説明

光定着装置および画像形成装置

【課題】
高い定着強度でトナーを記録媒体に定着させる光定着装置および画像形成装置を提供する。
【解決手段】
光定着装置100に、帯電部70と、電界発生部80と、光照射部40とを設け、電界発生部80によって定常電界を発生させながら、光照射部40によって、該定常電界が発生した空間の中で、記録媒体P上のトナーTを溶融させるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置は、たとえば、感光体などの静電潜像担持体上に静電潜像を形成し、トナーを含む現像剤によって該静電潜像を現像してトナー像として可視像化した後、該トナー像を記録用紙などの記録媒体に転写、定着することによって画像を形成する。
【0003】
トナー像の定着には、加熱定着装置や光定着装置が用いられる。加熱定着装置は、加熱ローラと加圧ローラとによって、未定着トナー像を担持する記録媒体を挟持することで、該未定着トナー像を構成するトナーを溶融させて、記録媒体に定着させる。加熱定着装置は、加熱ローラが記録媒体に接触するため、ホットオフセットによる画像汚れが生じたり、紙詰まりが生じたりするなどの問題がある。
【0004】
光定着装置は、フラッシュランプやレーザ光源などにより未定着トナー像を構成するトナーに対して光を照射し、照射熱によってトナーを溶融させることで、定着を行う。このように加熱ローラを用いないので記録媒体との接触がなく、したがって、光定着装置には、上記ホットオフセットや紙詰まりが生じないという利点がある。しかしながら、光定着装置では、光を照射されたトナーが瞬時に昇温するため、トナーの膨張や熱衝撃によってトナーが飛散することがあり、これによって画像濃度の低下が生じたり、画像パターンが乱れたりするなど、画像が劣化してしまうという問題がある。
【0005】
この問題に対して、特許文献1は、フラッシュ光源と搬送手段との間に設けられる板状の透明電極と、搬送手段下方に設けられる電極とに、電圧を印加しながらフラッシュ定着を行う定着装置を開示している。特許文献1によれば、電圧を印加することにより生じた電界によって、記録用紙上の未定着トナーが該記録用紙に吸引され、定着時にトナーが飛散することを防止できるとされている。
【0006】
また、特許文献2は、光源付近に設けられるワイヤに高電圧を印加して、光源を保護するガラス窓を帯電させた状態で、フラッシュ定着を行う定着装置を開示している。特許文献2によれば、帯電したガラス窓に対してトナーが反発するので、該ガラス窓へのトナーの付着を防止できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭60−115976号公報
【特許文献2】特開平7−13457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載の定着装置では、トナーの帯電極性とは逆に帯電したトナー(逆帯電トナー)がある場合、該逆帯電トナーは、生じた電界によって光源側に向かう電気的な力を受けるので、定着強度が低下してしまうという問題がある。さらに、逆帯電トナーが透明電極板やガラス窓の表面に付着し、汚染することによって、トナーに照射される光量が減少し、定着強度が著しく低下するという問題がある。また、逆帯電トナーが存在しなくとも、帯電していないトナーがあったり、トナー粒子間で帯電量が不均一であったりすると、定着強度にばらつきが生じるという問題もある。
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであって、高い定着強度でトナーを記録媒体に定着させる光定着装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、記録媒体上に担持される未定着トナー像を構成するトナーを、正または負の極性に帯電させる帯電手段と、
前記帯電手段によって帯電した前記トナーに前記記録媒体へ向かうクーロン力を作用させる定常電界であって、前記記録媒体のトナー担持面に垂直な成分の大きさが250V/mm以上500V/mm以下の定常電界を発生させる定常電界発生手段を含む電界発生手段と、
前記帯電手段によって帯電した前記トナーを溶融させる光を照射する光照射手段とを備え、
前記定常電界発生手段によって前記定常電界を発生させながら、前記光照射手段によって、該定常電界が発生した空間の中で、前記トナーを溶融させるように構成されることを特徴とする光定着装置である。
【0011】
また本発明は、前記帯電手段は、前記記録媒体を挟持しながら回転する2本のローラを含み、該2本のローラ間に50V/mm以上200V/mm以下の電界を発生させるように構成されることを特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記電界発生手段は、前記トナー担持面に垂直な成分の大きさが、前記定常電界の前記トナー担持面に垂直な成分の大きさ以下であり、かつ、5kHz以上15kHz以下の周波数で変動する交番電界を発生させる交番電界発生手段をさらに含み、
前記定常電界発生手段と前記交番電界発生手段とによって、前記トナー担持面に垂直な成分の大きさが周期的に変動する変動電界を発生させながら、前記光照射手段によって、該変動電界が発生した空間の中で、前記トナーを溶融させるように構成されることを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記光定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、記録媒体上の未定着のトナーは、まず、帯電手段によって、正または負の極性に帯電する。その後、帯電したトナーは、定常電界発生手段によって発生した所定の定常電界により、記録媒体へ向かうクーロン力を受けながら、光照射手段により照射された光を受ける。光を受けたトナーは、発熱して溶融する。このとき、溶融したトナーには、前記所定の定常電界によって、記録媒体へ向かうクーロン力が作用するので、トナー粒子が膨張してトナーが飛散することが抑えられる。また、前記所定の定常電界によって、トナーを記録媒体に密着または浸透させた上で、トナーを記録媒体に定着させることができるので、トナーの定着強度を向上できる。前記所定の定常電界は、トナー担持面に垂直な成分の大きさが250V/mm以上500V/mm以下であるので、トナーの定着強度を特に向上でき、かつ、トナーが記録媒体に浸透し過ぎないので、画像濃度を維持できる。
【0015】
また本発明によれば、記録媒体上の未定着のトナーは、2本のローラを含む帯電手段によって、正または負の極性に帯電しながら、該2本のローラによる押圧力で、記録媒体に密着する。したがって、トナーを記録媒体により密着または浸透させた上で、光照射手段によって、トナーを記録媒体に定着させることができる。これによって、トナーの定着強度をより向上できる。前記2本のローラ間に発生する電界は、50V/mm以上200V/mm以下であるので、トナーの定着強度を特に向上でき、かつ、トナーが記録媒体に浸透し過ぎないので、画像濃度を維持できる。
【0016】
また本発明によれば、光照射手段によって溶融したトナーには、変動電界によって記録媒体へ向かうクーロン力が作用するので、トナー粒子が膨張してトナーが飛散することが抑えられる。変動電界は、トナー担持面に垂直な成分の大きさが周期的に変動するので、トナーに作用するクーロン力の大きさも周期的に変動する。これによって、トナーに生じる応力が変動し、凝集状態にあるトナーは、画像劣化を生じない程度に周囲に広がる。トナーが周囲に広がることにより、トナーの定着面積が広がる。また、トナーに生じる応力が変動することにより、溶融状態にあるトナーは一様な厚さで定着する。このような作用により、トナーの定着強度が向上する。交番電界のトナー担持面に垂直な成分の周波数が5kHz以上15kHz以下であるので、トナーの定着強度を特に向上でき、かつ、画質を維持できる。
【0017】
また本発明によれば、上記光定着装置を備えるので、定着強度の高い画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】画像形成装置1000の構成を概略的に示す模式図である。
【図2】現像装置24の構成を概略的に示す模式図である。
【図3】光照射部40の構成を概略的に示す模式図である。
【図4】光定着装置100を模式的に表す図である。
【図5】光定着装置200を模式的に表す図である。
【図6】光定着装置300を模式的に表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る光定着装置は、帯電手段と、電界発生手段と、光照射手段とを備える。以下に、本発明の第1実施形態である光定着装置100、第2実施形態である光定着装置200、および第3実施形態である光定着装置300について説明する。
【0020】
光定着装置100,200,300は、たとえば、図1に示す電子写真方式の画像形成装置1000に用いることができる。図1は、画像形成装置1000の構成を概略的に示す模式図である。画像形成装置1000は、複写機能、プリンタ機能、およびファクシミリ機能を併せ持つ複合機であり、伝達される画像情報に応じて、記録媒体上にフルカラーまたはモノクロの画像を形成する。画像形成装置1000は、コピアモード(複写モード)、プリンタモード、およびファクシミリモードという3種の印刷モードを有しており、図示しない操作部からの操作入力、パーソナルコンピュータ、携帯端末装置、情報記録記憶媒体、メモリ装置を用いた外部機器などからの印刷ジョブの受信に応じて、図示しない制御ユニット部によって、印刷モードが選択される。
【0021】
画像形成装置1000は、トナー像形成部20と、転写部30と、光定着装置100と、記録媒体供給部50と、排出部60と、図示しない制御ユニット部とを含む。トナー像形成部20は、感光体ドラム21b,21c,21m,21yと、帯電部22b,22c,22m,22yと、露光ユニット23と、現像装置24b,24c,24m,24yと、クリーニングユニット25b,25c,25m,25yとを含む。転写部30は、中間転写ベルト31と、駆動ローラ32と、従動ローラ33と、中間転写ローラ34b,34c,34m,34yと、転写ベルトクリーニングユニット35と、転写ローラ36とを含む。
【0022】
感光体ドラム21、帯電部22、現像装置24、クリーニングユニット25、および中間転写ローラ34は、カラー画像情報に含まれるブラック(b)、シアン(c)、マゼンタ(m)、およびイエロー(y)の各色の画像情報に対応するために、それぞれ4つずつ設けられる。本明細書中において、各色に応じて4つずつ設けられる各部材を区別する場合は、各部材を表す数字の末尾に各色を表すアルファベットを付して参照符号とし、各部材を総称する場合は、各部材を表す数字のみを参照符号とする。
