説明

光検出器と波長変換ファイバを有するPETスキャナ

シンチレータブロックのフォトン源から複数の光検出器によって受けたフォトンの分布を示す測定された光検出器信号を得る工程と、シンチレータブロックのフォトン源から前記シンチレータブロックを横切って延びる複数の波長変換ファイバによって受けたフォトンの分布を示す測定されたファイバ信号を得る工程と、を含む、最有望フォトン源の位置を推定するための方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ポジション放射断層撮影(「PET」)スキャナと、特にPETスキャナの空間的および時間的分解能の向上に関する。
【背景技術】
【0002】
ポジション放射断層撮影(「PET」)において、放射性物質が患者に配置される。放射性減衰の過程で、この物質は陽電子を放射する。陽電子は、電子に遭遇するまで患者の体内を通過する。陽電子と電子が出会うと互いに消滅する。その結果、2つのガンマ線フォトンが放出され、患者を出た2つのガンマ線フォトンは反対方向に動く。これらのガンマ線フォトンのペアを検出することにより、消滅が生じた場所を推定し、それによって患者の体内での放射性物質の分布を決定することができる。
【0003】
これらのガンマ線フォトンのペアを検出するため、(ここでは「ガンマ線」と呼ぶ。)患者をシンチレーション結晶(scintillating crystal)で取り囲むことが有用である。陽電子と電子が患者の体内で消滅すると、生じるガンマ線のペアが対向するシンチレーション結晶に入る。これらのガンマ線は次いで、シンチレーション結晶と相互に作用する。その間にガンマ線がシンチレーション結晶と相互作用する点に集中してシンチレーションフォトンの一連の放射が等方的に生じる。これらのシンチレーションフォトンは、シンチレーション結晶と光学的に連絡する光検出器によって検出することができる。
【0004】
これらのシンチレーションフォトンには、光検出器に入る方向に発するものもある。光検出器から離れる方向に発するが、シンチレーション結晶内の構造で向きを変えた後どうにか光検出器に到達するシンチレーションフォトンもある。なお、その他のシンチレーションフォトンは吸収され光検出器には全く到達しない。
ガンマ線フォトンを検出するため、患者はシンチレーション結晶のリング内に配置される。結晶を観測する光検出器は、次いでシンチレーションフォトンを検出し、シンチレーションフォトンを受けた数と、どのシンチレーション結晶から受けたかに関する情報をプロセッサに提供する。プロセッサは次いで、全ての光検出器から到達したこのようなデータを処理して、患者の体内での放射性物質の空間的分布を示す画像を作成する。
【0005】
各光検出器は、その強度がその光検出器に到達したシンチレーションフォトンの数を示す信号を提供する。光検出器は大きな断面積を有するため、多くのシンチレーションフォトンを検出することができる。その結果、光検出器は、大変正確にガンマ線が物質と相互作用したときを決定することができる。しかし、光検出器の大きな受光断面積により、ガンマ線がシンチレーション結晶と相互作用した場所に関する正確な情報を提供する能力が制約される。
【0006】
PETスキャナの空間的分解能を向上するため、光電子増倍管やシンチレーション結晶と光学的に連絡する波長変換光ファイバや蛍光光ファイバを設置することができる。シンチレーションフォトンは、次いで蛍光光ファイバに入ることができる。すると、シンチレーションフォトンが吸収される。こうして光ファイバは蛍光を生じる。ファイバ内で放射された「再放射フォトン」と呼ばれるフォトンは、各ファイバと光学的に連絡する光センサーの方に伝搬する。蛍光光ファイバは光電子増倍管に比べて非常に狭いので、ファイバ配列は光電子増倍管よりも高い空間的分解能を備えている。そのためこのファイバは、ガンマ線がシンチレーション結晶と相互作用した場所に関してより正確な情報を提供することができる。
【0007】
ファイバの直径が小さいこと、ファイバのシンチレーションフォトンを捕捉する確率が制約されていることは、各ファイバが限られた数のシンチレーションフォトンしか集めることができないことを意味する。そのため、ファイバにより得られた信号は、限られた時間的分解能を提供するだけである。それによって、特にイベントの間隔が短いとき、ファイバからの信号と光電子増倍管からの信号とを関連づけることが困難となる。
【発明の開示】
【0008】
要旨
本発明の1つの局面において、装置は、PETスキャナのシンチレータブロックからのフォトンを受けるために配置された光検出器であって、前記光検出器によって検出された光検出器信号の分布を示す測定された光検出器信号を提供するように構成されている光検出器と、前記シンチレータブロックからのフォトンを受けるために配置された波長変換ファイバであって、前記ファイバによって受けたフォトンの分布を示す測定されたファイバ信号を提供するように構成された波長変換ファイバとを備える。
本発明のこの局面の実施形態は、次の1以上の特徴を含むことができる。
プロセッサは、前記測定された光検出器信号および前記測定されたファイバ信号に基づいてフォトン源の位置を推定するように構成されている。
プロセッサは、参照光検出器信号に基づいてフォトン源の位置を推定するように構成されている。
プロセッサは、参照ファイバ信号に基づいてフォトン源の位置を推定するように構成されている。
プロセッサは、前記推定した位置が正確な位置である程度を推定するように構成されている。
格納された較正表は、既知の一式の光検出器信号から得られた値を含んでいる。
格納された較正表は、既知の一式のファイバ信号から得られた値を含んでいる。
【0009】
前記プロセッサは、前記測定された光検出器信号および前記測定されたファイバ信号が、フォトン源において出されたフォトンから得られた可能性を推定することにより、前記フォトン源の位置を推定するように構成されている。
【0010】
前記プロセッサは、前記測定された光検出器信号および前記測定されたファイバ信号が、複数のフォトン源のそれぞれにおいて出されたフォトンから得られた可能性を推定することにより、前記フォトン源の位置を推定するように構成されている。
【0011】
前記プロセッサは、前記測定された光検出器信号および前記測定されたファイバ信号が、フォトン源において出されたフォトンから得られたものである最大尤度に、いずれのフォトン源が関連しているかを決定することにより、前記フォトン源の位置を推定するように構成されている。
【0012】
前記プロセッサは、複数のフォトン源から、前記測定された光検出器信号および前記測定されたファイバ信号が前記フォトン源において出されたフォトンから得られた可能性の方が、前記測定された光検出器信号および前記測定されたファイバ信号が前記フォトン源とは別の源において出されたフォトンから得られた可能性よりも高い特性を有する、フォトン源を確認することによって、フォトン源の位置を推定するように構成されている。
【0013】
