説明

光束制御部材およびこれを備えた光学装置

【課題】製造上無理のない設計によって不要光による配光特性の劣化を簡便かつ確実に抑制することができるとともに、光利用効率を向上させること。
【解決手段】突起部11は、第1面14(入射面)と第2面15(全反射面)との間に第3面23を有し、第3面23は、第1面14に連接された一方の端部が第2面15に連接された他方の端部よりも光源6側に位置するような光軸OAに対して傾きを有する傾斜面に形成され、複数の突起部11ごとの第3面23に入射した光を全体として正のパワーを以て出射領域5側に屈折させること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光束制御部材およびこれを備えた光学装置に係り、特に、光源から出射された光を被照射面に照射するのに好適な光束制御部材およびこれを備えた光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、薄型化および軽量化に適した光束制御部材として、光の入射領域が同心円環状(輪帯状)の複数の分割領域に分割された断面鋸刃状の形状(以下、フレネル形状と称する)を有する光束制御部材(いわゆるフレネルレンズ)が知られており、この種の光束制御部材は、薄型化が特に有利な用途や不要光の発生による影響を無視できる用途(例えば、ルーペ、照明系)などに用いられていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の光束制御部材を照明用途の製品に組み込む場合には、フレネル形状に形成された入射領域側に、LED(発光ダイオード:Light Emitting Diode)等の光源を、この光源から出射される光の中心軸が光束制御部材の光軸と同軸となるように位置合わせを行った上で固定するようになっていた。
【0004】
また、この種の光束制御部材におけるフレネル形状には、光源から出射された光を屈折させる屈折面のみを備えたタイプのものと、屈折面だけでなく反射面も備えたタイプのものとがあったが、後者は、光源(例えば、LED)から大きな広がり角で出射された光を効率良く捕捉して収束させる上で前者よりも有利であった。
【0005】
ここで、図11は、この種の反射面を備えた光束制御部材1の従来の設計例を示したものである。
【0006】
図11に示すように、光束制御部材1は、光束の制御に関与する光軸OAを含む円板状の光束制御部2と、この光束制御部2を包囲する円筒状のコバ部3とによって構成されている。この光束制御部材1は、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、PC(ポリカーボネート)、COP(シクロオレフィン樹脂)、EP(エポキシ樹脂)、シリコーン樹脂等の透明樹脂材料を用いた射出成形法等によって、金型を用いて一体的に形成することができる。
【0007】
図11に示すように、光束制御部2は、光軸OA方向において互いに対向する入射領域4と出射領域5との2つの光束制御面4、5を有している。また、図11に断面図で示す光束制御部材1の光束制御部2は、平面図において円形となるように形成される。
【0008】
ここで、図11に示すように、入射領域4には、光軸OA上における入射領域4に対向する位置に配置されたLED等の光源6から出射された光Lが入射するようになっている。ただし、光源6は、光束制御部材1側に向けて光軸OA方向に対して所定の広がり角を持つ光Lを出射するようになっている。また、光源6から出射される光Lの中心軸は、光束制御部材1の光軸OAと設計上において一致している。なお、図11においては、光源6における光軸OA上の一つの発光点から発光された光Lの光路のみが示されているが、実際には、光源6全体では面発光が行われるようになっている。
【0009】
一方、出射領域5には、入射領域4に入射した光源6の光Lが光束制御部2の内部を進行した後に光束制御部2の内側から入射(内部入射)するようになっており、この内部入射した光Lは、出射領域5から被照射面側に出射されるようになっている。
【0010】
入射領域4について更に詳述すると、図11に示すように、入射領域4は、光軸OAを中心とした円形の中央部8と、この中央部8を包囲する複数の突起部11とを有している。
【0011】
図11に示すように、複数の突起部11は、径方向(図11における横方向)において互いに隣接している。
【0012】
また、各突起部11は、光軸OA方向から見た形状が光軸OAを中心とした同心円環状を呈するとともに、図11に示すように、光軸OA方向の断面形状(縦断面形状)が鋸刃状を呈しており、全体でフレネル形状を構成している。
【0013】