【0023】
感光体ドラム21は、図示しない駆動部により、軸線回りに回転駆動可能に支持され、図示しない、導電性基体と、導電性基体の表面に形成される感光層とを含む。導電性基体は種々の形状を採ることができ、たとえば、円筒状、円柱状、薄膜シート状などを挙げることができる。感光層は、たとえば、電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とを積層することにより形成される。
【0024】
帯電部22、現像装置24、およびクリーニングユニット25は、感光体ドラム21の回転方向周りに、この順序で配置される。帯電部22は、現像装置24およびクリーニングユニット25よりも鉛直方向下方に配置される。
【0025】
帯電部22は、感光体ドラム21表面を所定の極性および電位に帯電させる部材である。帯電部22は、感光体ドラム21に臨む位置に、感光体ドラム21の長手方向に沿って設置される。接触帯電方式の帯電装置の場合、帯電部22は、感光体ドラム21表面に接するように設置される。非接触帯電方式の帯電装置の場合、帯電部22は、感光体ドラム21表面から離隔するように設置される。
【0026】
帯電部22は、現像装置24、クリーニングユニット25などとともに、感光体ドラム21の周囲に設置される。帯電部22は、現像装置24、クリーニングユニット25などよりも、感光体ドラム21に近い位置に設置されることが好ましい。これによって、感光体ドラム21の帯電不良の発生を確実に防止することができる。
【0027】
帯電部22としては、ブラシ型帯電装置、ローラ型帯電装置、コロナ放電装置、イオン発生装置などを使用できる。ブラシ型帯電装置およびローラ型帯電装置は、接触帯電方式の帯電装置である。ブラシ型帯電装置には、帯電ブラシを用いるもの、磁気ブラシを用いるものなどがある。コロナ放電装置およびイオン発生装置は、非接触帯電方式の帯電装置である。コロナ放電装置には、ワイヤ状の放電電極を用いるもの、鋸歯状の放電電極を用いるもの、針状の放電電極を用いるものなどがある。
【0028】
露光ユニット23は、露光ユニット23から出射される光が、帯電部22と現像装置24との間を通過して感光体ドラム21の表面に照射されるように配置される。露光ユニット23は、帯電状態にある感光体ドラム21b,21c,21m,21y表面に、各色の画像情報に対応するレーザ光をそれぞれ照射することによって、感光体ドラム21b,21c,21m,21yそれぞれの表面に、各色の画像情報に対応する静電潜像を形成する。露光ユニット23には、たとえば、レーザ光照射部および複数の反射ミラーを備えるレーザスキャニングユニット(LSU)を使用できる。露光ユニット23としては、LED(Light Emitting Diode)アレイ、液晶シャッタと光源とを適宜組み合わせたユニットなどを用いてもよい。
【0029】
図2は、現像装置24の構成を概略的に示す模式図である。現像装置24は、現像槽241とトナーホッパ242とを含む。現像槽241は、その内部空間に、本発明に係る光定着装置によって記録媒体に定着可能なトナーを含む現像剤を収容する。トナーについては後述する。現像槽241内には、現像ローラ243、供給ローラ244、攪拌ローラ245などのローラ状またはスクリュー状部材が、回転自在に支持される。現像槽241の感光体ドラム21を臨む側面には開口部が形成され、該開口部を介して感光体ドラム21に対向する位置に現像ローラ243が設けられる。
【0030】
現像ローラ243は、感光体ドラム21との圧接部または最近接部において感光体ドラム21表面の静電潜像にトナーを供給する部材である。トナーの供給に際しては、現像ローラ243表面にトナーの帯電電位とは逆極性の電位が現像バイアス電圧(現像バイアス)として印加される。これによって、現像ローラ243表面のトナーが静電潜像に円滑に供給される。現像バイアスの値を変更することによって、静電潜像に供給されるトナー量(トナー付着量)を制御することができる。
【0031】
供給ローラ244は、現像ローラ243に臨み、現像ローラ243周辺にトナーを供給する部材である。攪拌ローラ245は供給ローラ244に臨み、トナーホッパ242から現像槽241内に新たに供給されるトナーを供給ローラ244周辺に送給する部材である。トナーホッパ242は、その鉛直方向下部に設けられるトナー補給口(図示せず)と、現像槽241の鉛直方向上部に設けられるトナー受入口(図示せず)とが連通するように設けられ、現像槽241のトナー消費状況に応じてトナーを補給する。他の実施形態としては、トナーホッパ242を用いず、各色トナーカートリッジから直接トナーを補給するように構成されてもよい。
【0032】
クリーニングユニット25は、感光体ドラム21から中間転写ベルト31にトナー像が転写された後に、感光体ドラム21の表面に残留するトナーを除去し、感光体ドラム21の表面を清浄化する部材である。クリーニングユニット25には、たとえば、クリーニングブレードなどの板状部材が用いられる。なお、画像形成装置1000においては、感光体ドラム21として、主に有機感光体ドラムが用いられる。有機感光体ドラムの表面は樹脂成分を主体とするものであるため、帯電の際に発生するオゾンの化学的作用によって表面の劣化が進行しやすいけれども、劣化した表面部分はクリーニングユニット25よる擦過作用を受けて摩耗し、徐々にではあるが確実に除去される。したがって、オゾンなどによる感光体ドラム21表面の劣化の問題が実際上解消され、長期間にわたって、帯電動作による帯電電位を安定に維持することができる。本実施形態ではクリーニングユニット25が設けられるけれども、クリーニングユニット25は設けられなくてもよい。
【0033】
トナー像形成部20によれば、帯電部22によって均一な帯電状態にある感光体ドラム21の表面に、露光ユニット23から画像情報に応じたレーザ光が照射されて静電潜像が形成される。静電潜像に現像装置24からトナーが供給されてトナー像が形成され、該トナー像は中間転写ベルト31に転写される。トナー像が中間転写ベルト31に転写された後に、感光体ドラム21表面に残留するトナーは、クリーニングユニット25によって除去される。このような一連のトナー像形成動作が繰り返し実行される。
【0034】
中間転写ベルト31は、感光体ドラム21の鉛直方向上方に配置される無端ベルト状部材である。中間転写ベルト31は、駆動ローラ32と従動ローラ33とによって張架されてループ状の経路を形成し、矢符Bの方向に回転駆動する。
【0035】
駆動ローラ32は、図示しない駆動部によってその軸線回りに回転駆動が可能なように設けられる。駆動ローラ32は、回転駆動によって、中間転写ベルト31を矢符B方向へ回転駆動させる。従動ローラ33は、駆動ローラ32の回転駆動に従動して回転可能なように設けられ、中間転写ベルト31が弛まないように、中間転写ベルト31に一定の張力を発生させる。
【0036】
中間転写ローラ34は、中間転写ベルト31を介して感光体ドラム21に圧接し、かつ図示しない駆動部によってその軸線回りに回転駆動が可能なように設けられる。中間転写ローラ34は、転写バイアスを印加する図示しない電源が接続され、感光体ドラム21表面のトナー像を中間転写ベルト31に転写する機能を有する。
【0037】
転写ローラ36は、中間転写ベルト31を介して駆動ローラ32に圧接し、図示しない駆動部によって軸線回りに回転駆動が可能なように設けられる。転写ローラ36と駆動ローラ32との圧接部(転写ニップ部)において、中間転写ベルト31に担持されて搬送されるトナー像が、後述する記録媒体供給部50から送給される記録媒体に転写される。
【0038】
転写ベルトクリーニングユニット35は、中間転写ベルト31を介して従動ローラ33に対向し、中間転写ベルト31のトナー像担持面に接触するように設けられる。記録媒体へのトナー像の転写後に、中間転写ベルト31にトナーが付着したまま残っていると、中間転写ベルト31の回転駆動によって、残留トナーが転写ローラ36に付着するおそれがある。転写ローラ36に付着したトナーは、次に転写する記録媒体の裏面を汚染する原因となる。したがって、転写ベルトクリーニングユニット35は、記録媒体へのトナー像の転写後に、中間転写ベルト31表面のトナーを除去し回収するために設けられる。
【0039】
転写部30によれば、中間転写ベルト31が感光体ドラム21に接しながら回転駆動する際、中間転写ローラ34に、感光体ドラム21表面のトナーの帯電極性とは逆極性の転写バイアスが印加され、感光体ドラム21の表面に形成されたトナー像は、中間転写ベルト31上へ転写される。フルカラー画像の場合、感光体ドラム21y、感光体ドラム21m、感光体ドラム21c、感光体ドラム21bでそれぞれ形成される各色のトナー画像が、中間転写ベルト31上に、この順番で順次重ねて転写されることによって、フルカラートナー像が形成される。中間転写ベルト31に転写されたトナー像は、中間転写ベルト31の回転駆動によって転写ニップ部に搬送され、転写ニップ部において、記録媒体に転写される。トナー像が転写された記録媒体は、光定着装置100に搬送される。
【0040】
記録媒体供給部50は、自動給紙部51と、ピックアップローラ52a,52bと、搬送ローラ53a,53bと、レジストローラ54と、手差給紙トレイ55とを含む。自動給紙部51は画像形成装置1000の鉛直方向下部に設けられ、画像形成装置1000内部において記録媒体を貯留する容器状部材である。手差給紙トレイ55は、画像形成装置1000外部において記録媒体を貯留するトレイ状部材である。記録媒体としては、普通紙、カラーコピー用紙、オーバーヘッドプロジェクタ用シート、葉書などがある。
【0041】
ピックアップローラ52aは、自動給紙部51に貯留される記録媒体を1枚ずつ取り出し、用紙搬送路A1に送給するローラ状部材である。搬送ローラ53aは互いに圧接するように設けられる一対のローラ状部材であり、用紙搬送路A1において記録媒体をレジストローラ54に向けて搬送する。ピックアップローラ52bは、手差給紙トレイ55に貯留される記録媒体を1枚ずつ取り出し、用紙搬送路A2に送給するローラ状部材である。搬送ローラ53bは互いに圧接するように設けられる一対のローラ状部材であり、用紙搬送路A2において記録媒体をレジストローラ54に向けて搬送する。
【0042】
レジストローラ54は、互いに圧接するように設けられる一対のローラ状部材であり、搬送ローラ53a,53bから送給される記録媒体を、中間転写ベルト31に担持されるトナー像が転写ニップ部に搬送されるのに同期して、転写ニップ部に送給する。
【0043】
