説明

光照射装置およびその制御方法、ならびに被検体情報取得装置

【課題】光を被検体に照射する機構を有する装置において、照明光の安全を確保しつつ装置構成を簡素にする為の技術を提供する。
【解決手段】光源からの光を被検体に導く出射部、出射部を含むハウジング、および、被検体とハウジングの接触状態量を取得するタッチセンサを含むプローブと、接触状態量の程度および接触状態量の変化に基づいて出射部からの光の照射を制御する制御装置を有し、制御装置は、接触状態量が第一の基準値以上であり、かつ、ハウジングが被検体に押しつけられる時の接触状態量の変化が正であるとした場合の接触状態量の変化が第二の基準値以上であるときに、出射部からの光の照射を可能にする制御を行うことを特徴とする光照射装置を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光照射装置およびその制御方法、ならびに被検体情報取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
がんに起因して発生する血管新生を特異的に画像化する方法として、光音響トモグラフィ(以下、PAT:Photoacoustic tomography)が注目されている。PATは照明光(近赤外線)を被検体に照明し、被検体内部から発せられる光音響波を超音波探触子で受信して画像化する方式である。
【0003】
非特許文献1では、ハンドヘルド型光音響装置について述べられている。この装置では、光源からの光を照射するバンドルファイバがハンドヘルド型の探触子に固定されている。ところが、非特許文献1には、照明光の放出面と被検体との接触について記載されていない。そのため、照明光は被検体だけでなく空間内にも照射され、照明光に対する安全性に改善の余地がある。
【0004】
この課題には特許文献1の技術を適用することで対処できる。図7(a)および図7(b)は、特許文献1の装置の構成を示したものである。図7において、エネルギ放出面101は皮膚と接触する面であり、光などエネルギが照射される。支持構造体102はエネルギ放出面101を固定しており、接触センサ103を介してハウジング104に内包されている。接触センサ103はエネルギ放出面101と不図示の皮膚との接触を検出するものであり、エネルギ放出面101を取り囲むように配置されている。そして、接触センサ103が皮膚との接触を検出されない限り、エネルギ放出を停止する。こうすることで、エネルギ放出面101が皮膚に完全に密着した状態でのみエネルギ照射され、エネルギ照射に対して安全性が改善する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2006−525036号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】S.A.Ermilov et al., Development of laser optoacoustic and ultrasonic imaging system for breast cancer utilizing handheld array probes, Photons Plus Ultrasound: Imaging and Sensing 2009, Proc. of SPIE vol. 7177, 2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら従来の技術では以下のような課題があった。
非特許文献1には照明光の放出面と被検体との接触について記載されていないため、被検体以外の空間内に照明光が照射される。たとえ術者が注意して皮膚と密着させても、エネルギ放出面と皮膚が完全に密着せず、エネルギ放出面の一部のみが皮膚に対して接触すると偏当たりとなって、隙間が生じる可能性がある。そのため、照明光に対する安全性に改善の余地がある。
【0008】
この課題は特許文献1を適用することで改善する。すなわち、照明光の放出面の周囲に皮膚との接触センサを設け、接触センサが接触を検知しない限り、照明光の放出を停止する制御を行えばよい。ところが、エネルギ放出面が皮膚に対して偏当たりすることを防止するためには、照明光の放出面周囲に多数の接触センサを配置するといった、多段の放出
