説明

光束制御部材、これを備えた光学装置および光束整形方法

【課題】所望の配光特性を簡便かつ確実に得ることができるとともに、得られる配光特性の多様化およびこれにともなう汎用性の向上を図ることができる光束制御部材、これを備えた光学装置および光束整形方法を提供すること。
【解決手段】入射領域2は、光源4から出射された光を、光軸全体を含む任意の仮想平面上における光軸を基準として対称な所定の2方向において光強度の最大値を示すような第1の配光特性を有する光に整形し、出射領域3は、入射領域2によって整形された第1の配光特性を有する光を、所望の配光特性である第2の配光特性を有する光に整形すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光束制御部材、これを備えた光学装置および光束整形方法に係り、特に、光源から出射された光を所望の配光特性を有する光に整形して被照射面に照射するのに好適な光束制御部材、これを備えた光学装置および光束整形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、薄型化および軽量化に適した光束制御部材として、光の入射領域が同心円環状(輪帯状)の複数の領域に分割された断面鋸刃状の形状(以下、フレネル形状と称する)を有する光束制御部材(いわゆるフレネルレンズ)が知られており、この種の光束制御部材は、薄型化が特に有利な用途(例えば、ルーペ、照明系)等に用いられていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の光束制御部材を照明用途の製品に組み込む場合には、フレネル形状に形成された入射領域側に、LED(発光ダイオード:Light Emitting Diode)等の光源(発光素子)を、この光源から出射される光(光束)の中心軸(中心光)が光束制御部材の光軸と同軸となるように位置合わせを行った上で固定するようになっていた。
【0004】
また、この種の光束制御部材におけるフレネル形状には、光源から出射された光を屈折させる屈折面のみを備えたタイプのものと、屈折面だけでなく反射面も備えたタイプのものとがあったが、後者は、光源から出射された光を効率良く利用する上で前者よりも有利であった。
【0005】
具体的には、光源の一例としてのLEDは、いわゆるランバーシアン分布にしたがった配光特性を有する広がり角が大きい光を出射するようになっており、この光を照明等の用途に効率的に利用するには、その光を光束制御部材によって光軸側に収束させて、指向性を高めたいという市場の要求がある。そこで、LEDから出射された光を収束させるべく、屈折面のみを備えたフレネル形状を用いる場合には、光束制御部材の入射領域における光の進行方向変化量は屈折面による屈折のみで決まるため、光束制御部材への入射時における光の進行方向(元の進行方向)に対して光束制御部材内を伝搬する光の進行方向は大きな変化を示さないものとなる。このため、特にLEDから広角側に向かって出射された光を屈折によって被照射面側に向かわせることができず、光全体(光束)を十分に収束させることができないことになる。これに対して、反射面を備えたフレネル形状では、光束制御部材に屈折面から入射した光を全反射面で反射して大きく進行方向を変えることが可能であるため、LEDから広角側に向かって出射された光についても、被照射面側に向かわせることができる。これにより、LEDから出射された光を、例えば、光強度(光度)の半値幅が30°〜50°とされた配光特性を有する光に整形することは十分に可能であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−134316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来は、光束制御部材によって得られる配光特性が、入射領域のフレネル形状に大きく依存していたため、得ようとする配光特性によっては、これを実現することが困難な場合があるといった問題が生じていた。例えば、半値幅20°程度の配光特性を得ようとする場合には、これをフレネル形状のみで実現することは、たとえ反射面を備えたフレネル形状を用いる場合であっても難しかった。
【0008】
すなわち、LEDから出射されたランバーシアン分布にしたがった配光特性を有する光の半値角は60°であり、この全光束のうち、元々光軸から20°の範囲内に存在する光(換言すれば、光束制御部材による収束を然程要しない中央側の光)は、全体の12%程度である。このため、光軸から20°よりも大きな角度で出射する残りの大部分の光を光束制御部材によって集光させることによって半値角20°の配光特性とする必要がある。このとき、LEDからほぼ真横(光軸方向に対してほぼ垂直)に出射された光も光軸から20°の範囲内に集光させようとすると70°近く進行方向を変えなければならない。しかるに、このような光の光路を形成する場合には、フレネル形状を構成する突起部の寸法や角度に製造上無理が生じてしまい、この結果、半値幅20°の配光特性を実現するためのフレネル形状を設計通りに形成することが困難となっていた。具体的には、光束制御部材を金型を用いて樹脂成形する場合には、半値幅20°を実現するための尖鋭なフレネル形状では、金型製作が困難であることに加えて、射出成形等における突起部への樹脂材料の充填不足が生じてしまったり、金型からの離型が困難になってしまったりする虞があった。
【0009】
かかる問題は、半値幅20°の配光特性に限らず、所望の配光特性(通常は、用途に応じた形状または明るさの照射光パターンを得るために光強度の分布に規則性を持たせたもの)の形成を入射領域のフレネル形状に大きく依存しようとする場合には同様に起こり得る問題である。
【0010】
また、従来は、フレネル形状が、LEDの光を光軸(0°)側に収束させるように機能していたため、出射領域において得られる配光特性のバリエーションに制約が課されてしまい、用途に応じた光束整形の自由度を確保することが困難であるといった問題も生じていた。
【0011】
