説明

光照射装置

【課題】高い指向性を持ち強度分布が均一化された光を広範囲に亘って照射できる光照射装置を提供する。
【解決手段】この光照射装置は光源装置100を備え、光源装置100は、ランプ光源101とランプ光源101が出射した光を前方へ反射するリフレクタ102と円筒形凹レンズ103と円筒形凸レンズ104を有する。円筒形凹レンズ103の円筒形凹レンズ面103Aの円筒中心軸と円筒形凸レンズ面104Aの円筒中心軸とは互いに垂直になっている。円筒形凹レンズ面103Aでy軸方向に拡散された光は円筒形凸レンズ面104Aでz軸方向に集光されて、照射領域がy軸方向に長くて光強度の大きな照射光となってy軸方向に細長い端面107Aに照射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光照射装置に関し、被照射物に対して指向性の高い光を強度分布を均一化して照射できる光照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
指向性の高い光を照明用途に利用する場合、光学系の設計が行い易く、制御が容易であり非常に有効である。
【0003】
そこで、従来、バルブ状の光源を用いて指向性と光強度分布の両方を制御する手法として、インテグレータレンズと集光光学素子を用いた光強度の均一化手法が用いられてきた(特許文献1(特許第3508190号公報)参照)。また、特許文献2(特開平10−106929号公報)に示される線状照明装置では、光源に平行度の高いレーザー光を用いた場合、円筒インテグレータレンズと球面インテグレータレンズと集光光学素子を用いて線状の照射領域を実現している。
【0004】
ところで、上述した従来の照明装置では以下のような課題がある。特許文献1における照射領域の指向性と光強度分布の制御手法においては、照射領域が正方形となり、細長い導光体の端面に光を効率的に入射することが困難である。さらに、集光光学系を用いているので、光源のリフレクタ径より幅の広い照射領域が得られないことから、複数個の光照射装置を並べて所望の照射領域を得ることは困難である。また、特許文献2で開示されている照明装置による照射領域の制御方法においては、光源として平行度の非常に高いレーザー光を使用しており、バルブ光源のような指向性が一様でない光源では所望の照射領域と指向性を得ることは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3508190号公報
【特許文献2】特開平10−106929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、この発明の課題は、高い指向性を持ち、強度分布が均一化された光を広範囲に亘って照射できる光照射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、この発明の光照射装置は、光を出射する光源部と、
上記光源部から入射された光を屈折させて出射する光学素子と、
上記光学素子から出射した光が入射される端面と上記端面に入射された光を出射する出射面とを含む導光体とを備え、
上記光学素子は、
上記光源部からの光を拡散させる円筒形凹レンズ面と、
上記円筒形凹レンズ面からの光を集光する円筒形凸レンズ面とを有し、
上記円筒形凹レンズ面の円筒中心軸と上記円筒形凸レンズ面の円筒中心軸とが互いに垂直であることを特徴としている。
【0008】
この発明の光照射装置によれば、光源部から出射された光は、上記光学素子の円筒型凹レンズ面によりこの円筒形凹レンズ面の円筒中心軸と直交する第1の方向に光が拡散される。この円筒形凹レンズ面で第1の方向に拡散された光は、上記円筒形凸レンズ面で上記第1の方向と直交する第2の方向に集光される。したがって、上記第2の方向に高い指向性を持った光を上記第1の方向に広範囲に亘って照射できる。
【0009】
よって、この発明の光照射装置によれば、光学素子の円筒型凹レンズ面と円筒形凸レンズ面の焦点距離を所望の指向性を満たすように設定することで、強度分布が均一化された指向性の高い光を導光体の端面に効率よく照射することが可能となる。これにより、上記導光体の出射面から強度分布が均一化された指向性の高い光を出射できる。