さらに、図12において断面拡大図に示すように、各突起部11は、第1面14と、この第1面14に対する光軸OAを基準(径方向の内端)とした径方向の外側の位置に形成された第2面15とを有している。第1面14は、光軸OAを中心とした円筒面に形成されている。一方、第2面15は、光源6側(図12における下側)に向かうにしたがって光軸OA側に傾斜するような光軸OAに対して所定の鋭角の傾斜角を有する光軸OAを中心軸とした傾斜面(テーパ面)に形成されている。これら第1面14と第2面15とは、双方の先端部(図12における下端部)において互いに連接されている。
【0014】
ここで、第1面14には、光源6から出射された光Lが入射するようになっており、この入射した光Lは、第1面14によって第2面15側に屈折されるようになっている。
【0015】
一方、第2面15には、第1面14によって屈折された光源6の光Lが突起部11の内部側から臨界角以上の入射角で入射するようになっており、この入射した光Lは、第2面15によって出射領域5側すなわち被照射面側に全反射されるようになっている。
【0016】
なお、第2面15は光軸OAを対称軸とした回転対象形状に形成されているため、第2面15全体からは、光軸方向に向かってコーン状(円錐状)の光が出射されることになる。
【0017】
そして、このようにして第2面15によって全反射された光は、出射領域5に到達した上で、出射領域5から被照射面に向けて出射されることになる。
【0018】
このような光束制御部材1によれば、光軸OA方向に十分な高さ(例えば、0.1mm)に形成された尖鋭な突起部11の第1面14によって、光源6から出射された光を効率良く捕捉し、この捕捉された光の多くを第2面15によって被照射面に向かう光路上へと全反射させるように光束を制御することができ、所望の配光特性を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2007−134316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、図11および図12の光束制御部材1の配光特性を理想的な(設計上の)配光特性として、これを狙って実際に金型を用いて光束制御部材1を成形した場合には、金型における突起部11の先端部の転写面に、樹脂材料の充填不足が生じる場合があった。
【0021】
そして、このような充填不足が生じた場合に実際に得られる光束制御部材1’は、例えば、図13および図14に示すように、突起部11(第1面14)の高さが設計上の高さに対して例えば85%に低減されるとともに、突起部11の先端部に本来形成されるべきエッジが形成されておらず、その代わりに円孤形状部や曲面部等の成形不良部が形成されたものとなっていた。
【0022】
ここで、図13および図14の光束制御部材1’においては、突起部11の先端部の成形不良部がレンズ面のように作用することにより、成形不良部への入射光がその曲率中心付近に集光されることになる。そして、この集光された光は、第2面15に入射せずに、第2面15によって全反射される正規の光路とは異なる方向へと進行して、被照射面(有効な被照射範囲)に照射されない不要光(迷光)となる。この結果、得られる配光特性が理想的なものよりも劣化することになり、このような光束制御部材1’では、出射光による被照射範囲において十分な照度が得られない。
【0023】
そして、このような配光特性の劣化は、所望の光学性能を得る観点ばかりでなく、光源の光を効率的に利用する観点からも大きな問題となっていた。
【0024】
ここで、かかる問題は、元を正せば突起部11の尖鋭過ぎる形状が成形上金型からの転写が困難であることによるので、初めから充填不足が生じないように金型形状の再現性が良好な突起部11の形状を設計すれば容易に解決することが可能とも思われる。
【0025】
そこで、このような観点から、例えば、図15および図16に示すような樹脂材料の充填性が改善された光束制御部材1”を考え出すことは難しくない。この光束制御部材1”は、図11および図12に示した光束制御部材1の突起部11の先端部を、光軸OAに垂直な切断線で単純に切り落としたものである。このような光束制御部材1”は、突起部11の先端部が平坦になっているため、この先端部の転写面への樹脂材料の充填を適切に行うことができるものとなっている。
【0026】
しかるに、このような光束制御部材1”は、樹脂材料の充填不足による配光特性の設計上からの劣化を抑制する点では前述の問題に対応することができるものの、突起部11の先端部(平坦部)に入射した光が、第2面15に入射せずに、第2面15によって全反射される正規の光路(図16破線部参照)とは異なる方向へと進行して被照射面に照射されない不要光となるため、図13および図14の光束制御部材1’と同様に、得られる配光特性が狙いと異なるものになる。