記録媒体供給部50によれば、中間転写ベルト31に担持されるトナー像が転写ニップ部に搬送されるのに同期して、自動給紙部51または手差給紙トレイ55から記録媒体が転写ニップ部に送給され、該記録媒体にトナー像が転写される。
【0044】
光定着装置100は、未定着トナー像を担持した記録媒体が転写ニップ部から搬送されてくると、所定の波長を有するレーザ光を該未定着トナー像に照射し、該未定着トナー像を構成するトナーを記録媒体に定着させる。トナーが定着した記録媒体は、光定着装置100から排出部60へ搬送される。
【0045】
はじめに述べたように、本発明に係る光定着装置は、帯電手段と、電界発生手段と、光照射手段とを備える。帯電手段は、記録媒体上に担持される未定着トナー像を構成するトナーを、正または負の極性に帯電させる手段である。電界発生手段は、定常電界発生手段を含む。定常電界発生手段は、帯電手段によって帯電したトナーに前記記録媒体へ向かうクーロン力を作用させる定常電界であって、記録媒体のトナー担持面に垂直な成分の大きさが250V/mm以上500V/mm以下の定常電界を発生させる手段である。光照射手段は、帯電手段によって帯電したトナーを溶融させる光を照射する手段である。本発明に係る光定着装置は、定常電界発生手段によって前記定常電界を発生させながら、光照射手段によって、該定常電界が発生した空間の中で、トナーを溶融させるように構成される。
【0046】
光定着装置100では、後述する図4に示すように、帯電部70が帯電手段であり、電界発生部80が電界発生手段であり、光照射部40が光照射手段である。光定着装置200では、後述する図5に示すように、帯電部90が帯電手段であり、電界発生部110が電界発生手段であり、光照射部40が光照射手段である。光定着装置300では、後述する図6に示すように、帯電部120が帯電手段であり、電界発生部130が電界発生手段であり、光照射部40が光照射手段である。
【0047】
まず、光定着装置100,200,300が共通して備える光照射部40について説明する。帯電部70,90,120および電界発生部80,110,130については、後述する。図3は、光照射部40の構成を概略的に示す模式図である。図3(a)は光照射部40の正面図であり、図3(b)は光照射部40を図3(a)のI方向から見た上面図であり、図3(c)は光照射部40を図3(a)のII方向から見た右側面図である。
【0048】
光照射部40は、レーザ光源41と、回転多面鏡42と、搬送ローラ43とを含む。レーザ光源41は、トナーを溶融させる所定の波長のレーザ光を照射する部材である。回転多面鏡42は、レーザ光源41から照射されたレーザ光を反射して、記録媒体Pのトナー担持面に対して略垂直な方向から、記録媒体Pを走査露光する。回転多面鏡42は、たとえば、その形状が正六角柱状であり、矢符C1方向に定速回転する。レーザ光源41は、回転多面鏡42によって、記録媒体P上の未定着トナー像に局所的にレーザ光を照射することができる。
【0049】
レーザ光源41から照射されるレーザ光の強度は、1.5W/cm以上630W/cm以下の範囲内であることが好ましい。レーザ光の強度が1.5W/cmよりも弱い場合には、レーザ光の照射によるトナーの溶融が不充分となるためにトナーの定着率が低下してしまう。レーザ光の強度が630W/cmよりも強くなると、レーザ光の照射によりトナーまたは記録媒体に焦げが生じてしまい、これによってトナーの定着率が低下してしまう。
【0050】
搬送ローラ43は、図示しない駆動部によってその軸線回りに回転駆動が可能なように、回転多面鏡42に対向する位置に設けられるローラ状部材である。搬送ローラ43は、たとえば、ステンレス鋼などの金属によって形成される金属ローラの表面を、ゴムなどの摩擦の大きい弾性部材にカーボンブラックなどの導電剤を含有させたものによって被覆して構成する。搬送ローラ43は、回転駆動によって、記録媒体を矢符C2の方向に搬送する。
【0051】
なお、レーザ光源41と回転多面鏡42との間の光路には、コリメータレンズ、シリンダーレンズなどを設けてもよい。また、回転多面鏡42と搬送ローラ43との間には、fθレンズ、折り返しミラー、反射ミラーなどを設けてもよい。
【0052】
また、本実施形態では、光照射部40は、レーザ光を照射するレーザ光源41を含むように構成されるけれども、他の実施形態としては、光照射部40は、フラッシュ光を照射するフラッシュランプなどを含むように構成されてもよい。
【0053】
排出部60は、搬送ローラ61と、排出ローラ62と、排出トレイ63とを含む。搬送ローラ61は、光定着装置100よりも鉛直方向上方において、互いに圧接するように設けられる一対のローラ状部材である。搬送ローラ61は、画像が定着した記録媒体を排出ローラ62に向けて搬送する。
【0054】
排出ローラ62は、互いに圧接するように設けられる一対のローラ状部材である。排出ローラ62は、片面印刷の場合、片面の印刷が完了した記録媒体を排出トレイ63に排出する。排出ローラ62は、両面印刷の場合は、片面の印刷が完了した記録媒体を、用紙搬送路A3を介してレジストローラ54へ搬送し、両面の印刷が完了した記録媒体を排出トレイ63に排出する。排出トレイ63は、画像形成装置1000の鉛直方向上面に設けられ、画像が定着した記録媒体を貯留する。
【0055】
画像形成装置1000は、図示しない制御ユニット部を含む。制御ユニット部は、たとえば、画像形成装置1000の内部空間における鉛直方向上部に設けられ、記憶部と演算部と制御部とを含む。制御ユニット部の記憶部には、画像形成装置1000の鉛直方向上面に配置される図示しない操作パネルを介する各種設定値、画像形成装置1000内部の各所に配置される図示しないセンサなどからの検知結果、外部機器からの画像情報などが入力される。また、記憶部には、各種処理を実行するプログラムが書き込まれる。各種処理とは、たとえば、記録媒体判定処理、付着量制御処理、定着条件制御処理などである。
【0056】
記憶部には、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、リードオンリィメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ハードディスクドライブ(HDD)などが挙げられる。外部機器には、画像情報の形成または取得が可能であり、かつ画像形成装置1000に電気的に接続可能な電気、電子機器を使用でき、たとえば、コンピュータ、デジタルカメラ、テレビジョン受像機器、ビデオレコーダ、DVD(Digital
Versatile Disc)レコーダ、HDDVD(High-Definition Digital Versatile Disc)レコーダ、ブルーレイディスクレコーダ、ファクシミリ装置、携帯端末装置などが挙げられる。
【0057】
演算部は、記憶部に書き込まれる各種データ(画像形成命令、検知結果、画像情報など)および各種処理のプログラムを取り出し、各種判定を行う。制御部は、演算部の判定結果に応じて該当装置に制御信号を送付し、動作制御を行う。
【0058】
制御部および演算部は中央処理装置(CPU、Central Processing Unit)を備えるマイクロコンピュータ、マイクロプロセッサなどによって実現される処理回路を含む。制御ユニット部は、前述の処理回路とともに主電源を含み、電源は制御ユニット部だけでなく、画像形成装置1000内部における各部材にも電力を供給する。
【0059】
次に、トナーについて説明する。画像形成装置1000に用いられるトナーは、光照射部40により所定の波長の光が照射されることによって記録媒体に定着するトナーである。このようなトナーとしては、たとえば、赤外線吸収剤を含み、所定の波長の光として赤外線が照射されることによって溶融するトナー(赤外線定着トナー)が挙げられる。
【0060】
赤外線定着トナーは、結着樹脂、着色剤、赤外線吸収剤、およびその他の添加剤を含む。結着樹脂としては、従来公知のトナー用の結着樹脂を使用できる。トナー用の結着樹脂としては、たとえば、スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。結着樹脂は、1種を単独で使用でき、または2種以上を併用できる。
【0061】
着色剤としては、染料および顔料を挙げることができ、その中でも顔料を用いることが好ましい。顔料は、染料に比べて耐光性および発色性に優れるので、顔料を用いることによって耐光性および発色性に優れるトナーを得ることができる。
【0062】
着色剤としては、たとえば、イエロートナー用着色剤、マゼンタトナー用着色剤、シアントナー用着色剤、ブラックトナー用着色剤などを挙げることができる。
【0063】
イエロートナー用着色剤としては、たとえば、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー5、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185などの有機系顔料、黄色酸化鉄、黄土などの無機系顔料、C.I.アシッドイエロー1などのニトロ系染料、C.I.ソルベントイエロー2、C.I.ソルベントイエロー6、C.I.ソルベントイエロー14、C.I.ソルベントイエロー15、C.I.ソルベントイエロー19、C.I.ソルベントイエロー21などの油溶性染料が挙げられる。
【0064】
マゼンタトナー用着色剤としては、たとえば、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントレッド49、C.I.ピグメントレッド57、C.I.ピグメントレッド81、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ソルベントレッド19、C.I.ソルベントレッド49、C.I.ソルベントレッド52、C.I.ベーシックレッド10、C.I.ディスパーズレッド15などが挙げられる。
【0065】
シアントナー用着色剤としては、たとえば、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ソルベントブルー55、C.I.ソルベントブルー70、C.I.ダイレクトブルー25、C.I.ダイレクトブルー86などが挙げられる。
【0066】
ブラックトナー用着色剤としては、たとえば、チャンネルブラック、ローラーブラック、ディスクブラック、ガスファーネスブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラックが挙げられる。
【0067】
着色剤の使用量は特に制限されないけれども、好ましくは結着樹脂100重量部に対して4重量部以上20重量部以下である。着色剤の使用量が20重量部を超えると、トナーの透明性および定着性が低下してしまい、4重量部未満であると充分な画像濃度が得られなくなってしまう。