【0010】
また、一実施形態の光照射装置では、上記光源部は、光を出射する光源と上記光源が出射した光を一方向へ反射するリフレクタとを有し、
上記光源は、上記円筒形凸レンズ面の円筒中心軸と平行な方向にコイルが巻かれているフラットコイルフィラメントを含み、
上記導光体の端面は、上記円筒形凸レンズ面の円筒中心軸に沿って延在している。
【0011】
この実施形態の光照射装置によれば、上記光源は上記フラットコイルフィラメントによって上記円筒形凸レンズ面の円筒中心軸の方向(第1の方向)に光の出射領域が広くなる。よって、上記光学素子への照射領域を上記第1の方向に沿って延在している上記導光体の端面に光を入射させるのに最適な照射領域にすることができる。
【0012】
また、一実施形態の光照射装置では、上記光源部と円筒形凹レンズ面の組の2組以上が上記円筒形凸レンズ面の円筒中心軸に沿って配置されており、
上記円筒形凹レンズ面は上記光源部から入射した光を上記光源部の外径よりも広い範囲に拡散させ、上記円筒形凸レンズ面は上記円筒形凹レンズ面からの光を集光する。
【0013】
この実施形態の光照射装置によれば、上記光学素子の上記円筒形凹レンズ面により、上記光源部の外径よりも幅の広い照射領域が得られるので、光源部(光源,リフレクタ),円筒形凹レンズ面の複数組の配置間隔を調整することで、各組による光照射領域を干渉させることなく導光体の細長い端面に光を入射させるのに適した照射領域を得ることが可能となる。
【0014】
また、一実施形態の光照射装置では、上記光源部から照射対象面までの光路中の少なくとも1箇所に配置されて上記光源部からの光の光量を調整する光量調整部材を有する。
【0015】
この実施形態の光照射装置によれば、上記光量調整部材によって、被照射面における照度を調整できる。また、光源部(ランプ)の交換時などのメンテナンス時においても照度の調整を容易に行うことができる。
【0016】
なお、上記光量調整部材が、仮想的に分割された複数の領域で光量の調整量を可変にした場合には、上記光学素子の作製誤差や、光源(ランプ)の個体差による発光照度ムラが生じたときに、上記光量調整部材の各領域の光量調整量を変えて被照射面における照度を均一化できる。
【0017】
また、一実施形態の光照射装置では、上記光源部から照射対象面までの光路中の少なくとも1箇所に配置されて上記光源部からの光のスペクトル分布を調整して擬似的な太陽光のスペクトルにするスペクトル調整部材を有する。
【0018】
この実施形態の光照射装置によれば、上記スペクトル調整部材で上記光源部からの光のスペクトル分布を擬似的な太陽光のスペクトルにするので、放射角が一定の範囲内に納まった指向性の高い擬似太陽光を照射できる。
【発明の効果】
【0019】
この発明の光照射装置によれば、光学素子の円筒型凹レンズ面と円筒形凸レンズ面の焦点距離を所望の指向性を満たすように設定することで、強度分布が均一化された指向性の高い光を導光体の端面に効率よく照射することが可能となる。これにより、上記導光体の出射面から強度分布が均一化された指向性の高い光を出射できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1A】この発明の光照射装置の第1実施形態が備える光源装置100の側面図である。
【図1B】上記光源装置100の平面図である。
【図2】上記第1実施形態の側面図である。
【図3】上記第1実施形態におけるフィラメントと光学素子と導光体の最適配置を示す模式的な斜視図である。
【図4A】上記第1実施形態の光源装置100から出射される光の放射角分布(z軸方向)を示す特性図である。
【図4B】上記光源装置100から出射される光の放射角分布(y軸方向)を示す特性図である。
【図5】上記光源装置100から出射される光の照度分布(y軸方向)を示す特性図である。
【図6A】この発明の光照射装置の第2実施形態の側面図である。
【図6B】上記第2実施形態の平面図である。