【0027】
したがって、図15および図16に示したように単純に突起部11の尖鋭度合いを緩和しただけでは、樹脂材料の充填不足の問題を解決できたとしても、不要光による配光特性の劣化の問題は依然として残ってしまう。
【0028】
そこで、本発明は、このような問題点に鑑みなされたものであり、製造上無理のない設計によって不要光による配光特性の劣化を簡便かつ確実に抑制することができるとともに、光利用効率を向上させることができる光束制御部材およびこれを備えた光学装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
前述した目的を達成するため、本発明の請求項1に係る光束制御部材の特徴は、光源から出射された光が入射する入射領域と、この入射領域に対して光軸方向において反対側に位置し、前記入射領域に入射した光を被照射面側に向けて出射させる出射領域とを有する光束制御部材であって、前記入射領域は、前記光軸方向から見た形状が光軸を中心とした同心円環状を呈するとともに光軸を含む断面形状が鋸刃状を呈するような径方向において互いに隣接する複数の突起部を有し、前記突起部は、前記光源から出射された光が入射し、この入射した光を屈折させる第1面と、この第1面に対して前記光軸を基準とした前記径方向の外側位置に形成され、前記第1面から入射した光を前記出射領域に向けて全反射させる第2面と、前記第1面と前記第2面との間に、これら両面のそれぞれの前記光源側の端部に連接されるように配置され、前記光源から出射された光が入射する第3面とを有し、前記第3面は、前記第1面に連接された一方の端部が前記第2面に連接された他方の端部よりも前記光軸方向において前記光源側に位置するような前記光軸に対して傾きを有する傾斜面に形成されているとともに、前記複数の突起部ごとの前記第3面に入射した光を、これら各第3面の全体によって正のパワーを以て前記出射領域側に屈折させる点にある。
【0030】
そして、この請求項1に係る発明によれば、第1面と第2面との間に第3面を挟むことによって、突起部の尖鋭度合いが緩和された製造上無理のない設計を行うことができ、また、第3面を複数の第3面全体で正のパワーを有するような傾斜面に形成したことによって、第3面に入射した光を第2面における全反射を介さずとも被照射面に向かう光路上へと直接的に導光することができるので、不要光の発生を簡便かつ確実に抑制することができるとともに、光源から出射された光を十分に効率的に利用することができ、あわせて、製造性および歩留まりを向上させることができる。
【0031】
また、請求項2に係る光束制御部材の特徴は、光源から出射された光が入射する入射領域と、この入射領域に対して光軸方向において反対側に位置され、前記入射領域に入射した光が内部入射し、この内部入射した光のうちの入射角が臨界角よりも大きな光を、径方向の外側に向けて全反射させる反入射領域とを有し、前記反入射領域によって全反射された光が被照射面側に向かって進行する光束制御部材であって、前記入射領域は、前記光軸方向から見た形状が光軸を中心とした同心円環状を呈するとともに光軸を含む断面形状が鋸刃状を呈するような前記径方向において互いに隣接する複数の突起部を有し、前記突起部は、前記光源から出射された光が入射し、この入射した光を屈折させる第1面と、この第1面に対して前記光軸を基準とした前記径方向の外側位置に形成され、前記第1面から入射した光を前記反入射領域に向けて全反射させる第2面と、前記第1面と前記第2面との間に、これら両面のそれぞれの前記光源側の端部に連接されるように配置され、前記光源から出射された光が入射する第3面とを有し、前記第3面は、前記第1面に連接された一方の端部が前記第2面に連接された他方の端部よりも前記光軸方向において前記光源側に位置するような前記光軸に対して傾きを有する傾斜面に形成されているとともに、前記複数の突起部ごとの前記第3面に入射した光を、これら各第3面の全体によって正のパワーを以て前記反入射領域側に屈折させる点にある。
【0032】
そして、この請求項2に係る発明によれば、第1面と第2面との間に第3面を挟むことによって、突起部の尖鋭度合いが緩和された製造上無理のない設計を行うことができ、また、第3面を複数の第3面全体で正のパワーを有するような傾斜面に形成したことによって、第3面に入射した光を第2面における全反射を介さずとも反入射領域に向かう光路上へと直接的に導光して反入射領域において被照射面側に向けて全反射させることができるので、不要光の発生を簡便かつ確実に抑制することができるとともに、光源から出射された光を十分に効率的に利用することができ、あわせて、製造性および歩留まりを向上させることができる。
【0033】
