光拡散フィルムおよび光拡散フィルムの製造方法
【課題】光の透過と拡散において良好な入射角度依存性を有するとともに、光拡散入射角度領域が広い光拡散フィルムおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】入射光を異方性拡散させるための第1の構造領域と、入射光を等方性拡散させるための第2の構造領域とを有する光拡散フィルムであって、第1の構造領域が、屈折率が異なる複数の板状領域をフィルム面方向に沿って交互に平行配置してなるルーバー構造領域であり、第2の構造領域が、媒体物中に当該媒体物とは屈折率が異なる複数の柱状物を林立させてなるカラム構造領域である。
【解決手段】入射光を異方性拡散させるための第1の構造領域と、入射光を等方性拡散させるための第2の構造領域とを有する光拡散フィルムであって、第1の構造領域が、屈折率が異なる複数の板状領域をフィルム面方向に沿って交互に平行配置してなるルーバー構造領域であり、第2の構造領域が、媒体物中に当該媒体物とは屈折率が異なる複数の柱状物を林立させてなるカラム構造領域である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光拡散フィルムおよび光拡散フィルムの製造方法に関する。特に、入射光を異方性拡散させるためのルーバー構造領域と、入射光を等方性拡散させるためのカラム構造領域と、を含むことにより、光の透過と拡散において良好な入射角度依存性を有するとともに、光拡散入射角度領域が広い光拡散フィルムおよび光拡散フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置においては、装置内部に設けられた光源(内部光源)から出射された光を利用して、所定画像を認識することが可能である。
しかしながら、近年、携帯電話や車載用テレビ等の普及により、液晶表示画面を室外で見る機会が増加しており、それにともない、内部光源からの光強度が外光に負けてしまい、所定画面を視認しにくくなるという問題が生じている。
また、携帯電話等のモバイル用途においては、液晶表示装置の内部光源による消費電力が、全消費電力に対して大きな割合を占めるため、内部光源を多用した場合、バッテリーの持続時間が短くなってしまうという問題が生じている。
【0003】
そこで、これらの問題を解決すべく、光源の一部として外光を利用する反射型液晶表示装置が開発されている。
かかる反射型液晶表示装置であれば、光源の一部として外光を利用することから、外光が強い程、鮮明な画像を認識することができるとともに、内部光源の電力消費についても、効果的に抑えることができる。
【0004】
また、このような反射型液晶表示装置において、外光を効率的に透過させて液晶表示装置の内部に取り込み、かつ、その外光を光源の一部として有効に利用すべく、効率的に光拡散するための光拡散フィルムを備えることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
より具体的に説明すると、特許文献1には、図23(a)〜(b)に示すように、上基板1103と下基板1107との間に液晶層1105を挟んでなる液晶セルと、下基板1107の側に設けられた光反射板1110と、液晶層1105と光反射板1110との間に設けられた光制御板(光拡散フィルム)1108とを有した液晶装置1112が開示されている。
そして、所定角度で入射する光を選択的に散乱させるとともに所定角度以外の角度で入射する光を透過させるための光制御板1108が設けてあり、かかる光制御板1108は、所定角度で入射する光を選択的に散乱する方向を光制御板1108の表面に投影した散乱軸方向1121が、液晶セル内面でほぼ6時方向の方向となるように液晶セルに配置されている。
【0005】
ここで、反射型液晶表示装置に使用される光拡散フィルムとしては、特定の光硬化性組成物に対して、線状光源を用いて活性エネルギー線を照射することにより、フィルム面方向に高屈折率の板状領域と、低屈折率の板状領域とを交互に平行配置させ、フィルム内にルーバー構造領域を形成してなる光拡散フィルムが開示されている(例えば、特許文献2〜3参照)。
すなわち、特許文献2には、重合性炭素−炭素二重結合を有する化合物を複数種含む膜状組成物に特定方向から紫外線を照射して、該組成物を硬化させて得られ、特定角度範囲の入射光のみを選択的に散乱する光制御膜(光拡散フィルム)において、該組成物に含まれる少なくとも1種の化合物が、複数の芳香環と1つの重合性炭素−炭素二重結合とを分子内に有する化合物であることを特徴とする光制御膜が開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、分子内に重合性の炭素−炭素二重結合を有するフルオレン系化合物(A)、該フルオレン系化合物(A)と屈折率が異なるカチオン重合性化合物(B)、および光カチオン重合開始剤(C)を含有することを特徴とする光硬化性組成物およびそれを硬化させてなる光制御膜が開示されている。
【0007】
一方、反射型液晶装置に使用される別のタイプの光拡散フィルムとしては、特定の光硬化性組成物に対して、全面的に平行光としての活性エネルギー線を照射することにより、フィルムの膜厚方向に沿って、媒体物中に当該媒体物とは屈折率が異なる複数の柱状物を林立させたカラム構造領域を形成してなる光拡散フィルムが開示されている(例えば、特許文献4〜6参照)。
すなわち、特許文献4には、光硬化性化合物を含む組成物をシート状に設け、このシートに所定の方向Pから平行光線を照射して組成物を硬化させて、シート内部に方向Pに平行に延在している複数の棒状硬化領域の集合体を形成せしめる拡散媒体(光拡散フィルム)の製造方法であって、線状光源とシートとの間に、方向Pに平行に配置した筒状物の集合を介在させ、この筒状物を通して光照射を行うことを特徴とする拡散媒体の製造方法が開示されている。
【0008】
また、引用文献5には、光硬化性樹脂組成物膜と離隔対向するように線状光源を配置し、光硬化性樹脂組成物膜および線状光源の少なくとも一方を移動させながら、線状光源から光を照射して光硬化性樹脂組成物膜を硬化させて光制御膜(光拡散フィルム)を形成する製造装置であって、線状光源の軸方向と移動方向とが交差し、お互いに対向する複数枚の薄板状の遮光部材が、光硬化性樹脂組成物膜と線状光源との間に、移動方向に対して略垂直方向に所定間隔で、かつ遮光部材の、光硬化性樹脂組成物膜と対向する一辺が、それぞれ移動方向と同方向となるように設けられていることを特徴とする光制御膜の製造装置が開示されている。
【0009】
さらに、特許文献6には、上方に向けられた棚面が吸光面とされ、下方に向けられた傾斜面が反射面とされたリニアフレネル部材のフレネル面を覆って配置され、所定角より大きな入射光は拡散させない拡散特性を有する拡散層(拡散フィルム)と、を備えており、拡散層が、光硬化性樹脂組成物に所定方向から光通過域と光不通過域とを有するフォトマスクを介して平行光を照射し、照射された部位を、未完全な硬化状態に硬化させる第1の光照射工程と、フォトマスクを取り外して、さらに光強度分布が略一定の平行光を光硬化性組成物に向けて照射して、光硬化性組成物の硬化を完了させる第2の光照射工程とによって生成され、該フィルム内に光硬化性組成物からなるマトリックスと、該マトリックス中で平行光の照射方向に延びるように配向された該マトリックスと屈折率が異なる複数の柱状構造体と、を備えた相分離構造を備えていることを特徴とする反射型プロジェクションスクリーンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許3480260号公報(特許請求の範囲、図面等)
【特許文献2】特開2006−350290号公報(特許請求の範囲、図面等)
【特許文献3】特開2008−239757号公報(特許請求の範囲、図面等)
【特許文献4】特許4095573号公報(特許請求の範囲、図面等)
【特許文献5】特開2009−173018号公報(特許請求の範囲、図面等)
【特許文献6】特開2008−256930号公報(特許請求の範囲、図面等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1〜3に開示されたルーバー構造領域を有する光拡散フィルムは、光拡散可能な入射光の入射角度領域(以下、光拡散入射角度領域と称する場合がある。)が狭くなったり、さらには、拡散光の開き角度も狭くなったりする場合が見られた。
【0012】
また、特許文献4〜5に開示されたカラム構造領域を有する光拡散フィルムは、ルーバー構造領域を有する光拡散フィルムと比較して、フィルム内における光の反射にむらが生じ易いことから、入射光の入射角による拡散特性のばらつきが大きく、良好な入射角度依存性を発揮することが困難であるという問題が見られた。
【0013】
そこで、本発明者らは、以上のような事情に鑑み、鋭意努力したところ、フィルム内において、入射光を異方性拡散させるためのルーバー構造領域と、入射光を等方性拡散させるためのカラム構造領域と、を設けることにより、良好な入射角度依存性を有するとともに、光拡散入射角度領域が広い光拡散フィルムを得られることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明の目的は、光の透過と拡散において良好な入射角度依存性を有するとともに、光拡散入射角度領域が広い光拡散フィルムおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、入射光を異方性拡散させるための第1の構造領域と、入射光を等方性拡散させるための第2の構造領域とを有する光拡散フィルムであって、第1の構造領域が、屈折率が異なる複数の板状領域をフィルム面方向に沿って交互に平行配置してなるルーバー構造領域であり、第2の構造領域が、媒体物中に当該媒体物とは屈折率が異なる複数の柱状物を林立させてなるカラム構造領域であることを特徴とする光拡散フィルムが提供され、上述した問題を解決することができる。
すなわち、本発明の光拡散フィルムであれば、フィルム内において、入射光を異方性拡散させるための第1の構造領域としてのルーバー構造領域と、入射光を等方性拡散させるための第2の構造領域としてのカラム構造領域とを設けてある。
したがって、それぞれの構造領域が有する入射角度依存性を重複させることで、拡散特性のばらつきを抑制し、良好な入射角度依存性を得ることができるばかりか、拡散光の開き角度についても、効果的に広げることができる。
また、それぞれの構造領域が有する入射角度依存性を異ならせることで、光拡散入射角度領域を効果的かつ容易に広げることができる。
なお、本発明において「フィルム面方向」とは、膜厚方向をz軸とした場合におけるx−y平面方向を意味するものとする。
また、本発明において、「光拡散入射角度領域」とは、異方性光拡散フィルムに対して、点光源からの入射光の角度を変化させた場合に、拡散光を出光するのに対応する入射光の角度範囲を意味する。かかる光拡散入射角度領域の詳細については、後述する。
また、「良好な入射角度依存性」とは、入射光の光拡散が生じるフィルムに対する入射角度領域(光拡散入射角度領域)と、光拡散が生じないその他の入射角度領域との間の区別が、明確に制御されていることを意味する。
さらに、本発明における「異方性」とは、拡散光の広がりの形状が異方性を有することを意味し、「等方性」とは、拡散光の広がりの形状が等方性を有することを意味するが、これらについても、詳細は後述する。
【0015】
また、本発明の光拡散フィルムを構成するにあたり、第1の構造領域において、屈折率が異なる板状領域の幅を、それぞれ0.1〜15μmの範囲内の値とするとともに、当該板状領域を膜厚方向に対して一定の傾斜角にて平行配置してなることが好ましい。
このように構成することにより、第1の構造領域としてのルーバー構造領域内において入射光をより安定的に反射させて、第1の構造領域に由来した入射角度依存性および拡散光の開き角度をさらに向上させることができる。
【0016】
また、本発明の光拡散フィルムを構成するにあたり、第1の構造領域において、屈折率が異なる板状領域のうち、屈折率の高い板状領域の主成分が、複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルの重合体であり、屈折率の低い板状領域の主成分が、ウレタン(メタ)アクリレートの重合体であることが好ましい。
このように構成することにより、第1の構造領域としてのルーバー構造を効率的に形成することができるばかりか、第1の構造領域に由来した入射角度依存性および拡散光の開き角度をさらに向上させることができる。
【0017】
また、本発明の光拡散フィルムを構成するにあたり、第1の構造領域の厚さを5〜495μmの範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、膜厚方向に沿ったルーバー構造の長さを安定的に確保して、第1の構造領域としてのルーバー構造領域内において入射光をより安定的に反射させ、第1の構造領域に由来した入射角度依存性および拡散光の開き角度をさらに向上させることができる。
【0018】
また、本発明の光拡散フィルムを構成するにあたり、第2の構造領域において、柱状物の断面における最大径を0.1〜15μmの範囲内の値とするとともに、柱状物間の距離を0.1〜15μmの範囲内の値とし、かつ、複数の柱状物を膜厚方向に対して一定の傾斜角にて林立させてなることが好ましい。
このように構成することにより、第2の構造領域としてのカラム構造領域内において入射光をより安定的に反射させて、第2の構造領域に由来した入射角度依存性および拡散光の開き角度をさらに向上させることができる。
【0019】
また、本発明の光拡散フィルムを構成するにあたり、第2の構造領域において、柱状物の主成分が、複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルの重合体であり、媒体物の主成分が、ウレタン(メタ)アクリレートの重合体であることが好ましい。
このように構成することにより、第2の構造領域としてのカラム構造を効率的に形成することができるばかりか、第2の構造領域に由来した入射角度依存性および拡散光の開き角度をさらに向上させることができる。
【0020】
また、本発明の光拡散フィルムを構成するにあたり、第2の構造領域の厚さを5〜495μmの範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、膜厚方向に沿った柱状物の長さを安定的に確保して、第2の構造領域としてのカラム構造領域内において入射光をより安定的に反射させ、第2の構造領域に由来した入射角度依存性および拡散光の開き角度をさらに向上させることができる。
【0021】
また、本発明の別の態様は、入射光を異方性拡散させるための第1の構造領域と、入射光を等方性拡散させるための第2の構造領域とを有する光拡散フィルムの製造方法であって、下記工程(a)〜(d)を含むことを特徴とする光拡散フィルムの製造方法である。
(a)光拡散フィルム用組成物を準備する工程
(b)光拡散フィルム用組成物を工程シートに対して塗布し、塗布層を形成する工程
(c)塗布層に対して第1の活性エネルギー線照射を行い、塗布層の下方部分に第1の構造領域としての屈折率が異なる複数の板状領域をフィルム面方向に沿って交互に平行配置してなるルーバー構造領域を形成するとともに、塗布層の上方部分にルーバー構造未形成領域を残す工程
(d)塗布層に対して、さらに第2の活性エネルギー線照射を行い、ルーバー構造未形成領域に第2の構造領域としての媒体物中に当該媒体物とは屈折率が異なる複数の柱状物を林立させてなるカラム状構造領域を形成する工程
すなわち、本発明の光拡散フィルムの製造方法であれば、第1の活性エネルギー線照射により第1の構造領域としてのルーバー構造領域を形成した後、第2の活性エネルギー線照射をすることにより、第1の構造領域の上方に存在する未形成領域において第2の構造領域としてのカラム構造領域を形成することができる。
したがって、第1の構造領域としてのルーバー構造領域と、第2の構造領域としてのカラム構造領域とを単一のフィルム内において、膜厚方向に沿って順次に上下に含んでなる光拡散フィルムを、効率的、かつ、安定的に製造することができる。
【0022】
また、本発明の光拡散フィルムの製造方法を実施するにあたり、第2の活性エネルギー線照射として、平行度が10°以下の値である平行光を照射することが好ましい。
このように実施することにより、複数の柱状物が膜厚方向に対して一定の傾斜角にて形成された第2の構造領域としてのカラム構造領域を、効率的、かつ、安定的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1(a)〜(b)は、第1の構造領域におけるルーバー構造の概略を説明するために供する図である。
【図2】図2(a)〜(b)は、ルーバー構造における入射光角度依存性および異方性を説明するために供する図である。
【図3】図3(a)〜(b)は、ルーバー構造における入射角度依存性を説明するために供する別の図である。
【図4】図4(a)〜(c)は、入射角および拡散光の開き角度を説明するために供する図である。
【図5】図5(a)〜(b)は、第2の構造領域におけるカラム構造の概略を説明するために供する図である。
【図6】図6(a)〜(b)は、カラム構造における入射角度依存性および等方性を説明するために供する図である。
【図7】図7(a)〜(b)は、本発明の光拡散フィルムの概略を説明するために供する図である。
【図8】図8(a)〜(c)は、第1の構造領域におけるルーバー構造の態様を説明するために供する図である。
【図9】図9(a)〜(d)は、第2の構造領域におけるカラム構造の態様を説明するために供する図である。
【図10】図10は、反射型液晶表示装置における本発明の光拡散フィルムの適用例を説明するために供する図である。
【図11】図11(a)〜(b)は、第1の活性エネルギー線照射工程を説明するために供する図である。
【図12】図12(a)〜(b)は、第1の活性エネルギー線照射工程を説明するために供する別の図である。
【図13】図13(a)〜(c)は、第2の活性エネルギー線照射工程を説明するために供する図である。
【図14】図14(a)〜(k)は、実施例1の光拡散フィルムにおける拡散光の広がりと、その明度の分布を説明するために供する図である。
【図15】図15(a)〜(b)は、実施例1の光拡散フィルムにおける断面の様子を説明するために供する写真である。
【図16】図16は、実施例2の光拡散フィルムを説明するために供する図である。
【図17】図17(a)〜(h)は、実施例3の光拡散フィルムにおける拡散光の広がりと、その明度の分布を説明するために供する図である。
【図18】図18(a)〜(g)は、実施例4の光拡散フィルムにおける拡散光の広がりと、その明度の分布を説明するために供する図である。
【図19】図19(a)〜(j)は、比較例1の光拡散フィルムにおける拡散光の広がりと、その明度の分布を説明するために供する図である。
【図20】図20(a)〜(k)は、比較例2の光拡散フィルムにおける拡散光の広がりと、その明度の分布を説明するために供する図である。
【図21】図21(a)〜(h)は、比較例3の光拡散フィルムにおける拡散光の広がりと、その明度の分布を説明するために供する図である。
【図22】図22(a)〜(i)は、比較例4の光拡散フィルムにおける拡散光の広がりと、その明度の分布を説明するために供する図である。
【図23】図23(a)〜(b)は、従来の光拡散フィルムを用いた反射型液晶装置を説明するために供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態は、入射光を異方性拡散させるための第1の構造領域と、入射光を等方性拡散させるための第2の構造領域とを有する光拡散フィルムであって、第1の構造領域が、屈折率が異なる複数の板状領域をフィルム面方向に沿って交互に平行配置してなるルーバー構造領域であり、第2の構造領域が、媒体物中に当該媒体物とは屈折率が異なる複数の柱状物を林立させてなるカラム構造領域であることを特徴とする光拡散フィルムである。
以下、本発明の第1の実施形態である光拡散フィルムを、図面を適宜参照して、具体的に説明する。
【0025】
1.基本原理
以下、光拡散フィルムにおけるルーバー構造による光拡散およびカラム構造による光拡散についての基本原理をそれぞれ説明する。
【0026】
(1)ルーバー構造による光拡散
図1(a)には、ルーバー構造領域のみを有し、入射光を異方性拡散させるための第1の構造領域10の上面図(平面図)が示してあり、図1(b)には、図1(a)に示す第1の構造領域10を、点線A−Aに沿って垂直方向に切断して、切断面を矢印方向から眺めた場合の第1の構造領域10の断面図が示してある。
なお、本発明において、異方性とは、図2(a)〜(b)に示すように、光がフィルムによって拡散された場合に、拡散された出射光におけるフィルムと平行な面内での、その光の拡散具合(拡散光の広がりの形状)が、同面内での方向によって異なる性質を有することを意味する。
より具体的には、第1の構造領域10の場合、主に、拡散された出射光はフィルムと平行な面内において、フィルム面方向に沿って延在するルーバー構造の方向とは垂直な方向に光が拡散されるため、拡散光の広がりの形状は略楕円状になる。
【0027】
また、図1(a)の平面図に示すように、第1の構造領域10は、屈折率が比較的高い板状領域12と、屈折率が比較的低い板状領域14とがフィルム面方向に沿って交互に平行配置されつつ延在してなるルーバー構造13を有している。
また、図1(b)の断面図に示すように、屈折率が比較的高い板状領域12と、屈折率が比較的低い板状領域14は、それぞれ所定厚さを有しており、第1の構造領域10の垂直方向においても、交互に平行配置された状態を保持している。
これにより、図2(a)〜(b)に示すように、入射角が光拡散入射角度領域内である場合には、入射光が第1の構造領域10によって拡散されることになると推定される。
すなわち、図1(b)に示すように、第1の構造領域10に対する入射光の入射角が、ルーバー構造13の境界面13´に対し、平行から所定の角度範囲内の値、すなわち、光拡散入射角度領域内の値である場合には、入射光(52、54)は、ルーバー構造内の高屈折率の板状領域12内を、方向を変化させながら膜厚方向に沿って通り抜けることにより、出光面側での光の進行方向が一様でなくなるものと推定される。
その結果、入射角が光拡散入射角度領域内である場合には、入射光が第1の構造領域10によって拡散されると推定される(52´、54´)。
【0028】
なお、光拡散入射角度領域は、図2(a)〜(b)、図6(a)〜(b)および図7(a)〜(b)に示すように、光拡散フィルムにおけるルーバー構造やカラム構造の屈折率差や傾斜角等によって、その光拡散フィルムごとに決定される角度領域である。
また、ルーバー構造内の高屈折率の板状領域12内における入射光の方向変化は、図1(b)に示すような全反射により直線状にジグザグに方向変化するステップインデックス型となる場合のほか、曲線状に方向変化するグラディエントインデックス型となる場合も考えられる。
一方、第1の構造領域10に対する入射光の入射角が、光拡散入射角度領域から外れる場合には、入射光56は、第1の構造領域10によって拡散されることなく、そのまま第1の構造領域10を透過するものと推定される(56´)。
【0029】
以上の機構により、ルーバー構造13を備えた第1の構造領域10は、例えば、図2(a)〜(b)に示すように、光の透過と拡散において入射角度依存性を発揮することが可能となる。
また、図2(a)〜(b)に示すように、第1の構造領域は、入射光の入射角が光拡散入射角度領域に含まれる場合には、その入射角が異なる場合であっても、出光面側においてほぼ同様の光拡散をさせることができる。
したがって、第1の構造領域は、光を所定箇所に集中させる集光作用も有すると言うことができる。かかる集光作用は、後述する第2の構造領域、および本発明の光拡散フィルムにおいても同様に有する作用である。
【0030】
ここで、図3(a)を用いて、第1の構造領域に対する入射光の入射角と、第1の構造領域によって拡散された拡散光の開き角度との関係を説明する。
すなわち、図3(a)には、横軸に第1の構造領域に対する入射光の入射角(°)を採り、縦軸に第1の構造領域によって拡散された拡散光の開き角度(°)を採ってなる特性曲線が示してある。
また、図4(a)〜(c)に示すように、入射角θ1とは、第1の構造領域10に対して垂直に入射する角度を0°とした場合の角度(°)を意味する。
より具体的には、上述したように、異方性光拡散に寄与する入射光の成分は、主にフィルム面方向に延びるルーバー構造の向きに垂直な成分であることから、本発明において入射光の「入射角θ1」と言った場合、フィルム面方向に延びるルーバー構造の向きに垂直な成分の入射角を意味するものとする。また、このとき、入射角θ1は、光拡散フィルムの入射側表面の法線に対する角度を0°とした場合の角度(°)を意味するものとする。
また、拡散光の開き角度θ2とは、文字通り拡散光の開き角度(°)を意味する。
そして、拡散光の開き角度が大きい程、そのときの入射角にて入射した光が第1の構造領域によって有効に拡散したことを意味する。
逆に、拡散光の開き角度が小さい程、そのときの入射角にて入射した光が第1の構造領域をそのまま透過し、拡散しなかったことを意味する。
なお、かかる拡散光の開き角度の具体的な測定方法については、実施例において記載する。
【0031】
すなわち、図3(a)に示す特性曲線から理解されるように、第1の構造領域であれば、入射角の違いによって、光の透過と拡散の度合いが大きく異なり、光拡散入射角度領域と、それ以外の入射角度領域とを、明確に分離することができる。
一方、入射角度依存性を有さないフィルムの場合、図3(b)に示すように、入射角の変化が光の透過と拡散の度合いに対して明確な影響を与えることがなく、光拡散入射角度領域を認定することができない。
【0032】
(2)カラム構造による光拡散
また、図5(a)には、カラム構造領域のみを有し、入射光を等方性拡散させるための第2の構造領域20の上面図(平面図)が示してあり、図5(b)には、図5(a)に示す第2の構造領域20を、点線A−Aに沿って垂直方向に切断して、切断面を矢印方向から眺めた場合の第2の構造領域20の断面図が示してある。
なお、本発明において、等方性とは、図6(a)〜(b)に示すように、光がフィルムによって拡散された場合に、拡散された出射光におけるフィルムと平行な面内での、その光の拡散具合(拡散光の広がりの形状)が、同面内での方向によって変化しない性質を有することを意味する。
より具体的には、第2の構造領域20の場合、拡散された出射光の拡散具合は、フィルムと平行な面内において円状になる。
【0033】
ここで、図5(a)の平面図に示すように、第2の構造領域20は、屈折率が比較的高い柱状物22と、屈折率が比較的低い媒体物24とからなるカラム構造(22、24)を有している。
また、図5(b)の断面図に示すように、第2の構造領域20の垂直方向においては、屈折率が比較的高い柱状物22と、屈折率が比較的低い媒体物24は、それぞれ所定の幅を有して交互に配置された状態となっている。
これにより、図6(a)〜(b)に示すように、入射角が光拡散入射角度領域内である場合には、入射光が第2の構造領域20によって拡散されることになると推定される。
すなわち、図5(b)に示すように、第2の構造領域20に対する入射光の入射角が、カラム構造23の境界面23´に対し、平行から所定の角度範囲内の値、すなわち、光拡散入射角度領域内の値である場合には、入射光(62、64)は、カラム構造内の高屈折率の柱状物22内を、方向を変化させながら膜厚方向に沿って通り抜けることにより、出光面側での光の進行方向が一様でなくなるものと推定される。
その結果、入射角が光拡散入射角度領域内である場合には、入射光が第2の構造領域20によって拡散されると推定される(62´、64´)。
【0034】
また、カラム構造内の高屈折率の柱状物22内における入射光の方向変化は、図5(b)に示すような全反射により直線状にジグザグに方向変化するステップインデックス型となる場合のほか、曲線状に方向変化するグラディエントインデックス型となる場合も考えられる。
一方、第2の構造領域20に対する入射光の入射角が、光拡散入射角度領域から外れる場合には、入射光66は、第2の構造領域20によって拡散されることなく、そのまま第2の構造領域20を透過するものと推定される(66´)。
【0035】
以上の機構により、カラム構造23を備えた第2の構造領域20は、例えば、図6(a)〜(b)に示すように、光の透過と拡散において入射角度依存性を発揮することが可能となる。
なお、第2の構造領域に対する入射光の入射角と、第2の構造領域によって拡散された拡散光の開き角度との関係は、上述した第1の構造領域における場合と同様であるため、再度の説明を省略する。
【0036】
2.基本的構成
次いで、図面を用いて、本発明の光拡散フィルムの基本的構成について説明する。
図7(a)〜(b)に示すように、本発明の光拡散フィルム30は、入射光を異方性拡散させるためのルーバー構造領域(第1の構造領域)10と、入射光を等方性拡散させるためのカラム構造領域(第2の構造領域)20とを有することを特徴としており、好ましくは、これらの構造領域を、膜厚方向に沿って順次に上下方向に含む構成である。