【0068】
赤外線吸収剤は、赤外線を吸収することによって発熱する物質であり、赤外線定着用トナーの赤外線吸収効率を向上させるために、トナーに添加される。赤外線吸収剤としては、電磁波の吸収ピークが、赤外線の波長域の中でも、波長780nm以上1000nm以下の範囲内にある赤外線吸収剤が特に好ましい。さらに、赤外線吸収剤としては、可視光線の吸収が少ない赤外線吸収剤であることが好ましい。このような赤外線吸収剤を用いることによって、トナーの色相への影響を抑えることができる。なお、本実施形態において、「赤外線」とは、波長が780nm以上10nm(1mm)以下の電磁波を指し、「可視光線」とは、波長が380nm以上780nm未満の電磁波を指す。
【0069】
赤外線吸収剤としては、従来公知の赤外線定着用トナー用の赤外線吸収剤が使用できる。赤外線吸収剤としては、たとえば、シアニン化合物、カーボンブラック、ジイモニウム化合物、アミニウム化合物、ポリメチン化合物、フタロシアニン化合物などが挙げられる。赤外線吸収剤は、1種を単独で用いてもよく、または2種以上を併用して用いてもよい。
【0070】
シアニン化合物としては、たとえば、KAYASORB CY−40MC(商品名、日本化薬株式会社製)、KAYASORB CYP−4646(F)(商品名、日本化薬株式会社製)、NK−4680(商品名、株式会社林原生物化学研究所製)、SD50−E05N(商品名、住友精化株式会社製)などが挙げられる。ジイモニウム化合物としては、たとえば、CIR−1085(商品名、日本カーリット株式会社製)、CIR−1085F(商品名、日本カーリット株式会社製)などが挙げられる。アミニウム化合物としては、たとえば、NIR−AM1(商品名、ナガセケムテックス株式会社製)が挙げられる。ポリメチン系化合物としては、たとえば、IRT(商品名、昭和電工株式会社製)が挙げられる。フタロシアニン化合物としては、たとえば、IR−10A(商品名、株式会社日本触媒製)、IR−12(商品名、株式会社日本触媒製)などが挙げられる。
【0071】
赤外線吸収剤としては、シアニン化合物を用いることが好ましい。シアニン化合物は、波長780nm以上1000nm以下の範囲内に電磁波の吸収ピークを有し、かつ、高い吸光度を有するため、トナーの赤外線吸収効率を充分に向上させることができる。これによって、トナーは、赤外線定着において充分な定着性を発揮できる。
【0072】
赤外線吸収剤としてシアニン化合物を用いる場合、シアニン化合物の含有量は、トナー100重量部に対して、0.1重量部以上5.0重量部以下であることが好ましい。シアニン化合物の含有量を0.1重量部以上5.0重量部以下とすることで、トナーの定着性を向上させることができ、定着画像の白抜けおよび彩度の低下を防ぐことができる。
【0073】
シアニン化合物の含有量が0.1重量部未満であると、赤外線の吸収による発熱量が少なくなり、トナーが充分に溶融せず、トナーの定着性が低下してしまう。シアニン化合物の含有量が5.0重量部を超えると、赤外線の吸収によるトナーの急激な溶融が起こり、突沸が生じてトナーが飛び散り、画像の白抜けが発生してしまう。また、シアニン化合物の含有量が5.0重量部を超えると、シアニン化合物による可視光線の吸収量が多くなるため、画像の彩度が低下してしまう。
【0074】
トナーはワックスを含んでもよい。ワックスは、記録媒体に定着したトナー像である定着画像に、平滑性を付与する目的で添加される。トナー母粒子にワックスを添加することにより、定着画像表面の凹凸が少なくなり、定着画像が平滑になる。
【0075】
ワックスとしては、特に限定されず、公知のものを使用することができる。ワックスとしては、たとえば、パラフィンワックスおよびその誘導体、マイクロクリスタリンワックスおよびその誘導体などの石油系ワックス、カルナバワックスおよびその誘導体、ライスワックスおよびその誘導体、キャンデリラワックスおよびその誘導体、木蝋などの植物系ワックス、蜜蝋、鯨蝋などの動物系ワックス、フィッシャートロプシュワックスおよびその誘導体、ポリオレフィンワックスおよびその誘導体、低分子ポリプロピレンワックスおよびその誘導体、ポリオレフィン系重合体ワックスおよびその誘導体などの炭化水素系合成ワックス、脂肪酸アミド、フェノール脂肪酸エステルなどの油脂系合成ワックス、長鎖カルボン酸およびその誘導体、長鎖アルコールおよびその誘導体、シリコーン系重合体、高級脂肪酸が挙げられる。
【0076】
ワックスの使用量は特に限定されず、広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは結着樹脂100重量部に対して0.2重量部以上20重量部以下である。ワックスの使用量が20重量部を超えると、感光体フィルミング、キャリアスペントなどが起こってしまい、0.2重量部未満であると、ワックスの機能を充分発揮できなくなってしまう。
【0077】
ワックスの融点は、特に制限されないけれども、30℃〜120℃であることが好ましい。ワックスの融点が120℃を超えると、ワックスの機能が充分発揮されなくなってしまい、30℃未満であるとトナーの保存性が損なわれてしまう。
【0078】
トナーは帯電制御剤を含んでもよい。帯電制御剤は、トナーに好ましい帯電性を付与するために添加される。帯電制御剤は、特に限定されるものではなく、公知の正電荷制御用または負電荷制御用の帯電制御剤を用いることができる。
【0079】
正電荷制御用の帯電制御剤としては、たとえば、ニグロシン染料、塩基性染料、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩、アミノピリン、ピリミジン化合物、多核ポリアミノ化合物、アミノシラン、ニグロシン染料およびその誘導体、トリフェニルメタン誘導体、グアニジン塩、アミジン塩などが挙げられる。
【0080】
負電荷制御用の帯電制御剤としては、たとえば、オイルブラック、スピロンブラックなどの油溶性染料、含金属アゾ化合物、アゾ錯体染料、ナフテン酸金属塩、サリチル酸およびその誘導体の、金属錯体および金属塩(金属はクロム、亜鉛、ジルコニウムなど)、ホウ素化合物、脂肪酸石鹸、長鎖アルキルカルボン酸塩、樹脂酸石鹸が挙げられる。
【0081】
正電荷制御用の帯電制御剤は、1種を単独で用いてもよく、または2種以上の正電荷制御用の帯電制御剤を併用して用いてもよい。同様に、負電荷制御用の帯電制御剤は、1種を単独で用いてもよく、または2種以上の負電荷制御用の帯電制御剤を併用して用いてもよい。
【0082】
帯電制御剤は、結着樹脂100重量部に対して0.5重量部以上用いられることが好ましく、1重量部以上用いられることがより好ましい。帯電制御剤の含有量が0.5重量部未満であると、トナーに充分な帯電性を付与することができなくなってしまう。また、結着樹脂に対して非相溶性の帯電制御剤を用いる場合は、結着樹脂100重量部に対して、非相溶性帯電制御剤が5重量部以下で用いられることが好ましく、3重量部以下で用いられることがより好ましい。トナーとキャリアとを含む2成分現像剤の場合、トナー中の結着樹脂100重量部に対して非相溶性帯電制御剤が5重量部よりも多く含まれると、非相溶性帯電制御剤によってキャリアが汚染されてしまい、トナー飛散が発生してしまう。
【0083】
トナーには外添剤が外添されてもよい。外添剤は、トナーの流動性、摩擦帯電性、耐熱性、長期保存性、クリーニング特性、および感光体表面磨耗特性を向上させるために添加される。外添剤としては公知のものを使用でき、たとえば、シリカ、酸化チタン、アルミナなどが挙げられる。外添剤は、シリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシランカップリング剤、有機ケイ素化合物などで処理されていることが好ましい。
【0084】
外添剤は、1種を単独で用いてもよく、または2種以上を併用して用いてもよい。外添剤の使用量は、トナー100重量部に対して1重量部〜10重量部であることが好ましく、1重量部〜5重量部であることがより好ましい。
【0085】
外添剤は、1次粒子の個数平均粒径が10nm〜500nmであることが好ましい。このような粒径の外添剤を用いることにより、トナーの流動性がさらに向上する。
【0086】
上記赤外線定着トナーは、1成分現像剤に用いることができ、2成分現像剤にも用いることができる。1成分現像剤は、キャリアを含まず、赤外線定着トナーのみからなる。1成分現像剤は、現像スリーブによって搬送され、ブレードまたはファーブラシによって摩擦帯電し、静電気力によって静電潜像に供給されることで、該静電潜像を現像する。
【0087】
2成分現像剤は、赤外線定着トナーとともに、公知のキャリアを含む。キャリアとしては、たとえば、鉄、銅、亜鉛、ニッケル、コバルト、マンガン、クロムなどからなる単独または複合フェライトキャリア、フェライトからなるキャリアコア粒子を被覆物質で表面被覆した樹脂被覆キャリア、樹脂に磁性を有する粒子を分散させた樹脂分散型キャリアなどを挙げることができる。
【0088】
被覆物質は、特に限定されるものではなく、公知のものを用いることができる。被覆物質としては、たとえば、ポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ジターシャーリーブチルサリチル酸の金属化合物、スチレン系樹脂、アクリル樹脂、ポリアシド、ポリビニルラール、ニグロシン、アミノアクリレート樹脂、塩基性染料、塩基性染料のレーキ物、シリカ微粉末、アルミナ微粉末などを挙げることができる。被覆物質は、トナー成分に応じて適宜選択することが好ましく、1種を単独で用いてもよいし、または2種以上を併用してもよい。
【0089】
樹脂分散型キャリアに用いられる樹脂は、特に限定されるものではなく、たとえば、スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、フェノール樹脂などを挙げることができる。樹脂分散型キャリアに用いられる樹脂は、トナー成分に応じて適宜選択することが好ましく、1種を単独で用いてもよいし、または2種以上を併用してもよい。
【0090】
キャリアの形状は、球形または扁平形状であることが好ましい。キャリアの粒径は、特に限定されないけれども、定着画像の高画質化を考慮すると、10μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、20μm〜50μmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0091】