【図7】この発明の光照射装置の第3実施形態としての擬似太陽光照射装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0022】
(第1の実施の形態)
図1Aの側面図に、この発明の光照射装置の第1実施形態が備える光源装置100を側方から見た様子を示す。また、図1Bの平面図に、光源装置100を上方から見た様子を示す。図1Aおよび図1Bにおいて、z軸方向を上方とし、y軸方向を側方とし、x軸方向を前方としている。なお、図1A,図1Bにおいて、Jは光軸である。
【0023】
光源装置100は、ランプ光源101と、このランプ光源101が出射した光を前方へ反射するリフレクタ102と、円筒形凹レンズ103と円筒形凸レンズ104を有する。上記ランプ光源101とリフレクタ102が光源部を構成している。上記円筒形凹レンズ103は円筒形凹レンズ面103Aを含み、円筒形凸レンズ104は円筒形凸レンズ面104Aを含んでいる。この円筒形凹レンズ面103Aの円筒中心軸は円筒形凸レンズ面104Aの円筒中心軸とは互いに垂直になっている。すなわち、円筒形凹レンズ面103Aの円筒中心軸はz軸方向に延在しており、円筒形凸レンズ面104Aの円筒中心軸はy軸方向に延在している。上記円筒形凹レンズ103と円筒形凸レンズ104が光学素子を構成している。なお、ここでは、円筒形凹レンズ103と円筒形凸レンズ104とを別体としたが、両者を一体にした光学素子を用いてもよい。
【0024】
上記円筒形凹レンズ103は、図1Bに示すように、リフレクタ102で前方へ略平行な光として反射された光を円筒形凹レンズ面103Aで側方へ屈折させ、x‐y平面において拡散させて平坦面103Bから、円筒形凸レンズ104の平坦面104Bに入射させる。そして、円筒形凸レンズ104は、図1Aに示すように、平坦面104Bに入射した光を円筒形凸レンズ面104Aで屈折させ、x‐z平面において集光させて前方へ出射する。なお、図1Aおよび図1Bにおいて、符号105は照射面を表している。
【0025】
次に、図2に、この第1実施形態が有する光源装置100と光取り出し用導光体107を示す。この光取り出し用導光体107は、光源装置100の円筒形凸レンズ104から出射した光が入射される端面107Aを有する。この端面107Aは、図1A,図1Bの照射対象面105に相当している。この導光体107は、光源装置100から端面107Aに入射した光を、上方(z軸方向)に向いた出射面107Bから照射対象面108に向かって出射する。
【0026】
図3に示すように、上記ランプ光源101は、y軸方向に沿ってコイルが巻かれているフラットコイルフィラメント101Aを有する。したがって、ランプ光源101は、y軸方向に光の出射領域が広くなる。また、上記導光体107の端面107Aは、y軸方向に細長い長方形状になっている。そして、このy軸方向に出射領域が広いランプ光源101からの光はリフレクタ102でx方向へ反射され、円筒形凹レンズ103の円筒形凹レンズ面103Aでy軸方向に拡散される。このy軸方向に拡散された光は、円筒形凸レンズ104の円筒形凸レンズ面104Aでz軸方向に集光されて、照射領域がy軸方向に長くて光強度の大きな照射光となってy軸方向に細長い端面107Aに照射される。つまり、強度分布が均一化された指向性の高い光を導光体107の端面107Aに効率よく照射することが可能となる。
【0027】
また、上記導光体107に入射した光は、導光体107の内部を伝播し、導光体内に出射面107Bの反対側の面107Cに設置された光路変換構造体109Aからなる光取り出し構造部109によって屈折,反射され、照射対象面108に向けて放射される。これにより、導光体107の出射面107Bの広い範囲にわたって、出射面107Bから上方(z軸方向)に向けて指向性が高くて強度分布が均一化された光を出射させることが可能になる。
【0028】
なお、この実施形態では、光取り出し構造部109を構成する光路変換構造体109Aとして、先端角および傾斜角を有する略三角柱形状のプリズム構造を採用したが、光取り出し用導光体に形成した溝や窪み、あるいは、透明樹脂からなる線状や点状の構造体による光取り出し構造を採用してもよい。
【0029】
