説明

光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物及び成形品

【課題】優れた全光線透過率、光拡散性及びアイゾット衝撃強度を兼ね備えた実用性の高い光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物及び該樹脂組成物からなる成形品を提供する。
【解決手段】芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対し、微粒子状架橋アクリル重合体(B)を1〜15重量部配合してなる組成物であって、該微粒子状架橋アクリル重合体(B)のが、明細書に規定する方法により測定された膨潤率が30%以上であることを特徴とする光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる光拡散性成形品に関する。更に詳しくは、優れた全光線透過率と光拡散性、高いアイゾット衝撃強度を有する光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる光拡散性成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリカ−ボネ−ト樹脂は優れたアイゾット衝撃強度等の機械的特性、耐久性、透明性、耐熱性、寸法安定性を生かし、電気電子、OA、精密機械、医療、自動車、雑貨、建材等幅広い分野に利用されている。各種照明灯カバー、照明看板、液晶ディスプレイ等に使用する際には、前記芳香族ポリカーボネートの優れたアイゾット衝撃強度等の諸特性を損なうことなく、光源から発せられた可視光線を効率よく照射出来ると共に、眩しさを低減出来るように、全光線透過率が50%以上で分散度が40度以上の樹脂組成物が求められている。この種の用途に適する材料として、例えば特許文献1には、芳香族ポリカーボネートに対して、芳香族ポリカーボネートと屈折率が異なりかつ少なくとも部分的に架橋しており、その平均粒径が0.5〜100μmの範囲にあるポリマー微粒子を分散添加せしめた光拡散性ポリカーボネート樹脂が提案されている。特許文献1は、具体的に、5〜30%の架橋剤が添加されたポリメチルメタクリレート(PMMA)からなる微粒子を用い、炭酸カルシウムを配合した場合と比較し、光線透過率が高く、光拡散性が良好で、衝撃強度の低下がないとのデータを開示している。しかしながら、本発明者らの検討によれば、5%の架橋剤を添加したPMMAのような架橋密度が高い架橋樹脂微粒子を用いた樹脂組成物は、衝撃強度の点で満足できるものではなかった。
【0003】
特許文献2には、芳香族ポリカーボネート樹脂、炭酸カルシウム、ガラス短繊維、ホスファイト化合物および/またはホスフェート化合物およびフェノール系酸化防止剤を配合した光拡散性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が開示されているが、該樹脂組成物には炭酸カルシウムやガラス短繊維が配合されているため、衝撃強度が非常に低いという欠点があった。
特許文献3には、透明樹脂に、平均粒子径5μm未満の架橋樹脂微粒子および平均粒子径5〜10μmの架橋樹脂微粒子をそれぞれ分散せしめた光拡散性樹脂組成物が提案されている。同文献では、架橋樹脂微粒子重合時の架橋性モノマーの使用量は、好ましくは5〜20重量%の範囲とされているが、この様に架橋密度が高い架橋樹脂微粒子を用いた組成物は、特許文献1と同様に、衝撃強度が低くなると考えられる。
特許文献4には、基材樹脂に光拡散剤として平均粒子径1〜30μmの樹脂微粒子を分散させた光拡散性樹脂組成物であって、該樹脂微粒子が、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル、架橋性単量体および他の単量体からなり、基材樹脂の屈折率よりも低い屈折率を有する光拡散性樹脂組成物が提案されているが、該樹脂微粒子重合時の架橋性単量体は、用いる単量体の総量に対して、好ましくは4〜16質量%の範囲と架橋密度が高い微粒子を用いていることから、衝撃強度の低い樹脂組成物と考えられる。
以上のごとく従来技術では、芳香族ポリカーボネートの優れたアイゾット衝撃強度等の諸特性を損なうことなく、全光線透過率や分散度に優れた光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物を得るのが困難であった。
【0004】
【特許文献1】特開平03−143950号公報
【特許文献2】特開平09−003310号公報
【特許文献3】特開平11−060966号公報
【特許文献4】特開2003−335956号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、これら従来技術の問題点を解決し、芳香族ポリカーボネートの優れたアイゾット衝撃強度等の諸特性を損なうことなく、全光線透過率が50%以上で分散度が40度以上の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物、及び該樹脂組成物からなる成形品を低価格で提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため検討を重ね、芳香族ポリカーボネートに、架橋密度が比較的小さい、すなわち膨潤率が比較的大きい微粒子状架橋アクリル重合体を特定量配合することにより、解決し得ることを知り本発明に到達した。すなわち、本発明の要旨は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対し、微粒子状架橋アクリル重合体(B)を1〜15重量部配合してなる組成物であって、該微粒子状架橋アクリル重合体(B)の下記測定法により測定した膨潤率が30%以上であることを特徴とする光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品に存する。
