説明

光情報記録媒体

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はレーザー光を利用して情報の記録、再生を行う光情報記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】光ディスク等の光情報記録媒体の記録再生方式として、CAV方式、CLV方式、MCAV方式がある。この内、CAV方式は、ディスクの回転数及び記録データレートを内外周で一定として記録、再生する方式である。この方式は外周へいくほどトラックあたりの記録密度が小さくなる欠点がある。CLV方式は、ディスクのトラック半径に応じて回転数を線速度が一定になるようにコントロールし、一定のデータレートで記録、再生し、内外周の線記録密度を一定として記録容量を大きくする方式である。この方式は回転数制御を行うためアクセス時間が長くなるという欠点がある。MCAV方式は、CAV方式及びCLV方式の両者の欠点を補うべく回転数を一定にし、アクセス位置に応じて復調、変調の周波数を切り換えて記録、再生を行う方式である。この方式においては、ディスクの内周から外周までを半径方向に複数個のグループに分割し、各グループ内ではセクター数を一定とし、グループ間では1個ないしは複数個ずつ1トラックあたりのセクター数を増減させている。ところが、この方式では、周波数の切り換えトラックでクロストークが発生し、情報の誤認識をまねく恐れがあった。
【0003】上記欠点を解決すべく、特開平2−152031号公報には、スパイラル状あるいは同心円状のトラックを有し、このトラックが半径方向に複数個のグループに分割され、前記各グループは半径方向の位置に応じて1トラックあたりのセクター数が順次増加または減少され、前記各グループ間の境界位置に1本又は複数本の記録できない特別トラックを設けた光情報記録媒体が提案されている。
【0004】しかしながら、上記公報に提案されている技術によっても、切り換え境界部での使用禁止トラック情報が使用トラックを再生している際クロストークとして出現し、アドレスインデックスを読み誤る恐れがあり、さらにデータ部のジッタを増加させる恐れもある。
【0005】本発明はこのような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、最小限の構成で、グループの境界でクロストークが発生せず、しかもアクセス時間の短い光情報記録媒体を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明の光情報記録媒体は、スパイラル状あるいは同心円状のトラックを有するMCAV方式の光情報記録媒体において、前記トラックを半径方向に複数個に分割した各グループ間の境界位置に、1本又は複数本の案内溝のみからなるトラックが存在することを特徴としている。
【0007】次に、本発明の光情報記録媒体を構成する材料および各層の必要特性について具体的に説明する。
【0008】(1) 基板基板の必要特性としては基板側より記録再生を行う場合のみ使用レーザー光に対して透明でなければならず、記録層側から行う場合は透明である必要はない。基板材料としては例えばポリエステル、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミドなどのプラスチック、ガラス、セラミックあるいは金属などを用いることができる。
【0009】なお、基板の表面にはトラッキング用の案内溝や案内ピット、さらにアドレス信号などのプレフォーマットが形成されていてもよい。
【0010】(2) 下引き層下引き層は(a)接着性の向上、(b)水又はガスなどのバリヤー、(c)記録層の保存安定性の向上及び(d)反射率の向上、(e)溶剤からの基板の保護、(f)プレグルーブの形成などを目的として使用される。(a)の目的に対しては高分子材料、例えば、アイオノマー樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル系樹脂、天然樹脂、天然高分子、シリコーン、液状ゴムなどの種々の高分子物質及びシランカップリング剤などを用いることができ、(b)及び(c)の目的に対しては上記高分子材料以外に無機化合物、例えばSiO2、MgF2、SiO、TiO2、ZnO、TiN、SiNなど、金属または半金属、例えば、Zn、Cu、S、Ni、Cr、Ge、Se、Au、Ag、Alなどを用いることができる。また、(d)の目的に対しては金属、例えば、Al、Ag等や、金属光沢を有する有機薄膜、例えば、メチン染料、キサンテン系染料等を用いることができ、(e)及び(f)の目的に対しては、紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂、熱可塑性樹脂等を用いることができる。
【0011】(3) 保護層保護層は、(a)記録層をその傷、ホコリ、汚れ等から保護する、(b)記録層の保存安定性の向上、(c)反射率の向上等を目的として使用される。これらの目的に対しては、前記下引き層に示した材料を用いることができる。また無機材料としてSiO、SiO2 なども用いることができ、有機材料として、ポリメリルアクリレート、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、ポリスチレン、ポリエステル樹脂、ビニル樹脂、セルロース、脂肪族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、天然ゴム、スチレンブタジエン樹脂、クロロプレンゴム、ワックス、アルキッド樹脂、乾性油、ロジン等の熱軟化性、熱溶融性樹脂も用いることができる。
