説明

光照射装置およびカメラ

【課題】廉価な構成で透過光学系の熱損傷を防止した光照射装置を提供する。
【解決手段】光源31と、光源31からの光を反射する反射傘32と、光源31および反射傘32の前方に設けられた透過光学系3とを備え、光源31からの直接光および反射傘32の反射光を、透過光学系33を介して外部に照射する光照射装置において、透過光学系33の配置箇所のうち光が最も集中する部分は、光が透過光学系33の実体部を通らず空隙部33aを通過するよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部に光を照射する光照射装置およびカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばカメラ用の閃光装置は、閃光放電管の射出光のうち一部を直接、他の大部分を反射傘で反射させ、透過光学系を介して外部に照射する。特に特許文献1に記載された閃光装置では、熱による透過光学系の損傷を防止するため、透過光学系に耐熱性コーティングを行ったり、耐熱性の高い透過光学系を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−5063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記耐熱性コーティングや耐熱性の高い透過光学系の使用はコストアップをもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、光源と、光源からの光を反射する反射傘と、光源および反射傘の前方に設けられた透過光学系とを備え、光源からの直接光および前記反射傘の反射光を、透過光学系を介して外部に照射する光照射装置に適用され、透過光学系の配置箇所のうち光が最も集中する部分は、光が透過光学系の実体部を通らず空隙部を通過するよう構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、廉価な構成で透過光学系の熱損傷を防止した光照射装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施形態におけるカメラ用外付け閃光装置の概略側面断面図。
【図2】図1のII−II線断面図。
【図3】図1のフレネルレンズの詳細図。
【図4】フレネルレンズを前方から見た図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照して、本発明をカメラ用の外付け閃光装置に適用した場合の一実施形態を説明する。
図1、図2において、閃光装置は、本体1と、カメラに装着するための装着部2と、本体1に対して回動可能な発光部3とを有して成る。発光部3は、閃光放電管(例えば、キセノン管)31と、放電管31を被うように配置された反射傘32と、放電管31および反射傘32の前方に配置されるフレネルレンズ33と、閃光発光用の電荷を蓄えるメインコンデンサ34と、これらの部材31〜34を収容する筐体35と、筐体35の照射口を被うプロテクタレンズ36とを有する。
【0009】
反射傘32は、一般に1枚の反射板を折り曲げて形成され、その内面(反射面)は、放電管31の延在方向に延在する二次近似曲面とされる。閃光放電管31が閃光発光されると、その射出光のうち1/3程度が直接、残りの2/3程度が反射傘32で反射されて前方に向かい、凸レンズとして作用するフレネルレンズ33、およびプロテクタレンズ36を順に透過して外部に照射され、被写体の照明に寄与する。なお、プロテクタレンズ36はレンズ特性を有していてもよいし、平面状のパネルでもよい。
【0010】
ところで、フレネルレンズ33はアクリル樹脂(例えば、PMMA)から成り、耐熱性は比較的低く、図示の如く放電管31および反射傘32の直ぐ前方に配置すると、放電管31の発光による熱の影響を受け易い。特に、フレネルレンズ33の上下方向の中心部分、すなわち照射光の光軸近傍は、放電管31に最も近く、また反射傘32の特性上、フレネルレンズ33に入射する光は中心部分に最も集中するため、短い時間間隔で放電管31を連続発光させると、フレネルレンズ33の中心部分が熱によって損傷(例えば、溶融)するおそれがある。フレネルレンズ33を放電管31や反射傘32から離せば熱による影響を軽減できるが、閃光装置の大型化や、所望の配光特性が得られない等の問題がある。
【0011】
また、外付け閃光装置では、フレネルレンズ33の熱損傷等を防止するために、加熱のおそれがある場合に自動的に全ての操作を禁止したり、アイコンやブザーで高温警告を行ったり、連続発光の回数制限を設けるといった措置を講じている。これらにより操作が禁止された場合や、警告が発せられた場合、連続発光回数が制限を超えた場合は、しばらくの間は閃光装置を自然冷却する必要があり、その間は閃光撮影が行えない。
【0012】
そこで本実施形態では、図1〜図4に示すように、フレネルレンズ33の上下方向の中心部分に貫通孔33aを設け、中心部に集中する光の大部分がその貫通孔33aを通って(レンズの実体部分を通らずに)プロテクタレンズ36側に導かれるよう構成した。これにより、フレネルレンズ33の熱による損傷を抑制することができ、上述した自然冷却の機会や時間を減らすことができる。
【0013】
図2、図3から分かるように、貫通孔33aは、放電管31の延在方向に延在するスリット状の孔とされ、その長さは放電管31の発光範囲W(図2)とほぼ同等とされる。また貫通孔33aの高さは、放電管31の径とほぼ同等とされる。
【0014】
