説明

光拡散シートの製造方法

【課題】 液晶表示装置のバックライトユニットに用いる精度のよい光拡散シートを能率よく製造することができる方法を提供する。
【解決手段】 表面に微細な凹凸模様を刻設している成形ロール2とこの成形ロール2の前側周面に当接させている第1冷却ロール3との間にTダイ1から光拡散材を添加している半溶融状態のポリカーボネート樹脂シートAを押し出して供給し、一次冷却しながら成形ロール2の凹凸模様によって樹脂シートAの表面に所定形状のプリズム層を形成し、引き続いて該樹脂シートAを成形ロール2の周面に載せた状態で成形ロール2の後側周面に当接している第2冷却ロール4に送り込み、これらのロールによって挟圧しながら、第2冷却ロール4により上記一次冷却温度よりも低い温度で冷却処理して、シートに歪みを生じさせることなく薄肉で低位相差の光拡散シートを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置のバックライトユニットに用いる光拡散シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置のバックライトユニットは、公知のように、一側端面にランプを配設している導光板の表面に上記光拡散シートとプリズムシートを積層してなり、上記ランプからの光を導光板の裏面で反射させて光拡散シートに入射し、この光拡散シートで拡散した光量をポリズムシートによって増強させて液晶パネルに集光させるように構成している。
【0003】
このバックライトユニットに用いている上記光拡散シートは、従来から、透明な熱可塑性合成樹脂よりなる基材の表面に炭化カルシウム、シリカ、酸化アルミニウム等の無機質微粒子や、アクリル樹脂、メラミン樹脂、有機シリコーン樹脂等の有機質微粒子を分散させた光拡散層を積層してなる構造を有しており、透明な熱可塑性合成樹脂シートに上記微粒子をバインダー中に分散させた塗料を塗布することによって製造されているが、微粒子とバインダとは屈折率が異なっているために、光拡散層からの出光量が減少して液晶パネルの明度を低下させる虞れがあり、その上、光拡散シートの薄型化を図ることにも困難性がある。
【0004】
また、この光拡散シートの表面に上記プリズムシートを一体に積層することも行われており、例えば、特許文献1には、表面に連続山形形状等のプリズム形成用凹凸面を形成している冷却ロールとこの冷却ロールに接したニップロールとの間に一定幅を有する帯状の光拡散シートを送り込むと共に、上方より押出機から半溶融状態の熱可塑性樹脂シートを押し出して上記光拡散シートと冷却ロールとの間に供給することにより、この熱収縮性シートと光拡散シートとを一体に層着すると同時に該熱可塑性樹脂シートに冷却ロールの上記凹凸面でプリズム層を刻設する方法が開示されている。
【0005】
しかしながら、この方法によれば、予め光拡散シートを作製しておかねばならないために製造に手間を要するばかりでなく、光拡散シートとプリズムシートとの積層によって厚みが増してバックライトユニットの薄肉化を図ることができず、また、制作費や材料費も高くつくといった問題点がある。
【0006】
このため、特許文献2に記載されているように、例えば、ポリカーボネート樹脂100 重量部に平均粒子径が10μmの架橋アクリル樹脂からなる光拡散剤を5重量部混合してなるペレットを、押出機を用いてTダイ成形口金から200 μmの半溶融状態の樹脂シートとして押し出し、これを表面にプリズム形成用凹凸面を形成しているニップロールの間に送り込むことにより、該樹脂シートの表面にニップロールに形成している凹凸面の転写によるプリズム層を刻設し、ニップロールの少なくとも一方を冷却ロールとして使用して該樹脂シートを冷却固化させることよってプリズムシートを製造する方法が開発されている。
【0007】
【特許文献1】特開平8−313707号公報
【特許文献2】特開平9−304606号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記方法によれば、光拡散性シートとプリズムシートとの両性能を兼備した薄肉の光拡散性プリズムシートを連続的に製造することができるが、樹脂シートの表面にプリズム層を形成したのちニップロール間から該樹脂シートを直接、引き取りロール等によって引き出すので、樹脂シートに引張応力による歪みが生じて位相差が高くなるといった問題点があり、さらに、ニップロールにはその長さ方向に温度ムラが生じていると共に押出機から押し出される半溶融状態の樹脂シートにもその幅方向に温度ムラが生じているため、ニップロールによって表面にプリズム層を刻設された樹脂シートがニップロール間を通過する際に、上記温度ムラによってニップロールから剥離する部分が樹脂シートの幅方向、即ち、ニップロールによるニップ点上に揃わず、部分的にニップロールからの剥離が遅れる事態が発生して樹脂シートに歪みが生じ、上記同様に位相差が高くなるといった問題点があった。