防止機構が必要であり、装置構成が複雑になっていた。
【0009】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、光を被検体に照射する機構を有する装置において、照明光の安全を確保しつつ装置構成を簡素にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的に鑑みて、本発明は以下の構成を採用する。すなわち、光源からの光を被検体に導く出射部、前記出射部を含むハウジング、および、前記被検体と前記ハウジングの接触状態量を取得するタッチセンサを含むプローブと、前記接触状態量の程度および前記接触状態量の変化に基づいて前記出射部からの光の照射を制御する制御装置と、を有する光照射装置であって、前記制御装置は、前記接触状態量が第一の基準値以上であり、かつ、前記ハウジングが前記被検体に押しつけられる時の接触状態量の変化が正であるとした場合の前記接触状態量の変化が第二の基準値以上であるときに、前記出射部からの光の照射を可能にする制御を行うことを特徴とする光照射装置である。
【0011】
本発明はまた、以下の構成を採用する。すなわち、光源からの光を被検体に導く出射部と、前記出射部を含むハウジングと、前記被検体と前記ハウジングの接触状態量を取得するタッチセンサを含むプローブと、前記出射部からの光の照射を制御する制御装置と、を有する光照射装置の制御方法であって、前記制御装置が、前記接触状態量が第一の基準値以上であり、かつ、前記ハウジングが前記被検体に押しつけられる時の接触状態量の変化が正であるとした場合の前記接触状態量の変化が第二の基準値以上であるかどうかを判定する工程と、前記接触状態量が第一の基準値以上であり、かつ、前記接触状態量の変化が第二の基準値以上であると判定された場合に、前記制御装置が、前記出射部からの光の照射を可能にする制御を行う工程と、を有することを特徴とする光照射装置の制御方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光を被検体に照射する機構を有する装置において、照明光の安全を確保しつつ装置構成を簡素にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態における装置構成を説明する図である。
【図2】本発明の実施の形態における制御装置を説明する図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるタッチセンサの実装を説明する図である。
【図4】本発明の実施例1における光照明制御方法を説明する図である。
【図5】本発明の実施例2における光照明制御方法を説明する図である。
【図6】本発明の実施例3における光照明制御方法を説明する図である。
【図7】背景技術を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に図面を参照しつつ、本発明の好適な実施の形態を説明する。本発明は、被検体に光(電磁波)を照射することにより被検体内で発生した音響波(光音響波とも言い、典型的には超音波)を受信して、被検体情報を画像情報として取得する光音響効果を利用した装置に適用できる。このような被検体情報取得装置は光音響装置と呼ばれる。
【0015】
取得される被検体情報とは、光照射によって生じた音響波の発生源分布や、被検体内の初期音圧分布、あるいは初期音圧分布から導かれる光エネルギ吸収密度分布や、吸収係数分布、組織を構成する物質の濃度分布を示す。物質の濃度分布とは、例えば、酸素飽和度分布や酸化・還元ヘモグロビン濃度分布などである。
【0016】
なお、音響波とは、典型的には超音波であり、音波、超音波、音響波、光音響波、光超音波と呼ばれる弾性波を含む。また本発明において光とは、可視光線や赤外線を含む電磁波を示す。被検体情報取得装置が測定対象とする成分により特定の波長の光を選択すると良い。
【0017】