そこで、本発明は、このような問題点に鑑みなされたものであり、所望の配光特性を簡便かつ確実に得ることができるとともに、得られる配光特性の多様化およびこれにともなう汎用性の向上を図ることができる光束制御部材、これを備えた光学装置および光束整形方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達成するため、本発明の請求項1に係る光束制御部材の特徴は、光源から出射された光が入射する入射領域と、この入射領域に対して光軸方向において反対側に位置し、前記入射領域に入射した光を被照射面側へ向けて出射させる出射領域とを有し、前記光源から出射された光を、所望の配光特性を有する光に整形して前記被照射面に照射する光束制御部材であって、前記入射領域は、前記光源側から平面視した場合に前記光軸を中心とした同心円環状を呈するとともに、前記光軸全体を含む任意の仮想平面で切断した断面が鋸刃状を呈するような径方向において互いに隣接する複数の突起部を有し、前記突起部は、前記光源から出射された光が入射し、この入射した光を屈折させる入射部と、この入射部に対して前記光軸を基準とした前記径方向の外側位置に形成され、前記入射部に入射した光を前記出射領域に向けて全反射させる全反射部とを有し、前記入射領域は、前記光源から出射された光を、前記仮想平面上における前記光軸を基準として対称な所定の2方向において光強度の最大値を示すような第1の配光特性を有する光に整形し、前記出射領域は、前記入射領域によって整形された前記第1の配光特性を有する光を、所望の配光特性である第2の配光特性を有する光に整形する点にある。
【0013】
そして、この請求項1に係る発明によれば、光源の配光特性に基づいて、光軸方向(0°)よりも広角側の所定の2方向にピーク強度を有するような第1の配光特性を形成した上で、この第1の配光特性に基づいて所望の配光特性(第2の配光特性)を形成することにより、所望の配光特性の形成を入射領域の各突起部に大きく依存しようとする場合に比べて、各突起部の形状の負担を軽減して設計通りの光束制御部材を製造することができるので、所望の配光特性を簡便かつ確実に得ることができる。また、入射領域において第1の配光特性を有する光を整形することにより、従来のフレネル形状のように光軸方向にピーク強度を有する光を整形する場合に比べて、出射領域において最終的に得られる所望の配光特性の態様を増やすことができる。
【0014】
また、請求項2に係る光束制御部材の特徴は、請求項1において、更に、前記出射領域は、前記光軸を対称軸とした前記被照射面側に凸の円錐面形状に形成され、前記光軸に対して回転対称な円形の前記第2の配光特性が得られる点にある。
【0015】
そして、この請求項2に係る発明によれば、プロジェクタ等の用途に好適な半値幅が狭い真円配光特性を所望する場合に、これを簡便かつ確実に得ることができる。
【0016】
さらに、請求項3に係る光束制御部材の特徴は、請求項1において、更に、前記出射領域は、前記被照射面側から平面視した場合に前記光軸周りに中心角180°の2つの領域に区分されるとともに、前記2つの領域の境界線の延長方向から見た場合に前記光軸方向における前記光源側に凹のV字形状を呈するように形成され、前記光束制御部材からの出射光の前記被照射面における照射範囲が楕円形となるような前記第2の配光特性が得られる点にある。
【0017】
そして、この請求項3に係る発明によれば、街路灯等の被照射面に対して斜め方向から光を照射して被照射面上に真円状の照射スポットを形成する用途等に好適な楕円配光特性を所望する場合に、これを簡便かつ確実に得ることができる。
【0018】
さらにまた、請求項4に係る光束制御部材の特徴は、請求項1において、更に、前記出射領域は、前記被照射面側から平面視した場合に前記光軸周りに中心角45°の8つの領域に区分され、前記8つの領域の各々が隣接する領域との間に形成する8本の境界線のうち4本は、前記光軸側から前記光束制御部材の外縁側に向かって前記光束制御部材の厚みを漸増するような稜線として前記光軸回りに一本置きに形成されるとともに、前記8本の境界線のうち残りの4本は、隣接する前記領域間の谷部に形成され、前記光束制御部材からの出射光の前記被照射面における照射範囲が矩形となるような前記第2の配光特性が得られる点にある。
【0019】
そして、この請求項4に係る発明によれば、カメラのフラッシュ等の特定の矩形領域を照明する用途に好適な矩形配光特性を所望する場合に、これを簡便かつ確実に得ることができる。
【0020】
また、請求項5に係る光束制御部材の特徴は、光源から出射された光が入射する入射領域と、この入射領域に対して光軸方向において反対側に位置し、前記入射領域に入射した光が内部入射し、この内部入射した光のうちの入射角が臨界角よりも大きな光を、径方向の外側に向けて全反射させる反入射領域と、この反入射領域に対して径方向の外側に位置し、前記反入射領域によって全反射された光を径方向の外側に向けて出射させる出射領域とを有し、前記光源から出射された光を、所望の配光特性を有する光に整形する光束制御部材であって、前記入射領域は、前記光源側から平面視した場合に前記光軸を中心とした同心円環状を呈するとともに、前記光軸全体を含む任意の仮想平面で切断した断面が鋸刃状を呈するような前記径方向において互いに隣接する複数の突起部を有し、前記突起部は、前記光源から出射された光が入射し、この入射した光を屈折させる入射部と、この入射部に対して前記光軸を基準とした前記径方向の外側位置に形成され、前記入射部に入射した光を前記反入射領域に向けて全反射させる全反射部とを有し、前記入射領域は、前記光源から出射された光を、前記仮想平面上における前記光軸を基準として対称な所定の2方向において光強度の最大値を示すような第1の配光特性を有する光に整形し、前記出射領域は、前記入射領域によって整形された前記第1の配光特性を有する光を、所望の配光特性である第2の配光特性を有する光に整形する点にある。
【0021】
そして、この請求項5に係る発明によれば、請求項1と同様に、所望の配光特性を簡便かつ確実に得ることができるとともに、出射領域において最終的に得られる所望の配光特性の態様を増やすことができる。
【0022】
さらに、請求項6に係る光学装置の特徴は、光を出射する光源と、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光束制御部材とを備えた点にある。
【0023】
そして、この請求項6に係る発明によれば、製造容易な構成によって所望の配光特性を確実に得ることができるとともに、真円配光特性、楕円配光特性、矩形配光特性、光源直上付近の輝度を抑えつつ径方向の外側に輝度分布が広がるような所定の配光特性等の得られる配光特性の多様化を実現することができる。
【0024】