【0009】
このため、押出機内の樹脂温度を下げてニップロール間に送り出す半溶融状態の樹脂シートの温度を低くしたり、或いは、ニップロール間から樹脂シートを直接引き出すことなく、一方のニップロール上に沿って該ニップロールの回転方向に送り出し、その間に低温度で冷却、固化したのち、ニップロールから離間させる方法も考えられるが、このような方法においてもその間に樹脂シートの表面性を損ねたり、樹脂の温度を一度に下げることによる樹脂の分子配向の乱れ等によって内部位相差が高くなり、光拡散シートとしての使用に適さなくなる等の問題が生じる。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、樹脂シートに歪みなどを殆ど生じさせることなく薄肉で且つ精度のよい低位相差の光拡散シートを能率よく製造することができる光拡散シートの製造方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の光拡散シートの製造方法は請求項1に記載したように、押出機から押し出される半溶融状態の熱可塑性樹脂シートを成形ロールと第1冷却ロール間に送り込んでこれらの両ロールにより挟圧しながら一次冷却処理を行ったのち、上記成形ロールの表面にこの樹脂シートを載せた状態で成形ロールの回転方向に搬送し、引き続いて、この成形ロールと該成形ロールに接して回転している第2冷却ロールとによって樹脂シートを挟圧しながら上記一次冷却温度よりも低い温度で二次冷却してこの樹脂シートを冷却固化することを特徴とする。
【0012】
このように構成した光拡散シートの製造方法において、請求項2に係る発明は、熱可塑性樹脂シートとして、重量平均分子量が13,000〜18,000のポリカーボネート樹脂に光拡散材を添加してなるポリカーボネート樹脂シートを用いていることを特徴とし、さらに請求項3に係る発明は、このポリカーボネート樹脂シートを冷却する上記第1冷却ロールによる一次冷却温度が100 〜130 ℃であり、第2冷却ロールによる二次冷却温度が80〜100 ℃であることを特徴とする。
【0013】
また、請求項4に係る発明は、上記成形ロールの表面にエンボス模様や連続山形模様等の凹凸模様を施しておき、この凹凸模様によって樹脂シートの表面にプリズム層を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の光拡散シートの製造方法によれば、請求項1に記載したように、押出機から押し出される半溶融状態の熱可塑性樹脂シートを成形ロールと第1冷却ロール間に送り込んでこれらの両ロールにより挟圧しながら一次冷却処理を行い、さらに、この樹脂シートを成形ロールの表面上に載せた状態で該成形ロールの回転に伴って回転方向に搬送し、その搬送後方側においてこの成形ロールと該成形ロールに接して回転している第2冷却ロールとにより挟圧して二次冷却を行うものであるから、成形ロールの周速度と第1、第2冷却速度の周速度とを同調させておくことによって、成形ロールによりプリズム層等の表面処理加工を施されてこの成形ロールと第1冷却ロールから送り出された樹脂シートは引張られることなく成形ロール上にそのまま移載させられ、且つ、成形ロール上における第1冷却ロールと第2冷却ロール間においても樹脂シートには引張力が作用しないから、樹脂シートに歪みを生じさせることなく薄肉で低位相差の光拡散シートを連続的に能率よく製造することができる。
【0015】
さらに、押出機から押出された高温度の半溶融状態の熱可塑性樹脂シートを急冷することなくまず、成形ロールと第1冷却ロールとによって一次冷却処理を施したのち、成形ロール上でさらに冷却を促進しながらこの成形ロールと第2冷却ロールとによって上記一次冷却温度よりも低い温度でもって二次冷却処理を施すものであるから、温度ムラを生じさせることなく樹脂シート全体を均一に冷却、固化させることができると共に、成形ロールと第2冷却ロール間から後方に向かって剥離する樹脂シートの剥離点を変動させることなく成形ロールと第2冷却ロールとの挟圧部に平行に揃えた状態で全幅に亘って同時に剥離させることができ、従って、成形ロール上での樹脂シートの加工時における応力歪みを低減させて液晶表示装置のバックライトユニット等の光学シートとして用いることができる低位相差の光拡散シートを得ることができる。