次に、図4A,図4Bに、円筒形凸レンズ面104Aから導光体107の端面107Aに入射する光の端面107Aにおける放射角分布を示す。ここでは、一例として、円筒形凹レンズ103と円筒形凸レンズ104は、屈折率が1.51のガラス材料で作製した。また、円筒形凹レンズ103の円筒形凹レンズ面103Aの曲率Rを250mmとし、円筒形凸レンズ104の円筒形凸レンズ面104Aの曲率Rを120mmとし、リフレクタ102の開口の直径を110mmとした。
【0030】
図4Aは、上記x軸を0度とし、z軸に±90度を設定した場合の放射角分布であり、縦軸は規格化照度を表している。図4Aでは、全照度の98%がz軸方向の±15度以内に収まっている。また、図4Bは、上記x軸を0度、y軸を±90度にした場合の放射角分布であり、縦軸は規格化照度を表している。図4Bでは全照度の90%が±15度以内に収まっている。
【0031】
また、図5に、この実施形態における導光体107の端面107Aにおけるy軸方向の照度分布である。この実施形態では、リフレクタ102の開口直径110mmに対して、y軸方向の約180mmの照射領域が得られている。
【0032】
このように、この実施形態の光照射装置では、上記構成の光源装置100を備えたことによって、指向性が高く、照度が均一化された光を照射対象面105としての導光体107の端面107Aに照射することが可能になる。よって、この実施形態によれば、導光体107の出射面107Bから強度分布が均一化された指向性の高い光を出射できる。
【0033】
(第2の実施の形態)
次に、図6A,図6Bを参照して、この発明の光照射装置の第2実施形態を説明する。図6Aは、この実施形態の光照射装置を側方(y軸方向)から見た様子を示す側面図であり、図6Bは、この実施形態の光照射装置を上方(z軸方向)から見た様子を示す平面図である。なお、図6A,図6Bにおいて、Jは光軸である。
【0034】
この第2実施形態は、次の(i)〜(iv)の点だけが、前述の第1実施形態と異なる。よって、この第2実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主に説明する。
【0035】
(i) 前述の第1実施形態の円筒形凹レンズ面103Aと同じ形状であると共にy軸方向に配列された2つの円筒形凹レンズ面203Aを有する円筒形凹レンズ203を有する点。
【0036】
(ii) 前述の第1実施形態のランプ光源101,リフレクタ102および円筒形凹レンズ面203Aからなる組が、y軸方向に2組配列されている点。
【0037】
(iii) 前述の第1実施形態の円筒形凸レンズ104をy軸方向に延長してy軸方向の寸法が円筒形凸レンズ104の約2倍である円筒形凸レンズ204を有する点。
【0038】
(iv) 前述の第1実施形態の導光体107をy軸方向に延長してy軸方向の寸法が上記導光体107の約2倍である導光体207を有する点。
【0039】
図6Bに示すように、この第2実施形態では、上記ランプ光源101とリフレクタ102と円筒形凹レンズ面203Aからなる組が、円筒形凸レンズ204の円筒形凸レンズ面204Aの円筒中心軸に沿って2組配置されている。そして、y軸方向に並んだ2つの円筒形凹レンズ面203Aを有する円筒形凹レンズ203は、円筒形凸レンズ204にx軸方向に対向している。また、図6Bに示すように、円筒形凹レンズ203は、リフレクタ102,102から円筒形凹レンズ面203A,203Aに入射した光を屈折させてx‐y平面においてリフレクタ102,102の外径よりも広い範囲に拡散させる。そして、図6Aに示すように、円筒形凸レンズ204は、円筒形凹レンズ203の2つの円筒形凹レンズ面203A,203Aからの光をx‐z平面において集光して前方へ出射し、導光体207の端面207Aに入射させる。
【0040】
この第2実施形態の光照射装置によれば、上記y軸方向の寸法が、前述の第1実施形態の円筒形凸レンズ104の約2倍である円筒形凸レンズ204から、y軸方向の寸法が前述の第1実施形態の導光体107の約2倍である導光体207の端面207Aに強度分布が均一化された指向性の高い光を入射させることができる。したがって、導光体207の出射面207Bの広い範囲にわたって、出射面207Bから上方(z軸方向)の照射対象面208に向けて指向性が高くて強度分布が均一化された光を出射させることが可能になる。