さらにまた、請求項7に係る光整形方法の特徴は、光源から出射された光を、光束制御部材の入射領域に入射させて前記光束制御部材の出射領域から被照射面側に向けて出射させる際に、前記光を所望の配光特性を有する光に整形する光束整形方法であって、前記光束制御部材として、前記入射領域が、前記光源側から平面視した場合に前記光軸を中心とした同心円環状を呈するとともに、前記光軸全体を含む任意の仮想平面で切断した断面が鋸刃状を呈するような径方向において互いに隣接する複数の突起部を有し、前記突起部が、前記光源から出射された光が入射し、この入射した光を屈折させる入射部と、この入射部に対して前記光軸を基準とした前記径方向の外側位置に形成され、前記入射部に入射した光を前記出射領域に向けて全反射させる全反射部とを有するものを使用し、前記入射領域において、前記光源から出射された光を、前記仮想平面上における前記光軸を基準として対称な所定の2方向において光強度の最大値を示すような第1の配光特性を有する光に整形し、次いで、前記出射領域において、前記第1の配光特性を有する光を、所望の配光特性としての第2の配光特性を有する光に整形することを特徴としている。
【0025】
そして、この請求項7に係る発明によれば、光源から出射された光を、真円配光特性、楕円配光特性または矩形配光特性等の多様な所望の配光特性を有する光に簡便かつ確実に整形することができる。
【0026】
また、請求項8に係る光整形方法の特徴は、光源から出射された光を、光束制御部材の入射領域に入射させて前記光束制御部材の反入射領域において径方向の外側に向けて全反射させた後に前記光束制御部材の出射領域から径方向の外側に向けて出射させる際に、前記光を所望の配光特性を有する光に整形する光束整形方法であって、前記光束制御部材として、前記入射領域が、前記光源側から平面視した場合に前記光軸を中心とした同心円環状を呈するとともに、前記光軸全体を含む任意の仮想平面で切断した断面が鋸刃状を呈するような前記径方向において互いに隣接する複数の突起部を有し、前記突起部が、前記光源から出射された光が入射し、この入射した光を屈折させる入射部と、この入射部に対して前記光軸を基準とした前記径方向の外側位置に形成され、前記入射部に入射した光を前記反入射領域に向けて全反射させる全反射部とを有するものを使用し、前記入射領域において、前記光源から出射された光を、前記仮想平面上における前記光軸を基準として対称な所定の2方向において光強度の最大値を示すような第1の配光特性を有する光に整形し、前記出射領域において、前記第1の配光特性を有する光を、所望の配光特性としての第2の配光特性を有する光に整形する点にある。
【0027】
そして、この請求項8に係る発明によれば、光源から出射された光を、光源直上付近の輝度を抑えつつ径方向の外側に輝度分布が広がるような所定の配光特性を有する光に簡便かつ確実に整形することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、所望の配光特性を簡便かつ確実に得ることができるとともに、得られる配光特性の多様化およびこれにともなう汎用性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る光束制御部材およびこれを備えた光学装置の第1実施形態を示す概略構成図
【図2】図1の光束制御部材の下面図
【図3】図2のA−A断面図
【図4】図3の部分拡大図を含む光学装置の要部拡大図
【図5】光軸を含む仮想平面上に光路を有する第1の配光特性の光強度分布図
【図6】第1の配光特性の光束を光軸に直交する仮想平面上に照射した場合の照度分布図
【図7】図5の光強度分布と、光軸と、図6の照度分布が得られる仮想平面との位置関係を説明するための複合座標系
【図8】実施例1の光束制御部材を示す正面図
【図9】図8の平面図
【図10】図9のA−A断面図
【図11】光軸を含む仮想平面上に光路を有する実施例1における第2の配光特性の光強度分布図
【図12】実施例1における第2の配光特性の光束を光軸に直交する仮想平面上に照射した場合の照度分布図
【図13】実施例2の光束制御部材を示す正面図
【図14】図13の平面図
【図15】図14のA−A断面図
【図16】光軸を含む仮想平面上に光路を有する実施例2における第2の配光特性の光強度分布図
【図17】実施例2における第2の配光特性の光束を光軸に直交する仮想平面上に照射した場合の照度分布図
【図18】実施例3の光束制御部材を示す斜視図
【図19】実施例3の光束制御部材を示す正面図
【図20】図19の平面図
【図21】図19のA−A断面図
【図22】光軸を含む仮想平面上に光路を有する実施例3における第2の配光特性の光強度分布図
【図23】実施例3における第2の配光特性の光束を光軸に直交する仮想平面上に照射した場合の照度分布図
【図24】本発明に係る光束制御部材およびこれを備えた光学装置の第2実施形態を示す概略構成図
【図25】図24の光束制御部材の平面図
【図26】図24の光束制御部材の下面図
【図27】図26のA−A断面図
【図28】光軸を含む仮想平面上に光路を有する第2実施形態における第1の配光特性の光強度分布図
【図29】光軸を含む仮想平面上に光路を有する第2実施形態における第2の配光特性の光強度分布図
【図30】第2実施形態の変形例を示す概略構成図
【図31】図30の光束制御部材の平面図
【図32】図30の光束制御部材の下面図
【図33】図32のA−A断面図
【発明を実施するための形態】
【0030】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について、図1〜図23を参照して説明する。
【0031】
ここで、図1は、本実施形態における光束制御部材およびこれを備えた光学装置を示す概略構成図である。また、図2は、図1の光束制御部材の下面図である。さらに、図3は、図2のA−A断面図である。さらにまた、図4は、図3の部分拡大図を含む光学装置の要部拡大図である。
【0032】
図1に示すように、本実施形態における光束制御部材1は、光軸OA方向に所定の厚みを有する円板状の部材本体1aを有している。この部材本体1aは、例えば、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、PC(ポリカーボネート)、COP(シクロオレフィン樹脂)、EP(エポキシ樹脂)またはシリコーン樹脂等の透明樹脂材料を用いた射出成形法等によって、金型を用いて形成することができる。
【0033】
また、図1および図2に示すように、部材本体1aの光軸OA方向における一方(図1における下方)の端面には、下面図において光軸OAと同心の円形状の外形を呈する入射領域2が形成されている。
【0034】