前記プロセッサは、前記測定された光検出器信号および前記測定されたファイバ信号が、第1のフォトン源において出されたフォトンから得られた可能性である、第1の尤度を示す第1の値を推定し、前記測定された光検出器信号および前記測定されたファイバ信号が、第2のフォトン源において出されたフォトンから得られた可能性である、第2の尤度を示す第2の値を推定し、前記第1の値および前記第2の値に基づいて、前記第2の尤度よりも前記第1の尤度が大きくなるように決定し、前記第1のフォトン源が、前記測定された光検出器信号および前記測定されたファイバ信号を出させたフォトンのフォトン源であることを示すことにより、フォトン源の位置を推定するように構成されている。
【0014】
本発明の別の局面は、PETスキャナのシンチレータブロックのフォトン源から、複数の光検出器によって受けたフォトンの分布を示す測定された光検出器信号を得る工程と、シンチレータブロックのフォトン源から、前記シンチレータブロックを横切って延びる複数の波長変換ファイバによって受けたフォトンの分布を示す測定されたファイバ信号を得る工程とを含む。
【0015】
本発明のこの局面は、次の1以上の特徴を含むことができる。
前記測定された光検出器信号および前記測定されたファイバ信号に基づいて、前記シンチレータブロックの前記フォトン源の位置を推定する追加の工程。
参照光検出器信号に基づいて前記位置を推定する工程によりフォトン源の位置を推定する工程。
参照ファイバ信号に基づいて前記位置を推定する工程により、前記最有望フォトン源の位置を推定する工程。
前記推定した位置が正確な位置である程度を推定する工程。
前記既知の一式の光検出器信号から得られた値を含む格納された較正表を読む追加の工程。
前記既知の一式のファイバ信号から得られた値を含む格納された較正表を読む追加の工程。
前記測定された光検出器信号および前記測定されたファイバ信号が前記フォトン源において出されたフォトンから得られた可能性を推定する工程により、前記フォトン源の位置を推定する工程。
前記測定された光検出器信号および前記測定されたファイバ信号が複数のフォトン源のそれぞれにおいて出されたフォトンから得られた可能性を推定する工程により、フォトン源の位置を推定する工程。
前記測定された光検出器信号および前記測定されたファイバ信号が、前記フォトン源において出されたフォトンから得られた最大尤度に、前記フォトン源のいずれが関連するかを決定する工程により、フォトン源の位置を推定する工程。
複数のフォトン源から、前記測定された光検出器信号および前記測定されたファイバ信号が前記フォトン源において出されたフォトンから得られた可能性の方が、前記測定された光検出器信号および前記測定されたファイバ信号が前記フォトン源とは別の源において出されたフォトンから得られた可能性よりも高い特性を有する、フォトン源を確認する工程により、フォトン源の位置を推定する工程。
前記測定された光検出器信号および前記測定されたファイバ信号が、第1のフォトン源において出されたフォトンから得られた可能性である、第1の尤度を示す第1の値を推定する工程と、前記測定された光検出器信号および前記測定されたファイバ信号が、第2のフォトン源において出されたフォトンから得られた可能性である、第2の尤度を示す第2の値を推定する工程と、前記第1の値および前記第2の値に基づいて、前記第2の尤度よりも前記第1の尤度が大きくなるように決定する工程と、前記第1のフォトン源が、前記測定された光検出器信号および前記測定されたファイバ信号を出させたフォトンのフォトン源であることを示す工程により、フォトン源の位置を推定する工程。
【0016】
本発明の別の局面は、シンチレータブロックの最有望フォトン源の位置を推定するためのソフトウェアが符号化されているコンピュータ読み取り可能媒体を含む。前記ソフトウェアは、シンチレータブロックのフォトン源から、複数の光検出器によって受けたフォトンの分布を示す測定された光検出器信号を得、シンチレータブロックのフォトン源から、シンチレータブロックを横切って延びる複数の波長変換ファイバによって受けたフォトンの分布を示す測定されたファイバ信号を得、前記測定された光検出器信号に少なくとも部分的に基づいて、および前記測定されたファイバ信号に少なくとも部分的に基づいて、前記シンチレータブロックの最有望フォトン源の位置を推定するための命令を備える。
【0017】
本発明のこの局面は、次の1以上の特徴を含むことができる。
前記最有望フォトンの位置を推定するための命令は、前記測定された光検出器信号を既知の一式の光検出器信号と比較し、前記測定されたファイバ信号を既知の一式のファイバ信号と比較するための命令を含む。
前記ソフトウェアが、前記既知の一式の光検出器信号から得られた値を含む格納された較正表を読むための命令をさらに含む。
前記ソフトウェアが、前記既知のファイバ信号から得られた値を含む格納された較正表を読むための命令をさらに含む。
最有望フォトン源を推定するための命令は、前記測定された検出器信号および前記測定されたファイバ信号が、前記最有望フォトン源において出されたフォトンから得られた可能性を推定するための命令を含む。
前記最有望フォトン源の位置を推定する命令は、前記測定された光検出器信号および前記測定されたファイバ信号が、複数のフォトン源のそれぞれにおいて出されたフォトンから得られた可能性を推定し、前記測定された光検出器信号および前記測定されたファイバ信号が、前記フォトン源において出されたフォトンから得られた最大尤度に、複数のフォトン源のいずれが関連するかを決定するための命令を含む。
前記最有望フォトン源の位置を推定するための命令は、前記測定された光検出器信号および前記測定されたファイバ信号が、複数のフォトン源のそれぞれにおいて出されたフォトンから得られた可能性を推定し、前記複数のフォトン源から、前記測定された光検出器信号および前記測定されたファイバ信号が前記最有望フォトン源において出されたフォトンから得られた可能性の方が、前記測定された光検出器信号および前記測定されたファイバ信号が前記最有望フォトン源とは別の源において出されたフォトンから得られた可能性よりも高い特性を有する、最有望フォトン源を確認するための命令を含む。
前記最有望フォトン源の位置を推定するための命令は、前記測定された光検出器信号および前記測定されたファイバ信号が、第1のフォトン源において出されたフォトンから得られた可能性である、第1の尤度を示す第1の値を推定し、前記測定された光検出器信号および前記測定されたファイバ信号が、第2のフォトン源において出されたフォトンから得られた可能性である、第2の尤度を示す第2の値を推定し、前記第1の値および前記第2の値に基づいて、前記第2の尤度よりも前記第1の尤度が大きくなるように決定し、前記第1のフォトン源が、最有望フォトン源であることを示すための命令を含む。
【0018】
他に規定していなければ、ここに使用する科学技術用語は、本発明が属する当業者の1人が通常理解するのと同じ意味である。ここに記載するものと類似もしく均等な方法または材料は、本発明の実施または試験に使用することができるが、適切な方法と材料を以下に記載する。コンフリクトの場合は、定義を含む本明細書がコントロールするであろう。加えて、材料、方法、および例は例示するのみであり、限定を意図するものではない。
【0019】