被検体は本発明の被検体情報取得装置の一部を構成するものではないが、以下に説明する。本発明の被検体情報取得装置は、人や動物の悪性腫瘍や血管疾患、血糖値などの診断や化学治療の経過観察などが可能である。よって、被検体としては生体、具体的には人体や動物の乳房や指、手足などを想定できる。被検体内部の光吸収体としては、被検体内で相対的に吸収係数が高いものを示す。例えば、人体が測定対象であれば、酸化あるいは還元ヘモグロビンやそれらを含む血管、あるいは新生血管を多く含む悪性腫瘍が該当する。被検体が生体である場合、本発明の装置を生体情報処理装置と呼ぶことができる。
【0018】
実施の形態について図1を用いて説明する。図1はハンドヘルド型光音響装置を模式的に図示したものである。
【0019】
光源1と照明光学系2、バンドルファイバ3は不図示の被検体へ近赤外線を照明するための構成要素である。光源1にはNd:YAGレーザやアレクサンドライトレーザなどパルスレーザを用いる。このほか、Nd:YAGレーザ光を励起光とするTi:saレーザやOPOレーザを用いても良い。さらにあるいはキセノンランプなどレーザ以外の光源を用いても良い。照明光学系2は光源1からの照明光を拡大し、バンドルファイバ3へ入射させる。その照明光はバンドルファイバ3を介して被検体を照明する。図1ではバンドルファイバを二本に分岐するように示したが、分岐本数は任意である。また、バンドルファイバ3から被検体への照明光学系も不図示としたが、バンドルファイバ3の出射端3aから直接被検体を照明しても良いし、拡散板など任意の光学系を設けても良い。ここでは出射端3aが本発明の出射部に当たる。
【0020】
超音波探触子4は被検体から発せられた光音響波を受信するものである。超音波探触子としては例えば、PZT、CMUTなどの検出素子を1次元または2次元のアレイ状に並べたものを用いることができる。あるいは単素子のものを用いても良い。処理装置5は照明光が発せられるトリガ信号が入力されるタイミングで、超音波探触子4が受信した光音響信号を取得する。そして、光音響信号に増幅、ディジタル変換、検波などを行い、画像情報を生成し、モニタ6で表示させる。
【0021】
ハウジング7は超音波探触子4やバンドルファイバ出射端3aを装着するものである。そして、ハウジング7にはタッチセンサ8を設けている。タッチセンサ8は被検体とハウジング7との接触状態量を測定するセンサである。このタッチセンサ8の出力は制御装置9に入力される。制御装置9はタッチセンサの出力から、発光制御信号を生成し、光源1へ送信する。ハンドヘルドプローブ10はバンドルファイバの出射端3aと超音波探触子4とハウジング7およびタッチセンサ8で構成される。制御装置の信号に応じて、被検体に光を照射することが可能か、それとも照射が停止されるかが定まる。
【0022】
処理装置5および制御装置9は、例えば情報処理装置を用いて実現できる。情報処理装置はそれぞれの処理を専用の回路で行っても良いし、CPUを備えたコンピュータ等を動作させるプログラムとして実現しても構わない。
【0023】
次に制御装置9での制御方法について、図2を用いて説明する。
図2のように、制御装置9には、タッチセンサ8から出力された被検体との接触状態量が入力される。制御装置9は接触状態量から接触状態を判別し、十分に接触していれば、
照明を許可する。また、十分に接触していなければ照明を停止させる。この制御信号は光源1へ送信され、発光制御に用いられる。
【0024】
接触状態の判別方法は、接触の程度を表す接触状態量を第一の基準値と比較するとともに、接触状態量の変化の程度(例えば時間微分)を第二の基準値と比較する事により行われる。照明が許可される条件は、接触状態量が第一の基準値以上であり、かつその接触の変化が第二の基準値以上であることである。接触の変化については、押しつける時を正、離す時を負として、ある負の値が第二の基準値となる。例えばタッチセンサ8が測定する状態量の時間微分が第二の基準値以上であることを条件として照明を許可する。
【0025】
接触の程度を表す接触状態量が第一の基準値以上の条件であれば、ハウジング7は被検体との間で偏当たりせず、十分に接触できていることがわかる。また、その時間微分が第二の基準値以下であれば、ハンドヘルドプローブ10が被検体から離れそうなことがわかる。すなわちハンドヘルドプローブ10が被検体から完全に離れる状態だけでなく、偏当たりしそうになることがわかる。そのため、照明エリアを取り囲むように接触を検出するセンサを設けなくても、離れる前にいち早く光源1へ照明の制御信号を送信することができる。したがって、多数の接触センサを配置せずとも、レーザ照射の安全性が得られる。
