説明

光治療装置

【課題】本発明は、光源からの強い光が、不用意に長時間目に照射されるのを防止することができる光治療装置を提供する。
【解決手段】治療光の波長透過性を有し、生体へ前記治療光を照射する光源15を有する治療光出力手段9と、前記治療光を受光して前記受光した光の変化に応じて前記生体の存在有無を判定する生体検出手段10と、前記生体検出手段10の前記生体の存在有無の判定に基づいて前記治療光出力手段9の出力及び前記生体検出手段10の受光感度を切り替える制御手段11とで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筋肉・関節の慢性非感染性炎症による疼痛の緩解やリウマチを発症した関節の治療を行う光治療装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光源からの治療光を直接もしくは導光路を介して手、手首、足、足首、ひざ等の患部に向けて光を照射することにより、筋肉・関節の慢性非感染性炎症による疼痛の緩解やリウマチを発症した関節の治療する光治療装置がある。
【0003】
光治療装置の光源は、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯が用いられ、近年では、近赤外線狭帯域波長で発光効率に優れる半導体レーザや、安価で長寿命な発光ダイオード素子を用いたものが提案ないし実用化されている(例えば、特許文献1〜3)。半導体レーザや発光ダイオード素子を用いた光源の実用化に伴い、簡易に高パワーの出力での治療ができるようになり、深部組織に対する治療効果の向上や治療時間を短縮することが可能となった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−192315号公報
【特許文献2】特開2000−254241号公報
【特許文献3】特表2005−537861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の構成では、高パワーで出力した光源からの治療光が、眼に長時間にわたって照射される恐れがある。すなわち、治療光が近赤外線光の場合、可視光のような眩しさを感じることもなければ遠赤外光のような熱感を感じることも少ないため、瞬時の対光回避反応が困難となり、その結果として治療光が、眼に長時間にわたって照射される恐れがあるのである。
【0006】
そこで、本発明は、光源からの強い光が、目に長時間照射されるのを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そして、この目的を達成するために本発明は、治療光の波長透過性を有する治療台の一部ないし全体を介して生体へ前記治療光を照射する光源を有する治療光出力手段と、前記治療光を受光して前記受光した光の変化に応じて前記生体の存在有無を判定する生体検出手段と、前記生体検出手段の前記生体の存在有無の判定に基づいて前記治療光出力手段の出力及び前記生体検出手段の受光感度を切り替える制御手段とで構成され、これにより所期の目的を達成することを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の光治療装置は、治療光の波長透過性を有し、生体へ前記治療光を照射する光源を有する治療光出力手段と、前記治療光を受光して前記受光した光の変化に応じて前記生体の存在有無を判定する生体検出手段と、前記生体検出手段の前記生体の存在有無の判定に基づいて前記治療光出力手段の出力及び前記生体検出手段の受光感度を切り替える制御手段とで構成されたものであるので、光源からの強い光が、目に長時間照射されるのを防
止することができる。すなわち、本発明では、治療光出力手段からの光を生体検出手段で受光し、その受光した光の変化より生体の存在を確認しない限り、高パワーの治療光が出力されないため、光源からの強い光が、目に長時間照射されるのを防止することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1における光治療装置の正面側斜視図
【図2】本発明の実施の形態1における光治療装置の側面側斜視図
【図3】本発明の実施の形態1における光治療装置の治療光出力手段の断面図
【図4】本発明の実施の形態1における光治療装置の断面図
【図5】本発明の実施の形態1における光治療装置のブロック図
