説明

光治療装置

【課題】本発明は、発光面を有する光治療装置において、発光面のうちの一部分だけの温度が上昇した場合に、その部分の温度は低下させつつ、治療装置による光治療自体は、適切に継続できる光治療装置を提供することを目的とする。
【解決手段】複数の発光モジュールを直列接続した面照射手段と、前記面照射手段に電流を供給する電流供給手段とを備える光治療装置を提供する。ここで、前記発光モジュールは、互いに並列接続された発光素子と個別電流制御素子とを有する。そして、前記個別電流制御素子は、所定温度以下では前記発光素子の負荷インピーダンスよりも大きい抵抗値を示し、前記所定温度を超える温度では前記発光素子の負荷インピーダンスよりも小さい抵抗値を示す構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患部に光を照射することによって、筋肉・関節組織の疼痛の緩和、或いは炎症の抑制を行う光治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、患部(例えば手、手首、足、足首およびひざ等)に接触しているかまたは近傍に配置された発光素子からの光を、患部に照射することで、筋肉・関節組織の疼痛の緩和、或いは炎症の抑制を行う光治療装置が考案・実用化されている(例えば、特許文献1及び特許文献2を参照)。このような光治療装置は、発光素子として生体透過性に優れた近赤外の高出力LEDを用いている。また、多数のLEDを直並列接続して面状に敷き詰めることで発光領域の大面積化を図り、治療効果の向上や治療時間の短縮を可能にしている。
【0003】
但し、このような高出力の近赤外の発光素子を患部に近接させるかまたは接触させて光治療を行う場合、皮膚温度上昇によって患部の発赤、低温火傷を生じる可能性もある。そこで、LEDないしその発光面近傍の温度を監視する温度検出手段を設け、検出される温度が所定温度を超えると光照射を停止する構成も提案されている(例えば、特許文献3及び特許文献4を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−192315号公報
【特許文献2】特開2001−187159号公報
【特許文献3】特開平02−246988号公報
【特許文献4】特開2008−022894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の構成の光治療装置では、光照射中に温度検出手段が特定箇所のLEDないしその発光面近傍で所定の温度を超えたことを検出した場合に、治療装置全体の光照射を停止してしまう。そのため、光治療を継続することができないという課題を有していた。
【0006】
この所定温度以上の温度上昇は、LED自身の故障によって生じる場合よりも、発光面と被照射体との部分的な接触継続や放熱不良で生じる場合が多い。つまり、発光面のうちの一部分だけが、所定温度以上の温度に上昇していることが多い。具体的には、1)被照射体である皮膚表面凸部と発光面の一部とを密着させたまま、長時間にわたり光照射を継続した場合や、2)被照射体である皮膚の一部分に多くの毛髪、黒子、刺青、色素沈着部が存在して吸熱が進行した場合や、3)発光面の表面に光を遮る異物を付着させたまま長時間にわたり照射継続した場合や、4)指輪や腕時計等を装着している場合などに、発光面のうち一部分だけが、所定温度以上の温度に上昇しやすくなる。
【0007】
このように発光面のうちの一部分だけが温度上昇した場合に、光治療装置の光源全体の点灯を停止することは、光治療の中断につながり好ましくない。そこで本発明は、発光面のうちの一部分だけの温度が上昇した場合に、その部分の温度は低下させつつ、治療装置による光治療自体は、適切に継続できる光治療装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために本発明の光治療装置は、複数の発光モジュールを直列接続した面照射手段と、前記面照射手段に電流を供給する電流供給手段とを備える。ここで、前記発光モジュールは、互いに並列接続された発光素子と個別電流制御素子とを有する。そして、前記個別電流制御素子は、所定温度以下では前記発光素子の負荷インピーダンスよりも大きい抵抗値を示し、前記所定温度を超える温度では前記発光素子の負荷インピーダンスよりも小さい抵抗値を示す構成とする。