【0041】
また、上記円筒形凹レンズ203が有する2つの円筒形凹レンズ面203A,203Aにより、各リフレクタ102,102の外径より幅の広い照射領域が得られるので、光源101,リフレクタ102,円筒形凹レンズ面203Aの2組の配置間隔を調整することで、各組による光照射領域を干渉させることなく導光体207の細長い端面207Aに光を入射させるための最適な照射領域を得ることが可能となる。
【0042】
図6Bでは、隣り合う2つのリフレクタ102から前方に出射される光線同士は離隔しているように見えるが、リフレクタ102の形状を調整して最適化することによって、2つの円筒形凹レンズ面203Aで屈折され拡散されて円筒形凹レンズ203から前方に出射される光線を隣接させることができる。これにより、円筒形凸レンズ204から導光体207の端面207Aにy軸方向に連続した照射領域で光を入射させることができる。
【0043】
尚、この実施形態においては、2つの円筒形凹レンズ面203Aを有する1つの円筒形凹レンズ203を採用したが、1つの円筒形凹レンズ面203Aを有する円筒形凹レンズを2つ備えてもよい。また、上記1つの円筒形凸レンズ204に替えて、前述の第1実施形態の円筒形凸レンズ104をy軸方向に2つ配列してもよい。また、上記実施形態では、ランプ光源,リフレクタおよび円筒形凹レンズ面からなる組を2組備えたが、3組以上備えてもよい。また、円筒形凹レンズと円筒形凸レンズを一体形成した光学素子を複数配列してもよい。
【0044】
(第3の実施の形態)
次に、図7を参照して、この発明の光照射装置の第3実施形態を説明する。図7は、この第3実施形態の光照射装置を側方(y軸方向)から見た様子を示す側面図である。この第3実施形態は、次の(i)〜(iii)の点だけが、前述の第2実施形態と異なる。よって、この第3実施形態では、前述の第2実施形態と異なる点を主に説明する。
【0045】
(i) 前述の第2実施形態の円筒形凸レンズ204と光取り出し用導光体207の端面207Aとの間にスペクトル調整用光学素子301と光量調整用フィルタ302を配置した点。
【0046】
(ii) y軸方向に配列されたランプ光源101とリフレクタ102の2つの組と円筒形凹レンズ203と円筒形凸レンズ204およびスペクトル調整用光学素子301と光量調整用フィルタ302を収容する筐体303を有し、この筐体303内の内部および内部に収容された各部品を冷却する冷却装置306を有する点。
【0047】
(iii) ランプ光源101をハロゲンランプとした点。
【0048】
この第3実施形態の光照射装置は、指向性が高く強度分布が均一化された光を広範囲に照射する疑似太陽光照射装置である。上記2つのランプ光源101と2つのリフレクタ102と円筒形凹レンズ203と円筒形凸レンズ204およびスペクトル調整用光学素子301と光量調整用フィルタ302と筐体303とが光源装置305を構成している。
【0049】
はじめに、光源装置305の筐体303内に配置された2つランプ光源101から出射した光は2つのリフレクタ102によって円筒形凹レンズ203の2つの円筒形凹レンズ面203Aに向けて出射される。この2つの円筒形凹レンズ面203Aで屈折,拡散された光線は、円筒形凸レンズ204で集光されて光取り出し用導光体207の端面207Aに集光される。この端面207Aは光源装置305の照射面305Aに対向している。
【0050】
また、この実施形態では、上記2つのランプ光源101と光源装置305の照射面305Aとの間には、スペクトル調整用光学素子301が配置されている。このスペクトル調整用光学素子301は、上記2つのランプ光源101からの放射光の波長帯のうちの特定波長帯の透過率が低くなっている。よって、スペクトル調整用光学素子301は、上記2つのランプ光源101からの放射光の波長帯のうちの特定波長帯の成分を減衰させる。よって、このスペクトル調整用光学素子301は、上記放射光の波長帯のうちの特定波長帯の成分を減衰させたスペクトル分布の光を光量調整用フィルタ302に入射させる。この光量調整用フィルタ302は、光源装置305の照射面305Aに入射させる照度分布を均一にすべく、入射光の光量を調整する。