【図6】本発明の実施の形態1における光治療装置の動作フローチャート
【図7】本発明の実施の形態2における光治療装置のブロック図
【図8】本発明の実施の形態2における光治療装置の生体判定を行う方法示す図
【図9】本発明の実施の形態2における光治療装置の生体有無判定の動作フローチャート
【図10】本発明の実施の形態3における光治療装置のブロック図
【図11】本発明の実施の形態4における光治療装置のブロック図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の光治療装置の実施の形態を図面とともに詳細に説明する。
【0011】
(実施の形態1)
図1及び図2は、本発明の実施の形態1における光治療装置の正面側斜視図及び側面側斜視図である。
【0012】
図1において、光治療装置1は円盤状の基盤2と、ヒンジ3によりこの基盤2の表面を開閉自在に覆った蓋体4とにより構成されている。蓋体4は下面が開口した有天円筒状をしており、その外周面の前面側、つまりヒンジ3とは反対側の左右には、例えば手等の患部を挿入する挿入口5が設けられている。蓋体4の外周面の前面側で、左右の挿入口5の間部分には、基盤2の係合孔6に係合させて蓋体4を閉めるフック7が設けられ、更に、このフック7の上方には蓋体4を開けるためのフックボタン8が設けられている。また、基盤2の表面上には治療光出力手段9が所定間隔で、左右に各1個ずつ配置されている。更に、蓋体4の内壁面天井部には、左右の治療光出力手段9にそれぞれ対応するように生体検出手段10が設けられている。なお、この生体検出手段10には、制御手段11、及び使用者が所望の治療光の強さを調節できる光出力設定手段12が電気的に接続されている。光出力設定手段12は、図2に示す光治療装置1の蓋体4の外表面に有する操作表示部13を用いて治療光の強さ、治療時間等を設定できる。また、生体検出手段10で生体が検出されると、制御手段11が光出力設定手段12であらかじめ設定された治療光の強さに相当する定電流制御を行うことで治療光出力手段9から一定の治療光の強さの光を生体へ向けて照射される。
【0013】
図3は、治療光出力手段9の断面図であって、治療光出力手段9は、基盤2上に配置された直径120mm程度の凸半球ドーム状の透明アクリル樹脂からなる治療台14と、この治療台14の内部に治療台14の外部に向けて治療光を照射する方向で複数配置された近赤外LED(発光ダイオード)等の光源15とにより構成されている。光源15は、光治療をする上で効果的な出力、波長であれば特に限定されないが、生体透過性に優れる近赤外光を用いることが望ましい。また、光源15として、LED(発光ダイオード)以外にも有機ELやキセノン光線を用いてもよい。なお、実施の形態1の治療光出力手段9は、波長830nm、光出力最大150W、放射広がり全角120°、治療台14の曲面上
の照射野における光強度(光パワー密度)最大1W/cm程度のプロファイルを有する面光源光を照射する構成であり、左右の治療光出力手段9は同一構造となっている。また、治療台14の形状は、治療台14内部の光源15から治療台14の外部に光を照射する構成であれば特に限定されないが、実施の形態1においては、治療する生体として手を想定したものであるため、治療台14への手の乗せ易さ、患者の使い勝手等を考えて略半球ないし略半扁球状の構成としている。更に、治療台14は、光源15の光の波長を透過する材質であれば特に限定されないが、実施の形態1においては、近赤外光の波長帯に対して透明であり、皮膚表面温度を過度に上昇させることの無いように、透明のアクリル樹脂を使用している。
【0014】
図4は光治療装置1の蓋体4を閉めた状態においての係合孔6からヒンジ3にかけて、すなわち図1の矢印(a)おける断面図であり、ここでは治療光出力手段9と生体検出手段10の配置について説明する。
【0015】
図4に示す通り、基盤2に設けられた治療光出力手段9は、蓋体4の内壁天井部に設けられた生体検出手段10に対し、挿入口5の奥側、すなわち、生体検出手段10よりもヒンジ3に近い位置で配置されている。これは、治療光出力手段9から照射された光を生体検出手段10で受光し、光の変化により生体の存在を検出する上で、挿入口から手を挿入し、凸半球ドーム状の治療台14に手を乗せた際に手の甲により最も顕著に光の変化が現れ、生体の存在の判別がし易くなるため、このような配置にしている。また、この配置により、治療光出力手段9を挿入口5の奥側に配置することで、光治療時に光治療装置1から外部への光の漏れが抑制されるため、好ましいものとなる。