したがって、本発明の光拡散フィルムであれば、例えば、図7(a)に示すように、第1および第2の構造領域が有する入射角度依存性を重複させることで、拡散特性のばらつきを抑制し、良好な入射角度依存性を得ることができるばかりか、拡散光の開き角度についても、効果的に広げることができる。
また、本発明の光拡散フィルムであれば、例えば、図7(b)に示すように、第1および第2の構造領域が有する入射角度依存性をずらすことで、光拡散入射角度領域を効果的かつ容易に広げることができる。
【0037】
3.第1の構造領域
本発明の光拡散フィルムは、入射光を異方性拡散させるための第1の構造領域として、屈折率が異なる複数の板状領域、すなわち、屈折率が相対的に高い板状領域(高屈折率部)および屈折率が相対的に低い板状領域(低屈折率部)が、フィルム面方向に沿って交互に平行配置してなるルーバー構造領域を有することを特徴とする。
以下、第1の構造領域について具体的に説明する。
【0038】
(1)屈折率
また、第1の構造領域において、屈折率が異なる板状領域間の屈折率の差、すなわち、高屈折率部の屈折率と、低屈折率部の屈折率との差を0.01以上の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる屈折率の差を0.01以上の値とすることにより、第1の構造領域としてのルーバー構造領域内において入射光を安定的に反射させて、第1の構造領域に由来した入射角度依存性および拡散光の開き角度をより向上させることができるためである。
より具体的には、かかる屈折率の差が0.01未満の値となると、入射光がルーバー構造内で全反射する角度域が狭くなることから、入射角度依存性が過度に低下したり、拡散光の開き角度が過度に狭くなったりする場合があるためである。
したがって、第1の構造領域における屈折率が異なる板状領域間の屈折率の差を0.05以上の値とすることがより好ましく、0.1以上の値であることがさらに好ましい。
なお、高屈折率部の屈折率と、低屈折率部の屈折率との差は大きい程好ましいが、ルーバー構造を形成可能な材料を選定する観点から、0.3程度が上限であると考えられる。
【0039】
また、第1の構造領域において、屈折率が相対的に高い板状領域(高屈折率部)の屈折率を1.5〜1.7の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、高屈折率部の屈折率が1.5未満の値となると、低屈折率部との差が小さくなり過ぎて、所望のルーバー構造を得ることが困難になる場合があるためである。
一方、高屈折率部の屈折率が1.7を超えた値となると、光拡散フィルム用組成物における材料物質間の相溶性が過度に低くなる場合があるためである。
したがって、第1の構造領域における高屈折率部の屈折率を1.52〜1.65の範囲内の値とすることがより好ましく、1.55〜1.6の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、高屈折率部の屈折率は、JIS K0062に準じて測定することができる。
【0040】
また、第1の構造領域において、屈折率が相対的に低い板状領域(低屈折率部)の屈折率を1.4〜1.5の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる低屈折率部の屈折率が1.4未満の値となると、得られる光拡散フィルムの剛性を低下させる場合があるためである。
一方、かかる低屈折率部の屈折率が1.5を超えた値となると、高屈折率部の屈折率との差が小さくなり過ぎて、所望のルーバー構造を得ることが困難になる場合があるためである。
したがって、第1の構造領域における低屈折率部の屈折率を1.42〜1.48の範囲内の値とすることがより好ましく、1.44〜1.46の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、低屈折率部における屈折率は、例えば、JIS K0062に準じて測定することができる。
【0041】
(2)幅
また、図8(a)〜(b)に示すように、第1の構造領域において、屈折率が異なる高屈折率部12および低屈折率部14の幅(S1、S2)を、それぞれ0.1〜15μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、これらの板状領域の幅を0.1〜15μmの範囲内の値とすることにより、第1の構造領域としてのルーバー構造領域内において入射光をより安定的に反射させて、第1の構造領域に由来した入射角度依存性および拡散光の開き角度をさらに向上させることができるためである。
すなわち、かかる板状領域の幅が0.1μm未満の値となると、入射光の入射角度にかかわらず、光拡散性を示すことが困難になる場合があるためである。一方、かかる幅が15μmを超えた値となると、ルーバー構造内を直進する光が増加し、光拡散の均一性が悪化する場合があるためである。
したがって、第1の構造領域において、屈折率が異なる板状領域の幅を、それぞれ0.5〜10μmの範囲内の値とすることがより好ましく、1〜5μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、ルーバーを構成する板状領域の幅や長さ等は、光学デジタル顕微鏡にて観察することにより算出することができる。
【0042】
(3)長さ
また、図8(a)〜(b)に示すように、第1の構造領域において、屈折率が異なる高屈折率部12および低屈折率部14の長さL1を、それぞれ5〜495μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる長さが5μm未満の値となると、ルーバー構造の長さが不足して、ルーバー構造内を直進してしまう入射光が増加し、十分な入射角度依存性および拡散光の開き角度を得ることが困難になる場合があるためである。
一方、かかる長さが495μmを超えた値となると、光拡散フィルム用組成物に対して活性エネルギー線を照射してルーバー構造を形成する際に、初期に形成されたルーバー構造によって光重合の進行方向が拡散してしまい、所望のルーバー構造を形成することが困難になる場合があるためである。
したがって、第1の構造領域において、かかる屈折率が異なる板状領域の長さを、それぞれ40〜310μmの範囲内の値とすることがより好ましく、95〜255μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、図8(b)に示すように、ルーバー構造は、第1の構造領域において膜厚方向における上下端部分にまでは形成されていなくてもよい。
この場合、ルーバー構造が形成されない上下端部分の幅L2は、第1の構造領域の厚さにもよるが、一般に、0〜100μmの範囲内の値であることが好ましく、0〜50μmの範囲内の値であることがより好ましく、0〜5μmの範囲内の値であることがさらに好ましい。
【0043】
(4)傾斜角
また、図8(a)〜(b)に示すように、第1の構造領域において、屈折率が異なる高屈折率部12および低屈折率部14が、膜厚方向に対して一定の傾斜角θaにて延在してなることが好ましい。
この理由は、板状領域の傾斜角を一定とすることにより、第1の構造領域としてのルーバー構造領域内において入射光をより安定的に反射させて、第1の構造領域に由来した入射角度依存性および拡散光の開き角度をさらに向上させることができるためである。
また、図8(c)に示すように、ルーバー構造が屈曲していることも好ましい。
この理由は、ルーバー構造が屈曲していることにより、ルーバー構造内を直進してしまう入射光を減少させて、光拡散の均一性を向上させることができるためである。
【0044】
なお、このような屈曲したルーバー構造は、第2の実施形態において記載する第1の活性エネルギー線照射を行う際に、照射光の照射角度を変化させながら光を照射することによって得ることができるが、ルーバー構造を形成する材料物質の種類にも大きく依存する。
また、θaはフィルム面方向に沿って延びるルーバー構造に対して垂直な面でフィルムを切断した場合の断面において測定されるフィルム表面の法線に対する角度を0°とした場合の板状領域の傾斜角(°)を意味する。
より具体的には、図8に示す通り、入射光照射側のフィルム面の法線と板状領域との為す角度のうち狭い側の角度を意味する。なお、図8(a)に示すとおりルーバーが右側に傾いているときの傾斜角を基準とし、ルーバーが左側に傾いているときの傾斜角をマイナスで表記する。
【0045】
(5)厚さ
また、第1の構造領域の厚さを5〜495μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、第1の構造領域の厚さをかかる範囲内の値とすることにより、膜厚方向に沿ったルーバー構造の長さを安定的に確保して、第1の構造領域としてのルーバー構造領域内において入射光をより安定的に反射させて、第1の構造領域に由来した入射角度依存性および拡散光の開き角度をさらに向上させることができるためである。
すなわち、かかる第1の構造領域の厚さが5μm未満の値となると、ルーバー構造の長さが不足して、ルーバー構造内を直進してしまう入射光が増加し、十分な入射角度依存性および拡散光の開き角度を得ることが困難になる場合があるためである。
一方、かかる第1の構造領域の厚さが495μmを超えた値となると、光拡散フィルム用組成物に対して活性エネルギー線を照射してルーバー構造を形成する際に、初期に形成されたルーバー構造によって光重合の進行方向が拡散してしまい、所望のルーバー構造を形成することが困難になる場合があるためである。
したがって、第1の構造領域の厚さを40〜310μmの範囲内の値とすることがより好ましく、95〜255μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0046】
(6)材料物質
(6)−1 高屈折率部
また、第1の構造領域において、屈折率が異なる板状領域のうち、屈折率が相対的に高い板状領域である高屈折率部を構成するための材料物質の種類は、特に限定されないが、その主成分を複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルの重合体とすることが好ましい。
この理由は、かかる材料物質であれば、第1の構造領域としてのルーバー構造を効率的に形成することができるばかりか、第1の構造領域に由来した入射角度依存性および拡散光の開き角度をさらに向上させることができるためである。
すなわち、高屈折率部の主成分(以下、(A1)成分と称する場合がある。)を特定の(メタ)アクリル酸エステルの重合体とすることにより、第1の構造領域を形成する際に、重合により(A1)成分となるモノマー成分(以下、モノマー(A1)成分と称する場合がある。)の重合速度を、重合により後述する屈折率が低い低屈折率部の主成分(以下、(B1)成分と称する場合がある。)となるモノマー成分(以下、モノマー(B1)成分と称する場合がある。)の重合速度よりも速くすることができると推定される。
そして、これらのモノマー成分間における重合速度に所定差を生じさせ、両モノマー成分同士が均一に共重合することを抑制し、より具体的には、両モノマー成分の相溶性を所定の範囲にまで低下させて、両モノマー成分同士の共重合性を効果的に低下させることができると推定される。
その結果、(A1)成分および(B1)成分がフィルム面内方向に沿って交互に延在したルーバー構造を、活性エネルギー線の照射により効率的に形成することができる。
また、モノマー(A1)成分として、特定の(メタ)アクリル酸エステルを用いることにより、モノマー(B1)成分との相溶性を所定の範囲にまで低下させて、ルーバー構造をさらに効率よく形成することができる。
さらに、(A1)成分として、特定の(メタ)アクリル酸エステルの重合体を含むことにより、ルーバー構造における(A1)成分に由来した板状領域の屈折率を高くして、(B1)成分に由来した板状領域の屈折率との差を、所定以上の値に調節することができる。
したがって、(A1)成分として、特定の(メタ)アクリル酸エステルの重合体を含むことにより、後述する(B1)成分の特性と相まって、屈折率が異なる硬化物がフィルム面内方向に沿って交互に延在したルーバー構造を効率的に得ることができる。
よって、光の透過と拡散において良好な入射角度依存性を有するとともに、光拡散入射角度領域が広い第1の構造領域を得ることができる。
なお、「複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステル」とは、(メタ)アクリル酸エステルのエステル部分に複数の芳香環を有する化合物を意味する。
また、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸とメタクリル酸の両方を意味する。
【0047】
また、このような(A1)成分を構成するモノマー(A1)成分としての複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ビフェニル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸アントラシル、(メタ)アクリル酸ベンジルフェニル、(メタ)アクリル酸ビフェニルオキシアルキル、(メタ)アクリル酸ナフチルオキシアルキル、(メタ)アクリル酸アントラシルオキシアルキル、(メタ)アクリル酸ベンジルフェニルオキシアルキル等、若しくは、これらの一部がハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロゲン化アルキル等によって置換されたもの等を挙げることができる。
【0048】
また、(A1)成分を構成するモノマー(A1)成分としての複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルとして、ビフェニル環を含有する化合物を含むことが好ましく、特に、下記一般式(1)で表わされるビフェニル化合物を含むことが好ましい。
【0049】
【化2】
【0050】
(一般式(1)中、R1〜R10は、それぞれ独立しており、R1〜R10の少なくとも1つは、下記一般式(2)で表わされる置換基であり、残りは、水素原子、水酸基、カルボキシル基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基およびハロゲン原子のいずれかの置換基である。)
【0051】
【化3】
【0052】
(一般式(2)中、R11は、水素原子またはメチル基であり、炭素数nは1〜4の整数であり、繰り返し数mは1〜10の整数である。)
【0053】
この理由は、(A1)成分を構成するモノマー(A1)成分として、特定の構造を有するビフェニル化合物を用いることにより、モノマー(A1)成分の重合速度を、モノマー(B1)成分の重合速度よりも、さらに速くすることができると推定されるためである。
また、モノマー(B1)成分との相溶性を所定の範囲にまで、より容易に低下させることができると推定され、かつ、ルーバー構造における(A1)成分に由来した板状領域の屈折率を高くして、(B1)成分に由来した板状領域の屈折率との差を、所定以上の値に、より容易に調節することができる。
さらに、光硬化させる前のモノマー段階で液状であり、希釈溶媒等を使用しなくとも、モノマー(B1)成分の代表例であるウレタン(メタ)アクリレートと均一に混合することができる。
【0054】
また、一般式(1)におけるR1〜R10が、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基、およびカルボキシアルキル基のいずれかを含む場合には、そのアルキル部分の炭素数を1〜4の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる炭素数が4を超えた値となると、モノマー(A1)成分の重合速度が低下したり、ルーバー構造における(A1)成分に由来した板状領域の屈折率が低くなり過ぎたりして、第1の構造領域における所定のルーバー構造を効率的に形成することが困難になる場合があるためである。
したがって、一般式(1)におけるR1〜R10が、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基、およびカルボキシアルキル基のいずれかを含む場合には、そのアルキル部分の炭素数を1〜3の範囲内の値とすることがより好ましく、1〜2の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0055】
また、一般式(1)におけるR1〜R10が、ハロゲン化アルキル基またはハロゲン原子以外の置換基、すなわち、ハロゲンを含まない置換基であることが好ましい。
この理由は、光拡散フィルムを焼却等する際に、ダイオキシンが発生することを防止して、環境保護の観点から好ましいためである。
なお、従来のルーバー構造を備えた異方性光拡散フィルムにおいては、所定のルーバー構造を得るにあたり、モノマー成分を高屈折率化する目的で、モノマー成分においてハロゲン置換が行われることが一般的であった。
この点、一般式(1)で表わされるビフェニル化合物であれば、ハロゲン置換を行わない場合であっても、高い屈折率とすることができる。
したがって、モノマー(A1)成分として一般式(1)で表わされるビフェニル化合物を用いることで、ハロゲンを含まない場合であっても、良好な入射角度依存性を発揮することができる。
【0056】
また、一般式(1)におけるR2〜R9のいずれか一つが、一般式(2)で表わされる置換基であることが好ましい。
この理由は、一般式(2)で表わされる置換基の位置を、ビフェニル環におけるR1およびR10以外の位置とすることにより、光硬化させる前の段階において、モノマー(A1)成分同士が配向し、結晶化することを効果的に防止することができる。
これにより、光硬化の段階において、モノマー(A1)成分およびモノマー(B1)成分の微細なレベルでの凝集・相分離を可能とし、所定のルーバー構造を備えた第1の構造領域を、より効率的に得ることができるためである。
さらに、同様の観点から、一般式(1)におけるR3、R5、R6およびR8のいずれか一つが、一般式(2)で表わされる置換基であることが特に好ましい。
【0057】
また、一般式(2)で表わされる置換基における繰り返し数mを、通常1〜10の整数とすることが好ましい。
この理由は、繰り返し数mが10を超えた値となると、重合部位と、ビフェニル環とをつなぐオキシアルキレン鎖が長くなり過ぎて、重合部位におけるモノマー(A1)成分同士の重合を阻害する場合があるためである。
したがって、一般式(2)で表わされる置換基における繰り返し数mを、1〜4の整数とすることがより好ましく、1〜2の整数とすることが特に好ましい。
なお、同様の観点から、一般式(2)で表わされる置換基における炭素数nを、通常1〜4の整数とすることが好ましい。
特に、重合部位である重合性炭素−炭素二重結合の位置が、ビフェニル環に対して近過ぎてビフェニル環が立体障害となり、モノマー(A1)成分の重合速度が低下するのを防止する観点から、一般式(2)で表わされる置換基における炭素数nを、2〜4の整数とすることがより好ましく、2〜3の整数とすることがさらに好ましい。
【0058】
また、一般式(1)で表わされるビフェニル化合物の具体例としては、下記式(3)〜(4)で表わされる化合物を挙げることができる。
【0059】
【化4】
【0060】
【化5】
【0061】
また、(A1)成分を構成するモノマー(A1)成分の重量平均分子量を、200〜2,500の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、モノマー(A1)成分の重量平均分子量を所定の範囲とすることにより、モノマー(A1)成分の重合速度をさらに速くして、モノマー(A1)成分およびモノマー(B1)成分の共重合性をより効果的に低下させることができると推定されるためである。
その結果、光硬化させた際に、(A1)成分および(B1)成分がフィルム面方向に沿って交互に延在したルーバー構造を、より効率的に形成することができる。
すなわち、モノマー(A1)成分の重量平均分子量が200未満の値となると、例えば、複数の芳香環の位置と重合性炭素−炭素二重結合の位置が近くなり過ぎて、立体障害により重合速度が低下して、モノマー(B1)成分の重合速度に近くなり、モノマー(B1)成分との共重合が生じ易くなる場合があるためである。一方、モノマー(A1)成分の重量平均分子量が2,500を超えた値となると、モノマー(A1)成分の重合速度が低下してモノマー(B1)成分の重合速度に近くなり、モノマー(B1)成分との共重合が生じ易くなる結果、ルーバー構造を効率よく形成することが困難になる場合があるためである。
したがって、モノマー(A1)成分の重量平均分子量を、240〜1,500の範囲内の値とすることがより好ましく、260〜1,000の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、モノマー(A1)成分の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することもできるし、あるいは、構成原子の原子量をもとに、構造式から算出することもできる。
【0062】
また、ルーバー構造における屈折率の高い板状領域を形成するモノマー(A1)成分を単一とすることが好ましい。
この理由は、このように構成することにより、ルーバー構造における(A1)成分に由来した板状領域、つまり屈折率の高い板状領域における屈折率のばらつきを効果的に抑制して、所定のルーバー構造を備えた第1の構造領域を、より効率的に得ることができるためである。
すなわち、モノマー(A1)成分が、モノマー(B1)成分に対する相溶性が低い場合、例えば、モノマー(A1)成分がハロゲン系化合物等の場合、モノマー(A1)成分をモノマー(B1)成分に相溶させるための第3成分として、他のモノマー(A1)成分(例えば、非ハロゲン系化合物等)を併用する場合がある。
しかしながら、この場合、かかる第3成分の影響により、(A1)成分に由来した屈折率の高い板状領域における屈折率がばらついたり、低下する場合がある。
その結果、(B1)成分に由来した屈折率の低い板状領域との屈折率差が不均一になったり、過度に低下し易くなったりする場合がある。
したがって、モノマー(B1)成分との相溶性を有する高屈折率なモノマー成分を選択し、それを単一のモノマー(A1)成分として用いることが好ましい。
なお、例えば、モノマー(A1)成分としての式(3)〜(4)で表わされるビフェニル化合物であれば、モノマー(B1)成分との相溶性を有するため、単一のモノマー(A1)成分として使用することができる。
【0063】
(6)−2 低屈折率部
また、第1の構造領域において、屈折率が異なる板状領域のうち、屈折率が低い板状領域である低屈折率部を構成するための材料物質の種類は、特に限定されないが、その主成分をウレタン(メタ)アクリレートの重合体とすることが好ましい。
この理由は、かかる材料物質であれば、第1の構造領域としてのルーバー構造を効率的に形成することができるばかりか、第1の構造領域に由来した入射角度依存性および拡散光の開き角度をさらに向上させることができるためである。
すなわち、低屈折率部の主成分((B1)成分)をウレタン(メタ)アクリレートの重合体とすることにより、(A1)成分に由来した板状領域の屈折率と、(B1)成分に由来した板状領域の屈折率との差を、より容易に調節できるばかりか、(B1)成分に由来した板状領域の屈折率のばらつきを有効に抑制し、所定のルーバー構造を備えた第1の構造領域をより効率的に得ることができるためである。
なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタクリレートの両方を意味する。
【0064】
まず、(B1)成分を構成するモノマー(B1)成分としてのウレタン(メタ)アクリレートは、(a)イソシアナート基を少なくとも2つ含有する化合物、(b)ポリアルキレングリコール、および(c)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートから形成される。
このうち、(a)成分であるイソシアナート基を少なくとも2つ含有する化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、1,3−キシリレンジイソシアナート、1,4−キシリレンジイソシアナート等の芳香族ポリイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート等の脂肪族ポリイソシアナート、イソホロンジイソシアナート(IPDI)、水素添加ジフェニルメタンジイソシアナート等の脂環式ポリイソシアナート、およびこれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体(例えば、キシリレンジイソシアナート系3官能アダクト体)等を挙げることができる。
【0065】
また、上述した中でも、脂環式ポリイソシアナートであることが好ましい。
この理由は、脂環式ポリイソシアナートであれば、立体配座等の関係により、脂肪族ポリイソシアナートと比較して、各イソシアナート基の反応速度に差を設けやすく、得られるウレタン(メタ)アクリレートの分子設計が容易になるためである。
また、特に、(a)成分が脂環式ジイソシアナートであることが好ましい。
この理由は、脂環式ジイソシアナートであれば、例えば、(a)成分が(b)成分とのみ反応したり、(a)成分が(c)成分とのみ反応したりすることを抑制して、(a)成分を、(b)成分および(c)成分と確実に反応させることができ、余分な副生成物の発生を防止することができるためである。
その結果、第1の構造領域における(B1)成分に由来した板状領域、すなわち、低屈折率の板状領域における屈折率のばらつきを効果的に抑制することができる。
【0066】
また、脂環式ジイソシアナートであれば、芳香族ジイソシアナートと比較して、得られるモノマー(B1)成分と、モノマー(A1)成分としての代表例である特定の構造を有するビフェニル化合物との相溶性を所定の範囲に低下させて、ルーバー構造をより効率よく形成することができる。
さらに、脂環式ジイソシアナートであれば、芳香族ジイソシアナートと比較して、得られるモノマー(B1)成分の屈折率を小さくすることができることから、モノマー(A1)成分の代表例である特定の構造を有するビフェニル化合物の屈折率との差を大きくし、入射角度依存性に優れたルーバー構造をさらに効率よく形成することができる。
また、このような脂環式ジイソシアナートの中でも、2つのイソシアナート基の反応性の差が大きいことから、イソホロンジイソシアナート(IPDI)であることが、特に好ましい。
【0067】
また、モノマー(B1)成分としてのウレタン(メタ)アクリレートを形成する成分のうち、(b)成分であるポリアルキレングリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリヘキシレングリコール等が挙げられ、中でも、ポリプロピレングリコールであることが、特に好ましい。
この理由は、ポリプロピレングリコールであれば、粘度が低いことから無溶剤で取り扱うことができるためである。
また、ポリプロピレングリコールであれば、モノマー(B1)成分を硬化させた際に、当該硬化物における良好なソフトセグメントとなり、光拡散フィルムのハンドリング性や実装性を、効果的に向上させることができるためである。
なお、モノマー(B1)成分の重量平均分子量は、(b)成分の重量平均分子量により調節することができる。ここで、(b)成分の重量平均分子量は、通常、2,300〜19,500であり、好ましくは4,300〜14,300であり、特に好ましくは6,300〜12,300である。
【0068】
また、モノマー(B1)成分としてのウレタン(メタ)アクリレートを形成する成分のうち、(c)成分であるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、得られるウレタン(メタ)アクリレートの重合速度を低下させ、所定のルーバー構造をより効率的に形成する観点から、特に、ヒドロキシアルキルメタクリレートであることがより好ましく、2−ヒドロキシエチルメタクリレートであることがさらに好ましい。
【0069】
また、(a)〜(c)成分によるウレタン(メタ)アクリレートの合成は、常法に従って実施することができる。
このとき(a)〜(c)成分の配合割合を、モル比にて(a)成分:(b)成分:(c)成分=1〜5:1:1〜5の割合とすることが好ましい。
この理由は、かかる配合割合とすることにより、(b)成分の有する2つの水酸基に対してそれぞれ(a)成分の有する一方のイソシアナート基が反応して結合し、さらに、2つの(a)成分がそれぞれ有するもう一方のイソシアナート基に対して、(c)成分の有する水酸基が反応して結合したウレタン(メタ)アクリレートを効率的に合成することができるためである。
したがって、(a)〜(c)成分の配合割合を、モル比にて(a)成分:(b)成分:(c)成分=1〜3:1:1〜3の割合とすることがより好ましく、2:1:2の割合とすることがさらに好ましい。
【0070】
また、(B1)成分を構成するモノマー(B1)成分の重量平均分子量を、3,000〜20,000の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、モノマー(B1)成分の重量平均分子量を所定の範囲とすることにより、モノマー(A1)成分およびモノマー(B1)成分の重合速度に所定の差を生じさせ、両成分の共重合性を効果的に低下させることができるものと推定されるためである。
