを用いて貼り付けを行い、本発明の第1の実施例の液晶表示装置が完成する。
【0057】
貼り合わせる方向はフレキシブル基板108側を貼り付け開始方向とする。この際、偏光板106とTFT基板101との間や、偏光板106と対向基板102との間に気泡や空気層が入らないように、基板端から空気を押し出しながら貼り付けを行う。
【0058】
なお、ここでは、偏光板106の貼り付けに関して、圧力ローラーを用いた貼り付け方法について説明したが、偏光板106とTFT基板101の表示領域部、偏光板106と対向基板102の表示領域部の間に気泡や空気層が無く、表示領域部の全面が密着するように貼り付けが出来ればよく、例えば真空中で貼り合わせを行っても良い。この場合は、接着層107を形成後、真空中で液晶パネルと偏光板106を重ね合わせ、大気圧に戻すことで、接着層に囲まれた領域内が真空となり、表示領域部の全面が密着した状態となる。
【0059】
また、偏光板106は少なくとも偏光子と偏光子保護材とからなり、偏光子保護材としては熱可塑性の透明樹脂且つガスバリア性の高い部材を採用する事が望ましく、PETやPEN及びそれらに表面処理を施した材料を使用する事が出来る。
【0060】
また、偏光板106同士が対向し接着する部分に熱可塑性を有するPETやPEN等の樹脂材料を用い、熱溶着や超音波溶着といった方式を使用すると、接着材を使用する事なく偏光板同士を接着する事が出来る。この場合、フレキシブル基板の接着部分にもPETやPEN等の熱可塑性の樹脂材料を使用すると、同時に溶着する事が可能となり、接着剤のコスト削減や製造コストが削減できる。
【0061】
また、TFT基板101及び対向基板102の表示領域に該当する基板表面と偏光板106との間に、剥離性を維持する事を目的とし、経時安定性に優れた流動物質を全面に塗布形成してもよい。基板表面と偏光板106との間に流動物質を塗布しておくことで、密着している界面が固着して剥離性が低下する事を防止でき、また流動物質が基板表面と偏光板106の双方と近接して密着する事で、結果的に双方の密着を補助する事も可能となる。
【0062】
この場合に用いる流動物質は、TFT基板101や対向基板102とほぼ同等の屈折率で、光学性能に影響を与えない無色透明な物質が望ましく、屈折率1.4〜1.6程度に調整されたシリコンオイルやシリコンゲル等を用いる事が可能である。
【0063】
また、接着層107に関して2液性の接着剤を用いた製法について説明したが、これに限られるものではなく、アクリル系の光硬化性接着剤やエポキシ系の熱硬化性の接着剤であっても良い。また、接着層107の形成についても、ディスペンス方式に限られるものではなく、印刷方式を用いても良い。光硬化性の材料を用いる場合においては、液晶パネルの側壁方向より光照射する事で硬化が可能であり、熱硬化性の材料を用いる場合には、偏光板の耐熱温度よりも低い温度で硬化するエポキシ系の材料等を用いることができる。
【実施例2】
【0064】
次に、本発明の第2の実施例に係る液晶表示装置について、図3及び図4を参照して説明する。図3は、本実施例の液晶表示装置の構成を示す平面図であり、図4は、図3のA−A’線における断面図である。
【0065】
図3及び図4に示すように、液晶パネルの形成までは前記した第1の実施例と概ね同じであるが、本実施例では、液晶パネル表面を覆う光学フィルムを、偏光板106と、偏光板106の外側を更に覆う透明フィルム109の積層構造とする。また、表示面の法線方向から見て、偏光板106と液晶パネルとの位置を固定するための前記接着層107を、TFT基板101外形の外周部分に該当する透明フィルム109の周縁部に設け、接着層107を配置する領域には偏光板106が重複しない構造とする。更に、TFT基板101及び対向基板102は、透明フィルム109と直接接着しない構造とする。
【0066】
透明フィルム109は、可視光及び近紫外線の透過性及びガスバリア性能に優れた熱可塑性の材料であることが望ましく、PETやPEN及びそれらに表面処理を施した材料を使用する事が出来る。
【0067】
このように透明フィルム109に可視光及び近紫外線の透過性に優れた材料を用いることにより、接着層107にアクリル系の光硬化性の材料を用いた際に、パネルの正面から効率的に硬化反応を生じさせることが可能となる。
【0068】
なお、本実施例においても、第1の実施例と同様の製造方法を用いて製造する事が可能である。
【0069】
また、本発明の第2の実施例においては、接着層107を覆う部分が透明フィルム109のみであるため、接着層107の材料として、光硬化性の材料を用いることが出来、この場合、熱ストレスが生じないというメリットが得られる。
【0070】
また、偏光板106と透明フィルム109は接着していなくとも良く、この場合、偏光板のリワークを行う際には透明フィルム109のみを剥し交換すればよいため、偏光板106は再度利用が可能となる。
【実施例3】
【0071】
次に、本発明の第3の実施例に係る液晶表示装置について、図5及び図6を参照して説明する。図5は、本実施例の液晶表示装置の構成を示す平面図であり、図6は、図5のA−A’線における断面図である。
【0072】
図5及び図6に示すように、本実施例の構成は前記した第2の実施例と概ね同じであるが、本実施例では、パネル表面を覆う光学フィルムを、透明フィルム109と、透明フィルム109の外側に配置された偏光板106の積層構造とする。また、偏光板106が、液晶パネル表面と透明フィルム109との間に密封されない構造とする。
【0073】
偏光板106は、一般的に使用されるような全面に粘着層を有するものを使用する事が出来、透明フィルム109の外側に通常の偏光板と同様に貼り付けを行うことが出来る。
【0074】
また、TFT基板101及び対向基板102の表示領域部分と各々の基板表面を覆う透明フィルム109との間には空気層が無く、密着した構成とした。
【0075】
また、本発明の第3の実施例においては、偏光板106を透明フィルム109の外側に配置したことで、偏光板のリワークは透明フィルム109を剥がすことにより可能であるために、リワークによるギャップムラや基板ワレを生じないという効果を得つつ、一般的な偏光板をそのまま使用する事が可能となる。
