説明

光拡散性樹脂組成物及びそれを用いた光拡散部材並びにバックライト装置

【課題】優れた光拡散性を有するとともに、角度によって拡散光に生じる色の差が抑制されており、照明カバーや各種ディスプレイ等の用途に適した光拡散性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】平均粒子径が1μm以上、30μm以下であり、比表面積が500m2/g以上、800m2/g以下であり、且つ、細孔径が3nm以下である多孔性シリカ微粒子を、透光性樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上、20質量部以下の割合で分散してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光拡散性樹脂組成物及びそれを用いた光拡散部材に関する。より詳しくは、優れた光拡散性を有するとともに、角度によって拡散光に生じる色の差が抑制された、照明カバーや照明看板、液晶ディスプレイ等の各種ディスプレイなどの用途に好適に用いられる光拡散性樹脂組成物、及びそれを用いた光拡散部材並びにバックライト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、照明カバーや各種ディスプレイなどに用いられている光拡散性部材としては、無機系或いは有機系の微粒子を基材樹脂である透光性樹脂中に分散させた材料を成形したものが一般に使用されている。該光拡散性部材は、透明性を有する基材樹脂とこれに分散させた微粒子との屈折率差により、基材樹脂と微粒子との界面で光線を散乱或いは反射させ、光拡散性を持たせる方法が広く用いられている。この場合の透光性樹脂としては、メタクリル樹脂、(メタ)アクリル−スチレン系共重合樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、シクロオレフィン系共重合樹脂、塩化ビニル樹脂等が通常用いられている。
【0003】
上記照明カバーや各種ディスプレイ等の商品においては、より明るく且つ均一であることが強く求められているため、これらの商品に用いられる光拡散性材料には、より光を透過し、且つ光を十分に拡散させる性能が必要となる。
【0004】
従来、光の透過性が高く、且つ光の光拡散性能に優れるという、相反する性能を兼ね備える部材を得る方法として、例えば、酸化チタン、ガラス等の無機微粒子やポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン等の架橋有機微粒子を光拡散剤として基材樹脂に配合する方法が検討されている。
【0005】
しかしながら、光拡散剤として無機微粒子を使用した場合には、光線透過率が低下しやすい、成形時の機械破損などを招きやすい、均一に光が拡散しない等の課題が発生する場合があった。また、有機微粒子としてポリメタクリル酸メチル架橋微粒子を用い、これを基材樹脂であるメタクリル樹脂に添加した場合には、光透過率は向上するものの、両者の屈折率差が小さくなり満足できる光拡散性が得られないという課題があった。一方、有機微粒子として架橋ポリスチレン微粒子を用いた場合には、該微粒子と基材樹脂としてのメタクリル樹脂との屈折率差が大きいので光拡散性は高くなるものの、架橋ポリスチレン微粒子のアッベ数が小さいので該架橋微粒子とメタクリル樹脂とのアッベ数の差が大きくなり、拡散光は見る角度によって色の差が生じてしまうといった課題があった。
【0006】
より具体的には、透明性樹脂に、特定範囲の屈折率差と粒径を有する架橋ポリマー粒子を含有させる方法(例えば、特許文献1参照)、特定の構造と粒径を有するシリコーン樹脂粒子を含有させる方法(例えば、特許文献2参照)等も提案されているが、これらの場合においても、透明性、光拡散性(特に見る角度によって見える色の差)等の性能の点で、市場の要求を十分に満足しているとは言いがたい状況にあった。
【0007】
また、メタクリル樹脂に、メタクリル酸メチル、スチレン及びアルキルアクリレートからなり特定のパラメーターを満足する架橋樹脂微粒子を分散させることにより、優れた光拡散性を持ち、正面輝度が高い光拡散性樹脂が得られること(例えば、特許文献3参照)が提案されている。
【0008】
しかしながら、このような光拡散性樹脂は、メタクリル樹脂にポリスチレン架橋微粒子を分散させたものに比べて正面輝度は向上しているが、光拡散性は必ずしも満足できるものではなかった。
【0009】
また、透明性樹脂に、特定のパラメーターを満足する多孔性シリカ微粒子を分散させることにより、光の透過性が高く、且つ、優れた光拡散性を持つ光拡散性樹脂が得られること(例えば、特許文献4参照)が提案されている。
【0010】
しかしながら、特許文献4に記載の多孔性シリカ微粒子は、光拡散性樹脂組成物を得るべく、特許文献4に記載の多孔性シリカ微粒子と透光性樹脂とを汎用な手法である溶融混練により光拡散性樹脂組成物を調製した時、前記多孔性シリカ微粒子の空孔部に前記透光性樹脂が埋没しやすく、結果、光拡散性は必ずしも満足できるものではなかった。
【0011】
【特許文献1】特開昭63−291001号公報
【特許文献2】特開平3−207743号公報
【特許文献3】特開平10−67829号公報
【特許文献4】特開平5−179054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたもので、その目的は、優れた光拡散性を有するとともに、角度によって拡散光に生じる色の差が抑制され、照明カバーや各種ディスプレイ等の用途に適した光拡散樹脂組成物、及びそれを用いた光拡散部材並びにバックライト装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の物性を有する多孔性シリカ微粒子を透光性樹脂に一定の割合で分散させた樹脂組成物を用いることにより、上記目的に合致した優れた光拡散部材が得られることを見出し、本発明に至った。
【0014】
即ち、本発明の要旨は、平均粒子径が1μm以上、30μm以下であり、比表面積が500m2/g以上、800m2/g以下であり、且つ、細孔径が3nm以下である多孔性シリカ微粒子を、透光性樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上、20質量部以下の割合で分散してなることを特徴とする、光拡散性樹脂組成物に存する(請求項1)。