その結果、光硬化させた際に、(A1)成分および(B1)成分が交互に延在したルーバー構造を効率よく形成することができる。
すなわち、モノマー(B1)成分の重量平均分子量が3,000未満の値となると、モノマー(B1)成分の重合速度が速くなって、モノマー(A1)成分の重合速度に近くなり、モノマー(A1)成分との共重合が生じ易くなる結果、ルーバー構造を効率よく形成することが困難になる場合があるためである。一方、モノマー(B1)成分の重量平均分子量が20,000を超えた値となると、(A1)成分および(B1)成分がフィルム面方向に交互に延在したルーバー構造を形成することが困難になったり、モノマー(A1)成分との相溶性が過度に低下して、光拡散フィルム用組成物の塗布段階でモノマー(A1)成分が析出する場合があるためである。
したがって、モノマー(B1)成分の重量平均分子量を、5,000〜15,000の範囲内の値とすることがより好ましく、7,000〜13,000の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、モノマー(B1)成分の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することもできるし、あるいは、構成原子の原子量をもとに、構造式から算出することもできる。
【0071】
また、モノマー(B1)成分は、分子構造や重量平均分子量が異なる2種以上を併用してもよいが、ルーバー構造における(B1)成分に由来した板状領域の屈折率のばらつきを抑制する観点からは、1種類のみを用いることが好ましい。
すなわち、モノマー(B1)成分を複数用いた場合、(B1)成分に由来した屈折率の低い板状領域における屈折率がばらついたり、高くなったりして、(A1)成分に由来した屈折率の高い板状領域との屈折率差が不均一になったり、過度に低下する場合があるためである。
【0072】
4.第2の構造領域
本発明の光拡散フィルムは、入射光を等方性拡散させるための第2の構造領域として、媒体物中に当該媒体物とは屈折率が異なる複数の柱状物が林立してなるカラム構造領域を有することを特徴とする。
以下、第2の構造領域について、具体的に説明する。
【0073】
(1)屈折率
また、第2の構造領域において、柱状物の屈折率と、媒体物の屈折率との差を0.01以上の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる屈折率の差を0.01以上の値とすることにより、第2の構造領域としてのカラム構造領域内において入射光を安定的に反射させて、第2の構造領域に由来した入射角度依存性および拡散光の開き角度をより向上させることができるためである。
すなわち、かかる屈折率の差が0.01未満の値となると、入射光がカラム構造内で全反射する角度域が狭くなることから、入射角度依存性が過度に低下したり、拡散光の開き角度が過度に狭くなったりする場合があるためである。
したがって、第2の構造領域における柱状物の屈折率と、媒体物の屈折率との差を0.05以上の値とすることがより好ましく、0.1以上の値とすることがさらに好ましい。
なお、屈折率の差は大きい程好ましいが、カラム構造を形成可能な材料を選定する観点から、0.3程度が上限であると考えられる。
【0074】
(2)最大径
また、図9(a)に示すように、第2の構造領域において、柱状物の断面における最大径S3を0.1〜15μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる最大径を0.1〜15μmの範囲内の値とすることにより、第2の構造領域としてのカラム構造領域内において入射光をより安定的に反射させて、第2の構造領域に由来した入射角度依存性および拡散光の開き角度をさらに向上させることができるためである。
すなわち、かかる最大径が0.1μm未満の値となると、入射光の入射角度にかかわらず、光拡散性を示すことが困難になる場合があるためである。一方、かかる最大径が15μmを超えた値となると、カラム構造内を直進する光が増加し、光拡散の均一性が悪化する場合があるためである。
したがって、第2の構造領域において、柱状物の断面における最大径を0.5〜10μmの範囲内の値とすることがより好ましく、1〜5μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、柱状物の断面形状については、特に限定されるものではないが、例えば、円、楕円、多角形、異形等とすることが好ましい。
また、柱状物の断面とは、フィルム表面と平行な面によって切断された断面を意味する。
なお、柱状物の最大径や長さ等は、光学デジタル顕微鏡にて観察することにより算出することができる。
【0075】
(3)長さ
また、第2の構造領域において、柱状物の長さL3を5〜495μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる長さが5μm未満の値となると、柱状物の長さが不足して、カラム構造内を直進してしまう入射光が増加し、十分な入射角度依存性および拡散光の開き角度を得ることが困難になる場合があるためである。
一方、かかる長さが495μmを超えた値となると、光拡散フィルム用組成物に対して活性エネルギー線を照射してカラム構造を形成する際に、初期に形成されたカラム構造によって光重合の進行方向が拡散してしまい、所望のカラム構造を形成することが困難になる場合があるためである。
したがって、第2の構造領域において、柱状物の長さを40〜310μmの範囲内の値とすることがより好ましく、95〜255μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、図9(c)に示すように、カラム構造は、第2の構造領域において膜厚方向における上下端部分にまで形成されていなくてもよい。
この場合、カラム構造が形成されない上下端部分の幅L4は、第2の構造領域の厚さにもよるが、一般に、0〜50μmの範囲内の値であることが好ましく、0〜5μmの範囲内の値であることがさらに好ましい。
【0076】
(4)柱状物間の距離
また、図9(a)に示すように、第2の構造領域において、柱状物間における距離、すなわち、隣接する柱状物におけるスペースPを0.1〜15μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる距離を0.1〜15μmの範囲内の値とすることにより、第2の構造領域としてのカラム構造領域内において入射光をより安定的に反射させて、第2の構造領域に由来した入射角度依存性および拡散光の開き角度をさらに向上させることができるためである。
すなわち、かかる距離が0.1μm未満の値となると、入射光の入射角度にかかわらず、光拡散性を示すことが困難になる場合があるためである。一方、かかる距離が15μmを超えた値となると、カラム構造内を直進する光が増加し、光拡散の均一性が悪化する場合があるためである。
したがって、第2の構造領域において、柱状物間における距離を0.5〜10μmの範囲内の値とすることがより好ましく、1〜5μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0077】
(5)傾斜角
また、図9(b)〜(c)に示すように、第2の構造領域において、柱状物22が膜厚方向に対して一定の傾斜角θbにて林立してなることが好ましい。
この理由は、柱状物の傾斜角を一定とすることにより、第2の構造領域としてのカラム構造領域内において入射光をより安定的に反射させて、第2の構造領域に由来した入射角度依存性および拡散光の開き角度をさらに向上させることができるためである。
また、図9(d)に示すように、柱状物が屈曲していることも好ましい。
この理由は、柱状物が屈曲していることにより、カラム構造内を直進してしまう入射光を減少させて、光拡散の均一性を向上させることができるためである。
なお、このような屈曲した柱状物は、第2の実施形態において記載する第2の活性エネルギー線照射を行う際に、照射光の照射角度を変化させながら光を照射することによって得ることができるが、カラム構造を形成する材料物質の種類にも大きく依存する。
また、θbはフィルム面に垂直な面であって、1本の柱状物全体を軸線に沿って2つに切断する面によってフィルムを切断した場合の断面において測定されるフィルム表面の法線に対する角度を0°とした場合の柱状物の傾斜角(°)(該法線と柱状物の為す角度のうち狭い側の角度)を意味する。なお、図9(b)に示すとおりカラムが右側に傾いているときの傾斜角を基準とし、カラムが左側に傾いているときの傾斜角をマイナスで表記する。
【0078】
(6)厚さ
また、第2の構造領域の厚さを5〜495μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、第2の構造領域の厚さをかかる範囲内の値とすることにより、膜厚方向に沿った柱状物の長さを安定的に確保して、第2の構造領域としてのカラム構造領域内において入射光をより安定的に反射させて、第2の構造領域に由来した入射角度依存性および拡散光の開き角度をさらに向上させることができるためである。
すなわち、かかる厚さが5μm未満の値となると、柱状物の長さが不足して、カラム構造内を直進してしまう入射光が増加し、十分な入射角度依存性および拡散光の開き角度を得ることが困難になる場合があるためである。一方、かかる厚さが495μmを超えた値となると、光拡散フィルム用組成物に対して活性エネルギー線を照射してカラム構造を形成する際に、初期に形成されたカラム構造によって光重合の進行方向が拡散してしまい、所望のカラム構造を形成することが困難になる場合があるためである。
したがって、第2の構造領域の厚さを40〜310μmの範囲内の値とすることがより好ましく、95〜255μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0079】
(7)材料物質
(7)−1 柱状物
また、第2の構造領域において、柱状物を構成する材料物質の種類は、特に限定されないが、その主成分を複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルの重合体とすることが好ましい。
この理由は、かかる材料物質であれば、第2の構造領域としてのカラム構造を効率的に形成することができるばかりか、第2の構造領域に由来した入射角度依存性および拡散光の開き角度をさらに向上させることができるためである。
すなわち、柱状物の主成分(以下、(A2)成分と称する場合がある。)を特定の(メタ)アクリル酸エステルの重合体とすることにより、第2の構造領域を形成する際に、重合により(A2)成分となるモノマー成分(以下、モノマー(A2)成分と称する場合がある。)の重合速度を、重合により後述する媒体物の主成分(以下、(B2)成分と称する場合がある。)となるモノマー成分(以下、モノマー(B2)成分と称する場合がある。)の重合速度よりも速くして、これらのモノマー成分間における重合速度に所定差を生じさせ、両モノマー成分の共重合性を効果的に低下させることができると推定される。
その結果、(B2)成分からなる媒体物中に(A2)成分からなる柱状物が林立したカラム構造を、活性エネルギー線の照射により効率的に形成することができる。
また、モノマー(A2)成分として、特定の(メタ)アクリル酸エステルを用いることにより、モノマー(B2)成分との相溶性を所定の範囲にまで低下させて、カラム構造をさらに効率よく形成することができるものと推定される。
さらに、モノマー(A2)成分として、特定の(メタ)アクリル酸エステルを用いることにより、カラム構造における(A2)成分に由来した柱状物の屈折率を高くして、(B2)成分に由来した媒体物の屈折率との差を、所定以上の値に調節することができる。
したがって、(A2)成分として、特定の(メタ)アクリル酸エステルの重合体を含むことにより、後述する(B2)成分の特性と相まって、(B2)成分からなる媒体物中に(A2)成分からなる柱状物が林立したカラム構造を効率的に得ることができる。
よって、光の透過と拡散において良好な入射角度依存性を有するとともに、光拡散入射角度領域が広い第2の構造領域を得ることができる。
なお、(A2)成分を構成するモノマー(A2)成分としての複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルの詳細については、第1の構造領域におけるモノマー(A1)成分の内容と重複するため、省略する。
【0080】
(7)−2 媒体物
また、第2の構造領域において、媒体物を構成する材料物質の種類は、特に限定されないが、その主成分をウレタン(メタ)アクリレートの重合体とすることが好ましい。
この理由は、かかる材料物質であれば、第2の構造領域としてのカラム構造を効率的に形成することができるばかりか、第2の構造領域に由来した入射角度依存性および拡散光の開き角度をさらに向上させることができるためである。
すなわち、媒体物の主成分((B2)成分)をウレタン(メタ)アクリレートの重合体とすることにより、(A2)成分に由来した柱状物の屈折率と、(B2)成分に由来した媒体物の屈折率との差を、より容易に調節できるばかりか、(B2)成分に由来した媒体物の屈折率のばらつきを有効に抑制し、所定のカラム構造を備えた第2の構造領域をより効率的に得ることができるためである。
なお、(B2)成分を構成するモノマー(B2)成分としてのウレタン(メタ)アクリレートの詳細については、第1の構造領域におけるモノマー(B1)成分の内容と重複するため、省略する。
【0081】
5.総膜厚
また、本発明の光拡散フィルムの総膜厚を50〜500μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、光拡散フィルムの総膜厚が50μm未満の値となると、カラム構造およびルーバー構造内を直進する光が増加し、光拡散性を示すことが困難になる場合があるためである。一方、光拡散フィルムの総膜厚が500μmを超えた値となると、光拡散フィルム用組成物に対して活性エネルギー線を照射してカラム構造およびルーバー構造を形成する際に、初期に形成されたカラム構造およびルーバー構造によって光重合の進行方向が拡散してしまい、所望のカラム構造およびルーバー構造を形成することが困難になる場合があるためである。
したがって、光拡散フィルムの総膜厚を80〜350μmの範囲内の値とすることがより好ましく、100〜260μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、本発明の光拡散フィルムは、単一のフィルム中に第1および第2の構造領域を有する構成であってもよいし、第1の構造領域のみを有するフィルムと、第2の構造領域のみを有するフィルムとを積層させた構成であってもよい。
特に、第1および第2の構造領域を積層する際に、その間に気泡混入等が生じることを根本的に抑制できることから、両構造が単一のフィルム内に形成されている構成がより好ましい。
また、第1の構造領域と、第2の構造領域は、光拡散フィルムの膜厚方向に沿って順次に、上下方向に設けてあれば良く、その順番や数については特に制限されるものではない。
【0082】
6.傾斜角度の組み合わせ
また、本発明の光拡散フィルムであれば、第1の構造領域における膜厚方向に対する板状領域の傾斜角度θaと、第2の構造領域における膜厚方向に対する柱状物の傾斜角度θbとを、それぞれ調節することにより、その光拡散特性を変化させることができる。
例えば、それぞれの構造領域が有する入射角度依存性を重複させることで、拡散特性のばらつきを抑制、良好な入射角度依存性を得ることができるばかりか、拡散光の開き角度についても、効果的に広げることができる。
この場合、第1の構造領域において、膜厚方向に対する板状領域の傾斜角度θaを−80〜80°の範囲内の値とするとともに、第2の構造領域において、膜厚方向に対する柱状物の傾斜角度θbを−80〜80°の範囲内の値とし、かつ、θa−θbの絶対値を0〜80°の範囲内の値とすることが好ましく、θa−θbの絶対値を5〜20°の範囲内の値とすることがより好ましい。
なお、ここでのθaおよびθbの内容は、既に説明した通りである。
【0083】
また、それぞれの構造領域が有する入射角度依存性をずらすことで、光拡散入射角度領域を効果的かつ容易に広げることができる。
この場合、第1の構造領域において、膜厚方向に対する板状領域の傾斜角度θaを−80〜80°の範囲内の値とするとともに、第2の構造領域において、膜厚方向に対する柱状物の傾斜角度θbを−80〜80°の範囲内の値とし、かつθa−θbの絶対値を5〜60°の範囲内の値とすることが好ましく、θa−θbの絶対値を20〜45°の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0084】
7.用途
また、図10に示すように、本発明の光拡散フィルムを、反射型液晶表示装置100に用いることが好ましい。
この理由は、本発明の光拡散フィルムであれば、外光を集光し効率的に透過させて液晶表示装置の内部に取り込み、かつ、その光を光源として利用できるように、効率的に拡散させることができるためである。
したがって、本発明の光拡散フィルムは、ガラス板(104、108)および液晶106、並びに、鏡面反射板107等からなる液晶セル110の上面、あるいは下面に配置して、反射型液晶表示装置100における光拡散板103として使用することが好ましい。
なお、本発明の光拡散フィルムは、偏光板101や位相差板102に提供することで、広視野角偏光板や広視野位相差板を得ることもできる。
【0085】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態は、入射光を異方性拡散させるための第1の構造領域と、入射光を等方性拡散させるための第2の構造領域とを有する光拡散フィルムの製造方法であって、下記工程(a)〜(d)を含むことを特徴とする光拡散フィルムの製造方法である。
(a)光拡散フィルム用組成物を準備する工程
(b)光拡散フィルム用組成物を工程シートに対して塗布し、塗布層を形成する工程
(c)塗布層に対して第1の活性エネルギー線照射を行い、塗布層の下方部分に第1の構造領域としての屈折率が異なる複数の板状領域をフィルム面方向に沿って交互に平行配置してなるルーバー構造領域を形成するとともに、塗布層の上方部分にルーバー構造未形成領域を残す工程
(d)塗布層に対して、さらに第2の活性エネルギー線照射を行い、ルーバー構造未形成領域に第2の構造領域としての媒体物中に当該媒体物とは屈折率が異なる複数の柱状物を林立させてなるカラム状構造領域を形成する工程
以下、本発明の第2の実施形態である光拡散フィルムの製造方法につき、第1の実施形態と異なる点を中心に、図面を参照しつつ、具体的に説明する。
【0086】
1.工程(a):光拡散フィルム用組成物の準備工程
工程(a)は、光拡散フィルム用組成物を準備する工程である。
より具体的には、モノマー(A)成分およびモノマー(B)成分を40〜80℃の高温条件下にて撹拌して、均一な混合液とすることが好ましい。
また、これと同時に、混合液に対し、所望により後述する(C)成分等その他の添加剤を添加した後、均一になるまで撹拌しつつ、所望の粘度となるように、必要に応じて希釈溶剤をさらに加えることにより、光拡散フィルム用組成物の溶液を得ることが好ましい。
なお、モノマー(A)成分は、重合することにより、第1および第2の構造領域における高屈折率部を構成する(A)成分になるモノマー成分であり、モノマー(B)成分は、重合することにより、第1および第2の構造領域における低屈折率部を構成する(B)成分になるモノマー成分である。
また、モノマー(A)成分およびモノマー(B)成分の種類についての詳細は、第1の実施形態においてモノマー(A1)および(A2)、並びに、(B1)および(B2)成分として、それぞれ記載した通りであるため、省略する。
【0087】
(1)モノマー(A)成分の屈折率
また、モノマー(A)成分の屈折率を1.5〜1.65の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、モノマー(A)成分の屈折率をかかる範囲内の値とすることにより、ルーバー構造およびカラム構造における(A)成分に由来した部分と、(B)成分に由来した部分の屈折率との差を、より容易に調節して、所定のルーバー構造およびカラム構造を備えた光拡散フィルムを、より効率的に得ることができるためである。
すなわち、モノマー(A)成分の屈折率が1.5未満の値となると、モノマー(B)成分の屈折率との差が小さくなり過ぎて、所望の入射角度依存性を得ることが困難になる場合があるためである。一方、モノマー(A)成分の屈折率が1.65を超えた値となると、モノマー(B)成分の屈折率との差は大きくなるものの、粘度が過度に低下して、モノマー(B)成分との相溶が困難になる場合があるためである。
したがって、(A)成分の屈折率を、1.55〜1.6の範囲内の値とすることがより好ましく、1.56〜1.59の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、上述したモノマー(A)成分の屈折率とは、光照射により硬化する前のモノマー(A)成分の屈折率を意味する。
そして、モノマー(A)成分の屈折率は、例えば、JIS K0062に準じて測定することができる。
【0088】
(2)モノマー(A)成分の含有量
また、モノマー(A)成分の含有量を、後述するモノマー(B)成分100重量部に対して、25〜400重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、モノマー(A)成分の含有量をかかる範囲内の値とすることにより、モノマー(B)成分との混合性を維持しつつも、光照射した場合には、両成分の共重合性を効果的に低下させ、所定のルーバー構造およびカラム構造を効率的に形成することができるためである。
すなわち、モノマー(A)成分の含有量が25重量部未満の値となると、モノマー(B)成分に対する(A)成分の存在割合が少なくなって、ルーバー構造およびカラム構造における(A)成分に由来した部分の幅等が、(B)成分に由来した部分の幅等と比較して過度に小さくなり、良好な入射角度依存性を有するルーバー構造およびカラム構造を得ることが困難になる場合があるためである。また、光拡散フィルムの厚さ方向におけるルーバーや柱状物の長さが不十分になる場合があるためである。一方、モノマー(A)成分の含有量が400重量部を超えた値となると、モノマー(B)成分に対するモノマー(A)成分の存在割合が多くなって、ルーバー構造およびカラム構造における(A)成分に由来した部分の幅等が、(B)成分に由来した部分の幅等と比較して過度に大きくなり、逆に、良好な入射角度依存性を有するルーバー構造およびカラム構造を得ることが困難になる場合があるためである。また、光拡散フィルムの厚さ方向におけるルーバーや柱状物の長さが不十分になる場合があるためである。
したがって、モノマー(A)成分の含有量を、モノマー(B)成分100重量部に対して、40〜300重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、50〜200重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0089】
(3)モノマー(B)成分の屈折率
また、モノマー(B)成分の屈折率を1.4〜1.5の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、モノマー(B)成分の屈折率をかかる範囲内の値とすることにより、ルーバー構造およびカラム構造における(A)成分に由来した部分と、(B)成分に由来した部分の屈折率との差を、より容易に調節して、所定のルーバー構造およびカラム構造を備えた光拡散フィルムを、より効率的に得ることができるためである。
すなわち、モノマー(B)成分の屈折率が1.4未満の値となると、モノマー(A)成分の屈折率との差は大きくなるものの、モノマー(A)成分との相溶性が極端に悪化し、ルーバー構造およびカラム構造を形成することが困難になる場合があるためである。一方、モノマー(B)成分の屈折率が1.5を超えた値となると、モノマー(A)成分の屈折率との差が小さくなり過ぎて、所望の入射角度依存性を得ることが困難になる場合があるためである。
したがって、モノマー(B)成分の屈折率を、1.45〜1.49の範囲内の値とすることがより好ましく、1.46〜1.48の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、上述したモノマー(B)成分の屈折率とは、光照射により硬化する前のモノマー(B)成分の屈折率を意味する。
そして、モノマー(B)成分の屈折率についても、例えば、JIS K0062に準じて測定することができる。
【0090】
(4)モノマー(B)成分の含有量
また、モノマー(B)成分の含有量を、光拡散フィルム用組成物の全体量(100重量%)に対して、20〜80重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、モノマー(B)成分の含有量が20重量%未満の値となると、モノマー(A)成分に対するモノマー(B)成分の存在割合が少なくなって、ルーバー構造およびカラム構造における(B)成分に由来した部分の幅等が、(A)成分に由来した部分の幅等と比較して過度に小さくなり、良好な入射角度依存性を有するルーバー構造およびカラム構造を得ることが困難になる場合があるためである。また、光拡散フィルムの厚さ方向におけるルーバーや柱状物の長さが不十分になる場合があるためである。
一方、モノマー(B)成分の含有量が80重量%を超えた値となると、モノマー(A)成分に対するモノマー(B)成分の存在割合が多くなって、ルーバー構造およびカラム構造における(B)成分に由来した部分の幅等が、(A)成分に由来した部分の幅等と比較して過度に大きくなり、逆に、良好な入射角度依存性を有するルーバー構造およびカラム構造を得ることが困難になる場合があるためである。また、光拡散フィルムの厚さ方向におけるルーバーや柱状物の長さが不十分になる場合があるためである。
したがって、モノマー(B)成分の含有量を、光拡散フィルム用組成物の全体量に対して、30〜70重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、40〜60重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0091】
(5)光重合開始剤
また、本発明の光拡散フィルム用組成物においては、所望により、(C)成分として、光重合開始剤を含有させることが好ましい。
この理由は、光重合開始剤を含有させることにより、光拡散フィルム用組成物に対して活性エネルギー線を照射した際に、効率的に所定のルーバー構造およびカラム構造を形成することができるためである。
ここで、光重合開始剤とは、紫外線等の活性エネルギー線の照射により、ラジカル種を発生させる化合物をいう。
【0092】
かかる光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2−(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミン安息香酸エステル、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパン等が挙げられ、これらのうち1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、光重合開始剤を含有させる場合の含有量としては、モノマー(A)成分およびモノマー(B)成分の合計量100重量%に対し、0.2〜20重量%の範囲内の値とすることが好ましく、0.5〜15重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、1〜10重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0093】
(6)その他の添加剤
また、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜、その他の添加剤を添加することができる。
その他の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、重合促進剤、重合禁止剤、赤外線吸収剤、可塑剤、希釈溶剤、およびレベリング剤等が挙げられる。
なお、その他の添加剤の含有量は、一般に、モノマー(A)成分およびモノマー(B)成分の合計量100重量%に対して、0.01〜5重量%の範囲内の値とすることが好ましく、0.02〜3重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、0.05〜2重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0094】
2.工程(b):塗布工程
工程(b)は、図11(a)に示すように、準備した光拡散フィルム用組成物を、工程シート2に対して塗布して塗布層1を形成する工程である。
工程シートとしては、プラスチックフィルム、紙のいずれも使用することができる。