[膨潤率の測定法]
目盛り付き試験管に微粒子状架橋アクリル重合体2.00gを測り取り、これにアセトン5mlを加えて微粒子を充分に湿潤させた後、更にアセトン15mlを加えて静置し、24時間後の粒子層の体積を読み取り、加えたアセトンの体積20mlで除した値を100分率(%)で表した値を膨潤率とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物を用いれば、アイゾット衝撃強度が500J/m以上、全光線透過率が50%以上で分散度が40度以上の成形品を得ることが可能であり、各種照明灯カバー、照明看板,液晶ディスプレイ等の材料として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
芳香族ポリカ−ボネ−ト:
本発明で用いる芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は特に限定されるものではなく、芳香族ジヒドロキシ化合物とホスゲンを反応させる界面重合法,或いは芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを反応させるエステル交換法等の公知の方法で製造される分岐していてもよい熱可塑性芳香族ポリカーボネートである。成形品製造の際、押出成形、ブロー成形、真空成形などの成形法を採用する場合には分岐した芳香族ポリカーボネートが好ましく使用される。また、界面重合法に比べて、工程が比較的単純であり、操作、コスト面で優位性が発揮できるだけでなく、毒性の強いホスゲンや塩化メチレン等のハロゲン系溶剤を使用しないという点において、環境保護の面からも有利なエステル交換法で製造された芳香族ポリカーボネートが特に好ましい。
【0009】
芳香族ジヒドロキシ化合物:
原料の芳香族ジヒドロキシ化合物の代表的例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフォン等が挙げられ、これらの中でも特にビスフェノールAが好ましい。
【0010】
界面重合法による分岐化ポリカーボネート:
界面重合法により分岐した芳香族ポリカーボネートを得るには、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドリキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどで例示されるポリヒドロキシ化合物、或いは3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロロイサチンビスフェノール、5,7−ジクロロイサチンビスフェノール、5−ブロモイサチンビスフェノールなどを前記ジヒドロキシ化合物の一部として、例えば0.1〜2モル%使用すればよい。
【0011】
また、末端停止剤として、フェノール、m−又はp−メチルフェノール、m−又はp−プロピルフェノール、p−ブロモフェノール、p−tert−ブチルフェノール、トリブロモフェノールなどの通常の末端停止剤、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプリル酸、オクチル酸、ラウリル酸、ステアリン酸などの脂肪酸、酢酸クロライド、プロピオン酸クロライド、酪酸クロライド、カプリル酸クロライド、オクチル酸クロライド、ラウリル酸クロライド、ステアリン酸クロライドなどの脂肪酸クロライド、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸エチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、ヒドロキシ安息香酸ブチル、ヒドロキシ安息香酸オクチル、ヒドロキシ安息香酸ノニル、ヒドロキシ安息香酸ステアリル等のヒドロキシ安息香酸アルキルエステル、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ラウリルフェノール、パルミチルフェノール、ステアリルフェノールなどの長鎖アルキルフェノール、p−ヒドロキシフェニル酢酸メチル、p−ヒドロキシフェニル酢酸エチルなどのヒドロキシフェニル酢酸アルキルエステル、オクチルエーテルフェノール、ノニルエーテルフェノール、ラウリルエーテルフェノール、パルミチルエーテルフェノール、オクタデシロキシフェノール、ドデシロキシフェノールなどの長鎖アルキルエーテルフェノールなどが例示される。使用量は用いる芳香族ジヒドロキシ化合物100モルに対して、通常0.8〜10モル、好ましくは2〜7モルの範囲であり、二種以上の化合物を併用することも可能である。
【0012】
エステル交換法による芳香族ポリカーボネート樹脂は、原料として前記芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを用い、エステル交換触媒の存在下、溶融縮重合により製造される。