【0016】
図5は光治療装置1のブロック図であって、治療光出力手段9、生体検出手段10、制御手段11から構成されている。
【0017】
治療光出力手段9は、制御手段11により送信された調光制御信号により、生体の存在を判定する場合と治療を開始する場合とで、調光される。すなわち、生体の存在を判定する場合には、治療を開始する場合と比較して低い出力の近赤外光を治療光出力手段9が照射し、治療を開始する場合には生体の存在を判定する場合と比較して、高い出力の近赤外光を治療光出力手段9が照射する構成としている。具体的には、例えば、生体の存在を判定する場合には数mW程度の近赤外光を治療光出力手段9が出力することで生体の存在を検出し、生体の存在が確認され、治療を開始する場合には、数十〜数百Wの出力の近赤外光を治療光出力手段9が照射するようになっている。なお、治療する際の治療光出力手段9から照射される光の出力は、光出力設定手段12から制御手段11に出力条件を入力することで、治療する患部の状態に応じて設定することができる。また、より生体の存在が判定し易くするために、生体の存在を判定する場合には、特定のパルスパターンの近赤外光を治療光出力手段9から出力させる構成にしている。
【0018】
生体検出手段10は、受光部16、増幅部17、検出感度調整部18、透過光量演算部19及び生体有無判定部20から構成されている。治療光出力手段9から出力された近赤外光を、近赤外帯に分光感度を有するフォトダイオードからなる受光部16で受光し、この受光部16で受光した信号は、入射光量に比例して増幅させる増幅部17、治療光出力手段9と受光部16との間に介在する物体の透過/遮光量ないし比率を演算する透過光量演算部19を経由し、生体有無判定部20に入力される。生体有無判定部20で生体の存在が判定され、その生体有無判定信号は制御手段11に送信される。治療光出力手段9同様、検出感度調整部18にも調光制御信号が送信され、検出感度調整部18により、受光部16及び増幅部17は、治療光出力手段9の近赤外光の出力に応じた受光感度に調整される。すなわち、生体の存在を判定する場合には、制御手段11により調光制御信号がそれぞれ治療光出力手段9及び検出感度調整部18に送信され、その結果として治療光出力
手段9は治療を開始する場合よりも低い出力の近赤外光を照射するようになる。また、検出感度調整部18は、治療光出力手段9の出力に応じて受光部16及び増幅部17の受光感度を調節する。
【0019】
具体的には、生体の存在を判定する場合には、検出感度調整部18により、受光部16及び増幅部17の受光感度を、治療を開始する場合と比較して高く設定する。また、このようにして、生体が存在することで受光部16により受光した光が大幅な変化を生じ、生体有無判定部20により生体の存在が確認されると、治療が開始される。つまり、生体有無判定部20により制御手段11へ体有無判定信号が送信されると、制御手段11により、治療を開始するための調光制御信号が治療光出力手段9及び検出感度調整部18それぞれに送信され、その結果として治療光出力手段9からは、生体の存在を判定する場合よりも高い出力の近赤外光が照射されるようになり、治療が開始されるのである。また、検出感度調整部18は、この治療が開始(治療光出力手段9の出力が大)されると同時、またはその直前に、受光部16及び増幅部17の受光感度を低く設定する。以上のように、生体検出手段10は、治療光出力手段9から出力され、生体検出手段10で受光した光量の変化、すなわち透過光量により生体の存在を判定する。また、この透過光量に対して所定の受光感度の閾値を設定し、その受光した透過光量が、所定の受光感度の閾値を基準に生体の存在有無が判定される。そして、治療台14上に生体が存在しない場合には、所定の受光感度の閾値以上の光が受光部16で受光され、生体が存在する場合には所定の受光感度の閾値以下の光しか受光部16で受光されないため、その閾値によって生体の有無を判定され、生体の有無に応じて、治療光出力手段9の出力及び生体検出手段の受光感度が調節されるのである。なお、生体は完全な透過物でもなく、完全な遮光物でもないため、生体と判定する条件として上限、下限それぞれの閾値を設定しておくと、より精度の高い判定が可能になる。