キャリアの抵抗率は、10Ω・cm以上であることが好ましく、1012Ω・cm以上であることがさらに好ましい。キャリアの抵抗率が低いと、バイアス電圧を印加する際にキャリアに電荷が注入されてしまい、感光体ドラム21にキャリア粒子が付着してしまうおそれがある。また、キャリアの抵抗率が低いと、バイアス電圧のブレークダウンが起こり易くなる。なお、「キャリアの抵抗率」は、キャリアを、断面積が0.50cmで底面に電極を有する容器に入れてタッピングした後に、錘によって容器内に詰められたキャリア粒子に1kg/cmの荷重を掛け、錘と底面電極との間に1000V/cmの電界が生ずる電圧を印加したときの電流値である。
【0092】
キャリアの磁化強さ(最大磁化)は、10emu/g〜60emu/gの範囲内であることが好ましく、15emu/g〜40emu/gの範囲内であることがさらに好ましい。現像ローラの磁束密度によるけれども、一般的な磁束密度の条件下においては、キャリアの磁化強さが10emu/g未満であると磁気的な束縛力が働かず、キャリア飛散の原因となる。キャリアの磁化強さが60emu/gを超えると、キャリアの穂立ちが高くなり過ぎてしまう。非接触現像では、キャリアの穂立ちが高くなり過ぎると、感光体ドラム21とキャリアとが非接触状態を保つことが困難になる。また、接触現像では、キャリアの穂立ちが高くなり過ぎると、トナー像に掃き目が現れ易くなる。
【0093】
2成分現像剤におけるトナーとキャリアとの使用割合は特に限定されるものではなく、トナーおよびキャリアの種類に応じて適宜選択することができる。たとえば、樹脂被覆キャリア(密度5g/cm〜8g/cm)を用いる場合、現像剤中に、トナーが現像剤全量の2重量%〜30重量%、好ましくは2重量%〜20重量%含まれるように、トナーを用いればよい。2成分現像剤において、トナーによるキャリアの被覆率は、40%〜80%の範囲内であることが好ましい。
【0094】
次に、本発明の第1実施形態である光定着装置100について詳細に説明する。図4は、光定着装置100を模式的に表す図である。光定着装置100は、帯電部70と、電界発生部80と、光照射部40とを含む。光照射部40については上述したので、説明を省略する。
【0095】
帯電部70は、記録媒体P上に担持される未定着トナー像を構成するトナーTを帯電させるための部材である。帯電部70は、矢符C2で示す記録媒体Pの搬送方向において、光照射部40よりも上流に設けられる。帯電部70は、コロナ放電装置71と、支持板72とを含む。
【0096】
コロナ放電装置71は、電圧が印加されることによりコロナ放電を生じて、被帯電物を帯電させる装置である。コロナ放電装置71は、現像の際に帯電するトナーの極性(帯電極性)と同一の極性に、トナーTを帯電させる。コロナ放電装置71としては、感光体ドラム21を帯電させるための帯電部22に用いられる従来公知のコロナ放電装置を用いることができ、たとえば、鋸歯状の放電電極を備えるコロナ放電装置や、ワイヤ状の放電装置を備えるコロナ放電装置が挙げられる。コロナ放電装置71に印加される電圧は、3.5kV〜7.5kVである。
【0097】
支持板72は、コロナ放電装置71に対向して設けられる板状部材である。支持板72は、などの金属からなる板状部材であり、転写部30から搬送される記録媒体Pを支持するとともに、放電の目標物となることで、コロナ放電装置71の均一な放電を可能とする。
【0098】
電界発生部80は、光照射部40によってレーザ光が照射される領域(定着領域)に電界を発生させる部材である。電界発生部80は、電極81と直流電源82とを含む。電極81は、回転多面鏡42と搬送ローラ43との間に設けられ、たとえば、搬送ローラ43から2mm隔てて設けられる。電極81は、ステンレス板などの金属からなる板状部材に、幅1〜2mmのスリット81aを設けて構成される。回転多面鏡42によって反射されたレーザ光は、電極81のスリット81aを通って、トナーTに照射される。なお、電極81の代わりに、スリットの無い透明電極を用いてもよい。
【0099】
直流電源82は、搬送ローラ43の金属ローラと電極81とに接続され、該金属ローラと電極81とに定常電圧を印加する。搬送ローラ43の金属ローラは、電極として機能する。直流電源82は、定常電界を発生させる定常電界発生手段である。本実施形態において、定常電界とは、記録媒体Pのトナー担持面に垂直な成分の大きさが250V/mm以上500V/mm以下であり、かつ、時間的に変化しない電界であって、帯電部70によって帯電したトナーTに記録媒体Pへ向かうクーロン力を作用させる電界である。たとえば、記録媒体のトナー担持面から該トナー担持面とは反対側の面へ向かう方向を正とすると、トナーの帯電極性が負の場合は、定常電界のトナー担持面に垂直な成分の値は、−500V/mm以上−250V/mm以下である。光定着装置100は、たとえば、電極81の主面と記録媒体Pのトナー担持面とが平行になるように、記録媒体Pを搬送するなどして、定常電界のトナー担持面に垂直な成分以外の成分の大きさが、すべて0(V/mm)となるようにすることが好ましい。
【0100】
このように構成される光定着装置100は、転写ニップ部で記録媒体P上にトナー像が転写されると、帯電部70によって、記録媒体P上の未定着のトナーTを、帯電極性と同一の極性に帯電させる。これにより、記録媒体P上の未定着トナー像を構成するトナーT全体が、同一の極性に、均一に帯電する。
【0101】
その後、光定着装置100は、記録媒体Pを搬送方向下流に搬送し、光照射部40によってトナーTに対してレーザ光を照射するとともに、電界発生部80によって定常電界を発生させる。これにより、帯電したトナーTは、定常電界によって記録媒体Pへ向かうクーロン力を受けながら、レーザ光を受ける。レーザ光を受けたトナーTは、赤外線定着剤や着色剤が発熱し、結着樹脂が溶融する。
【0102】
溶融したトナーTには、定常電界によって記録媒体Pへ向かうクーロン力が作用するので、トナー粒子が膨張してトナーTが飛散することが抑えられる。また、定常電界によってトナーTが記録媒体に密着または浸透した状態で、トナーTが記録媒体に定着するので、トナーTの定着強度が向上する。したがって、光定着装置100は、定着強度および画像濃度を向上させることができる。
【0103】
なお、定常電界の大きさが250V/mm未満であると、充分な定着強度を得ることができない。また、定常電界の大きさが500V/mmを超えると、記録媒体Pの内部にトナーTが多く浸透してしまい、画像濃度が低下してしまう。
【0104】
光定着装置100は、電界発生部80によって発生させる定常電界のトナー担持面に垂直な成分の大きさが250V/mm以上500V/mm以下であるので、トナーの定着強度を特に向上でき、かつ、トナーが記録媒体に浸透し過ぎないので、画像濃度を維持できる。
【0105】
次に、本発明の第2実施形態である光定着装置200について詳細に説明する。図5は、光定着装置200を模式的に表す図である。光定着装置200は、帯電部90と、電界発生部110と、光照射部40とを含む。光照射部40については上述したので、説明を省略する。
【0106】
帯電部90は、記録媒体P上に担持される未定着トナー像を構成するトナーTを帯電させるための部材である。帯電部90は、矢符C2で示す記録媒体Pの搬送方向において、光照射部40よりも上流に設けられる。帯電部90は、圧接ローラ91と、支持ローラ92と、直流電源93とを含む。
【0107】
圧接ローラ91および支持ローラ92は、記録媒体Pを挟持しながら回転することで、記録媒体Pを搬送方向下流に搬送するローラ対である。圧接ローラ91は、トナー担持面に接触するローラであり、支持ローラ92は、トナー担持面とは反対側の面に接触するローラである。本実施形態では、圧接ローラ91と支持ローラ92との最近接距離(圧接ローラ91と支持ローラ92とのギャップ)は、2mmである。圧接ローラ91および支持ローラ92は、120rpmで回転して、記録媒体Pを搬送する。
【0108】
圧接ローラ91は、導電性のローラである。圧接ローラ91としては、たとえば、ステンレスからなる金属ローラ(直径8mm)を、ウレタンゴムにカーボンブラック(導電剤)を含有させたゴム材(体積抵抗率10Ω・cm、ゴム厚5mm)によって被覆した、導電性のローラ(直径18mm)を用いることができる。圧接ローラ91として、導電性シリコンゴムローラを用いてもよい。
【0109】
圧接ローラ91は、記録媒体P上の未定着のトナーTに、未定着トナー像を乱さないような弱い押圧力で接触する。圧接ローラ91の押圧力は、線圧で0.2g重/cm〜0.5g重/cmである。圧接ローラ91は、未定着トナー像を乱さないように、トナーの剥離性が高いフッ素系樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)など)で、表面がコーティングされることが好ましい。
【0110】
支持ローラ92は、圧接ローラ91に対向して設けられる、導電性のローラである。支持ローラ92としては、たとえば、外径が18mmの、アルミからなる中空ローラを用いることができる。支持ローラ92は、記録媒体Pを搬送し易いように、サンドブラストなどの表面加工が施されることが好ましい。直流電源93は、圧接ローラ91と支持ローラ92とに、100V以上400V以下の電圧(帯電電圧)を印加する。上述したように、圧接ローラ91と支持ローラ92とのギャップは2mmであるので、圧接ローラ91と支持ローラ92との間の電界は、50V/mm〜200V/mmとなる。
【0111】
電界発生部110は、光照射部40によってレーザ光が照射される領域(定着領域)に電界を発生させる部材である。電界発生部110は、電極111と直流電源112とを含む。電極111は、回転多面鏡42と搬送ローラ43との間に設けられ、たとえば、搬送ローラ43から2mm隔てて設けられる。電極111は、ステンレス板などの金属からなる板状部材に、幅1mm〜2mmのスリット111aを設けて構成される。回転多面鏡42によって反射されたレーザ光は、電極111のスリット111aを通って、トナーTに照射される。なお、電極111の代わりに、スリットの無い透明電極を用いてもよい。
【0112】
直流電源112は、搬送ローラ43の金属ローラと電極111とに接続され、該金属ローラと電極111とに定常電圧を印加する。搬送ローラ43の金属ローラは、電極として機能する。直流電源112は、定常電界を発生させる定常電界発生手段である。本実施形態において、定常電界とは、記録媒体Pのトナー担持面に垂直な成分の大きさが250V/mm以上500V/mm以下であり、かつ、時間的に変化しない電界であって、帯電部90によって帯電したトナーTに記録媒体Pへ向かうクーロン力を作用させる電界である。光定着装置200は、たとえば、電極111の主面と記録媒体Pのトナー担持面とが平行になるように、記録媒体Pを搬送するなどして、定常電界のトナー担持面に垂直な成分以外の成分の大きさが、すべて0(V/mm)となるようにすることが好ましい。