本発明の他の特徴および利点は、次の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1を参照して、PETスキャナ10は、患者15が横たわるベッド14を取り囲んだ検出器モジュール16A−Kのリング12を含む。各検出器モジュール16A−K(「モジュール」という。)は、1列以上の検出器ブロック17を含む。図2Aに示す検出器ブロック17は、例えばシンチレータブロック21と光学的に連絡して2×2列で設置された4つの光電子増倍管19A−Dを含む。シンチレーターブロック21は、通常はCsI(Na)ナトリウムドープしたヨウ化セシウムで作成される。光電子増倍管19A−Bは、図2Aで見られ、光電子増倍管19A−Cは、図2Bで見られる。光電子増倍管19Aと対角上にある残りの光電子増倍管19Dは、図では見えない。
【0021】
シンチレータブロック21は、シンチレーション結晶から作成された個別のピラー23に分割されている。ピラー23は、例えば10×16列で配列して設置され、その一部を図3に示す。この配列は、長さが3.22インチ(82ミリメートル)、幅が2.69インチ(68ミリメートル)である矩形の断面積を有する。
【0022】
この配列の各ピラー23は、長辺25と短辺27を有する横断断面積を有する直方柱である。長辺25に平行する軸は、ここではシンチラーブロック21の「主」軸とし、シンチラーブロック21の短辺27に平行する軸は「従」軸とする。
【0023】
PETスキャナを用いて患者の一部を画像化するため、放射性物質を患者に導入する。放射性物質が減衰するにつれ、陽電子が放出される。陽電子は、患者の体内を短時間で通った後、電子に遭遇する。陽電子と電子から生じる消滅は、反対方向に進む2つのガンマ線フォトンを生成する。これらのガンマ線フォトンは、患者の体内で偏向したり吸収されたりしない程度で、患者から出て2つの対向するピラー23に衝突し、それにより患者の体内で消滅が生じたことを示す2つの閃光を生じる(「イベント」と言う)。どのピラー23からこれらの閃光が発したかを決定することによって、患者の体内で消滅イベントが生じた場所を推定することができる。
【0024】
特に、図1を再度参照すると、これらのガンマ線フォトンの一方が第1の検出器モジュール16Aでピラーに衝突すると、他方のガンマ線フォトンは、第1の検出器モジュールと対向する第2の検出器モジュール16E、F、G、またはHのピラーで衝突する。これにより、一方は第1の検出器モジュール16Aにおいて、他方は第2の検出器モジュール16E、F、G、またはHにおいて、2つのイベントが生じる。これらのイベントはそれぞれガンマ線フォトンが検出されたことを示す。2つのイベントが第1の検出器モジュール16Aと第2の検出器モジュール16E、F、G、Hにおいてほぼ同時に検出されると、第1の検出器モジュール16Aと第2の検出器モジュール16E、F、G、またはHとを結ぶ線上に恐らく消滅が生じていることを示している。
【0025】
PET走査で興味の対象は、対向する検出器モジュール16A、16E−Fによって同時またはほぼ同時に生じるイベントのペアである。このような特性を有する一対のイベントを「コインシデンス」と言う。PETスキャンの最中に、各検出器モジュール16A−Kは、多くのイベントを検出する。しかし限られた数のイベントしかコインシデンスを示さない。
【0026】
関連する検出器モジュール16A−Kに検出されたイベントに応答するのは、各検出器モジュール16A−Kに伴うモジュールプロセッサ18A−Kである。モジュールプロセッサ18A−Kは、互いにデータ通信する処理要素とメモリ要素を含む。処理要素は、多様な論理演算を行う組み合わせ論理要素を有する計算要素、命令レジスタ、関連データレジスタ、およびクロックを含む。各クロックインターバル間で、プロセッサは、メモリ要素から命令を取り出して命令レジスタにロードする。動作すべき命令に付随するデータが同様に関連データレジスタにロードされる。その後のクロックインターバルにおいて、処理要素はその命令を実行する。このような命令の手順を本明細書では「プロセス」と言う。
各モジュールプロセッサ18A−Kは、マスタープロセスとスレーブプロセスを同時に実行する。各モジュールプロセッサ18A−Kは、2つのモジュールプロセッサのマスターであり、同時に他の2つのモジュールプロセッサへのスレーブである。本明細書中で使用する「マスター」は、マスターモジュールプロセッサとして動作するモジュールプロセッサ18A−Kを意味し、「スレーブ」は、スレーブモジュールプロセッサとして動作するモジュールプロセッサ18A−Kを意味する。用語「マスターモジュール」と「スレーブモジュール」は、それぞれマスターとスレーブに関連した検出器モジュール16A−Kを述べるために使用する。
【0027】
各マスターの2つのスレーブは、リング12上の関連する検出器モジュール16A−Kの相対位置に基づいて選択される。特に、各マスターのスレーブは、マスター検出器モジュールで検出されるイベントとスレーブ検出器のいずれか一方で検出されるイベントとがコインシデンスペアを形成する可能性が最大化するように選択される。
【0028】
図1に示す11の検出器モジュールの構成に対して、モジュールプロセッサ18A−Kの間のマスター/スレーブ関係は、次のようになる。
【0029】
【表1】

従って、モジュールプロセッサ18−Kの間のスレーブ/マスター関係は、次のようになる。
【0030】
【表2】

【0031】
図4は、図1のリング12と、11個のモジュールプロセッサのうちの2個のモジュールプロセッサのマスター/スレーブ関係を示すように加えた線とを示す。検出器モジュール16Aから16Eを結ぶ線、検出器モジュール16Aから16Fを結ぶ線は、モジュールプロセッサ18Eと18Fがモジュールプロセッサ18Aのスレーブであることを示している。モジュールプロセッサ18Fは、検出器モジュール16Fから検出器モジュール16Jと16Kを結ぶ線で示すように、独自に2つのスレーブを有する。残りのマスター/スレーブ関係を表す18個の線は、明瞭にするため省略する。
【0032】
図5に示すように、マスター18Aは、その第1のスレーブ18Eへ第1および第2のデータリンク20A、22Aによって接続されている。同様に、マスター18Aは、第2のスレーブ18Fへ別の第1および第2のデータリンク20B、22Bにより接続されている。第1および第2のデータリンク20A−B、22A−Bは、マスター18Aと対応するスレーブ18E−Fとの間でトリガーパルスを送信するために使用される。従って、第1および第2のデータリンク20A−B、22A−Bは、通常は単線である。スレーブ18Eが、それに関連する検出器モジュール16Eから、イベントを示す信号(以後、「スレーブイベント」と言う)を受けると、スレーブ18Eは、第1のデータリンク20Aでパルスをマスター18Aに送信する。マスター18Aが、スレーブ18Eにより検出されたスレーブイベントを、コインシデンスを構成するイベントとみなすと、マスター18Aは、第2のデータリンク22Aでパルスをスレーブ18Eに送り返す。
【0033】
通常はLVDS(「低電圧差動規格」)チャンネルである第3のデータリンク24A−Bは、マスター18Aとそのそれぞれのスレーブ18E−Fに接続する。スレーブ18E−Fは、この第3のデータリンク24A−Bを使用して、マスター18Aへスレーブイベントについての別の情報を送信する。このような別の情報には、例えば、そのスレーブイベントをトリガーした入射ガンマ線フォトンのエネルギーや、光電子増倍管により生成された電圧信号の波形を含めることができる。