【0020】
以上の構成において、光治療装置1の動作は、図6に示すフローチャートに従う。
【0021】
治療光出力手段9から光が照射制御され、光治療待機状態にある。最初は、光治療装置1の内部に生体が存在しないため、先ず、制御手段11から検出感度調整部18へ調光制御信号が送信され、生体検出手段10の受光感度は、治療を開始する場合と比較して高く設定される(図6のS1)。次いで、図6のS1同様、制御手段11から治療光出力手段9へ調光制御信号が送信され、治療光出力手段9の出力を、治療を開始する場合と比較して低く、かつ、特定のパルスパターンで照射する(図6のS2)。図6のS1及び図6のS2により、生体検出手段10で特定のパルスパターンの光を生体検出手段10で受光する(図6のS3)。生体検出手段10で受光した光の所定範囲の透過光量を基に、生体有無判定部20で生体有り判定(Y)或いは生体無し判定(N)を行う(図6のS4)。生体有無判定部20で生体無し判定(N)がされた場合には、再度、図6のS3に戻り、生体検出手段10で特定のパルスパターンの光を受光し、図6のS4で生体有り判定(Y)がなされるまで、繰り返しこの工程が行われる。また、生体有り判定(Y)がされた場合は、生体有無判定部20から制御手段11に生体有り判定(Y)の生体有無判定信号が送信され、制御手段11から光治療を開始するため、生体検出手段10へ調光制御信号が送信されて、生体検出手段10の受光感度を生体の存在を判定する場合と比較して低く設定する(図6のS5)。次に、制御手段11から治療光出力手段9へ治療を開始する調光制御信号が送信され、治療光出力手段9の出力を、治療を開始する場合と比較して高く照射する(図6のS6)。図6のS5及び図6のS6により、生体検出手段10で治療を開始する場合の光を受光する(図6のS7)。生体検出手段10で検出した光の所定範囲の透過光量を基に、光治療時においても生体有無判定部20で生体有り判定(Y)或いは生体無し判定(N)を行う(図6のS8)。先ず、生体有り判定(Y)がされた場合は、図6のS7に戻り、生体検出手段10で光治療時の光を受光し、図6のS8で生体無し判定(N)がされるまで、繰り返しこの工程が行われ、光治療が実施される。また、生体無し判
定(N)がされた場合には、生体有無判定部20から制御手段11に生体無し判定(N)の生体有無判定信号が送信され、制御手段11により光治療を中止し、再度生体の存在を判定するため、図6のS1の工程に戻る。
【0022】
以上の構成から、光治療装置1の内部に生体の存在を確認しない限り、治療光出力手段9から高パワーの光が出力されず、光治療時においても常に生体の存在を検出・確認することで、生体の存在の有無に応じて治療光出力手段9からの光の出力を切り替えることができるため、光治療として好ましいものとができる。なお、実施の形態1においては、生体として手を治療する光治療装置1について示したが、形状を変え、両足、肘、膝、肩、腰等、他の関節・筋肉部位に適用することも可能である。
【0023】
(実施の形態2)
図7は、本発明の実施の形態2における光治療装置のブロック図である。
【0024】
この実施の形態2では、生体検出手段10の透過光量変動演算部21が、透過光量の変動に基づいて生体有無の判定を行っている点、すなわち、透過光量の直流成分ではなく超低周波を含む交流成分を抽出している点が実施の形態1の図2の透過光量演算部19とは異なる。それ以外は、実施の形態1の図と同じである。なお、実施の形態1の図2と同じ機能を有するブロックには同じ番号を付与し、説明を省略する。
【0025】
図8は、透過光量の変動を模式的に示したものである。
【0026】
治療光出力手段9を構成する治療台14上に生体が存在しない場合、図8の(イ)に示すように生体検出手段10で受光した光に振動はない。この状態で、生体を、治療光出力手段9を構成する治療台14上に載せる際には、図8の(ロ)に示すように生体検出手段10で受光した光に大きな振動が現れる。治療光出力手段9を構成する治療台14上に生体を載せた後に安静にすると、図8の(ハ)に示すように大きな振動はなくなるものの、血流・脈拍や、微細体動により透過光量は常に低周波の微小変動を繰り返している。生体に大きな動きや、治療光出力手段9を構成する治療台14上から生体を離す際には生体検出手段10で受光した光に、図8の(ニ)のように大きな振動波形が現れる。