このうち、プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル系フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィン系フィルム、トリアセチルセルロースフィルム等のセルロース系フィルム、およびポリイミド系フィルム等が挙げられる。
また、紙としては、例えば、グラシン紙、コート紙、およびラミネート紙等が挙げられる。
【0095】
また、工程シートに対しては、光硬化後に、得られた光拡散フィルムを工程シートから剥離し易くするために、工程シートにおける光拡散フィルム用組成物の塗布面側に、剥離層を設けることが好ましい。
かかる剥離層は、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、アルキッド系剥離剤、オレフィン系剥離剤等、従来公知の剥離剤を用いて形成することができる。
なお、工程シートの厚さは、通常、25〜200μmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0096】
また、工程シート上に光拡散フィルム用組成物を塗布する方法としては、例えば、ナイフコート法、ロールコート法、バーコート法、ブレードコート法、ダイコート法、およびグラビアコート法等、従来公知の方法により行うことができる。
なお、このとき、塗布層の厚さを、100〜700μmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0097】
3.工程(c):第1の活性エネルギー線照射工程
工程(c)は、塗布層に対して第1の活性エネルギー線照射を行い、塗布層の下方部分に第1の構造領域としての屈折率が異なる複数の板状領域がフィルム面方向に沿って交互に平行配置してなるルーバー構造領域を形成するとともに、塗布層の上方部分にルーバー構造未形成領域を残す工程である。
すなわち、図11(b)に示すように、工程シート2の上に形成された塗布層1に対し、照射角度の制御された直接光のみからなる活性エネルギー線50を照射する。
より具体的には、例えば、図12(a)に示すように、線状の紫外線ランプ125に集光用のコールドミラー122が設けられた紫外線照射装置120(例えば、市販品であれば、アイグラフィックス(株)製、ECS−4011GX等)に、熱線カットフィルター121および遮光板123を配置することにより、照射角度の制御された直接光のみからなる活性エネルギー線50を取り出し、工程シート2の上に形成された塗布層1に対し、照射する。
なお、線状の紫外線ランプは、塗布層1を有する工程シート2の長手方向と直行する方向を基準(0°)として、通常−80〜80°の範囲内の値、好ましくは−50〜50°の範囲内の値、特に好ましくは−30〜30°の範囲内の値になるように設置される。
ここで、線状光源を用いる理由は、屈折率が異なる板状領域が交互に、かつ、膜厚方向に対して一定の傾斜角にて平行配置してなる第1の構造領域としてのルーバー構造領域を、効率的、かつ、安定的に製造することができるためである。
より具体的には、線状光源を用いることにより、線状光源の軸方向から見た場合には実質的に平行光であり、線状光源の軸方向とは垂直な方向から見た場合には非平行な光を照射することができる。
このとき、照射光の照射角度としては、図12(b)に示すように、塗布層1の表面の法線に対する角度を0°とした場合の照射角度θ3を、通常、−80〜80°の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、照射角度が−80〜80°の範囲外の値となると、塗布層1の表面での反射等の影響が大きくなって、十分なルーバー構造を形成することが困難になる場合があるためである。
また、照射角度θ3は、1〜80°の幅(照射角度幅)θ3´を有していることが好ましい。
この理由は、かかる照射角度幅θ3´が1°未満の値となると、ルーバー構造の間隔が狭くなり過ぎて、所望の第1の構造領域を得ることが困難になる場合があるためである。一方、かかる照射角度幅θ3´が80°を超えた値となると、照射光が分散し過ぎて、ルーバー構造を形成することが困難になる場合があるためである。
したがって、照射角度θ3の照射角度幅θ3´を2〜45°の範囲内の値とすることがより好ましく、5〜20°の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0098】
また、照射光としては、紫外線や電子線等が挙げられるが、紫外線を用いることが好ましい。
この理由は、電子線の場合、重合速度が非常に速いため、重合過程でモノマー(A)成分とモノマー(B)成分が十分に相分離できず、ルーバー構造を形成することが困難になる場合があるためである。一方、可視光等と比較した場合、紫外線の方が、その照射により硬化する紫外線硬化樹脂や、使用可能な光重合開始剤のバリエーションが豊富であることから、モノマー(A)成分およびモノマー(B)成分の選択の幅を広げることができるためである。
また、紫外線の照射条件としては、照度を0.01〜50mW/cm2の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、照度が0.01mW/cm2未満の値となると、ルーバー構造未形成領域を十分に形成することができるものの、ルーバー構造を明確に形成することが困難になる場合があるためである。一方、照度が50mW/cm2を超えた値となると、(A)成分および(B)成分の相分離が進む前に硬化してしまい、逆に、ルーバー構造を明確に形成することが困難になる場合あるためである。
したがって、紫外線の照度を0.05〜20mW/cm2の範囲内の値とすることがより好ましく、0.1〜10mW/cm2の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0099】
また、工程シート上に形成された塗布層を、0.1〜10m/分の速度にて移動させて、紫外線照射装置による紫外線照射部分を通過させることが好ましい。
この理由は、かかる速度が0.1m/分未満の値となると、量産性が過度に低下する場合があるためである。一方、かかる速度が10m/分を超えた値となると、塗布層の硬化、言い換えれば、ルーバー構造の形成よりも速く、塗布層に対する紫外線の入射角度が変化してしまい、ルーバー構造の形成が不十分になる場合があるためである。
したがって、工程シート上に形成された塗布層を、0.2〜5m/分の範囲内の速度にて移動させて、紫外線照射装置による紫外線照射部分を通過させることがより好ましく、0.5〜3m/分の範囲内の速度にて通過させることがさらに好ましい。
【0100】
4.工程(d):第2の活性エネルギー線照射工程
工程(d)は、塗布層に対して、さらに第2の活性エネルギー線照射を行い、ルーバー構造未形成領域に第2の構造領域としての媒体物中に当該媒体物とは屈折率が異なる複数の柱状物が林立してなるカラム状構造領域を形成する工程である。
すなわち、工程シートの上に形成された塗布層に対し、光線の平行度が高い平行光を照射する。該平行光の照射に際しては、塗布層に直接照射しても良いが、露出している塗布層表面に剥離フィルムを積層して、剥離フィルム越しに照射することも好ましい。剥離フィルムとしては、前記工程シートに記載されているもののうち紫外線透過性を有するものを適宜選択することができる。
【0101】
ここで、第1の活性エネルギー線照射工程で用いられた線状光源による直接光は、その光の方向が線状光源の軸方向と垂直な方向においては広がりを持たず、略平行であるが、線状光源の軸方向と平行な方向においては光の向きに統一性はなく、ランダムである。
これに対して、第2の活性エネルギー線照射における平行光とは、発せられる光の方向が、いずれの方向から見た場合であっても広がりを持たない略平行な光を意味する。
より具体的には、例えば、図13(a)に示すように、点光源202からの光をレンズ204によって平行光とした後、塗布層に照射したり、図13(b)〜(c)に示すように、線状光源206からの光を筒状物208の集合体210によって平行光とした後、塗布層に照射したりすることが好ましい。
したがって、図13(a)に示すような平行光照射装置の具体例としては、例えば、山下電装(株)製、紫外線スポット光源「HYPERCURE 200」にオプションの均一露光アダプタを取り付けたものが挙げられる。
【0102】
そして、平行光における平行度を10°以下の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる平行度を10°以下の値とすることにより、複数の柱状物が膜厚方向に対して一定の傾斜角にて林立してなる第2の構造領域としてのカラム構造領域を、効率的、かつ、安定的に製造することができるためである。
すなわち、かかる平行度が10°を超えた値となると、カラム構造を形成することができない場合があるためである。
したがって、平行光の平行度を5°以下の値とすることがより好ましく、2°以下の値とすることがさらに好ましい。
【0103】
また、照射光としては、紫外線や電子線等が挙げられるが、第1の活性エネルギー線照射工程におけるのと同様の理由から、紫外線を用いることが好ましい。
また、紫外線の照射条件としては、照度を0.01〜30mW/cm2の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、照度が0.01mW/cm2未満の値となると、カラム構造を明確に形成することが困難になる場合があるためである。一方、照度が30mW/cm2を超えた値となると、(A)成分および(B)成分の相分離が進む前に硬化してしまい、逆に、カラム構造を明確に形成することが困難になる場合あるためである。
したがって、紫外線の照度を0.05〜20mW/cm2の範囲内の値とすることがより好ましく、0.1〜10mW/cm2の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、塗布層の移動速度や照射光の照射角度については、第1の活性エネルギー線照射工程と同様とすることができる。
なお、塗布層が十分に硬化する積算光量となるように、第1および第2の活性エネルギー線照射とは別に、さらに活性エネルギー線を照射することも好ましい。
このときの活性エネルギー線は、塗布層を十分に硬化させることを目的とするものであるため、平行光等ではなく、進行方向がランダムな光とすることが好ましい。
また、光硬化工程後の光拡散フィルムは、工程シートを剥離することによって、最終的に使用可能な状態となる。
【実施例】
【0104】
以下、実施例を参照して、本発明の光拡散フィルム等をさらに詳細に説明する。
【0105】
[実施例1]
1.モノマー(B)成分の合成
容器内に、(b)成分としての重量平均分子量9,200のポリプロピレングリコール(PPG)1モルに対して、(a)成分としてのイソホロンジイソシアナート(IPDI)2モル、および(c)成分としての2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)2モルを収容した後、常法に従って反応させ、重量平均分子量9,900のポリエーテルウレタンメタクリレートを得た。
【0106】
なお、ポリプロピレングリコールおよびポリエーテルウレタンメタクリレートの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて、下記条件に沿って測定したポリスチレン換算値である。
・GPC測定装置:東ソー(株)製、HLC−8020
・GPCカラム :東ソー(株)製(以下、通過順に記載)
TSK guard column HXL−H
TSK gel GMHXL(×2)
TSK gel G2000HXL
・測定溶媒 :テトラヒドロフラン
・測定温度 :40℃
【0107】
2.光拡散フィルム用組成物の調製
次いで、得られたモノマー(B)成分としての重量平均分子量9,900のポリエーテルウレタンメタクリレート100重量部に対し、モノマー(A)成分としての下記式(3)で表わされる重量平均分子量268のo−フェニルフェノキシエトキシエチルアクリレート(新中村化学(株)製、NKエステル A−LEN−10)100重量部と、(C)成分としての2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン10重量部とを添加した後、80℃の条件下にて加熱混合を行い、光拡散フィルム用組成物を得た。なお、モノマー(A)成分及びモノマー(B)成分の屈折率は、アッベ屈折計[アタゴ社製、品名「アッベ屈折計DR−M2」、Na光源、波長:589nm]によりJIS K0062に準じて測定したところ、それぞれ1.58および1.46であった。
【0108】
【化6】
【0109】
3.光拡散フィルム用組成物の塗布
次いで、得られた異方性光拡散フィルム用組成物を、工程シートとしてのフィルム状の透明ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETと称する。)に対して、アプリケーターを用いて塗布し、膜厚200μmの塗布層を得た。
【0110】
4.塗布層の光硬化
(1)第1の紫外線照射
次いで、図12(a)に示すような線状の高圧水銀ランプに集光用のコールドミラーが付属した紫外線照射装置(アイグラフィックス(株)製、ECS−4011GX)を準備した。
次いで、熱線カットフィルター枠上に遮光板を設置し、塗布層の表面に照射される紫外線が、線状の紫外線ランプの長手方向から見たときの塗布層およびPETからなる積層体の法線方向を0°とした場合に、ランプからの直接の紫外線の照射角度(図12(b)のθ3)が−40°となるように設定した。
このとき、塗布層からのランプの高さは500mmとし、ピーク照度は1.7mW/cm2となるように設定した。
また、遮光板等での反射光が、照射機内部で迷光となり、塗布層の光硬化に影響を及ぼすことを防ぐため、コンベア付近にも遮光板を設け、ランプから直接発せられる紫外線のみが塗布層に対して照射されるように設定した。
次いで、コンベアにより、塗布層を図12(a)における右方向に、0.2m/分の速度にて移動させながら紫外線を照射した。
【0111】
(2)第2の紫外線照射
次いで、線状光源による第1の紫外線照射工程を経た後、塗布層の露出面側を厚さ38μmの紫外線透過性を有する剥離フィルム(リンテック(株)製、SP−PET382050)によりラミネートした。
次いで、紫外線スポット光源(山下電装(株)製、HYPERCURE 200)にオプションの均一露光アダプタを取り付けることによって平行度を2゜以下とした装置を用い、平行光の入射角が40°となるように剥離フィルム越しに照射することで、総膜厚200μmの光拡散フィルムを得た。
その際の平均照度は5mW/cm2、ランプ高さは800mmとした。
なお、光拡散フィルムの膜厚は、定圧厚さ測定器(宝製作所(株)製、テクロック PG−02J)を用いて測定した。
また、得られた光拡散フィルムは、図14(a)に示すように、ルーバー構造の傾斜角が−27°であり、柱状物の傾斜角が27°である光拡散フィルムであることを確認した。
なお、かかる図14(a)は、ルーバー構造における板状領域に垂直な面で切断した場合のフィルムの断面を示す模式図である。
また、第1の構造領域の膜厚は66μmであり、第2の構造領域の膜厚は38μmであった。
さらに、得られた光拡散フィルムの断面写真を、図15(a)〜(b)に示す。図15(a)は、ルーバー構造における板状領域に垂直な面でフィルムを切断した場合の断面写真であり、図15(b)は、図15(a)における切断面に対して垂直な面でフィルムを切断した場合の断面写真である。
【0112】
5.測定
変角測色計(スガ試験機(株)製、VC−2)を用いて、図14(a)に示すように、得られた光拡散フィルムの上方より、当該フィルムに対して、入射角θ1=60°にて、光を入射させた(C光源、視野角2°)。
次いで、光拡散フィルムにより拡散された拡散光の広がりと、その明度(%)の分布を測定した。かかる測定結果は、図14(c)に示す散布図の縦軸の値が0°の横軸上に示されている。
すなわち、横軸の値が拡散光の広がり角度(°)の範囲を示し、プロットの色がその角度に拡散された拡散光の明度(%)を示す。
ここで、プロットの色と、明度(%)との関係は、プロットの色が赤に近い程、明度が100%に近いことを示し、プロットの色が緑に近い程、明度が50%に近いことを示し、プロットの色が紺色に近い程、明度が0%に近いことを示す。なお、詳細については図14(b)に示す。
また、さらに、入射光の幅方向における拡散光の広がりと、その明度(%)の分布についても測定すべく、光拡散フィルムの面上における所定の一点を中心として、光拡散フィルムを同一平面内において−80〜80°の範囲で回転させつつ、同様の測定を行った。なお、かかる回転の角度は、上述した測定時における光拡散フィルムの角度を0°とした場合の回転の角度を意味する。例えば、光拡散フィルムを20°回転させた場合の測定結果は、図14(c)に示す散布図の縦軸の値が20°の横軸上に示されることになる。
したがって、図14(c)に示す散布図の場合、例えば、明度が30%以上の拡散光が分布する領域は、図14(c)における点線で囲まれた領域となる。
【0113】
次いで、14(d)〜(k)に示すように、光拡散フィルムに対する入射角θ1を、それぞれ50°、40°、30°、0°、−30°、−40°、−50°、−60°に変えて、入射角θ1=60°の場合と同様に拡散光の広がりと、その明度(%)の分布を測定した。
【0114】
6.結果
図14(c)〜(k)に示すように、実施例1の光拡散フィルムでは、入射光の入射角θ1=0°前後の範囲では、光の拡散が生じにくくなるものの、入射角θ1=30〜60°の範囲では、カラム構造領域による等方性光拡散が生じ、入射角θ1=−60〜−30°の範囲では、ルーバー構造領域による異方性光拡散が生じており、二つの構造領域による光拡散入射角度依存性をずらすことにより、光拡散入射角度領域を有効に拡大できていることが分かる。
【0115】
[実施例2]
実施例2では、塗布層を硬化させる際に、第1の紫外線照射におけるθ3を40°に変更した以外は、実施例1と同様にして、ルーバー構造の傾斜角が27°、柱状物の傾斜角が27°である図16に示すような光拡散フィルムを得た。
また、光拡散フィルムに対する入射角θ1を、それぞれ25°、35°、45°、55°としたほかは、実施例1と同様に拡散光の広がりと、その明度(%)の分布について測定した。
その結果、実施例2の光拡散フィルムでは、ルーバー構造領域およびカラム構造領域における光拡散入射角度依存性がほぼ重なっているため、光拡散入射角度領域が、入射角θ1=25〜55°の範囲という比較的狭い範囲となった。
しかしながら、実施例2の光拡散フィルムは、後述する比較例1および2と比較して拡散光の均一性が高く、比較例3および4と比較して入射光の幅方向における拡散光の広がりが大きいことが確認された。
【0116】
[実施例3]
実施例3では、第1の紫外線照射におけるθ3を40°に変更し、第2の紫外線照射の平行光の入射角を0°に変更した以外は、実施例1と同様にして、ルーバー構造の傾斜角が27°、柱状物の傾斜角が0°の図17(a)に示すような光拡散フィルムを得た。
また、図17(b)〜(h)に示すように、光拡散フィルムに対する入射角θ1を、それぞれ0°、10°、20°、30°、40°、50°、60°としたほかは、実施例1と同様に拡散光の広がりと、その明度(%)の分布について測定した。
その結果、図17(b)〜(h)に示されているように、実施例3の光拡散フィルムでは、入射光の入射角θ1=20°前後では、光の拡散が生じにくくなるものの、入射角=0〜10°の範囲では、カラム構造領域による等方性光拡散が生じ、入射角θ1=30〜60°の範囲では、ルーバー構造領域による異方性光拡散が生じており、二つの構造領域による光拡散入射角度依存性をずらすことにより、光拡散入射角度領域を有効に拡大できていることが分かる。
【0117】
[実施例4]
実施例4では、第1の紫外線照射におけるθ3を40°に変更し、第2の紫外線照射の平行光の入射角を20°に変更した以外は、実施例1と同様にして、ルーバー構造の傾斜角が27°、柱状物の傾斜角が14°の図18(a)に示すような光拡散フィルムを得た。
また、図18(b)〜(g)に示すように、光拡散フィルムに対する入射角θ1を、それぞれ5°、15°、25°、35°、45°、55°としたほかは、実施例1と同様に拡散光の広がりと、その明度(%)の分布について測定した。
その結果、図18(b)〜(g)に示されているように、実施例4の光拡散フィルムでは、入射光の入射角θ1=5〜25°の範囲では、カラム構造領域による等方性光拡散が生じ、入射角θ1=25〜55°の範囲では、ルーバー構造領域による異方性光拡散が生じており、二つの構造領域による光拡散入射角度依存性をずらしつつも一部重複させることにより、光拡散入射角度領域を有効に拡大できていることが分かる。
【0118】
[比較例1]
比較例1では、第1の紫外線照射を行わず、第2の紫外線照射の平行光の入射角を0°に変更した以外は、実施例1と同様にして、図19(a)に示すように、第1の構造領域および第2の構造領域に相当する領域全体に傾斜角が0°のカラム構造のみを有する光拡散フィルムを得た。
また、図19(b)〜(j)に示すように、光拡散フィルムに対する入射角θ1を、それぞれ20°、15°、10°、5°、0°、−5°、−10°、−15°、−20°としたほかは、実施例1と同様に拡散光の広がりと、その明度(%)の分布について測定した。
その結果、図19(b)〜(j)に示されているように、比較例1の光拡散フィルムでは、カラム構造のみを有するため、光拡散入射角度領域が、θ1=−15〜15°の範囲という比較的狭い範囲となった。
また、拡散光の中心部が、その他の部分と比較して特に明度が高く、拡散光の均一性が低いことがわかる。
【0119】
[比較例2]
比較例2では、第1の紫外線照射を行わず、第2の紫外線照射の平行光の入射角を40°に変更した以外は、実施例1と同様にして、図20(a)に示すように、第1の構造領域および第2の構造領域に相当する領域全体に傾斜角が27°のカラム構造のみを有する光拡散フィルムを得た。
また、図20(b)〜(k)に示すように、光拡散フィルムに対する入射角θ1を、それぞれ15°、20°、25°、30°、35°、40°、45°、50°、55°、60°としたほかは、実施例1と同様に拡散光の広がりと、その明度(%)の分布について測定した。
その結果、図20(b)〜(k)に示されているように、比較例2の光拡散フィルムは、カラム構造のみを有するため、光拡散入射角度領域が、θ1=25〜60°の範囲という比較的狭い範囲となった。
また、拡散光の中心部が、その他の部分と比較して特に明度が高く、拡散光の均一性が低いことが分かる。
【0120】
[比較例3]
比較例3では、第1の紫外線照射のθ3を0°に変更し、第2の紫外線照射を行わない以外は、実施例1と同様にして、図21(a)に示すように、第1の構造領域としての傾斜角が0°のルーバー構造領域と、その上方にルーバー構造未形成領域とを有する光拡散フィルムを得た。
また、図21(b)〜(h)に示すように、光拡散フィルムに対する入射角θ1を、それぞれ20°、15°、10°、5°、0°、−5°、−10°としたほかは、実施例1と同様に拡散光の広がりと、その明度(%)の分布について測定した。
その結果、図21(b)〜(h)に示されているように、比較例3の光拡散フィルムは、ルーバー構造のみを有するため、光拡散角度領域が、θ1=−5〜15°の範囲という比較的狭い範囲となった。
また、拡散光の異方性が大きく、入射光の幅方向における拡散光の広がりが小さいことが分かる。
【0121】
[比較例4]
比較例4では、第1の紫外線照射のθ3を40°に変更し、第2の紫外線照射を行わない以外は実施例1と同様にして、図22(a)に示すように、第1の構造領域としての傾斜角が27°のルーバー構造領域と、その上方にルーバー構造未形成領域とを有する光拡散フィルムを得た。
また、図22(b)〜(i)に示すように、光拡散フィルムに対する入射角θ1を、それぞれ25°、30°、35°、40°、45°、50°、55°、60°としたほかは、実施例1と同様に光拡散フィルムを製造した。
また、図22(b)〜(i)に示されているように、比較例4の光拡散フィルムは、ルーバー構造のみを有するため、光拡散角度領域が。θ1=30〜60°という比較的狭い範囲となった。
また、拡散光の異方性が大きく、入射光の幅方向における拡散光の広がりが小さいことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0122】
以上、詳述したように、本発明によれば、フィルム内において、入射光を異方性拡散させるためのルーバー構造領域と、入射光を等方性拡散させるためのカラム構造領域とを、膜厚方向に沿って上下に設けることにより、良好な入射角度依存性を有するとともに、光拡散入射角度領域が広い光拡散フィルムを得られるようになった。
したがって、本発明の光拡散フィルム等は、反射型液晶装置における光制御膜の他、視野角制御フィルム、視野角拡大フィルム、さらにはプロジェクション用スクリーンにも提供することができ、これらの高品質化に著しく寄与することが期待される。
【符号の説明】
【0123】
1:塗布層、2:工程シート、10:第1の構造領域(異方性光拡散フィルム)、12:屈折率が相対的に高い板状領域(高屈折率部)、13:ルーバー構造領域、13´:ルーバー構造の境界面、14:屈折率が相対的に低い板状領域(低屈折率部)、20:第2の構造領域(等方性光拡散フィルム)、22:柱状物、24:柱状物以外の部分、30:光拡散フィルム、50:活性エネルギー線、120:紫外線照射装置、121:熱線カットフィルター、122:コールドミラー、123:遮光板、125:線状の紫外線ランプ、100:反射型液晶表示装置、101:偏光板、102:位相差板、103:光拡散板、104:ガラス板、105:カラーフィルター、106:液晶、107:鏡面反射板、108:ガラス板、110:液晶セル、202:点光源、204:レンズ、206:線状の紫外線ランプ、208:筒状物、210:筒状物の集合体
【技術分野】
【0001】
本発明は、光拡散フィルムおよび光拡散フィルムの製造方法に関する。特に、入射光を異方性拡散させるためのルーバー構造領域と、入射光を等方性拡散させるためのカラム構造領域と、を含むことにより、光の透過と拡散において良好な入射角度依存性を有するとともに、光拡散入射角度領域が広い光拡散フィルムおよび光拡散フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置においては、装置内部に設けられた光源(内部光源)から出射された光を利用して、所定画像を認識することが可能である。
しかしながら、近年、携帯電話や車載用テレビ等の普及により、液晶表示画面を室外で見る機会が増加しており、それにともない、内部光源からの光強度が外光に負けてしまい、所定画面を視認しにくくなるという問題が生じている。
また、携帯電話等のモバイル用途においては、液晶表示装置の内部光源による消費電力が、全消費電力に対して大きな割合を占めるため、内部光源を多用した場合、バッテリーの持続時間が短くなってしまうという問題が生じている。
【0003】
そこで、これらの問題を解決すべく、光源の一部として外光を利用する反射型液晶表示装置が開発されている。
かかる反射型液晶表示装置であれば、光源の一部として外光を利用することから、外光が強い程、鮮明な画像を認識することができるとともに、内部光源の電力消費についても、効果的に抑えることができる。
【0004】
また、このような反射型液晶表示装置において、外光を効率的に透過させて液晶表示装置の内部に取り込み、かつ、その外光を光源の一部として有効に利用すべく、効率的に光拡散するための光拡散フィルムを備えることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
より具体的に説明すると、特許文献1には、図23(a)〜(b)に示すように、上基板1103と下基板1107との間に液晶層1105を挟んでなる液晶セルと、下基板1107の側に設けられた光反射板1110と、液晶層1105と光反射板1110との間に設けられた光制御板(光拡散フィルム)1108とを有した液晶装置1112が開示されている。
そして、所定角度で入射する光を選択的に散乱させるとともに所定角度以外の角度で入射する光を透過させるための光制御板1108が設けてあり、かかる光制御板1108は、所定角度で入射する光を選択的に散乱する方向を光制御板1108の表面に投影した散乱軸方向1121が、液晶セル内面でほぼ6時方向の方向となるように液晶セルに配置されている。
【0005】
ここで、反射型液晶表示装置に使用される光拡散フィルムとしては、特定の光硬化性組成物に対して、線状光源を用いて活性エネルギー線を照射することにより、フィルム面方向に高屈折率の板状領域と、低屈折率の板状領域とを交互に平行配置させ、フィルム内にルーバー構造領域を形成してなる光拡散フィルムが開示されている(例えば、特許文献2〜3参照)。
すなわち、特許文献2には、重合性炭素−炭素二重結合を有する化合物を複数種含む膜状組成物に特定方向から紫外線を照射して、該組成物を硬化させて得られ、特定角度範囲の入射光のみを選択的に散乱する光制御膜(光拡散フィルム)において、該組成物に含まれる少なくとも1種の化合物が、複数の芳香環と1つの重合性炭素−炭素二重結合とを分子内に有する化合物であることを特徴とする光制御膜が開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、分子内に重合性の炭素−炭素二重結合を有するフルオレン系化合物(A)、該フルオレン系化合物(A)と屈折率が異なるカチオン重合性化合物(B)、および光カチオン重合開始剤(C)を含有することを特徴とする光硬化性組成物およびそれを硬化させてなる光制御膜が開示されている。