炭酸ジエステル:
原料の炭酸ジエステルは通常下記式(1)で表される。
【0013】
【化1】

【0014】
(式(1)中、A及びA’は、炭素数1〜18の脂肪族基或いは置換脂肪族基、又は芳香族基或いは置換芳香族基であり、A及びA’は同一であっても異なっていてもよい。)。
上記一般式(1)で表される炭酸ジエステルの具体例としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−tert−ブチルカーボネート等のジアルキルカーボネート、ジフェニルカーボネート、及びジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネート等が例示されるが、好ましくはジフェニルカーボネート、置換ジフェニルカーボネートであり、特にジフェニルカーボネートが好ましい。これらの炭酸ジエステルは単独、或いは2種以上を併用してもよい。
【0015】
エステル交換法芳香族ポリカーボネートを製造するには、通常、芳香族ジヒドロキシ化合物としてビスフェノールAが用いられ、炭酸ジエステルとしてジフェニルカーボネートが用いられるが、ジフェニルカーボネートはビスフェノールA1モルに対して、1.01〜1.3モル、好ましくは1.02〜1.2モルの量で用いられることが好ましい。
エステル交換反応の反応条件は特に限定されるものではなく、公知の方法を採用出来る。
エステル交換法により分岐化ポリカーボネートを得るには、界面法の場合と同様の分岐化剤を使用しても良いが、エステル交換反応の条件を選択することにより、特に分岐化剤を使用することなく,分岐化ポリカーボネートを得ることが出来る。特に、特開2003−119369号に記載されるような条件を採用すると、主鎖中に制御された量の特定の構造単位を含有する流動性が良好な分岐構造を有する芳香族ポリカーボネートが得られるので好ましい。
【0016】
本発明で使用する芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、粘度平均分子量16,000以上であることが好ましい。粘度平均分子量が16,000未満のものは、面衝撃強度等の機械的強度が低下するので好ましくない。面衝撃強度等の機械的強度や成形加工性の点で好ましい粘度平均分子量は、16,000〜60,000の範囲内にあり、特に18,000〜50,000の範囲内が好適である。また、押出成形、ブロー成形、真空成形のような高い溶融張力の必要な成形に用いられる芳香族ポリカーボネートの粘度平均分子量は、20,000〜50,000であることが特に好ましい。
【0017】
微粒子状架橋アクリル重合体:
本発明に使用される微粒子状架橋アクリル重合体(B)は、非架橋性アクリルモノマー(B1)と架橋性モノマー(B2)を懸濁重合して得られる球状微粒子であって、前記方法で測定した膨潤率が30%以上のものである。
原料の非架橋性アクリルモノマー(B1)としては、メタクリル酸メチルを主成分とし、メタクリル酸メチルと共重合可能な単量体、例えば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸エステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、2−ヒドロキシアクリレート等のアクリル酸エステル類、メタアクリル酸、アクリル酸、スチレン、α−メチルスチレン、マレイミドから選ばれる。好ましくはメタクリル酸エステル類がよい。
また、架橋性モノマー(B2)としては例えば、エチレングリコール、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジビニルベンゼン等が挙げられるが、好ましくはエチレングリコールジメタクリレートである。
【0018】
本発明に使用される微粒子状架橋アクリル重合体(B)は、非架橋性アクリルモノマー(B1)100重量部に対し、架橋性モノマー(B2)を0.05〜3重量部、好ましくは0.2〜2重量部配合し、例えばポリビニルアルコールを分散剤として水溶媒中にモノマーを分散させて懸濁重合を行い、ろ過、洗浄、篩がけ、乾燥することにより製造することが出来る。なお、架橋性モノマー(B2)の配合量が0.05重量部未満では、得られる微粒子状架橋アクリル重合体(B)が成形品中で球状に分散しないので分散性が低下する。逆に、架橋性モノマー(B2)の配合量が3重量部を越えると、得られる微粒子状架橋アクリル重合体の膨潤率が30%未満の硬い粒子となり、これを配合して得られる樹脂組成物のアイゾット衝撃強度が低下するので好ましくない。微粒子状架橋アクリル重合体(B)の粒径は0.1〜30μm、好ましくは0.3〜20μm、特に好ましくは0.5〜10μmである。粒径が0.1μm未満では光拡散性が低下し、30μmを越えると光拡散性にムラが生じ、ぎらつきが感じられ、さらにはアイゾット衝撃強度も低下する惧れがある。
【0019】
本発明の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対し、微粒子状架橋アクリル重合体(B)を1〜15重量部配合する。(B)の配合量が1重量部未満であると、光拡散効果が充分でなく、一方、15重量部を超えると光透過性やアイゾット衝撃強度が低下し好ましくない。なお、微粒子状架橋アクリル重合体(B)の配合量は、成形品の肉厚によって加減すべきであり、例えば成形品肉厚1〜4mmの場合、微粒子状架橋アクリル重合体(B)の配合量は1〜4重量部が好ましく、成形品肉厚0.1〜1mmの場合、微粒子状架橋アクリル重合体(B)の配合量は、2〜10重量部が好ましい。