【0026】
本発明では被検体との接触状態に基づき、照明光の発光制御が行われる点に特徴がある。したがって、光路に配置される構成要素は、照明光学系2やバンドルファイバ3に限定されない。例えば、バンドルファイバ3を用いる代わりに、ミラーやプリズムとこれらを内包する遮光筒を設け、被検体へ照明するまでの光路を確保しても良い。
また、光源1の発光制御は、光源1の内部シャッタを開閉する方法でも良いし、内部トリガ信号を制御する方法でも有効である。さらに、制御装置9からの制御信号は光源1の発光制御を行うものとして説明したが、これに限定されない。例えば、光源1と照明光学系2との間に外部シャッタを設け、シャッタ開閉を制御しても良い。
【0027】
つぎに、タッチセンサ8について説明する。本発明で用いるタッチセンサ8はハウジング7と被検体との接触状態量を測定できるセンサであれば、その種類は任意である。例えば、力や圧力、距離などの状態量が測定できれば良く、その原理も光学式、抵抗式、静電容量式などを用いることができる。ここでは、タッチセンサ8をひずみゲージとする場合の構成について説明する。
【0028】
図3(a)はハウジング7の側面図、図3(b)は下面図、図3(c)は斜視図である。図3(b)の下面図のように、ハウジング7の底面は被検体への照明開口と、光音響波を受信する領域に分けられる。ハウジング7にひずみゲージ8aを設ける場合、ハウジング7の一部を板ばね7aとして、板ばね7aにひずみゲージ8aを接着させる。こうすることで、被検体との接触状態に対して、ひずみゲージ8aの出力の感度が上がる。そのため、高精度に接触状態量(板ばね7aのひずみ)を測定することができる。したがって、制御装置9での制御の安定性が向上するので、照明開口を囲むようにタッチセンサ8を配置せず、その個数を減らしても、光照射の安全性が得られる。さらに、制御装置9での制御の安定性が向上すると、非接触での照明あるいは接触での非照明といったエラーを低減でき、光音響装置を安定して使用することが可能となる。
【0029】
ひずみゲージ8aの位置は板ばね7aへの接着に限定されない。図3(d)に示した別の側面図のように、ハウジング7をひずみ易い材質にして、ひずみゲージ8aをハウジング7の側面に接着しても良い。
また図3(c)のように、照明開口(照明光路)を挟むように二個程度のタッチセンサ8(ひずみゲージ8a)を設け、接着状態量とその変化から発光の制御を行えば、安全性を確保して装置構成を簡素にすることができる。
【実施例1】
【0030】
実施例1では、図4(a)を用いて制御装置9の制御方法についてより詳しく説明する。制御装置9はタッチセンサ8からの被検体との接触状態量から、以下の工程を行い、照明光の発光を制御する。
【0031】
(S11)接触状態があらかじめ設定された第一の基準値以上か判定する。タッチセンサ8にひずみゲージ8aを使用した場合は、ひずみ量εi≧a(第一の基準値)ならば、次の工程S12へ進む。εi<aならば工程S14を行う。なお、iはひずみゲージ8a(タッチセンサ8)のチャンネル番号を意味する。
【0032】
(S12)接触の変化があらかじめ設定された第二の基準値以上か判定する。より具体的には、接触状態の時間微分が第二の基準値以上か判定する。タッチセンサ8にひずみゲージ8aを使用した場合は、dεi/dt≧bならば、次の工程S13を行う。dεi/dt<bならば、工程S14を行う。ただし、接触の変化は押しつける時を正、離す時を負とし、第二の基準値bは負の値である。
【0033】
(S13)照明を許可するように、光源1を制御する。あるいは不図示のシャッタを制御しても良いし、光源とシャッタをともに制御しても良い。
(S14)照明を停止するように、光源1を制御する。あるいは不図示のシャッタを制御しても良いし、光源とシャッタをともに制御しても良い。
なお、工程S11と工程S12は入れ替えても良い。
【0034】