さらに、図1に示すように、入射領域2の反対側である部材本体1aの光軸OA方向における他方(図1における上方)の端面には、平面図において光軸OAと同心かつ入射領域2と同径の円形状の外形を呈する出射領域3が形成されている。なお、出射領域3は、後述のように、コンセプトに応じた種々の具体的な形状を採ることができるので、図1および図3においては、便宜上、形状を特定しない破線想像線として図示している。
【0035】
さらにまた、図1および図4に示すように、入射領域2に対して光軸OA方向に所定の間隔を設けて臨む位置には、LED等の光源4が配置されており、この光源4は、光束制御部材1とともに光学装置5を構成している。図4に示すように、光源4は、光束制御部材1側に向けて光軸OA方向に対して所定の広がり角を持つ光(光束)Lを出射させるようになっている。この光Lの中心軸(中心光)は、光束制御部材1の光軸OAと一致している。なお、図4においては、光源4における光軸OA上の一つの発光点から発光された光Lの光路のみが示されているが、実際には、光源4全体では面発光が行われるようになっている。そして、このようにして光源4から出射された光Lは、入射領域2に入射し、その後、部材本体1aの内部の光路上を進行するようになっている。
【0036】
一方、出射領域3には、入射領域2に入射して部材本体1aの内部を進行した光源4の光Lが、部材本体1aの内側から入射(内部入射)するようになっている。そして、この内部入射した光Lは、出射領域3から被照射面側に出射されるようになっている。
【0037】
次に、入射領域2について更に詳述すると、図2および図4に示すように、入射領域2は、光軸OAと同心の円形の中央部6と、この中央部6を包囲する複数の突起部7とを有している。
【0038】
図2および図4に示すように、複数の突起部7は、光軸OA方向に直交する径方向(図4における横方向)において互いに隣接している。
【0039】
また、図2に示すように、各突起部7は、下面図において(光源4側から平面視した場合に)光軸OAを中心とした同心円環状を呈するとともに、図3および図4に示すように、光軸OA全体を含む任意の仮想平面で切断した断面(縦断面)が鋸刃状を呈しており、全体でフレネル形状を構成している。
【0040】
さらに、図4に示すように、各突起部7は、入射部としての入射面10と、この入射面10に対する光軸OAを基準(径方向の内端)とした径方向の外側の位置に形成された全反射部としての全反射面11とを有している。ここで、入射面10は、光軸OAを中心とした円筒面に形成されている。一方、全反射面11は、光軸OA方向における光源4側(図4における下方)に向かうにしたがって径方向における内側に傾くような光軸OAに対して所定の鋭角の傾斜角(テーパ角)を有する光軸OAと同心のテーパ面に形成されている。これら入射面10と全反射面11とは、双方の先端部(図4における下端部)において互いに連接されている。なお、全反射面11の傾斜角としては、光束制御部材1を金型を用いて樹脂成形する場合に金型における突起部7の先端部の転写面に樹脂材料の充填不足が生じない程度の傾斜角を設定することが望ましい。また、入射面10は、円筒面に限る必要はなく、光軸OA方向における光源4側に向かうにしたがって径方向における外側に傾くような光軸OAに対して所定の鋭角の傾斜角を有する光軸OAと同心のテーパ面に形成してもよい。また、入射面10および全反射面11ともに、光軸OAを含む断面において変曲点を有するような曲面等で形成してもよい。
【0041】
ここで、図4に示すように、入射面10には、光源4から出射された光Lが入射するようになっており、この入射した光Lは、入射面10によって全反射面11側に屈折されるようになっている。
【0042】
一方、図4に示すように、全反射面11には、入射面10によって屈折された光源4の光Lが臨界角以上の入射角で内部入射するようになっており、この入射した光Lは、全反射面11によって出射領域3側すなわち被照射面側に全反射されるようになっている。
【0043】
このとき、全反射面11は光軸OAを対称軸とした回転対象形状に形成されているため、全反射面11全体からは、回転対称形状の光束が出射されることになる。
【0044】
そして、本実施形態においては、このようにして全反射面11での全反射も利用して入射領域2全体から出射領域3側に向かって進行する光源4の光が、図5および図6に示すような第1の配光特性を有するようになっている。ただし、第1の配光特性とは、光軸OA全体を含む任意の仮想平面上における光軸OAを基準として対称な所定の2方向において光強度(換言すれば、光度)の最大値を示すような配光特性である。
【0045】
具体的には、図5には、第1の配光特性として、光束制御部材1内への入射領域2から入射後の光の強度(cd)の分布(すなわち、光束制御部材1内における配光特性)のシミュレーション結果が、光軸OAを含む仮想平面であるXZ平面上のグラフとして表されている。このXZ平面は、X方向を光束制御部材1の径方向にとり、Z方向を光軸OA方向にとったものである。また、図6は、図5の配光特性を、光軸OAに直交する仮想平面であるXY平面上に表したものである。このXY平面のX方向は、図5と同じであり、Y方向については、X方向に直交するような光束制御部材1の径方向にとられている。なお、図5において、グラフ最下端に示された角度0°は、光軸OA方向における前方(照射方向)に相当する。また、図5において、グラフの中心点(原点)は、光軸OAと光源4の発光面との交点(発光点)を示している。さら、図6のグラフは、光軸OA上の光源4より1m(図7中の符号H)離れた位置に原点がとられており、仮想平面(XY平面)を照射する光の光強度に応じて照度(グラフ上に示す色の濃淡)が異なっている。すなわち、図5のグラフの中心点にあたる光源4の発光点、光軸OA、図6の照度分布が得られる仮想平面の位置関係は図7に示す通りとなる。図5に示す第1の配光特性は、XZ平面上において光束制御部材1内に入射した光の光度(cd)を−180°<θ≦180°(角度θは光源4の発光点を原点においた球座標における光軸OA(Z軸)からの角度)の範囲で測定した結果であり、図7中の角度ψが0°<ψ≦360°内のいずれにおいても、図5に示したものとほぼ同形状のグラフを表すことができる。すなわち、第1の配光特性は、光軸OA回りにほぼ360°回転対称となっている。このことは、図6のイメージからも明らかである。
【0046】