【0007】
一方、反射型液晶装置に使用される別のタイプの光拡散フィルムとしては、特定の光硬化性組成物に対して、全面的に平行光としての活性エネルギー線を照射することにより、フィルムの膜厚方向に沿って、媒体物中に当該媒体物とは屈折率が異なる複数の柱状物を林立させたカラム構造領域を形成してなる光拡散フィルムが開示されている(例えば、特許文献4〜6参照)。
すなわち、特許文献4には、光硬化性化合物を含む組成物をシート状に設け、このシートに所定の方向Pから平行光線を照射して組成物を硬化させて、シート内部に方向Pに平行に延在している複数の棒状硬化領域の集合体を形成せしめる拡散媒体(光拡散フィルム)の製造方法であって、線状光源とシートとの間に、方向Pに平行に配置した筒状物の集合を介在させ、この筒状物を通して光照射を行うことを特徴とする拡散媒体の製造方法が開示されている。
【0008】
また、引用文献5には、光硬化性樹脂組成物膜と離隔対向するように線状光源を配置し、光硬化性樹脂組成物膜および線状光源の少なくとも一方を移動させながら、線状光源から光を照射して光硬化性樹脂組成物膜を硬化させて光制御膜(光拡散フィルム)を形成する製造装置であって、線状光源の軸方向と移動方向とが交差し、お互いに対向する複数枚の薄板状の遮光部材が、光硬化性樹脂組成物膜と線状光源との間に、移動方向に対して略垂直方向に所定間隔で、かつ遮光部材の、光硬化性樹脂組成物膜と対向する一辺が、それぞれ移動方向と同方向となるように設けられていることを特徴とする光制御膜の製造装置が開示されている。
【0009】
さらに、特許文献6には、上方に向けられた棚面が吸光面とされ、下方に向けられた傾斜面が反射面とされたリニアフレネル部材のフレネル面を覆って配置され、所定角より大きな入射光は拡散させない拡散特性を有する拡散層(拡散フィルム)と、を備えており、拡散層が、光硬化性樹脂組成物に所定方向から光通過域と光不通過域とを有するフォトマスクを介して平行光を照射し、照射された部位を、未完全な硬化状態に硬化させる第1の光照射工程と、フォトマスクを取り外して、さらに光強度分布が略一定の平行光を光硬化性組成物に向けて照射して、光硬化性組成物の硬化を完了させる第2の光照射工程とによって生成され、該フィルム内に光硬化性組成物からなるマトリックスと、該マトリックス中で平行光の照射方向に延びるように配向された該マトリックスと屈折率が異なる複数の柱状構造体と、を備えた相分離構造を備えていることを特徴とする反射型プロジェクションスクリーンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許3480260号公報(特許請求の範囲、図面等)
【特許文献2】特開2006−350290号公報(特許請求の範囲、図面等)
【特許文献3】特開2008−239757号公報(特許請求の範囲、図面等)
【特許文献4】特許4095573号公報(特許請求の範囲、図面等)
【特許文献5】特開2009−173018号公報(特許請求の範囲、図面等)
【特許文献6】特開2008−256930号公報(特許請求の範囲、図面等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1〜3に開示されたルーバー構造領域を有する光拡散フィルムは、光拡散可能な入射光の入射角度領域(以下、光拡散入射角度領域と称する場合がある。)が狭くなったり、さらには、拡散光の開き角度も狭くなったりする場合が見られた。
【0012】
また、特許文献4〜5に開示されたカラム構造領域を有する光拡散フィルムは、ルーバー構造領域を有する光拡散フィルムと比較して、フィルム内における光の反射にむらが生じ易いことから、入射光の入射角による拡散特性のばらつきが大きく、良好な入射角度依存性を発揮することが困難であるという問題が見られた。
【0013】
そこで、本発明者らは、以上のような事情に鑑み、鋭意努力したところ、フィルム内において、入射光を異方性拡散させるためのルーバー構造領域と、入射光を等方性拡散させるためのカラム構造領域と、を設けることにより、良好な入射角度依存性を有するとともに、光拡散入射角度領域が広い光拡散フィルムを得られることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明の目的は、光の透過と拡散において良好な入射角度依存性を有するとともに、光拡散入射角度領域が広い光拡散フィルムおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、入射光を異方性拡散させるための第1の構造領域と、入射光を等方性拡散させるための第2の構造領域とを有する光拡散フィルムであって、第1の構造領域が、屈折率が異なる複数の板状領域をフィルム面方向に沿って交互に平行配置してなるルーバー構造領域であり、第2の構造領域が、媒体物中に当該媒体物とは屈折率が異なる複数の柱状物を林立させてなるカラム構造領域であることを特徴とする光拡散フィルムが提供され、上述した問題を解決することができる。
すなわち、本発明の光拡散フィルムであれば、フィルム内において、入射光を異方性拡散させるための第1の構造領域としてのルーバー構造領域と、入射光を等方性拡散させるための第2の構造領域としてのカラム構造領域とを設けてある。
したがって、それぞれの構造領域が有する入射角度依存性を重複させることで、拡散特性のばらつきを抑制し、良好な入射角度依存性を得ることができるばかりか、拡散光の開き角度についても、効果的に広げることができる。
また、それぞれの構造領域が有する入射角度依存性を異ならせることで、光拡散入射角度領域を効果的かつ容易に広げることができる。
なお、本発明において「フィルム面方向」とは、膜厚方向をz軸とした場合におけるx−y平面方向を意味するものとする。
また、本発明において、「光拡散入射角度領域」とは、異方性光拡散フィルムに対して、点光源からの入射光の角度を変化させた場合に、拡散光を出光するのに対応する入射光の角度範囲を意味する。かかる光拡散入射角度領域の詳細については、後述する。
また、「良好な入射角度依存性」とは、入射光の光拡散が生じるフィルムに対する入射角度領域(光拡散入射角度領域)と、光拡散が生じないその他の入射角度領域との間の区別が、明確に制御されていることを意味する。
さらに、本発明における「異方性」とは、拡散光の広がりの形状が異方性を有することを意味し、「等方性」とは、拡散光の広がりの形状が等方性を有することを意味するが、これらについても、詳細は後述する。
【0015】
また、本発明の光拡散フィルムを構成するにあたり、第1の構造領域において、屈折率が異なる板状領域の幅を、それぞれ0.1〜15μmの範囲内の値とするとともに、当該板状領域を膜厚方向に対して一定の傾斜角にて平行配置してなることが好ましい。
このように構成することにより、第1の構造領域としてのルーバー構造領域内において入射光をより安定的に反射させて、第1の構造領域に由来した入射角度依存性および拡散光の開き角度をさらに向上させることができる。
【0016】
また、本発明の光拡散フィルムを構成するにあたり、第1の構造領域において、屈折率が異なる板状領域のうち、屈折率の高い板状領域の主成分が、複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルの重合体であり、屈折率の低い板状領域の主成分が、ウレタン(メタ)アクリレートの重合体であることが好ましい。
このように構成することにより、第1の構造領域としてのルーバー構造を効率的に形成することができるばかりか、第1の構造領域に由来した入射角度依存性および拡散光の開き角度をさらに向上させることができる。
【0017】
また、本発明の光拡散フィルムを構成するにあたり、第1の構造領域の厚さを5〜495μmの範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、膜厚方向に沿ったルーバー構造の長さを安定的に確保して、第1の構造領域としてのルーバー構造領域内において入射光をより安定的に反射させ、第1の構造領域に由来した入射角度依存性および拡散光の開き角度をさらに向上させることができる。
【0018】
また、本発明の光拡散フィルムを構成するにあたり、第2の構造領域において、柱状物の断面における最大径を0.1〜15μmの範囲内の値とするとともに、柱状物間の距離を0.1〜15μmの範囲内の値とし、かつ、複数の柱状物を膜厚方向に対して一定の傾斜角にて林立させてなることが好ましい。
このように構成することにより、第2の構造領域としてのカラム構造領域内において入射光をより安定的に反射させて、第2の構造領域に由来した入射角度依存性および拡散光の開き角度をさらに向上させることができる。
【0019】
また、本発明の光拡散フィルムを構成するにあたり、第2の構造領域において、柱状物の主成分が、複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルの重合体であり、媒体物の主成分が、ウレタン(メタ)アクリレートの重合体であることが好ましい。
このように構成することにより、第2の構造領域としてのカラム構造を効率的に形成することができるばかりか、第2の構造領域に由来した入射角度依存性および拡散光の開き角度をさらに向上させることができる。
【0020】
また、本発明の光拡散フィルムを構成するにあたり、第2の構造領域の厚さを5〜495μmの範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、膜厚方向に沿った柱状物の長さを安定的に確保して、第2の構造領域としてのカラム構造領域内において入射光をより安定的に反射させ、第2の構造領域に由来した入射角度依存性および拡散光の開き角度をさらに向上させることができる。
【0021】
また、本発明の別の態様は、入射光を異方性拡散させるための第1の構造領域と、入射光を等方性拡散させるための第2の構造領域とを有する光拡散フィルムの製造方法であって、下記工程(a)〜(d)を含むことを特徴とする光拡散フィルムの製造方法である。
(a)光拡散フィルム用組成物を準備する工程
(b)光拡散フィルム用組成物を工程シートに対して塗布し、塗布層を形成する工程
(c)塗布層に対して第1の活性エネルギー線照射を行い、塗布層の下方部分に第1の構造領域としての屈折率が異なる複数の板状領域をフィルム面方向に沿って交互に平行配置してなるルーバー構造領域を形成するとともに、塗布層の上方部分にルーバー構造未形成領域を残す工程
(d)塗布層に対して、さらに第2の活性エネルギー線照射を行い、ルーバー構造未形成領域に第2の構造領域としての媒体物中に当該媒体物とは屈折率が異なる複数の柱状物を林立させてなるカラム状構造領域を形成する工程
すなわち、本発明の光拡散フィルムの製造方法であれば、第1の活性エネルギー線照射により第1の構造領域としてのルーバー構造領域を形成した後、第2の活性エネルギー線照射をすることにより、第1の構造領域の上方に存在する未形成領域において第2の構造領域としてのカラム構造領域を形成することができる。
したがって、第1の構造領域としてのルーバー構造領域と、第2の構造領域としてのカラム構造領域とを単一のフィルム内において、膜厚方向に沿って順次に上下に含んでなる光拡散フィルムを、効率的、かつ、安定的に製造することができる。
【0022】
また、本発明の光拡散フィルムの製造方法を実施するにあたり、第2の活性エネルギー線照射として、平行度が10°以下の値である平行光を照射することが好ましい。
このように実施することにより、複数の柱状物が膜厚方向に対して一定の傾斜角にて形成された第2の構造領域としてのカラム構造領域を、効率的、かつ、安定的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1(a)〜(b)は、第1の構造領域におけるルーバー構造の概略を説明するために供する図である。
【図2】図2(a)〜(b)は、ルーバー構造における入射光角度依存性および異方性を説明するために供する図である。
【図3】図3(a)〜(b)は、ルーバー構造における入射角度依存性を説明するために供する別の図である。
【図4】図4(a)〜(c)は、入射角および拡散光の開き角度を説明するために供する図である。
【図5】図5(a)〜(b)は、第2の構造領域におけるカラム構造の概略を説明するために供する図である。
【図6】図6(a)〜(b)は、カラム構造における入射角度依存性および等方性を説明するために供する図である。
【図7】図7(a)〜(b)は、本発明の光拡散フィルムの概略を説明するために供する図である。
【図8】図8(a)〜(c)は、第1の構造領域におけるルーバー構造の態様を説明するために供する図である。
【図9】図9(a)〜(d)は、第2の構造領域におけるカラム構造の態様を説明するために供する図である。
【図10】図10は、反射型液晶表示装置における本発明の光拡散フィルムの適用例を説明するために供する図である。
【図11】図11(a)〜(b)は、第1の活性エネルギー線照射工程を説明するために供する図である。
【図12】図12(a)〜(b)は、第1の活性エネルギー線照射工程を説明するために供する別の図である。
【図13】図13(a)〜(c)は、第2の活性エネルギー線照射工程を説明するために供する図である。
【図14】図14(a)〜(k)は、実施例1の光拡散フィルムにおける拡散光の広がりと、その明度の分布を説明するために供する図である。
【図15】図15(a)〜(b)は、実施例1の光拡散フィルムにおける断面の様子を説明するために供する写真である。
【図16】図16は、実施例2の光拡散フィルムを説明するために供する図である。
【図17】図17(a)〜(h)は、実施例3の光拡散フィルムにおける拡散光の広がりと、その明度の分布を説明するために供する図である。
【図18】図18(a)〜(g)は、実施例4の光拡散フィルムにおける拡散光の広がりと、その明度の分布を説明するために供する図である。
【図19】図19(a)〜(j)は、比較例1の光拡散フィルムにおける拡散光の広がりと、その明度の分布を説明するために供する図である。
【図20】図20(a)〜(k)は、比較例2の光拡散フィルムにおける拡散光の広がりと、その明度の分布を説明するために供する図である。
【図21】図21(a)〜(h)は、比較例3の光拡散フィルムにおける拡散光の広がりと、その明度の分布を説明するために供する図である。
【図22】図22(a)〜(i)は、比較例4の光拡散フィルムにおける拡散光の広がりと、その明度の分布を説明するために供する図である。
【図23】図23(a)〜(b)は、従来の光拡散フィルムを用いた反射型液晶装置を説明するために供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態は、入射光を異方性拡散させるための第1の構造領域と、入射光を等方性拡散させるための第2の構造領域とを有する光拡散フィルムであって、第1の構造領域が、屈折率が異なる複数の板状領域をフィルム面方向に沿って交互に平行配置してなるルーバー構造領域であり、第2の構造領域が、媒体物中に当該媒体物とは屈折率が異なる複数の柱状物を林立させてなるカラム構造領域であることを特徴とする光拡散フィルムである。
以下、本発明の第1の実施形態である光拡散フィルムを、図面を適宜参照して、具体的に説明する。
【0025】
1.基本原理
以下、光拡散フィルムにおけるルーバー構造による光拡散およびカラム構造による光拡散についての基本原理をそれぞれ説明する。
【0026】
(1)ルーバー構造による光拡散
図1(a)には、ルーバー構造領域のみを有し、入射光を異方性拡散させるための第1の構造領域10の上面図(平面図)が示してあり、図1(b)には、図1(a)に示す第1の構造領域10を、点線A−Aに沿って垂直方向に切断して、切断面を矢印方向から眺めた場合の第1の構造領域10の断面図が示してある。
なお、本発明において、異方性とは、図2(a)〜(b)に示すように、光がフィルムによって拡散された場合に、拡散された出射光におけるフィルムと平行な面内での、その光の拡散具合(拡散光の広がりの形状)が、同面内での方向によって異なる性質を有することを意味する。
より具体的には、第1の構造領域10の場合、主に、拡散された出射光はフィルムと平行な面内において、フィルム面方向に沿って延在するルーバー構造の方向とは垂直な方向に光が拡散されるため、拡散光の広がりの形状は略楕円状になる。
【0027】
また、図1(a)の平面図に示すように、第1の構造領域10は、屈折率が比較的高い板状領域12と、屈折率が比較的低い板状領域14とがフィルム面方向に沿って交互に平行配置されつつ延在してなるルーバー構造13を有している。
また、図1(b)の断面図に示すように、屈折率が比較的高い板状領域12と、屈折率が比較的低い板状領域14は、それぞれ所定厚さを有しており、第1の構造領域10の垂直方向においても、交互に平行配置された状態を保持している。
これにより、図2(a)〜(b)に示すように、入射角が光拡散入射角度領域内である場合には、入射光が第1の構造領域10によって拡散されることになると推定される。
すなわち、図1(b)に示すように、第1の構造領域10に対する入射光の入射角が、ルーバー構造13の境界面13´に対し、平行から所定の角度範囲内の値、すなわち、光拡散入射角度領域内の値である場合には、入射光(52、54)は、ルーバー構造内の高屈折率の板状領域12内を、方向を変化させながら膜厚方向に沿って通り抜けることにより、出光面側での光の進行方向が一様でなくなるものと推定される。
その結果、入射角が光拡散入射角度領域内である場合には、入射光が第1の構造領域10によって拡散されると推定される(52´、54´)。
【0028】
なお、光拡散入射角度領域は、図2(a)〜(b)、図6(a)〜(b)および図7(a)〜(b)に示すように、光拡散フィルムにおけるルーバー構造やカラム構造の屈折率差や傾斜角等によって、その光拡散フィルムごとに決定される角度領域である。
また、ルーバー構造内の高屈折率の板状領域12内における入射光の方向変化は、図1(b)に示すような全反射により直線状にジグザグに方向変化するステップインデックス型となる場合のほか、曲線状に方向変化するグラディエントインデックス型となる場合も考えられる。
一方、第1の構造領域10に対する入射光の入射角が、光拡散入射角度領域から外れる場合には、入射光56は、第1の構造領域10によって拡散されることなく、そのまま第1の構造領域10を透過するものと推定される(56´)。
【0029】
以上の機構により、ルーバー構造13を備えた第1の構造領域10は、例えば、図2(a)〜(b)に示すように、光の透過と拡散において入射角度依存性を発揮することが可能となる。
また、図2(a)〜(b)に示すように、第1の構造領域は、入射光の入射角が光拡散入射角度領域に含まれる場合には、その入射角が異なる場合であっても、出光面側においてほぼ同様の光拡散をさせることができる。
したがって、第1の構造領域は、光を所定箇所に集中させる集光作用も有すると言うことができる。かかる集光作用は、後述する第2の構造領域、および本発明の光拡散フィルムにおいても同様に有する作用である。
【0030】
ここで、図3(a)を用いて、第1の構造領域に対する入射光の入射角と、第1の構造領域によって拡散された拡散光の開き角度との関係を説明する。
すなわち、図3(a)には、横軸に第1の構造領域に対する入射光の入射角(°)を採り、縦軸に第1の構造領域によって拡散された拡散光の開き角度(°)を採ってなる特性曲線が示してある。
また、図4(a)〜(c)に示すように、入射角θ1とは、第1の構造領域10に対して垂直に入射する角度を0°とした場合の角度(°)を意味する。
より具体的には、上述したように、異方性光拡散に寄与する入射光の成分は、主にフィルム面方向に延びるルーバー構造の向きに垂直な成分であることから、本発明において入射光の「入射角θ1」と言った場合、フィルム面方向に延びるルーバー構造の向きに垂直な成分の入射角を意味するものとする。また、このとき、入射角θ1は、光拡散フィルムの入射側表面の法線に対する角度を0°とした場合の角度(°)を意味するものとする。
また、拡散光の開き角度θ2とは、文字通り拡散光の開き角度(°)を意味する。
そして、拡散光の開き角度が大きい程、そのときの入射角にて入射した光が第1の構造領域によって有効に拡散したことを意味する。
逆に、拡散光の開き角度が小さい程、そのときの入射角にて入射した光が第1の構造領域をそのまま透過し、拡散しなかったことを意味する。
なお、かかる拡散光の開き角度の具体的な測定方法については、実施例において記載する。
【0031】
すなわち、図3(a)に示す特性曲線から理解されるように、第1の構造領域であれば、入射角の違いによって、光の透過と拡散の度合いが大きく異なり、光拡散入射角度領域と、それ以外の入射角度領域とを、明確に分離することができる。
一方、入射角度依存性を有さないフィルムの場合、図3(b)に示すように、入射角の変化が光の透過と拡散の度合いに対して明確な影響を与えることがなく、光拡散入射角度領域を認定することができない。
【0032】
(2)カラム構造による光拡散
また、図5(a)には、カラム構造領域のみを有し、入射光を等方性拡散させるための第2の構造領域20の上面図(平面図)が示してあり、図5(b)には、図5(a)に示す第2の構造領域20を、点線A−Aに沿って垂直方向に切断して、切断面を矢印方向から眺めた場合の第2の構造領域20の断面図が示してある。
なお、本発明において、等方性とは、図6(a)〜(b)に示すように、光がフィルムによって拡散された場合に、拡散された出射光におけるフィルムと平行な面内での、その光の拡散具合(拡散光の広がりの形状)が、同面内での方向によって変化しない性質を有することを意味する。
より具体的には、第2の構造領域20の場合、拡散された出射光の拡散具合は、フィルムと平行な面内において円状になる。
【0033】
ここで、図5(a)の平面図に示すように、第2の構造領域20は、屈折率が比較的高い柱状物22と、屈折率が比較的低い媒体物24とからなるカラム構造(22、24)を有している。
また、図5(b)の断面図に示すように、第2の構造領域20の垂直方向においては、屈折率が比較的高い柱状物22と、屈折率が比較的低い媒体物24は、それぞれ所定の幅を有して交互に配置された状態となっている。
これにより、図6(a)〜(b)に示すように、入射角が光拡散入射角度領域内である場合には、入射光が第2の構造領域20によって拡散されることになると推定される。
すなわち、図5(b)に示すように、第2の構造領域20に対する入射光の入射角が、カラム構造23の境界面23´に対し、平行から所定の角度範囲内の値、すなわち、光拡散入射角度領域内の値である場合には、入射光(62、64)は、カラム構造内の高屈折率の柱状物22内を、方向を変化させながら膜厚方向に沿って通り抜けることにより、出光面側での光の進行方向が一様でなくなるものと推定される。
その結果、入射角が光拡散入射角度領域内である場合には、入射光が第2の構造領域20によって拡散されると推定される(62´、64´)。
【0034】
また、カラム構造内の高屈折率の柱状物22内における入射光の方向変化は、図5(b)に示すような全反射により直線状にジグザグに方向変化するステップインデックス型となる場合のほか、曲線状に方向変化するグラディエントインデックス型となる場合も考えられる。
一方、第2の構造領域20に対する入射光の入射角が、光拡散入射角度領域から外れる場合には、入射光66は、第2の構造領域20によって拡散されることなく、そのまま第2の構造領域20を透過するものと推定される(66´)。
【0035】
以上の機構により、カラム構造23を備えた第2の構造領域20は、例えば、図6(a)〜(b)に示すように、光の透過と拡散において入射角度依存性を発揮することが可能となる。
なお、第2の構造領域に対する入射光の入射角と、第2の構造領域によって拡散された拡散光の開き角度との関係は、上述した第1の構造領域における場合と同様であるため、再度の説明を省略する。
【0036】
2.基本的構成
次いで、図面を用いて、本発明の光拡散フィルムの基本的構成について説明する。
図7(a)〜(b)に示すように、本発明の光拡散フィルム30は、入射光を異方性拡散させるためのルーバー構造領域(第1の構造領域)10と、入射光を等方性拡散させるためのカラム構造領域(第2の構造領域)20とを有することを特徴としており、好ましくは、これらの構造領域を、膜厚方向に沿って順次に上下方向に含む構成である。
したがって、本発明の光拡散フィルムであれば、例えば、図7(a)に示すように、第1および第2の構造領域が有する入射角度依存性を重複させることで、拡散特性のばらつきを抑制し、良好な入射角度依存性を得ることができるばかりか、拡散光の開き角度についても、効果的に広げることができる。
また、本発明の光拡散フィルムであれば、例えば、図7(b)に示すように、第1および第2の構造領域が有する入射角度依存性をずらすことで、光拡散入射角度領域を効果的かつ容易に広げることができる。
【0037】
3.第1の構造領域
本発明の光拡散フィルムは、入射光を異方性拡散させるための第1の構造領域として、屈折率が異なる複数の板状領域、すなわち、屈折率が相対的に高い板状領域(高屈折率部)および屈折率が相対的に低い板状領域(低屈折率部)が、フィルム面方向に沿って交互に平行配置してなるルーバー構造領域を有することを特徴とする。
以下、第1の構造領域について具体的に説明する。
【0038】
(1)屈折率
また、第1の構造領域において、屈折率が異なる板状領域間の屈折率の差、すなわち、高屈折率部の屈折率と、低屈折率部の屈折率との差を0.01以上の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる屈折率の差を0.01以上の値とすることにより、第1の構造領域としてのルーバー構造領域内において入射光を安定的に反射させて、第1の構造領域に由来した入射角度依存性および拡散光の開き角度をより向上させることができるためである。
より具体的には、かかる屈折率の差が0.01未満の値となると、入射光がルーバー構造内で全反射する角度域が狭くなることから、入射角度依存性が過度に低下したり、拡散光の開き角度が過度に狭くなったりする場合があるためである。
したがって、第1の構造領域における屈折率が異なる板状領域間の屈折率の差を0.05以上の値とすることがより好ましく、0.1以上の値であることがさらに好ましい。
なお、高屈折率部の屈折率と、低屈折率部の屈折率との差は大きい程好ましいが、ルーバー構造を形成可能な材料を選定する観点から、0.3程度が上限であると考えられる。
【0039】
また、第1の構造領域において、屈折率が相対的に高い板状領域(高屈折率部)の屈折率を1.5〜1.7の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、高屈折率部の屈折率が1.5未満の値となると、低屈折率部との差が小さくなり過ぎて、所望のルーバー構造を得ることが困難になる場合があるためである。
一方、高屈折率部の屈折率が1.7を超えた値となると、光拡散フィルム用組成物における材料物質間の相溶性が過度に低くなる場合があるためである。
したがって、第1の構造領域における高屈折率部の屈折率を1.52〜1.65の範囲内の値とすることがより好ましく、1.55〜1.6の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、高屈折率部の屈折率は、JIS K0062に準じて測定することができる。
【0040】
また、第1の構造領域において、屈折率が相対的に低い板状領域(低屈折率部)の屈折率を1.4〜1.5の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる低屈折率部の屈折率が1.4未満の値となると、得られる光拡散フィルムの剛性を低下させる場合があるためである。
一方、かかる低屈折率部の屈折率が1.5を超えた値となると、高屈折率部の屈折率との差が小さくなり過ぎて、所望のルーバー構造を得ることが困難になる場合があるためである。
したがって、第1の構造領域における低屈折率部の屈折率を1.42〜1.48の範囲内の値とすることがより好ましく、1.44〜1.46の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、低屈折率部における屈折率は、例えば、JIS K0062に準じて測定することができる。
【0041】
(2)幅
また、図8(a)〜(b)に示すように、第1の構造領域において、屈折率が異なる高屈折率部12および低屈折率部14の幅(S1、S2)を、それぞれ0.1〜15μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、これらの板状領域の幅を0.1〜15μmの範囲内の値とすることにより、第1の構造領域としてのルーバー構造領域内において入射光をより安定的に反射させて、第1の構造領域に由来した入射角度依存性および拡散光の開き角度をさらに向上させることができるためである。