本実施例の制御方法によると、図4(b)に示す接触状態量(横軸:ひずみ量εi)とその変化(縦軸:dεi/dt)がそれぞれ照明可の場合に照明を許可し(斜線の領域)、照明不可の場合に照明を停止する制御を行う。そして、一例として、実施例1で説明した板ばね7aにひずみゲージ8aを搭載した場合、第一の基準値a=0.05、第二の基準値b=−0.1として制御した。その結果、ハンドヘルドプローブ10と被検体が偏当たりせず密着させることができた。なお、これらの数値はこれに限定されず、板ばね7aの材質、形状寸法、あるいは被検体の弾性率などの条件によって変更する必要がある。
【0035】
また、接触状態の変化量は押しつける時を正、離す時を負とし、第二の基準値bを負の値と説明したが、正負および不等号は反対でも有効である。さらにS11とS12で、条件を満足するεi≧a,dεi/dt≧bに等号を入れたが、これらをεi>a,dεi/dt>bとしても有効である。そしてさらに、被検体との接触状態量(ひずみ量εi)は移動平均値を求め、その移動平均値からS11、S12の判定を行っても良い。以下の実施例でも同様とする。
【0036】
さらに、接触状態の変化量は接触状態量の時間微分として説明したが、時間のサンプリングΔtは任意である。例えばタッチセンサ8の出力を制御部9へ入力する際のサンプリング周波数(1kHz程度)としても良いし、数秒程度のサンプリングによってその差分を接触状態の変化量としても良い。
【0037】
本実施例によると、照明エリアを取り囲むように接触を検出するセンサを設けなくても、離れる前にいち早く光源1へ照明の制御信号を送信することができる。したがって、多数の接触センサを配置する必要がなく、レーザ照射の安全性が得られる。さらに、接触を検出するセンサを減らし、ハウジング7の小型化ができる、その結果、ハンドヘルドプローブ10全体を小さくすることができる。
【0038】
以上、ここまでは、光音響装置を例として説明したが、本発明の適用対象はこれに限定
されない。例えば、AOT(Acousto-Optical Tomography)やDOT(Diffuse Optical Tomography)などの他の被検体情報取得装置にも適用できる。さらに、被検体情報取得装置に限らず、レーザ治療器などの光照射制御にも適用できる。すなわち本発明は、光を照射する機構を有するハンドヘルドプローブを含むような光照射装置が適用対象と言える。
【実施例2】
【0039】
実施例1で説明した制御方法は、接触状態量(ひずみ量εi)の第一の基準値aと、その変化(ひずみ量の時間微分dεi/dt)の第二の基準値bをあらかじめ設定された値として説明したが、これらは接触の状態に応じて変更しても良い。
【0040】
実施例2では、接触状態量の基準値(第一の基準値)をその変化に応じて変更させる。これは、ハンドヘルドプローブ10と被検体との接触状態量は、ハンドヘルドプローブ10を被検体に押し付けるときと、ハンドヘルドプローブ10を被検体から離すときで、その密着状態が異なることに伴い変化するためである。例えば、ハンドヘルドプローブ10を被検体に押し付けるときは8N以上の力でハンドヘルドプローブ10と被検体が密着するのに対し、ハンドヘルドプローブ10を被検体から離すときは3N程度の力でもハンドヘルドプローブ10と被検体が密着する。そこで、接触状態量(ひずみ量εi)の第一の基準値を接触状態の時間微分(dεi/dt)に応じて決定する。
【0041】
その決定方法は接触状態の時間微分の関数となるように、制御装置9に数式を持たせる。あるいは、接触状態の時間微分に応じて接触状態量の基準値を決定するテーブルを制御装置9に持たせても良い。さらにあるいは、第一の基準値は二値をもち、接触状態の時間微分から、ハンドヘルドプローブ10が被検体から押しつけるのか離すのか判定し、その判定に基づき接触状態量の基準値を選択しても良い。
【0042】
そして図5(a)のように、制御装置9はタッチセンサ8からの被検体との接触状態量から、以下の工程を行い、照明光の発光を制御する。
(S21)接触状態の変化を計算する。タッチセンサ8にひずみゲージ8aを使用した場合は、dεi/dtを計算する。なお、iはひずみゲージ8a(タッチセンサ8)のチャンネル番号を意味する。
【0043】
(S22)接触状態量の第一の基準値を決定する。タッチセンサ8にひずみゲージ8aを使用した場合はひずみ量の基準値aを決定する。