【0113】
このように構成される光定着装置200は、転写ニップ部で記録媒体P上にトナー像が転写されると、帯電部90によって、記録媒体P上の未定着のトナーTを、帯電極性と同一の極性に帯電させる。より詳細には、直流電源93により電圧が印加された圧接ローラ91に、トナーTが接触することで、トナーTに電荷が誘起され、トナーTが帯電する。圧接ローラ91は、ローラ状であるので、トナーT全体をより均一に帯電させることができる。また、圧接ローラ91による押圧力によって、トナーTは、記録媒体Pに密着する。
【0114】
その後、光定着装置200は、記録媒体Pを搬送方向下流に搬送し、光照射部40によってトナーTに対してレーザ光を照射するとともに、電界発生部110によって定常電界を発生させる。これにより、帯電したトナーTは、定常電界によって記録媒体Pへ向かうクーロン力を受けながら、レーザ光を受ける。レーザ光を受けたトナーTは、赤外線定着剤や着色剤が発熱し、結着樹脂が溶融する。
【0115】
溶融したトナーTには、定常電界によって記録媒体Pへ向かうクーロン力が作用するので、トナー粒子が膨張してトナーTが飛散することが抑えられる。また、定常電界によってトナーTが記録媒体により密着または浸透した状態で、トナーTが記録媒体に定着するので、トナーTの定着強度が向上する。したがって、光定着装置200は、定着強度および画像濃度を向上させることができる。
【0116】
光定着装置200は、電界発生部110によって発生させる定常電界の大きさが250V/mm以上500V/mm以下である。また、帯電部90において圧接ローラ91と支持ローラ92との間に発生する電界が、50V/mm以上200V/mm以下である。したがって、トナーの定着強度を特に向上でき、かつ、トナーが記録媒体に浸透し過ぎないので、画像濃度を維持できる。
【0117】
次に、本発明の第3実施形態である光定着装置300について詳細に説明する。図6は、光定着装置300を模式的に表す図である。光定着装置300は、帯電部120と、電界発生部130と、光照射部40とを含む。光照射部40については上述したので、説明を省略する。
【0118】
帯電部120は、記録媒体P上に担持される未定着トナー像を構成するトナーTを帯電させるための部材である。帯電部120は、矢符C2で示す記録媒体Pの搬送方向において、光照射部40よりも上流に設けられる。帯電部120は、圧接ローラ121と、支持ローラ122と、直流電源123とを含む。
【0119】
圧接ローラ121および支持ローラ122は、記録媒体Pを挟持しながら回転することで、記録媒体Pを搬送方向下流に搬送するローラ対である。圧接ローラ121は、トナー担持面に接触するローラであり、支持ローラ122は、トナー担持面とは反対側の面に接触するローラである。本実施形態では、圧接ローラ121と支持ローラ122との最近接距離(圧接ローラ121と支持ローラ122とのギャップ)は、2mmである。圧接ローラ121および支持ローラ122は、120rpmで回転して、記録媒体Pを搬送する。
【0120】
圧接ローラ121は、導電性のローラである。圧接ローラ121としては、たとえば、ステンレス鋼からなる金属ローラ(直径8mm)を、ウレタンゴムにカーボンブラック(導電剤)を含有させたゴム材(体積抵抗率10Ω・cm、ゴム厚5mm)によって被覆した、導電性のローラ(直径18mm)を用いることができる。圧接ローラ121として、導電性シリコンゴムローラを用いてもよい。
【0121】
圧接ローラ121は、記録媒体P上の未定着のトナーTに、未定着トナー像を乱さないような弱い押圧力で接触する。圧接ローラ121の押圧力は、線圧で0.2g重/cm〜0.5g重/cmである。圧接ローラ121は、未定着トナー像を乱さないように、トナーの剥離性が高いフッ素系樹脂(PTFEなど)で、表面がコーティングされることが好ましい。
【0122】
支持ローラ122は、圧接ローラ121に対向して設けられる、導電性のローラである。支持ローラ122としては、たとえば、外径が18mmの、アルミからなる中空ローラを用いることができる。支持ローラ122は、記録媒体Pを搬送し易いように、サンドブラストなどの表面加工が施されることが好ましい。直流電源123は、圧接ローラ121と支持ローラ122とに、100V以上400V以下の電圧(帯電電圧)を印加する。上述したように、圧接ローラ121と支持ローラ122とのギャップは2mmであるので、圧接ローラ121と支持ローラ122との間の電界は、50V/mm〜200V/mmとなる。
【0123】
電界発生部130は、光照射部40によってレーザ光が照射される領域(定着領域)に電界を発生させる部材である。電界発生部130は、電極131と直流電源132と交流電源133とを含む。電極131は、回転多面鏡42と搬送ローラ43との間に設けられ、たとえば、搬送ローラ43から2mm隔てて設けられる。電極131は、ステンレス板などの金属からなる板状部材に、幅1mm〜2mmのスリット131aを設けて構成される。回転多面鏡42によって反射されたレーザ光は、電極131のスリット131aを通って、トナーTに照射される。なお、電極131の代わりに、スリットの無い透明電極を用いてもよい。
【0124】
直流電源132は、搬送ローラ43の金属ローラと電極131とに接続され、該金属ローラと電極131とに定常電圧を印加する。搬送ローラ43の金属ローラは、電極として機能する。直流電源132は、定常電界を発生させる定常電界発生手段である。本実施形態において、定常電界とは、記録媒体Pのトナー担持面に垂直な成分の大きさが250V/mm以上500V/mm以下であり、かつ、時間的に変化しない電界であって、帯電部120によって帯電したトナーTに記録媒体Pへ向かうクーロン力を作用させる電界である。光定着装置300は、たとえば、電極131の主面と記録媒体Pのトナー担持面とが平行になるように、記録媒体Pを搬送するなどして、定常電界のトナー担持面に垂直な成分以外の成分の大きさが、すべて0(V/mm)となるようにすることが好ましい。
【0125】
交流電源133は、搬送ローラ43の金属ローラと電極131とに接続され、該金属ローラと電極131とに交流電圧を印加する。交流電源133は、交番電界を発生させる交番電界発生手段である。本実施形態において、交番電界とは、トナー担持面に垂直な成分の大きさが、定常電界のトナー担持面に垂直な成分の大きさ以下であり、かつ、所定の周波数で変動する電界であって、トナー担持面に垂直な成分の向きが周期的に変動する電界である。
【0126】
交番電界の、トナー担持面に垂直な成分の周波数は、5kHz以上15kHz以下であることが好ましい。交番電界の、トナー担持面に垂直な成分の大きさは、定常電界のトナー担持面に垂直な成分の大きさの50%〜100%のであることが好ましい。また、光定着装置300は、たとえば、電極131と記録媒体Pとを平行にするなどして、交番電界のトナー担持面に垂直な成分以外の成分の大きさが、すべて0(V/mm)となるようにすることが好ましい。
【0127】
光定着装置300は、定常電界発生手段である直流電源132と交番電界発生手段である交流電源133とによって、トナー担持面に垂直な成分の大きさが周期的に変動する変動電界を発生させながら、光照射部40によって、該変動電界が発生した空間の中で、トナーTを溶融させるように構成される。たとえば、トナー担持面から該トナー担持面とは反対側の面へ向かう方向を正とすると、定常電界のトナー担持面に垂直な成分が350V/mmであり、かつ、交番電界のトナー担持面に垂直な成分が−250V/mm〜250V/mmで変動する場合、変動電界のトナー担持面に垂直な成分は、100V/mm〜600V/mmで周期的に変動する。
【0128】
このように構成される光定着装置300は、転写ニップ部で記録媒体P上にトナー像が転写されると、帯電部120によって、記録媒体P上の未定着のトナーTを、帯電極性と同一の極性に帯電させる。より詳細には、直流電源123により電圧が印加された圧接ローラ121に、トナーTが接触することで、トナーTに電荷が誘起され、トナーTが帯電する。圧接ローラ121は、ローラ状であるので、トナーT全体をより均一に帯電させることができる。また、圧接ローラ121による押圧力によって、トナーTは、記録媒体Pに密着する。
【0129】
その後、光定着装置300は、記録媒体Pを搬送方向下流に搬送し、光照射部40によってトナーTに対してレーザ光を照射するとともに、電界発生部130によって変動電界を発生させる。これにより、帯電したトナーTは、変動電界によって記録媒体Pへ向かうクーロン力を受けながら、レーザ光を受ける。レーザ光を受けたトナーTは、赤外線定着剤や着色剤が発熱し、結着樹脂が溶融する。
【0130】
溶融したトナーTには、変動電界によって記録媒体Pへ向かうクーロン力が作用するので、トナー粒子が膨張してトナーTが飛散することが抑えられる。変動電界は、トナー担持面に垂直な成分の大きさが周期的に変動するので、トナーTに作用するクーロン力の大きさも周期的に変動する。これによって、トナーに生じる応力が変動し、凝集状態にあるトナーは、画像劣化を生じない程度に周囲に広がる。トナーが周囲に広がることにより、トナーの定着面積が広がる。また、トナーに生じる応力が変動することにより、溶融状態にあるトナーは一様な厚さで定着する。このような作用により、トナーTの定着強度が向上する。したがって、光定着装置300は、定着強度および画像濃度を向上させることができる。
【0131】
なお、交番電界のトナー担持面に垂直な成分の周波数が5kHz未満であると、ライン画像のエッジ部に滲みが生じ、画質が劣化してしまう。また、周波数が15kHzを超えると、記録媒体P上のトナーTが交番電界の影響を受け難くなり、交番電界による定着強度向上の効果が得られなくなってしまう。
【0132】
光定着装置300は、交番電界のトナー担持面に垂直な成分の周波数が5kHz以上15kHz以下であるので、トナーの定着強度を特に向上でき、かつ、画質を維持できる。また、帯電部120において圧接ローラ121と支持ローラ122との間に発生する電界が、50V/mm以上200V/mm以下であるので、トナーの定着強度を特に向上でき、かつ、トナーが記録媒体に浸透し過ぎないので、画像濃度を維持できる。
【実施例】
【0133】
以下に、本発明の実施例について説明する。
1、実施例および比較例
(実施例1)
光定着装置100を用いて、記録用紙に、帯電極性が負となるカーボンブラックを含有する黒トナーを定着させた。記録用紙上のトナーの付着量は0.4mg/cmとした。コロナ放電装置71の印加電圧の大きさは、5kVとした。電極81と搬送ローラ43との間隔は2mmとし、直流電源82による定常電圧の大きさを500Vとして、定常電界のトナー担持面に垂直な成分の大きさを250V/mmとした。光照射部40におけるレーザ光の強度は80W/cmとした。電極81のスリット81aの幅は、1.5mmとした。