これにより所期の目的を達成する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の光治療装置は、面照射手段に含まれる複数の発光モジュールのうちの一部の発光モジュールが所定温度以上の温度になったとときに、当該発光モジュールからの光照射を中断させつつも、光治療装置の治療を適切に続行させることができる。すなわち、本発明の治療装置においては、個別電流素子が、発光モジュール毎に発光の継続/消灯を制御することができる。それにより、適切な光治療を継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1における光治療装置の回路ブロック図
【図2】本発明の実施の形態1における光治療装置のCTR(Critical Temperature Coefficient)サーミスタの温度と抵抗値との特性を示した図
【図3】本発明の実施の形態1における光治療装置の発光モジュールの構造を示す斜視図
【図4】本発明の実施の形態2における光治療装置の回路ブロック図
【図5】本発明の実施の形態2における発光モジュールを多数個配置して面光源化した面照射手段の斜視図
【図6】本発明の実施の形態3における光治療装置の回路ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の光治療装置は、1)複数の発光モジュールを有する面照射手段と、2)電流供給手段とを備える。
【0012】
面照射手段は発光面を有する部材であり、発光面からの光を患部に照射することで、光治療を行う。発光面からの光は、面照射手段が有する複数の発光モジュールが発する光である。電流供給手段は、面照射手段に電流を供給して、各発光モジュールからの発光に必要な電流を供給する。
【0013】
面照射手段が有する複数の発光モジュールは、互いに直列に電気接続されている。面照射手段が有する全ての発光モジュールを、1本の列に直列に接続してもよいし(後述の実施の形態1および3)、面照射手段が有する複数の発光モジュールをいくつかの発光モジュール群に分けて、各発光モジュール群を1本の列に直列に接続してもよい(後述の実施の形態2)。1本の列に直列に接続した発光モジュール群を「発光モジュール体」と称する。このとき、発光モジュール体同士は、電気的に並列に接続されている(実施の形態2)。
【0014】
面照射手段が有する複数の発光モジュール体は、それに含まれる発光モジュールと直列に接続された電流制限素子を有していてもよい(実施の形態2)。電流制限素子とは、定格電流を超えた過剰な電流が流れないようにする過電流保護素子である。電流制限素子として、電源ICを用いた素子や、いわゆるリセッタブルヒューズのような非線形抵抗素子を用いた素子などが用いられうるが、特に限定されない。
【0015】
面照射手段が有する発光モジュールはそれぞれ、発光素子と個別電流制御素子とを有し、発光素子と個別電流制御素子とは並列に電気接続されている。発光素子とは、特に限定されないが、LED発光素子であることが好ましく、近赤外発光ダイオードであることがより好ましい。個別電流制御素子とは、具体的には温度変化に応じて電気抵抗が変化する抵抗体であり、サーミスタと称されることもある。
【0016】
前記の通り、各発光モジュールは、互いに並列接続された発光素子と個別電流制御素子とを有するが;各発光モジュールは、1個の発光素子と1個の個別電流制御素子とを有していてもよいし(後述の実施の形態1および2)、複数の発光素子と1個の個別電流制御素子とを有していてもよい(後述の実施の形態3)。
【0017】
前記の通り、個別電流制御素子とは典型的にはサーミスタである。個別電流制御素子とは、所定温度以下では、個別電流制御素子と並列に接続された発光素子の負荷インピーダンスよりも大きい抵抗値を有する。一方で、個別電流制御素子は、所定温度を超えると、個別電流制御素子と並列に接続された発光素子の負荷インピーダンスよりも小さい抵抗値を有する。
【0018】
サーミスタは、一般的に、温度上昇に伴い抵抗値が減少するもの(CTRサーミスタやNTCサーミスタ)と、温度上昇に伴い抵抗値が増大するもの(PTCサーミスタ)とに大別されうる。本願発明の光治療装置の個別電流制御手段は、温度上昇に伴い抵抗値が減少するサーミスタである。
【0019】