さらに、請求項3に係る光束制御部材の特徴は、請求項1または2において、更に、前記第3面は、これに入射した光を、前記第1面および前記第2面のいずれにも入射させないようにして前記出射領域または前記反入射領域に向かわせるような方向に屈折させる点にある。
【0034】
そして、この請求項3に係る発明によれば、光源から出射された光を被照射面に向かう光路上に導光する第3面の機能が、第1面または第2面によって阻害されることを防止することができるので、不要光の発生をさらに確実に抑制することができるとともに、光利用効率をさらに向上させることができる。
【0035】
さらにまた、請求項4に係る光束制御部材の特徴は、請求項1〜3のいずれか1項において、更に、次の(1)の条件式、θ<θ<90°・・・(1)(但し、θ:第1面に入射した光の第1面における屈折方向と第1面とのなす角度、θ:第1面と第3面とのなす角度)を満足する点にある。
【0036】
そして、この請求項3に係る発明によれば、第1面に入射した光が第3面によって全反射されることを防止することができるので、不要光の発生をさらに有効に防止することができる。
【0037】
また、請求項5に係る光学装置の特徴は、光源から出射された光を被照射面に照射する光学装置であって、前記光源における前記光の出射側の位置に、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光束制御部材が、その入射領域を前記光源側に向けるとともにその光軸を前記光源から出射される光の中心軸に位置合わせした状態で配置されている点にある。
【0038】
そして、この請求項5に係る発明によれば、不要光の発生を簡便かつ確実に抑制することができるとともに、光源から出射された光を十分に効率的に利用することができ、あわせて、製造性および歩留まりを向上させることができる光学装置を実現することができる。
【0039】
さらに、請求項6に係る光学装置の特徴は、請求項5において、更に、前記第3面は、前記光源から前記光軸に対して45°以下の角度で出射された光が入射するような前記入射領域上の範囲内に配置されている点にある。
【0040】
そして、この請求項5に係る発明によれば、光源から出射された光が第3面に適切に入射し得る入射領域上の範囲内に第3面を配置することによって、第3面を有効に機能させることが可能となる。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、製造上無理のない設計によって不要光による配光特性の劣化を簡便かつ確実に抑制することができるとともに、光利用効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る光束制御部材の第1実施形態を示す正面図
【図2】図1の平面図
【図3】図1の下面図
【図4】図2のA−A断面を光源とともに示す構成図
【図5】図4の第1の要部拡大図
【図6】図4の第2の要部拡大図
【図7】本発明に係る光束制御部材の第2実施形態を示す断面図
【図8】第2実施形態の実施例として、光束制御部材の配光特性を示すグラフ
【図9】第2実施形態の比較例として、成形不良が生じた光束制御部材を示す断面図
【図10】図9の光束制御部材の配光特性を示すグラフ
【図11】理想的な光束制御部材の設計例を示す断面図
【図12】図11の要部拡大図
【図13】樹脂材料の充填不足による成形不良が生じた光束制御部材を示す断面図
【図14】図13の要部拡大図
【図15】理想的な形状から設計を変更した光束制御部材を示す構成図
【図16】図15の要部拡大図
【発明を実施するための形態】
【0043】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図1〜図5を参照して説明する。
【0044】
なお、図11〜図16において説明した従来の光束制御部材1、1’、1”と基本的構成が同一もしくはこれに類する箇所については、同一の符号を用いて説明する。
【0045】
ここで、図1は、本実施形態における光束制御部材21を示す正面図である。また、図2は、図1の平面図である。さらに、図3は、図1の下面図である。さらにまた、図4は、図2のA−A断面図を光源6とともに示したものであり、この図4は、本実施形態における光学装置の概略構成図に相当する。また、図5は、図4の要部拡大図である。
【0046】
図1〜4に示すように、本実施形態における光束制御部材21は、平面図上において円形状の光束制御部2と、この光束制御部2を包囲する円筒状のコバ部3とによって構成され、また、光束制御部2が、フレネル形状を有する入射領域4と、この入射領域4に対して光軸OA方向において反対側に位置する出射領域5とを有する点で、従来の光束制御部材1、1’、1”と同様である。