【0015】
ここで、多孔性シリカ微粒子の金属不純物の合計含有量が500ppm以下であることが好ましい(請求項2)。
【0016】
また、多孔性シリカ微粒子が、アルコキシシランの加水分解とそれに続く縮合により得られるシリカヒドロゲルを乾燥し、粉砕して得られたものであることが好ましい(請求項3)。
【0017】
また、透光性樹脂として、(メタ)アクリル系樹脂及び(メタ)アクリル−スチレン系共重合樹脂の少なくとも何れかを含有することが好ましい(請求項4)。
【0018】
また、本発明の別の要旨は、上述の光拡散性樹脂組成物が成形されてなることを特徴とする、光拡散部材に存する(請求項5)。
【0019】
また、本発明の別の要旨は、光源と、前記光源の背面に設けられ、前記光源からの光を反射する反射部材と、前記光源からの直射光及び前記反射部材からの反射光を拡散透過する光拡散部材とを少なくとも備えたバックライト装置であって、該光拡散部材が、上述の光拡散部材であることを特徴とする、バックライト装置に存する(請求項6)。
【0020】
また、上述の光拡散部材は、液晶部とバックライト装置とを少なくとも備えた液晶ディスプレイにおいて、該バックライト装置の光拡散部材として用いられることが好ましい(請求項7)。
【発明の効果】
【0021】
本発明の光拡散性樹脂組成物及びそれを用いた光拡散部材並びにバックライト装置は、優れた光拡散性を有するとともに、角度によって拡散光に生じる色の差が抑制されており、照明カバーや各種ディスプレイ等の用途に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々に変更して実施することができる。
【0023】
[I.光拡散性樹脂組成物]
本発明の光拡散性樹脂組成物は、特定の物性を有する多孔性シリカ微粒子(以下適宜「本発明の多孔性シリカ微粒子」と略称する。)を、基材樹脂である透光性樹脂に対し所定の割合で分散させたものである。
【0024】
[I−1.多孔性シリカ微粒子]
(平均粒子径)
本発明の多孔性シリカ微粒子は、その平均粒子径が、通常1μm以上、好ましくは2μm以上、また、通常30μm以下、好ましくは20μm以下、更に好ましくは10μm以下の範囲である。多孔性シリカ微粒子の平均粒子径が小さ過ぎると、これを基材樹脂中に分散させて得られる樹脂組成物は、短波長の光を選択的に散乱するため、透過光が黄色を帯びやすく好ましくない。一方、多孔性シリカ微粒子の平均粒子径が大き過ぎると、これを基材樹脂中に分散させて得られる樹脂組成物は、光拡散性が低下したり、光が樹脂を透過したときにシリカ粒子が異物として目視されやすくなったりする場合があり好ましくない。
【0025】
なお、本明細書でいう平均粒子径とは、原則として、実施例の欄で後述するように、レーザー回折式粒度分布計を用いた実測によって得られる平均粒子径を意味する。但し、電子顕微鏡観察により得られた写真を用いた実測によって求めてもよい。
【0026】
本発明の多孔性シリカ微粒子は、光拡散性と光透過性とのバランスに優れ、光拡散性樹脂組成物の成形体とした場合に成形体の部位により光源の像が透けて見えないように、粒子径がある範囲内で揃っていることが好ましい。具体的には、例えば、粒子径分布の指標として後述する変動係数(CV値)が、通常50%以下、中でも30%以下であることが好ましい。
【0027】
(比表面積)
また、本発明の多孔性シリカ微粒子の比表面積は、通常500m2/g以上、好ましくは600m2/g以上、また、通常800m2/g以下、好ましくは780m2/g以下の範囲である。多孔性シリカ微粒子の比表面積が小さ過ぎると、これを基材樹脂中に分散させて得られる樹脂組成物は、光拡散性が低くなる傾向にあり好ましくない。一方、多孔性シリカ微粒子の比表面積が大き過ぎると、該多孔性シリカ微粒子の強度が不十分となり、これを基材樹脂中に分散させる際、圧潰等によって該多孔性シリカ微粒子が破壊され易くなり、このため得られる樹脂組成物の光拡散性が低くなる傾向があり好ましくない。
【0028】
なお、本明細書でいう比表面積とは、実施例の欄で後述するように、BET法(N2)により得られる比表面積を意味する。
【0029】
(細孔径)
更に、本発明の多孔性シリカ微粒子は、その細孔径が通常3.0nm以下、好ましくは2.5nm以下、より好ましくは2.0nm以下の範囲であることを特徴とする。該シリカ微粒子の細孔径が大き過ぎると、これを基材樹脂中に分散させて得られる樹脂組成物は、前記多孔性シリカ微粒子の空孔部に基材樹脂が埋没しやすく、結果、光拡散性が低下するため好ましくない。特に、細孔径が50nmより大きい場合には、短波長の光を選択的に散乱するため、透過光が黄色を帯びやすく好ましくない。
【0030】
なお、本明細書でいう細孔径とは、後述するように窒素ガス吸着法を用いた実測によって得られる平均細孔径を意味する。
【0031】
(不純物元素)
本発明の多孔性シリカ微粒子は、シリカ中に存在することでその物性に影響を与えることが知られている、アルカリ金属,アルカリ土類金属,周期表の3A族,4A族及び5A族並びに遷移金属からなる群に属する金属元素(不純物元素)の合計の含有率が非常に低く、極めて高純度であることが好ましい。具体的には、上述の不純物元素の含有率が、通常500ppm以下、中でも100ppm以下、更には50ppm以下、特に30ppm以下であることが好ましい。中でも、多孔性シリカ微粒子の物性に与える影響が特に大きい、アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群に属する元素の総含有率が、通常100ppm以下、中でも50ppm以下、更には30ppm以上、特に10ppm以下であることが好ましい。このように不純物の影響が少ないことが、本発明の多孔性シリカ微粒子が光拡散部材の拡散剤として用いられた場合に、光拡散部材としての高い光拡散性能や耐久性を発現できる大きな要因の一つである。
なお、多孔性シリカ微粒子の金属不純物含有量は、実施例に記載の手順等により誘導結合高周波プラズマ(ICP)分光分析を行なうことにより、測定することができる。また、ナトリウム及びカリウムの含有量は、フレーム発光分光法で分析することができる。