【0016】
上記光拡散シートの基材となる熱可塑性樹脂シートとしては、光透過性が高くて且つ光拡散性能に優れた重量平均分子量が13,000〜18,000のポリカーボネート樹脂に光拡散材を添加してなるポリカーボネート樹脂シートを用いることが望ましく、この場合には、押出機から押し出される半溶融状態のポリカーボネート樹脂シートを冷却する第1冷却ロールによる一次冷却温度を100 〜130 ℃とし、第2冷却ロールによる二次冷却温度を80〜100 ℃とすることにより、光拡散材を含有したポリカーボネート樹脂シートを歪みなどを殆ど生じさせることなくポリカーボネート樹脂からなる薄肉で強度的にも優れ且つ低位相差で光拡散性能に優れた光拡散シートを製造することができる。
【0017】
また、成形ロールの表面にエンボス模様や連続山形模様等の凹凸模様を施しておくことが好ましく、このように成形したロールを使用することによって、表層部に凹凸模様によるプリズム層を備えた光拡散シートを生産性よく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、図1は光拡散シートを製造する装置の概略図であって、押出機のTダイ1の下方に、周面にエンボス加工による深さが1.0 〜5.0 μmの市松模様状や連続山形形状等の微細な凹凸模様(図示せず)を刻設している成形ロール2とこの成形ロール2の前側周面に後側周面を当接させている第1冷却ロール3とを配設してあり、これらの成形ロール2と第1冷却ロール3との接触面の垂直上方に上記Tダイ1を配設してその下向きに開口している押出口1aをこれらのロール2、3間に臨ませている。さらに、成形ロール2の後側周面に第2冷却ロール4の前側周面を当接させた状態に配設して、上記Tダイ1から押し出された半溶融状態の樹脂シートAを上記成形ロール2と第1冷却ロール3間から下方に離脱させることなく成形ロール2の下側周面上に載せてこの第2冷却ロール4と成形ロール2間を通過させ、ガイドロール5側に送り出すように構成している。
【0019】
このように構成した装置によって光拡散シートを製造する方法を述べると、Tダイ1から熱可塑性合成樹脂、例えば、光透過性が高くて且つ光拡散性能に優れた重量平均分子量が13,000〜18,000のポリカーボネート樹脂にガラスビーズや熱可塑性樹脂ビーズ等の無機質、有機質の微粒子からなる光拡散材を添加している半溶融状態のポリカーボネート樹脂シートAを押し出して成形ロール2と第1冷却ロール3間に供給する。成形ロール2と第1冷却ロール3とは、その表面温度が100 〜130 ℃に保持されていると共に第2冷却ロール4の表面温度は第1冷却ロール3よりも低い80〜100 ℃に保持されてあり、さらに、これらのロール2、3と上記第2冷却ロール4とは樹脂シートAを後方に向かって送り出す方向に同一の周速度でもって回転している。
【0020】
成形ロール2と第1冷却ロール3間に供給された上記半溶融状態のポリカーボネート樹脂シートAは、まず、これらのロール2、3間で挟圧されながら上記温度でもって一次冷却されると共に成形ロール2に刻設している微細な凹凸模様によってその表面に凹凸のプリズム層が形成されたのち、これらのロール2、3の回転に従って下方に引っ張られることなく該ロール間から成形ロール2の周面に載せられ、成形ロール2の回転に伴ってさらに冷却されながら第2冷却ロール4側に搬送される。
【0021】
そして、第2冷却ロール4に達したシート部分は、この第2冷却ロール4と成形ロール2間で挟圧されながら第2冷却ロール4によって上記第1冷却ロール3による一次冷却温度よりも低い上記温度でもって二次冷却処理されて固化し、全幅に亘って一定の温度に保持されながら成形ロール2と該第2冷却ロール4とによるニップ点から後方に向かって均一に離脱してガイドロール5を介して後方に搬送される。
【0022】
このように、上記Tダイ1から押し出された半溶融状態のポリカーボネート樹脂シートAは、急冷されることなく、まず成形ロール2と第1冷却ロール3間で挟圧されながら一次冷却処理されたのち、成形ロール2と第2冷却ロール4間で挟圧されながら一次冷却処理温度よりも低い温度でもって二次冷却処理され、且つ、成形ロール2と第1冷却ロール3間から第2冷却ロール4に達するまでにポリカーボネート樹脂シートAが引張力作用を受けることなく成形ロール2の回転に伴って該成形ロール2上を搬送され、さらに、成形ロール2と第2冷却ロール4とのニップ点(挟圧部)から全幅に亘って均一に離脱しながら送り出されるので、ポリカーボネート樹脂シートAに温度ムラや引張りによる歪みを生じさせる虞れはなく、精度のよい低位相差の光拡散シートを連続的に製造することができる。