ここで、図5に示すように、第1の配光特性は、光軸OAを基準(0°)として対称な所定の2方向としての+20°付近および−20°付近の各方向(角度)において、入射領域2からの出射光の強度が最大値(ピーク強度)を示すことが分かる。
【0047】
このような第1の配光特性は、光源4の発光面から入射領域2までの光軸OA上の距離を0.7mmに設定し、光源4の発光面サイズを0.75mm×0.75mm四方に設定することによって実現されている。
【0048】
このように、本実施形態においては、光源4から出射された光を、入射領域2において第1の配光特性を有する光に整形することができる。
【0049】
そして、このようにして整形された第1の配光特性を有する光は、入射領域2から出射された後に出射領域3に到達(内部入射)して、この出射領域3の形状に応じた所望の配光特性としての第2の配光特性を有する光に整形されるようになっている。
【0050】
さらに、このようにして整形された第2の配光特性を有する光は、出射領域3から被照射面側に向かって出射されるようになっている。
【0051】
このような本実施形態の構成によれば、光源4の配光特性に基づいて第1の配光特性を形成し、次いで、第1の配光特性に基づいて所望の配光特性(第2の配光特性)を形成するといった2段階を踏んで所望の配光特性を得ることにより、光束制御部材全体の配光特性の形成を専ら入射領域に依存する場合に比べて、入射領域2の各突起部7の形状の負担を軽減して設計通りの(成形不良が少ない)光束制御部材を製造することができる。これにより、所望の配光特性を簡便かつ確実に得ることができる。
【0052】
また、本実施形態によれば、入射領域2において第1の配光特性を有する光を整形することにより、従来に比べて出射領域3側での光束整形が行い易くなるため、出射領域3において最終的に得られる所望の配光特性の態様を増やすことができる。すなわち、従来のように、フレネル形状における収束によって1方向(光軸OA方向)に指向性(換言すれば、ピーク強度)を持たせた光の進行方向(換言すれば、配光特性)を、出射領域3側で変更調整できる自由度は、入射領域2側で指向性を2方向に持たせる場合よりも制限されることになる。このことは、出射領域3側で得ることができる所望の配光特性の態様が制限されることを意味している。かといって、入射領域2側で何等指向性を考慮しないで、出射領域3側で所望の配光特性を得ようとする場合には、出射領域3の面形状に著しい負担(複雑化)が生じてしまうことになり、製造上の観点から実現が困難となる。これに対して、本実施形態のように、入射領域2においてXZ平面上における所定の2方向に指向性を持たせた光を整形した方が、この光の進行方向を出射領域3側で変更調整できる自由度を広げることができ、また、出射領域3の面形状の負担が過大となることもない。したがって、本実施形態によれば、用途に応じた様々な態様の所望の配光特性を実現することができる。
【0053】
このような本実施形態の構成によって得ることができる所望の配光特性の具体的な態様は、例えば、以下の実施例1〜3に示すようなものとなる。
【実施例1】
【0054】
図8は、実施例1の光束制御部材1を示す正面図である。また、図9は、図8の平面図である。さらに、図10は、図9のA−A断面図である。
【0055】
図8および図9に示すように、本実施例においては、出射領域3が、光軸OAを対称軸とした被照射面側(図8における上側)に凸の簡易な円錐面形状に形成されている。
【0056】
その他の構成および作用は、図1〜図6について説明したものと同様である。
【0057】
このような本実施例の光束制御部材1によれば、規則性を持った所望の配光特性(第2の配光特性)として、図11および図12に示すような真円配光特性(光軸OAに対して回転対称な円形の配光特性)を確実に得ることができる。ここで、図11には、本実施例における光束制御部材1の配光特性として、出射領域3からの出射光の強度(cd)の分布(すなわち、配光特性)のシミュレーション結果が、XZ平面上のグラフとして表されている。また、図12は、図11の配光特性をXY平面上のグラフとして表したものである。なお、図11において、グラフ最下端に示された角度0°は、図5と同様に、光軸OA方向における前方に相当する。また、図11において、グラフの中心点(原点)は、光軸OAと出射領域3との交点を示しており、この中心点から角度0°方向に延びる線分は、図5と同様に、光軸OAと同一直線上に仮定した線分である。
【0058】
ここで、図11に示すように、本実施例における配光特性は、半値幅が20°程度に抑えられた配光特性であり、このような配光特性は、プロジェクタ等の用途に好適である。
【実施例2】
【0059】
図13は、実施例2の光束制御部材1を示す正面図である。また、図14は、図13の平面図である。さらに、図15は、図14のA−A断面図である。
【0060】
図14に示すように、本実施例においては、出射領域3が、平面図において(被照射面側から平面視した場合に)、光軸OAに直交する1本の直線状の境界線BLを以て光軸OA周りに中心角180°の2つの合同な半円形領域3a、3bに区分された円形状を呈している。なお、本実施例においては各区分領域が半円形で形成されているが、光束制御部材1の形状に応じて多角形で形成しても良い。
【0061】
また、図13に示すように、本実施例における出射領域3は、両半円形領域3a、3bの境界線BL方向から見た場合に、光軸OA方向における光源4側(図13における下側)に凹のV字形状を呈している。
【0062】
このような本実施例における出射領域3の形状は、実施例1と同様に簡易な形状である。その他の構成および作用は、図1〜図6について説明したものと同様である。
【0063】
このような本実施例の光束制御部材1によれば、規則性を持った所望の配光特性(第2の配光特性)として、図16および図17に示すような楕円配光特性を確実に得ることができる。ここで、図16の概要は、実施例1の図11と同様であり、また、図17の概要は、実施例1の図12と同様である。
【0064】
本実施例における配光特性は、街路灯等の被照射面に対して斜め方向から光を照射して被照射面上に真円状の照射スポットを形成する用途等に好適である。
【実施例3】
【0065】
図18は、実施例3の光束制御部材1を示す斜視図である。また、図19は、本実施例の光束制御部材1を示す正面図である。さらに、図20は、図19の平面図である。さらにまた、図21は、図19のA−A断面図である。
【0066】
