説明

光拡散ロッド

【課題】容易に製造することができ、かつ、均一に発光させることが可能な光分散ロッドを提供する。
【解決手段】光が伝播するコア11と、コアの外周面11aを囲繞するクラッド13と、クラッドの外周面13aを囲繞するオーバークラッド15と、を備えた光拡散ロッド10であって、コア、クラッドおよびオーバークラッドは、熱可塑性樹脂でそれぞれ形成されており、クラッドを構成する熱可塑性樹脂の屈折率は、コアを構成する熱可塑性樹脂の屈折率より小さく、オーバークラッドを構成する熱可塑性樹脂の屈折率は、クラッドを構成する熱可塑性樹脂の屈折率と等しいかそれより大きく、少なくともオーバークラッドには光散乱粒子21が混在している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光拡散ロッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅やオフィスではCO排出量削減や省エネルギー化などを考慮して、照明や液晶ディスプレイのバックライトの光源にLEDを採用したものが多く用いられている。このような背景の下、LEDなどの指向性の高い光源による光を略均一に拡散させる技術が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1は、耐久性が良好で均一に発光させることが容易であり、光のロスが少なく、製造コストも安いバックライトを提供するために、コアの延在方向(長手方向)に帯状の反射層が形成された光伝送チューブを備えたバックライトが開示されている。また、この特許文献1では、光量のムラを防止するために、光伝送チューブに光散乱用の微粒子を分散させ、光源ユニットに対峙する部分の微粒子配合量を多くする技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、側周面から指向性を持って高輝度に発光し、汚れなどが付着しても優れた発光特性を維持し、かつ量産性に優れた安価な光伝送チューブであって、側面輝度を任意に調節可能な光伝送チューブを提供するために、管状クラッドとコアとの間にその長さ方向に沿って、長さ方向に幅が変化する帯状の反射層が形成された光伝送チューブが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−297602号公報
【特許文献2】特開2000−39519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の光伝送チューブのように、該光伝送チューブ内に光散乱用の微粒子を分散させる際に微粒子の配合量を安定的に変化させることは、特に押出成形などの連続成形手法においては困難である。また、特許文献1にはコアに達するように切傷状の切り込みを形成する方法も開示されているが、光伝送チューブ自体の強度に影響が出るという問題がある。
さらに、特許文献2の光伝送チューブでは、反射層の幅を変化させると、反射光の生じる面積が部位によって異なるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、容易に製造することができ、かつ、均一に発光させることが可能な光分散ロッドを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、光が伝播するコアと、該コアの外周面を囲繞するクラッドと、該クラッドの外周面を囲繞するオーバークラッドと、を備えた光拡散ロッドであって、前記コア、前記クラッドおよび前記オーバークラッドは、熱可塑性樹脂でそれぞれ形成されており、前記クラッドを構成する熱可塑性樹脂の屈折率は、前記コアを構成する熱可塑性樹脂の屈折率より小さく、前記オーバークラッドを構成する熱可塑性樹脂の屈折率は、前記クラッドを構成する熱可塑性樹脂の屈折率と等しいかそれより大きく、少なくとも前記オーバークラッドには光散乱粒子が混在していることを特徴としている。
【0009】
また、請求項2に記載した発明は、前記コアの延在方向に沿って反射層が形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載した発明によれば、光拡散ロッドの端面よりコアに光を入射した場合、該コアとクラッドとの界面で全反射を繰り返しながらコアの延在方向(長手方向)に光が伝播し、臨界角を越えた光はクラッドを透過する。このとき、オーバークラッドを構成する熱可塑性樹脂の屈折率は、クラッドを構成する熱可塑性樹脂の屈折率と等しいかそれより大きいため、全反射が起こらず光はオーバークラッドへ透過する。すると、オーバークラッドへ入射した光は、光散乱粒子によって角度の拡がりをもって光拡散ロッド外に向けて放射される。つまり、コアの延在方向(長手方向)に沿って均一に発光させることができる光拡散ロッドを得ることができる。
また、光散乱粒子を分散させる際に、粒子の配合量を安定的に変化させる必要も無いため、光拡散ロッドを押出成形などによって容易に製造することができる。
【0011】
請求項2に記載した発明によれば、光拡散ロッドに反射層を形成したため、該反射層で光を反射させることができ、コアからクラッド側へ適量の光を透過させることができる。したがって、コアの延在方向(長手方向)に沿って光のムラが生じることなく均一に発光する光拡散ロッドを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態における光拡散ロッドの内部を透視した斜視図である。
【図2】図1のA矢視図(正面図)である。
【図3】本発明の実施形態における光拡散ロッドの一実施例を示す正面図(図2に相応)である。
【図4】本発明の実施形態における光拡散ロッドの別の態様を示す正面図(図2に相応)である。