【0034】
図6は、スレーブにより実行される手順を示す。その関連したモジュールプロセッサから、スレーブイベントを示す信号を受けると(ステップ26)、スレーブはそのスレーブイベントをその両方のそれぞれのマスターへレポートする(ステップ28A−B)。これは、それらのマスターへ接続する2つのそれぞれの第1のデータリンクでパルスを送信することによってなされる。スレーブは次いで、それらの2つのそれぞれのマスターへ接続する2つの第2のデータリンクのいずれかで、マスターからの応答を待つ(ステップ30A−B)。
【0035】
第2のデータリンクでマスターから受けたリクエストパルスに応答して、スレーブは、スレーブイベントに関する別の情報を含むデータパケットを準備する(ステップ32A−B)。このデータパケットは次に、第3のデータリンクで、その別の情報をリクエストしたいずれかのマスターに送信される(ステップ34A−B)。データパケットを送った後、スレーブは次のイベントを待つ(ステップ36)。あらかじめ規定した時間内にどのマスターからもリクエストパルスが送られない場合は、スレーブはスレーブイベントを放棄し(ステップ38)、次のスレーブイベントを待つ(ステップ36)。
【0036】
図7は、マスターが実行する手順を示す。関連する検出器モジュールからスレーブイベントを示す信号を受けると(ステップ40)、スレーブイベントの発生時刻と、それ自体に関連する検出器モジュールにより受けたイベント(以後、「マスターイベント」と言う)の発生時刻とを比較する(ステップ42)。マスターイベントとスレーブイベントの発生時刻の違いが選択した許容範囲である場合は、マスターはマスターイベントとスレーブイベントとがコインシデンスであると判断する(ステップ44)。さもなくば、マスターはスレーブイベントを無視して次のスレーブイベントの発生を待つ(ステップ46)。
【0037】
マスターイベントとスレーブイベントの間でコインシデンスが認められると、マスターはそのスレーブイベントを検出したスレーブへリクエストパルスを送信する(ステップ48)。図6について述べたように、このパルスはスレーブによって、スレーブイベントについての別の情報を要求するものとして解釈される。マスターは次いで、スレーブイベントについての別の情報を有するデータパケットを待つ。
【0038】
データパケットを受けると(ステップ50)、マスターは、両者でコインシデンスとなるマスターイベントとスレーブイベントに関する情報を含むコインシデンスレコードを作成する。このコインシデンスレコードは、後に公知の断層撮影アルゴリズムを実行する画像復元処理によって処理するため、公知の磁気ディスクや磁気テープなどの大容量記憶媒体に格納される(ステップ52)。
【0039】
記載したように、各スレーブは2個のマスターを有し、各マスターは2個のスレーブを有する。しかし、スレーブが特定の数のマスターを有したり、マスターが特定の数のスレーブを有することは要求されない。また各マスターが同じ数のスレーブを有したり、各スレーブが同じ数のマスターを有することも要求されない。
【0040】
図示したPETスキャナ10は、11個の検出器モジュールを有している。しかし、異なる数の検出器を用いることができる。本発明は、リング12の検出器モジュールの数に依存しないが、奇数の検出器が位相的には都合がよい。
【0041】
図6において、スレーブはマスターにイベントを知らせるが、マスターがその情報を実際に要求するまでイベントに関する情報を保留している。これによって、第3のデータリンクがスレーブからマスターへのデータパケットの輸送でビジーとなる確率を最小化し、それによって、データパケットがドロップする確率を最小化する。しかし、これによってマスターは対象のデータパケットを要求する必要があるため、別に幾分複雑となる。
【0042】
あるいは、そのスレーブに関連する検出器モジュールで検出された各イベント毎に、スレーブはマスターにデータパケットを送る。マスターがそのイベントをコインシデンスの一部でないと判断する場合は、マスターはデータパケットを放棄するのみとなる。こうすることで、マスターはもはやスレーブにデータパケットを送るよう信号を出す必要がないので、第2のデータリンクの必要性がなくなる。
【0043】
図2−3に戻って、各検出器ブロック17は、対象が画像化される最も近くのシンチレータブロック21の表面で各列のピラーの主軸に平行に延びる波長変換光ファイバ54も含んでいる。図3に示すように、ファイバ配列53の中でファイバ54はシンチレータブロック21の面を横切って広がっており、1つのファイバ54が各列のピラー23の主軸に平行に延びている。各ファイバ54は、各プロセッサ18A−Kに信号を提供する蛍光光度計(fluoremeter)55と光学的に連絡している。
【0044】
ファイバ54の壁は、ピラー23から出る光に対して透明である。その結果、ファイバ54に隣接するピラー23(図3で影付きのピラー)の1つに由来する光は、光をファイバ54に導入する。この光の一部は、ファイバ54の内部で捕捉され、ファイバ54に組み合わされた蛍光光度計55に導かれる。検出器を横切る光、すなわちファイバ54を横切る光の空間的分布を観測することにより、プロセッサ18A−Kは、シンチレータブロック21のどの列のピラー23から光が由来するのかを決定することができる。このようにリボン状のファイバ54を一体化するPETスキャナは、米国特許第5,600,144号に記載されており、その内容は参照により一体化される。
【0045】
イベントの間の一連のシンチレーションフォトンは、図8に示すような特有の時間点分布を有する。図8に示すように、シンチレーションフォトン数の急激な増加は、ガンマ線フォトンとシンチレーションブロック21との間の相互作用の瞬間を特徴づける。これに次いでシンチレーションフォトンの数は減少する。相互作用の瞬間を正確に決定する能力は、一部には、図8に示す急激な増加を検出する能力に依存している。
【0046】
検出器が相互作用によって放出した全てのシンチレーションフォトンをなんとか検出することができるとすると、シンチレーションフォトンの測定された時間的分布は、図8に示す実際の時間的分布と一致することになる。しかし、どの瞬間においても検出器は、その検出器の方に来るフォトンを検出することができるだけである。このようなフォトンの数は統計的に変動する。このフォトンの数が少ないと、シンチレーションフォトンの測定される時間的分布は、図8に示す特徴的な時間的分布とはかなり異なったものとなり得る。これは、正確な相互作用の瞬間を確認する能力に悪影響を及ぼす。
【0047】
光電子増倍管19A−Dは、大きな受光面積を有しているため、大量のフォトンを図8に示す特徴的な時間的分布からサンプリングする。このため、統計的変動は重要でなくなり、光電子増倍管19A−Dによって測定された時間的分布は、図8に示す特徴的な時間的分布と一致する傾向となる。光電子増倍管19A−Dは、このように衝突の瞬間を非常に正確に決定することができるので、時間的に非常に接近して生じるイベントを分解することが可能となる。しかし、光電子増倍管19A−Dは、その受光面積が大きいため、空間的分解能が低く、そのため空間的に非常に近接したイベントを分解することができない。