すなわち、かかる板状領域の幅が0.1μm未満の値となると、入射光の入射角度にかかわらず、光拡散性を示すことが困難になる場合があるためである。一方、かかる幅が15μmを超えた値となると、ルーバー構造内を直進する光が増加し、光拡散の均一性が悪化する場合があるためである。
したがって、第1の構造領域において、屈折率が異なる板状領域の幅を、それぞれ0.5〜10μmの範囲内の値とすることがより好ましく、1〜5μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、ルーバーを構成する板状領域の幅や長さ等は、光学デジタル顕微鏡にて観察することにより算出することができる。
【0042】
(3)長さ
また、図8(a)〜(b)に示すように、第1の構造領域において、屈折率が異なる高屈折率部12および低屈折率部14の長さL1を、それぞれ5〜495μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる長さが5μm未満の値となると、ルーバー構造の長さが不足して、ルーバー構造内を直進してしまう入射光が増加し、十分な入射角度依存性および拡散光の開き角度を得ることが困難になる場合があるためである。
一方、かかる長さが495μmを超えた値となると、光拡散フィルム用組成物に対して活性エネルギー線を照射してルーバー構造を形成する際に、初期に形成されたルーバー構造によって光重合の進行方向が拡散してしまい、所望のルーバー構造を形成することが困難になる場合があるためである。
したがって、第1の構造領域において、かかる屈折率が異なる板状領域の長さを、それぞれ40〜310μmの範囲内の値とすることがより好ましく、95〜255μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、図8(b)に示すように、ルーバー構造は、第1の構造領域において膜厚方向における上下端部分にまでは形成されていなくてもよい。
この場合、ルーバー構造が形成されない上下端部分の幅L2は、第1の構造領域の厚さにもよるが、一般に、0〜100μmの範囲内の値であることが好ましく、0〜50μmの範囲内の値であることがより好ましく、0〜5μmの範囲内の値であることがさらに好ましい。
【0043】
(4)傾斜角
また、図8(a)〜(b)に示すように、第1の構造領域において、屈折率が異なる高屈折率部12および低屈折率部14が、膜厚方向に対して一定の傾斜角θaにて延在してなることが好ましい。
この理由は、板状領域の傾斜角を一定とすることにより、第1の構造領域としてのルーバー構造領域内において入射光をより安定的に反射させて、第1の構造領域に由来した入射角度依存性および拡散光の開き角度をさらに向上させることができるためである。
また、図8(c)に示すように、ルーバー構造が屈曲していることも好ましい。
この理由は、ルーバー構造が屈曲していることにより、ルーバー構造内を直進してしまう入射光を減少させて、光拡散の均一性を向上させることができるためである。
【0044】
なお、このような屈曲したルーバー構造は、第2の実施形態において記載する第1の活性エネルギー線照射を行う際に、照射光の照射角度を変化させながら光を照射することによって得ることができるが、ルーバー構造を形成する材料物質の種類にも大きく依存する。
また、θaはフィルム面方向に沿って延びるルーバー構造に対して垂直な面でフィルムを切断した場合の断面において測定されるフィルム表面の法線に対する角度を0°とした場合の板状領域の傾斜角(°)を意味する。
より具体的には、図8に示す通り、入射光照射側のフィルム面の法線と板状領域との為す角度のうち狭い側の角度を意味する。なお、図8(a)に示すとおりルーバーが右側に傾いているときの傾斜角を基準とし、ルーバーが左側に傾いているときの傾斜角をマイナスで表記する。
【0045】
(5)厚さ
また、第1の構造領域の厚さを5〜495μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、第1の構造領域の厚さをかかる範囲内の値とすることにより、膜厚方向に沿ったルーバー構造の長さを安定的に確保して、第1の構造領域としてのルーバー構造領域内において入射光をより安定的に反射させて、第1の構造領域に由来した入射角度依存性および拡散光の開き角度をさらに向上させることができるためである。
すなわち、かかる第1の構造領域の厚さが5μm未満の値となると、ルーバー構造の長さが不足して、ルーバー構造内を直進してしまう入射光が増加し、十分な入射角度依存性および拡散光の開き角度を得ることが困難になる場合があるためである。
一方、かかる第1の構造領域の厚さが495μmを超えた値となると、光拡散フィルム用組成物に対して活性エネルギー線を照射してルーバー構造を形成する際に、初期に形成されたルーバー構造によって光重合の進行方向が拡散してしまい、所望のルーバー構造を形成することが困難になる場合があるためである。
したがって、第1の構造領域の厚さを40〜310μmの範囲内の値とすることがより好ましく、95〜255μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0046】
(6)材料物質
(6)−1 高屈折率部
また、第1の構造領域において、屈折率が異なる板状領域のうち、屈折率が相対的に高い板状領域である高屈折率部を構成するための材料物質の種類は、特に限定されないが、その主成分を複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルの重合体とすることが好ましい。
この理由は、かかる材料物質であれば、第1の構造領域としてのルーバー構造を効率的に形成することができるばかりか、第1の構造領域に由来した入射角度依存性および拡散光の開き角度をさらに向上させることができるためである。
すなわち、高屈折率部の主成分(以下、(A1)成分と称する場合がある。)を特定の(メタ)アクリル酸エステルの重合体とすることにより、第1の構造領域を形成する際に、重合により(A1)成分となるモノマー成分(以下、モノマー(A1)成分と称する場合がある。)の重合速度を、重合により後述する屈折率が低い低屈折率部の主成分(以下、(B1)成分と称する場合がある。)となるモノマー成分(以下、モノマー(B1)成分と称する場合がある。)の重合速度よりも速くすることができると推定される。
そして、これらのモノマー成分間における重合速度に所定差を生じさせ、両モノマー成分同士が均一に共重合することを抑制し、より具体的には、両モノマー成分の相溶性を所定の範囲にまで低下させて、両モノマー成分同士の共重合性を効果的に低下させることができると推定される。
その結果、(A1)成分および(B1)成分がフィルム面内方向に沿って交互に延在したルーバー構造を、活性エネルギー線の照射により効率的に形成することができる。
また、モノマー(A1)成分として、特定の(メタ)アクリル酸エステルを用いることにより、モノマー(B1)成分との相溶性を所定の範囲にまで低下させて、ルーバー構造をさらに効率よく形成することができる。
さらに、(A1)成分として、特定の(メタ)アクリル酸エステルの重合体を含むことにより、ルーバー構造における(A1)成分に由来した板状領域の屈折率を高くして、(B1)成分に由来した板状領域の屈折率との差を、所定以上の値に調節することができる。
したがって、(A1)成分として、特定の(メタ)アクリル酸エステルの重合体を含むことにより、後述する(B1)成分の特性と相まって、屈折率が異なる硬化物がフィルム面内方向に沿って交互に延在したルーバー構造を効率的に得ることができる。
よって、光の透過と拡散において良好な入射角度依存性を有するとともに、光拡散入射角度領域が広い第1の構造領域を得ることができる。
なお、「複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステル」とは、(メタ)アクリル酸エステルのエステル部分に複数の芳香環を有する化合物を意味する。
また、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸とメタクリル酸の両方を意味する。
【0047】
また、このような(A1)成分を構成するモノマー(A1)成分としての複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ビフェニル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸アントラシル、(メタ)アクリル酸ベンジルフェニル、(メタ)アクリル酸ビフェニルオキシアルキル、(メタ)アクリル酸ナフチルオキシアルキル、(メタ)アクリル酸アントラシルオキシアルキル、(メタ)アクリル酸ベンジルフェニルオキシアルキル等、若しくは、これらの一部がハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロゲン化アルキル等によって置換されたもの等を挙げることができる。
【0048】
また、(A1)成分を構成するモノマー(A1)成分としての複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルとして、ビフェニル環を含有する化合物を含むことが好ましく、特に、下記一般式(1)で表わされるビフェニル化合物を含むことが好ましい。
【0049】
【化2】
【0050】
(一般式(1)中、R1〜R10は、それぞれ独立しており、R1〜R10の少なくとも1つは、下記一般式(2)で表わされる置換基であり、残りは、水素原子、水酸基、カルボキシル基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基およびハロゲン原子のいずれかの置換基である。)
【0051】
【化3】
【0052】
(一般式(2)中、R11は、水素原子またはメチル基であり、炭素数nは1〜4の整数であり、繰り返し数mは1〜10の整数である。)
【0053】
この理由は、(A1)成分を構成するモノマー(A1)成分として、特定の構造を有するビフェニル化合物を用いることにより、モノマー(A1)成分の重合速度を、モノマー(B1)成分の重合速度よりも、さらに速くすることができると推定されるためである。
また、モノマー(B1)成分との相溶性を所定の範囲にまで、より容易に低下させることができると推定され、かつ、ルーバー構造における(A1)成分に由来した板状領域の屈折率を高くして、(B1)成分に由来した板状領域の屈折率との差を、所定以上の値に、より容易に調節することができる。
さらに、光硬化させる前のモノマー段階で液状であり、希釈溶媒等を使用しなくとも、モノマー(B1)成分の代表例であるウレタン(メタ)アクリレートと均一に混合することができる。
【0054】
また、一般式(1)におけるR1〜R10が、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基、およびカルボキシアルキル基のいずれかを含む場合には、そのアルキル部分の炭素数を1〜4の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる炭素数が4を超えた値となると、モノマー(A1)成分の重合速度が低下したり、ルーバー構造における(A1)成分に由来した板状領域の屈折率が低くなり過ぎたりして、第1の構造領域における所定のルーバー構造を効率的に形成することが困難になる場合があるためである。
したがって、一般式(1)におけるR1〜R10が、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基、およびカルボキシアルキル基のいずれかを含む場合には、そのアルキル部分の炭素数を1〜3の範囲内の値とすることがより好ましく、1〜2の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0055】
また、一般式(1)におけるR1〜R10が、ハロゲン化アルキル基またはハロゲン原子以外の置換基、すなわち、ハロゲンを含まない置換基であることが好ましい。
この理由は、光拡散フィルムを焼却等する際に、ダイオキシンが発生することを防止して、環境保護の観点から好ましいためである。
なお、従来のルーバー構造を備えた異方性光拡散フィルムにおいては、所定のルーバー構造を得るにあたり、モノマー成分を高屈折率化する目的で、モノマー成分においてハロゲン置換が行われることが一般的であった。
この点、一般式(1)で表わされるビフェニル化合物であれば、ハロゲン置換を行わない場合であっても、高い屈折率とすることができる。
したがって、モノマー(A1)成分として一般式(1)で表わされるビフェニル化合物を用いることで、ハロゲンを含まない場合であっても、良好な入射角度依存性を発揮することができる。
【0056】
また、一般式(1)におけるR2〜R9のいずれか一つが、一般式(2)で表わされる置換基であることが好ましい。
この理由は、一般式(2)で表わされる置換基の位置を、ビフェニル環におけるR1およびR10以外の位置とすることにより、光硬化させる前の段階において、モノマー(A1)成分同士が配向し、結晶化することを効果的に防止することができる。
これにより、光硬化の段階において、モノマー(A1)成分およびモノマー(B1)成分の微細なレベルでの凝集・相分離を可能とし、所定のルーバー構造を備えた第1の構造領域を、より効率的に得ることができるためである。
さらに、同様の観点から、一般式(1)におけるR3、R5、R6およびR8のいずれか一つが、一般式(2)で表わされる置換基であることが特に好ましい。
【0057】
また、一般式(2)で表わされる置換基における繰り返し数mを、通常1〜10の整数とすることが好ましい。
この理由は、繰り返し数mが10を超えた値となると、重合部位と、ビフェニル環とをつなぐオキシアルキレン鎖が長くなり過ぎて、重合部位におけるモノマー(A1)成分同士の重合を阻害する場合があるためである。
したがって、一般式(2)で表わされる置換基における繰り返し数mを、1〜4の整数とすることがより好ましく、1〜2の整数とすることが特に好ましい。
なお、同様の観点から、一般式(2)で表わされる置換基における炭素数nを、通常1〜4の整数とすることが好ましい。
特に、重合部位である重合性炭素−炭素二重結合の位置が、ビフェニル環に対して近過ぎてビフェニル環が立体障害となり、モノマー(A1)成分の重合速度が低下するのを防止する観点から、一般式(2)で表わされる置換基における炭素数nを、2〜4の整数とすることがより好ましく、2〜3の整数とすることがさらに好ましい。
【0058】
また、一般式(1)で表わされるビフェニル化合物の具体例としては、下記式(3)〜(4)で表わされる化合物を挙げることができる。
【0059】
【化4】
【0060】
【化5】
【0061】
また、(A1)成分を構成するモノマー(A1)成分の重量平均分子量を、200〜2,500の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、モノマー(A1)成分の重量平均分子量を所定の範囲とすることにより、モノマー(A1)成分の重合速度をさらに速くして、モノマー(A1)成分およびモノマー(B1)成分の共重合性をより効果的に低下させることができると推定されるためである。
その結果、光硬化させた際に、(A1)成分および(B1)成分がフィルム面方向に沿って交互に延在したルーバー構造を、より効率的に形成することができる。
すなわち、モノマー(A1)成分の重量平均分子量が200未満の値となると、例えば、複数の芳香環の位置と重合性炭素−炭素二重結合の位置が近くなり過ぎて、立体障害により重合速度が低下して、モノマー(B1)成分の重合速度に近くなり、モノマー(B1)成分との共重合が生じ易くなる場合があるためである。一方、モノマー(A1)成分の重量平均分子量が2,500を超えた値となると、モノマー(A1)成分の重合速度が低下してモノマー(B1)成分の重合速度に近くなり、モノマー(B1)成分との共重合が生じ易くなる結果、ルーバー構造を効率よく形成することが困難になる場合があるためである。
したがって、モノマー(A1)成分の重量平均分子量を、240〜1,500の範囲内の値とすることがより好ましく、260〜1,000の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、モノマー(A1)成分の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することもできるし、あるいは、構成原子の原子量をもとに、構造式から算出することもできる。
【0062】
また、ルーバー構造における屈折率の高い板状領域を形成するモノマー(A1)成分を単一とすることが好ましい。
この理由は、このように構成することにより、ルーバー構造における(A1)成分に由来した板状領域、つまり屈折率の高い板状領域における屈折率のばらつきを効果的に抑制して、所定のルーバー構造を備えた第1の構造領域を、より効率的に得ることができるためである。
すなわち、モノマー(A1)成分が、モノマー(B1)成分に対する相溶性が低い場合、例えば、モノマー(A1)成分がハロゲン系化合物等の場合、モノマー(A1)成分をモノマー(B1)成分に相溶させるための第3成分として、他のモノマー(A1)成分(例えば、非ハロゲン系化合物等)を併用する場合がある。
しかしながら、この場合、かかる第3成分の影響により、(A1)成分に由来した屈折率の高い板状領域における屈折率がばらついたり、低下する場合がある。
その結果、(B1)成分に由来した屈折率の低い板状領域との屈折率差が不均一になったり、過度に低下し易くなったりする場合がある。
したがって、モノマー(B1)成分との相溶性を有する高屈折率なモノマー成分を選択し、それを単一のモノマー(A1)成分として用いることが好ましい。
なお、例えば、モノマー(A1)成分としての式(3)〜(4)で表わされるビフェニル化合物であれば、モノマー(B1)成分との相溶性を有するため、単一のモノマー(A1)成分として使用することができる。
【0063】
(6)−2 低屈折率部
また、第1の構造領域において、屈折率が異なる板状領域のうち、屈折率が低い板状領域である低屈折率部を構成するための材料物質の種類は、特に限定されないが、その主成分をウレタン(メタ)アクリレートの重合体とすることが好ましい。
この理由は、かかる材料物質であれば、第1の構造領域としてのルーバー構造を効率的に形成することができるばかりか、第1の構造領域に由来した入射角度依存性および拡散光の開き角度をさらに向上させることができるためである。
すなわち、低屈折率部の主成分((B1)成分)をウレタン(メタ)アクリレートの重合体とすることにより、(A1)成分に由来した板状領域の屈折率と、(B1)成分に由来した板状領域の屈折率との差を、より容易に調節できるばかりか、(B1)成分に由来した板状領域の屈折率のばらつきを有効に抑制し、所定のルーバー構造を備えた第1の構造領域をより効率的に得ることができるためである。
なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタクリレートの両方を意味する。
【0064】
まず、(B1)成分を構成するモノマー(B1)成分としてのウレタン(メタ)アクリレートは、(a)イソシアナート基を少なくとも2つ含有する化合物、(b)ポリアルキレングリコール、および(c)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートから形成される。
このうち、(a)成分であるイソシアナート基を少なくとも2つ含有する化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、1,3−キシリレンジイソシアナート、1,4−キシリレンジイソシアナート等の芳香族ポリイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート等の脂肪族ポリイソシアナート、イソホロンジイソシアナート(IPDI)、水素添加ジフェニルメタンジイソシアナート等の脂環式ポリイソシアナート、およびこれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体(例えば、キシリレンジイソシアナート系3官能アダクト体)等を挙げることができる。
【0065】
また、上述した中でも、脂環式ポリイソシアナートであることが好ましい。
この理由は、脂環式ポリイソシアナートであれば、立体配座等の関係により、脂肪族ポリイソシアナートと比較して、各イソシアナート基の反応速度に差を設けやすく、得られるウレタン(メタ)アクリレートの分子設計が容易になるためである。
また、特に、(a)成分が脂環式ジイソシアナートであることが好ましい。
この理由は、脂環式ジイソシアナートであれば、例えば、(a)成分が(b)成分とのみ反応したり、(a)成分が(c)成分とのみ反応したりすることを抑制して、(a)成分を、(b)成分および(c)成分と確実に反応させることができ、余分な副生成物の発生を防止することができるためである。
その結果、第1の構造領域における(B1)成分に由来した板状領域、すなわち、低屈折率の板状領域における屈折率のばらつきを効果的に抑制することができる。
【0066】
また、脂環式ジイソシアナートであれば、芳香族ジイソシアナートと比較して、得られるモノマー(B1)成分と、モノマー(A1)成分としての代表例である特定の構造を有するビフェニル化合物との相溶性を所定の範囲に低下させて、ルーバー構造をより効率よく形成することができる。
さらに、脂環式ジイソシアナートであれば、芳香族ジイソシアナートと比較して、得られるモノマー(B1)成分の屈折率を小さくすることができることから、モノマー(A1)成分の代表例である特定の構造を有するビフェニル化合物の屈折率との差を大きくし、入射角度依存性に優れたルーバー構造をさらに効率よく形成することができる。
また、このような脂環式ジイソシアナートの中でも、2つのイソシアナート基の反応性の差が大きいことから、イソホロンジイソシアナート(IPDI)であることが、特に好ましい。
【0067】
また、モノマー(B1)成分としてのウレタン(メタ)アクリレートを形成する成分のうち、(b)成分であるポリアルキレングリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリヘキシレングリコール等が挙げられ、中でも、ポリプロピレングリコールであることが、特に好ましい。
この理由は、ポリプロピレングリコールであれば、粘度が低いことから無溶剤で取り扱うことができるためである。
また、ポリプロピレングリコールであれば、モノマー(B1)成分を硬化させた際に、当該硬化物における良好なソフトセグメントとなり、光拡散フィルムのハンドリング性や実装性を、効果的に向上させることができるためである。
なお、モノマー(B1)成分の重量平均分子量は、(b)成分の重量平均分子量により調節することができる。ここで、(b)成分の重量平均分子量は、通常、2,300〜19,500であり、好ましくは4,300〜14,300であり、特に好ましくは6,300〜12,300である。
【0068】
また、モノマー(B1)成分としてのウレタン(メタ)アクリレートを形成する成分のうち、(c)成分であるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、得られるウレタン(メタ)アクリレートの重合速度を低下させ、所定のルーバー構造をより効率的に形成する観点から、特に、ヒドロキシアルキルメタクリレートであることがより好ましく、2−ヒドロキシエチルメタクリレートであることがさらに好ましい。
【0069】
また、(a)〜(c)成分によるウレタン(メタ)アクリレートの合成は、常法に従って実施することができる。
このとき(a)〜(c)成分の配合割合を、モル比にて(a)成分:(b)成分:(c)成分=1〜5:1:1〜5の割合とすることが好ましい。
この理由は、かかる配合割合とすることにより、(b)成分の有する2つの水酸基に対してそれぞれ(a)成分の有する一方のイソシアナート基が反応して結合し、さらに、2つの(a)成分がそれぞれ有するもう一方のイソシアナート基に対して、(c)成分の有する水酸基が反応して結合したウレタン(メタ)アクリレートを効率的に合成することができるためである。
したがって、(a)〜(c)成分の配合割合を、モル比にて(a)成分:(b)成分:(c)成分=1〜3:1:1〜3の割合とすることがより好ましく、2:1:2の割合とすることがさらに好ましい。
【0070】
また、(B1)成分を構成するモノマー(B1)成分の重量平均分子量を、3,000〜20,000の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、モノマー(B1)成分の重量平均分子量を所定の範囲とすることにより、モノマー(A1)成分およびモノマー(B1)成分の重合速度に所定の差を生じさせ、両成分の共重合性を効果的に低下させることができるものと推定されるためである。
その結果、光硬化させた際に、(A1)成分および(B1)成分が交互に延在したルーバー構造を効率よく形成することができる。
すなわち、モノマー(B1)成分の重量平均分子量が3,000未満の値となると、モノマー(B1)成分の重合速度が速くなって、モノマー(A1)成分の重合速度に近くなり、モノマー(A1)成分との共重合が生じ易くなる結果、ルーバー構造を効率よく形成することが困難になる場合があるためである。一方、モノマー(B1)成分の重量平均分子量が20,000を超えた値となると、(A1)成分および(B1)成分がフィルム面方向に交互に延在したルーバー構造を形成することが困難になったり、モノマー(A1)成分との相溶性が過度に低下して、光拡散フィルム用組成物の塗布段階でモノマー(A1)成分が析出する場合があるためである。
したがって、モノマー(B1)成分の重量平均分子量を、5,000〜15,000の範囲内の値とすることがより好ましく、7,000〜13,000の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、モノマー(B1)成分の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することもできるし、あるいは、構成原子の原子量をもとに、構造式から算出することもできる。
【0071】
また、モノマー(B1)成分は、分子構造や重量平均分子量が異なる2種以上を併用してもよいが、ルーバー構造における(B1)成分に由来した板状領域の屈折率のばらつきを抑制する観点からは、1種類のみを用いることが好ましい。
すなわち、モノマー(B1)成分を複数用いた場合、(B1)成分に由来した屈折率の低い板状領域における屈折率がばらついたり、高くなったりして、(A1)成分に由来した屈折率の高い板状領域との屈折率差が不均一になったり、過度に低下する場合があるためである。
【0072】
4.第2の構造領域
本発明の光拡散フィルムは、入射光を等方性拡散させるための第2の構造領域として、媒体物中に当該媒体物とは屈折率が異なる複数の柱状物が林立してなるカラム構造領域を有することを特徴とする。
以下、第2の構造領域について、具体的に説明する。
【0073】
(1)屈折率
また、第2の構造領域において、柱状物の屈折率と、媒体物の屈折率との差を0.01以上の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる屈折率の差を0.01以上の値とすることにより、第2の構造領域としてのカラム構造領域内において入射光を安定的に反射させて、第2の構造領域に由来した入射角度依存性および拡散光の開き角度をより向上させることができるためである。
すなわち、かかる屈折率の差が0.01未満の値となると、入射光がカラム構造内で全反射する角度域が狭くなることから、入射角度依存性が過度に低下したり、拡散光の開き角度が過度に狭くなったりする場合があるためである。
したがって、第2の構造領域における柱状物の屈折率と、媒体物の屈折率との差を0.05以上の値とすることがより好ましく、0.1以上の値とすることがさらに好ましい。
なお、屈折率の差は大きい程好ましいが、カラム構造を形成可能な材料を選定する観点から、0.3程度が上限であると考えられる。
【0074】
(2)最大径
また、図9(a)に示すように、第2の構造領域において、柱状物の断面における最大径S3を0.1〜15μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる最大径を0.1〜15μmの範囲内の値とすることにより、第2の構造領域としてのカラム構造領域内において入射光をより安定的に反射させて、第2の構造領域に由来した入射角度依存性および拡散光の開き角度をさらに向上させることができるためである。
すなわち、かかる最大径が0.1μm未満の値となると、入射光の入射角度にかかわらず、光拡散性を示すことが困難になる場合があるためである。一方、かかる最大径が15μmを超えた値となると、カラム構造内を直進する光が増加し、光拡散の均一性が悪化する場合があるためである。
したがって、第2の構造領域において、柱状物の断面における最大径を0.5〜10μmの範囲内の値とすることがより好ましく、1〜5μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、柱状物の断面形状については、特に限定されるものではないが、例えば、円、楕円、多角形、異形等とすることが好ましい。