【0134】
(実施例2)
直流電源82による定常電圧の大きさを600Vとして、定常電界のトナー担持面に垂直な成分の大きさを300V/mmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、記録用紙にトナーを定着させた。
【0135】
(実施例3)
直流電源82による定常電圧の大きさを700Vとして、定常電界のトナー担持面に垂直な成分の大きさを350V/mmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、記録用紙にトナーを定着させた。
【0136】
(実施例4)
直流電源82による定常電圧の大きさを800Vとして、定常電界のトナー担持面に垂直な成分の大きさを400V/mmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、記録用紙にトナーを定着させた。
【0137】
(実施例5)
直流電源82による定常電圧の大きさを900Vとして、定常電界のトナー担持面に垂直な成分の大きさを450V/mmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、記録用紙にトナーを定着させた。
【0138】
(実施例6)
直流電源82による定常電圧の大きさを1000Vとして、定常電界のトナー担持面に垂直な成分の大きさを500V/mmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、記録用紙にトナーを定着させた。
【0139】
(実施例7)
光定着装置200を用いて、記録用紙に、帯電極性が負となるカーボンブラックを含有する黒トナーを定着させた。記録用紙上のトナーの付着量は0.4mg/cmとした。圧接ローラ91および支持ローラ92の帯電電圧の大きさは、50Vとした。上述したように、圧接ローラ91と支持ローラ92とのギャップは2mmであるので、圧接ローラ91と支持ローラ92との間の電界は、25V/mmとなる。圧接ローラ91および支持ローラ92の回転速度は120rpmとした。圧接ローラ91の押圧力は0.2g重/cmとした。電極111と搬送ローラ43との間隔は2mmとし、直流電源112による定常電圧の大きさを700Vとして、定常電界のトナー担持面に垂直な成分の大きさを350V/mmとした。光照射部40におけるレーザ光の強度は、80W/cmとした。電極111のスリット111aの幅は、1mmとした。
【0140】
(実施例8)
圧接ローラ91および支持ローラ92の帯電電圧の大きさを、100Vとしたこと以外は、実施例7と同様にして、記録用紙にトナーを定着させた。
【0141】
(実施例9)
圧接ローラ91および支持ローラ92の帯電電圧の大きさを、150Vとしたこと以外は、実施例7と同様にして、記録用紙にトナーを定着させた。
【0142】
(実施例10)
圧接ローラ91および支持ローラ92の帯電電圧の大きさを、200Vとしたこと以外は、実施例7と同様にして、記録用紙にトナーを定着させた。
【0143】
(実施例11)
圧接ローラ91および支持ローラ92の帯電電圧の大きさを、250Vとしたこと以外は、実施例7と同様にして、記録用紙にトナーを定着させた。
【0144】
(実施例12)
圧接ローラ91および支持ローラ92の帯電電圧の大きさを、300Vとしたこと以外は、実施例7と同様にして、記録用紙にトナーを定着させた。
【0145】
(実施例13)
圧接ローラ91および支持ローラ92の帯電電圧の大きさを、350Vとしたこと以外は、実施例7と同様にして、記録用紙にトナーを定着させた。
【0146】
(実施例14)
圧接ローラ91および支持ローラ92の帯電電圧の大きさを、400Vとしたこと以外は、実施例7と同様にして、記録用紙にトナーを定着させた。
【0147】
(実施例15)
圧接ローラ91および支持ローラ92の帯電電圧の大きさを、450Vとしたこと以外は、実施例7と同様にして、記録用紙にトナーを定着させた。
【0148】
(実施例16)
直流電源112による定常電圧の大きさを500Vとして、定常電界のトナー担持面に垂直な成分の大きさを250V/mmとしたこと以外は、実施例7と同様にして、記録用紙にトナーを定着させた。
【0149】
(実施例17)
圧接ローラ91および支持ローラ92の帯電電圧の大きさを、150Vとしたこと以外は、実施例16と同様にして、記録用紙にトナーを定着させた。
【0150】
(実施例18)
圧接ローラ91および支持ローラ92の帯電電圧の大きさを、250Vとしたこと以外は、実施例16と同様にして、記録用紙にトナーを定着させた。
【0151】
(実施例19)
圧接ローラ91および支持ローラ92の帯電電圧の大きさを、400Vとしたこと以外は、実施例16と同様にして、記録用紙にトナーを定着させた。
【0152】
(実施例20)
直流電源112による定常電圧の大きさを1000Vとして、定常電界のトナー担持面に垂直な成分の大きさを500V/mmとしたこと以外は、実施例7と同様にして、記録用紙にトナーを定着させた。
【0153】
(実施例21)
圧接ローラ91および支持ローラ92の帯電電圧の大きさを、150Vとしたこと以外は、実施例20と同様にして、記録用紙にトナーを定着させた。
【0154】
(実施例22)
圧接ローラ91および支持ローラ92の帯電電圧の大きさを、250Vとしたこと以外は、実施例20と同様にして、記録用紙にトナーを定着させた。
【0155】
(実施例23)
圧接ローラ91および支持ローラ92の帯電電圧の大きさを、400Vとしたこと以外は、実施例20と同様にして、記録用紙にトナーを定着させた。
【0156】
(実施例24)
光定着装置300を用いて、記録用紙に、帯電極性が負となるカーボンブラックを含有する黒トナーを定着させた。記録用紙上のトナーの付着量は0.4mg/cmとした。圧接ローラ121および支持ローラ122の帯電電圧の大きさは、250Vとした。上述したように、圧接ローラ121と支持ローラ122とのギャップは2mmであるので、圧接ローラ121と支持ローラ122との間の電界は、125V/mmとなる。圧接ローラ121および支持ローラ122の回転速度は120rpmとした。圧接ローラ121の押圧力は、0.2g重/cmとしたた。電極131と搬送ローラ43との間隔は2mmとし、直流電源132による定常電圧の大きさを700Vとして、定常電界のトナー担持面に垂直な成分の大きさを350V/mmとした。また、交流電源133による交流電圧の大きさを500Vとし、交番電界のトナー担持面に垂直な成分の周波数を2kHzとして、交番電界のトナー担持面に垂直な成分を−250V/mm〜250V/mmで変動させた。光照射部40におけるレーザ光の強度は、80W/cmとした。電極131のスリット131aの幅は、1mmとした。
【0157】
(実施例25)
交番電界のトナー担持面に垂直な成分の周波数を4kHzとしたこと以外は、実施例24と同様にして、記録用紙にトナーを定着させた。
【0158】
(実施例26)
交番電界のトナー担持面に垂直な成分の周波数を5kHzとしたこと以外は、実施例24と同様にして、記録用紙にトナーを定着させた。
【0159】
(実施例27)
交番電界のトナー担持面に垂直な成分の周波数を7.5kHzとしたこと以外は、実施例24と同様にして、記録用紙にトナーを定着させた。
【0160】
(実施例28)
交番電界のトナー担持面に垂直な成分の周波数を10kHzとしたこと以外は、実施例24と同様にして、記録用紙にトナーを定着させた。
【0161】
(実施例29)
交番電界のトナー担持面に垂直な成分の周波数を12.5kHzとしたこと以外は、実施例24と同様にして、記録用紙にトナーを定着させた。
【0162】
(実施例30)
交番電界のトナー担持面に垂直な成分の周波数を15kHzとしたこと以外は、実施例24と同様にして、記録用紙にトナーを定着させた。
【0163】
(実施例31)
交番電界のトナー担持面に垂直な成分の周波数を16kHzとしたこと以外は、実施例24と同様にして、記録用紙にトナーを定着させた。
【0164】
(実施例32)
圧接ローラ121および支持ローラ122の帯電電圧の大きさを、100Vとしたこと以外は、実施例24と同様にして、記録用紙にトナーを定着させた。
【0165】
(実施例33)
交番電界のトナー担持面に垂直な成分の周波数を5kHzとしたこと以外は、実施例32と同様にして、記録用紙にトナーを定着させた。
【0166】
(実施例34)
交番電界のトナー担持面に垂直な成分の周波数を10kHzとしたこと以外は、実施例32と同様にして、記録用紙にトナーを定着させた。
【0167】
(実施例35)
交番電界のトナー担持面に垂直な成分の周波数を15kHzとしたこと以外は、実施例32と同様にして、記録用紙にトナーを定着させた。
【0168】
(実施例36)
圧接ローラ121および支持ローラ122の帯電電圧の大きさを、400Vとしたこと以外は、実施例24と同様にして、記録用紙にトナーを定着させた。
【0169】
(実施例37)
交番電界のトナー担持面に垂直な成分の周波数を5kHzとしたこと以外は、実施例36と同様にして、記録用紙にトナーを定着させた。
【0170】
(実施例38)
交番電界のトナー担持面に垂直な成分の周波数を10kHzとしたこと以外は、実施例36と同様にして、記録用紙にトナーを定着させた。
【0171】
(実施例39)
交番電界のトナー担持面に垂直な成分の周波数を15kHzとしたこと以外は、実施例36と同様にして、記録用紙にトナーを定着させた。
【0172】
(実施例40)
交流電源133による交流電圧の大きさを100Vとし、交番電界のトナー担持面に垂直な成分の周波数を10kHzとして、交番電界のトナー担持面に垂直な成分を−50V/mm〜50V/mmで変動させたこと以外は、実施例24と同様にして、記録用紙にトナーを定着させた。
【0173】
(実施例41)
交流電源133による交流電圧の大きさを200Vとし、交番電界のトナー担持面に垂直な成分の周波数を10kHzとして、交番電界のトナー担持面に垂直な成分を−100V/mm〜100V/mmで変動させたこと以外は、実施例24と同様にして、記録用紙にトナーを定着させた。
【0174】
(実施例42)
交流電源133による交流電圧の大きさを400Vとし、交番電界のトナー担持面に垂直な成分の周波数を10kHzとして、交番電界のトナー担持面に垂直な成分を−200V/mm〜200V/mmで変動させたこと以外は、実施例24と同様にして、記録用紙にトナーを定着させた。
【0175】
(実施例43)