【図5】本発明の実施形態における光拡散ロッドのさらに別の態様を示す正面図(図2に相応)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本実施形態の光拡散ロッドの構成を示す斜視図であり、図2は図1のA矢視図(正面図)である。図1、図2に示すように、光拡散ロッド10は、略柱状のコア11と、該コア11の外周面11aを覆うように形成された管状のクラッド13と、該クラッド13の外周面13aをさらに覆うように形成された管状のオーバークラッド15と、を有している。また、本実施形態では、コア11とクラッド13との間に、コア11の延在方向(長手方向)に沿って反射層17が形成されている。なお、光拡散ロッド10は、長手方向に沿って略均一の断面形状で形成されている。
【0014】
コア11は、光拡散ロッド10の長手方向の全長に亘って形成されており、該コア11内を光が伝播する。コア11を構成する材料の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、フッ素樹脂、メチルメタクリレート・スチレン共重合体、ポリカーボネートなどが挙げられる。なお、上記コア11を構成する材料のうち、光の透過率や屈折率などを考慮すると、ポリスチレン、メチルメタクリレート・スチレン共重合体がより好ましい。また、コア11は断面円形の外周面11aの一部が切り欠かれており、該切り欠かれた箇所に反射層17が形成されている。つまり、コア11と反射層17とで円柱状になっており、クラッド13の中空部19に充填されている。
【0015】
クラッド13は、該クラッド13の内周面13bとコア11の外周面11aおよび反射層17の外周面17aとが当接するように管状に形成されている。クラッド13を構成する材料の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、フッ素樹脂、メチルメタクリレート・スチレン共重合体、ポリカーボネートなどが挙げられる。なお、上記クラッド13を構成する材料のうち、光の透過率や屈折率などを考慮すると、ポリメチルメタクリレートがより好ましい。
【0016】
オーバークラッド15は、該オーバークラッド15の内周面15aとクラッド13の外周面13aとが当接するように管状に形成されている。オーバークラッド15を構成する材料の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、フッ素樹脂、メチルメタクリレート・スチレン共重合体、ポリカーボネートなどが挙げられる。なお、上記オーバークラッド15を構成する材料のうち、光線の透過率や屈折率などを考慮すると、ポリスチレン、メチルメタクリレート・スチレン共重合体がより好ましい。
【0017】
ここで、オーバークラッド15には光散乱粒子21が混在している。光散乱粒子21の具体例としては、シリコン樹脂粒子やガラスなどが挙げられ、成形性や屈折率などの面から、ポリメチルシルセスオキサン粒子が好適である。
【0018】
反射層17は、クラッド13の内周面13bの一部を覆うように形成されている。反射層17を構成する材料としては、白色の樹脂やアルミニウムなど、特に限定されないが、押出成形性を考慮して白色の樹脂であることが好ましい。また、反射層17は、クラッド13と同様にコア11に対して屈折率が小さい材料で構成されることが好ましい。例えば、クラッド13を構成する材料として、ポリメチルメタクリレートを用いる場合には、該ポリメチルメタクリレートに対して酸化チタンのような白色顔料を混ぜたものを採用すればよい。
【0019】
次に、このように構成された光拡散ロッド10の作用について説明する。
光拡散ロッド10の長手方向の一端側からコア11に光を入射すると、光はコア11とクラッド13との界面で全反射を繰り返し、光拡散ロッド10の長手方向(軸方向)に光が伝播する。そして、臨界角を越えた光はクラッド13を透過する。クラッド13に対してオーバークラッド15の屈折率は等しいか大きいため、クラッド13とオーバークラッド15との界面では全反射が起こらず、光はオーバークラッド15へ抜ける。オーバークラッド15へ入射した光は、光散乱粒子21によって角度の拡がりをもって光拡散ロッド10の外方へ向けて放射される。
【0020】
つまり、光拡散ロッド10を用いることにより、クラッド13による長手方向(軸方向)への光の伝播効果と、オーバークラッド15内に散りばめられている光散乱粒子21の効果とで、光拡散ロッド10の一端側(光源側)付近における散乱光が明るくなったり、光源から離れた場所の光量が少なくなったりといった光のムラが生じることがなく、光拡散ロッド10の軸方向に沿って略均一の光量が得られる。
【0021】
また、光散乱粒子21をオーバークラッド15内に分散配置させる際に、光散乱粒子21の配合量を安定的に変化させる必要も無いため、光拡散ロッド10を押出成形機などによって容易に製造することができる。
【0022】
さらに、光拡散ロッド10に反射層17を形成したため、該反射層17で光を反射させることができ、コアからクラッド側へ適量の光を透過させることができる。したがって、コア11の延在方向(長手方向)に沿って光のムラが生じることなく均一に発光する光拡散ロッド10を得ることができる。
【実施例】
【0023】
次に、図3に示す実施例によって本発明を具体的に説明する。
光拡散ロッド10のコア11の材料としては、メチルメタクリレート・スチレン共重合体(屈折率1.53)、商品名:エスチレンMS MS−600(新日鐵化学株式会社製)を用いている。
【0024】