【0047】
また、本実施形態における光束制御部材21は、図4に示すように、入射領域4に光軸OA方向において対向する位置に、LED等の所定の広がり角を持った光を発光する光源6(所定の発光面積を持つ点光源)を、その出射光の中心軸が光束制御部材21の光軸OAに一致するように位置合わせした状態で配置することによって、本実施形態における光学装置を構成するようになっている。そして、このような光束制御部材21は、光源6からの出射光束を制御して被照射面上に照射するようになっている。
【0048】
ただし、本実施形態における光束制御部材21は、フレネル形状を形成する入射領域4の複数の突起部11が、従来にない特徴的な構成を備えている。
【0049】
すなわち、図5に示すように、本実施形態においては、突起部11が、前述した第1面14および第2面15に加えて、これら両面14、15の間に両面14、15のそれぞれの光源6側の端部に連接するように配置された第3面23を有している。なお、第1面14および第2面15は、従来と同一の符号が付されているが、両面14、15の光軸OAに対する角度は、従来と同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、突起部11の高さは、図11および図12に示した従来の突起部11の高さ(例えば、0.1mm)よりも低い高さ(例えば、0.08mm)に形成することができる。
【0050】
ここで、図5に示すように、第3面23は、第1面14に連接された一方の端部(図5における左端部)が第2面15に連接された他方の端部(図5における右端部)よりも光軸OA方向において光源6側に位置するような光軸OAに対して傾きを有する傾斜面(テーパ面)に形成されている。また、各突起部11ごとの第3面23は、全体として正のパワーを持つような傾斜面に形成されている。仮に、光束制御部材21の第3面23全体に光軸OAに対して平行な光を入射した場合の光束制御部材21内における入射光の光路は、光軸OAに近づくような光路となる。このような特性を有する面であれば、第3面23を直線の他、曲面で形成してもよい。
【0051】
このように突起部11を形成することにより、突起部11の先端部の頂角を図11および図12に示した従来の突起部11の場合よりも大きくすることができる。
【0052】
すなわち、本実施形態によれば、突起部11の高さを低く抑えることに加え、突起部11の頂角を大きくすることができるため、成形時に金型形状を転写し易い製品形状とすることができる。
【0053】
次に、所定の発光面積をもつ光源6の中心(光源6の発光面と光軸OAとの交点)から出射された光に対する第1面14、第2面15および第3面23による光束制御について説明する。
【0054】
第1面14および第3面23には、光源6から出射された光のうちの互いに隣接する光が、互いに異なる入射角でそれぞれ入射するようになっている。そして、第1面14に入射した光および第3面23に入射した光は、各面14、23においてスネルの法則にしたがって屈折された上で、突起部11の内部の光路上を進行するようになっている。
【0055】
具体的には、第1面14に入射した光は、第2面15に臨界角以上の入射角で入射した上で、第2面15によって出射領域5に向けて全反射されるようになっている。図5における破線は、このような光源6から出射されて第1面14に入射した光Lの光路の1つを示している。
【0056】
一方、図5に示すように、光源6から出射されて第3面23に入射した光L(図5の実線部)は、各第3面23全体によって正のパワーを以て出射領域5側に屈折されるようになっている。
【0057】
したがって、本実施形態によれば、第1面14と第2面15との間に第3面23を挟むことによって、突起部11の尖鋭度合いが緩和された製造上無理のない設計を行うことができる。また、第3面23を、複数の第3面23全体で正のパワーを有するような傾斜面に形成したことによって、第3面23に入射した光Lを第2面15における全反射を介さずとも被照射面に向かう光路上へと直接的に導光することができる。このことは、図5において、実線部の光路が破線部の光路と突起部11内においてほぼ平行になっていることからも分かる。これにより、不要光の発生を簡便かつ確実に抑制することができるとともに、光源6から出射された光を十分に効率的に利用することができ、あわせて、製造性および歩留まりを向上させることができる。
【0058】
また、図5に示すように、本実施形態において、各第3面23は、これらに入射した光Lを、第1面14および第2面15のいずれにも入射させないようにして出射領域5に向かわせるような方向に屈折させるようになっている。
【0059】
