説明

光情報記録再生装置及び方法

【課題】光情報記録再生装置による記録再生動作中にエア噛みの現象を解消し、記録再生時に薄型ディスクの面ブレを低減して記録再生動作を安定的に実行する。
【解決手段】光情報記録再生プレイヤーのディスク装着部の間の少なくとも一部分に空気流入のための隙間を設け、スペーサーにより薄型ディスクとターンテーブルとの間に間隙を確保し、該間隙を通してディスクの回転により空気流入用の隙間から空気を導入するようにする。ターンテーブルと薄型ディスクとの間の隙間に空気流入用の隙間から流れ込んだ空気が、遠心力の働きもあいまってエア噛み現象を解消する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光情報記録再生装置及び方法に関し、特に、例えば、記録再生時の薄型フレキシブルディスク(以下、「薄型ディスク」という)の面ぶれを低減し、記録再生の安定化を図る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光ディスクの高容量化を図る様々な試みがなされており、中でも効率的な方法として、光ディスク基板の厚みを薄くして体積当たりの容量を増やすことが注目されている。例えば、特許文献1や特許文献2にあるように、薄い基板とその薄い基板を面ぶれが少なく安定に回転させるためのスタビライザーを組み合わせることにより、体積当たりの記録容量を増加する試みが提案されている。
【0003】
ところが、特許文献1及び2に開示の方法においては、強度の弱い薄型ディスクを折り曲げながら回転させたり、スタビライザーが回転する薄型ディスクに接触する等ことから、薄型ディスクに確実かつ安定して記録再生する光情報記録再生システムを実現するには問題がある。
【0004】
そこで、本発明者らは、薄型ディスクを用いるに際し、より確実かつ安全なシステムを構築するために、あえてスタビライザーを用いることをやめ、その代わりにターンテーブルを用いることを考えた。
【0005】
【特許文献1】特開2003−331561号公報
【特許文献2】特開2003―91970号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、薄型ディスクをターンテーブルに載置して種々の実験を繰り返したところ、薄型ディスクは、以下に述べるように従来の記録媒体とは異なる挙動を示し、確実な記録再生が困難であることが判った。
【0007】
まず、本発明者らは、100μm程度の薄型ディスクを、ターンテーブルの上に載せて、このターンテーブルで薄型ディスクを支持することを試みた。ターンテーブルは光学ガラスで作製し、レーザーをこのターンテーブル越しに薄型ディスクに照射する。例えば100μm厚の薄型ディスクと500μm厚のターンテーブルを用意し、前者を後者の上に偏心が小さくなるように載せてみたところ、次のような現象が現れた。
【0008】
(イ)ターンテーブルと薄型ディスクで、その一部の領域だけが静電気のため吸着してしまった。
(ロ)その吸着部分は他の部分を次々に巻き込んで吸着領域が拡がっていくのが観察された。
(ハ)ところが吸着領域の拡大はある範囲で落ち着いてそれ以上は拡がらなかった。
(ニ)結局、ターンテーブルと薄型ディスクは一様に吸着せず、ところどころにエア噛み部分が残った。
(ホ)このエア噛み部分が残ったターンテーブルに薄型ディスクが貼り付いたものをDVDプレイヤー(ターンテーブル+薄型ディスクで0.6mmとなるように実験)で記録再生を試みたが、全く記録再生ができなかった。
【0009】
本発明者らは、記録再生ができなかったのは、ドライブによるフォーカス追従が実行されなかったことによることを突き止めた。そして、これは、“エア噛み”によって局所的な面ぶれが発生することによるものと考えた。
【0010】
従って、薄型ディスクにおいては、記録再生中にエア噛みが生じないようにしなければならない。