さらに、個別電流制御素子としてのサーミスタは、CTR(Critical Temperature Coefficient)サーミスタであることが好ましい。CTRサーミスタは、一般的に酸化バナジウム系材料で構成され、急変サーミスタとも呼ばれる。CTRサーミスタは、結晶の構造変化が生じる所定の相転移点であるキュリー温度を有し;キュリー温度を超えると、急激に抵抗が減少する特性を有する。例えば、100Ωから0.1Ωオーダーにまで急激に抵抗が減少する。そのため、発熱を短時間で検出する熱スイッチ等として利用されている。
【0020】
図2には、CTRサーミスタ9の抵抗値(Y軸)と温度(X軸)との関係を示すグラフである。温度T1を超えると、抵抗値が急激に減少していることがわかる。温度T1を、キュリー温度という。
【0021】
また、CTRサーミスタのキュリー温度T1は、VO−BaO−P系複合酸化物焼結体であるCTRに、タングステン、ゲルマニウム、鉄等の酸化物を添加することで調整されうる。
【0022】
本発明の光治療装置において、個別電流制御素子は、並列接続された発光素子の照射対象面の近傍にあることが好ましい(図3参照)。発光素子の照射対象面とは、光治療される患部が接触可能な面(発光面)である。個別電流制御素子を、発光素子の照射対称面の近傍に配置することで、個別電流制御素子の温度と患部の温度とを近似させることができる。
【0023】
さらに、個別電流制御素子は、発光素子からの光が直接照射されない位置に配置されることが好ましい(図3参照)。発光素子からの光が照射されると温度が上昇するため、個別電流制御素子の温度と患部の温度との差異が大きくなるためである。
【0024】
より具体的には、個別電流制御素子は、発光素子からの光照射領域の外周部に配置されうる。発光素子からの光照射領域は光反射ミラーなどで規定することができるので(図3参照)、そのように規定された光照射領域の外周部に個別電流制御素子を配置すればよい。
【0025】
また、個別電流制御素子と発光素子との間には、断熱材を介在させてもよい(図3参照)。断熱材を介在させることで、個別電流制御素子が発光素子からの光で加熱されることがより効果的に抑制され、個別電流制御素子の温度と患部の温度とを近似させやすくする。
【0026】
本発明の光治療装置による光治療は通常、面照射手段の発光面(または発光素子の照射対称面)に患部を接触させて光治療を行う。治療中に、患部と発光面との接触部位が「所定温度」を超えると、患部に発赤や低温火傷が発生する恐れがある。
【0027】
「所定温度」とは、特に限定されるものではないが、一般的に44℃で約360分間、人体の皮膚表面を加熱し続けると低温火傷になるリスクがあるといわれている。そして、温度が1℃上昇するごとに半分の加熱時間で低温火傷になるリスクがあるといわれている(すなわち、45℃では約180分、46℃では約90分、50℃では約6分)。従って、本発明の光治療装置における「所定温度」は、光治療の治療時間や光出力などの実施状況に応じて適宜設定すべきものであるものの、安全性の観点から50℃以下であることが好ましい。
【0028】
患部との発光面の接触部位が「所定温度」を超える原因には、被照射体である患部(例えば皮膚表面)の一部分に多くの毛髪、黒子、刺青または色素沈着部などが存在し、患部が発光面からの光を過剰に吸熱した結果、温度が上昇することなどが考えられる。このような原因で患部と発光面との接触部位が「所定温度」を超える場合には、患部との発光面の接触部位のうちの一部分だけが選択的に「所定温度」を超え、他の部分では所定温度以下に維持されている。
【0029】
本発明の光治療装置は、光治療中に患部との発光面の接触部位が「所定温度」を超えた場合には、選択的に当該接触部位への光を抑制して温度を低下させることができる。つまり、面照射手段が有する複数の発光モジュールのうちの一部だけの発光モジュールからの発光を抑制することができる。
【0030】
前述の通り、本発明の光治療装置における面照射手段は、互いに並列に接続された発光素子と個別電流制御素子とを有する発光モジュールを有する。そして、所定温度における個別電流制御素子の抵抗値が調整されている。そのため、患部が所定温度以下である場合には発光素子に電流が流れて発光が生じ;患部が所定温度以下である場合には個別電流制御素子に電流が流れて発光が生じない。
【0031】