【0048】
対照的に、ファイバ54は受光面積が小さいため、光電子増倍管19A−Dよりも精緻な空間的分解能を提供する。ファイバ54の光捕捉効率が制限されているので、ファイバ54は、光電子増倍管19A−Dほど多くのシンチレーションフォトンをサンプリングすることができない。このため、ファイバ54によって見られる時間的分布は、しばしば図8の実際の時間的分布と全く異なる。特に、相互作用の瞬間に伴う急激な増加がしばしば低下する。その結果、ファイバ配列53は、シンチレーションブロック21で互いに非常に近くで生じるイベントを区別をすることはできるが、時間的に非常に接近して生じたイベントを分解することは容易にはできない。
【0049】
光電子増倍管19A−Dの空間的分解能は、一部には、光電子増倍管19A−Dの数に依存する。例えば、それぞれが比較的小さい受光面積を有する光電子増倍管を多く設置することができる。しかし、これにより、各光電子増倍管で集められるシンチレーションフォトンは少なくなるので、ファイバ54に関連して、上述したように相互作用の瞬間に伴う急激な増加が低下する。さらに光電子増倍管の出費があるので、適切な空間的分解能を維持する一方で光電子増倍管の数を削減することが望ましい。これはシンチレータブロック21から光電子増倍管19A−Dの間に位置して光ミキサ56を設置することにより達成される。
【0050】
光ミキサ56は、光学的に透明な材料の層である。シンチレータブロック21と光ミキサ56の間のインターフェース59は、インターフェース59において反射を減少するため屈折率整合層でコーティングされている。同様に、光ミキサ56と光電子増倍管19A−Dの間のインターフェース57は、インターフェース57において反射を減少するため屈折率整合層でコーティングされている。
【0051】
ピラー23を入るガンマ線フォトンは、一連の等方性シンチレーションフォトンを生成する。これらのシンチレーションフォトンは、光学要素内の構造によって散乱または反射する。シンチレーションフォトンがどのピラーに由来するかによって、異なる数のシンチレーションフォトンが光電子増倍管19A−Dに衝突する。その結果、第1、第2、第3、および第4の光電子増倍管19A−Dは、光電子増倍管19A−Dにより検出されたシンチレーションフォトンの数に依存して、対応する第1、第2、第3、および第4の光電子増倍信号を生成する。
理想的には、第1および第3の光電子増倍信号の合計と、4つの全ての光電子増倍信号の合計との比は、光を放出したピラー23に関連した第2の座標の値に直線的に依存する。同様に、第1および第2の光電子増倍信号の合計と、4つの全ての光電子増倍信号の合計との比は、光を放出したピラー23に関連した第1の座標の値に直線的に依存する。代表的な理想的な比は、図9Aおよび9Bの実線58、60に示す。さらに、図9Cの実線62が示すように、どのピラー23が光を出そうと、4つの全ての光電子増倍信号の合計は同じであるはずである。
【0052】
非線形性と頂部形成(crowning)の両方を避けるための、図10に示す好適な光学要素70は、シンチレータブロック21に隣接するミキシング層72を有する構造的光学要素、光電子増倍管19A−Dに隣接した非構造的キャップ層74、キャップ層74に隣接した構造的外側層76、およびミキシング層72と構造的外側層76の間の構造的内側層78である。4つの層は、すべて光学的に透明な媒体から作成されている。
【0053】
光学要素70のミキシング層72は、ほぼ0.05インチと0.12の間で、好ましくは0.08インチの厚みの透明材料の層である。このミキシング層72により、光が構造的内側層78に入る前に短距離で自由に混合することができる。
【0054】
図11を参照して、構造的内側層78は、光学要素70の側面に平行に延びる外側壁82を有する光学的に透明な中央領域と、ずれてはいるが中央領域80の外側壁82に平行に延びる内側壁86を有する透明な周辺領域84とを含む。ここで使用する「内側壁86」とは、周辺領域84に物理的に接触する表面を言い、「外側壁82」とは、中央領域80に物理的に接触する表面を言う。内側壁86および外側壁82は、このように中央領域80を周辺領域84から分ける矩形ギャップ88を規定する。矩形ギャップ88は、空気または光学的に透明な媒体とは異なった誘電率を有する材料で充填することができ、それにより、中央領域80と周辺領域84の内部で全反射が促進される。ギャップ88の幅は重要ではないが、ギャップ88を介する結合を抑制するための波長よりも大きい必要がある。
【0055】
矩形ギャップ88は、1つのピラー23が正確に周辺領域84の下になるようにミキサ70の壁からずらすことができる。このことは、同じピラー23から出る全てのフォトンが、次いで同じ物理的環境に置かれるゆえ有利であるがこれは必要ではない。矩形ギャップ88は、例えばピラー23を二等分することができる。
【0056】
周辺領域84の内側壁86は高度に研磨されているので、内側壁86に入射する周辺領域84のシンチレーションフォトンは鏡面反射する。それに対して、中央領域80の外側壁82は粗いので、外側壁82に入射する中央領域80のシンチレーションフォトンは、ランダムな方向に反射する。その結果、周辺領域84のシンチレーションフォトンが光電子増倍管に到達する確率は、中央領域80のシンチレーションフォトンが光電子増倍管に到達する確率よりも高い。これにより、中央領域80のシンチレーションフォトンに対する光電子増倍管19の応答に比較して、周辺領域84のシンチレーションフォトンへの光電子増倍管19の応答を高めるようになる。
【0057】
図9Cの破線68は、第2の座標の特定の値に由来するシンチレーションフォトンが光電子増倍管19A−Dに到達する可能性を示す確率密度関数である。通常の光学要素においては、中央領域80に由来するシンチレーションフォトンが、周辺領域84に由来するシンチレーションフォトンよりも、光電子増倍管19A−Dにより到達しやすいため、確率密度関数68は非均一である。周辺領域84からのフォトンが光電子増倍管19A−Dに到達するよう促進され、同時に、中央領域80からのフォトンが光電子増倍管19A−Dへの到達を阻止されることによって、構造的内側層78において確率密度関数68は平坦になるようになる。これによって、第1および第2の光電子増倍信号の合計が第2の座標から独立するようになる。
【0058】
今度は図12を参照して、光学要素70の構造的外側層76は、1つが各光電子増倍管19A−Dに対応する4つの光学的に透明なクオドラント90A−Dから作成されている。各クオドラント90Aは、外部コーナー94Aで出会う2つの外側壁92A、92Bと、内部コーナー98Aで出会う内側壁96A、96Bとを有する。ここで使用されるとおり、内側壁96A、96Bは、それに伴うクオドラント90Aと物理的に接触している。各クオドラント90Aの内側壁96A、96Bは、入射したシンチレーションフォトンが鏡面反射するように高度に研磨されている。
【0059】