【0032】
(屈折率)
本発明の多孔性シリカ微粒子は、多孔性シリカ微粒子を構成しているマトリクス部分の屈折率が、後述の基材樹脂(透光性樹脂)の屈折率と同じか或いはそれよりも低い屈折率を有するものであることが、見る角度によって色の差が発生することを防止する観点から好ましい。例えば、多孔性シリカ微粒子を構成しているマトリクス部分の屈折率が基材樹脂の屈折率よりも大きい場合には、光拡散性は高くなるものの、基材樹脂と多孔性樹脂微粒子とのアッベ数の差が大きくなり、拡散光が見る角度によって色の差が生じやすくなることがある。
【0033】
[I−2.多孔性シリカ微粒子の製造方法]
本発明の多孔性シリカ微粒子を製造する方法としては、上述の各要件を満足する多孔性シリカ微粒子が得られる方法である限り、特に制限されないが、例えば、下記(1)〜(3)の方法が挙げられる。
【0034】
(1)珪酸ナトリウムを主原料とする方法(多孔質体の性質とその応用技術、竹内雍監修、フジテクノシステム発行、1999、p70等参照)。
(2)除去可能な鋳型を用いて細孔を形成する方法(特開平4−238810号公報等参照)。
(3)アルコキシシランを主原料とする方法(R. Iler, "The Colloid Chemistry of Silica and Silicate", Cornell Univ. Press, 1955, p.72 等参照)。
【0035】
これらの方法のうち、最後に記載した方法、いわゆるゾルゲル法により製造する方法が、所望の多孔性シリカ微粒子を得ることができ、該多孔性シリカ微粒子を基材に配合することにより光拡散性に優れかつ光源イメージの透過を防ぐことができるなどの観点から好ましく採用される。
【0036】
上記方法により得られるシリカ微粒子の内部に多孔が形成されるメカニズムは、必ずしも明らかではないが、例えば、上記(3)の方法においては、アルコキシシランの加水分解によって生成した珪酸が凝集・縮合することによって粒子状に成長し、その粒子が結合して生じた粒子間の空隙が細孔となるものと考えられる。その結果、比表面積及び細孔径が狭い範囲に揃えられた多孔性シリカ微粒子を得ることができると考えられる。
【0037】
本発明の多孔性シリカ微粒子の原料として使用されるアルコキシシラン類としては、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、トリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等の炭素数1〜4の低級アルキル基を有するトリ又はテトラアルコキシシラン或いはそれらのオリゴマーが挙げられるが、好ましくはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン及びそれらのオリゴマーである。以上のアルコキシシラン類は蒸留により容易に精製し得るので、高純度のシリカの原料として好適である。アルコキシシラン中のアルカリ金属又はアルカリ土類金属に属する不純物元素(金属不純物)の総含有量は、通常100ppm以下、中でも50ppm以下、更には30ppm以下、特に10ppm以下の範囲が好ましい。これらのいわば金属不純物の含有率は、一般的なシリカ中の不純物含有率の測定法と同じ方法で測定できる。
【0038】
アルコキシシラン類の加水分解は、アルコキシシラン1モルに対して、通常2モル以上、好ましくは3モル以上、更に好ましくは4モル以上、また、通常20モル以下、好ましくは10モル以下、更に好ましくは8モル以下の水を用いて行なう。アルコキシシランの加水分解により、シリカのヒドロゲルとアルコールとが生成する。この加水分解反応は、通常、室温から100℃程度であるが、加圧下で液相を維持することで、より高い温度で行なうことも可能である。また、加水分解時には必要に応じて、水と相溶性のあるアルコール類等の溶媒を添加してもよい。具体的には、炭素数1〜3の低級アルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、テトラヒドロフラン、メチルセロルブ、エチルセロルブ、メチルエチルケトン、その他の水と任意に混合できる有機溶媒を任意に用いることができるが、中でも強い酸性や塩基性を示さないものが、均一なシリカヒドロゲルを生成できる理由から好ましい。
【0039】
反応時間は、反応液組成(アルコキシシランの種類や、水とのモル比)並びに反応温度に依存し、ゲル化するまでの時間が異なるので、一概には規定されない。なお、反応系に触媒として、酸、アルカリ、塩類などを添加することも可能であるが、不純物が多孔性シリカ微粒子中に残存し、光拡散部材の拡散剤として用いられた場合の、光拡散部材としての光拡散性能や耐久性に影響するため好ましくない。
【0040】
上記のアルコキシシラン類の加水分解反応では、アルコキシシランが加水分解してシリケートが生成するが、引き続いて該シリケートの縮合反応が起こり、反応液の粘度が上昇し、最終的にゲル化してシリカヒドロゲルとなる。
【0041】
シリカヒドロゲルにはアルコキシシランの加水分解で生じたアルコール類、未反応のアルコキシシラン、及び/又は、水が含まれる。光拡散剤として有用な多孔性シリカ微粒子とするためには、これらを除く必要があり、乾燥を行なう。シリカヒドロゲルは、通常40℃以上、好ましくは60℃以上、また、通常200℃以下、好ましくは120℃以下で乾燥する。乾燥方法は特に限定されるものではなく、バッチ式でも連続式でもよく、且つ、常圧でも減圧下でも乾燥することができる。
【0042】
乾燥後、原料のアルコキシシランに由来する炭素分が含まれている場合には、必要に応じ、通常400〜600℃で焼成除去することができる。あるいは、水洗することも有効である。また、表面状態をコントロールするため、最高900℃の温度で焼成することもある。
【0043】
更に、本発明の多孔性シリカ微粒子は、光拡散部材として優れた機能を発揮するように、粉砕して微粒子化される。粉砕の手法は特に限定されないが、好ましくはビーズミルやジェットミルを用いることができる。光拡散部材の性能に影響する1μm以下の微粒子をできるだけ発生させない観点から、ジェットミルが好ましい。また、同様の視点から、粉砕生成物を気力分級などの方法で分級することも、最終的に目的とする粒子径の多孔性シリカ微粒子を得られるため好ましい。