さらに、本発明の光治療装置における面照射手段は、互いに直列に接続された複数の発光モジュールを有する。従って、いずれかの発光モジュールにおいて、電流が発光素子ではなく個別電流制御素子に流れて発光が生じなくても;他の発光モジュールには電流が供給されるので、他の発光モジュールにおける発光は継続できる。
【0032】
このようにして、本発明の光治療装置では、患部との発光面の接触部位のうちの「所定温度を超えた部分」への光照射を選択的に抑制し、「所定温度以下に維持されている部分」への光照射は継続する。患部との発光面の接触部位のうちの「所定温度以下に維持されている部分」への照射を継続することができれば、光治療装置による光治療自体は続行することができる。よって、本発明の光理療装置は利便性がよい。
【0033】
以下に、本発明の光治療装置の実施の形態を図面とともに詳細に説明する。
【0034】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における光治療装置1の回路ブロック図である。図1に示される光治療装置1は、面照射手段2と、電源部3と、定電流制御手段4と、放熱手段5と、表示操作手段6とを具備する。
【0035】
面照射手段2は、面光源として用いられる。面照射手段2は、1枚の大面積反射基板(例えばアルミ基板)と、前記基板上に取付けられた20個の発光モジュール7と、を具備する。20個の発光モジュール7は、互いに直列に接続されている。
【0036】
各発光モジュール7は、発光素子としての近赤外の高出力のLED8と、個別電流制御素子としてのCTRサーミスタ9とを有し、両者は一体化されている。LED8とCTRサーミスタ9とは、電気的に並列に接続されている。
【0037】
各LED8の光波長は830nm、光束は5Wであり;面照射手段2の発光面積は200cm程度であり;面照射手段2の発光面の平均光パワー密度は0.5W/cmとなるように配設されている。
【0038】
前述の通り、CTRサーミスタ9は、キュリー温度T1を超えると急激に抵抗が減少する特性を有する(図2参照)。
【0039】
電源部3は、定電流制御手段4を介して、面照射手段2の全ての発光モジュール7に一定電流を供給する。この定電流制御手段4と電源部3は一体構造の電流供給手段とする構成であってもよい。
【0040】
放熱手段5は、電源部3からの電圧供給によって面照射手段2を冷却するものである。放熱手段5は、具体的には冷却ファン及び放熱フィンを備え、通電時は常時駆動する。放熱手段5は、LED8の点灯に伴う発熱を抑制する内部冷却系と、CTRサーミスタ9の通過電流の影響で照射口が自己発熱しないよう発光面全体に対し外側の側面から冷却風をあてる外部冷却系と、を独立して備えた構造とすることが好適である(図示せず)。
【0041】
表示操作手段6は、操作者の指示に従って、定電流制御手段4を介して面照射手段2への光照射の入/切の光照射制御がなされる。
【0042】
図1のように構成された光治療装置は、定電流制御手段4によって、発光モジュール7に一定電流が継続的に供給され、面照射手段2から発光面を介して患部に光を照射することができる。
【0043】
面照射手段2から患部へ向けて光を照射している間に、一部の発光モジュール7のみが過剰に発熱して所定温度を超えることがある。この所定温度を超えて過剰に発熱した発光モジュール7を「特定の発光モジュール7’」と称する。特定の発光モジュール7’が所定温度を超える原因には、前述の通り、被照射体(例えば患者の皮膚)の一部に過剰な吸熱が進行することなどが考えられる。
【0044】
特定の発光モジュール7’が所定温度を超えると、その特定の発光モジュール7’のCTRサーミスタ9に電流が流れて、LED8に電流が流れずに点灯を中止することができる。このように、CTRサーミスタ9に電流が流れて、LED8に電流が流れない状態を「擬似ショート状態」という。特定の発光モジュール7’が擬似ショート状態となった場合であっても、直列接続されている他の発光モジュール7には一定電流が供給されるので、LED8の発光を継続することができる。
【0045】
特定の発光モジュール7のLED8の点灯が中止される理由、および他の発光モジュール7の発光が継続される理由を説明する。
【0046】