【0011】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、記録再生動作中にエア噛みの現象を起こさずに薄型ディスクに対して情報の記録再生を行うことのできる光情報記録再生装置、及び方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明では、ターンテーブルにスペーサーを組み、ターンテーブルの内周端と、光情報記録再生装置のディスク装着部の間の少なくとも一部分に空気流入のための隙間を設けた。即ちスペーサーを設けることにより、薄型ディスクとターンテーブルとの間に間隙を確保し、該間隙を通してディスクの回転により空気流入用の隙間から空気を導入するようにする。この隙間はターンテーブル側に設けられていても良いし光情報記録再生装置のディスク装着部に設けられていても良い。スペーサーはフレキシブルディスクの光情報記録領域の内径より小さい外周を有し、回転時にはスペーサーにより作られたターンテーブルと薄型ディスクとの間の隙間に空気流入用の隙間から流れ込んだ空気が、遠心力の働きもあいまってエア噛み現象を解消し、薄型ディスクとターンテーブルとの間の間隙から流入した空気がターンテーブルの表面に沿って外側に向かって流れ、薄型ディスクの形状をターンテーブルに倣わせることによって薄型ディスクを安定に回転させることができる。
【0013】
即ち、本発明による光情報記録再生装置は、厚みが0.3mm以下の薄型ディスクに対して光情報記録及び/又は再生を行なうための光情報記録再生装置であって、ターンテーブルと薄型ディスクを取り付け、それら一体として回転させる、ディスク装着部と、ディスク装着部における薄型ディスクの装着を安定させるためのキャップと、光ピックアップ及びサーボ回路を含む、記録再生部と、を備えている。そして、ターンテーブルと薄型ディスクとの間には、スペーサーによって隙間が形成される。また、ディスク装着部は、回転時に空気を流入させるための空気流入部と、流入した空気を隙間に誘導するための空気誘導部と、を有する。これにより、隙間に誘導された空気は、回転の遠心力によって隙間全体に広がって薄型ディスクの外周端より排出される。
【0014】
また、別の態様の光情報記録再生装置は、厚みが0.3mm以下の薄型ディスクに対して光情報記録及び/又は再生を行なうための光情報記録再生装置であって、ターンテーブルと薄型ディスクを取り付け、それら一体として回転させる、ディスク装着部と、ディスク装着部における薄型ディスクの装着を安定させるためのキャップと、光ピックアップ及びサーボ回路を含む、記録再生部と、を備えている。そして、ターンテーブルと薄型ディスクとの間には、スペーサーによって隙間が形成される。また、ディスク装着部は、回転時に空気を流入させるための空気流入部を有し、ターンテーブルは流入した空気を隙間に誘導するための空気誘導切り欠き部を有する。これにより、隙間に誘導された空気は、回転の遠心力によって隙間全体に広がって薄型ディスクの外周端より排出される。
【0015】
なお、空気流入部は、ディスク装着部の表面から底部に向かって貫通する貫通孔、又は、ディスク装着部の表面に設けられた切り欠きのいずれかであってもよい。また、空気誘導部は、ディスク装着部のコーン形状部のスロープに形成された切り欠きであってもよいし、ターンテーブルが空気誘導部としての切り欠きを有するようにしてもよい。
【0016】
さらに、別の態様の光情報記録再生装置は、厚みが0.3mm以下の薄型ディスクに対して光情報記録及び/又は再生を行なうための光情報記録再生装置であって、ターンテーブルと薄型ディスクを取り付け、それら一体として回転させる、ディスク装着部と、ディスク装着部における前記薄型ディスクの装着を安定させるためのキャップと、光ピックアップ及びサーボ回路を含む、記録再生部と、を備える。そして、ターンテーブルと薄型ディスクとの間には、スペーサーによって隙間が形成される。また、キャップは、回転時に空気を流入させるための空気流入部を有し、ディスク装着部は、流入した空気を隙間に誘導するための空気誘導部を有する。これにより、隙間に誘導された空気は、回転の遠心力によって隙間全体に広がって薄型ディスクの外周端より排出される。なお、この場合、空気流入部は、キャップの表面から裏面に貫通する貫通孔であり、空気誘導部は、ディスク装着部のコーン形状部のスロープに形成された切り欠きであってもよい。
【0017】