【0051】
次に、光量調整用フィルタ302の特性について説明する。
【0052】
前述の第1実施形態では、光量調整用フィルタ302を有しておらず、1組のランプ光源101,リフレクタ102および円筒形凸レンズ203,円筒形凹レンズ204による導光体207の端面207Aへのy軸方向の照度分布は、図5に示すような分布であった。この図5に示す照度分布では、y軸方向の中心部分と周辺部分の照度が相対的に高くなっている。
【0053】
そこで、この第3実施形態では、図5の照度分布のような照度ムラを改善するため、光量調整用フィルタ302を有している。この光量調整用フィルタ302は、入射領域を仮想的に分割し、分割した各領域の透過率を制限することによって出射光の照度分布の均一化を図った。具体的には、図5の照度分布から上記照射面における各領域の規格化照度を求め、出射光の照度分布を均一化するように上記入射領域で分割した各領域の透過率を算出した。なお、光量調整用フィルタ302を構成する部材としては、上記分割した各領域について透過率を制限できる部材であればよく、例えば遮光網、遮光テープ、遮光シート、遮光フィルタなどを用いることができる。
【0054】
上記光源装置305は、上記スペクトル調整用光学素子301で所望のスペクトルを有する光とし、光量調整用フィルタ302で強度分布を均一化した光として、導光体207の端面207Aに照射することが可能である。また、スペクトル調整用光学素子301としてエアマスフィルタを利用することによって、指向性が高く、強度分布が均一化された擬似太陽光を照射面305Aから導光体207の端面207Aに照射することが可能となる。
【0055】
ところで、この第3実施形態では、擬似太陽光照射装置としたので、スペクトル調整用光学素子301は主にハロゲンランプの短波長側帯域を遮断して、照射面305Aへの照射光のスペクトルを太陽光のスペクトルに近似させている。なお、照射光のスペクトルと太陽光のスペクトルとの合致度を高めるために、ハロゲンランプに加えキセノンランプを用いてもよい。
【0056】
また、この実施形態においては、光源装置305からの出射光を光取り出し用導光体207の端面207Aに直接集光したが、反射面や結合用プリズムを用いて、光源装置305からの出射光を光取り出し用導光体207の端面207Aに間接的に集光させてもよい。この場合、光源装置305と導光体207の配置の自由度を向上できる。また、光取り出し用導光体207の端面207Aの周囲には、必要に応じて遮光手段を配置しても構わない。
【0057】
上記光取り出し用導光体207の端面207Aに入射した光は、導光体内部を伝播し、導光体207内に設けられた光路変換構造体209Aからなる光取り出し構造部209によって、照射対象面208に向けて放射される。なお、この第3実施形態においては、光取り出し構造部209をなす光路変換構造体209Aとして、先端角および傾斜角を有する略三角柱形状のプリズム構造を採用している。そして、上記光量調整用フィルタ302に加えて、光取り出し構造部209の配置間隔を制御することによって、照射対象面208へ放射する光の光束密度の制御を行った。
【0058】
この実施形態によれば、光源装置305によって光取り出し用導光体207へ指向性の高い光が導入されているので、光取り出し構造部209の形状を統一することによって、出射面207Bから照射対象面208の方向へ指向性の高い光を照射することが可能になる。また、この実施形態では、冷却装置306によって、光源装置305の内部および内部に配設された構成部品などを冷却して、筐体303内の過熱を防いでいる。
【0059】