【0044】
[I−3.透光性樹脂(基材樹脂)]
本発明の光拡散性樹脂組成物に用いられる基材樹脂としては、いわゆる透明性を有する樹脂(これを適宜「透光性樹脂」という。)であれば特に制限されず、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の何れでもよい。具体的には、(メタ)アクリル系樹脂、(メタ)アクリル−スチレン系共重合樹脂、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系共重合樹脂、塩化ビニル系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、アミド系樹脂、イミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂等を挙げることができる。
【0045】
本発明においては、上記の透光性樹脂の中でも、JIS K7136に準拠して測定した光線透過率が80%以上の透明性を有している熱可塑性樹脂が好ましい。これらの具体例としては、(メタ)アクリル系樹脂、(メタ)アクリル−スチレン系共重合樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン系樹脂、シクロオレフィン系共重合樹脂、塩化ビニル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系共重合樹脂等が挙げられる。更に、耐光性、低吸水性の観点から(メタ)アクリル系樹脂、(メタ)アクリル−スチレン系共重合樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン系樹脂、シクロオレフィン系共重合樹脂を用いることが好ましく、特に、メタクリル樹脂、及び/又は、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体を包含する(メタ)アクリル−スチレン系共重合樹脂を用いることがより好ましい。
【0046】
本発明に好適に用いられるメタアクリル系重合体、及び、(メタ)アクリル−スチレン系共重合樹脂を構成する(メタ)アクリル酸エステル系単量体とは、炭素数1〜12のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。該単量体の具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル及びこれらの四級化物などが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。これらのうち、炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル、炭素数1〜8のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル或いはこれらの混合物がより好ましく、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、或いはこれらの混合物が更に好ましく用いられる。
【0047】
また、本発明に好適に用いられる(メタ)アクリル−スチレン系共重合樹脂を構成するスチレン系単量体とは、スチレン、α−メチルスチレン、p−スチレンスルホン酸又はそのナトリウム塩、カリウム塩、又はベンゼン核の一部がアルキル基で置換されたスチレンなどが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。これらのうち、スチレン、α−メチルスチレン、或いはこれらの混合物が、特に好ましく用いられる。
【0048】
そして、他の共重合性単量体としては(メタ)アクリル酸エステル系単量体及びスチレン系単量体と共重合可能な単量体であれば、特に限定されず、例えば、他のエチレン性不飽和単量体を挙げることができ、より具体的には、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類;塩化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化オレフィン類;ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類;マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等のラジカル重合性多塩基酸及びその無水物;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド系単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びそのナトリウム塩等のアミド系単量体;アクリル酸、メタクリル酸或いはN−ビニルピロリドン等を挙げることができる。これらの他の単量体は、単独で用いることもできるし、2種以上を併用することもできる。上記他の単量体は、本発明に好適に用いられる(メタ)アクリル−スチレン系共重合樹脂において必須の成分ではないが、用いる単量体の総量に対して、通常0質量%以上、また、通常40質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下の範囲である。
【0049】
本発明において基材樹脂(透光性樹脂)として好適に用いられる(メタ)アクリル−スチレン系共重合樹脂を製造する方法としては、特に制限されないが、具体的には、重合発熱の除去が容易で、高転化率領域まで重合が可能なため、未反応単量体やスチレン2量体、スチレン3量体を効果的に抑制することができる懸濁重合や、溶液重合、特公昭62−13968号公報記載の塊状重合法により重合させた後、得られた部分重合体をキャスト重合法や懸濁重合法により重合させる方法や、連続的塊状重合法により重合させた後、未反応単量体を回収除去する方法などがある。好ましくは懸濁重合や塊状重合が用いられる。また重合に際して、必要に応じて水溶性高分子、界面活性剤、連鎖移動剤、重合禁止剤等を重合阻害しない範囲で添加してもよい。