さらなる本発明の特徴は、以下本発明を実施するための最良の形態および添付図面によって明らかになるものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、記録再生動作中にエア噛みの現象を起こさずに薄型ディスクに対して情報の記録再生を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。ただし、本実施形態は本発明を実現するための一例に過ぎず、本発明を限定するものではないことに注意すべきである。また、各図において共通の構成については同一の参照番号が付されている。
【0020】
<光情報記録再生装置の基本的構成>
図1は、本発明の実施形態による光情報記録再生装置1の基本的概略構成を示す図である。光情報記録再生装置1は、薄型ディスク20を載置するためのターンテーブル10と、ターンテーブル10及び薄型ディスク20を回転させるためのスピンドル部(ディスク装着部)11と、ターンテーブル10と薄型ディスク20との間に隙間21を形成するためのスペーサー12と、薄型ディスク20を安定的に装着するためのキャップ13と、光ピックアップ30と、を備えている。また、光情報記録再生装置1は、記録/再生信号の入出力をするためのインターフェース部31と、記録するための信号を符号化し、かつ、光ピックアップ30によって読み取られた再生信号を復号する信号処理部32と、フォーカス/トラッキングサーボ信号を生成するフォーカス/トラッキングサーボ回路34と、フォーカス/トラッキングサーボ回路からのサーボ信号に応じて光ピックアップを作動させる光ヘッドアクセス機構35と、スピンドル11の回転速度を制御するための回転制御回路33とを備えている。
【0021】
スピンドル部11は、回転時に底部から空気を流入させるための空気流入孔11と、空気流入孔111から流入してきた空気をターンテーブル10と薄型ディスク20との間に形成された隙間21に誘導するための空気誘導部112(スロープ部113に設けられた切り欠き)が設けられている。つまり、スピンドル部11の基本的構成を示す図2(a)において、空気流入孔111は、例えば4つ設けられ(90度間隔で)ている。また、空気誘導部112は、スピンドル部11のスロープ部113に空気流入孔111と角度を合わせて対向するように設けられている。このとき、空気流入孔111から流入した空気が、空気誘導部112を通り、隙間21を抜けて薄型ディスク20の端部から排出されるようにするには、スペーサー12は例えば図2(a)の点線で示される位置のように、空気流入孔111と空気誘導部112と重ならない位置に配置されるのが望ましい。
【0022】
また、別の態様のスピンドル部11は、図2(b)に示されるように、空気流入孔111の代わりに空気流入端部114を備えている。その他の構成は図2(a)に示されるものと同様である。空気流入端部114から流入した空気は、スピンドル凹部115とターンテーブル10との間に形成された空間及び空気誘導部112を通り、隙間21を抜けて薄型ディスク20の端部から排出される。なお、キャップ13は、図2(c)に示されるように、図2(a)及び(b)において共通のものを用いることができる。なお、キャップ13は、薄型ディスク20の記録領域のさらに内側の最内周部を押さえるようにするのが好ましい。
【0023】
以上のような構成を備える光情報記録再生装置1において、スピンドル11によって薄型ディスク20の回転が始まると、空気流入孔111又は空気流入端部114から流入した空気が薄型ディスク20とターンテーブル10に挟まれた隙間21に流れ込み、さらに、その空気が遠心力により内周から外周へと定常的に移動する。これにより局所的なエア噛み現象が全面的に取り除かれる。
【0024】
なお、空気流入孔111又は空気流入端部114及び空気誘導部112は、満遍なくスピンドル部11に設けられることにより、均一な空気の流れを実現することが望ましい。実際には、その大きさにも依るが、複数個(3個から50個)、回転中心対称かつ円周状に配置されるようにするのが望ましい。
【0025】
また、スペーサー12は、ターンテーブル10と薄型ディスク20にスペースを作ることが目的であるから、その形状はドーナツ状である必要はなく、種々の形状の凸部が薄型ディスク20やターンテーブル10(図3(a)参照)に一体的に成形されていても良いし、ターンテーブル10とは別部材として設けるようにしても良い(図3(b)参照)。何れの場合でもスペーサー12の高さは、薄型ディスク10とターンテーブル10との隙間21が、0.01〜0.5mmになるように設定されるのが好ましい。