その後、生体を、治療光出力手段9を構成する治療台14上から離した場合には、受光した光に変動波形が見られなくなる。ここで、図8の(イ)、(ホ)に相当する透過光量の変動が全く確認されない場合及び図8の(ロ)、(ニ)相当する透過光量に大きな変動が確認される場合には、治療光出力手段9からの高パワーの治療光を照射待機・照射禁止とし、生体の存在を判定する特定のパルスパターンの光を照射するようにする。また、治療光出力手段9を構成する治療台14上に生体を載せた後の安静時の場合においては、高パワーの治療光を照射し、確実に治療光出力手段9を構成する治療台14上に生体が安定して載せられている時だけ治療されることになる。これにより、例えば、治療光出力手段9を構成する治療台14上に異物や汚れの付着により透過光量がある範囲に遮光された際には、図8の(イ)、(ホ)のように光の振動が現れなくなるため、生体と見分けることができ、光源15自体の劣化・故障時においても生体と誤認識することが無くなる。
【0027】
上記の高パワー出力の治療光の照射待機・照射禁止と治療光照射との切替えは、透過光量の変動量の測定値をVとし、閾値としてVL<VM<VHとなるようなVL、VM、VHの3つの判定閾値を設けて判定することで行われる。例えば、生体検出手段10による透過光量の変動量の測定値Vが、VL<V<VMに継続的に収まる範囲ないに限り、高パワー出力の治療光照射をさせないように設定することで、治療光出力手段9を構成する治療台14上に生体を載せた後に安静状態にあることを識別できる。
【0028】
以上の構成において、光治療装置の制御手段11及び生体検出手段10を中心とした生
体有無判定の動作は、図9に示すフローチャートに従う。
【0029】
先ず、生体検出手段10で生体判定時の特定のパルスパターンの透過光量の最新の変動量を測定し、測定値Vを算出する(図9のS9)。次いで、この測定値Vが所定変動量の判定閾値VHを上回らないか継続確認する(図9のS10)。測定値Vが判定閾値VHを上回れば、再度透過光量の最新の変動量を測定し、測定値Vを得る。一方、測定値Vが判定閾値VHを上回らなければ、再度図9のS9に戻り、透過光量の最新の変動量を測定し、測定値Vを算出する(図9のS11)。測定値Vが判定閾値VHを上回り、最新の測定値Vを得た後、この測定値Vが所定変動量の判定閾値VMを下回らないか継続確認する(図9のS12)。測定値Vが判定閾値VMを下回れば、安静状態の生体検出と判定し高パワーの治療光の照射を許可する(図9のS13)。一方、測定値Vが判定閾値VMを下回らなければ、再度図9のS11に戻り、透過光量の最新の変動量を測定し、測定値Vを算出する。次いで、測定値Vが判定閾値VMを下回り、安静状態の生体検出と判定し高パワーの治療光の照射を許可した後にも継続して透過光量の最新の変動量を測定し、測定値Vを得る(図9のS14)。この測定値VがVL<V<VMの範囲内に収まっていることを継続確認する(図9のS15)。測定値Vが判定閾値VL及びVMの範囲内にあれば、安静状態の生体が、治療光出力手段9を構成する治療台14上に存在し続けていることを意味しているため、継続して高パワーの治療光を照射する。一方、この測定値Vが判定閾値VLを下回った或いは判定閾値VMを上回った場合には、高パワーの治療光の照射を停止するとともに初期の生体有無判定に戻る(図9のS16)。すなわち、測定値Vが判定閾値VLを下回るとは基盤2上に生体反応がないことを意味し、また、測定値Vが判定閾値VMを上回るとは基盤2上で生体が大きく動いたことを意味している。
【0030】
なお、ここでは透過光量の変動、すなわち交流成分に着目して生体有無判定するものとしたが、実施の形態1に示した透過光量そのものである直流成分と組み合わせて判定精度を高めることも可能である。また、透過光量の測定値Vの算出には時間移動平均を用いる等、必要以上に頻繁に状態判定が切り替わらないようにしてもよい。また、判定閾値VL,VM,VLは固定値ではなく学習機能を持たせて自動的に閾値が最適値に調整されるようにしてもよい。
【0031】
以上の構成から、治療光出力手段9を構成する治療台14上に生体の存在を判定するだけでなく、治療台14上に存在する遮光物が生体か物体かを判定できるため、治療台14上の異物や汚れ付着を含む物体が存在するだけの場合に光照射を禁止することで、装置内部の不要な発熱やエネルギーロスを抑制することができる。また、生体の存在有無判定が未確定な場合に光照射を一時的に停止させることで安全性をも向上させることができる。