【0050】
[I−4.光拡散性樹脂組成物の調製]
本発明においては、粒子径、比表面積、細孔径が上記特定範囲内にある多孔性シリカ微粒子(本発明の多孔性シリカ微粒子)を上述の基材樹脂(透光性樹脂)に分散させることによって、光透過性、光拡散性等をバランスさせた光拡散性樹脂組成物(本発明の光拡散性樹脂組成物)を得ることができる。
【0051】
(組成)
基材樹脂に対する多孔性シリカ微粒子の使用割合は特に限定されないが、強度面を考慮すれば、本発明の効果が奏される限り少量であることが好ましい。具体的には、多孔性シリカ微粒子の割合が、基材樹脂100質量部に対して、通常0.1質量部以上、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、また、通常20質量部以下、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下の範囲である。
【0052】
(分散の手法)
本発明の多孔性シリカ微粒子を基材樹脂へ分散させる方法は特に限定されないが、例えば、基材樹脂ペレットに予め多孔性シリカ微粒子を混合し、これを押出成形又は射出成形してペレットなどの形態で光拡散性樹脂組成物とする方法;基材樹脂を押出成形又は射出成形する際に多孔性シリカ微粒子を添加し成形してペレットなどの形態で光拡散性樹脂組成物とする方法;一度基材樹脂と多孔性シリカ微粒子とを混合した上、マスターバッチ化した後に再度所望の配合量とするべく基材樹脂とマスターバッチ品とを押出成形又は射出成形してペレットなどの形態で光拡散性樹脂組成物とする方法等を採用することができる。更には、基材樹脂の原料となるモノマーと本発明の多孔性シリカ微粒子とを混合し、得られた混合物を公知の手法で重合・成形することにより、本発明の光拡散性樹脂組成物を成形体の状態で(即ち、後述する本発明の光拡散部材の状態で)得ることも可能である。
【0053】
(用途)
本発明の光拡散性樹脂組成物は、通常の熱可塑性樹脂に適用される各種の成形方法によって、任意の形状・寸法に成形し、光拡散部材として使用される(本発明の光拡散性樹脂組成物を成形したものを適宜「本発明の光拡散部材」という。)。成形の手法は特に制限されず、例えば、押出成形、射出成形、ブロー成形、カレンダー成形、プレス成形、溶融紡糸などの各種の成形法が採用可能である。
【0054】
なお、得られる成形体(本発明の光拡散部材)の製品としての商品価値を高めるために、本発明の目的を達成する範囲内で、本発明の光拡散性樹脂組成物に対して他の添加剤、例えば無機顔料や光安定剤等を少量添加することができる。更には、得られる成形体(本発明の光拡散部材)の輝度調整等を目的として、成形と同時に又は別個に成形体の表面をマット、プリズム、光学パターン等の形状にすることも可能である。
【0055】
[II.光拡散部材]
本発明の光拡散部材は、上述した本発明の光拡散性樹脂組成物が成形されてなるものである。本発明の光拡散性樹脂組成物を成形したものでもよく、本発明の光拡散性樹脂組成物の調製と同時にこれを成形したものでもよい。具体的な成形の手法は[I.光拡散性樹脂組成物]の欄で説明した通りである。成形の形状は特に限定されず、光拡散部材の用途に応じて、板状、シート状等の任意の形状とすることが可能である。
【0056】
中でも、本発明の光拡散部材は、上述の様に、優れた光拡散性を有するとともに、角度によって拡散光に生じる色の差が抑制されているという利点を有するため、照明カバーや照明看板、各種ディスプレイ等の光拡散部材として好適に使用できる。中でも、液晶ディスプレイの光拡散部材として使用されることが好ましい。液晶ディスプレイは通常、液晶部と、バックライト装置とを少なくとも備えてなるが、本発明の光拡散部材は、このバックライト装置の光拡散部材として用いられることが好ましい。
【0057】
本発明の光拡散部材が液晶ディスプレイ等の用途に使用される場合、通常は板状に成形され、光拡散板として用いられる。光拡散板の厚みは用途に応じて適宜選択されるが、通常0.8mm以上、中でも1mm以上、また、通常10mm以下、中でも5mm以下の範囲が好ましい。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例を用いて更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例により限定されるものではない。なお、下記の記載中、特に断りのない限り、「%」及び「部」はそれぞれ「質量%」及び「質量部」を表わすものとする。
【0059】
[I.諸物性の測定方法及び評価方法]
後述の各実施例中における諸物性の測定方法及び評価方法を以下に示す。
【0060】
(1)平均粒子径及び変動係数(CV値):
実施例及び比較例によって得られた多孔性シリカ微粒子を、(株)セイシン企業製のレーザー粒度分布計LMS−24で実測することにより、平均粒子径、平均粒子径に対する標準偏差を算出した。
【0061】
また、粒子径分布の指標として、百分率(%)で示される変動係数(CV値)を次式により求めた。
CV = {(平均粒子径に対する標準偏差)/(平均粒子径)}×100
【0062】
(2)細孔径:
実施例及び比較例によって得られた多孔性シリカ微粒子の細孔径は、以下の方法により算出した。
半径r、長さlの円筒状の細孔を仮定すると、V(全細孔容積)=πr2l、S(BET比表面積)=2πrlとなる。V/S=(πr2l)/(2πrl)=r/2であるから、r=2V/Sとなり、d(平均細孔直径)=2r=4V/Sである。ここで、S(BET比表面積)は次項の比表面積の測定法により実測した値を使用した。また、V(全細孔容積)は、対象となる多孔性シリカ微粒子を90℃で通風乾燥し、カンタクローム社製AS−6にて窒素ガスの吸着等温線を測定し、P/Po=0.98の時の吸着容量から細孔容積を求めた。
【0063】
(3)比表面積:
実施例及び比較例によって得られた多孔性シリカ微粒子の比表面積は、対象となる多孔質シリカ微粒子のサンプルについて、カンタクローム社製AS−6にてBET窒素吸着等温線を測定し、P/Po=0.1、0.2、0.3の3点の窒素吸着量からBET多点法を用いて算出した。