【0026】
また、空気流入用の貫通孔をターンテーブルに設けていても同様の効果を有すると考えられるが、スペーサーの外側に貫通孔を配置するため光をターンテーブル10に透過させて記録再生を行なう場合、内周の記録エリアが狭くなってしまうという問題点がある。本発明の場合、空気流入をターンテーブル10の内周端に設けることができるため、記録エリアを広く出来る点でターンテーブル10に貫通孔をあけた場合よりも優れている。
【0027】
さらにターンテーブルをガラスで構成した場合、空気流入用の貫通孔を設けると強度が大幅に低下し、高速回転での振動や、搬送時の衝撃で亀裂、割れが生じる可能性がある。本発明は、光情報記録再生プレイヤーのディスク装着部に空気流入用の隙間を設けることができるため、ターンテーブルをガラスで構成した場合においても強度を低下させることがない点において、空気流入用の貫通孔をターンテーブルに設けた方式よりも優れている。
【0028】
また、ターンテーブル10の径は、薄型ディスク20の記録領域の最外周の径よりも大きく、薄型ディスク20全体(基板)の径以下であることが望ましい。記録領域の最外周よりもターンテーブルの径を大きくすることにより記録領域における記録再生動作を安定的に行うことができ、また、ターンテーブル10の径を基板の径以下にすることにより薄型ディスク20をターンテーブル10から剥がしやすくすることができるからである。
【0029】
<他の変形例>
(1)スピンドル部11及びキャップ13の変形例(図4)
図4(a)はスピンドル部11、図4(b)はキャップ13の他の態様をそれぞれ示し、この組み合せで使用される。他の構成は基本的構成と同様である。
【0030】
図4(a)に示されるように、変形例(1)によるスピンドル部11は上述の基本的構成とは異なり、スロープ113に空気誘導部112を有し、空気流入孔や空気流入端は設けられていない。その代わり、図4(b)に示されるように、キャップ13に空気流入孔(貫通孔)131が設けられている。この変形例において、キャップ13は、空気流入孔131が空気誘導部112に合うように、スピンドル部11に被せられる。そして、薄型ディスク20及びターンテーブル10を回転させたとき、キャップ13の空気流入孔131から入り込んだ空気は、空気誘導部112を通り、スペーサー12とターンテーブル10との間の隙間21を抜けて薄型ディスク20の外周端部より排出される。これにより、上述の基本的構成と同様の効果を期待することができる。
【0031】
(2)ターンテーブル10及びスピンドル部11の変形例(図5)
図5(a)はターンテーブル10、図5(b)及び(c)はスピンドル部11の他の態様をそれぞれ示し、(a)と(b)、(a)と(c)の組み合せで使用される。なお、他の構成は基本的構成と同様である。
【0032】
図5(a)に示されるように、変形例(2)によるターンテーブル10は、上述の基本的構成とは異なり、内周に設けられたチャッキング用孔102の周囲に切り欠き部101が設けられている。これは上記空気誘導部112をスピンドル部11に設けない代わりにターンテーブル10に設けられたものである。
【0033】
一方、図5(b)に示されるスピンドル部11は、その最外周端に設けられた複数の空気流入端部114を備え、最外周端とチャッキング用コーンとの間は凹部115が形成されている。また、図5(c)に示されるスピンドル部11は、凹部115に複数の空気流入孔111が設けられている。この変形例において、基本的構成に係るキャップ13がスピンドル部11に被せられる。そして、薄型ディスク20及びターンテーブル10を回転させたとき、スピンドル部11の空気流入端部114或いは空気流入孔111から入り込んだ空気は、ターンテーブル10の切り欠き部101を通り、スペーサー12とターンテーブル10との間の隙間21を抜けて薄型ディスク20の外周端部より排出される。これにより、上述の基本的構成と同様の効果を期待することができる。
【0034】
<Blu−ray用光情報記録再生装置の構成>