【0020】
光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物の製法
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)への微粒子状架橋アクリル重合体(B)の添加時期、添加方法については特に制限は無く、公知の種々の方法を採用出来る。例えば(B)の添加時期としては、芳香族ポリカーボネートの重合反応の途中、重合反応終了時又はエステル交換法により芳香族ポリカーボネートを製造する場合には、重合に使用した触媒を触媒失活剤で失活後、ペレット化する前等の芳香族ポリカーボネート樹脂が溶融した状態で添加することができる。或いは、ペレット又は粉末等の固体状態の芳香族ポリカーボネート樹脂とブレンドした後、単軸または2軸以上の押出機等で混練することも可能である。しかし、エステル交換法により製造した芳香族ポリカーボネート樹脂を使用する場合には、重合反応の途中、重合反応終了時または重合に使用した触媒を触媒失活剤で失活後、ペレット化する前のいずれかに添加することが、分解抑制や着色抑制の観点から好ましい。
【0021】
本発明の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲でリン系、イオウ系、ヒンダードフェノール系などの熱安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、難燃剤、顔料や染料などの着色剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、滑剤、防曇剤、熱線吸収剤、天然油、合成油、ワックス、ガラス繊維や炭素繊維などの有機系または無機系充填剤、ポリエチレンテレフタレートなどの他の熱可塑性樹脂を添加することもできる。
【0022】
本発明の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物を用いて成形品を得る方法は、特に限定されるものでなく、熱可塑性樹脂組成物について一般に用いられている成形法、例えば、射出成形、射出ブロー成形、射出圧縮成形、ブロー成形、押出成形、熱成形、回転成形等の何れをも適用出来る。特に溶融時の張力及び優れた形状保持特性の必要な押出成形品、シート状成形品からの熱成形用途、ブロー成形による中空成形品及び大型パネル、異型押出しによるツインウォール、3層以上のウォール等の用途には、分岐化ポリカーボネートを用いた光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物が好適である。
【0023】
本発明の光拡散性成形品には、用途によっては、少なくとも1つの表面に、ハードコート層、導電層、帯電防止層、防曇層、赤外線吸収層、光反射性被膜、印刷層、耐候性向上のための層等から選ばれる少なくとも1種の機能層が設けられているのが好ましい。これらの機能層を設ける方法は特に限定されるものではなく、従来から知られている方法によることができる。例えば、芳香族ポリカーボネート樹脂成形品の表面に共押出等の手段を用いて機能層を直接設けることもできるし、機能層を別途熱可塑性樹脂フィルムまたはシートの表面に形成し、これらと芳香族ポリカーボネート樹脂成形品とを積層一体化して機能層を有する成形体とすることもできる。このとき熱可塑性フィルムまたはシートを構成する樹脂は、特に制限はないが、芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレートのようなアクリル系樹脂が好ましい。
【0024】
本発明の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物から得られる成形品としては、優れた全光線透過率と分散度、及び高いアイゾット衝撃強度を必要とする成形品が挙げられ、特に、各種照明灯カバー、照明看板、液晶ディスプレイ等が好適である。また、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)として分岐化ポリカーボネートを使用した光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物の成形品としては、成形加工時に高い溶融張力と優れた形状保持特性の要求される押出成形品、シート状成形品からの熱成形用途、ブロー成形による中空成形品及び大型パネル、異型押出しによるツインウォール、3層以上のウォール成形品等が好適である。
【実施例】
【0025】
以下本発明を実施例及び比較例を用いてより詳細に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の例において、特記しない限り、部は重量部であり、パーセントは重量パーセントである。
また以下の例で使用した材料及び評価法は次の通りである。
<評価法>
【0026】
(1)全光線透過率:長さ90mm、幅50mm、厚み3mmの試験片を用い、日本電色工業(株)製のヘーズメーターNDH−2000を使用して、その厚み方向の透過率を測定した。