【0064】
(4)一般光学特性(全光線透過率及びヘイズ値):
実施例及び比較例において得られた成形試験片(光拡散部材)の一般光学特性(全光線透過率及びヘイズ値)は、ヘイズメータ(DIGITAL HAZE COMPUTER HGM−2DP;スガ試験機(株)製)を用いて測定した。
【0065】
(5)光源イメージの消失状況:
実施例及び比較例において得られた成形試験片(光拡散部材)の正面輝度は、下記の光源を用い下記方法で測定した。
照明光源:冷陰極管(表面輝度:11430cd/cm2)を4本用いた。
測定配置及び測定方法:冷陰極管4本をそれぞれ25mm間隔で平行に配置し、前記冷陰極管表面から15mm離して幅50mmの成形試験片を設置し、目視にて光源イメージの消失状況を観察し、下記のように記号○、△、×で評価した。
〇 : 光源イメージが消失したもの
△ : 光源イメージがぼやけたもの
× : 光源形状が、はっきり認識できるもの
【0066】
(6)輝度及び色座標の角度依存性:
成形試験片の輝度及び色座標の角度依存性は、下記の光源を用い、下記の配置・方法により測定した。
【0067】
光源:照明光源PHL−50(メジロ プレシジョン社製)を用いた。
測定配置:光源からの光を平行光とするため照明光源から70mm離してレンズを設置した。該レンズから50mm離して成形試験片(縦120mm×横120mm×厚み2mmの平板)を回転ステージ上に固定設置し、更に成形試験片表面から700mm離れた位置に輝度計(BM−5A;(株)トプコン製)を固定した。
測定方法:照明光源と輝度計を結んだ線を中心線とし、該中心線に対して垂直方向に成形試験片を固定(2mm板厚方向を光が透過するように固定)し、該角度を0度とした。この状態の輝度及び色座標を測定し、次に回転ステージを回転走査させながら、成形試験片面の輝度値及び色座標を5度間隔で測定した。
なお、正面輝度は、5度間隔で測定した輝度値より、角度0度での輝度値を示し、輝度比率は、5度間隔で求めた輝度値を角度0度で求めた輝度値で除して百分率(%)で示した。
【0068】
(7)金属不純物含有量:
実施例及び比較例によって得られた多孔性シリカ微粒子の金属不純物含有量は、以下の手法で測定した。まず、対象となる多孔質シリカ微粒子のサンプル2.5gにフッ酸を加えて加熱し、乾固させた後、水を加えて50mlとした。この水溶液を用いて誘導結合高周波プラズマ(ICP)分光分析を行なうことにより測定した。
【0069】
[II.実施例及び比較例]
(実施例1)
ガラス製で、上部に大気開放の水冷コンデンサが取り付けてある5Lセパラブルフラスコ(ジャケット付き)に、純水1000gを仕込んだ。80rpmで攪拌しながら、これにテトラメトキシシラン1400gを3分間かけて仕込んだ。水/テトラメトキシシランのモル比は約6/1である。セパラブルフラスコのジャケットには50℃の温水を通水した。引き続き攪拌を継続し、内容物が沸点に到達した時点で、攪拌を停止した。引き続き0.5時間、ジャケットに50℃の温水を通水して生成したゾルをゲル化させた。その後、ゲルを取り出し、目開き600ミクロンのナイロン製網を通してゲルを粉砕し、粉体状のシリカヒドロゲルを得た。このヒドロゲルをガラス製のバットに広げ、真空乾燥機を使って120℃で恒量となるまで減圧乾燥した。
【0070】
得られたシリカを、(株)セイシン企業製のSTJ−200型ジェットミル粉砕機を使用し、平均粒子径(セイシン企業製レーザー粒度分布計LMS−24で分析)が5.8μmとなるように粉砕し、多孔性シリカ微粒子を得た(これを以下適宜「(P−1)」で表わす。)。得られた多孔性シリカ微粒子(P−1)の物性を上述の手法により測定したところ、その平均粒子径は5.8μm、変動係数(CV値)は27.3%、細孔径は2.4nmであり、比表面積は771m2/gであることが確認された。また、金属不純物の含有量は、6.2ppmであった。
【0071】
次に、上述の合成法で得られた多孔性シリカ微粒子1.2gと、(メタ)アクリル−スチレン系共重合樹脂(TX400−300S;電気化学工業(株)製;屈折率1.535)58.8gとを混合し、ラボプラストミル(LABO PLASTOMILL;(株)東洋精機製作所製)を用いて230℃、60rpmの条件下で8分間かけて溶融混練し、光拡散性樹脂組成物を作製した。この光拡散性樹脂組成物を、縦150mm×横50×厚み2mmの金型を用いて、卓上テストプレス((株)神藤金属工業所製)により、230℃、5MPaで圧縮成形し、成形試験片(光拡散部材)を作製した。
【0072】
(実施例2)
実施例1において得られた多孔性シリカ微粒子(P−1)0.6gと、(メタ)アクリル−スチレン系共重合樹脂(TX400−300S;電気化学工業(株)製;屈折率1.535)59.4gとを混合し、ラボプラストミル(LABO PLASTOMILL;(株)東洋精機製作所製)を用いて、230℃、60rpmの条件下で8分間かけて溶融混練することにより、光拡散性樹脂組成物を作製した。得られた光拡散性樹脂組成物を実施例1と同様の手法で圧縮成形することにより、成形試験片(光拡散部材)を作製した。
【0073】
(実施例3)
実施例1において得られた多孔性シリカ微粒子(P−1)3.0gと、(メタ)アクリル−スチレン系共重合樹脂(TX400−300S;電気化学工業(株)製;屈折率1.535)57.0gとを混合し、ラボプラストミル(LABO PLASTOMILL;(株)東洋精機製作所製)を用いて230℃、60rpmの条件下で8分間かけて溶融混練し、光拡散性樹脂組成物を作製した。得られた光拡散性樹脂組成物を実施例1と同様の手法で圧縮成形することにより、成形試験片(光拡散部材)を作製した。
【0074】
(実施例4)
実施例1において得られた多孔性シリカ微粒子(P−1)0.6gと、(メタ)アクリル−スチレン系共重合樹脂(TX800S;電気化学工業(株)製;屈折率1.549)59.4gとを混合し、ラボプラストミル(LABO PLASTOMILL;(株)東洋精機製作所製)を用いて230℃、60rpmの条件下で8分間かけて溶融混練し、光拡散性樹脂組成物を作製した。得られた光拡散性樹脂組成物を実施例1と同様の手法で圧縮成形することにより、成形試験片(光拡散部材)を作製した。