【0076】
また、第2の実施例と同様の方法で、透明フィルム109のみを先に液晶パネルに貼り付けた後に、偏光板106を貼り付けてもよいし、事前に透明フィルム109の上に偏光板106を貼り付けたものを液晶パネルに貼り付けても良い。
【0077】
なお、上記各実施例では、液晶パネルの表裏面に偏光板106又は偏光板106及び透明フィルム109を配置する構成としたが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、液晶パネルの少なくとも一方の面に偏光板106又は偏光板106及び透明フィルム109を配置する構成としてもよい。
【0078】
また、本発明の液晶表示装置は、TN(”Twisted Nematic”の略)方式、VA(”Virtical Alignment”の略)方式、IPS(”In-Plane-Switching”の略)方式等の液晶表示パネルの駆動方式に関係なく、いずれの方式においても、偏光板をはがす際の基板割れやギャップムラを防止するのに有効な手段である。
【0079】
また、本発明の説明においては、液晶パネルに偏光板を貼り付ける構造について説明したが、反射防止フィルムや保護フィルム、その他の各種フィルム類を貼り付ける際にも応用できる。
【0080】
更には、有機EL(electroluminescenceの略)の反射防止フィルム等、液晶表示装置以外の光学表示装置の用途としても応用が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の活用例としては、液晶表示装置及び有機EL表示装置といった、薄い板状基板表面を光学フィルムで覆う構成の光学表示装置が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の第1の実施例に係る液晶表示装置の構成を示す平面図である。
【図2】本発明の第1の実施例に係る液晶表示装置の構成を示す図であり、図1のA−A’断面図及びその部分拡大図である。
【図3】本発明の第2の実施例に係る液晶表示装置の構成を示す平面図である。
【図4】本発明の第2の実施例に係る液晶表示装置の構成を示す図であり、図3のA−A’断面図である。
【図5】本発明の第3の実施例に係る液晶表示装置の構成を示す平面図である。
【図6】本発明の第3の実施例に係る液晶表示装置の構成を示す図であり、図5のA−A’断面図である。
【図7】従来の液晶表示パネルを用いた、単位荷重あたりの変形量の測定結果を示す図である。
【図8】従来の液晶表示パネルを用いた、破壊荷重の測定結果を示す図である。
【図9】従来技術(特許文献3)の液晶表示装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0083】
101 TFT基板
102 対向基板
103 シール材
104 額縁BM
105 液晶材
106 偏光板
107 接着層
108 フレキシブル基板
109 透明フィルム
110 球状スペーサ
111 柱状スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学表示パネルと、前記光学表示パネル表面の少なくとも一方を覆うように配置された光学フィルムと、前記光学フィルムを前記光学表示パネルに固定するための接着層と、を有し、前記接着層は、前記光学表示パネルの表示面の法線方向から見て、前記光学表示パネルを構成する透明基板よりも外側に配置され、かつ、前記光学フィルムと前記光学表示パネルの表示領域との間には気体層が無い、ことを特徴とする光学表示装置。
【請求項2】
前記光学フィルムと前記光学表示パネルの表示領域との間に、前記光学表示パネルを構成する透明基板とほぼ同等の屈折率の流動物質が配置された、ことを特徴とする請求項1に記載の光学表示装置。
【請求項3】
前記光学フィルムは、偏光板である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光学表示装置。
【請求項4】
前記光学フィルムは、偏光板と前記偏光板よりも外形寸法の大きい透明フィルムとを含み、前記接着層は、前記光学表示パネルの表示面の法線方向から見て、前記透明フィルムのみの部分に配置された、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光学表示装置。
【請求項5】
前記偏光板は、前記光学表示パネルと前記透明フィルムとの間に配置された、ことを特徴とする請求項4に記載の光学表示装置。
【請求項6】
前記透明フィルムは、前記光学表示パネルと前記偏光板との間に配置された、ことを特徴とする請求項4に記載の光学表示装置。
【請求項7】
前記接着層は、熱可塑性の材料からなる、ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一に記載の光学表示装置。
【請求項8】
前記接着層は、光硬化成分を有する材料からなる、ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一に記載の光学表示装置。
【請求項9】
前記光学表示パネルは、TFT基板と、対向基板と、前記TFT基板と前記対向基板との間に挟持される液晶材及びスペーサと、前記液晶材を前記TFT基板と前記対向基板との間に封止する為に設けられたシール材と、を含む液晶パネルである、ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一に記載の光学表示装置。
【請求項10】
前記TFT基板と前記対向基板の少なくとも一方の厚さが、0.3mm以下である、ことを特徴とする請求項9に記載の光学表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−192838(P2009−192838A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33691(P2008−33691)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(303018827)NEC液晶テクノロジー株式会社 (547)
【Fターム(参考)】