上述の通り、発光モジュール7は、発光素子としてのLED8と個別電流制御素子としてのCTRサーミスタ9とを有し、両者は電気的に並列に接続されて一体化されている。CTRサーミスタ9の温度がキュリー温度T1(図2参照)以下である場合には、CTRサーミスタ9の抵抗値よりもLED8の負荷インピーダンス(順方向電圧/電流比)の方が格段に低いため、大半の電流がLED8を流れ、LEDが発光する。
【0047】
一方で、特定の発光モジュール7’の温度が上昇して、キュリー温度T1を超えると、特定の発光モジュール7’のCTRサーミスタ9の抵抗値が急激に低下する。その結果、電流のバイパスが形成されて、特定の発光モジュール7’のLED8には電流が流れなくなり、LEDは消灯する。この状態が擬似ショート状態である。
【0048】
特定の発光モジュール7’が擬似ショート状態となっても、特定の発光モジュール7’以外の発光モジュール7には電流が供給されるので、発光モジュール7のLED8は発光し続ける。そのため、光照射を中断することなく、継続して照射することができる。
【0049】
従って、CTRサーミスタ9のキュリー温度(T1)を、LED8の発光を中断して消灯するべき温度(所定温度)に設定すれば、LED8の発光/消灯を確実に制御することができる。
【0050】
前述の通り、所定温度(CTRサーミスタおキュリー温度)は、光治療装置による治療時間、光の出力等の実施状況に応じて設定されるが、安全性の観点から50℃以下であることが好ましい。
【0051】
CTRサーミスタ9は、キュリー温度以上になると急激に抵抗値が減少することから、キュリー温度以上の温度上昇が認められると、感度良くLED8の消灯を行うことができる。そのため、患者の安全性の観点から、光治療装置の個別電流制御素子として好ましいサーミスタである。
【0052】
また、CTRサーミスタ9は、所定のキュリー温度T1以上になると急激に抵抗値が減少するので、CTRサーミスタに電流が流れている間に発熱もしにくい。よって、光治療装置の個別電流制御素子をCTRサーミスタとすることで、消費電流を抑制することができる。
【0053】
次に、発光モジュール7の構造について、図3を用いて説明する。図3に示す発光モジュール7は、アルミ製の個別放熱基板10と、アルミ製の個別放熱基板10の表面上に実装されたLED8を具備する。
【0054】
個別放熱基板10は、面照射手段2(図1参照)の大面積反射基板(例えばアルミ基板)に密着して取り付けることが好ましい。発光モジュール7から生じる熱を大面積アルミ基板に熱伝導させて、放熱を促すことができるからである。
【0055】
個別放熱基板10上には、内壁面をアルミ蒸着した逆円錐筒状容器からなる反射ミラー11を設けている。逆円錐筒状容器は、樹脂製でありうる。LED8からの光は上方に放射されて照射されるが、その光照射域は反射ミラー11によって規定される。反射ミラー11の上面開口部の直径Lは、特に限定されないが、約12mmとすることができる。
【0056】
反射ミラー11の上面開口部には、透明円板12が配置されている。透明円板12は、LED8の光の照射対称面であり;透明円板12は、LED8からの照射光を損失無く透過させつつ、LED8への汚れの付着や、水分等の浸入等を防ぐ。透明円板12の形状は平板に限らず、光線をコリメートさせる非球面レンズであってもよく、光強度分布を均一化させる光拡散材料を組合せることも可能である。
【0057】
透明円板12の外周縁内方上には、リング状スポンジからなる断熱クッション13を介してリング状のCTRサーミスタ9が設けられている。断熱クッション13は、LED8とCTRサーミスタ9とを熱的に分離する。そこで、断熱クッション13のCTRサーミスタ9が配置される面に対する裏面(図3の下側の面)は、白色系シートが裏打ちされ、反射ミラー11外周からの輻射熱の影響を受け難くしている。
【0058】
更に、CTRサーミスタ9上には、金属などの熱伝導率の良い材料で構成された押さえリング14が設けられる。押さえリング14は、CTRサーミスタ9と熱結合されている。押さえリング14は、機械的強度の維持に加え、人体皮膚表面等と接触する対象物の温度をCTRサーミスタ9に伝える役目を有する。
【0059】
このように、図3の発光モジュール7における断熱クッション13、CTRサーミスタ9および押さえリング14は、反射ミラー11の内壁面よりも外側に配置されており、つまりLED8からの光の光照射域の外周部にある。そのため、断熱クッション13、CTRサーミスタ9および押さえリング14には、LED8からの光が照射されず、光によって直接加熱されることはない。