図20に示すように、本実施例においては、出射領域3が、平面図において(被照射面側から平面視した場合に)、光軸OAの周りに中心角45°の8つの合同な扇形領域3A〜3Hに区分された円形状を呈しており、これらの扇形領域3A〜3Hは、いずれも光軸OAと交わっている。なお、本実施例においては各区分領域が扇形で形成されているが、光束制御部材1の形状に応じて多角形で形成しても良い。
【0067】
より具体的には、図18に示すように、8つの扇形領域3A〜3Hのうちの光軸OA回りに1つ飛びおきに配置された所定の4つの扇形領域3A、3C、3E、3Gは、光軸OA回りの一方向としての出射領域3を被照射面側から平面視した状態における光軸OA右回り方向(以下、同様)に向かうにしたがって、光軸OA方向における被照射面側(図18における上側)に傾くような上り傾斜面に形成されている。
【0068】
一方、図18に示すように、8つの扇形領域3A〜3Hのうちの前述した所定の4つの扇形領域3A、3C、3E、3G以外の他の4つの扇形領域3B、3D、3F、3Hは、光軸OA右回り方向に向かうにしたがって光軸OA方向における光源4側に傾くような下り傾斜面に形成されている。
【0069】
そして、図18に示すように、扇形領域3A、3C、3E、3Gは、これらに光軸OA右回り方向においてそれぞれ隣位する扇形領域(3Aに対する3B、3Cに対する3D、3Eに対する3F、3Gに対する3H)と、光軸OA側から光束制御部材1の外縁に向かって光束制御部材1の厚みを漸増するような(Z方向の値が漸増するような)稜線で連接されている。また、扇形領域3B、3D、3F、3Hは、これらに光軸OA右回り方向においてそれぞれ隣位する扇形領域(3Bに対する3C、3Dに対する3E、3Fに対する3G、3Hに対する3A)とZ方向の値が一定となるような線で連接され、谷折り形状を呈するようにして連接されている。
【0070】
このような本実施例における出射領域3の形状は、金型の製造やこれを用いた樹脂成形に支障がないような簡易な形状である。その他の構成および作用は、図1〜図6について説明したものと同様である。
【0071】
このような本実施例の光束制御部材1によれば、規則性を持った所望の配光特性(第2の配光特性)として、図22および図23に示すような矩形配光特性を確実に得ることができる。ここで、図22の概要は、実施例1の図11と同様であり、また、図23の概要は、実施例1の図12と同様である。
【0072】
本実施例における配光特性は、カメラのフラッシュ等の特定の矩形領域を照明する用途に好適である。
【0073】
本実施形態における光束制御部材は、入射領域の反対側に形成された出射領域から出射する光によって第2の配光特性を得るのみでなく、出射領域に内部入射する光を全反射するようにして、出射領域から出射する光と、出射領域において全反射されて出射領域以外の面から出射する光とによって、第2の配光特性を得るようにしてもよい。
【0074】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について、第1実施形態との差異を中心に、図24〜図33を参照して説明する。
【0075】
なお、本実施形態においては、便宜上、第1実施形態における構成部と名称が同一の構成部については、同一の符号を用いて説明する。
【0076】
ここで、図24は、本実施形態における光束制御部材およびこれを備えた光学装置を示す概略構成図である。また、図25は、図24の光束制御部材の平面図である。さらに、図26は、図24の光束制御部材の下面図である。さらにまた、図27は、図26のA−A断面図である。
【0077】
本実施形態における光束制御部材1は、複数の突起部7(フレネル形状)が形成された入射領域2側の構成については、図26に示すように、突起部7の外側に外周が矩形状に形成された光軸OAに垂直な平坦面2aが周設されている以外は、第1実施形態と同様である。
【0078】
これに対して、図24および図27に示すように、出射領域3は、第1実施形態のように入射領域2に対して光軸OA方向における反対側ではなく、入射領域2の側方に形成されており、また、第1実施形態において出射領域3が形成されていた位置には、反入射領域15が形成されている。
【0079】
反入射領域15について更に詳述すると、図25に示すように、反入射領域15は、平面図において、光軸OAに直交する中央の1本の直線状の境界線BLsを以て2つの合同な矩形領域15a、15bに区分された矩形状を呈している。また、図24および図27に示すように、反入射領域15は、両矩形領域15a、15bの境界線BLs方向から見た場合に、光軸OA方向における光源4側(図24における下側)に凹とされた光軸OAを対称軸として線対称のV字形状を呈している。さらに、図24および図27に示すように、反入射領域15は、左側の矩形領域15aの左端部が、入射領域2の左端部よりも右方に位置されているとともに、右側の矩形領域15bの右端部が、入射領域2の右端部よりも左方に位置されている。さらにまた、図25および図26に示すように、反入射領域15の前端部は、入射領域2の前端部と前方における形成位置が同位置とされているとともに、反入射領域15の後端部は、入射領域2の後端部と後方における形成位置が同位置とされている。
【0080】
このような反入射領域15aには、第1実施形態と同様に入射領域2(主に突起部7)において整形された第1の配光特性(図28参照)を有する光が、部材本体1a内を伝播された後に内部入射する。そして、反入射領域15aは、この内部入射した光のうちの入射角が臨界角よりも大きな光を、図24において符号Lで示すように、径方向の外側としての図24および図27における左右の両側方に向けて全反射させる。なお、反入射領域15aには、入射領域2において第1の配光特性を有するように整形された後の光であれば、入射領域2から直接到達した光以外にも、入射領域2の前端部と反入射領域15の前端部とを接続する部材本体1aの前側面1afにおける全反射を経た上で到達した光や、入射領域2の後端部と反入射領域15の後端部とを接続する部材本体1aの後側面1abにおける全反射を経た上で到達した光が含まれていてもよい。
【0081】