【0032】
(実施の形態3)
図10は、本発明の実施の形態3における光治療装置のブロック図である。実施の形態1の図2と同じ機能を有するブロックには同じ番号を付与し、説明を省略する。
自動利得増幅部22は、制御手段11から治療光出力手段9に伝えられる調光制御信号によって受光感度を調節するのではなく、受光部16からの受光量に応じて自動的に利得調整する構成である。
【0033】
フィルタ23は、0.1Hz〜10Hzまでの超低周波成分のみ抽出するバンドバスフィルタである。これにより血流・脈拍や微細体動など安静状態で治療台14に存在する生体によって影響を受ける透過光量の変動成分のみが生体有無判定部20に伝えられる。
生体波形テンプレート24は、典型的な生体波形を多数収納されたデータベースであり、生体有無判定部20においてフィルタ23から得られた波形と、この生体波形テンプレート24とを、照合することで生体有無の判定制度を更に向上させるものである。フィルタ23から得られた波形と、この生体波形テンプレート24とを、照合するパターンマッチ
ングには種々の方法があり、ここでは詳述しないが最新数秒間分の時間波形類似性を算出し、所定閾値以上の類似性が認められれば治療台14上に生体ありとするものである。
【0034】
以上の構成から、治療光出力手段9を構成する治療台14上に存在する物体の透過光量ないし透過光量の変動範囲だけで生体の有無を判定するのではなく、血流・脈拍や微細体動など安静状態の生体が存在することによってしか得られない高精度な生体認証がなされるので、判定精度はより向上する。判定精度を高めることで、不用意に光照射が行われないようにすることがでるだけでなく、装置内部の不要な発熱やエネルギーロスを抑制することが可能となる。
【0035】
(実施の形態4)
図11は、本発明の実施の形態4における光治療装置のブロック図である。実施の形態1と同じ機能を有するブロックには同じ番号を付与し、説明を省略する。なお、図11にある第1の受光部16及び第1の増幅部は、実施の形態1の図2における受光部16、増幅部17と同じである。実施の形態1と異なる点は、光源15からの出力された光を、生体を介さずに常時直接検出する第2の受光部25と第2の増幅部26を設け、第1の増幅部16と第2の増幅部17との差分を差分演算部27で演算することによって生体有無判定を行うことである。
【0036】
第2の受光部25は治療光出力手段9に近接して配設され、治療光出力手段9から発せられる光量を直接測定する構成である。第1の増幅部17と第2の増幅部26は、制御手段11ら治療光出力手段9に伝えられる調光制御信号によって受光感度を調整させるとともに、第1の受光部16及び第2の受光部25の各々が有する受光感度差も校正されており、治療光出力手段9を構成する治療台14上に介在する物体の遮光量、透過率が光源15側の光量変化に依存せず、正確に検出できる。差分演算部27は、第2の受光部25及び第2の増幅部26により得られる光量から第1の受光部16及び第1の増幅部17により得られる光量の差を演算するものとしたが、第2の受光部25及び第2の増幅部26により得られる光量から第1の受光部16及び第1の増幅部17により得られる光量を割って比率を算出してもよい。
【0037】
以上の構成から、生体を介した第1の受光部16と生体を介さない第2の受光部25からの光量検出をつき合わせて生体の存在有無を判定することによってその判定精度はさらに向上する。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の光治療装置は、治療光の波長透過性を有し、生体へ前記治療光を照射する光源を有する治療光出力手段と、前記治療光を受光して前記受光した光の変化に応じて前記生体の存在有無を判定する生体検出手段と、前記生体検出手段の前記生体の存在有無の判定に基づいて前記治療光出力手段の出力及び前記生体検出手段の受光感度を切り替える制御手段とで構成されたものであるので、光源からの治療光が不用意に眼に長時間照射させるのを防止することができる。すなわち、本発明では、治療光出力手段からの光を生体検出手段で受光し、その受光した光の変化より生体の存在を確認しない限り、高パワーの治療光が出力されないため、光源からの治療光が不用意に眼に長時間照射させるのを防止することができるのである。
【0039】