交流電源133による交流電圧の大きさを600Vとし、交番電界のトナー担持面に垂直な成分の周波数を10kHzとして、交番電界のトナー担持面に垂直な成分を−300V/mm〜300V/mmで変動させたこと以外は、実施例24と同様にして、記録用紙にトナーを定着させた。
【0176】
(実施例44)
交流電源133による交流電圧の大きさを700Vとし、交番電界のトナー担持面に垂直な成分の周波数を10kHzとして、交番電界のトナー担持面に垂直な成分を−350V/mm〜350V/mmで変動させたこと以外は、実施例24と同様にして、記録用紙にトナーを定着させた。
【0177】
(実施例45)
交流電源133による交流電圧の大きさを100Vとし、交番電界のトナー担持面に垂直な成分の周波数を5kHzとして、交番電界のトナー担持面に垂直な成分を−50V/mm〜50V/mmで変動させたこと以外は、実施例24と同様にして、記録用紙にトナーを定着させた。
【0178】
(実施例46)
交流電源133による交流電圧の大きさを400Vとし、交番電界のトナー担持面に垂直な成分の周波数を5kHzとして、交番電界のトナー担持面に垂直な成分を−200V/mm〜200V/mmで変動させたこと以外は、実施例24と同様にして、記録用紙にトナーを定着させた。
【0179】
(実施例47)
交流電源133による交流電圧の大きさを700Vとし、交番電界のトナー担持面に垂直な成分の周波数を5kHzとして、交番電界のトナー担持面に垂直な成分を−350V/mm〜350V/mmで変動させたこと以外は、実施例24と同様にして、記録用紙にトナーを定着させた。
【0180】
(実施例48)
交流電源133による交流電圧の大きさを100Vとし、交番電界のトナー担持面に垂直な成分の周波数を15kHzとして、交番電界のトナー担持面に垂直な成分を−50V/mm〜50V/mmで変動させたこと以外は、実施例24と同様にして、記録用紙にトナーを定着させた。
【0181】
(実施例49)
交流電源133による交流電圧の大きさを400Vとし、交番電界のトナー担持面に垂直な成分の周波数を15kHzとして、交番電界のトナー担持面に垂直な成分を−200V/mm〜200V/mmで変動させたこと以外は、実施例24と同様にして、記録用紙にトナーを定着させた。
【0182】
(実施例50)
交流電源133による交流電圧の大きさを700Vとし、交番電界のトナー担持面に垂直な成分の周波数を15kHzとして、交番電界のトナー担持面に垂直な成分を−350V/mm〜350V/mmで変動させたこと以外は、実施例24と同様にして、記録用紙にトナーを定着させた。
【0183】
(比較例1)
光定着装置100を用いて、記録用紙に、帯電極性が負となるカーボンブラックを含有する黒トナーを定着させた。記録用紙上のトナーの付着量は0.4mg/cmとした。コロナ放電装置71の印加電圧の大きさは、5kVとした。電極81と搬送ローラ43との間隔は2mmとし、直流電源82による定常電圧の大きさを400Vとして、定着領域に生じた電界のトナー担持面に垂直な成分の大きさを200V/mmとした。光照射部40におけるレーザ光の強度は、80W/cmとした。電極81のスリット81aの幅は、1mmとした。
【0184】
(比較例2)
直流電源82による定常電圧の大きさを1100Vとして、定着領域に生じた電界のトナー担持面に垂直な成分の大きさを550V/mmとしたこと以外は、比較例1と同様にして、記録用紙にトナーを定着させた。
【0185】
(比較例3)
直流電源82による定常電圧の大きさを1200Vとして、定着領域に生じた電界のトナー担持面に垂直な成分の大きさを600V/mmとしたこと以外は、比較例1と同様にして、記録用紙にトナーを定着させた。
【0186】
2、評価
(定着強度)
実施例1〜実施例50および比較例1〜3に係る定着画像について、定着強度の評価を行った。定着強度の評価は、擦り試験により行った。具体的には、擦り試験前に、縦2cm×横2cmのベタ画像として記録用紙上のトナー付着量を0.6mg/cmに設定し、定着した定着画像の光学濃度をポータブル分光濃度計(X−rite社製939)で測定した。
【0187】
その後、作成した評価用定着画像の表面を、学振式堅牢度試験において、1kgの荷重を載せた砂消しゴム(商品名:ライオン 消しゴム ギャザ砂、株式会社ライオン事務器製)を用いて、14mm/sの速度で3往復分擦過した。擦過前後の光学濃度を測定し、濃度変化率を算出した。
【0188】
濃度変化率は、下記式を用いて求めた。
濃度変化率(%)=[1−(擦過後の光学濃度)/(擦過前の光学濃度)]×100
【0189】
定着強度の評価基準は、以下のとおりである。
A:濃度変動率が10%以内である。
B:濃度変動率が10%を超え、12.5%以内である。
C:濃度変動率が12.5%を超え、15%以内である。
D:濃度変動率が15%を超え、17.5%以内である。
E:濃度変動率が17.5%を超え、20%以内である。
F:濃度変動率が20%を超える。
【0190】
(画像濃度)
実施例1〜実施例50および比較例1〜3に係る定着画像について、光学濃度の評価を行った。具体的には、ベタ画像を記録用紙に定着した定着画像の光学濃度Vをポータブル分光濃度計(X−rite社製939)で測定した。
【0191】
画像濃度の評価基準は、以下のとおりである。
○:光学濃度Vが、1.4以上である。
×:光学濃度Vが、1.4未満である。
【0192】
(画質)
実施例24〜実施例50に係る定着画像について、画質の評価を行った。画質の評価は、テスト画像として、線幅L=1mmの印字パターンを印刷した定着画像を実体顕微鏡で500倍に拡大して、目視により行った。画質の評価基準は、以下のとおりである。
○:線幅Lが、0.9mm以上1.1mm以下である。
△:線幅Lが、0.85mm以上0.9mm未満である、または1.1mmを超え、1.15mm以下である。
×:線幅Lが、0.85mm未満である、または1.15mmを超える。
【0193】
3、評価結果
光定着装置100を用いる実施例1〜実施例6(実1〜実6)、および比較例1〜比較例3(比1〜比3)について、直流電源82による定常電圧の大きさ(定常電圧(V))、定着領域に生じた電界のトナー担持面に垂直な成分の大きさ(定常電界(V/mm))、定着強度の評価結果(定着強度)、および画像濃度の評価結果(画像濃度)を、表1に示す。
【0194】
【表1】

【0195】
光定着装置200を用いる実施例7〜実施例23(実7〜実23)について、圧接ローラ91および支持ローラ92に印加される帯電電圧(帯電電圧(V))、直流電源112による定常電圧の大きさ(定常電圧(V))、定着領域に生じた定常電界のトナー担持面に垂直な成分の大きさ(定常電界(V))、定着強度の評価結果(定着強度)、および画像濃度の評価結果(画像濃度)を、表2に示す。
【0196】
【表2】

【0197】
光定着装置300を用いる実施例24〜実施例39(実24〜実39)について、交番電界のトナー担持面に垂直な成分の周波数(周波数(kHz))、交流電源133による交流電圧の大きさ(交流電圧(V))、圧接ローラ121および支持ローラ122に印加される帯電電圧(帯電電圧(V))、直流電源112による定常電圧の大きさ(定常電圧(V))、定着領域に生じた定常電界のトナー担持面に垂直な成分の大きさ(定常電界(V))、定着強度の評価結果(定着強度)、画像濃度の評価結果(画像濃度)、および画質の評価結果(画質)を、表3に示す。
【0198】
【表3】

【0199】
光定着装置300を用いる実施例40〜実施例50(実40〜実50)について、交流電源133による交流電圧の大きさ(交流電圧(V))、交番電界のトナー担持面に垂直な成分の周波数(周波数(kHz))、圧接ローラ121および支持ローラ122に印加される帯電電圧(帯電電圧(V))、直流電源112による定常電圧の大きさ(定常電圧(V))、定着領域に生じた定常電界のトナー担持面に垂直な成分の大きさ(定常電界(V))、定着強度の評価結果(定着強度)、画像濃度の評価結果(画像濃度)、および画質の評価結果(画質)を、表3に示す。
【0200】
【表4】

【符号の説明】
【0201】
40 光照射部
41 レーザ光源
42 回転多面鏡
43 搬送ローラ
70,90,120 帯電部
71 コロナ放電装置
72 支持板
80,110,130 電界発生部
81,111,131 電極
82,93,112,132,123 直流電源
91,121 圧接ローラ
92,122 支持ローラ
100,200,300 光定着装置
133 交流電源
1000 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体上に担持される未定着トナー像を構成するトナーを、正または負の極性に帯電させる帯電手段と、
前記帯電手段によって帯電した前記トナーに前記記録媒体へ向かうクーロン力を作用させる定常電界であって、前記記録媒体のトナー担持面に垂直な成分の大きさが250V/mm以上500V/mm以下の定常電界を発生させる定常電界発生手段を含む電界発生手段と、
前記帯電手段によって帯電した前記トナーを溶融させる光を照射する光照射手段とを備え、
前記定常電界発生手段によって前記定常電界を発生させながら、前記光照射手段によって、該定常電界が発生した空間の中で、前記トナーを溶融させるように構成されることを特徴とする光定着装置。
【請求項2】
前記帯電手段は、前記記録媒体を挟持しながら回転する2本のローラを含み、該2本のローラ間に50V/mm以上200V/mm以下の電界を発生させるように構成されることを特徴とする請求項1に記載の光定着装置。
【請求項3】
前記電界発生手段は、前記トナー担持面に垂直な成分の大きさが、前記定常電界の前記トナー担持面に垂直な成分の大きさ以下であり、かつ、5kHz以上15kHz以下の周波数で変動する交番電界を発生させる交番電界発生手段をさらに含み、
前記定常電界発生手段と前記交番電界発生手段とによって、前記トナー担持面に垂直な成分の大きさが周期的に変動する変動電界を発生させながら、前記光照射手段によって、該変動電界が発生した空間の中で、前記トナーを溶融させるように構成されることを特徴とする請求項2に記載の光定着装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の光定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−145563(P2011−145563A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7496(P2010−7496)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】