また、柱状物の断面とは、フィルム表面と平行な面によって切断された断面を意味する。
なお、柱状物の最大径や長さ等は、光学デジタル顕微鏡にて観察することにより算出することができる。
【0075】
(3)長さ
また、第2の構造領域において、柱状物の長さL3を5〜495μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる長さが5μm未満の値となると、柱状物の長さが不足して、カラム構造内を直進してしまう入射光が増加し、十分な入射角度依存性および拡散光の開き角度を得ることが困難になる場合があるためである。
一方、かかる長さが495μmを超えた値となると、光拡散フィルム用組成物に対して活性エネルギー線を照射してカラム構造を形成する際に、初期に形成されたカラム構造によって光重合の進行方向が拡散してしまい、所望のカラム構造を形成することが困難になる場合があるためである。
したがって、第2の構造領域において、柱状物の長さを40〜310μmの範囲内の値とすることがより好ましく、95〜255μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、図9(c)に示すように、カラム構造は、第2の構造領域において膜厚方向における上下端部分にまで形成されていなくてもよい。
この場合、カラム構造が形成されない上下端部分の幅L4は、第2の構造領域の厚さにもよるが、一般に、0〜50μmの範囲内の値であることが好ましく、0〜5μmの範囲内の値であることがさらに好ましい。
【0076】
(4)柱状物間の距離
また、図9(a)に示すように、第2の構造領域において、柱状物間における距離、すなわち、隣接する柱状物におけるスペースPを0.1〜15μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる距離を0.1〜15μmの範囲内の値とすることにより、第2の構造領域としてのカラム構造領域内において入射光をより安定的に反射させて、第2の構造領域に由来した入射角度依存性および拡散光の開き角度をさらに向上させることができるためである。
すなわち、かかる距離が0.1μm未満の値となると、入射光の入射角度にかかわらず、光拡散性を示すことが困難になる場合があるためである。一方、かかる距離が15μmを超えた値となると、カラム構造内を直進する光が増加し、光拡散の均一性が悪化する場合があるためである。
したがって、第2の構造領域において、柱状物間における距離を0.5〜10μmの範囲内の値とすることがより好ましく、1〜5μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0077】
(5)傾斜角
また、図9(b)〜(c)に示すように、第2の構造領域において、柱状物22が膜厚方向に対して一定の傾斜角θbにて林立してなることが好ましい。
この理由は、柱状物の傾斜角を一定とすることにより、第2の構造領域としてのカラム構造領域内において入射光をより安定的に反射させて、第2の構造領域に由来した入射角度依存性および拡散光の開き角度をさらに向上させることができるためである。
また、図9(d)に示すように、柱状物が屈曲していることも好ましい。
この理由は、柱状物が屈曲していることにより、カラム構造内を直進してしまう入射光を減少させて、光拡散の均一性を向上させることができるためである。
なお、このような屈曲した柱状物は、第2の実施形態において記載する第2の活性エネルギー線照射を行う際に、照射光の照射角度を変化させながら光を照射することによって得ることができるが、カラム構造を形成する材料物質の種類にも大きく依存する。
また、θbはフィルム面に垂直な面であって、1本の柱状物全体を軸線に沿って2つに切断する面によってフィルムを切断した場合の断面において測定されるフィルム表面の法線に対する角度を0°とした場合の柱状物の傾斜角(°)(該法線と柱状物の為す角度のうち狭い側の角度)を意味する。なお、図9(b)に示すとおりカラムが右側に傾いているときの傾斜角を基準とし、カラムが左側に傾いているときの傾斜角をマイナスで表記する。
【0078】
(6)厚さ
また、第2の構造領域の厚さを5〜495μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、第2の構造領域の厚さをかかる範囲内の値とすることにより、膜厚方向に沿った柱状物の長さを安定的に確保して、第2の構造領域としてのカラム構造領域内において入射光をより安定的に反射させて、第2の構造領域に由来した入射角度依存性および拡散光の開き角度をさらに向上させることができるためである。
すなわち、かかる厚さが5μm未満の値となると、柱状物の長さが不足して、カラム構造内を直進してしまう入射光が増加し、十分な入射角度依存性および拡散光の開き角度を得ることが困難になる場合があるためである。一方、かかる厚さが495μmを超えた値となると、光拡散フィルム用組成物に対して活性エネルギー線を照射してカラム構造を形成する際に、初期に形成されたカラム構造によって光重合の進行方向が拡散してしまい、所望のカラム構造を形成することが困難になる場合があるためである。
したがって、第2の構造領域の厚さを40〜310μmの範囲内の値とすることがより好ましく、95〜255μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0079】
(7)材料物質
(7)−1 柱状物
また、第2の構造領域において、柱状物を構成する材料物質の種類は、特に限定されないが、その主成分を複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルの重合体とすることが好ましい。
この理由は、かかる材料物質であれば、第2の構造領域としてのカラム構造を効率的に形成することができるばかりか、第2の構造領域に由来した入射角度依存性および拡散光の開き角度をさらに向上させることができるためである。
すなわち、柱状物の主成分(以下、(A2)成分と称する場合がある。)を特定の(メタ)アクリル酸エステルの重合体とすることにより、第2の構造領域を形成する際に、重合により(A2)成分となるモノマー成分(以下、モノマー(A2)成分と称する場合がある。)の重合速度を、重合により後述する媒体物の主成分(以下、(B2)成分と称する場合がある。)となるモノマー成分(以下、モノマー(B2)成分と称する場合がある。)の重合速度よりも速くして、これらのモノマー成分間における重合速度に所定差を生じさせ、両モノマー成分の共重合性を効果的に低下させることができると推定される。
その結果、(B2)成分からなる媒体物中に(A2)成分からなる柱状物が林立したカラム構造を、活性エネルギー線の照射により効率的に形成することができる。
また、モノマー(A2)成分として、特定の(メタ)アクリル酸エステルを用いることにより、モノマー(B2)成分との相溶性を所定の範囲にまで低下させて、カラム構造をさらに効率よく形成することができるものと推定される。
さらに、モノマー(A2)成分として、特定の(メタ)アクリル酸エステルを用いることにより、カラム構造における(A2)成分に由来した柱状物の屈折率を高くして、(B2)成分に由来した媒体物の屈折率との差を、所定以上の値に調節することができる。
したがって、(A2)成分として、特定の(メタ)アクリル酸エステルの重合体を含むことにより、後述する(B2)成分の特性と相まって、(B2)成分からなる媒体物中に(A2)成分からなる柱状物が林立したカラム構造を効率的に得ることができる。
よって、光の透過と拡散において良好な入射角度依存性を有するとともに、光拡散入射角度領域が広い第2の構造領域を得ることができる。
なお、(A2)成分を構成するモノマー(A2)成分としての複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルの詳細については、第1の構造領域におけるモノマー(A1)成分の内容と重複するため、省略する。
【0080】
(7)−2 媒体物
また、第2の構造領域において、媒体物を構成する材料物質の種類は、特に限定されないが、その主成分をウレタン(メタ)アクリレートの重合体とすることが好ましい。
この理由は、かかる材料物質であれば、第2の構造領域としてのカラム構造を効率的に形成することができるばかりか、第2の構造領域に由来した入射角度依存性および拡散光の開き角度をさらに向上させることができるためである。
すなわち、媒体物の主成分((B2)成分)をウレタン(メタ)アクリレートの重合体とすることにより、(A2)成分に由来した柱状物の屈折率と、(B2)成分に由来した媒体物の屈折率との差を、より容易に調節できるばかりか、(B2)成分に由来した媒体物の屈折率のばらつきを有効に抑制し、所定のカラム構造を備えた第2の構造領域をより効率的に得ることができるためである。
なお、(B2)成分を構成するモノマー(B2)成分としてのウレタン(メタ)アクリレートの詳細については、第1の構造領域におけるモノマー(B1)成分の内容と重複するため、省略する。
【0081】
5.総膜厚
また、本発明の光拡散フィルムの総膜厚を50〜500μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、光拡散フィルムの総膜厚が50μm未満の値となると、カラム構造およびルーバー構造内を直進する光が増加し、光拡散性を示すことが困難になる場合があるためである。一方、光拡散フィルムの総膜厚が500μmを超えた値となると、光拡散フィルム用組成物に対して活性エネルギー線を照射してカラム構造およびルーバー構造を形成する際に、初期に形成されたカラム構造およびルーバー構造によって光重合の進行方向が拡散してしまい、所望のカラム構造およびルーバー構造を形成することが困難になる場合があるためである。
したがって、光拡散フィルムの総膜厚を80〜350μmの範囲内の値とすることがより好ましく、100〜260μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、本発明の光拡散フィルムは、単一のフィルム中に第1および第2の構造領域を有する構成であってもよいし、第1の構造領域のみを有するフィルムと、第2の構造領域のみを有するフィルムとを積層させた構成であってもよい。
特に、第1および第2の構造領域を積層する際に、その間に気泡混入等が生じることを根本的に抑制できることから、両構造が単一のフィルム内に形成されている構成がより好ましい。
また、第1の構造領域と、第2の構造領域は、光拡散フィルムの膜厚方向に沿って順次に、上下方向に設けてあれば良く、その順番や数については特に制限されるものではない。
【0082】
6.傾斜角度の組み合わせ
また、本発明の光拡散フィルムであれば、第1の構造領域における膜厚方向に対する板状領域の傾斜角度θaと、第2の構造領域における膜厚方向に対する柱状物の傾斜角度θbとを、それぞれ調節することにより、その光拡散特性を変化させることができる。
例えば、それぞれの構造領域が有する入射角度依存性を重複させることで、拡散特性のばらつきを抑制、良好な入射角度依存性を得ることができるばかりか、拡散光の開き角度についても、効果的に広げることができる。
この場合、第1の構造領域において、膜厚方向に対する板状領域の傾斜角度θaを−80〜80°の範囲内の値とするとともに、第2の構造領域において、膜厚方向に対する柱状物の傾斜角度θbを−80〜80°の範囲内の値とし、かつ、θa−θbの絶対値を0〜80°の範囲内の値とすることが好ましく、θa−θbの絶対値を5〜20°の範囲内の値とすることがより好ましい。
なお、ここでのθaおよびθbの内容は、既に説明した通りである。
【0083】
また、それぞれの構造領域が有する入射角度依存性をずらすことで、光拡散入射角度領域を効果的かつ容易に広げることができる。
この場合、第1の構造領域において、膜厚方向に対する板状領域の傾斜角度θaを−80〜80°の範囲内の値とするとともに、第2の構造領域において、膜厚方向に対する柱状物の傾斜角度θbを−80〜80°の範囲内の値とし、かつθa−θbの絶対値を5〜60°の範囲内の値とすることが好ましく、θa−θbの絶対値を20〜45°の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0084】
7.用途
また、図10に示すように、本発明の光拡散フィルムを、反射型液晶表示装置100に用いることが好ましい。
この理由は、本発明の光拡散フィルムであれば、外光を集光し効率的に透過させて液晶表示装置の内部に取り込み、かつ、その光を光源として利用できるように、効率的に拡散させることができるためである。
したがって、本発明の光拡散フィルムは、ガラス板(104、108)および液晶106、並びに、鏡面反射板107等からなる液晶セル110の上面、あるいは下面に配置して、反射型液晶表示装置100における光拡散板103として使用することが好ましい。
なお、本発明の光拡散フィルムは、偏光板101や位相差板102に提供することで、広視野角偏光板や広視野位相差板を得ることもできる。
【0085】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態は、入射光を異方性拡散させるための第1の構造領域と、入射光を等方性拡散させるための第2の構造領域とを有する光拡散フィルムの製造方法であって、下記工程(a)〜(d)を含むことを特徴とする光拡散フィルムの製造方法である。
(a)光拡散フィルム用組成物を準備する工程
(b)光拡散フィルム用組成物を工程シートに対して塗布し、塗布層を形成する工程
(c)塗布層に対して第1の活性エネルギー線照射を行い、塗布層の下方部分に第1の構造領域としての屈折率が異なる複数の板状領域をフィルム面方向に沿って交互に平行配置してなるルーバー構造領域を形成するとともに、塗布層の上方部分にルーバー構造未形成領域を残す工程
(d)塗布層に対して、さらに第2の活性エネルギー線照射を行い、ルーバー構造未形成領域に第2の構造領域としての媒体物中に当該媒体物とは屈折率が異なる複数の柱状物を林立させてなるカラム状構造領域を形成する工程
以下、本発明の第2の実施形態である光拡散フィルムの製造方法につき、第1の実施形態と異なる点を中心に、図面を参照しつつ、具体的に説明する。
【0086】
1.工程(a):光拡散フィルム用組成物の準備工程
工程(a)は、光拡散フィルム用組成物を準備する工程である。
より具体的には、モノマー(A)成分およびモノマー(B)成分を40〜80℃の高温条件下にて撹拌して、均一な混合液とすることが好ましい。
また、これと同時に、混合液に対し、所望により後述する(C)成分等その他の添加剤を添加した後、均一になるまで撹拌しつつ、所望の粘度となるように、必要に応じて希釈溶剤をさらに加えることにより、光拡散フィルム用組成物の溶液を得ることが好ましい。
なお、モノマー(A)成分は、重合することにより、第1および第2の構造領域における高屈折率部を構成する(A)成分になるモノマー成分であり、モノマー(B)成分は、重合することにより、第1および第2の構造領域における低屈折率部を構成する(B)成分になるモノマー成分である。
また、モノマー(A)成分およびモノマー(B)成分の種類についての詳細は、第1の実施形態においてモノマー(A1)および(A2)、並びに、(B1)および(B2)成分として、それぞれ記載した通りであるため、省略する。
【0087】
(1)モノマー(A)成分の屈折率
また、モノマー(A)成分の屈折率を1.5〜1.65の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、モノマー(A)成分の屈折率をかかる範囲内の値とすることにより、ルーバー構造およびカラム構造における(A)成分に由来した部分と、(B)成分に由来した部分の屈折率との差を、より容易に調節して、所定のルーバー構造およびカラム構造を備えた光拡散フィルムを、より効率的に得ることができるためである。
すなわち、モノマー(A)成分の屈折率が1.5未満の値となると、モノマー(B)成分の屈折率との差が小さくなり過ぎて、所望の入射角度依存性を得ることが困難になる場合があるためである。一方、モノマー(A)成分の屈折率が1.65を超えた値となると、モノマー(B)成分の屈折率との差は大きくなるものの、粘度が過度に低下して、モノマー(B)成分との相溶が困難になる場合があるためである。
したがって、(A)成分の屈折率を、1.55〜1.6の範囲内の値とすることがより好ましく、1.56〜1.59の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、上述したモノマー(A)成分の屈折率とは、光照射により硬化する前のモノマー(A)成分の屈折率を意味する。
そして、モノマー(A)成分の屈折率は、例えば、JIS K0062に準じて測定することができる。
【0088】
(2)モノマー(A)成分の含有量
また、モノマー(A)成分の含有量を、後述するモノマー(B)成分100重量部に対して、25〜400重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、モノマー(A)成分の含有量をかかる範囲内の値とすることにより、モノマー(B)成分との混合性を維持しつつも、光照射した場合には、両成分の共重合性を効果的に低下させ、所定のルーバー構造およびカラム構造を効率的に形成することができるためである。
すなわち、モノマー(A)成分の含有量が25重量部未満の値となると、モノマー(B)成分に対する(A)成分の存在割合が少なくなって、ルーバー構造およびカラム構造における(A)成分に由来した部分の幅等が、(B)成分に由来した部分の幅等と比較して過度に小さくなり、良好な入射角度依存性を有するルーバー構造およびカラム構造を得ることが困難になる場合があるためである。また、光拡散フィルムの厚さ方向におけるルーバーや柱状物の長さが不十分になる場合があるためである。一方、モノマー(A)成分の含有量が400重量部を超えた値となると、モノマー(B)成分に対するモノマー(A)成分の存在割合が多くなって、ルーバー構造およびカラム構造における(A)成分に由来した部分の幅等が、(B)成分に由来した部分の幅等と比較して過度に大きくなり、逆に、良好な入射角度依存性を有するルーバー構造およびカラム構造を得ることが困難になる場合があるためである。また、光拡散フィルムの厚さ方向におけるルーバーや柱状物の長さが不十分になる場合があるためである。
したがって、モノマー(A)成分の含有量を、モノマー(B)成分100重量部に対して、40〜300重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、50〜200重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0089】
(3)モノマー(B)成分の屈折率
また、モノマー(B)成分の屈折率を1.4〜1.5の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、モノマー(B)成分の屈折率をかかる範囲内の値とすることにより、ルーバー構造およびカラム構造における(A)成分に由来した部分と、(B)成分に由来した部分の屈折率との差を、より容易に調節して、所定のルーバー構造およびカラム構造を備えた光拡散フィルムを、より効率的に得ることができるためである。
すなわち、モノマー(B)成分の屈折率が1.4未満の値となると、モノマー(A)成分の屈折率との差は大きくなるものの、モノマー(A)成分との相溶性が極端に悪化し、ルーバー構造およびカラム構造を形成することが困難になる場合があるためである。一方、モノマー(B)成分の屈折率が1.5を超えた値となると、モノマー(A)成分の屈折率との差が小さくなり過ぎて、所望の入射角度依存性を得ることが困難になる場合があるためである。
したがって、モノマー(B)成分の屈折率を、1.45〜1.49の範囲内の値とすることがより好ましく、1.46〜1.48の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、上述したモノマー(B)成分の屈折率とは、光照射により硬化する前のモノマー(B)成分の屈折率を意味する。
そして、モノマー(B)成分の屈折率についても、例えば、JIS K0062に準じて測定することができる。
【0090】
(4)モノマー(B)成分の含有量
また、モノマー(B)成分の含有量を、光拡散フィルム用組成物の全体量(100重量%)に対して、20〜80重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、モノマー(B)成分の含有量が20重量%未満の値となると、モノマー(A)成分に対するモノマー(B)成分の存在割合が少なくなって、ルーバー構造およびカラム構造における(B)成分に由来した部分の幅等が、(A)成分に由来した部分の幅等と比較して過度に小さくなり、良好な入射角度依存性を有するルーバー構造およびカラム構造を得ることが困難になる場合があるためである。また、光拡散フィルムの厚さ方向におけるルーバーや柱状物の長さが不十分になる場合があるためである。
一方、モノマー(B)成分の含有量が80重量%を超えた値となると、モノマー(A)成分に対するモノマー(B)成分の存在割合が多くなって、ルーバー構造およびカラム構造における(B)成分に由来した部分の幅等が、(A)成分に由来した部分の幅等と比較して過度に大きくなり、逆に、良好な入射角度依存性を有するルーバー構造およびカラム構造を得ることが困難になる場合があるためである。また、光拡散フィルムの厚さ方向におけるルーバーや柱状物の長さが不十分になる場合があるためである。
したがって、モノマー(B)成分の含有量を、光拡散フィルム用組成物の全体量に対して、30〜70重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、40〜60重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0091】
(5)光重合開始剤
また、本発明の光拡散フィルム用組成物においては、所望により、(C)成分として、光重合開始剤を含有させることが好ましい。
この理由は、光重合開始剤を含有させることにより、光拡散フィルム用組成物に対して活性エネルギー線を照射した際に、効率的に所定のルーバー構造およびカラム構造を形成することができるためである。
ここで、光重合開始剤とは、紫外線等の活性エネルギー線の照射により、ラジカル種を発生させる化合物をいう。
【0092】
かかる光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2−(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミン安息香酸エステル、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパン等が挙げられ、これらのうち1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、光重合開始剤を含有させる場合の含有量としては、モノマー(A)成分およびモノマー(B)成分の合計量100重量%に対し、0.2〜20重量%の範囲内の値とすることが好ましく、0.5〜15重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、1〜10重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0093】
(6)その他の添加剤
また、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜、その他の添加剤を添加することができる。
その他の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、重合促進剤、重合禁止剤、赤外線吸収剤、可塑剤、希釈溶剤、およびレベリング剤等が挙げられる。
なお、その他の添加剤の含有量は、一般に、モノマー(A)成分およびモノマー(B)成分の合計量100重量%に対して、0.01〜5重量%の範囲内の値とすることが好ましく、0.02〜3重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、0.05〜2重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0094】
2.工程(b):塗布工程
工程(b)は、図11(a)に示すように、準備した光拡散フィルム用組成物を、工程シート2に対して塗布して塗布層1を形成する工程である。
工程シートとしては、プラスチックフィルム、紙のいずれも使用することができる。
このうち、プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル系フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィン系フィルム、トリアセチルセルロースフィルム等のセルロース系フィルム、およびポリイミド系フィルム等が挙げられる。
また、紙としては、例えば、グラシン紙、コート紙、およびラミネート紙等が挙げられる。
【0095】
また、工程シートに対しては、光硬化後に、得られた光拡散フィルムを工程シートから剥離し易くするために、工程シートにおける光拡散フィルム用組成物の塗布面側に、剥離層を設けることが好ましい。
かかる剥離層は、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、アルキッド系剥離剤、オレフィン系剥離剤等、従来公知の剥離剤を用いて形成することができる。
なお、工程シートの厚さは、通常、25〜200μmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0096】
また、工程シート上に光拡散フィルム用組成物を塗布する方法としては、例えば、ナイフコート法、ロールコート法、バーコート法、ブレードコート法、ダイコート法、およびグラビアコート法等、従来公知の方法により行うことができる。
なお、このとき、塗布層の厚さを、100〜700μmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0097】
3.工程(c):第1の活性エネルギー線照射工程
工程(c)は、塗布層に対して第1の活性エネルギー線照射を行い、塗布層の下方部分に第1の構造領域としての屈折率が異なる複数の板状領域がフィルム面方向に沿って交互に平行配置してなるルーバー構造領域を形成するとともに、塗布層の上方部分にルーバー構造未形成領域を残す工程である。
すなわち、図11(b)に示すように、工程シート2の上に形成された塗布層1に対し、照射角度の制御された直接光のみからなる活性エネルギー線50を照射する。
より具体的には、例えば、図12(a)に示すように、線状の紫外線ランプ125に集光用のコールドミラー122が設けられた紫外線照射装置120(例えば、市販品であれば、アイグラフィックス(株)製、ECS−4011GX等)に、熱線カットフィルター121および遮光板123を配置することにより、照射角度の制御された直接光のみからなる活性エネルギー線50を取り出し、工程シート2の上に形成された塗布層1に対し、照射する。
なお、線状の紫外線ランプは、塗布層1を有する工程シート2の長手方向と直行する方向を基準(0°)として、通常−80〜80°の範囲内の値、好ましくは−50〜50°の範囲内の値、特に好ましくは−30〜30°の範囲内の値になるように設置される。
ここで、線状光源を用いる理由は、屈折率が異なる板状領域が交互に、かつ、膜厚方向に対して一定の傾斜角にて平行配置してなる第1の構造領域としてのルーバー構造領域を、効率的、かつ、安定的に製造することができるためである。
より具体的には、線状光源を用いることにより、線状光源の軸方向から見た場合には実質的に平行光であり、線状光源の軸方向とは垂直な方向から見た場合には非平行な光を照射することができる。
このとき、照射光の照射角度としては、図12(b)に示すように、塗布層1の表面の法線に対する角度を0°とした場合の照射角度θ3を、通常、−80〜80°の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、照射角度が−80〜80°の範囲外の値となると、塗布層1の表面での反射等の影響が大きくなって、十分なルーバー構造を形成することが困難になる場合があるためである。
また、照射角度θ3は、1〜80°の幅(照射角度幅)θ3´を有していることが好ましい。
この理由は、かかる照射角度幅θ3´が1°未満の値となると、ルーバー構造の間隔が狭くなり過ぎて、所望の第1の構造領域を得ることが困難になる場合があるためである。一方、かかる照射角度幅θ3´が80°を超えた値となると、照射光が分散し過ぎて、ルーバー構造を形成することが困難になる場合があるためである。
したがって、照射角度θ3の照射角度幅θ3´を2〜45°の範囲内の値とすることがより好ましく、5〜20°の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0098】
また、照射光としては、紫外線や電子線等が挙げられるが、紫外線を用いることが好ましい。