【0060】
一方で、CTRサーミスタ9は、LEDの照射対称面の近傍に配置され、しかも押さえリング14と接しているため、CTRサーミスタ9の温度は押さえリング14の温度と近似しやすい。また、押さえリング14は患部との接触部位であるため、押さえリング14の温度は患部の温度と近似しやすい。従って、CTRサーミスタ9の抵抗値は、患部の温度に応じて変化しやすい。そのため、発光モジュール7の発光/消灯は、光が照射される患部の表面温度に基づいて制御される。
【0061】
電極15は、LED8のアノードとカソードとの各々から引き出される。電極15とCTRサーミスタ9とは、リード線16を介して電気的に並列に接続されている。このように、発光モジュール7の1個の電気的等価回路は、LED8とCTRサーミスタ9が並列接続されただけのものである。
【0062】
図3の発光モジュール7において、リード線16に外部からの静電気ノイズが印加されてLED8が破壊されないよう、CTRサーミスタ9との電気接続部17はモールドされている。さらに、リード線16を介してLED8に定格値を超える突発的な大電流が流れないよう、インダクタ素子を挿入したり、その他の過電流ないし過電圧/逆電圧保護素子を備えたりすることも可能である。
【0063】
一つの発光モジュール7のアノード電極(電極15)と、それに隣接する発光モジュールのカソード電極(電極15)とを直列にカスケード接続する。それにより、面照射手段2(図1参照)の大面積反射基板上に多数個の発光モジュール7をしきつめることができる。
【0064】
以上の構成を有する光治療装置における特定の発光モジュール7’において、光を照射される患部の温度に近似するCTRサーミスタ9の温度がキュリー温度(T1)を超えると、特定の発光モジュール7’は擬似ショート状態となる。擬似ショート状態となった特定の発光モジュール7’のLED8には電流が流れず発光が中止される。その一方で、特定の発光モジュール7’以外の発光モジュール7のLED8の発光は継続され、光治療装置は治療を継続することができる。
【0065】
また、擬似ショート状態となった特定の発光モジュール7’において、CTRサーミスタ9の温度(患部の表面温度)が適切な温度にまで低下した場合には、擬似ショート状態が解消され、LED8の発光抑制も自動解除され、通常の点灯に自動復帰する。
【0066】
このように、本実施形態の光治療装置は、照射口に密着ないし近接照射されている対象患部に対する安全性確保と治療効果を両立させることが可能となる。しかも、複雑な制御回路などを設けなくとも、発光面各部分ごとに安全かつ効率的な温度管理を備えた光治療装置を提供することができる。
【0067】
(実施の形態2)
図4は本発明の光治療装置1における実施の形態2における回路ブロック図である。実施の形態2において、前記実施の形態1の図1で説明した構成要素と同一のものには同一番号を付与し、説明を簡略化する。
【0068】
実施の形態2における回路ブロックで特徴的な点は、複数の発光モジュール7を直列接続した発光モジュール体18を、複数個並列に接続したことである。
【0069】
面照射手段の発光面を大面積化するためには、多数の発光モジュール7が必要となる。実施の形態1の図1の回路ブロック図に示されるように、全ての発光モジュール7を直列接続すると、高電圧供給が必要となる。実施の形態2では、この高電圧供給を避けるために、複数の発光モジュール7を直列接続した発光モジュール体18を、複数個並列に接続した。
【0070】
ただし、発光モジュール体18を複数個並列接続した場合には、LED8ごとの順方向電圧特性ばらつきによって、各発光モジュール体18の通過電流が大きく異なってしまうことがある。それにより、特定の発光モジュール体18に含まれるLED8に、その定格電流を超える電流が供給されてしまう可能性がある。そこで、発光モジュール体18ごとに、電源ICを用いた電流制限素子19を直列接続することで電流制限をかけることが好ましい。このように電流制限素子19を設けることで、発光モジュール体18ごとに定電流制御を行わなくても、容易に発光モジュール7の大面積化を達成することができ、光治療装置の拡張性が増す。
【0071】
図5は、多数個の発光モジュール7を配置して面光源化した面照射手段2の斜視図である。配置された発光モジュール7の個数は20個ではなく、100個以上にであっても構わない。