そして、このような構成により、光源6から出射された光を被照射面に向かう光路上に導光する第3面23の機能が、第1面14または第2面15によって阻害されることを防止することができるので、不要光の発生をさらに確実に抑制することができるとともに、光利用効率をさらに向上させることができる。
【0060】
さらに、図6に示すように、本実施形態において、光束制御部材21は、以下の(1)の条件式を満足するようになっている。
【0061】
θ<θ<90° (1)
【0062】
但し、(1)式におけるθは、図6に示すように、光源6から出射されて第1面14に入射した光L(破線部)の第1面14における屈折方向と第1面14とのなす角度〔°〕である。また、(1)式におけるθは、図6に示すように、第1面14と第3面23とのなす角度〔°〕である。例えば、最も光軸OAに近い突起部11は、θ=53°、θ=71°であってもよい。
【0063】
そして、このような構成により、第1面14に入射した光が第3面23によって全反射されることを防止することができるので、不要光の発生をさらに有効に防止することができる。
【0064】
さらにまた、各第3面23は、光源6から光軸OAに対して40〜45°以下の角度で出射された光が入射するような入射領域4上の範囲内に配置されていてもよい。
【0065】
このようにすれば、光源6から出射された光が第3面23に適切に入射し得る入射領域4上の範囲内に第3面23を配置することによって、第3面23を有効に機能させることが可能となる。
【0066】
また、このような光源6からの光の出射角に応じた第3面23の形成範囲の設定を行う場合には、一般的なLEDが、出射角30〜60°において出射光量が多くなるようなランバート分布の配光特性を有するため、光利用効率を考慮して、第3面23の形成範囲の下限(径方向における内端)を、光源6から出射角30°で出射された光が入射する入射領域4上の位置としてもよい。このように少なくとも光源6からの出射光量が多い範囲の光が入射する位置の突起部11に第3面23が形成されるように入射領域4を構成すれば、その領域に入射する光は確実に方向制御できるため、入射領域4の全領域における突起部11に第3面23が形成されていなくても、図14に示す成形不良の光束制御部材1’よりも光利用効率を向上させることができる。
【0067】
さらに、上記構成以外にも、例えば、複数の突起部11のうちの光軸OA寄りの所定数の突起部11は、光源6の発光面における径方向の端部よりも径方向の内側位置に対向させて配置してもよい。このように構成すれば、光源6が光束制御部材21の直近に配置された薄型の光学装置において、良好な配光特性および光利用効率を確実に得ることができる。
【0068】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に、図7〜図10を参照して説明する。
【0069】
なお、第1実施形態と基本的構成が同一もしくはこれに類する箇所については、同一の符号を用いて説明する。
【0070】
図7は、本実施形態における光束制御部材31を、光軸OAを含む縦断面図およびこれの要部拡大図として示したものである。図7に示すように、本実施形態における光束制御部材31は、第1実施形態における光束制御部材21と入射領域4の基本構成が同様とされている。すなわち、本実施形態における光束制御部材31も、第1実施形態と同様に、フレネル形状を有する入射領域4における突起部11が、第1〜第3面14、15、23を有している。そして、本実施形態における第1〜第3面14、15、23も、入射領域4に光軸OA方向において対向する位置に配置された光源6から出射されたランバーシアン分布の光Lに対して、第1実施形態における第1〜第3面14、15、23と同様の光束制御を行うようになっている。
【0071】
ただし、本実施形態においては、第1〜第3面14、15、23によって制御された後の光源6の光の光路が、本実施形態に特有の光束制御部材31の形状に依存して第1実施形態とは異なっている。
【0072】
すなわち、本実施形態における光束制御部材31は、入射領域4に対して光軸OA方向において反対側に位置された反入射領域32が、第1実施形態における出射領域5のような被照射面に向けた光の出射に特化したものではない。
【0073】
具体的には、図7に示すように、反入射領域32は、光軸OA方向における入射領域4と反対側(図7における上方)に向かうにしたがって内径が漸増するような光軸OAを回転対称軸とした光軸OAに対して所定の傾斜角(傾斜角の2倍のテーパ角)を有する円錐状のテーパ面に形成されている。反入射領域32の傾斜角は、好ましくは、45°(テーパ角90°)とされている。このような反入射領域32には、図7に示すように、各第2面15による全反射後または各第3面23による正のパワーでの屈折後に光束制御部材31の内部の光路上を進行した光源6の光Lが内部入射するようになっている。そして、反入射領域32は、内部入射した光Lのうち、入射角が臨界角よりも大きな光Lを、入射角に応じた反射角を以て径方向の外側に向けて全反射させるようになっている。