尚、この第3実施形態では、1つの光源装置305から導光体207の片側端面207Aに光を入射させたが、2つ以上の光源装置から導光体207の2箇所以上の端面に光を入射させても構わない。また、この実施形態においては、スペクトル調整用光学素子301と光量調整用フィルタ302は、円筒形凸レンズ204の出射側に配置したが、ランプ光源101から光源装置305の照射面305Aまでの経路内のどこに配置しても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0060】
この発明は、指向性が高くて照度のコントロールも容易な光を照射する用途に適しており、一例として、コピー機、スキャナなどに用いられる画像読取装置、コピー、プリンタなど感光体上の電荷を光により制御する除電などの光源、インテリア用薄型光源、誘導灯など、その他の光源に幅広く用いることができる。また、この発明は、擬似太陽光照射装置にも適し、太陽電池パネルのI−V特性を評価するためのソーラーシミュレータ用光源としても利用できる。また、各種太陽エネルギー利用機器の測定試験や加速劣化試験、および農作物用の擬似太陽光照射装置などへの応用が可能である。
【符号の説明】
【0061】
100 光源装置
101A フラットコイルフィラメント
101 ランプ光源
102 リフレクタ
103,203 円筒形凹レンズ
103A,203A 円筒形凹レンズ面
104,204 円筒形凸レンズ
104A,204A 円筒形凸レンズ面
105 照射面
107,207 光取り出し用導光体
107A,207A 端面
107B,207B 出射面
107C 反対側の面
108,208 照射対象面
109,209 光取り出し構造部
109A,209A 光路変換構造体
301 スペクトル調整用光学素子
302 光量調整用フィルタ
303 筐体
305 光源装置
305A 照射面
306 冷却装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を出射する光源部と、
上記光源部から入射された光を屈折させて出射する光学素子と、
上記光学素子から出射した光が入射される端面と上記端面に入射された光を出射する出射面とを含む導光体とを備え、
上記光学素子は、
上記光源部からの光を拡散させる円筒形凹レンズ面と、
上記円筒形凹レンズ面からの光を集光する円筒形凸レンズ面とを有し、
上記円筒形凹レンズ面の円筒中心軸と上記円筒形凸レンズ面の円筒中心軸とが互いに垂直であることを特徴とする光照射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光照射装置において、
上記光源部は、光を出射する光源と上記光源が出射した光を一方向へ反射するリフレクタとを有し、
上記光源は、上記円筒形凸レンズ面の円筒中心軸と平行な方向にコイルが巻かれているフラットコイルフィラメントを含み、
上記導光体の端面は、上記円筒形凸レンズ面の円筒中心軸に沿って延在していることを特徴とする光照射装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光照射装置において、
上記光源部と円筒形凹レンズ面の組の2組以上が上記円筒形凸レンズ面の円筒中心軸に沿って配置されており、
上記円筒形凹レンズ面は上記光源部から入射した光を上記光源部の外径よりも広い範囲に拡散させ、上記円筒形凸レンズ面は上記円筒形凹レンズ面からの光を集光することを特徴とする光照射装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の光照射装置において、
上記光源部から照射対象面までの光路中の少なくとも1箇所に配置されて上記光源部からの光の光量を調整する光量調整部材を有することを特徴とする光照射装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の光照射装置において、
上記光源部から照射対象面までの光路中の少なくとも1箇所に配置されて上記光源部からの光のスペクトル分布を調整して擬似的な太陽光のスペクトルにするスペクトル調整部材を有することを特徴とする光照射装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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