図6は、Blu−ray対応の光情報記録再生装置の構成を示す図である。図6に示されている構成以外は図1の構成と同様なので説明を省略する。
【0035】
Blu−ray用の場合、スピンドル部としては、図4(a)で示される構成を用いるのが好ましい。また、そのときのキャップ13としては図4(b)のものでも良いし、図6で示される構成のものでもよい。
【0036】
Blu−ray用光情報記録再生装置を用いて薄型ディスク20に対し、情報の記録再生を実行する場合、ターンテーブル10は薄型ディスク20の上に載置される。つまり、ターンテーブル10と薄型ディスク20の順番が図1のものとは逆になる。
【0037】
図6において、空気流入孔131から入り込んだ空気は空気誘導部112を通り、ターンテーブル10と薄型ディスク20との間の隙間21を抜けて、外に排出される。これにより、エア噛みの問題が解消される。
【0038】
<実施例1>
厚さ100μmのポリカーボネートフィルムに色素記録層、銀を主成分とする金属反射層、保護コートを積層した光記録再生可能な薄型ディスクの外径をφ120mmとし、ターンテーブルとして、厚さ500μmのソーダガラス板で内径15mmφ、外径をφ120mmとしたものを用意した。
【0039】
ガラス板の内周部には図2に示すように、厚さ0.2mm、長さ1cm、幅3mmのビニールテープ8枚を内周に沿って等間隔に貼り付けてスペーサーとした。
【0040】
実施例1では、光情報記録再生装置のディスク装着部(スピンドル部)として、図2(a)又は(b)示される構成のものが使用された。そして、ディスク装着部にターンテーブルを装着し、その上に薄型ディスクを乗せ、図2(c)に示すマグネットキャップで、それぞれ同芯に固定した。DVDプレイヤを4000rpmで回転させ、フォーカスエラー信号の最大値を測定したところ、最大値は440mVであった。
【0041】
一方、光情報記録再生装置のディスク装着部に空気流入用の隙間を設けないものを用いて、同様にフォーカスエラー信号の最大値を測定したところ、最大値は1700mVであった。
【0042】
この結果の技術的意味を説明する。記録再生装置のフォーカスエラー信号を調べると、面ぶれの程度が把握できる。この面ぶれの程度は、記録再生装置のフォーカスエラー信号が700mVを超えるあたりから、トラック追従が不安定になり、情報再生信号の劣化が起きるまでに影響を及ぼすようになる。
【0043】
図7(a)は、空気流入用の隙間を設けた光情報記録再生装置によって得られたフォーカスエラー信号の出力波形を示している。図7(b)は、空気流入用の隙間がない光情報記録再生装置によって得られたフォーカスエラー信号の出力波形を示している。これらを比較すると、空気流入用の隙間を設けた光情報記録再生装置は、空気流入用の隙間がない光情報記録再生装置に対してフォーカスエラー信号が顕著に小さくなることがわかる。これは、空気流入用の隙間を設けることによりフレキシブル基板とガラス基板間に空気の流れが発生し、これによりエア噛みが防止されたと考えられる。なお、薄型ディスクとターンテーブルとを反転させて、プレイヤーにセットした場合は、図4に示す光情報記録再生プレイヤーのディスク装着部とディスクを固定するキャップ側を用いることによりでも同様の効果が得られる。
【0044】
<実施例2>
厚さ100μmのポリカーボネートフィルムに色素記録層、銀を主成分とする金属反射層、保護コートを積層した光記録再生可能な薄型ディスクの外径をφ120mmとし、ターンテーブルとして、厚さ500μmのソーダガラス板で内径15mmφ、外径をφ120mmとしたものを用意した。
【0045】
ガラス板の内周端には図5(a)に示すように、幅3mm、長さ3mmの切りかきを等間隔に8個形成し、それらの間に、厚さ0.2mm、長さ1cm、幅3mmのビニールテープ8枚を内周に沿って等間隔に貼り付けてスペーサーとした。
【0046】
光情報記録再生装置のディスク装着部は図5(b)又は(c)に示すように、空気が流入できる構造を有している。
【0047】
光情報記録再生プレイヤーのディスク装着部にターンテーブルを装着し、その上に薄型ディスクを乗せ、図2(c)に示すマグネットキャップで、それぞれ同芯に固定した。DVDプレイヤを4000rpmで回転させ、フォーカスエラー信号の最大値を測定したところ、最大値は440mVであった。