【0012】(4)記録層記録層はレーザー光の照射により何らかの光学的変化を生じさせ、その変化により情報を記録するもので、有機系の材料としてはポリメチン色素、ナフタロシアニン系、フタロシアニン系、スクアリリウム系、クロコニウム系、ピリリウム系、ナフトキノン系、アントラキノン系、キサンテン系、トリフェニルメタン系、金属錯体化合物等が挙げられ、上記の染料を単独で用いてもよいし、2種以上の組み合わせにしてもよい。また、無機系の材料としては、Te、Ge、Se、In、Sb、Sn、Zn、Au、Al、Cu、Pt等の金属、半金属を単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせた合金又は積層などでもよい。光学的変化のしかたは相変化、バブル、穴あけタイプのいずれであってもよい。さらにFeTbCoを主体とした光磁気記録層であってもよいし、スピロピラン、フルキド系のフォトクロミック材料であってもよい。
【0013】記録層膜厚としては100Å〜10μm好ましくは200Å〜2μmが適当である。膜形成方法としては、CVD、スパッタ法、溶剤塗工法(例えば浸漬コーティング、カーテンコーティング、スプレーコーティング、スピンナーコーティング、ブレードコーティング、ローラーコーティング等)を用いることができる。
【0014】(5)反射層反射層は反射率が高く腐食されにくいものが望ましく、光沢を有する金属が挙げられ、好ましくはAl、Au などが挙げられる。膜厚としては100Å〜50μm好ましくは200Å〜20μmが適当である。膜形成方法としては蒸着、スパッタ法などが挙げられる。
【0015】この他に前記下引き層、記録層、保護層、反射層中に安定剤、分散剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、可塑剤等が含有されていてもよい。又、本発明の媒体は再生専用媒体、ライトワンス媒体、光磁気を含めた書き換え可能媒体のいずれであってもよい。
【0016】
【実施例】本発明は、MCAV方式の光情報記録媒体の改良に係るもので、以下図面を用いていくつかの実施例について詳細に説明する。
【0017】まず、本発明の前提になる技術について図4R>4及び図5により述べると、図中1はMCAV方式の光情報記録媒体で、たとえばガラスあるいはプラスチックからなるディスク状基板の表面に金属膜が被覆されており、その表面にはあらかじめグルーブ状のトラック2がスパイラル状もしくは同心円状に形成されている。トラック2は複数個のセクター3に分割され、各セクター3はインデックス情報エリア4及びデータ部5からなる。この媒体1は外周から内周に半径方向に複数個のグループ6−1、6−2、6−3・・・に分割されている。ここまではごく一般的なMCAV方式の媒体の説明であるが、前記の公報(特開平2−152031号)では、図5R>5に示すように、各グループ6−1、6−2、6−3・・・の境界位置に2本の使用禁止特別トラック8−1、8−2を設け、これにより隣接するトラックのインデックス情報をクロストークで誤認識するのを防いでいる。
【0018】しかしながら、上記公報の技術では、グループ6−1、6−2、6−3・・・の境界部例えばトラック7の最外周を再生する場合、8−2の使用禁止情報がクロストークとして再生情報に影響し、インデックス(アドレス)情報を確実に再生できないばかりでなく、データ部にもクロストークが存在し、データ部ジッタの増加を招いてしまう。
【0019】本発明はこのような問題を以下のようにして解決している。図1は本発明による光情報記録媒体(グルーブ記録方式)の一例であり、グループ間の境界位置においてただのグルーブのみからなるトラック9を2本分設けたものである。すなわち、あるグループの使用可能トラック7と隣のグループの使用可能トラック7’の間に2本分のグルーブを設けたものである。このようにしてフォーマットされた使用可能トラック7の最外周あるいは使用可能トラック7’の最内周を再生しても、インデックス情報エリア4に異なったクロストーク成分は存在しないし、さらにデータ部5には全くクロストーク成分は存在しなくなる。前記境界位置に設けるグルーブ(グルーブのみ)の本数は1本以上あればよく、好ましくは1〜2本分である。
【0020】図2は図1の媒体の方式をグルーブ方式にかえてランド記録とした媒体の一部を示したものである。
【0021】また、本発明によれば、図3のような構成とすることもできる。図3はランド記録方式の媒体で、あるグループの使用可能トラック7と隣のグループの使用可能トラック7’の間に、トラックピッチ3本分の鏡面部9’を設けたものである。鏡面部9’の存在する幅は、本発明の目的達成のためのためトラックピッチの0.01本分以上存在すればよいが、好ましくは0.1〜2本分である。さらに、あるグループの使用可能トラック7の最外周には、以後鏡面部であることを示す情報部10を設けてある。この情報部10は隣のグループの使用可能トラック7’の最内周に設けても良い。