全ての4つのクオドラント90A−Dの内側壁96A、96Bは集合して、構造的外側層76で主軸と従軸の両方向に延びる十字型ギャップを形成している。十字型ギャップ100は、空気または光学的伝達媒体のものとは異なる誘電率を有する材料で充填することができ、それにより、各クオドラント90A−Dの内部での全反射を促進する。ギャップ100の幅は重要でないが、ギャップ100を介する結合を抑制する波長よりも大きい必要がある。
【0060】
構造的内側層78は、0.923インチ(16.8mm)の厚みであり、光学要素70の全厚みは、1.573インチ(39.9mm)である。光学的伝達性層102は、ミキシング層72と同様、構造的外側層76と構造的内側層78の間に選択的に配置される。この選択的である層102は、ほぼ0.15インチ(3.8mm)の厚みである。光学要素70の長さおよび幅は、それぞれ3.21インチ(81.8mm)と、2.695インチ(94.4mm)である。光学的に透明な材料のキャップ層74は、構造的外側層76を覆って配置することができ、それによって、異物が十字型ギャップ100に落ちることを防止する。このキャップ層74は、0.06インチと0.12インチの間である。
【0061】
ここに記載する実施の形態において、4つの光電子増倍管19A−Dが格子状に配置されているので、4つの領域90A−Dが構造的外側層76の内部にある。この領域は、構造的外側層76にあるので、各領域90Aは4つの光電子増倍管19A−Dの1つ19Aに面している。領域の間に得られるギャップがこのような十字ギャップ100である。
【0062】
別の実施の形態において、4つ以上の光電子増倍管を矩形アレイに配置することもできる。このような場合、構造的外側層76の内部に対応する領域の数があって、各領域が対応する光電子増倍管に面している。領域の間に得られたギャップは次いで格子を規定する。ギャップを規定する壁は高度に研磨されているため、特定の領域から壁に入射するシンチレーションフォトンは鏡面的に反射してその領域に戻される。
【0063】
多くの光電子増倍管を有する実施の形態においては、構造的内側層78は、中央領域を取り囲むいくつかの入れ子状の周辺領域を有することができる。これらの追加の領域は、周辺領域の形状に似ており、互いにギャップによって離れている。各ギャップは内向きの壁と外向きの壁とを有する。内向きの壁は粗く鏡面反射を阻止し、外側の壁は高度に研磨されて鏡面反射を促進している。各ペアの内向きの壁と外向きの壁の粗さと研磨の程度は、ペア毎に変化させることができ、それによって、可能な限りフラットな応答を達成するよう内層を調節することができる。
【0064】
光学要素70は、個別の層を成型することによって作成する。この層は次いで層間を屈折率整合接着剤で接着する。構造的外側層76と構造的内側層78をモールドから容易に除去するため、矩形ギャップ88および十字ギャップ100は通常V形状プロフィールで作成される。
相互作用が何時にどのピラー23で生じたかを確認する際、光電子増倍管19A−Dによって提供された情報と、ファイバ配列53によって提供された情報の両方を利用することが有利である。その時間分解能が秀逸であるため、光電子増倍管19A−Dは、イベントが生じたときを確認する情報に貢献するであろう。その空間的分解能が秀逸であるため、ファイバ配列53は、イベントが生じた場所を確認する情報に貢献するであろう。
【0065】
光電子増倍管19A−Dによっておよびファイバ配列53によって提供された情報を同時に利用することが困難なのは、CsI(Na)シンチレータブロック21を使用するとき、光電子増倍管19A−Dによって検出されたイベントと、ファイバ配列53によって検出されたイベントと、を関連づけることが困難であることから生じている。ファイバ54は、およそ100ナノ秒離れたイベントを分解することができ、一方、光電子増倍管19A−Dは、1ナノ秒しか離れていないイベントを分解することができる。光電子増倍管19A−Dが100ナノ秒未満で離れた2つのイベントを検出するならば、ファイバ配列53によって検出された対応するイベントを確実に確認することは困難であろう。
【0066】
光電子増倍管19A−Dによって検出されたイベントを、ファイバ配列53によって検出されたイベントに関連づける1つの方法は、第1に検出器モジュール16A−Kを較正することである。較正の間に511kEVのガンマ線フォトンを既知のピラー23に入れることでそのピラー23に由来する一連のフォトンを生じさせる。これらのフォトンの一部が光電子増倍管19A−Dに到達して光電子増倍信号をトリガする。これらのフォトンの比較的小部分がファイバ配列53に到達してファイバ信号をトリガする。光電子増倍信号とファイバ信号の両方が記録されて、既知のピラー23で生じた相互作用に関連するものとして認識される。
【0067】
先述の手順が何度も繰り返される。繰り返しの度ごとに、新たな光電子増倍信号や新たなファイバ信号が生成されて記録される。得られた一式の記録されたファイバ信号は次いで共に平均化されて、既知のピラー23内で生じる相互作用への基準ファイバ応答が得られる。同様に、得られた一式の記録された光電子増倍信号は共に平均化されて、既知のピラー23内で生じる相互作用への基準ファイバ応答が得られる。
既知のピラーに対する較正手順は、上述のように、検出器16A−K内で各ピラー23に対して繰り返される。従って較正手順の最終結果は、光電子増倍管較正表とファイバ較正表である一対の較正表となる。光電子増倍管較正表は、各ピラー23に対して、そのピラー23内で生じる相互作用への基準光電子増倍管応答を示す。ファイバ較正表は、各ピラー23に対して、そのピラー23内で生じる相互作用への基準ファイバ応答を示す。
【0068】
PETスキャナ10を使用するとき、光電子増倍管19A−Dは、未知のピラーにおいて不確定な時間で生じる相互作用に応答して、測定された光電子増倍信号を周期的に生成する。測定された光電子増倍信号は、光電子増倍信号較正表において利用可能であるどの基準光電子増倍応答とも異なるのが通常である。しかし、測定された光電子増倍信号は、基準光電子増倍応答という既知の平均を有する光電子増倍信号のサンプル空間からのサンプルを示している。その結果、公知の離散的最尤法を用いて計算することができ、測定された光電子増倍信号の尤度が、既知の基準光電子増倍応答を有するサンプル空間からその平均として出される。
【0069】
同様に、PETスキャナ10を使用するとき、ファイバ配列53は、未知のピラーにおいて不確定な時間で生じる相互作用に応答して、受けたファイバ信号を周期的に生成する。測定されたファイバ信号は、ファイバ較正表において利用可能であるどのファイバ応答とも異なるのが通常である。しかし、測定されたファイバ信号は、基準ファイバ応答という既知の平均を有するファイバ信号のサンプル空間からのサンプルを示している。その結果、公知の離散的最尤法を用いて計算することができ、測定されたファイバ信号の尤度が、既知の基準ファイバ応答を有するサンプル空間からその平均として出される。
【0070】