【0048】
一方、ガラス板の内周端に空気流入用の切りかきを設けないものを用いて、同様にフォーカスエラー信号の最大値を測定したところ、最大値は1700mVであった。
【0049】
これは、実施例1と同様に、ガラス板の内周端に空気流入用の切りかきを設けることによりフレキシブル基板とガラス基板間に空気の流れが発生し、これによりエア噛みが防止されたと考えられる。
【0050】
<まとめ>
以上のように、本発明における、厚みが0.3mm以下の薄型ディスクに対して光情報記録及び/又は再生を行なうための光情報記録再生装置は、ターンテーブルと薄型ディスクを取り付け、それら一体として回転させる、ディスク装着部(スピンドル部)と、ディスク装着部における薄型ディスクの装着を安定させるためのキャップと、光ピックアップ及びサーボ回路を含む記録再生部と、を備えている。ターンテーブルと薄型ディスクとの間には、スペーサーによって隙間が形成され、ディスク装着部は、回転時に空気を流入させるための空気流入部と、流入した空気を前記隙間に誘導するための空気誘導部と、を有している。そして、隙間に誘導された空気は、隙間全体に広がって薄型ディスクの外周端より排出され、薄型ディスクにおけるエア噛みの現象が解消され、よって、薄型ディスクを安定に回転させることができる。このため、薄型ディスクであっても安定的に情報の記録再生動作を実行することができるようになる。
【0051】
また、別の態様として、ディスク装着部には、回転時に空気を流入させるための空気流入部のみを設け、ターンテーブルに、流入した空気をターンテーブルとディスク間に形成された隙間に誘導するための空気誘導切り欠き部を設けるようにしても、上述と同様の効果が得られる。
【0052】
具体的には、上記空気流入部は、ディスク装着部の表面から底部に向かって貫通する貫通孔や、ディスク装着部の表面に設けられた切り欠きであることが好ましい。また、空気誘導部は、ディスク装着部のコーン形状部のスロープに形成された切り欠きであることが望ましい。このようにすることにより、ディスクを回転させれば効率よく空気をターンテーブルとディスク間に形成された隙間に行き渡らせることができ、効率よくエア噛みの現象を解消することができる。また、従来からあるスピンドルに工夫を施すだけなので、装置全体を大型化することもない。
【0053】
本発明のさらに別の態様における光情報記録再生装置では、キャップに回転時に空気を流入させるための空気流入部を設けて、ディスク装着部に流入した空気を隙間に誘導するための空気誘導部のみを設けている。これによっても隙間全体に広がって薄型ディスクのエア噛みの現象を抑えることができる。このとき、空気流入部は、キャップの表面から裏面に貫通する貫通孔であり、空気誘導部は、ディスク装着部のコーン形状部のスロープに形成された切り欠きである。これが好ましい組み合わせの1つと言える。
【0054】
なお、以上の各態様の光情報記録再生装置においては、空気流入部は、回転中心対称に円周状に複数設けられていることが好ましい。このようにすれば、ターンテーブルとディスクの間の隙間に満遍なく空気を行き渡らせることができる。
【0055】
また、スペーサーは空気導入が可能であればどのような形状でもいいが、製造の容易等のためには、溝、穴、及び切れ込みのいずれかが形成されていることが好ましい。
【0056】
さらに、ターンテーブルとスペーサーは一体として成形されていてもよく、スペーサーは取り外し可能であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の光情報記録再生装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明のスピンドル部及びキャップの構成例を示す図である。
【図3】本発明の光情報記録再生装置で用いられるターンテーブル及びスペーサーの構成を示す図である。
【図4】本発明のスピンドル部及びキャップの別の態様の構成例を示す図である。
【図5】本発明のターンテーブル及びスピンドル部の別の態様の構成例を示す図である。
【図6】Blu−ray対応の光情報記録再生装置の概略構成を示す図である。