【0022】図3のような構成としても、図1の場合と同様に境界のトラックのデータ部にはクロストークは存在しないのでデータ再生に非常に有利である。また、情報部10を設ける場合、その1トラック内側のトラックを再生するときに、情報部10のクロストーク成分がインデックス情報エリア4にかかり、アドレスの読み誤りを招かないように留意する必要がある。
【0023】また、上記境界部に設けたトラック9あるいは鏡面部9’はドライブのフォーカスイン、トラッキングオフ状態でアクセス待機中にレーザー光がスキャンするようにすればアクセスタイムの短縮も可能となる。
【0024】次に具体的作製例について述べる。図1、2、3及び4に示すフォーマット、トラックピッチ1.8μmのポリカーボネート射出成形板に下記式化1のシアニン色素をメタノール:メチルエチルケトン=9:1の混合溶媒に溶解し、スピンコートで膜厚が1000Åとなるように膜形成した。このような記録膜付き基板を一対用い、エアーサンドイッチ構造の光ディスクを作製した。
【化1】


【0025】以上のようにして作製した各光ディスクを光ディスクドライブのターンテーブルに装着し15分傾けて、各図の使用可能トラック7の最外周のトラック(図3では情報部10の存在するトラック)を1万回再生したところ、図1、2のフォーマットの光ディスクでは全く読み誤りはなく、図3のフォーマットの光ディスクでは5回、図4のフォーマットの光ディスクでは7回の読み誤りであった。
【0026】また、上記で作製した各光ディスクの7のトラック部分にデータを書き込み、その時のジッタを測定したところ、図4のフォーマットの光ディスクでは図1R>1、2及び3の光ディスクに比べ25%ジッタが増加した。
【0027】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明によれば上記構成としたので、クロストーク成分が少なく(全くなく)情報インデックスを読み誤ることが少なく、データ部のクロストークによるジッタ増加が防止され、高速アクセスの可能な光情報記録媒体が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による光情報記録媒体の一例を示す図である。
【図2】本発明による光情報記録媒体の別の例を示す図である。
【図3】本発明による光情報記録媒体の更に別の例を示す図である。
【図4】従来の光情報記録媒体の一例を示す図である。
【図5】図4の光情報記録媒体の一部を拡大して示す図である。
【符号の説明】
1 光情報記録媒体 2トラック
2 セクター 4 インデックス情報エリア
5 データ部 6 グループ
7,7’ 使用可能トラック 9 境界位置のトラック
9’ 境界位置の鏡面部
10 以後鏡面部であることを示す情報部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 スパイラル状あるいは同心円状のトラックを有するMCAV方式の光情報記録媒体において、前記トラックを半径方向に複数個に分割した各グループ間の境界位置に、1本又は複数本の案内溝のみからなるトラックが存在することを特徴とする光情報記録媒体。
【請求項2】 1本又は複数本の案内溝のみからなるトラックのかわりにプリフォーマットプリグルーブの全く存在しない鏡面部が前記境界位置にトラックピッチの0.01倍の幅以上存在することを特徴とする請求項1に記載の光情報記録媒体。
【請求項3】 前記境界位置に存在するトラック又は鏡面部の始点及び終点の少なくとも一方に、その前後が該トラック又は該鏡面部であることを認識するための情報があらかじめ付与されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光情報記録媒体。
【請求項4】 前記境界位置に存在するトラック又は鏡面部は、当該光情報記録媒体を回転させ、再生光をオン状態に保ち、アクセス待機中に、ピックアップを該トラック又は該鏡面部に待機させるためのものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の光情報記録媒体。
【請求項5】 前記境界位置に存在するトラック又は鏡面部は使用禁止領域とし、その始点及び終点の少なくとも一方にその前後が使用禁止領域であることを認識するための情報があらかじめ付与されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光情報記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【特許番号】第2972900号
【登録日】平成11年(1999)9月3日
【発行日】平成11年(1999)11月8日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−108702
【出願日】平成3年(1991)4月12日
【公開番号】特開平4−315823
【公開日】平成4年(1992)11月6日
【審査請求日】平成10年(1998)4月9日
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【参考文献】
【文献】特開 平2−189770(JP,A)
【文献】特開 平4−301263(JP,A)
【文献】特開 昭61−107539(JP,A)
【文献】特開 平1−169736(JP,A)
【文献】特開 平2−306432(JP,A)