【0075】
(実施例5)
実施例1において得られた多孔性シリカ微粒子(P−1)3.0gと、メタクリル樹脂(パラペットGH−S;(株)クラレ製;屈折率1.492)57.0gとを混合し、ラボプラストミル(LABO PLASTOMILL;(株)東洋精機製作所製)を用いて230℃、60rpmの条件下で8分間かけて溶融混練し、光拡散性樹脂組成物を作製した。得られた光拡散性樹脂組成物を実施例1と同様の手法で圧縮成形することにより、成形試験片(光拡散部材)を作製した。
【0076】
(実施例6)
実施例1で得られた多孔性シリカ微粒子を、(株)マツボー製エルボージェット分級機LABO型を利用し、D90/D10が2.58になるように分級した。なお、D90はセイシン企業製レーザー粒度分布計LMS−24で測定される粒度分布において体積分率が90%になるときの粒子径を示し、D10は同様に体積分率が10%になるときの粒子径を示している。分級により得られた多孔性シリカ微粒子(これを以下適宜「(P−2)」で表わす。)の物性を上述の手法により測定したところ、その平均粒子径は5.3μm、変動係数(CV値)は26.5%、細孔径は2.3nmであり、比表面積は684m2/gであることが確認された。
【0077】
次に、上述の多孔性シリカ微粒子(P−2)0.6gと、(メタ)アクリル−スチレン系共重合樹脂(TX400−300S;電気化学工業(株)製;屈折率1.535)59.4gとを混合し、ラボプラストミル(LABO PLASTOMILL;(株)東洋精機製作所製)を用いて230℃、60rpmの条件下で8分間かけて溶融混練し、光拡散性樹脂組成物を作製した。得られた光拡散性樹脂組成物を実施例1と同様の手法で圧縮成形することにより、成形試験片(光拡散部材)を作製した。
【0078】
(比較例1)
実施例1と同様の方法で得たシリカヒドロゲル450gと純水450gを1Lのガラス製オートクレーブに仕込み、130℃、3時間の条件で水熱処理を行なった。所定時間水熱処理した後、No.5A濾紙で濾過し、得られたシリカゲルを120℃で恒量となるまで真空乾燥した。得られたシリカを、ホソカワミクロン株式会社製ジェットミル100AFGにて粉砕し、多孔性シリカ微粒子(これを以下適宜「(P−3)」で表わす。)を得た。得られた多孔性シリカ微粒子(P−3)の物性を上述の手法により測定したところ、その平均粒子径は5.0μm、変動係数(CV値)は31.5%、細孔径は4.4nmであり、比表面積は696m2/gであることが確認された。
【0079】
次に、上述の多孔性シリカ微粒子(P−3)1.2gと、(メタ)アクリル−スチレン系共重合樹脂(TX400−300S;電気化学工業(株)製;屈折率1.535)58.8gとを混合し、ラボプラストミル(LABO PLASTOMILL;(株)東洋精機製作所製)を用いて230℃、60rpmの条件下で8分間かけて溶融混練し、光拡散性樹脂組成物を作製した。得られた光拡散性樹脂組成物を実施例1と同様の手法で圧縮成形することにより、成形試験片(光拡散部材)を作製した。
【0080】
(比較例2)
水熱処理の条件を150℃、3時間とした他は、比較例1と同様にして多孔性シリカ微粒子(これを以下適宜「(P−4)」で表わす。)を得た。得られた多孔性シリカ微粒子(P−4)の物性を上述の手法により測定したところ、その平均粒子径は3.6μm、変動係数(CV値)は46.4%、細孔径は8.2nmであり、比表面積は457m2/gであることが確認された。
【0081】
次に、上述の多孔性シリカ微粒子(P−4)1.2gと、(メタ)アクリル−スチレン系共重合樹脂(TX400−300S;電気化学工業(株)製;屈折率1.535)58.8gとを混合し、ラボプラストミル(LABO PLASTOMILL;(株)東洋精機製作所製)を用いて230℃、60rpmの条件下で8分間かけて溶融混練し、光拡散性樹脂組成物を作製した。得られた光拡散性樹脂組成物を実施例1と同様の手法で圧縮成形することにより、成形試験片(光拡散部材)を作製した。
【0082】
(比較例3)
水熱処理の条件を200℃、3時間とした以外は、比較例1と同様にして多孔性シリカ微粒子(これを以下適宜「(P−5)」で表わす。)を得た。得られた多孔性シリカ微粒子(P−5)の物性を上述の手法により測定したところ、その平均粒子径は6.2μm、変動係数(CV値)は23.1%、細孔径は11.5nmであり、比表面積は360m2/gであることが確認された。
【0083】
次に、上述の多孔性シリカ微粒子(P−5)1.2gと、(メタ)アクリル−スチレン系共重合樹脂(TX400−300S;電気化学工業(株)製;屈折率1.535)58.8gとを混合し、ラボプラストミル(LABO PLASTOMILL;(株)東洋精機製作所製)を用いて230℃、60rpmの条件下で8分間かけて溶融混練し、光拡散性樹脂組成物を作製した。得られた光拡散性樹脂組成物を実施例1と同様の手法で圧縮成形することにより、成形試験片(光拡散部材)を作製した。
【0084】
(比較例4)
水熱処理の直前にシリカゲルを450gの純水で3回水洗(デカンテーションで固液分離後に再注水する方法で行った)した以外は、比較例3と同様にして多孔性シリカ微粒子(これを以下適宜「(P−6)」で表わす。)を得た。得られた多孔性シリカ微粒子(P−6)の物性を上述の手法により測定したところ、その平均粒子径は4.6μm、変動係数(CV値)は35.3%、細孔径は15.7nmであり、比表面積は297m2/gであることが確認された。
【0085】
次に、上述の多孔性シリカ微粒子(P−6)1.2gと、(メタ)アクリル−スチレン系共重合樹脂(TX400−300S;電気化学工業(株)製;屈折率1.535)58.8gとを混合し、ラボプラストミル(LABO PLASTOMILL;(株)東洋精機製作所製)を用いて230℃、60rpmの条件下で8分間かけて溶融混練し、光拡散性樹脂組成物を作製した。得られた光拡散性樹脂組成物を実施例1と同様の手法で圧縮成形することにより、成形試験片(光拡散部材)を作製した。
【0086】
(比較例5)