【図7】実施例1において計測されたフォーカスエラー信号を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
10 ターンテーブル
11 スピンドル部
12 スペーサー
13 キャップ
20 薄型ディスク
111 空気流入孔
112 空気誘導部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚みが0.3mm以下の薄型フレキシブルディスクに対して光情報記録及び/又は再生を行なうための光情報記録再生装置であって、
ターンテーブルと薄型フレキシブルディスクを取り付け、それら一体として回転させる、ディスク装着部と、
前記ディスク装着部における前記薄型フレキシブルディスクの装着を安定させるためのキャップと、
光ピックアップ及びサーボ回路を含む、記録再生部と、を備え、
前記ターンテーブルと薄型フレキシブルディスクとの間には、スペーサーによって隙間が形成され、
前記ディスク装着部は、回転時に空気を流入させるための空気流入部と、流入した空気を前記隙間に誘導するための空気誘導部と、を有し、
前記隙間に誘導された空気は、前記隙間全体に広がって前記薄型フレキシブルディスクの外周端より排出されることを特徴とする光情報記録再生装置。
【請求項2】
厚みが0.3mm以下の薄型フレキシブルディスクに対して光情報記録及び/又は再生を行なうための光情報記録再生装置であって、
ターンテーブルと薄型フレキシブルディスクを取り付け、それら一体として回転させる、ディスク装着部と、
前記ディスク装着部における前記薄型フレキシブルディスクの装着を安定させるためのキャップと、
光ピックアップ及びサーボ回路を含む、記録再生部と、を備え、
前記ターンテーブルと薄型フレキシブルディスクとの間には、スペーサーによって隙間が形成され、
前記ディスク装着部は、回転時に空気を流入させるための空気流入部を有し、
前記ターンテーブルは、前記流入した空気を前記隙間に誘導するための空気誘導切り欠き部を有し、
前記隙間に誘導された空気は、前記隙間全体に広がって前記薄型フレキシブルディスクの外周端より排出されることを特徴とする光情報記録再生装置。
【請求項3】
前記空気流入部は、前記ディスク装着部の表面から底部に向かって貫通する貫通孔であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光情報記録再生装置。
【請求項4】
前記空気流入部は、前記ディスク装着部の表面に設けられた切り欠きであることを特徴とする請求項1又は2に記載の光情報記録再生装置。
【請求項5】
前記空気誘導部は、前記ディスク装着部のコーン形状部のスロープに形成された切り欠きであることを特徴とする請求項1に記載の光情報記録再生装置。
【請求項6】
前記空気流入部は、前記ディスク装着部の表面から底部に向かって貫通する貫通孔、又は、前記ディスク装着部の表面に設けられた切り欠きであることを特徴とする請求項5に記載の光情報記録再生装置。
【請求項7】
厚みが0.3mm以下の薄型フレキシブルディスクに対して光情報記録及び/又は再生を行なうための光情報記録再生装置であって、
ターンテーブルと薄型フレキシブルディスクを取り付け、それら一体として回転させる、ディスク装着部と、
前記ディスク装着部における前記薄型フレキシブルディスクの装着を安定させるためのキャップと、
光ピックアップ及びサーボ回路を含む、記録再生部と、を備え、
前記ターンテーブルと薄型フレキシブルディスクとの間には、スペーサーによって隙間が形成され、
前記キャップは、回転時に空気を流入させるための空気流入部を有し、
前記ディスク装着部は、流入した空気を前記隙間に誘導するための空気誘導部を有し、
前記隙間に誘導された空気は、前記隙間全体に広がって前記薄型フレキシブルディスクの外周端より排出されることを特徴とする光情報記録再生装置。
【請求項8】
前記空気流入部は、前記キャップの表面から裏面に貫通する貫通孔であり、
前記空気誘導部は、前記ディスク装着部のコーン形状部のスロープに形成された切り欠きであることを特徴とする請求項7に記載の光情報記録再生装置。
【請求項9】
前記空気流入部は、回転中心対称に円周状に複数設けられていることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の光情報記録再生装置。