次に、出射領域3について更に詳述すると、図24、図25および図27に示すように、出射領域3は、反入射領域15上の境界線BLsから左右にそれぞれ等距離の位置に分割配置された左側の出射領域3aと右側の出射領域3bとによって構成されている。図25に示すように、両出射領域3a、3bは、平面図において、互いに合同な矩形状を呈している。また、図24および図27に示すように、両出射領域3a、3bは、正面図および断面図において、入射領域2側から反入射領域15側に向かうにしたがって光軸OA側に傾くような光軸OAを対称軸として互いに線対称の傾斜直線形状を呈している。より具体的に説明すると、左側の出射領域3aは、反入射領域15における左側の矩形領域15aの左端部に連接されるとともに、入射領域2の左端部に連接された傾斜平面に形成されており、この左側の出射領域3aは、部材本体1aの左側面を兼ねている。また、右側の出射領域3bは、反入射領域15における右側の矩形領域15bの右端部に連接されるとともに、入射領域2の右端部に連接された傾斜平面に形成されており、この右側の出射領域3bは、部材本体1aの右側面を兼ねている。さらに、左側の出射領域3aと反入射領域15における左側の矩形領域15aとの境界線BLlおよび右側の出射領域3bと反入射領域15における右側の矩形領域15bとの境界線BLrは、ともに、反入射領域15上の境界線BLsに平行とされている。さらにまた、両出射領域3a、3bの前端部は、それぞれ部材本体1aの前側面1afにおける左右の端部を兼ねており、また、両出射領域3a、3bの後端部は、それぞれ部材本体1aの後側面1abにおける左右の端部を兼ねている。
【0082】
このような出射領域3(3a、3b)には、入射領域2において整形された第1の配光特性を有する光が、部材本体1a内を伝播された後に内部入射する。この内部入射する光は、主に、反入射領域15(15a、15b)において全反射された光であるが、これ以外にも、入射領域2において第1の配光特性を有するように整形された後の光であれば、入射領域2から直接到達した光や、部材本体1aの前側面1afまたは後側面1abにおける全反射後に直接到達した光であってもよい。そして、出射領域3は、内部入射した光を、所望の配光特性としての第2の配光特性を有する光に整形して、側方に向けて出射させる。
【0083】
図29は、このような本実施形態の光束制御部材1によって整形される第2の配光特性を示したものであり、この配光特性は、光源4に対して径方向における左右の2方向(X方向)に輝度分布が広範囲にわたって広がるとともに、光源4の直上付近の輝度が抑えられた配光特性となっている。このような配光特性は、特に、複数の光束制御部材1を境界線BLs方向に整列配置して面光源を構成する用途に好適である。
【0084】
なお、反入射領域15の矩形領域15a、15bは、平面に限る必要はなく、入射領域2からの光に対して臨界角よりも大きな入射角を確保するために好適な曲率を持った曲面に形成してもよい。また、左右の出射領域3a、3bについても、必要に応じて凸R面等の曲面に形成してもよい。
【0085】
なお、本実施形態においては、以下のような変形例を考えることができる。
(変形例)
すなわち、図30は、変形例として、本実施形態における光束制御部材およびこれを備えた光学装置を示す概略構成図である。また、図31は、図30の光束制御部材の平面図である。さらに、図32は、図30の光束制御部材の下面図である。さらにまた、図33は、図32のA−A断面図である。
【0086】
本変形例における光束制御部材1は、入射領域2に対して光軸OA方向における反対側に反入射領域15が形成されているとともに、入射領域2の側方に出射領域3が形成されている点で、図24〜図29に示した基本構成と同様である。また、図33に示すように、本変形例における反入射領域15は、基本構成と同様に、断面図において、光源4側に凹のV字形状に形成されている。
【0087】
ただし、本変形例においては、基本構成とは異なり、反入射領域15が、光軸OAを基準軸として回転対称の逆円錐面(テーパ面)に形成されているとともに、出射領域3が、反入射領域15および入射領域2の外周に周設された円筒面(テーパ面)に形成されている。
【0088】
このような本変形例の光束制御部材1によって整形される第2の配光特性(図示せず)は、XZ平面上に限って言えば図29と同様であるが、立体的に見た場合には、光源4に対して径方向における全方位に向けて輝度分布が広範囲にわたって広がるような回転対称形状の配光特性となる。
【0089】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の特徴を損なわない限度において種々変更することができる。
【符号の説明】
【0090】
1 光束制御部材
2 入射領域
3 出射領域
4 光源
7 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出射された光が入射する入射領域と、
この入射領域に対して光軸方向において反対側に位置し、前記入射領域に入射した光を被照射面側へ向けて出射させる出射領域と
を有し、
前記光源から出射された光を、所望の配光特性を有する光に整形して前記被照射面に照射する光束制御部材であって、
前記入射領域は、前記光源側から平面視した場合に前記光軸を中心とした同心円環状を呈するとともに、前記光軸全体を含む任意の仮想平面で切断した断面が鋸刃状を呈するような径方向において互いに隣接する複数の突起部を有し、
前記突起部は、前記光源から出射された光が入射し、この入射した光を屈折させる入射部と、この入射部に対して前記光軸を基準とした前記径方向の外側位置に形成され、前記入射部に入射した光を前記出射領域に向けて全反射させる全反射部とを有し、
前記入射領域は、前記光源から出射された光を、前記仮想平面上における前記光軸を基準として対称な所定の2方向において光強度の最大値を示すような第1の配光特性を有する光に整形し、
前記出射領域は、前記入射領域によって整形された前記第1の配光特性を有する光を、所望の配光特性である第2の配光特性を有する光に整形すること
を特徴とする光束制御部材。
【請求項2】
前記出射領域は、前記光軸を対称軸とした前記被照射面側に凸の円錐面形状に形成され、前記光軸に対して回転対称な円形の前記第2の配光特性が得られること
を特徴とする請求項1に記載の光束制御部材。
【請求項3】
前記出射領域は、前記被照射面側から平面視した場合に前記光軸周りに中心角180°の2つの領域に区分されるとともに、前記2つの領域の境界線の延長方向から見た場合に前記光軸方向における前記光源側に凹のV字形状を呈するように形成され、前記光束制御部材からの出射光の前記被照射面における照射範囲が楕円形となるような前記第2の配光特性が得られること
を特徴とする請求項1に記載の光束制御部材。
【請求項4】
前記出射領域は、
前記被照射面側から平面視した場合に前記光軸周りに中心角45°の8つの領域に区分され、