水熱処理の条件を230℃、3時間とした以外は、比較例1と同様にして多孔性シリカ微粒子(これを以下適宜「(P−7)」で表わす。)を得た。得られた多孔性シリカ微粒子(P−7)の物性を上述の手法により測定したところ、その平均粒子径は4.7μm、変動係数(CV値)は34.7%、細孔径は24.6nmであり、比表面積は204m2/gであることが確認された。
【0087】
次に、上述の多孔性シリカ微粒子(P−7)1.2gと、(メタ)アクリル−スチレン系共重合樹脂(TX400−300S;電気化学工業(株)製;屈折率1.535)58.8gとを混合し、ラボプラストミル(LABO PLASTOMILL;(株)東洋精機製作所製)を用いて230℃、60rpmの条件下で8分間かけて溶融混練し、光拡散性樹脂組成物を作製した。得られた光拡散性樹脂組成物を実施例1と同様の手法で圧縮成形することにより、成形試験片(光拡散部材)を作製した。
【0088】
(比較例6)
市販の真球状ガラス微粒子(EMB−20;平均粒子径は9.3μm、変動係数(CV値)は44.5%、細孔なし、比表面積:2.8m2/g;東芝ポッターズ・バロティーニ(株)製)1.2gと、(メタ)アクリル−スチレン系共重合樹脂(TX400−300S;電気化学工業(株)製;屈折率1.535)58.8gとを混合し、ラボプラストミル(LABO PLASTOMILL;(株)東洋精機製作所製)を用いて230℃、60rpmの条件下で8分間かけて溶融混練することにより、光拡散性樹脂組成物を作製した。得られた光拡散性樹脂組成物を実施例1と同様の手法で圧縮成形することにより、成形試験片(光拡散部材)を作製した。
【0089】
(比較例7)
比較例6で使用したものと同様の真球状ガラス微粒子3.0gと、(メタ)アクリル−スチレン系共重合樹脂(TX400−300S;電気化学工業(株)製;屈折率1.535)57.0gとを混合し、ラボプラストミル(LABO PLASTOMILL;(株)東洋精機製作所製)を用いて230℃、60rpmの条件下で8分間かけて溶融混練し、光拡散性樹脂組成物を作製した。得られた光拡散性樹脂組成物を実施例1と同様の手法で圧縮成形することにより、成形試験片(光拡散部材)を作製した。
【0090】
[III.結果及び評価]
上述の各実施例及び各比較例において得られた光拡散性組成物の成形試験片(光拡散部材)について、上述の手順に従って各種特性の測定を行なった。得られた全光線透過率、ヘイズ値、光源イメージの消失状況、及び正面輝度を表1に、輝度比率の角度依存性を表2に、色座標の角度依存性を表3及び表4にそれぞれ示す。
【0091】
【表1】

【0092】
【表2】

【0093】
【表3】

【0094】
【表4】

【0095】
表1に記載した実施例1の結果と比較例1〜5の結果との対比から、本発明の多孔性シリカ微粒子を含有させることにより、光源イメージを消失させる優れた光拡散性を有することが分かる。
【0096】
また、表1に記載した実施例1〜3の結果と比較例6〜7の結果との対比から、シリカ微粒子に空孔を設けることで、光源イメージを消失させる優れた光拡散性を有することが分かる。
【0097】
また、表2に記載した実施例1及び比較例1〜5における輝度比の角度依存性を見ると、多孔性シリカ微粒子の細孔径が小さいほど優れた光拡散性を有することが分かる。
【0098】
また、表3及び表4に記載した実施例1〜5及び比較例1〜7における色座標の角度依存性を見ると、本発明の多孔性シリカ微粒子を含有させた光拡散性樹脂組成物からなる成形試験片は、角度によって拡散光に生じる色の差が抑制されていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の光拡散性樹脂組成物、及びそれを用いて形成された光拡散部材は、広範囲な各種の分野に適用可能であるが、特に、照明カバーや各種のディスプレイ等の用途に好適に利用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が1μm以上、30μm以下であり、比表面積が500m2/g以上、800m2/g以下であり、且つ、細孔径が3nm以下である多孔性シリカ微粒子を、透光性樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上、20質量部以下の割合で分散してなる
ことを特徴とする、光拡散性樹脂組成物。
【請求項2】
該多孔性シリカ微粒子の金属不純物の合計含有量が500ppm以下である
ことを特徴とする、請求項1記載の光拡散性樹脂組成物。
【請求項3】
該多孔性シリカ微粒子が、アルコキシシランの加水分解とそれに続く縮合により得られるシリカヒドロゲルを乾燥し、粉砕して得られたものである
ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の光拡散性樹脂組成物。
【請求項4】
該透光性樹脂として、(メタ)アクリル系樹脂及び(メタ)アクリル−スチレン系共重合樹脂の少なくとも何れかを含有する
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の光拡散性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の光拡散性樹脂組成物が成形されてなる
ことを特徴とする、光拡散部材。
【請求項6】
光源と、前記光源の背面に設けられ、前記光源からの光を反射する反射部材と、前記光源からの直射光及び前記反射部材からの反射光を拡散透過する光拡散部材とを少なくとも備えたバックライト装置であって、
該光拡散部材が、請求項5記載の光拡散部材である
ことを特徴とする、バックライト装置。
【請求項7】
液晶部とバックライト装置とを少なくとも備えた液晶ディスプレイにおいて、該バックライト装置の光拡散部材として用いられる
ことを特徴とする、請求項5記載の光拡散部材。

【公開番号】特開2007−178820(P2007−178820A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−378603(P2005−378603)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000230652)日本化成株式会社 (85)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】