【0072】
(実施の形態3)
図6は本発明の光治療装置1における実施の形態3における回路ブロック図である。実施の形態3において、実施の形態1および2で説明した構成要素と同一のものには同一番号を付与し、説明を簡略化する。
【0073】
実施の形態1および2における構成では、発光モジュール7は、1つのLEDに対して、それに並列に接続した1つの個別電流制御素子を有している。これに対して、実施の形態3における構成では、発光モジュール7は、直列接続された複数のLEDに対して、それに並列に接続した1つの個別電流制御素子(CTRサーミスタ9)を有する。実施の形態3の構成は、その点において実施の形態1と異なるが、その他の点は、実施の形態1と同一である。
【0074】
図6に示された回路ブロック図には、12個の発光モジュール7が直列に接続されている。そして、各発光モジュール7は、互いに直列接続された3つのLED8に対して、並列に接続された1つのCTRサーミスタ9を有する。
【0075】
図6に示された回路ブロック図の光治療装置1において、発光モジュール7のうちの特定の発光モジュール7’のCTRサーミスタ9が所定温度以上になると、特定の発光モジュール7’は擬似ショート状態となる。擬似ショート状態となった特定の発光モジュール7’の3個のLED8は点灯を中止する。一方で、特定の発光モジュール7’以外の発光モジュール7には一定電流が供給されるので、他の発光モジュール7のLED8は継続して発光する。
【0076】
また、擬似ショート状態となった特定の発光モジュール7において、CTRサーミスタ9の温度(患部の表面温度)が適切な温度にまで低下した場合には、擬似ショート状態も解消され、3個のLED8の発光抑制も自動解除され、通常の点灯に自動復帰する。
【0077】
このように、実施の形態3の構成は、実施の形態1および2のように、1つのLEDごとに発光/消灯を制御するではなく、複数のLEDを1ブロックとして、1ブロックごとに発光/消灯を制御する。実施の形態3の構成によれば、CTRサーミスタ9の部品点数を削減することができる。よって、実施の形態3の構成は、多数の発光モジュール7を有する光治療装置に適用すると特に有効である。
【0078】
また、実施の形態3においては、実施の形態1と同様に、面照射手段に含まれる全ての発光モジュール7を直列に接続したが;実施の形態2と同様に、複数の発光モジュール7を直列接続した発光モジュール体を、複数個並列に接続してもよいことはいうまでもない。
【0079】
以上、実施の形態1〜3の構成よる光治療装置によれば、面照射手段2の発光面を患部(例えば膝関節など)に長時間密着させた場合に、発光面の一部分の温度が選択的に所定温度以上に上昇しても、その部分に光を照射するLED8だけを消灯して当該部分の温度を低下させ、他のLED8を点灯し続けることができる。そのため、これらの光治療装置によれば、患者の安全性を確保しつつも、効率の良い治療を実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の光治療装置は、複数の発光モジュールを有する面照射手段を具備するが、光治療中に所定温度を超えた発光モジュールの発光素子だけを選択的に消灯し、所定温度を超えていない他の発光モジュールの発光素子の点灯は継続する。このため本発明の光治療装置は、適切に光治療を継続することができる。このため、筋肉・関節組織の疼痛の緩和、或いは炎症の抑制を行う光治療装置として広く活用が期待される。
【符号の説明】
【0081】
1 光治療装置
2 面照射手段
3 電源部
4 定電流制御手段
5 放熱手段
6 表示操作手段
7 発光モジュール
8 LED
9 CTRサーミスタ
10 個別放熱基板
11 反射ミラー
12 透明円板
13 断熱クッション
14 押さえリング
15 電極
16 リード線
17 電気接続部
18 発光モジュール体
19 電流制限素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光モジュールを直列接続した面照射手段と、前記面照射手段に電流を供給する電流供給手段とを備え、
前記発光モジュールは、互いに並列接続された発光素子と個別電流制御素子とを有し、