【0023】
次に、本発明の具体的な実施例と比較例とを表1に示す。実施例1〜4は、上記光拡散シートの製造装置において、Tダイ1の成形温度を260 ℃とし、光拡散シートの原料となる熱可塑性樹脂として所定量の光拡散材を添加してなるポリカーボネート樹脂を使用して上記Tダイ1の押出口1aから半溶融状態のポリカーボネート樹脂シートAを成形しながら表面に市松模様からなる表面粗さRaが5.0μmの凹凸模様を刻設している成形ロール2と所定の冷却温度を保持している第1冷却ロール3間に供給して表面にプリズム層を刻設すると共に一次冷却処理を施し、引き続いて成形ロール2(第1冷却ロール3と同じ冷却温度を保持している)上に載せて後方に搬送し、この成形ロール2と第2冷却ロール4で挟圧すると共に二次冷却処理することによって厚みが200 μmの光拡散シートを得た。一方、比較例1として、上記製造装置において、第2冷却ロール4を使用することなく、半溶融状態のポリカーボネート樹脂シートAを成形ロール2と第1冷却ロール3とによって光拡散シートを成形したのち、これらのロール間からそのまま下方に送り出した。
【0024】
【表1】

【0025】
上記表1において、重量平均分子量とは、ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量であり、ロール3及びロール4は、それぞれ第1冷却ロール3と第2冷却ロール4を示す。また、表面粗さRaは製造された光拡散シートの表面粗さRaを示す。この表からも明らかなように、実施例1〜4によって得られた光拡散シートはその位相差が極めて小さくて精密度を要求される液晶表示装置のバックライトユニット等に用いる光拡散シートとして適するものである。
【0026】
なお、以上の実施例においては、光拡散シートの原料としてポリカーボネート樹脂を用いているが、透光性を有するその他の熱可塑性樹脂、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、イソフタレート共重合体等によるホリエテスル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂等を用いてもよい。また、成形ロール2として、その周面(表面)に凹凸模様を設けていないロールを使用して表層部にプリズム層を備えていない光拡散シートを製造してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】光拡散シートを製造する装置の概略図である。
【符号の説明】
【0028】
A ポリカーボネート樹脂シート
1 Tダイ
2 成形ロール
3 第1冷却ロール
4 第2冷却ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機から押し出される半溶融状態の熱可塑性樹脂シートを成形ロールと第1冷却ロール間に送り込んでこれらの両ロールにより挟圧しながら一次冷却処理を行ったのち、上記成形ロールの表面にこの樹脂シートを載せた状態で成形ロールの回転方向に搬送し、引き続いて、この成形ロールと該成形ロールに接して回転している第2冷却ロールとによって樹脂シートを挟圧しながら上記一次冷却温度よりも低い温度で二次冷却してこの樹脂シートを冷却固化することを特徴とする光拡散シートの製造方法。
【請求項2】
熱可塑性樹脂シートは、重量平均分子量が13,000〜18,000のポリカーボネート樹脂に光拡散材を添加してなるポリカーボネート樹脂シートであることを特徴とする請求項1に記載の光拡散シートの製造方法。
【請求項3】
ポリカーボネート樹脂シートを冷却する第1冷却ロールによる一次冷却温度が100 〜130 ℃であり、第2冷却ロールによる二次冷却温度が80〜100 ℃であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光拡散シートの製造方法。
【請求項4】
成形ロールの表面にエンボス模様や連続山形模様等の凹凸模様を施してあり、この凹凸模様によって樹脂シートの表面にプリズム層を形成することを特徴とする請求項1に記載の光拡散シートの製造方法。

【図1】
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