このため、筋肉・関節の慢性非感染性炎症による疼痛の緩解やリウマチを発症した関節の治療を行う光治療装置として広く活用が期待される。
【符号の説明】
【0040】
1 光治療装置
2 基盤
3 ヒンジ
4 蓋体
5 挿入口
6 係合孔
7 フック
8 フックボタン
9 治療光出力手段
10 生体検出手段
11 制御手段
12 光出力設定手段
13 操作表示部
14 治療台
15 光源
16 (第1の)受光部
17 (第1の)増幅部
18 検出感度調整部
19 透過光量演算部
20 生体有無判定部
21 透過光量変動演算部
22 自動利得増幅部
23 フィルタ
24 生体波形テンプレート
25 第2の受光部
26 第2の増幅部
27 差分演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療光の波長透過性を有し、生体へ前記治療光を照射する光源を有する治療光出力手段と、前記治療光を受光して前記受光した光の変化に応じて前記生体の存在有無を判定する生体検出手段と、前記生体検出手段の前記生体の存在有無の判定に基づいて前記治療光出力手段の出力及び前記生体検出手段の受光感度を切り替える制御手段とを備えた光治療装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記生体検出手段で生体の存在無しと判定された場合には、前記治療光出力手段の出力を、生体の存在有りと判定された場合と比較して低く設定し、前記生体検出手段の受光感度を、生体の存在有りと判定された場合と比較して高く設定する請求項1に記載の光治療装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記生体検出手段で生体の存在有りと判定された場合には、前記治療光出力手段の出力を、生体の存在無しと判定された場合と比較して高く設定し、前記生体検出手段の受光感度を、生体の存在無しと判定された場合と比較して低く設定する請求項1に記載の光治療装置。
【請求項4】
前記生体検出手段は、前記治療光出力手段から照射された治療光を受光する受光部を備えた請求項1〜3のいずれかに記載の光治療装置。
【請求項5】
前記生体検出手段は、所定の受光感度の閾値を設定し、前記閾値と前記受光部で受光した治療光とを対比させることで前記生体の存在有無を判定する請求項4に記載の生体検出手段。
【請求項6】
前記生体検出手段は、前記受光部で受光した光量が前記所定の受光感度の閾値より減少することにより生体の存在有りを判定する請求項5に記載の生体検出手段。
【請求項7】
前記生体検出手段は、前記受光部で受光した光量の変動が前記所定の受光感度の閾値の範囲内の変動に収まることで前記生体の存在有りを判定する請求項5に記載の生体検出手段。
【請求項8】
前記生体検出手段は、前記光量の変動の変動パターンにより前記生体の存在有無を判定する請求項7に記載の生体検出手段。
【請求項9】
前記生体検出手段は、前記治療光出力手段から照射された治療光を、生体を介在させて受光する位置に配設された第1の受光部と、前記治療光出力手段から照射された治療光を、生体が介在されない位置で受光する位置に配設された第2の受光部とを備え、前記第2の受光部で受光された光量と前記第1の受光部で受光された光量との差分ないし比率から前記生体の存在有無を判定する請求項4〜8のいずれか一つに記載の光治療装置。
【請求項10】
前記治療光出力手段は、基盤上に形成され、略半球ないし略半扁球である請求項1〜9のいずれか一つに記載の光治療装置。
【請求項11】
前記基盤上には、表面を開閉自在に覆った蓋体を配置し、前記蓋体には患部の挿入口を設けた請求項10に記載の光治療装置。
【請求項12】
前記受光部は、前記治療光出力手段より前記挿入口方向手前に傾斜した上方壁面に取り付けられ、前記治療光出力手段の一部ないし全体から照射された治療光を斜め上方から受光する所定角度以上の視野感度を有する請求項11に記載の光治療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−167281(P2011−167281A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32216(P2010−32216)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】