前記個別電流制御素子は、所定温度以下では前記発光素子の負荷インピーダンスよりも大きい抵抗値を示し、前記所定温度を超える温度では前記発光素子の負荷インピーダンスよりも小さい抵抗値を示す構成とした光治療装置。
【請求項2】
複数の発光モジュールを直列接続した面照射手段と、前記面照射手段に電流を供給する電流供給手段とを備え、
前記発光モジュールは、互いに並列接続された、直列接続された複数の発光素子と1つの個別電流制御素子とを有し、
前記個別電流制御素子は、所定温度以下では前記発光素子の負荷インピーダンスよりも大きい抵抗値を示し、前記所定温度を超える温度では前記発光素子の負荷インピーダンスよりも小さい抵抗値を示す構成とした光治療装置。
【請求項3】
前記発光素子は、近赤外発光ダイオードである、請求項1または2に記載の光治療装置。
【請求項4】
前記個別電流制御素子は、温度上昇に伴い抵抗値が減少する特性を有するサーミスタである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光治療装置。
【請求項5】
前記サーミスタは、CTR(Critical Temperature Coefficient)サーミスタである、請求項4に記載の光治療装置。
【請求項6】
前記個別電流制御素子は、並列接続された前記発光素子の照射対象面の近傍であって、前記発光素子から照射される光が直接前記個別電流制御素子に照射されない位置に配置された、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光治療装置。
【請求項7】
前記個別電流制御素子は、並列接続された前記発光素子の光照射方向で、この光照射域の外周に配置された、請求項6に記載の光治療装置。
【請求項8】
前記発光モジュールは、前記発光素子と前記個別電流制御素子との間に介在させた断熱材を有する、請求項7に記載の光治療装置。
【請求項9】
複数の発光モジュールを直列接続した発光モジュール体を、複数個並列接続して構成した面照射手段と、前記面照射手段に電流を供給する電流供給手段とを備え、
前記発光モジュールは、互いに並列接続された発光素子と個別電流制御素子とを有し、
前記個別電流制御素子は、所定温度以下では前記発光素子の負荷インピーダンスよりも大きい抵抗値を示し、前記所定温度を超える温度では前記発光素子の負荷インピーダンスよりも小さい抵抗値を示す構成とした光治療装置。
【請求項10】
複数の発光モジュールを直列接続した発光モジュール体を、複数個並列接続して構成した面照射手段と、前記面照射手段に電流を供給する電流供給手段とを備え、
前記発光モジュールは、互いに並列接続された、直列接続された複数の発光素子と1つの個別電流制御素子とを有し、
前記個別電流制御素子は、所定温度以下では前記発光素子の負荷インピーダンスよりも大きい抵抗値を示し、前記所定温度を超える温度では前記発光素子の負荷インピーダンスよりも小さい抵抗値を示す構成とした光治療装置。
【請求項11】
前記発光素子は、近赤外発光ダイオードである、請求項9または10に記載の光治療装置。
【請求項12】
前記個別電流制御素子は、温度上昇に伴い抵抗値が減少する特性を有するサーミスタである、請求項9〜11のいずれか一項に記載の光治療装置。
【請求項13】
前記サーミスタは、CTR(Critical Temperature Coefficient)サーミスタである、請求項12に記載の光治療装置。
【請求項14】
前記個別電流制御素子は、並列接続された前記発光素子の照射対象面の近傍であって、前記発光素子から照射される光が直接前記個別電流制御素子に照射されない位置に配置された、請求項9〜13のいずれか一項に記載の光治療装置。
【請求項15】
前記個別電流制御素子は、並列接続された前記発光素子の光照射方向で、この光照射域の外周に配置された、請求項14に記載の光治療装置。
【請求項16】
前記発光モジュールは、前記発光素子と前記個別電流制御素子との間に介在させた断熱材を有する、請求項15に記載の光治療装置。
【請求項17】
前記発光モジュール体は、前記発光モジュールと直列接続された電流制限素子を有する、請求項9〜16のいずれか一つに記載の光治療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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