(S23)接触状態がS22で求めた第一の基準値以上か判定する。タッチセンサ8にひずみゲージ8aを使用した場合は、ひずみ量εi≧a(基準値)ならば、次の工程S24へ進む。εi<aならば工程S26を行う。
【0044】
(S24)接触の変化があらかじめ設定された第二の基準値以上か判定する。より具体的には、接触状態の時間微分が第二の基準値b以上か判定する。タッチセンサ8にひずみゲージ8aを使用した場合は、dεi/dt≧bならば、次の工程S25を行う。dεi/dt<bならば、工程S26を行う。ただし、接触の変化は押しつける時を正、離す時を負とし、第二の基準値bは負の値である。
【0045】
(S25)照明を許可するように、光源1を制御する。あるいは不図示のシャッタを制御しても良いし、光源とシャッタをともに制御しても良い。
(S26)照明を停止するように、光源1を制御する。あるいは不図示のシャッタを制御しても良いし、光源とシャッタをともに制御しても良い。
なお、工程S23と工程S24は入れ替えても良い。
【0046】
本実施例の制御方法によると、図5(b)に示すようにハンドヘルドプローブ10を被
検体に対して押し付けるときは、第一の基準値aを小さく設定する。反対に、ハンドヘルドプローブ10を被検体に対して離すときは、第一の基準値aを大きく設定する。こうすることによって、ハンドヘルドプローブ10を被検体に対して押し付けるときは弱い密着でも照明が許可されため、ハンドヘルドプローブ10を必要以上に被検体へ押しつける必要がなくなり、装置の操作性が向上する。
【実施例3】
【0047】
実施例3では、第二の基準値を接触状態量から決める。これは、実施例2で説明した通り、ハンドヘルドプローブ10と被検体との密着状態はその押しつけ状態によって異なるためである。たとえば、比較的強い力でハンドヘルドプローブ10を被検体に押し付けた後、その密着を維持したまま押し付け力を緩和させ接触状態量の変化が離れる方向に大きくても、その密着は維持できる。そこで、接触状態の変化( dεi/dt )の第二の基準値bを接触状態量(ひずみ量εi)に応じて決定する。その決定方法は接触状態量の関数となるように、制御装置9に数式を持たせる。あるいは、接触状態量に応じて接触状態の変化の基準値を決定するテーブルを制御装置9に持たせても良い。
【0048】
そして図6(a)のように、制御装置9はタッチセンサ8からの被検体との接触状態量から、以下の工程を行い、照明光の発光を制御する。
(S31)接触状態量から第二の基準値を決定する。タッチセンサ8にひずみゲージ8aを使用した場合はひずみ量の変化(時間微分)を判断する第二の基準値bを決定する。
(S32)接触状態があらかじめ設定された第一の基準値以上か判定する。タッチセンサ8にひずみゲージ8aを使用した場合は、ひずみ量εi≧a(基準値)ならば、次の工程S33へ進む。εi<aならば工程S35を行う。なお、iはひずみゲージ8a(タッチセンサ8)のチャンネル番号を意味する。
【0049】
(S33)接触の変化がS31で求めた第二の基準値以上か判定する。より具体的には、接触状態の時間微分が所定の基準値b以上か判定する。タッチセンサ8にひずみゲージ8aを使用した場合は、dεi/dt≧bならば、次の工程S34を行う。dεi/dt<bならば、工程S35を行う。ただし、接触の変化は押しつける時を正、離す時を負とし、基準値bは負の値である。
(S34)照明を許可するように、光源1を制御する。あるいは不図示のシャッタを制御しても良いし、光源とシャッタをともに制御しても良い。
(S35)照明を停止するように、光源1を制御する。あるいは不図示のシャッタを制御しても良いし、光源とシャッタをともに制御しても良い。
なお、工程S32と工程S33は入れ替えても良い。
【0050】
本実施例の制御方法によると、図6(b)に示すようにハンドヘルドプローブ10を被検体に対して強く密着しているときは、第二の基準値bを低めに設定し、その変化が引き離す方向に大きくなっても照明を許容できる。反対に、ハンドヘルドプローブ10を被検体に対して弱く密着しているときは、第二の基準値bを高めに設定して照明の可否判断を行う。こうすることによって、ハンドヘルドプローブ10を被検体に対して強く密着しているときは、多少密着が緩和しても照明は許可されるが、弱く密着しているときは抑えつける方向に密着していかない限り照明は許可されない。こうすることで例えば、比較的強い力でハンドヘルドプローブ10を被検体に押し付けた後、その密着を維持したまま押し付け力を緩和させたときでもレーザ発光が停止するような不具合を抑制できる。そのため、さらに装置の操作性が向上する。