【0074】
このようにして反入射領域32によって全反射された光Lは、反入射領域32および入射領域4に対する径方向の外側に配置された外周面33(換言すれば、出射領域)に向けて光路変換されるようになっている。
【0075】
このような光Lの光路を形成する本実施形態の構成においては、第1〜第3面14、15、23によって不要光の発生を確実に抑制して、反入射領域32における光Lの全反射方向を適切に制御することができる。また、光束制御部材の側方(径方向の外側)に向けた光度が大きくなるような所望の配光特性を狙った光束制御が求められる場合、本実施形態によれば、所望の配光特性を確実に得ることができる。
【0076】
なお、このように、光束制御部材31の側方に向けた光度が大となる配光特性を得るためには、入射領域4における配光特性を半値幅10°以下に制御することが望ましい。
【0077】
また、図7の構成においては、光束制御部材31の径方向の外端が外周面33とされ、この外周面33が出射領域とされているが、外周面33の代わりに、更に側方側に光Lを導光する不図示の導光部(導光板等)を連設した構成に対しても、本実施形態を有効に適用することができる。この場合には、導光部の構成如何によっては、光束制御部材31からの光Lの出射方向が光軸OA方向と平行になることも想定される。
【0078】
さらに、図7の構成においては、反入射領域32が、設計・製造の容易性を考慮して、その光軸OAを含む縦断面がなす外形(母線)が入射領域4と反対側に向かうにしたがって径方向の外側に傾く直線となるような線形テーパ状に形成されているが、反入射領域32においてより多くの光を全反射させることを重視する場合には、反入射領域32の母線を、入射角の最適化/好適化が可能な曲線に形成してもよい。ただし、コンセプトによっては、反入射領域32において意図的にある程度の光量の漏れ光を形成して光軸OA方向においても若干の光度を有するような所望の配光特性を得る設計を行うことも可能である。
【0079】
なお、図7における拡大図中の破線部に示すように、突起部11の先端部を尖鋭な形状に形成することが金型による成形上現実的ではないことは、既に述べた通りである。
【実施例】
【0080】
次に、図8には、本実施形態の実施例として、光束制御部材31から出射される光の強度の分布(すなわち、配光特性)のシミュレーション結果が、光軸OAを含む仮想平面であるXZ平面上のグラフとして表されている。このXZ平面は、X方向を光束制御部材31の径方向にとり、Z方向を光軸OA方向にとったものである。また、図8において、グラフ最下端に示された角度0°は、光軸OA方向における前方(図7における上方)に相当する。さらに、図8において、グラフの中心点(原点)は、光束制御部材31を無限遠から見たと仮定した光束制御部材31の位置を示している。このような図8の配光特性は、光軸OA回りにほぼ360°回転対称となる。なお、図8に配光特性に対応する光束制御部材31は、突起部11の高さを0.08mm、(1)式におけるθ=53°、θ=71°としたものである。
【0081】
ここで、図8に示すように、光束制御部材31の配光特性は、光束制御部材31の側方としての光軸OAを基準(0°)としたほぼ±86°の方向において出射光の強度が最大値(ピーク強度)を示すことが分かる。一方、図8においては、光束制御部材31の前方側においても、反入射領域32における光漏れに相当する若干の光強度が確認できるが、側方側の光強度に比べれば低い値に(実使用上問題がない程度に)抑制されていることが分かる。このような光束制御部材31は、±80°〜110°近辺の方向において光強度のピーク値を示すような配光特性の形成に適していると言える。
【0082】
一方、図9は、比較例として、成形不良の突起部11(図13、図14参照)を本実施形態に適用した構成31’を示している。このような光束制御部材31’によって得られる配光特性は、図10に示すものとなる。すなわち、図10の配光特性においては、光束制御部材の前方側における光度が図8に比べて非常に大きくなり、反入射領域32において顕著な光(不要光)漏れが発生していることが分かる。これは、図9の光束制御部材31’が、入射領域4において光を適切に制御することができず、不要光を生じさせることによるものと推測される。
【0083】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の特徴を損なわない限度において種々変更することができる。