【請求項10】
前記スペーサーには、空気導入のための溝、穴、及び切れ込みのいずれかが形成されていることを特徴とする請求項1乃至9に記載の光情報記録再生装置。
【請求項11】
前記ターンテーブルが、前記スペーサーを一体に形成してなることを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項に記載の光情報記録再生装置。
【請求項12】
光情報記録再生装置を用いて、厚みが0.3mm以下の薄型フレキシブルディスクに対して光情報記録及び/又は再生を行なうための光情報記録再生方法であって、
前記光情報記録再生装置は、ターンテーブルと薄型フレキシブルディスクを取り付け、それら一体として回転させる、ディスク装着部と、前記ディスク装着部における前記薄型フレキシブルディスクの装着を安定させるためのキャップと、光ピックアップ及びサーボ回路を含む、記録再生部と、を備え、
前記ターンテーブルと薄型フレキシブルディスクとの間には、スペーサーによって隙間が形成され、
前記ディスク装着部は、空気を流入させるための空気流入部と、流入した空気を前記隙間に誘導するための空気誘導部と、を有し、
前記方法は、
前記ディスク装着部を回転させて、前記ターンテーブルと前記薄型フレキシブルディスクを一定的に回転させて前記空気流入部から空気を流入させ、
前記流入した空気を、前記空気誘導部を介して前記隙間に誘導させ、回転の遠心力によって、空気を前記隙間全体に広がらせて前記薄型フレキシブルディスクの外周端より排出することを特徴とする光情報記録再生方法。
【請求項13】
光情報記録再生装置を用いて、厚みが0.3mm以下の薄型フレキシブルディスクに対して光情報記録及び/又は再生を行なうための光情報記録再生方法であって、
前記光情報記録再生装置は、ターンテーブルと薄型フレキシブルディスクを取り付け、それら一体として回転させる、ディスク装着部と、前記ディスク装着部における前記薄型フレキシブルディスクの装着を安定させるためのキャップと、光ピックアップ及びサーボ回路を含む、記録再生部と、を備え、
前記ターンテーブルと薄型フレキシブルディスクとの間には、スペーサーによって隙間が形成され、
前記ディスク装着部は、回転時に空気を流入させるための空気流入部を有し、
前記ターンテーブルは、前記流入した空気を前記隙間に誘導するための空気誘導切り欠き部を有し、
前記方法は、
前記ディスク装着部を回転させて、前記ターンテーブルと前記薄型フレキシブルディスクを一定的に回転させて前記空気流入部から空気を流入させ、
前記流入した空気を、前記空気誘導部を介して前記隙間に誘導させ、回転の遠心力によって、空気を前記隙間全体に広がらせて前記薄型フレキシブルディスクの外周端より排出することを特徴とする光情報記録再生方法。
【請求項14】
光情報記録再生装置を用いて、厚みが0.3mm以下の薄型フレキシブルディスクに対して光情報記録及び/又は再生を行なうための光情報記録再生方法であって、
前記光情報記録再生装置は、ターンテーブルと薄型フレキシブルディスクを取り付け、それら一体として回転させる、ディスク装着部と、前記ディスク装着部における前記薄型フレキシブルディスクの装着を安定させるためのキャップと、光ピックアップ及びサーボ回路を含む、記録再生部と、を備え、
前記ターンテーブルと薄型フレキシブルディスクとの間には、スペーサーによって隙間が形成され、
前記キャップは、回転時に空気を流入させるための空気流入部を有し、
前記ディスク装着部は、流入した空気を前記隙間に誘導するための空気誘導部を有し、
前記方法は、
前記ディスク装着部を回転させて、前記ターンテーブルと前記薄型フレキシブルディスクを一定的に回転させて前記空気流入部から空気を流入させ、
前記流入した空気を、前記空気誘導部を介して前記隙間に誘導させ、回転の遠心力によって、空気を前記隙間全体に広がらせて前記薄型フレキシブルディスクの外周端より排出することを特徴とする光情報記録再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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