【0051】
さらに、実施例2と実施例3を合わせ、接触状態量の基準値と、接触が離れる方向の変化の基準値をタッチセンサ8で測定した接触状態量に応じてそれぞれ決定しても良い。
【符号の説明】
【0052】
1:光源,7:ハウジング,8:タッチセンサ,9:制御装置,10:ハンドヘルドプローブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を被検体に導く出射部、前記出射部を含むハウジング、および、前記被検体と前記ハウジングの接触状態量を取得するタッチセンサを含むプローブと、
前記接触状態量の程度および前記接触状態量の変化に基づいて前記出射部からの光の照射を制御する制御装置と、
を有する光照射装置であって、
前記制御装置は、前記接触状態量が第一の基準値以上であり、かつ、前記ハウジングが前記被検体に押しつけられる時の接触状態量の変化が正であるとした場合の前記接触状態量の変化が第二の基準値以上であるときに、前記出射部からの光の照射を可能にする制御を行う
ことを特徴とする光照射装置。
【請求項2】
前記接触状態量の変化は、前記接触状態量の時間微分である
ことを特徴とする請求項1に記載の光照射装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記第一の基準値および前記第二の基準値としてあらかじめ設定された値を使用して制御を行う
ことを特徴とする請求項1または2に記載の光照射装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記接触状態量の変化の値が大きくなるほど、前記第一の基準値を小さくしながら制御を行う
ことを特徴とする請求項1または2に記載の光照射装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記接触状態量の値が大きくなるほど、前記第二の基準値を小さくしながら制御を行う
ことを特徴とする請求項1または2に記載の光照射装置。
【請求項6】
前記タッチセンサは前記ハウジングに配置されたひずみゲージであり、
前記接触状態量は前記ハウジングのひずみ量である
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の光照射装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の光照射装置と、
前記プローブに含まれており、前記出射部から前記被検体に光が照射されたときに発生する音響波を取得する超音波探触子と、
前記音響波から前記被検体の内部の画像情報を生成する処理装置と、
を有することを特徴とする被検体情報取得装置。
【請求項8】
光源からの光を被検体に導く出射部と、前記出射部を含むハウジングと、前記被検体と前記ハウジングの接触状態量を取得するタッチセンサを含むプローブと、前記出射部からの光の照射を制御する制御装置と、を有する光照射装置の制御方法であって、
前記制御装置が、前記接触状態量が第一の基準値以上であり、かつ、前記ハウジングが前記被検体に押しつけられる時の接触状態量の変化が正であるとした場合の前記接触状態量の変化が第二の基準値以上であるかどうかを判定する工程と、
前記接触状態量が第一の基準値以上であり、かつ、前記接触状態量の変化が第二の基準値以上であると判定された場合に、前記制御装置が、前記出射部からの光の照射を可能にする制御を行う工程と、
を有することを特徴とする光照射装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−231978(P2012−231978A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102841(P2011−102841)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】