【0084】
例えば、本実施形態における光束制御部材21は、スポット系照明、例えば、ショウウインドウの照明や携帯電話に搭載された撮像カメラ用の照明(フラッシュ)等に有効に適用することができる。
【符号の説明】
【0085】
4 入射領域
5 出射領域
11 突起部
14 第1面
15 第2面
21 光束制御部材
23 第3面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出射された光が入射する入射領域と、
この入射領域に対して光軸方向において反対側に位置し、前記入射領域に入射した光を被照射面側に向けて出射させる出射領域と
を有する光束制御部材であって、
前記入射領域は、前記光軸方向から見た形状が光軸を中心とした同心円環状を呈するとともに光軸を含む断面形状が鋸刃状を呈するような径方向において互いに隣接する複数の突起部を有し、
前記突起部は、
前記光源から出射された光が入射し、この入射した光を屈折させる第1面と、
この第1面に対して前記光軸を基準とした前記径方向の外側位置に形成され、前記第1面から入射した光を前記出射領域に向けて全反射させる第2面と、
前記第1面と前記第2面との間に、これら両面のそれぞれの前記光源側の端部に連接されるように配置され、前記光源から出射された光が入射する第3面と
を有し、
前記第3面は、
前記第1面に連接された一方の端部が前記第2面に連接された他方の端部よりも前記光軸方向において前記光源側に位置するような前記光軸に対して傾きを有する傾斜面に形成されているとともに、前記複数の突起部ごとの前記第3面に入射した光を、これら各第3面の全体によって正のパワーを以て前記出射領域側に屈折させること
を特徴とする光束制御部材。
【請求項2】
光源から出射された光が入射する入射領域と、
この入射領域に対して光軸方向において反対側に位置され、前記入射領域に入射した光が内部入射し、この内部入射した光のうちの入射角が臨界角よりも大きな光を、径方向の外側に向けて全反射させる反入射領域と
を有し、前記反入射領域によって全反射された光が被照射面側に向かって進行する光束制御部材であって、
前記入射領域は、前記光軸方向から見た形状が光軸を中心とした同心円環状を呈するとともに光軸を含む断面形状が鋸刃状を呈するような前記径方向において互いに隣接する複数の突起部を有し、
前記突起部は、
前記光源から出射された光が入射し、この入射した光を屈折させる第1面と、
この第1面に対して前記光軸を基準とした前記径方向の外側位置に形成され、前記第1面から入射した光を前記反入射領域に向けて全反射させる第2面と、
前記第1面と前記第2面との間に、これら両面のそれぞれの前記光源側の端部に連接されるように配置され、前記光源から出射された光が入射する第3面と
を有し、
前記第3面は、
前記第1面に連接された一方の端部が前記第2面に連接された他方の端部よりも前記光軸方向において前記光源側に位置するような前記光軸に対して傾きを有する傾斜面に形成されているとともに、前記複数の突起部ごとの前記第3面に入射した光を、これら各第3面の全体によって正のパワーを以て前記反入射領域側に屈折させること
を特徴とする光束制御部材。
【請求項3】
前記第3面は、
これに入射した光を、前記第1面および前記第2面のいずれにも入射させないようにして前記出射領域または前記反入射領域に向かわせるような方向に屈折させること
を特徴とする請求項1または2に記載の光束制御部材。
【請求項4】
次の(1)の条件式、
θ<θ<90° (1)
但し、
θ:第1面に入射した光の第1面における屈折方向と第1面とのなす角度
θ:第1面と第3面とのなす角度
を満足することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光束制御部材。
【請求項5】
光源から出射された光を被照射面に照射する光学装置であって、
前記光源における前記光の出射側の位置に、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光束制御部材が、その入射領域を前記光源側に向けるとともにその光軸を前記光源から出射される光の中心軸に位置合わせした状態で配置されていること
を特徴とする光学装置。
【請求項6】
前記第3面は、前記光源から前記光軸に対して45°以下の角度で出射された光が入射するような前記入射領域上の範囲内に配置されていること
を特徴とする請求項5に記載の光学装置。

【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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