前記8つの領域の各々が隣接する領域との間に形成する8本の境界線のうち4本は、前記光軸側から前記光束制御部材の外縁側に向かって前記光束制御部材の厚みを漸増するような稜線として前記光軸回りに一本置きに形成されるとともに、前記8本の境界線のうち残りの4本は、隣接する前記領域間の谷部に形成され、
前記光束制御部材からの出射光の前記被照射面における照射範囲が矩形となるような前記第2の配光特性が得られること
を特徴とする請求項1に記載の光束制御部材。
【請求項5】
光源から出射された光が入射する入射領域と、
この入射領域に対して光軸方向において反対側に位置し、前記入射領域に入射した光が内部入射し、この内部入射した光のうちの入射角が臨界角よりも大きな光を、径方向の外側に向けて全反射させる反入射領域と、
この反入射領域に対して径方向の外側に位置し、前記反入射領域によって全反射された光を径方向の外側に向けて出射させる出射領域と
を有し、
前記光源から出射された光を、所望の配光特性を有する光に整形する光束制御部材であって、
前記入射領域は、前記光源側から平面視した場合に前記光軸を中心とした同心円環状を呈するとともに、前記光軸全体を含む任意の仮想平面で切断した断面が鋸刃状を呈するような前記径方向において互いに隣接する複数の突起部を有し、
前記突起部は、前記光源から出射された光が入射し、この入射した光を屈折させる入射部と、この入射部に対して前記光軸を基準とした前記径方向の外側位置に形成され、前記入射部に入射した光を前記反入射領域に向けて全反射させる全反射部とを有し、
前記入射領域は、前記光源から出射された光を、前記仮想平面上における前記光軸を基準として対称な所定の2方向において光強度の最大値を示すような第1の配光特性を有する光に整形し、
前記出射領域は、前記入射領域によって整形された前記第1の配光特性を有する光を、所望の配光特性である第2の配光特性を有する光に整形すること
を特徴とする光束制御部材。
【請求項6】
光を出射する光源と、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の光束制御部材と
を備えたことを特徴とする光学装置。
【請求項7】
光源から出射された光を、光束制御部材の入射領域に入射させて前記光束制御部材の出射領域から被照射面側に向けて出射させる際に、前記光を所望の配光特性を有する光に整形する光束整形方法であって、
前記光束制御部材として、前記入射領域が、前記光源側から平面視した場合に前記光軸を中心とした同心円環状を呈するとともに、前記光軸全体を含む任意の仮想平面で切断した断面が鋸刃状を呈するような径方向において互いに隣接する複数の突起部を有し、前記突起部が、前記光源から出射された光が入射し、この入射した光を屈折させる入射部と、この入射部に対して前記光軸を基準とした前記径方向の外側位置に形成され、前記入射部に入射した光を前記出射領域に向けて全反射させる全反射部とを有するものを使用し、
前記入射領域において、前記光源から出射された光を、前記仮想平面上における前記光軸を基準として対称な所定の2方向において光強度の最大値を示すような第1の配光特性を有する光に整形し、
次いで、前記出射領域において、前記第1の配光特性を有する光を、所望の配光特性としての第2の配光特性を有する光に整形すること
を特徴とする光束整形方法。
【請求項8】
光源から出射された光を、光束制御部材の入射領域に入射させて前記光束制御部材の反入射領域において径方向の外側に向けて全反射させた後に前記光束制御部材の出射領域から径方向の外側に向けて出射させる際に、前記光を所望の配光特性を有する光に整形する光束整形方法であって、
前記光束制御部材として、前記入射領域が、前記光源側から平面視した場合に前記光軸を中心とした同心円環状を呈するとともに、前記光軸全体を含む任意の仮想平面で切断した断面が鋸刃状を呈するような前記径方向において互いに隣接する複数の突起部を有し、前記突起部が、前記光源から出射された光が入射し、この入射した光を屈折させる入射部と、この入射部に対して前記光軸を基準とした前記径方向の外側位置に形成され、前記入射部に入射した光を前記反入射領域に向けて全反射させる全反射部とを有するものを使用し、
前記入射領域において、前記光源から出射された光を、前記仮想平面上における前記光軸を基準として対称な所定の2方向において光強度の最大値を示すような第1の配光特性を有する光に整形し、
前記出射領域において、前記第1の配光特性を有する光を、所望の配光特性としての第2の配光特性を有する光に整形すること
を特徴とする光束整形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図24】
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【図25】
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【図27】
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【図33】
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【図5】
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【図6】
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【図11】
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【図12】
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【図16】
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【図17】
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【図22】
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【図23】
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【図26】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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