また、クラッド13の材料としては、ポリメチルメタクリレート(屈折率1.49)、商品名:アクリペット VH001(三菱レイヨン株式会社製)を用いている。
【0025】
また、オーバークラッド15の材料としては、メチルメタクリレート・スチレン共重合体(屈折率1.53)、商品名:エスチレンMS MS−600(新日鐵化学株式会社製)を用い、光散乱粒子21の材料としては、ポリメチルシルセスオキサン粒子(屈折率1.44)、商品名:トスパール120 モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)を用いている。本実施形態では、オーバークラッド15を99.8重量%、光散乱粒子21を0.2重量%の割合で混合されている。本実施例では、オーバークラッド15と光散乱粒子21とを混合したものをオーバークラッド層23という。
【0026】
さらに、反射層17の材料としては、ポリメチルメタクリレート(屈折率1.49)、商品名:アクリペット VH001(三菱レイヨン株式会社製)および酸化チタン、商品名:タイペーク CR−50−2(石原産業株式会社製)を用い、本実施形態では、ポリメチルメタクリレートを95重量%、酸化チタンを5重量%の割合で混合されている。
【0027】
そして、予めオーバークラッド15を構成する材料および光散乱粒子21を構成する材料を上記の割合で混合して、押出成形機に投入してオーバークラッド層23のペレットを作成する。このペレットは、直径20mmのコニカル成形機にて押し出したストランドをペレタイズ機にかけて作成する。
【0028】
同様に、反射層17を構成するポリメチルメタクリレートおよび酸化チタンを上記の割合で混合して、押出成形機に投入して反射層17のペレットを作成する。このペレットは、直径20mmのコニカル成形機にて押し出したストランドをペレタイズ機にかけて作成する。
【0029】
続いて、コア11は、メチルメタクリレート・スチレン共重合体を直径40mmのシングル押出機に投入後、240℃で溶融し、共押出金型を通して押し出し成形して作成する。
【0030】
同時に、クラッド13は、ポリメチルメタクリレートを直径12mmのシングル押出機に投入後、240℃で溶融し、共押出金型にて合流して作成する。
【0031】
さらに、オーバークラッド層23(オーバークラッド15と光散乱粒子21とを混合したもの)は、直径25mmのシングル押出機に投入後、240℃で溶融し、共押出金型にて合流することで、光拡散ロッド10が製造される。
【0032】
このとき、図3に示すように、光拡散ロッド10の直径(外径)は6mm、長さは1mとした。さらに詳細には、コア11の直径は3.6mm、クラッド13の厚さは0.2mm、オーバークラッド15の厚さは1mmとした。また、反射層17の幅は2mmとした。
【0033】
このようにして製造した光拡散ロッド10の両端から白色LEDにより光を入射し、オーバークラッド15に光散乱粒子21を含まない光拡散ロッド(従来品)と比較したところ、従来品においては端部付近の光量が多く、中心部で光量が少なくなる光のムラが生じたが、本実施例の光拡散ロッド10では均一な出射光が確認された。
【0034】
尚、本発明は上述した実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な構造や構成などはほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
【0035】
例えば、本実施形態では、反射層17を形成した場合の説明をしたが、反射層17は無くてもよい。
また、本実施形態では、反射層17をコア11とクラッド13との間に形成した場合の説明をしたが、図4に示すように、反射層17はクラッド13とオーバークラッド15との間や、図5に示すように、オーバークラッド15の外周面15bに形成してもよい。なお、反射層17は、コア11を伝播する光を効率よく反射させて取り出すために、コア11とクラッド13との層間にあることが好ましい。
さらに、本実施形態では、光散乱粒子21がオーバークラッド15内のみに分散配置された場合の説明をしたが、光散乱粒子21はコア11やクラッド13内に分散配置させてもよい。
【符号の説明】
【0036】
10…光拡散ロッド 11…コア 11a…コアの外周面 13…クラッド 13a…クラッドの外周面 15…オーバークラッド 17…反射層 21…光散乱粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光が伝播するコアと、
該コアの外周面を囲繞するクラッドと、
該クラッドの外周面を囲繞するオーバークラッドと、を備えた光拡散ロッドであって、
前記コア、前記クラッドおよび前記オーバークラッドは、熱可塑性樹脂でそれぞれ形成されており、
前記クラッドを構成する熱可塑性樹脂の屈折率は、前記コアを構成する熱可塑性樹脂の屈折率より小さく、
前記オーバークラッドを構成する熱可塑性樹脂の屈折率は、前記クラッドを構成する熱可塑性樹脂の屈折率と等しいかそれより大きく、
少なくとも前記オーバークラッドには光散乱粒子が混在していることを特徴とする光拡散ロッド。
【請求項2】
前記コアの延在方向に沿って反射層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光拡散ロッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−103618(P2012−103618A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254068(P2010−254068)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】