測定されたファイバ信号と測定された光電子増倍信号が互いに関連するかを決定するため、モジュールプロセッサは、各ピラー23に対して、測定されたファイバ信号と測定された光電子増倍信号とが、ピラー23で生じた相互作用によって生成された可能性を計算する。この可能性が最も高いピラー23に対して、ここでは「最有望ピラー」と言う。最有望ピラーに関連する可能性が選択された閾値を超えていると、測定されたファイバ信号と測定された光電子増倍信号とは、そのピラー23における同じ相互作用によって生成されたものと認識される。
【0071】
公知の統計技術を用いて、最有望ピラーが本当に正確なピラーである確率を計算することもできる。このような手法には、分子が最有望ピラーが正確なピラーである確率であり、分母が先述の確率と例えば次に有望なピラーである別のピラーが正確なピラーである確率との合計である尤度比を計算する手法が含まれている。このような比は評価の質を測定するものであろう。
【0072】
上述の方法は、実際の確率が既知でない場合にも適用することができる。そのような場合には、実際の確率に相関する値の量を代わりに使用することができる。
【0073】
他の実施も特許請求の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1は、リング状のモジュールを示す。
【図2A】図2Aは、検出器ブロックを示す。
【図2B】図2Bは、検出器ブロックを示す。
【図3】図3は、線3−3に沿った図2Aおよび図2Bの検出器ブロックを示す。
【図4】図4は、図1に示すモジュールの一部の間マスター/スレーブ関係を示す。
【図5】図5は、マスターとその2つのスレーブ間の接続を示す。
【図6】図6は、スレーブが実行するプロセスのフロー図である。
【図7】図7は、マスターが実行するプロセスのフロー図である。
【図8】シンチレーション結晶中の相互作用から生じるシンチレーションフォトンの時間的分布の特性を示す。
【図9A】図9Aは、検出器ブロックの代表的応答曲線を示す。
【図9B】図9Bは、検出器ブロックの代表的応答曲線を示す。
【図9C】図9Cは、検出器ブロックの代表的応答曲線を示す。
【図10】図10は、構造的光学要素の断面を示す。
【図11】図11は、線11−11に沿った、図10の構造的光学要素の内側層の平面図である。
【図12】図12は、線12−12に沿った、図10の構造的光学要素の外側層の平面図である。
【符号の説明】
【0075】
10 PETスキャナ
16 検出器モジュール
17 検出器ブロック
18 モジュールプロセッサ
19 光電子増倍管
21 シンチレータブロック
23 ピラー
53 ファィバ配列
54 ファイバ
55 蛍光光度計
56 光ミキサ
70 光学要素
72 ミキシング層
74 キャップ層
76 構造的外側層
78 構造的内側層
80 中央領域
82 外側壁
84 周辺領域
86 内側壁
88 矩形ギャップ
90 クオドラント
92 外側壁
96 内側壁
100 十字ギャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PETスキャナのシンチレータブロックからのフォトンを受けるために配置された光検出器であって、前記光検出器によって検出された光検出器信号の分布を示す測定された光検出器信号を提供するように構成されている光検出器と、
前記シンチレータブロックからのフォトンを受けるために配置された波長変換ファイバであって、前記ファイバによって受けたフォトンの分布を示す測定されたファイバ信号を提供するように構成された波長変換ファイバと、を備える装置。
【請求項2】
前記測定された光検出器信号および前記測定されたファイバ信号に基づいてフォトン源の位置を推定するように構成されたプロセッサをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記プロセッサが、参照光検出器信号に基づいてフォトン源の位置を推定するように構成されている、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記プロセッサが、参照ファイバ信号に基づいてフォトン源の位置を推定するように構成されている、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記プロセッサが、前記推定した位置が正確な位置である程度を推定するように構成されている、請求項2に記載の装置。
【請求項6】
既知の一式の光検出器信号から得られた値を含む格納された較正表をさらに備える、請求項3に記載の装置。
【請求項7】
既知の一式のファイバ信号から得られた値を含む格納された較正表をさらに備える、請求項4に記載の装置。
【請求項8】
前記測定された光検出器信号および前記測定されたファイバ信号が、フォトン源において出されたフォトンから得られた可能性を推定することにより、前記フォトン源の位置を推定するように前記プロセッサが構成されている、請求項2に記載の装置。
【請求項9】
前記測定された光検出器信号および前記測定されたファイバ信号が、複数のフォトン源のそれぞれにおいて出されたフォトンから得られた可能性を推定することにより、前記フォトン源の位置を推定するように前記プロセッサが構成されている、請求項2に記載の装置。
【請求項10】
前記測定された光検出器信号および前記測定されたファイバ信号が、フォトン源において出されたフォトンから得られたものである最大尤度に、いずれのフォトン源が関連しているかを決定することにより、前記フォトン源の位置を推定するように前記プロセッサが構成されている、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記測定された光検出器信号および前記測定されたファイバ信号が、第1のフォトン源において出されたフォトンから得られた可能性である、第1の尤度を示す第1の値を推定し、
前記測定された光検出器信号および前記測定されたファイバ信号が、第2のフォトン源において出されたフォトンから得られた可能性である、第2の尤度を示す第2の値を推定し、
前記第1の値および前記第2の値に基づいて、前記第2の尤度よりも前記第1の尤度が大きくなるように決定し、
前記第1のフォトン源が、前記測定された光検出器信号および前記測定されたファイバ信号を出させたフォトンのフォトン源であることを示すことにより、前記フォトン源の位置を推定するように前記プロセッサが構成されている、請求項2に記載の装置。
【請求項12】
PETスキャナのシンチレータブロックのフォトン源から、複数の光検出器によって受けたフォトンの分布を示す測定された光検出器信号を得る工程と、
シンチレータブロックのフォトン源から、前記シンチレータブロックを横切って延びる複数の波長変換ファイバによって受けたフォトンの分布を示す測定されたファイバ信号を得る工程と、を含む方法。
【請求項13】