(2)分散度:長さ90mm、幅50mm、厚み3mmの試験片を用い、(株)村上色彩技術研究所製の変角光度計GP−5を使用して測定した。分散度とは試験片の厚み方向に平行な光線を試験片中央部に入射させ、入射光に平行な透過光量を100としたとき、その透過光量が50になるときの角度を言う。なお、光源から発せられた可視光線を効率よく照射させ、かつ、光源の眩しさを低減するには、全光線透過率と分散度ができるだけ高い材料が求められる。
(3)ノッチ付アイゾット衝撃強度:ASTM D256に準じて測定した。
<材料>
【0027】
(1)PC:芳香族ポリカーボネート樹脂〔三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製「ユーピロンS−3000F」、粘度平均分子量=21000、界面重合法製品。
(2)PMMA:微粒子状架橋アクリル重合体、下記製造例に従い、架橋性モノマーの量を変えて製造した。
【0028】
微粒子状アクリル重合体(B)の製造例
イオン交換水にポリビニルアルコールを混合し、その溶液にメチルメタクリレート95重量部、表−1に示す量のエチレングリコールジメタクリレート(EG)、及びこの2者の合計100重量部に対し、パーオキサイド1重量部を注入後、分散させ、80℃で懸濁重合させた。その後、その溶液に2−ヒドロキシエチルメタクリレート5重量部及びパーオキサイド0.25重量部を加えて更に80℃で重合反応させた後、順次脱水、イオン交換水による洗浄、脱水して湿粉を得た。それにイオン交換水を加えて懸濁させた後、50℃で塩酸を添加し、更に10%トルエン液を添加して60℃に保った後、ろ過、イオン交換水で洗浄、乾燥、篩がけを行って,粒径約6μmのポリメタクリル酸メチル微粒子B−1〜B−5を得た。得られた微粒子に付き前記方法により膨潤率を測定した。結果を表−1に示した。
【0029】
【表1】

【0030】
*1:アクリル重合体粒子はメルト状となり、粒状は呈さない。
実施例1〜3及び比較例1〜3
前記製造例で製造された微粒子状アクリル重合体と芳香族ポリカーボネート樹脂を表−2に示す割合でドライブレンドした後、スクリュー径40mmのベント付き単軸押出機〔いすず機械(株)製:SV−40〕により、シリンダー温度270℃で溶融混練し、押出し、ストランドカットして得られたペレットを120℃で6時間、熱風循環式乾燥機により乾燥した。その後射出成形機〔(株)名機製作所製:M150AII−SJ〕により、シリンダー温度280℃、金型温度80℃で、各評価用試験片を成形し、評価した。評価結果を表−2に示した。
【0031】
【表2】

【0032】
実施例4
特開2003−119369号公報の実施例2記載のエステル交換法で製造され、粘度平均分子量が24,500の分岐化ポリカーボネート樹脂組成物98重量部と、前記製造例で製造された微粒子状アクリル重合体(B−2)2重量部をドライブレンドした後、スクリュー径40mmのベント付き単軸押出機〔いすず機械(株)製:SV−40〕の先端に賦形ダイを取り付け、シリンダー温度270℃で溶融混練し、図1に示した断面形状のツインウォール(ウォール部の厚みが夫々0.5mm、2つのウォール部間の距離6,5mm)を押出し成形した。光拡散性を評価する為、得られたツインウォール成形体を通して光源(電灯)を観察したところ、直接光源は見えないが、明るく、光拡散性は良好であった。
【0033】
比較例4
微粒子状アクリル重合体(B−2)を配合しない以外は実施例4と同様にしてツインウォール成形体を得た。得られたツインウォール成形体を通して光源(電灯)を観察したところ、直接光源を確認することが出来て光拡散性は不良であった。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施例4及び比較例4で製造したツインウォール成形体の断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対し、微粒子状架橋アクリル重合体(B)を1〜15重量部配合してなる組成物であって、該微粒子状架橋アクリル重合体(B)の下記測定法により測定した膨潤率が30%以上であることを特徴とする光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物。
[膨潤率の測定法]
目盛り付き試験管に微粒子状架橋アクリル重合体2.00gを測り取り、これにアセトン5mlを加えて微粒子を充分に湿潤させた後、更にアセトン15mlを加えて静置し、24時間後の粒子層の体積を読み取り、加えたアセトンの体積20mlで除した値を100分率(%)で表した値を膨潤率とする。
【請求項2】
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)が分岐ポリカーボネートである請求項1記載の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)がエステル交換法によって得られた分岐ポリカーボネートである請求項1または2に記載の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物より形成された光拡散性成形品。
【請求項5】
成形品がツインウォ−ル成形品または3層以上のウォ−ルを有する光拡散性成形品である請求項4に記載の光拡散性成形品。

【図1】
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