なお、フレネルレンズ33の熱損傷の有無や箇所は、放電管31の形状や大きさ、発光強度、フレネルレンズ33の耐熱性の他、光が何処にどの程度集中するか(反射傘32の特性に依存)によって異なる。このため、フレネルレンズ33の貫通孔33aの位置、形状および寸法は、機種ごとに実験等によって最適値を求めることが望ましい。2以上の箇所で光が集中する場合は、2以上の箇所に貫通孔33aを設けることも考えられる。勿論、貫通孔33aを設けることによる光学性能への影響をも考慮する必要がある。
【0015】
ここで、フレネルレンズ33の中心(光軸)付近を通過する光は、もともと殆ど屈折しないので、中心部に貫通孔33aを設けたことによる光学性能(配光特性)の悪化は無視できるほど小さい。また、フレネルレンズ33の前方には、筐体35の内部空間をほぼ密封するようにプロテクタレンズ36が嵌め込まれているので、フレネルレンズ33に貫通孔33aを設けても、外部から筐体35内に塵埃や水分等が侵入することはない。さらにプロテクタレンズ36は、高温になったフレネルレンズ33に手が触れることを防止する役割をも果たす。
【0016】
なお、プロテクタレンズ36もPMMA等のアクリル樹脂から構成されるが、放電管31や反射傘32から離れており、また間にフレネルレンズ33が設けられているので、熱による影響はほとんど受けない。
【0017】
以上のように本実施形態では、フレネルレンズ33に貫通孔33aを設けることでその熱損傷を軽減するようにしたので、フレネルレンズ33に耐熱性コーティングを施したり、耐熱性の高いフレネルレンズを使用する必要がなく、コストダウンが図れる。
【0018】
なお、貫通孔を設ける透過光学系はフレネルレンズに限定されない。また、貫通孔に代えて切欠きでもよい。さらに、透過光学系に貫通孔や切欠きを設けることに代えて、上下2枚の透過光学系を隙間を開けて配置し、その隙間が上記貫通孔と同等の役割を果たすよう構成してもよい。要は、透過光学系の配置箇所のうち光が最も集中する部分は、光が透過光学系の実体部を通らず空隙部を通過するよう構成すればよい。
【0019】
以上では、外付け閃光装置にて説明したが、カメラに内蔵された閃光装置、および閃光装置を内蔵するカメラにも本発明を適用できる。また、閃光装置以外の各種光照射装置にも同様に本発明を適用できる。例としては、LED等の光源と、反射傘と、透過型または反射型の液晶素子とを有し、液晶素子で形成された光像を外部に投影するプロジェクタ装置が挙げられる。この種のプロジェクタ装置であって、光源および反射傘の前方に透過光学系を有するものであれば、本発明を適用対象となる。
【0020】
また、LED等を光源とするライト(懐中電灯)でもよい。懐中電灯の場合は、光源光および反射傘での反射光が全角度的に透過光学系の中心部に集中するので、その中心部分に例えば円形の貫通孔を設ければよい。また、光源としてのLEDを所定方向に複数並べたような照明装置では、その並び方向に延在するスリット孔を透過光学系に設けるとよい。このように、透過光学系に設ける空隙部の形状は、光源の形状や配置、反射傘の配光特性によって決める必要がある。
【符号の説明】
【0021】
3 発光部
31 閃光放電管
32 反射傘
33 フレネルレンズ
33a 貫通孔
34 メインコンデンサ
35 筐体
36 プロテクタレンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源からの光を反射する反射傘と、
前記光源および前記反射傘の前方に設けられた透過光学系とを備え、
前記光源からの直接光および前記反射傘の反射光を、前記透過光学系を介して外部に照射する光照射装置において、
前記透過光学系の配置箇所のうち光が最も集中する部分は、光が前記透過光学系の実体部を通らず空隙部を通過するよう構成したことを特徴とする光照射装置。
【請求項2】
前記空隙部は、前記光源の形状、配置、または前記反射傘の配光特性に応じてその形状が定められることを特徴とする請求項1に記載の光照射装置。
【請求項3】
前記光源は、所定の方向に延在する放電管であり、前記空隙部は、前記放電管の延在方向に延在するスリット形状とされることを特徴とする請求項2に記載の光照射装置。
【請求項4】
前記透過光学系の配置箇所のうち光が最も集中する部分は、照射光の光軸を含む部分であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光照射装置。
【請求項5】
前記透過光学系のうち、前記光が最も集中する部分に相当する箇所に前記空隙部として貫通孔を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光照射装置。
【請求項6】
前記光源、前記反射傘および前記透過光学系を収容する筐体を備え、該筐体の光照射口は透明部材で被われていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光照射装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の光照射装置を被写体照明装置として有することを特徴とするカメラ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−83868(P2013−83868A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224860(P2011−224860)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】