前記測定された光検出器信号および前記測定されたファイバ信号に基づいて、前記シンチレータブロックの前記フォトン源の位置を推定する工程をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記フォトン源の位置を推定する工程は、参照光検出器信号に基づいて前記位置を推定する工程を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記最有望フォトン源の位置を推定する方法は、参照ファイバ信号に基づいて前記位置を推定する工程を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記推定した位置が正確な位置である程度を推定する工程をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記既知の一式の光検出器信号から得られた値を含む格納された較正表を読む工程をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記既知の一式のファイバ信号から得られた値を含む格納された較正表を読む工程をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記フォトン源の位置を推定する工程は、前記測定された光検出器信号および前記測定されたファイバ信号が前記フォトン源において出されたフォトンから得られた可能性を推定する工程を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
フォトン源の位置を推定する工程は、前記測定された光検出器信号および前記測定されたファイバ信号が複数のフォトン源のそれぞれにおいて出されたフォトンから得られた可能性を推定する工程を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
フォトン源の位置を推定する工程は、
複数のフォトン源から、前記測定された光検出器信号および前記測定されたファイバ信号が前記フォトン源において出されたフォトンから得られた可能性の方が、前記測定された光検出器信号および前記測定されたファイバ信号が前記フォトン源とは別の源において出されたフォトンから得られた可能性よりも高い特性を有する、前記フォトン源を確認する工程を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
フォトン源の位置を推定する工程は、
前記測定された光検出器信号および前記測定されたファイバ信号が、第1のフォトン源において出されたフォトンから得られた可能性である、第1の尤度を示す第1の値を推定する工程と、
前記測定された光検出器信号および前記測定されたファイバ信号が、第2のフォトン源において出されたフォトンから得られた可能性である、第2の尤度を示す第2の値を推定する工程と、
前記第1の値および前記第2の値に基づいて、前記第2の尤度よりも前記第1の尤度が大きくなるように決定する工程と、
前記第1のフォトン源が、前記測定された光検出器信号および前記測定されたファイバ信号を出させたフォトンのフォトン源であることを示す工程と、を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項23】
シンチレータブロックの最有望フォトン源の位置を推定するための符号化されたソフトウェアを有するコンピュータ読み取り可能媒体であって、
前記ソフトウェアが、
シンチレータブロックのフォトン源から、複数の光検出器によって受けたフォトンの分布を示す測定された光検出器信号を得、
シンチレータブロックのフォトン源から、シンチレータブロックを横切って延びる複数の波長変換ファイバによって受けたフォトンの分布を示す測定されたファイバ信号を得、
前記測定された光検出器信号に少なくとも部分的に基づいて、および前記測定されたファイバ信号に少なくとも部分的に基づいて、前記シンチレータブロックの最有望フォトン源の位置を推定するための命令を備える、コンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項24】
前記最有望フォトン源の位置を推定するための命令は、前記測定された光検出器信号を既知の一式の光検出器信号と比較し、前記測定されたファイバ信号を既知の一式のファイバ信号と比較するための命令を含む、請求項23に記載のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項25】
前記ソフトウェアが、前記既知の一式の光検出器信号から得られた値を含む格納された較正表を読むための命令をさらに含む、請求項24に記載のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項26】
前記ソフトウェアが前記既知の一式のファイバ信号から得られた値を含む格納された較正表を読むための命令をさらに含む、請求項24に記載のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項27】
最有望フォトン源を推定するための命令は、前記測定された検出器信号および前記測定されたファイバ信号が、前記最有望フォトン源において出されたフォトンから得られた可能性を推定するための命令を含む、請求項23に記載のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項28】
前記最有望フォトン源の位置を推定する命令は、
前記測定された光検出器信号および前記測定されたファイバ信号が、複数のフォトン源のそれぞれにおいて出されたフォトンから得られた可能性を推定し、
前記測定された光検出器信号および前記測定されたファイバ信号が、前記フォトン源において出されたフォトンから得られた最大尤度に、複数のフォトン源のいずれが関連するかを決定するための命令を含む、請求項23に記載のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項29】
前記最有望フォトン源の位置を推定するための命令は、
前記測定された光検出器信号および前記測定されたファイバ信号が、複数のフォトン源のそれぞれにおいて出されたフォトンから得られた可能性を推定し、
前記複数のフォトン源から、前記測定された光検出器信号および前記測定されたファイバ信号が前記最有望フォトン源において出されたフォトンから得られた可能性の方が、前記測定された光検出器信号および前記測定されたファイバ信号が前記最有望フォトン源とは別の源において出されたフォトンから得られた可能性よりも高い特性を有する、最有望フォトン源を確認するための命令を含む、請求項23に記載のコンピュータ読み取り可能媒体。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2007−523349(P2007−523349A)
【公表日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−554193(P2006−554193)
【出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【国際出願番号】PCT/US2005/004977
【国際公開番号】WO2005/079437
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(506085158)フォトディテクション システムズ, インク. (3)
【氏名又は名称原語表記】PHOTODETECTIONSYSTEMS, INC.
【住所又は居所原語表記】16 CraigRoad, Acton, MA 01720−5405 (US)
【Fターム(参考)】