この理由は、電子線の場合、重合速度が非常に速いため、重合過程でモノマー(A)成分とモノマー(B)成分が十分に相分離できず、ルーバー構造を形成することが困難になる場合があるためである。一方、可視光等と比較した場合、紫外線の方が、その照射により硬化する紫外線硬化樹脂や、使用可能な光重合開始剤のバリエーションが豊富であることから、モノマー(A)成分およびモノマー(B)成分の選択の幅を広げることができるためである。
また、紫外線の照射条件としては、照度を0.01〜50mW/cm2の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、照度が0.01mW/cm2未満の値となると、ルーバー構造未形成領域を十分に形成することができるものの、ルーバー構造を明確に形成することが困難になる場合があるためである。一方、照度が50mW/cm2を超えた値となると、(A)成分および(B)成分の相分離が進む前に硬化してしまい、逆に、ルーバー構造を明確に形成することが困難になる場合あるためである。
したがって、紫外線の照度を0.05〜20mW/cm2の範囲内の値とすることがより好ましく、0.1〜10mW/cm2の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0099】
また、工程シート上に形成された塗布層を、0.1〜10m/分の速度にて移動させて、紫外線照射装置による紫外線照射部分を通過させることが好ましい。
この理由は、かかる速度が0.1m/分未満の値となると、量産性が過度に低下する場合があるためである。一方、かかる速度が10m/分を超えた値となると、塗布層の硬化、言い換えれば、ルーバー構造の形成よりも速く、塗布層に対する紫外線の入射角度が変化してしまい、ルーバー構造の形成が不十分になる場合があるためである。
したがって、工程シート上に形成された塗布層を、0.2〜5m/分の範囲内の速度にて移動させて、紫外線照射装置による紫外線照射部分を通過させることがより好ましく、0.5〜3m/分の範囲内の速度にて通過させることがさらに好ましい。
【0100】
4.工程(d):第2の活性エネルギー線照射工程
工程(d)は、塗布層に対して、さらに第2の活性エネルギー線照射を行い、ルーバー構造未形成領域に第2の構造領域としての媒体物中に当該媒体物とは屈折率が異なる複数の柱状物が林立してなるカラム状構造領域を形成する工程である。
すなわち、工程シートの上に形成された塗布層に対し、光線の平行度が高い平行光を照射する。該平行光の照射に際しては、塗布層に直接照射しても良いが、露出している塗布層表面に剥離フィルムを積層して、剥離フィルム越しに照射することも好ましい。剥離フィルムとしては、前記工程シートに記載されているもののうち紫外線透過性を有するものを適宜選択することができる。
【0101】
ここで、第1の活性エネルギー線照射工程で用いられた線状光源による直接光は、その光の方向が線状光源の軸方向と垂直な方向においては広がりを持たず、略平行であるが、線状光源の軸方向と平行な方向においては光の向きに統一性はなく、ランダムである。
これに対して、第2の活性エネルギー線照射における平行光とは、発せられる光の方向が、いずれの方向から見た場合であっても広がりを持たない略平行な光を意味する。
より具体的には、例えば、図13(a)に示すように、点光源202からの光をレンズ204によって平行光とした後、塗布層に照射したり、図13(b)〜(c)に示すように、線状光源206からの光を筒状物208の集合体210によって平行光とした後、塗布層に照射したりすることが好ましい。
したがって、図13(a)に示すような平行光照射装置の具体例としては、例えば、山下電装(株)製、紫外線スポット光源「HYPERCURE 200」にオプションの均一露光アダプタを取り付けたものが挙げられる。
【0102】
そして、平行光における平行度を10°以下の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる平行度を10°以下の値とすることにより、複数の柱状物が膜厚方向に対して一定の傾斜角にて林立してなる第2の構造領域としてのカラム構造領域を、効率的、かつ、安定的に製造することができるためである。
すなわち、かかる平行度が10°を超えた値となると、カラム構造を形成することができない場合があるためである。
したがって、平行光の平行度を5°以下の値とすることがより好ましく、2°以下の値とすることがさらに好ましい。
【0103】
また、照射光としては、紫外線や電子線等が挙げられるが、第1の活性エネルギー線照射工程におけるのと同様の理由から、紫外線を用いることが好ましい。
また、紫外線の照射条件としては、照度を0.01〜30mW/cm2の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、照度が0.01mW/cm2未満の値となると、カラム構造を明確に形成することが困難になる場合があるためである。一方、照度が30mW/cm2を超えた値となると、(A)成分および(B)成分の相分離が進む前に硬化してしまい、逆に、カラム構造を明確に形成することが困難になる場合あるためである。
したがって、紫外線の照度を0.05〜20mW/cm2の範囲内の値とすることがより好ましく、0.1〜10mW/cm2の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、塗布層の移動速度や照射光の照射角度については、第1の活性エネルギー線照射工程と同様とすることができる。
なお、塗布層が十分に硬化する積算光量となるように、第1および第2の活性エネルギー線照射とは別に、さらに活性エネルギー線を照射することも好ましい。
このときの活性エネルギー線は、塗布層を十分に硬化させることを目的とするものであるため、平行光等ではなく、進行方向がランダムな光とすることが好ましい。
また、光硬化工程後の光拡散フィルムは、工程シートを剥離することによって、最終的に使用可能な状態となる。
【実施例】
【0104】
以下、実施例を参照して、本発明の光拡散フィルム等をさらに詳細に説明する。
【0105】
[実施例1]
1.モノマー(B)成分の合成
容器内に、(b)成分としての重量平均分子量9,200のポリプロピレングリコール(PPG)1モルに対して、(a)成分としてのイソホロンジイソシアナート(IPDI)2モル、および(c)成分としての2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)2モルを収容した後、常法に従って反応させ、重量平均分子量9,900のポリエーテルウレタンメタクリレートを得た。
【0106】
なお、ポリプロピレングリコールおよびポリエーテルウレタンメタクリレートの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて、下記条件に沿って測定したポリスチレン換算値である。
・GPC測定装置:東ソー(株)製、HLC−8020
・GPCカラム :東ソー(株)製(以下、通過順に記載)
TSK guard column HXL−H
TSK gel GMHXL(×2)
TSK gel G2000HXL
・測定溶媒 :テトラヒドロフラン
・測定温度 :40℃
【0107】
2.光拡散フィルム用組成物の調製
次いで、得られたモノマー(B)成分としての重量平均分子量9,900のポリエーテルウレタンメタクリレート100重量部に対し、モノマー(A)成分としての下記式(3)で表わされる重量平均分子量268のo−フェニルフェノキシエトキシエチルアクリレート(新中村化学(株)製、NKエステル A−LEN−10)100重量部と、(C)成分としての2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン10重量部とを添加した後、80℃の条件下にて加熱混合を行い、光拡散フィルム用組成物を得た。なお、モノマー(A)成分及びモノマー(B)成分の屈折率は、アッベ屈折計[アタゴ社製、品名「アッベ屈折計DR−M2」、Na光源、波長:589nm]によりJIS K0062に準じて測定したところ、それぞれ1.58および1.46であった。
【0108】
【化6】
【0109】
3.光拡散フィルム用組成物の塗布
次いで、得られた異方性光拡散フィルム用組成物を、工程シートとしてのフィルム状の透明ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETと称する。)に対して、アプリケーターを用いて塗布し、膜厚200μmの塗布層を得た。
【0110】
4.塗布層の光硬化
(1)第1の紫外線照射
次いで、図12(a)に示すような線状の高圧水銀ランプに集光用のコールドミラーが付属した紫外線照射装置(アイグラフィックス(株)製、ECS−4011GX)を準備した。
次いで、熱線カットフィルター枠上に遮光板を設置し、塗布層の表面に照射される紫外線が、線状の紫外線ランプの長手方向から見たときの塗布層およびPETからなる積層体の法線方向を0°とした場合に、ランプからの直接の紫外線の照射角度(図12(b)のθ3)が−40°となるように設定した。
このとき、塗布層からのランプの高さは500mmとし、ピーク照度は1.7mW/cm2となるように設定した。
また、遮光板等での反射光が、照射機内部で迷光となり、塗布層の光硬化に影響を及ぼすことを防ぐため、コンベア付近にも遮光板を設け、ランプから直接発せられる紫外線のみが塗布層に対して照射されるように設定した。
次いで、コンベアにより、塗布層を図12(a)における右方向に、0.2m/分の速度にて移動させながら紫外線を照射した。
【0111】
(2)第2の紫外線照射
次いで、線状光源による第1の紫外線照射工程を経た後、塗布層の露出面側を厚さ38μmの紫外線透過性を有する剥離フィルム(リンテック(株)製、SP−PET382050)によりラミネートした。
次いで、紫外線スポット光源(山下電装(株)製、HYPERCURE 200)にオプションの均一露光アダプタを取り付けることによって平行度を2゜以下とした装置を用い、平行光の入射角が40°となるように剥離フィルム越しに照射することで、総膜厚200μmの光拡散フィルムを得た。
その際の平均照度は5mW/cm2、ランプ高さは800mmとした。
なお、光拡散フィルムの膜厚は、定圧厚さ測定器(宝製作所(株)製、テクロック PG−02J)を用いて測定した。
また、得られた光拡散フィルムは、図14(a)に示すように、ルーバー構造の傾斜角が−27°であり、柱状物の傾斜角が27°である光拡散フィルムであることを確認した。
なお、かかる図14(a)は、ルーバー構造における板状領域に垂直な面で切断した場合のフィルムの断面を示す模式図である。
また、第1の構造領域の膜厚は66μmであり、第2の構造領域の膜厚は38μmであった。
さらに、得られた光拡散フィルムの断面写真を、図15(a)〜(b)に示す。図15(a)は、ルーバー構造における板状領域に垂直な面でフィルムを切断した場合の断面写真であり、図15(b)は、図15(a)における切断面に対して垂直な面でフィルムを切断した場合の断面写真である。
【0112】
5.測定
変角測色計(スガ試験機(株)製、VC−2)を用いて、図14(a)に示すように、得られた光拡散フィルムの上方より、当該フィルムに対して、入射角θ1=60°にて、光を入射させた(C光源、視野角2°)。
次いで、光拡散フィルムにより拡散された拡散光の広がりと、その明度(%)の分布を測定した。かかる測定結果は、図14(c)に示す散布図の縦軸の値が0°の横軸上に示されている。
すなわち、横軸の値が拡散光の広がり角度(°)の範囲を示し、プロットの色がその角度に拡散された拡散光の明度(%)を示す。
ここで、プロットの色と、明度(%)との関係は、プロットの色が赤に近い程、明度が100%に近いことを示し、プロットの色が緑に近い程、明度が50%に近いことを示し、プロットの色が紺色に近い程、明度が0%に近いことを示す。なお、詳細については図14(b)に示す。
また、さらに、入射光の幅方向における拡散光の広がりと、その明度(%)の分布についても測定すべく、光拡散フィルムの面上における所定の一点を中心として、光拡散フィルムを同一平面内において−80〜80°の範囲で回転させつつ、同様の測定を行った。なお、かかる回転の角度は、上述した測定時における光拡散フィルムの角度を0°とした場合の回転の角度を意味する。例えば、光拡散フィルムを20°回転させた場合の測定結果は、図14(c)に示す散布図の縦軸の値が20°の横軸上に示されることになる。
したがって、図14(c)に示す散布図の場合、例えば、明度が30%以上の拡散光が分布する領域は、図14(c)における点線で囲まれた領域となる。
【0113】
次いで、14(d)〜(k)に示すように、光拡散フィルムに対する入射角θ1を、それぞれ50°、40°、30°、0°、−30°、−40°、−50°、−60°に変えて、入射角θ1=60°の場合と同様に拡散光の広がりと、その明度(%)の分布を測定した。
【0114】
6.結果
図14(c)〜(k)に示すように、実施例1の光拡散フィルムでは、入射光の入射角θ1=0°前後の範囲では、光の拡散が生じにくくなるものの、入射角θ1=30〜60°の範囲では、カラム構造領域による等方性光拡散が生じ、入射角θ1=−60〜−30°の範囲では、ルーバー構造領域による異方性光拡散が生じており、二つの構造領域による光拡散入射角度依存性をずらすことにより、光拡散入射角度領域を有効に拡大できていることが分かる。
【0115】
[実施例2]
実施例2では、塗布層を硬化させる際に、第1の紫外線照射におけるθ3を40°に変更した以外は、実施例1と同様にして、ルーバー構造の傾斜角が27°、柱状物の傾斜角が27°である図16に示すような光拡散フィルムを得た。
また、光拡散フィルムに対する入射角θ1を、それぞれ25°、35°、45°、55°としたほかは、実施例1と同様に拡散光の広がりと、その明度(%)の分布について測定した。
その結果、実施例2の光拡散フィルムでは、ルーバー構造領域およびカラム構造領域における光拡散入射角度依存性がほぼ重なっているため、光拡散入射角度領域が、入射角θ1=25〜55°の範囲という比較的狭い範囲となった。
しかしながら、実施例2の光拡散フィルムは、後述する比較例1および2と比較して拡散光の均一性が高く、比較例3および4と比較して入射光の幅方向における拡散光の広がりが大きいことが確認された。
【0116】
[実施例3]
実施例3では、第1の紫外線照射におけるθ3を40°に変更し、第2の紫外線照射の平行光の入射角を0°に変更した以外は、実施例1と同様にして、ルーバー構造の傾斜角が27°、柱状物の傾斜角が0°の図17(a)に示すような光拡散フィルムを得た。
また、図17(b)〜(h)に示すように、光拡散フィルムに対する入射角θ1を、それぞれ0°、10°、20°、30°、40°、50°、60°としたほかは、実施例1と同様に拡散光の広がりと、その明度(%)の分布について測定した。
その結果、図17(b)〜(h)に示されているように、実施例3の光拡散フィルムでは、入射光の入射角θ1=20°前後では、光の拡散が生じにくくなるものの、入射角=0〜10°の範囲では、カラム構造領域による等方性光拡散が生じ、入射角θ1=30〜60°の範囲では、ルーバー構造領域による異方性光拡散が生じており、二つの構造領域による光拡散入射角度依存性をずらすことにより、光拡散入射角度領域を有効に拡大できていることが分かる。
【0117】
[実施例4]
実施例4では、第1の紫外線照射におけるθ3を40°に変更し、第2の紫外線照射の平行光の入射角を20°に変更した以外は、実施例1と同様にして、ルーバー構造の傾斜角が27°、柱状物の傾斜角が14°の図18(a)に示すような光拡散フィルムを得た。
また、図18(b)〜(g)に示すように、光拡散フィルムに対する入射角θ1を、それぞれ5°、15°、25°、35°、45°、55°としたほかは、実施例1と同様に拡散光の広がりと、その明度(%)の分布について測定した。
その結果、図18(b)〜(g)に示されているように、実施例4の光拡散フィルムでは、入射光の入射角θ1=5〜25°の範囲では、カラム構造領域による等方性光拡散が生じ、入射角θ1=25〜55°の範囲では、ルーバー構造領域による異方性光拡散が生じており、二つの構造領域による光拡散入射角度依存性をずらしつつも一部重複させることにより、光拡散入射角度領域を有効に拡大できていることが分かる。
【0118】
[比較例1]
比較例1では、第1の紫外線照射を行わず、第2の紫外線照射の平行光の入射角を0°に変更した以外は、実施例1と同様にして、図19(a)に示すように、第1の構造領域および第2の構造領域に相当する領域全体に傾斜角が0°のカラム構造のみを有する光拡散フィルムを得た。
また、図19(b)〜(j)に示すように、光拡散フィルムに対する入射角θ1を、それぞれ20°、15°、10°、5°、0°、−5°、−10°、−15°、−20°としたほかは、実施例1と同様に拡散光の広がりと、その明度(%)の分布について測定した。
その結果、図19(b)〜(j)に示されているように、比較例1の光拡散フィルムでは、カラム構造のみを有するため、光拡散入射角度領域が、θ1=−15〜15°の範囲という比較的狭い範囲となった。
また、拡散光の中心部が、その他の部分と比較して特に明度が高く、拡散光の均一性が低いことがわかる。
【0119】
[比較例2]
比較例2では、第1の紫外線照射を行わず、第2の紫外線照射の平行光の入射角を40°に変更した以外は、実施例1と同様にして、図20(a)に示すように、第1の構造領域および第2の構造領域に相当する領域全体に傾斜角が27°のカラム構造のみを有する光拡散フィルムを得た。
また、図20(b)〜(k)に示すように、光拡散フィルムに対する入射角θ1を、それぞれ15°、20°、25°、30°、35°、40°、45°、50°、55°、60°としたほかは、実施例1と同様に拡散光の広がりと、その明度(%)の分布について測定した。
その結果、図20(b)〜(k)に示されているように、比較例2の光拡散フィルムは、カラム構造のみを有するため、光拡散入射角度領域が、θ1=25〜60°の範囲という比較的狭い範囲となった。
また、拡散光の中心部が、その他の部分と比較して特に明度が高く、拡散光の均一性が低いことが分かる。
【0120】
[比較例3]
比較例3では、第1の紫外線照射のθ3を0°に変更し、第2の紫外線照射を行わない以外は、実施例1と同様にして、図21(a)に示すように、第1の構造領域としての傾斜角が0°のルーバー構造領域と、その上方にルーバー構造未形成領域とを有する光拡散フィルムを得た。
また、図21(b)〜(h)に示すように、光拡散フィルムに対する入射角θ1を、それぞれ20°、15°、10°、5°、0°、−5°、−10°としたほかは、実施例1と同様に拡散光の広がりと、その明度(%)の分布について測定した。
その結果、図21(b)〜(h)に示されているように、比較例3の光拡散フィルムは、ルーバー構造のみを有するため、光拡散角度領域が、θ1=−5〜15°の範囲という比較的狭い範囲となった。
また、拡散光の異方性が大きく、入射光の幅方向における拡散光の広がりが小さいことが分かる。
【0121】
[比較例4]
比較例4では、第1の紫外線照射のθ3を40°に変更し、第2の紫外線照射を行わない以外は実施例1と同様にして、図22(a)に示すように、第1の構造領域としての傾斜角が27°のルーバー構造領域と、その上方にルーバー構造未形成領域とを有する光拡散フィルムを得た。
また、図22(b)〜(i)に示すように、光拡散フィルムに対する入射角θ1を、それぞれ25°、30°、35°、40°、45°、50°、55°、60°としたほかは、実施例1と同様に光拡散フィルムを製造した。
また、図22(b)〜(i)に示されているように、比較例4の光拡散フィルムは、ルーバー構造のみを有するため、光拡散角度領域が。θ1=30〜60°という比較的狭い範囲となった。
また、拡散光の異方性が大きく、入射光の幅方向における拡散光の広がりが小さいことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0122】
以上、詳述したように、本発明によれば、フィルム内において、入射光を異方性拡散させるためのルーバー構造領域と、入射光を等方性拡散させるためのカラム構造領域とを、膜厚方向に沿って上下に設けることにより、良好な入射角度依存性を有するとともに、光拡散入射角度領域が広い光拡散フィルムを得られるようになった。
したがって、本発明の光拡散フィルム等は、反射型液晶装置における光制御膜の他、視野角制御フィルム、視野角拡大フィルム、さらにはプロジェクション用スクリーンにも提供することができ、これらの高品質化に著しく寄与することが期待される。
【符号の説明】
【0123】
1:塗布層、2:工程シート、10:第1の構造領域(異方性光拡散フィルム)、12:屈折率が相対的に高い板状領域(高屈折率部)、13:ルーバー構造領域、13´:ルーバー構造の境界面、14:屈折率が相対的に低い板状領域(低屈折率部)、20:第2の構造領域(等方性光拡散フィルム)、22:柱状物、24:柱状物以外の部分、30:光拡散フィルム、50:活性エネルギー線、120:紫外線照射装置、121:熱線カットフィルター、122:コールドミラー、123:遮光板、125:線状の紫外線ランプ、100:反射型液晶表示装置、101:偏光板、102:位相差板、103:光拡散板、104:ガラス板、105:カラーフィルター、106:液晶、107:鏡面反射板、108:ガラス板、110:液晶セル、202:点光源、204:レンズ、206:線状の紫外線ランプ、208:筒状物、210:筒状物の集合体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光を異方性拡散させるための第1の構造領域と、入射光を等方性拡散させるための第2の構造領域とを有する光拡散フィルムであって、
前記第1の構造領域が、屈折率が異なる複数の板状領域をフィルム面方向に沿って交互に平行配置してなるルーバー構造領域であり、
前記第2の構造領域が、媒体物中に当該媒体物とは屈折率が異なる複数の柱状物を林立させてなるカラム構造領域であることを特徴とする光拡散フィルム。
【請求項2】
前記第1の構造領域において、前記屈折率が異なる板状領域の幅を、それぞれ0.1〜15μmの範囲内の値とするとともに、当該板状領域を膜厚方向に対して一定の傾斜角にて平行配置してなることを特徴とする請求項1に記載の光拡散フィルム。
【請求項3】
前記第1の構造領域において、前記屈折率が異なる板状領域のうち、屈折率の高い板状領域の主成分が、複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルの重合体であり、屈折率の低い板状領域の主成分が、ウレタン(メタ)アクリレートの重合体であることを特徴とする請求項1または2に記載の光拡散フィルム。
【請求項4】
前記第1の構造領域の厚さを5〜495μmの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光拡散フィルム。
【請求項5】
前記第2の構造領域において、前記柱状物の断面における最大径を0.1〜15μmの範囲内の値とするとともに、柱状物間の距離を0.1〜15μmの範囲内の値とし、かつ、複数の柱状物を膜厚方向に対して一定の傾斜角にて林立させてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光拡散フィルム。
【請求項6】
前記第2の構造領域において、前記柱状物の主成分が、複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルであり、前記媒体物の主成分が、ウレタン(メタ)アクリレートであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光拡散フィルム。
【請求項7】
前記第2の構造領域の厚さを5〜495μmの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の光拡散フィルム。
【請求項8】
入射光を異方性拡散させるための第1の構造領域と、入射光を等方性拡散させるための第2の構造領域とを有する光拡散フィルムの製造方法であって、
下記工程(a)〜(d)を含むことを特徴とする光拡散フィルムの製造方法。
(a)光拡散フィルム用組成物を準備する工程
(b)前記光拡散フィルム用組成物を工程シートに対して塗布し、塗布層を形成する工程
(c)前記塗布層に対して第1の活性エネルギー線照射を行い、前記塗布層の下方部分に第1の構造領域としての屈折率が異なる複数の板状領域をフィルム面方向に沿って交互に平行配置してなるルーバー構造領域を形成するとともに、前記塗布層の上方部分にルーバー構造未形成領域を残す工程
(d)前記塗布層に対して、さらに第2の活性エネルギー線照射を行い、前記ルーバー構造未形成領域に第2の構造領域としての媒体物中に当該媒体物とは屈折率が異なる複数の柱状物を林立させてなるカラム状構造領域を形成する工程
【請求項9】
前記第2の活性エネルギー線照射として、平行度が10°以下の値である平行光を照射することを特徴とする請求項8に記載の光拡散フィルムの製造方法。
【請求項1】
入射光を異方性拡散させるための第1の構造領域と、入射光を等方性拡散させるための第2の構造領域とを有する光拡散フィルムであって、
前記第1の構造領域が、屈折率が異なる複数の板状領域をフィルム面方向に沿って交互に平行配置してなるルーバー構造領域であり、
前記第2の構造領域が、媒体物中に当該媒体物とは屈折率が異なる複数の柱状物を林立させてなるカラム構造領域であることを特徴とする光拡散フィルム。
【請求項2】
前記第1の構造領域において、前記屈折率が異なる板状領域の幅を、それぞれ0.1〜15μmの範囲内の値とするとともに、当該板状領域を膜厚方向に対して一定の傾斜角にて平行配置してなることを特徴とする請求項1に記載の光拡散フィルム。
【請求項3】
前記第1の構造領域において、前記屈折率が異なる板状領域のうち、屈折率の高い板状領域の主成分が、複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルの重合体であり、屈折率の低い板状領域の主成分が、ウレタン(メタ)アクリレートの重合体であることを特徴とする請求項1または2に記載の光拡散フィルム。
【請求項4】
前記第1の構造領域の厚さを5〜495μmの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光拡散フィルム。
【請求項5】
前記第2の構造領域において、前記柱状物の断面における最大径を0.1〜15μmの範囲内の値とするとともに、柱状物間の距離を0.1〜15μmの範囲内の値とし、かつ、複数の柱状物を膜厚方向に対して一定の傾斜角にて林立させてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光拡散フィルム。
【請求項6】
前記第2の構造領域において、前記柱状物の主成分が、複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルであり、前記媒体物の主成分が、ウレタン(メタ)アクリレートであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光拡散フィルム。
【請求項7】
前記第2の構造領域の厚さを5〜495μmの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の光拡散フィルム。
【請求項8】
入射光を異方性拡散させるための第1の構造領域と、入射光を等方性拡散させるための第2の構造領域とを有する光拡散フィルムの製造方法であって、
下記工程(a)〜(d)を含むことを特徴とする光拡散フィルムの製造方法。
(a)光拡散フィルム用組成物を準備する工程
(b)前記光拡散フィルム用組成物を工程シートに対して塗布し、塗布層を形成する工程
(c)前記塗布層に対して第1の活性エネルギー線照射を行い、前記塗布層の下方部分に第1の構造領域としての屈折率が異なる複数の板状領域をフィルム面方向に沿って交互に平行配置してなるルーバー構造領域を形成するとともに、前記塗布層の上方部分にルーバー構造未形成領域を残す工程
(d)前記塗布層に対して、さらに第2の活性エネルギー線照射を行い、前記ルーバー構造未形成領域に第2の構造領域としての媒体物中に当該媒体物とは屈折率が異なる複数の柱状物を林立させてなるカラム状構造領域を形成する工程
【請求項9】
前記第2の活性エネルギー線照射として、平行度が10°以下の値である平行光を照射することを特徴とする請求項8に記載の光拡散フィルムの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図16】
【図23】
【図14】
【図15】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図16】
【図23】
【図14】
【図15】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2012−141593(P2012−141593A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−268544(P2011−268544)
【出願日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】
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